人民新報 ・ 第1047号<統合140> (2002年1月15日)
  
                                目次

● 戦争の年となるか、反戦の年にするか 有事(戦時非常)法制阻止へ

● 2002年 社会主義と民衆運動の世紀の創造にむけて、団結し、ともに前進しよう  

     暴虐を抑止する市民の連帯を
           小原早苗 (共生のための尼崎政治センター事務局)
     今年こそ、戦争への迷路を平和の大道にチェンジしよう!
           中北龍太郎 (弁護士、関西共同行動)
     競争社会より共生社会の創造を
           前田裕晤 (大阪全労協議長)
     「人民」の「新聞」
           増山太助
     原発警備に機動隊とパトカー
           柳田真 (たんぽぽ舎)
     護憲勢力の結集、労働運動の活性化を
           吉岡徳次 (全港湾労組顧問)
     日韓民衆・政治犯救援運動の志
           吉松繁 (日韓民衆連帯全国ネットワーク代表世話人、王子北教会牧師)

● NTTの大合理化・リストラ 経営の責任を労働者に転嫁するな

● 「自治労本部の不正事件」に思う 「自治労の再生」をめざして

● 東京・南部地域で労働者・市民がアフガン反戦の行動

● 資料
   いわゆる「不審船」への射撃・沈没事件について
   海上保安庁の違法な武力行使と政府の緊張激化政策に抗議する声明
                        (日韓民衆連帯全国ネットワーク)

● 「女性国際戦犯法廷」ハーグ最終判決報告集会
      ついに裁かれた日本軍「慰安婦」制度 昭和天皇と東条英機ら9人の指導者に有罪判決

● 残侠伝(其の壱)
           組合新聞の改革に着手

● 複眼単眼
           「年賀状」で語ること 語られたこ




戦争の年となるか、反戦の年にするか
                 

                      有事(戦時非常)法制阻止へ


 「ビンラディン氏を捕捉する」ことを大義名分に開始されたブッシュらのアフガン侵略戦争は、以来三ヵ月余、その目的は達成されず、空爆や戦闘はいまだにつづいている。いまブッシュは戦火をさらに他国へも拡大することで、戦略のほころびを繕おうとしている。小泉政権はブッシュに呼応しながら、自らの経済危機の克服政策の失敗の責任を転嫁するかのように、戦争遂行可能な国内態勢づくりに突き進もうとしている。
 二十一世紀の二年目、二〇〇二年は人びとの平和への期待に真っ向から逆行する戦争と動乱の時代の様相をさらに色濃くしている。

ブッシュの新たな「戦争の一年」宣言

 昨年末、ブッシュ米大統領はビンラディン氏とその組織「アルカイダ」との戦いについて「二〇〇二年は他の場所でも捕捉を続けるので、戦争の一年になるだろう」「戦いが終わるのは唯一、アメリカと自由の大義が勝利した時だけだ」と宣言した。
 そして必要とあれば各国に米軍の特殊部隊や軍事顧問などを積極的に派遣することを確認、さらにこともあろうに「私は昔から野球人だ。スコアをつけるのが好きだ。だれが結果を出しているか、出していないかを見るのが好きだ」などと語り、同盟国その他の国々の指導者に、対アフガン戦争とさらにグローバルな規模への拡大を企てる対「テロ作戦」で実績を上げるよう迫った。
 かくも露骨な覇権主義的な言説は、米ソ冷戦下の歴代米大統領ですらはばかるほどのものだ。
 アメリカは最新型の爆弾を大量に投下し、焼き尽くし破壊しつくす作戦でアフガニスタン内戦に介入し、タリバン政権を崩壊させ、カブールに「北部同盟」を中心とした傀儡(かいらい)暫定政権を発足させることに成功した。しかし、目的としたビンラディン氏はいまなお逮捕できず、空爆と戦闘をやめることができない。アフガンの人びとははいまだに戦火と飢えと寒さによる生命の危機のさ中にある。
 それのみか、ブッシュ政権はすでに東アフリカのソマリアの内戦にたいして、アルカイダのメンバーがいるとなんくせをつけて特殊部隊を投入し、米英仏軍共同の軍事偵察を強めている。さらにフィリピンの内戦にも介入しつつある。イラクや北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への挑発が繰り返されている。イスラエルはこれに乗じて「テロ撲滅」を大義名分にしてパレスチナへの軍事攻撃を強めている。
 いまやアメリカ帝国主義は暴君のごとく、かってきままに軍事力を使いまくって、他国を軍事攻撃している。「われわれの側につくのか、あちらにつくのか」「ショー・ザ・フラッグ」と。ブッシュのこの二者択一の要求に正面から異議を申し立て得る国は、もはやほとんどなくなったかに見えるが、その実、年明けの上海協力機構特別外相会議共同声明に見られるように、中国やロシア、そしてアラブ諸国や欧州各国の不満も高まり、「反テロ同盟」の内部の亀裂は拡大している。

