人民新報 ・ 第1038号<統合131> (2001年10月15日)
  
                                目次

● 米軍は無法な報復戦争をただちに中止せよ
              10・21全国統一行動を軸に連続行動で反戦の世論の形成を

● 米軍の空爆糾弾! 資料・各団体の声明
      テロも戦争も反対 ピースアクション(愛知)
      航空安全推進連絡会議/航空労組連絡会/日本乗員組合連絡会議
      ローカルNET大分・日出生台

● 9・30 JCO臨界被曝事故二周年行動 核と戦争を絶対に許さない

● 緊迫する岩国基地へ反戦デモ 基地拡張をつづける米軍岩国基地を問う全国集会

● 自衛隊の参戦を許すな! 違法・違憲の米軍報復戦争参戦法(テロ対策特別措置法)案
                                                斉藤吾郎
● 図書紹介 /  懲戒除名<非行>弁護士を撃て 著者・内田雅敏(弁護士)  

● KODAMA
      同時多発テロ事件に思う (東京・労働者 山田道美)
      小泉純一郎総理大臣殿  (K・A)

● 複眼単眼 / 日米政府のダブル・スタンダード  難民を追い出す日本政府




米軍は無法な報復戦争をただちに中止せよ

10・21全国統一行動を軸に連続行動で反戦の世論の形成を

米軍の空爆開始

 十月八日、米英両軍によるアフガニスタン空爆が開始された。以降も連日、米軍の攻撃がつづいている。特殊部隊も侵入したと言われているし、地上軍投入の噂も絶えない。他の国の軍隊もアメリカに呼応する態勢をとっている。
ブッシュは無法にも「テロにたいする報復戦争」などと称して、その戦火をアフガンからさらに他の「テロ国家=ならず者国家」と決め付ける国々にまで広げる姿勢をしめしている。状況を合わせて考えれば、この「戦争」でのアメリカのねらいが短期のうちに達成されるとは思えない。
 冬季に入るアフガンでは、家を破壊され、あるいは爆撃の危険を恐れて避難する人びとが大量の難民となってさまよっている。子どもたちや高齢者、あるいは貧しい民衆は国外に脱出することすらできない。米軍はタリバンの軍事施設とビンラディングループ=アルカイダの基地だけをたたくと称していたが、すでに国連NGOの施設も爆撃され、死傷者がでている。
 この戦争に日本の自衛隊が参戦しつつある。それを合法化するための「テロ対策特別法案」が、政府によっていま国会にかけられている。
 日本の支配層は再び戦争への道を歩きだした。第二次大戦以降の戦後史が決定的に変わろうとしている。
 いまこそ、「無差別テロ反対! 米軍の報復戦争反対! テロ対策特別措置法=米軍報復戦争参戦法反対!」の声を。

欧米各国などで大規模な反戦運動

 すでに報道されているように、アメリカやヨーロッパ、そしてアラブをはじめとするアジア各国で、数万から数十万人の規模で民衆の反戦運動が起っている。
 そして日本でも北海道から沖縄まで、全国各地で大小さまざまな市民や労働者の行動が始まった。各団体の声明や抗議文が数限りないほどにメールやFAXで飛びかっている。各種の署名運動、街頭宣伝活動、学習会や集会、デモが連日くり広げられている。国会周辺でも座り込み、院内集会、議面集会、請願デモなどが多様にくり広げられ、民衆の怒りが表明されている。

ブッシュの戦争強行に緊急に抗議

 東京ではこの間、市民の運動を先頭で担ってきた「テロにも報復戦争にも反対!市民緊急行動」のメンバー約五〇人が、十月八日午後四時から、雨模様のなか、有楽町駅近辺でチラシを配布しながらリレートークを行った。その日の朝、開戦を知った市民たちが緊急に連絡を取り合って企画した行動だ。この場には都内の無所属の区議会議員らが参加して、アピールを行った。
 つづいて「市民緊急行動」は、午後六時から衆議院議員面会所で緊急抗議集会を開いた。本来、休日の議面は閉鎖されているが、国会議員らの協力であけさせることができた。
 会場にはインターネットやFAXで集会を知ってかけつけた市民や学生など約六〇〇人がつめかけ、会場は超満員になってあふれた。集会には社民党の土井たか子党首や無所属の川田悦子衆議院議員ら、七名の国会議員が出席した。
 集会では主催者を代表して「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の高田健さんが「私たちはこれまで戦争を阻止する運動に取り組んできた。九月十七日には四〇〇名の国会デモ、二四日には渋谷で千八〇〇名の集会、昨日も渋谷で千五〇〇名のデモを行った。しかし残念ながら、とうとう戦争が始まった。これに落胆することなく、怒りを行動に転化し、本日を契機に一刻も早く戦争を止めさせる運動、日本の参戦を止めさせる運動を全力をあげてすすめよう。いまこの臨時国会にかけられている『テロ対策特別措置法』という名の米軍報復戦争参戦法に反対して闘いぬこう」と訴えた。
 憲法研究者で埼玉大学教員の三輪隆さんは、憲法をふみにじって自衛隊を派遣しようとしている小泉内閣を厳しく批判し、また憲法研究者百五〇名が緊急共同アピールを発表し報復戦争反対運動の一翼を担う決意を表明していると報告した。
 日本にいるアフガン難民の支援運動をしている稲場雅紀さんは「政府は難民を救援するといって自衛隊をパキスタンにだしておきながら、日本にいるアフガン難民にたいしては、難民認定もしないで、テロ事件以降、緊急に逮捕するなど抑圧している。これは政府のダブル・スタンダードだ」と怒りの報告をした。
 緊急集会のあと、参加者は議員面会所をでて首相官邸にむかって「参戦法案反対」などのシュプレヒコールをたたきつけた。