戦争法体制の完成へ走る小泉首相

 ブッシュ政権の成立を前後してアーミテージ現米国防副長官らの「提言」や、ランド研究所の「新提言」などアメリカの国防政策関連のシンクタンクが、日本に有事法制の確立や憲法改定を要求してきたことは広く知られている。
 小泉首相はこれに積極的に追随することで、アメリカの「報復戦争」を正当化し、第一五三臨時国会での「参戦三法」など憲法違反の立法措置までとって自衛隊を戦場に派遣した。小泉内閣成立以来の日本外交はかつてないほど対米一辺倒に単純化された。年末の「不審船事件」とその対処もこれらの路線の延長上に進められた、武力一辺倒の対応だった。
 そして小泉首相は今月からの第一五四通常国会では「(有事法制を)真剣に議論し、できるところから法整備を進めたい」(首相年頭会見)と言明し、国内の戦争体制の整備を急速に進める決意を述べた。
 日米安保体制を基軸にした上で、かつての周辺事態法、昨年末の「参戦三法」など、世界大に拡大することに成功した日米軍事攻守同盟体制の合法化と、国内的にその戦争体制を準備することを合法化する有事(戦時非常)法制によって、支配層は国の内外両面での戦争法体制を完成させることになる。
 第二次大戦後の日本社会は最高法規たる憲法の平和主義法体系と、全く対立する日米安保法体系の併存・葛藤という、日本帝国主義の敗戦とアメリカの対日占領に端を発した特殊な二重の法体系のもとにおかれてきた。しかしこの有事(戦時非常)法制によって二つの法体系の争闘は安保法体系が全面勝利する体制となる。有事(戦時非常)法制の成立は、長い間、日本の支配層が待ち望んできた特殊な国から「普通の国」への移行の内外両面からの法的な完成だ。
 もしこの企てが成功すれば、残されるのは憲法の明文改憲のみだ。だからこそ中山太郎元外相らの憲法調査推進議員連盟は、この通常国会に「憲法改正国民投票法案」と「国会法改定案」を上程し、改憲の道を掃き清めようとしているのだ。