緊急行動に千五〇〇名

 「市民緊急行動」は空爆前日の七日、渋谷駅近くの宮下公園で集会を開き、約千五百人でデモ行進をした。
 集会では日本キリスト教協議会の大津健一総幹事と内田雅敏弁護士が問題提起の発言をし、パキスタンなどから来た労働者たちが壇上にたって連帯挨拶をした。
 大津さんは「みんなで共同して報復の名による暴力の連鎖を断ち切るための運動を起こそう。宗教者もキリスト教、仏教、イスラム教の違いを超えてがんばる」と決意表明した。
 内田さんは「今回のテロ対策特別措置法は、安保条約や周辺事態法をも超える、憲法違反の法律であること」を、法律家の角度から説明し、ともに闘うことを訴えた。
 歌やおどりのグループによるだしものが披露されたあと、横断幕やプラカード、花、リボンなどそれぞれにくふうしながら、渋谷の街のデモに出発した。
 九日からは衆議院議員の川田悦子さんが議員会館前での四八時間座込みに入り、また国労闘争団をはじめ、川田さんのアピールを知って駆けつけた若者たちも川田さんと並んで「テロも報復戦争も反対」と座込みに入った。

連続行動に立ち上がろう

 運動はいま急速に広がりをしめしている。
 都内の各地では集会やデモが行われ始めた。同時に「市民緊急行動」などが、法案阻止に向けて、ほぼ連日の行動を展開する。
 十月十一日は午後五時半から衆議院議員面会所での抗議集会、十二日は午後六時から永田町の星陵会館から国会請願デモ、十三日は午後六時から「報復戦争と日本の戦争協力を許さない行動実行委員会」による講演と討論の夕べ(大崎・南部労政会館)、十四日は午後一時から同実行委員会による集会とデモ(渋谷・宮下公園)、十五、十六、十七日は連日午後六時半から六本木の三河台公園(十五日のみ檜町公園)を出発する国会請願デモ、そして二十一日は国際反戦デーの全国共同行動の一環で、午後二時から六本木の桧町公園よりアメリカ大使館に向けたデモが予定されている(問い合わせは03・3221・4668、許すな!憲法改悪・市民連絡会)。都内ではこのほかにもさまざまな地域集会とデモが各地で企画されている。
 一〇・二一国際反戦デーの共同行動を軸にさらに反戦の闘いを盛り上げ、米軍の報復戦争を中止させよう。
 自衛隊の参戦を阻止しよう。テロ防止に名を借りた「米軍戦争参戦法案」を阻止しよう。


米軍の空爆糾弾! 資料・各団体の声明


不戦ネットのブッシュ大統領抗議・要請書

    
テロも戦争も反対 ピースアクション(愛知

 先月九月十一日、貴国で起きた、民間人を巻き込んだ無差別虐殺にも等しい同時多発テロに対して、私たちは強い衝撃を受けました。
犠牲になられた方々に対して心から哀悼の意を表明するとともに、負傷された方々の回復、不明者の方々の捜査が一刻も早くなされることを心から祈念するものです。
 私たちは、いかなる理由があろうとも、不特定多数の市民を巻き込んだ卑劣なテロ行為を断じて支持しません。
 しかしながら、本日、貴政府並びに英国政府の軍隊が、日本時間午前一時三十分に開始したアフガニスタンへの空爆に対しても、いかなる理由があっても支持しません。すでに民間人の犠牲者も出ていると聞きます。ビン・ラディン氏を、テロの一方的な「主要な容疑者」と断定し、証拠も全世界の市民、とりわけタリバーン政権に対して、貴国は開示していません。憎悪や報復の連鎖を生むしかない報復攻撃に出たことは国際法にも明らかに違反するものです。国連憲章のどこに報復攻撃を正当化する条文があるのでしょうか。
 私たちは、貴国が、戦後の国際政治の中で示してきた「二重基準」(ダブルスタンダード)に対して不審の念を持ってきました。例えば、一九八〇年代、イラン・イラク戦争の再にはイスラム「原理主義」のイランを叩くために、貴国はイラクに対して軍事援助を行いました。ところが、今から十年前の「湾岸戦争」では、今度はイラクを攻撃しました。市民への無差別爆撃も行いました。そして今回のアフガニスタンに対しては、かつて冷戦下、旧ソ連に対抗するために、タリバーンの源となったアフガンゲリラを養成・支援してきました。中南米でも一方で軍事援助をしながら、また一方で貴国の軍事力で政権を転覆させています。貴国の豊かさを維持するために、貴国がその時々に国連を利用しながら貧しい国々を手玉にとってきた政策こそが、一部の貧しい国々の怒りや反発をかっているのではないでしょうか。まさに一方でトマホーク等によって爆撃しながら、他方で医薬品や食料をばらまくという矛盾を犯しているように見えます。
 私たちは、アフガニスタンに対する空爆に断固抗議すると共に、直ちに無用な殺戮と惨禍を引き起こす報復攻撃を取りやめることを要請します。暴力の連鎖を引き起こさないで下さい。

二〇〇一年十月八日

     …………………………

同時多発「ハイジャック・自爆テロ」事件について

  
航空安全推進連絡会議/航空労組連絡会/日本乗員組合連絡会議

九月十一日、米国の民間航空機四機が同時にハイジャックされ、ニューヨーク市の世界貿易センタービルと、ワシントンDCの国防総省に激突するという「自爆テロ」事件が発生しました。またその直後、ハイジャックされた別の民間航空機がピッツバーグ郊外に墜落しました。 この事件で亡くなられ、あるいは負傷された多くの方々に、深い哀悼の意を表明します。また、全米規模の空港閉鎖措置によって被害を受けた方々に対しても、心よりお見舞い申し上げます。
公益性を担う民間航空機が、テロの道具に悪用されたことに対する、航空労働者の悲しみと怒りの大きさは計り知れないものがあります。
 航空労働者は、何よりも航空安全を願う立場から、以下の見解を明らかにします。

 一、本事件は、周到な計画の下で行われた、きわめて野蛮な犯行です。しかも、テロを実現するために民間航空機を使用するという、きわめて卑劣なものです。犯人側にいかなる理由があろうとも、絶対に許されない行為です。事件の発端と経過などの全容が一日も早く解明され、このようなテロが二度と起こらない対策が、早急にとられることを強く望みます。
 二、今般のテロに対して、武力をもって報復を行うことは、新たなテロを誘発しかねない行動であり、民間航空機の安全を確保する立場から好ましくありません。あらゆる行動が、冷静にかつ適切に実施されるよう望みます。
 三、わが国における航空輸送に関する警備、保安を最大限に厳重なものにすることを、とくに望みます。「同時多発テロ」事件発生以来、国内全空港の警備を厳重にする指示が出されているものの、現状ではハイジャックを水際で防ぐ対策は十分ではありません。国の制度、企業における規定や制度、現場の教育、空港における体制など全般を、改めて根本的に見なおした上で、必要な改善を早急に行うべきです。
 四、本事件を契機に、「有事法制」の必要性などが一部で議論されていますが、国の「危機管理」を厳しく行うことと、国の武力行使を当然とする「有事法制」とは全く別のものです。航空労働者は「いのちと安全」を守る立場から、民間航空をいかなる形態であっても軍事的に使用することには、絶対に反対します。
 私たちは、二年前に成立した新ガイドライン関連法に反対しましたが、その理由のひとつは「民間航空機の軍事利用とテロの脅威」です。図らずも今回米国で発生したテロは、その危惧が現実となったものでした。我が国には巨大な米国の軍事基地が存在しており、民間航空機がテロの標的になることへの私たちの心配は、決して杞憂ではありません。さらに、民間航空を軍事利用したならば、自らテロの標的になることを意味します。私たちは、民間航空の安全を願う立場から、有事法制の制定や民間航空の軍事利用は、絶対に容認しません。
二〇〇一年九月十七日

     …………………………

米英によるアフガンへの武力攻撃に対する抗議アピール

             
ローカルNET大分・日出生台

 武力によらない平和的解決を求めてきた私たちの願いもむなしく、米英がアフガニスタンへの武力攻撃を開始したことに対して、満身の怒りを込めて抗議する。
 去る九月十一日にニューヨーク、ワシントンで起きた無差別テロ事件は、なんの罪もない一般市民を巻き込む許されざる犯罪でした。私たちはこのようなテロ行為を当然非難するものですが、同時に、米英による武力攻撃にもまた断固反対をします。武力攻撃は、このようなテロに対する根本的解決とならないばかりか、むしろ事態を泥沼化させ、解決を遠ざけるものであると言わざるを得ないからです。
 アフガンでさらなる人々の命を奪うことが、ニューヨークで犠牲になった方々の死を弔うことになろうはずがありません。ニューヨークであれ、アフガンであれ、人々の命を奪い、暮らしを破壊する暴力は決して許されないはずです。「暴力が暴力を生む」という恐怖の連鎖をつくりださないための知恵と忍耐強い努力こそが今求められています。
 日本政府は、アメリカの武力攻撃に対して積極的支持を表明し、自衛隊を出してアメリカの戦争に協力をしようとしています。しかし、日本が取るべき立場は、「戦争」に向けて協力することではなく、武力によらずに「平和」を築くために協力することではないでしょうか。
 今回のようなテロ事件は、武力行使ではなく、国際的な法の下で裁かれるべきものと考えます。またテロが生み出されるもとになっている環境を、時間がかかっても、忍耐強く改善していかなければなりません。
 国際間の貧富の格差をなくし、どんな人々も最低限の生活、教育や福祉が保証される世界を実現するために、先進各国が協力していくことだと考えます。
 今すぐ、アフガニスタンへの武力攻撃をやめ、武力によらない平和的方法による解決を目指すよう、私たちは、アメリカ、日本をはじめとする関係各国に求めます。