有事基本法・有事個別法の制定ねらう小泉政権

 有事法制問題とは中谷防衛庁長官がいうような「今から有事法制を進めますなんて、恥ずかしくて外国に話せない」とか「(政治が議論を)いままでさぼってきた」問題だなどということでは全くない。
 もともと一九七七年、福田内閣当時に着手した「有事法制」の研究は「防衛出動事態における自衛隊の行動にかかわる法制の研究」であり、「問題点の整理を目的とし、立法の準備ではないという前提」がついていた。これは憲法違反問題と直接関連するからこそ、福田内閣とはいえこのような限定を付けざるをえなかったのだ。
 昨今の政府や防衛庁関係者の発言はこのような歴史経過や憲法問題をまったく無視したものであり、きわめて乱暴なものだ。
 くわえて、最近の有事法制準備では「自衛隊の行動の研究」のみならず、「米軍の行動にかかわるもの」や「国民の生命、財産保護など」も直接の検討対象に加えられた。防衛庁所管法令(第一分類)、他省庁所管法令(第二分類)、所轄省庁が明確でないもの(第三分類)に分けてきた研究では、第一と第二はすでに中間報告もだされ、第三分類だけがまだ発表されていない。小泉首相は第一、第二分類を先行させて法制化をはかるという防衛庁などの意向に対して、「『有事』は戦争だけではない。テロも不審船や拉致問題もある。第一、第二とか専門的な用語ではなく、国民が率直に理解できるよう、省庁別、分類別にこだわらず、総括的に、できるところから整備していく」と語り、反テロ、反北朝鮮キャンペーンを促進剤にしながら有事法制の完成をねらっている。
 これらの法制化の実際の進め方については、最近、山崎拓自民党幹事長が有事法制の基本理念などを明記した「基本法制定」にとどまらず、テロへの対応も含めて個別法の整備もいそぐべきだと主張し、より全面的な法制化を主張している。
 内閣官房のプロジェクトチームは通常国会召集の前日、一月二十日には中間報告をまとめる態勢だ。これにたいして民主党の鳩山由紀夫代表は「緊急事態における法整備がなされていないのは、国会議員の怠慢だ。平時に有事法制、緊急事態法制の基本的な姿を作り上げていく議論に当然、われわれも参加すべきだ」と述べ、政府・与党側の議論に呼応する意向を表明した。

二つの道の岐路

 小泉は「想像を超えるような不可解な意図と装備、能力を持ち、日本に危害を与えるかもしれないグループに対し、どういう措置を平時から考えておくかは大変重要で、政治の責任だ。有事法制は整備しろとの声の一方、強い反対もあった。備えあれば憂いなしで、国民に不安を与えない法的な面の整備と各省庁の現実の対応が必要だ」と述べ、自らの進める「有事法制」制定への早期着手を正当化した。だが小泉の言う「軍事的備え」によって「憂いなし」とする路線は、根本的に日本国憲法の精神に反するものであり、十五年戦争とその反省のもとで選択した新しい平和主義の路線とは真っ向から反するものだ。日本憲法では「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と確認したのであって、アメリカや西欧列強とは全く異なる対外路線を選択したのだ。いま問われているのは、この二つの進路の選択に他ならない。
 小泉首相は時折、憲法の条文の一部を摘み食いするが、そうしたまやかしは許されない。小泉首相は国会での与党の安定多数と民主党の一部の議席、マスコミ全体の権力翼賛状況、および世論調査での多数の支持を背景に、この悪法・有事法制と憲法改悪の道を強行しようとしている。
 事態はきわめて急だ。政府・与党と一部野党の有事法制や憲法改悪の危険な動きを暴露しながら、一刻も早く広範な闘う態勢を作り上げなくてはならない。


2002年

   
社会主義と民衆運動の世紀の創造にむけて、団結し、ともに前進しよう  


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暴虐を抑止する市民の連帯を

       
小原吉苗(共生のための尼崎政治センター事務局)

 アメリカの戦争政策は、アフガニスタンからパレスチナへと戦火を拡大させています。いまや、世界最大のテロ国家はアメリカといえます。たった何百票差の大統領選の結果から、こうした状況が生み出されたと考えると、私たち市民一人ひとりの政治選択の結果が、いかに大きいかを考えます。
 アメリカの暴虐を抑止する平和のため国際的な市民の連帯をつくり出すために、地域から共に闘いたいと思います。

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今年こそ、戦争への迷路を平和の大道にチェンジしよう!