二〇〇一年十月八日


9・30 JCO臨界被曝事故二周年行動

       
核と戦争を絶対に許さない

 九月三十日はJCO東海事業所の臨界事故から二周年の日にあたる。二人が死亡し、多くの地域住民は事故により放出された中性子線に曝された。この日本の最悪の原子炉力事故は原子力開発の危険性を全国に示した。
 三十日にはJCO事故の真相の解明、被害者の追悼、そして反原発を求める行動が展開された。主催は、十数団体・個人で構成される「9・30臨界事故二周年東京圏実行委員会」。
 原子力行政の中心である経済産業省別館前では朝から約二百名で抗議行動が行われた。人間の鎖で別館をとりまき、「原発ノー」のシュプレヒコールをあげ、事故発生時の十時三十五分には全員が黙祷した。
 午後からは、文京区民センターで、講演会がひらかれ、約三百名が参加した。
 はじめに、中村敦夫参議院議員(国民会議)が、「原子力発電を斬る」と題して講演。
 JCO事故で現地調査に入ったが、中性子線被曝の被害は予想以上にひどいものだった。しかし、国会などではそうしたことの実状がまったく知られていない。原子力の推進の動機には利権構造がある。政官財癒着があり、ゼネコン、天下り先を求める官僚、そして暴力団も加わっている。日本の原発はすでに五十一基もあるのに、さらに二十基をつくるという。地震列島の日本でまったくどうかしているとしか言いようがない。アメリカの同時テロでは、ピッツバーグ近郊にハイジャック機が墜落したが、そこは原発銀座とも言えるところで、西に三基、東に四基の原発があり、ちょうどその間に墜落した。様々な意味で危険な原子力の推進に反対していかなければならない。
 小泉好延さん(市民エネルギー研究所)が、「原子力をめぐる最新の動きとJCO事故二周年」のテーマで話した。
 JCO事故の責任を明らかにしていくことが大事だ。この事故は、まずJCOそのものの責任は言うまでもないが、そのほかにも旧・動力炉核燃料開発事業団(現・核燃料サイクル開発機構)、またプルトニウム発電に関する研究機関、周辺地方自治体、そして国家機関のすべてが責任を負うべきだ。この間の動きでは、「プルサーマルはいらない」という新潟県刈羽村の住民投票の勝利は決定的な意味を持つ。プルサーマルはウランとプルトニウムを混合して燃やすものだが、その危険性はかねてより明らかになっており、諸外国では次々と開発から撤退している。高速炉・プルトニウム原子力計画は終わりの時期に入っている。しかし、日本ではまだそうではない。一刻も早く原子力開発を止めることが必要だ。とくにテロと報復の暴力が起こっている今の時期には、いっそうそのことが強調されなければならない。
 つづいてノンフィションライターでもある「臨界事故被害者の会」の大泉実成さんが、臨界被曝事故被害者の現状と要求について報告した。
 集会の最後に東京集会アピールが確認された。
 「私たちはあらためて、この事故に怒り、さらなる大事故を防ぐためにも絶対事故を風化させず、これからも事故の真相究明と事故の責任を明らかにすることを国に要求しつづけることを誓います。私たちは被害者の会を支援し、国に対し『被曝による健康被害はいっさいなし』とする公式見解の誤りを認め、現在と将来にわたる精神面も含めた健康被害の補償をすることを要求します。……これからも日本中の人びと、そして世界中の核・原発に反対する人びととともに核の利用を止めるために力を合わせていきましょう」。
 集会を終わってのパレードは白い防護服姿を先頭にして、原発の廃止を訴えた。


緊迫する岩国基地へ反戦デモ

   
基地拡張をつづける米軍岩国基地を問う全国集会

 九月二九日から三〇日にかけて山口県由宇町で「基地拡張をつづける米軍岩国基地を問う全国集会」が開かれ、全国の十一都府県から約六〇名の人びとが参加して、熱心に交流と討論が行われた。
 おりからのアメリカでの無差別テロと米国による「報復戦争」、日本政府の加担という事態の中で、この問題が討議の中心になった。
 集会のあと、地元の参加者を加えて、岩国基地拡張のための土砂を掘りだす愛宕山の近くで集会を開き、米軍岩国基地へのデモを行った。
 二九日午後二時から始まった全体会議で、「ピースリンク広島・呉・岩国」の湯浅一郎さんは「いつ戦争が始まるかわからないような情勢の中で、事実上、火事場泥棒のような形で、改憲に匹敵する新法を作ろうとしている。これを阻止する全国的な連係が必要だ」と挨拶した。
 岩国市議の田村順玄さんは岩国基地拡張の状況を報告した。
 「岩国市に基地の沖合移設事業が押しつけられ、その土砂を掘りだすための愛宕山開発事業がすすめられているが、市の財政の破綻が予想される。基地拡張工事の結果、日本の滑走路と航空母艦が停泊できるような岸壁が作られ、西日本最大の軍事施設になる。これは米軍にとっては絶好の事業だ」と批判した。
 沖縄県議の伊波洋一さんは「いま沖縄の米軍基地は厳重な警戒体制にある。機関銃を装備した装甲車が銃口を基地外に向けて走っている。伊江島では夜間の物資投下訓練をしている。読谷の陸軍特殊部隊のグリーンベレーはアフガンやパキスタンに展開している。米軍はペンタゴンがやられたので厳しい実感をしている。基地の入口を制限したり、車両チェックを厳重にしたり、記者が写真をとろうとして銃を向けられたり、五〇年代以来、初めての状況だ。基地のフェンスの外から『恐いなぁ』と見ている状況だ」と報告した。
 夜は分科会討論で、@「基地と環境・人権」岩国基地拡張に伴う環境汚染などをテーマにして、A「集団的自衛権をキーワードに」改憲・有事立法問題、B「地域の平和力」「地域から平和を創る」自治体への働きかけ、C「沖縄・韓国の反基地運動との連帯」の四つに別れて討議をした。
 二日目の午前は全体会議で、分科会の報告とまとめの討議をしたうえで、全体の意志で「一〇・二一反戦全国共同行動」のアピールなどを確認した。
 全国会議のあと、岩国市で行ったデモに対しては、岩国基地のメインゲートの内側で、防護盾を先頭に米兵が集団でデモ弾圧隊形をとって気勢をあげるなど、米軍側の異様な警備が目立った。
 参加者は「『不朽なる自由』の名による『報復』戦争への派兵をやめ、自衛隊は参戦するな!」と題する要請書を読み上げた。そこで、@米海兵隊岩国基地から「報復」戦争への派兵を行わないこと、A海上自衛隊岩国航空群からの自衛隊の海外派兵=戦争参加をしないこと、B藻場・干潟の代償措置を明らかにしないままの基地の拡張・強化となる海面埋め立て工事を即時中止すること。また新駐機場、新格納庫のための、新たなる海面埋め立てをしないこと、を要求した。


自衛隊の参戦を許すな! 違法・違憲の米軍報復戦争参戦法(テロ対策特別措置法)案

                                                
斉藤吾郎

@ショウ・ザ・フラッグ

 九月十一日に発生したアメリカでの無差別テロにたいして、ブッシュ米大統領は「これは戦争だ」「報復する」「クルセード(十字軍)だ」と叫びながら、あらゆる機会を利用してアメリカ・ナショナリズムを煽りたて、大規模な殺戮のための戦争を開始した。反テロリズムの看板を掲げた「二十一世紀型の新しい戦争」が始まった。この戦争は「民間人の犠牲はださない」などと宣伝されているが、すでに国連関係のNGO団体事務所も爆撃され、死傷者がでている。そして何よりも空爆などによって、厳しい冬を前にしてアフガンの多数の民衆は家を追い出され、飢えと寒さの中でさまよっている事実を見逃してはならない。すでに五百万人を数えるという難民に加えて、この戦争でさらに数百万人の難民が発生しつつある。
 アメリカ帝国主義・支配階級は口先で「テロ犠牲者追悼」を掲げながら、この六千人にも及ぶ犠牲者の発生した無差別テロ事件を奇貨として、自らの軍事力の行使とグローバルな規模での覇権の確立のために奔走している。
 アメリカのいうようにビンラディン・グループがこのテロの実行者かどうかはいまだにわからない。アメリカはアフガニスタンのタリバン政権に無理難題を押しつけて即時・全面的な屈伏を要求しながら、それに応じないという口実を設けて爆撃を行い、戦争を開始した。あわせて半ば脅迫的な言辞をもって、アラブをはじめとする世界各国に米軍の報復戦争に対する支持・協力を要求している。
 日本政府に対してはアーミテージ国務副長官が、早々と柳井駐米大使に「ショウ・ザ・フラッグ」(日の丸を見せろ)と要求した。これに対してアメリカに駆けつけた小泉首相は「ウイー・スタンド・バイ・ザ・ユナイテッド・ステーツ」(我らは米国とともにある)と繰り返し、米軍の報復戦争に参戦するための「法的整備」を公約した。
 そして小泉首相は「このテロは国際社会の自由と平和、民主主義への重大な挑戦、人類全体に対する攻撃であり、毅然として対処する」「武力行使以外は何でも協力する」と声高に叫んで戦争協力の道を走り始めたのだ。

A違憲の参戦法で、報復戦争に加担

 政府はこの第一五三臨時国会に「米軍報復戦争参戦法案」(テロ対策特別法案=平成十三年九月十一日の米国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国連憲章の目的達成のための諸外国の活動に対してわが国が実施する措置および関連する国連決議等に基づく人道的措置に関する特別法案)と「自衛隊法の改定案」を上程した。
 与党はアメリカの報復戦争開始に合わせて、「土日でも審議する」などと言い放って異例・異常なスピードで審議を強行しつつある。二十日のAPEC会議で再度、ブッシュ大統領に会うことになる小泉首相にお土産を持たせるなどというデタラメな意図で、それ前に法案を成立させたいなどというのは、国の安保・外交政策を私物化するもので、とうてい許されることではない。
 この法案は、当初は「米軍等支援法」と呼ばれていたが、その後、名称を変えて略称を「テロ対策特別措置法」とし、法案の本質をあいまいにしている。しかし、この法案は米軍による報復戦争に自衛隊が協力・参戦する法案であり、米軍報復戦争参戦法そのものだ。
 首相は国会答弁でつぎのようなゆゆしいことを言い放った。
 「憲法の範囲内で何ができるか。行き着いたのがテロ特措法案だ。首相就任前から、集団的自衛権の行使を認めるなら憲法を改正したほうがよいといっている。しかし、いまは憲法を変える状況ではない。憲法前文と九条のすき間、あいまいな点を、国会議員の知恵を借りながら日本ができることをやろうと思っている。あいまいさは認める。法律的な一貫性、明確性を問われれば答弁に窮してしまう。すっきりした答弁はできない」と。
 これはまさに脱憲法行為の告白であり、完全に首相の憲法遵守義務違反だ。かくも憲法と国会が軽んじられた例は過去にみられないと言ってよい。
 法案が上程されるとアーミテージは「小泉内閣がテロとの闘いを支援する法案を閣議決定したのは、日米同盟にかなう措置で、偉大な国の証しだ」と述べ、「法案の無修正・早期成立の後押し」を行い、「五〇%、六〇%の措置はありえない。これは真剣な任務なのだ。十年前(の湾岸戦争)とは違い、日本が旗を見せてくれることを希望する」などと述べた。
 しかし、この米軍報復戦争参戦法は明白に違法・違憲の立法であり、日米安保条約とその体制、周辺事態法などをも大きく飛び超えるものであり、従来の日本の安保・防衛政策の大きな転換だ。これによって日本の自衛隊は、従来の「日本とその周辺」だけでなく、世界のどこにおいてもアメリカの引き起こす戦争に積極的に加担・参戦できることになる。これはとうてい「すき間」などというしろものではない。
 そしてさらに九日には、首相は自民党の山崎幹事長との会談で「(テロ特措法案は)現行憲法の枠内ではあるが、ぎりぎりだ。これ以上となれば、憲法改正をもって処するしかない」と述べ、山崎幹事長も「これ以上ということなら、憲法改正をしようじゃないか」と述べ、改憲の意図を露骨に表明した。
 この「特措法」が決まりもしないうちから、自衛隊はすでにこの米軍の報復戦争に参戦している。米空母キティホークが横須賀基地を出航するに際しては自衛隊艦船が「護衛出動」し、またインド洋にも向かっている。パキスタンにはすでに難民救援物資の輸送を名目に自衛隊の輸送機が飛び、調査のための先遣隊が派遣された。
 これら自衛隊の米軍艦船護衛は「集団的自衛権の行使」そのものであり、自衛隊のインド洋やパキスタンへの海外出動・日米共同作戦は、日米安保条約も、周辺事態法も想定していない違法なものだ。
 小泉政権はそれを承知のうえで、この自衛隊の出動を「防衛庁設置法五条十八項」の「所掌事務の遂行に必要な調査及び研究」にあたるものと、異常な拡大解釈論を適用して正当化するという居直りを見せた。
 先の憲法の「すき間」発言といい、この「調査・研究のための出動」といい、かくも政府によって法律が無視され、足蹴にされる状況は容認できない。

Bアメリカの報復戦争は国際法違反

 アメリカの今回の「報復戦争」発動は国際法にも違反している。
 「国連憲章」は国際紛争の平和的手段による解決を義務づけており、加盟国の武力行使を原則として禁止している。加盟国の「自衛権」の行使は、国連安保理事会が必要な措置をとるまでのあいだ、すなわち「平和にたいする脅威の防止および除去、平和の破壊の鎮圧のため、有効な集団的措置、集団的安全保障の措置をとる」までのあいだ行使が許されると限定しているもので、「報復戦争」などという西部劇的なリンチは、個別的自衛権論のどのような意味合いにおいても正当化されない。
 今回のテロにたいして国際社会が対処すべきは、厳格な調査による証拠にもとづいて容疑者を特定し、民主主義にもとづく国際法廷によって裁くことである。アメリカが一方的に犯人を決めつけ、それに異論を唱えるアフガンなどの諸国をテロ擁護国家、ならず者国家などと規定して、リンチ的な戦争による攻撃を加えることは許されることではない。アメリカの報復戦争は不当・無法なものであり、国家によるリンチ、国家による大量殺戮テロそのものだ。
 問題の根本的な解決には、こうした平和をめざす国際的な努力とあわせて、多くのテロの背景となっている、二十世紀に世界的規模で帝国主義が作り出した異常な貧富の格差、差別があり、それをなくするために系統的に努力し、あらたな二十一世紀を切り開く以外にない。

C米軍報復戦争参戦法

 今回提出された特措法は、自衛隊が報復戦争をする米軍(共同作戦する英国軍なども含む)にたいして、直接の武器弾薬の提供や、直接の発進準備のための航空機への給油などをのぞいて、武器・弾薬を含む全面的な補給・輸送・修理・整備・医療・通信などの兵たん協力活動、それらの軍への捜索・救助活動、さらに難民支援活動を可能にする法律だ。まさに戦後初めて自衛隊が実戦中の米軍に積極的に兵たん支援をすることになるのだ。
 従来の国連平和維持活動(PKO)協力法は、紛争終了後の復興協力が主目的にされてきた。今回の特措法が想定しているのは戦闘兵たんへの全面的な協力であり、これが参戦にあたることは国際法でも常識とされている。その意味でこれはまさに戦争に不可欠の活動であり、軍事力の行使であり、参戦そのものだ。
 憲法は「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と定めている。法案が憲法の原則を真っ向からふみにじろうとするものであることは明白だ。
 またこの米軍戦争参戦法では、自衛隊が活動できる範囲に「他国の領土・領域」が加えられ、まさに地球的規模で参戦できるとしたのだ。周辺事態法の時には自衛隊の活動範囲は「日本領域」と「後方地域」すなわち「戦闘行為が行われていない日本周辺の公海及びその上空」とされていた。当時、政府は憲法第九条との関係で、違憲ではないと弁明するために「後方地域」を武力行使と一体化するおそれのない地域と説明した。
 今回は「他国の領域内」が含められた。まさに小泉首相がいうように、「危険をおかして自衛隊を派遣する」のであり、「犠牲も想定される」特措法なのだ。これに政府は「戦闘が行われていない、将来も想定されない」地域という限定を付けているが、そのような地域が戦闘地域に急変することは容易にあることであり、まして「テロとの戦場」は無制限の地域だ。政府のいう「限定」はなんらの意味をなさない。
 これらの危険な立法が二年の期限付きと定められているが、延長も可能とされており、成立すれば事実上、期限なしとなる可能性が大きい。
 在日米軍・自衛隊の施設などに対する警護出動を可能にし、さらに自衛隊による情報収拾活動をあらたに規定し、その際の自衛隊の武器使用の種類ま範囲が拡大され、事実上無制限に拡大されている。これは自衛隊の治安出動の要件を大幅に緩和するものだ。あわせて防衛機密の漏洩への刑罰も規定された。
 アメリカが開始した戦争を中止させるための世論形勢に全力をあげなくてはならない。
 臨時国会での自衛隊の米軍報復戦争参戦法を阻止しよう。
 次にくる憲法改悪を絶対に阻止しよう。


図書紹介

 懲戒除名<非行>弁護士を撃て

       
著者・内田雅敏(弁護士)  発行・太田出版  四六版三二〇頁一六〇〇円+税

 少し長めの旅行があったので、この本をカバンに入れた。往路の車中で取り出して読み始め、しまいには帰路でも休まずに一気に読み終えてしまった。著者の筆力もさることながら、「小説よりも奇なる事実」の展開の面白味がある。コマーシャル風には「実に面白い。面白すぎる!」とでもいうところだろうか。
 著者の内田雅敏弁護士(以降、敬称略)は「敗戦の年に生まれて、学生時代にベトナム反戦運動や全共闘運動に参加、卒業後、いろいろあり、結局弁護士となった」(自己紹介)人で、人権派・社会派弁護士として知られている。PKO法闘争につづいて行われた九年前の参議院選挙東京選挙区で、当時の連合と社会党が右派と目されていた森田健作(のちに自民党に入党)を担いだことに反発した市民運動や社会党の一部が広範に連携して内田を候補に立ててたたかった。当選はできなかったが大善戦をした。この選挙は東京の市民運動のひとつの記念碑となった。
 本書で書かれている内田弁護士の足かけ八年に及ぶ「非行弁護士との闘い」はそのあと、まもなく始まった。
 本書のタイトルの「懲戒除名」は、内田が「法律オタク」で、妖怪のような悪徳弁護士・稲山信実と闘い、ついに弁護士会がその稲山を「懲戒除名」処分にしたことからきている。一般には弁護士といえば社会的信用があり、正義の味方のような存在だと思われている。しかし、市民運動界隈では一部の弁護士に対して「人権派弁護士」などという呼称が使われるように、人権を守るために闘わない弁護士、金儲けのために奔走したり、ワルとつるんでいる弁護士、資本や権力の手先になって労働者・市民を弾圧する弁護士などなど、悪徳弁護士が相当いる。内田のような「人権派」弁護士はカネにもならない仕事をたくさん引き受けて、いそがしく駆け回る。私たちの運動経験から考えても、本当の護民官的弁護士はそう多くはないようだ。
 本書で別の除名された悪徳弁護士が言ったことが紹介されている。「人間誰しも欲望がある。……弁護士だって皆同じですよ。弁護士も一万五〇〇〇人からいるんですから、まあ一〇人くらいは……」と言った。このあとに「悪い弁護士もいる」とつづくのではなくて、「一〇人くらいは立派な人もいますが、あとは皆稲山氏と同じようなものですよ」と言ったそうだ。
 弁護士のワルはたちが悪い。とくに稲山は「法律オタク」だ。内田ははじめの頃は稲山にみごとにしてやられる。やられてからの内田の闘いはあとで「リベンジだった」と言っているようにすさまじい。学生時代の活動家仲間や知人たちは、この歳になるとそれぞれの分野でそれなりに力をもっている。これらの人脈を動員して闘う。だが何かと話題になる「突破者」の宮崎学などは、ある時は共同戦線を組んで役に立つかと思うと、突然、見事に変心し裏切る。内田はこれらの戦線のほころびを繕いながら、一見すれば節操の限度を踏み越えたかと思うほど、主要矛盾をつかみ、敵をしぼり、孤立させ、統一戦線を構築し、懸命に闘う。敵陣営の矛盾を利用して、分断作戦にも取り組む。時には裁判官や検事や相手側の弁護士も使う(?)。そして内田の闘いぶりに、この連中がそれなりに感動している面がある。それは真剣なのだろうけれども、内田はこの闘いを何か面白がっている面があるようだ。この闘いの中で内田は学生運動家がそのまま弁護士になったようで、ひとはそれを「一途な」などと皮肉をこめて言うかもしれない。正義派の弁護士・内田の真骨頂が見える。
 この闘いは同業弁護士の悪徳への怒りに支えられた、内田のいう「リベンジ」であり、報酬を期待しない闘いだから、勝てたのではないかと思う。かつて共産党の徳田球一は「報いなき献身」というようなことを言っていたし、西郷隆盛も似たようなことを言った。「無欲」ほど強いものはない。内田との闘いをふりかえって、稲山が「内田が普通の弁護士だったら、金でとっくに解決した。奴は狂犬だ」と言っている。この言葉は社会派弁護士としての勲章だ。
 本書で内田はいう。「八〇年代の弁護士懲戒件数は月間平均一件である。ところが、これが九〇年代に入ると平均一・五から二件、とりわけバブル経済崩壊以降の平均件数は三・五件と急激に増えている。バブルは経済の混乱をもたらしたのみでなく、人心の荒廃を招いた。弁護士もまた例外ではなかった」。「空前」の悪辣弁護士の稲山はこうした時代に蠢動し、内田はその妖怪に挑んだ。
 稲山は時価百億以上の不動産を持つ二代目のボンボン社長の林田に食いつき、会社の実権を握り、その資産を法律の知識をフルに利用してシャブりまくった上で、放り出した。社会党系の中小企業団体の紹介で相談を受けた内田は、当初は軽く考えて引き受けたが、稲山の前に連戦連敗の憂き目にあう。「緒戦完敗」(第一章)。林田は軟弱だし、彼の家族は稲山に手玉にとられている。形勢はまったく不利だ。
 それからの内田の闘いは「反撃への準備」(第二章)。そして「いざ、反撃へ」(第三章)。「被害者同盟の成立と内部分裂の危機」(第四章)。「形勢逆転」(第五章)。「稲山陣営分裂!」(第六章)。「追撃、また追撃」(第七章)。「勝者なき闘い」(終章)と書きつがれる。
 ハラハラドキドキと引き込まれながら、内田の「時代劇」は勝利に終わる。内田らの闘いは、稲山を「塀の内側」にブチこめなかったとはいえ、明らかに勝利だろう。「一巻の終わり、メデタシメデタシ」だ。
 ところが「終章」では内田自身にこの闘いの意義の評価についての躊躇が見える。友人のSの手紙を引用して「稲山というひとりの悪徳弁護士を社会から追放したとして、そこにどれほどの意義があるのかという思いを禁ずることができません。せいぜい法曹版『遠山の金さん』『水戸黄門』といったところではないでしょうか。不正を憎む貴兄の感性に敬意を表しつつも、このようなことに貴兄の貴重なエネルギーが、しかもこれほどまでに注ぎこまれるのは正直言っていささか口惜しい気がします」と言わせている。内田はそれに答えて「弁護士という職業の性だし、私の性格だ」と言い、夏目漱石を引用して「世の中に片付くなんてものは殆どありやしない」とつづけ、「この物語に勝者はいない」と締めた。
 しかし、内田さんよ、われわれの闘いのひとつひとつはそういうもんじゃないか。一人一人の生きざまだってそんなもんだよ。長い人類史からみたら、奔流のなかの小さな泡ぶくのひとつにすぎないさ。だが、それが積み重なって歴史を形づくっていることもまた事実なのじゃないか。(高)


KODAMA

同時多発テロ事件に思う

     
東京・労働者 山田道美

 米国に対する同時多発テロ攻撃に対し、米国は報復だ、戦争だと声高である。世界の動きも日本を含めて肯定的だ。
 だが、色々書かれ、かつ見聞きする論調に事件の理由を考えようとする意見は極端に少ない。テロが現実に起こる原因を取り除くような社会を作ることを忘れてはならない。
 国連憲章では、安全保障理事会が国際の平和と安全に対する脅威と認定すれば武力による強制措置をとることができることになっている。
 米国の武力行使が自衛権の発動に当たるとは考えられないので、国連決議なしに米国が武力行使をしたら国際法違反となると思う。国連安保理は、テロ非難決議の中で「あらゆる必要な措置を」取る準備があるとしているが、措置を取れるのは国連であって米国ではない。また実際に必要な措置を取るには新たな決議が必要になる。 
 米国が、武力に訴えず、戦争に発展することのない解決案を模索するよう日本は説得すべきだ。これが、日本国憲法の精神とも合致している。
 
     …………………………

小泉純一郎総理大臣殿

          K・A


前略
 私はオイルマンの家族として十年近くアブダビに住んでいた者です。
友人も多数います。
 この度の事件については、非常に悲しく悔しい思いをして居ります。
犠牲者並びにご遺族の方々に心からの哀悼の意を表します。

 総理!
 米国はなぜ、これほど激しい憎しみをかったのでしょうか?
 私は米国をはじめとする関係大国の対アラブ政策がアラブの底辺市民の反感をかい、それがテロ行為の素地となっていると経験上実感しています。
 これらの問題を点検することなく、即、報復行動とは論理の飛躍ではありませんか?
 報復という大義のもとにあっても戦争は人を殺すことです。戦争の犠牲者は常に弱者であり、一般市民なのです。
 平和裏に紛争を解決するためには外交努力が必要と考えます。
平和解決への外交努力が何もなされぬまま戦争協力を約束するということは政治の常識とは思えません。
 尚、テロ犯罪の捜査は軍隊ではなく司法の手にゆだねられるべきと考えます。
 総理!
 今こそ、わが国の平和憲法の理念を世界に広める運動が必要であります。
 平和憲法をなし崩しに改悪する「米軍に対する協力法案」とか「自衛隊法の改正」に反対します。


複眼単眼

日米政府のダブル・スタンダード  難民を追い出す日本政府

 パレスチナ問題の国連決議を一貫してふみにじってきたイスラエルにたいして、米国が「制裁」をしたことがないことは知られている。アメリカ政府は国連の経費分担金もずっと滞納していたのを、こんどのアフガン問題を前に、国連を利用するために、急拠、一部納入したという。アメリカのご都合主義のダブル・スタンダードは明らかだ。
 ところで日本政府のダブル・スタンダードの典型例がある。
 いま政府は自衛隊をパキスタンにまで派兵しようとしている。そのための「米軍戦争参戦法」をいま国会に上程中で、異例のスピードで強行採決する姿勢だという。この法律で、憲法をふみにじって米国の戦争に本格的に協力する。小泉政権は、この許しがたい違憲・違法行為を「難民支援の人道的措置だ」などとして正当化している。あたかも水戸黄門の印篭のように「難民支援」といえば何でも許されるかのようだ。
 十月八日夜、衆議院議員面会所で開かれた緊急集会で、アフガン難民の難民認定の運動をすすめている青年による報告があった。
 アフガニスタンのタリバンによる国土制圧の過程で、一九九八年八月にシーア派の人びと、とくに少数民族のハザラ人の大量虐殺が行われ、多くのハザラ人が国外に逃れた。
 日本にも昨年から今年にかけて、数十名から百名近くのハザラ人が来日し、難民認定を申請している。しかし、日本政府はそのうちの数人を難民認定しただけで、あとは不認定としてきた。中には強制送還命令を受け、強制収容所に収容され、仮放免の際には三〇〇万円もの保証金を払わされ、難民認定を求めて裁判をしている人びともいる。
 米国でのテロ事件以降、政府によるテロ防止キャンペーンが繰り広げられてきたが、十月三日、突如、アフガニスタン人ら十二名が不法入国などの容疑で東京入管局に拘束され、強制収容された。
 この大半がハザラ人であり、タリバン政権とは対立関係にある人びとで、米国でのテロ事件以前に難民申請をしていた人も含まれていた。テロと関係のないアフガン難民を拘束したこれらの措置は大失態というべきものだ。にもかかわらず東京入管は、彼らをアフガンに強制送還する方針と言われている。
 これは米国でのテロ事件に関連して、アフガン難民を調査せよとの政府指示によるもので、いまこれらのアフガン難民は一斉に呼び出しをうけているようだ。タリバンのアフガンから逃れて来た難民を、難民が大量発生しているアフガンに強制送還するとは、驚くべき非人道的措置だ。
 「難民支援」と称してパキスタンまで自衛隊をだす日本政府が、国内ではアフガン少数民族の難民申請すら認めず、強制収容したり、迫害したりしている。
 発言した青年は「これが欺瞞でなくてなんでしょうか」と怒りをあらわにしていた。(T)