       中北龍太郎(弁護士、関西共同行動

 二一世紀を平和の世紀にという希望は、テロと戦争の悪循環によって粉々に打ち砕かれてしまった。九・一一テロ事件による市民の犠牲、その悲しみを愛国心に収斂したアメリカ政府は、文明が野蛮を駆逐するという単純な二分法で、報復戦争に乗り出し、テロリストをかくまっているというそれだけの理由で、あっという間にタリバン政権を破壊してしまった。世界最強の国が世界最貧国に仕掛けた戦争によって廃虚と化したアフガンの瓦礫の上に立ったアメリカは、逆らうものはこうなるのだと力を誇示する。そして、アメリカは、対テロ戦争を世界のあちこちに飛び火させようと、今このときも計画を練っている。暴力の連鎖で成り立っているアメリカは、暴力の構造をより強めることで、世界をわが物にしようとしているのだ。こうした世界構造が露わになったのが、昨年だった。この暴力の連鎖を断ち切らない限り、世界の平和を達成出来ないことは明らかだ。
 こうした暴力の世界化に、小泉政権は、「果敢」に協力してきた。戦後初めて戦争に参加する暴挙にもかかわらず、小泉政権の下、国会は墓場のごとき静けさで戦争協力法を制定した。アフガン戦争は、日本の戦争する国づくりを一気に加速させたことは間違いない。有事立法制定、改憲の動きも、確実にスピードアップしている。日本も日増しに、暴力の連鎖にのめり込んでいるのである。
 戦争の危機は、確実に深まっている。だが、その先には、人類の破滅しかない。この絶望をなんとしても希望へと転回しなければならない。私は、平和憲法を武器に、市民運動、市民との絆を結ぶ地域政治活動、国政での闘いを三位一体のものとして展開して、戦争への迷路を断ち切り、平和を胎動させたいと願っている。共に、今年一年翔けぬけましょう

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競争社会より共生社会の創造を

       
前田裕晤(大阪全労協議長)

 新年を迎えたとはいえ、どの様な未来社会を目指すのかは全く混沌として、展望が築かれていない状況下では、「あけましておめでとう」の言葉は出てこないのが、私の心境です。
 国の内外、政党の左右を問わず混乱・混迷はピークに達し、戦争激動の二〇世紀の経験は残念ながら総括しきれないでいます。
 その結果、社会的価値観を市場原理、世界的な大競争時代に求め、弱者を切り捨て強者が生き延びる風潮を増加させました。
 世界人口の二割弱が世界の富の八五%を占有し、八割を超す多くの人びとは、日々の食事にも事欠く事態があります。
 この現実を無視して、先進諸国の価値観で現状を律するならば、承認できない人びとの、自己の存在をかけた抵抗闘争は後を絶たないと判断します。
 現に、わが日本の実態を見れば、企業は自己保身のため、合理化・リストラ、臨時・パート労働者の雇用、実は差別労働の常態化を計り、企業の社会的責任を放棄しています。
 しかし、この様な社会的不公正・不道徳の状況が何時までも続くとは思えません。社会の不満の爆発が出るのを想定しているのは権力・資本の側で、小泉の構造改革とは、民衆の反撃に対する資本擁護の準備策でしかありません。
 グローバル化、競争社会とは人間と社会を成立させる、公共事業までもが、利潤の対象物化され、鉄道、通信のみならず水道、清掃といった生活の基盤をなすものまでもが利潤の対象となる社会とは何なのかが問われるでしょう。
 職場の労働者を切り捨てる労働組合は、労働者管理機構でしかなく、労働者は労働組合に帰属意識を持つことは出来ず、個として対処せざるを得なくなり、その結果、労働者の連帯、仲間意識は完全に崩壊する結果になり、人間社会そのものを崩壊させます。
 競争社会でない共生社会を目指し、新たな社会価値観を求める運動を全力を挙げて努力してみたいと思います。

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「人民」の「新聞」

       
増山 太助

 『人民新報』という題字を見ると、私は、敗戦直後の読売新聞の労働組合が生産管理を断行して、、「われわれは読売新聞を人民の新聞にする」というアピールを発した頃のことを思い出す。
 そして、「人民の新聞とは?どのような内容にすべきか」などというような研究会をおこなったり、題字や本文を横組みにした試刷りを作って、読者の意見を聞いたりした。
 もともと、新聞は「人民のもの」であるから、官報でない限り、政府の提灯持ちをする必要はない。
 また、「戦時中」の新聞のように満州を「王道楽土」と美称したり、少年航空兵の美談を捏造して戦意をかり立てる必要もない。政治新聞といえども、自分たちの政治主張を強調するだけでなく、事態の客観的な報道・分析などにもっと努力をはらうべきではないだろうか。
 アフガンの問題がおきると、アメリカを通してその「アフガン問題」一本槍になり、日本の現実、日本の闘いからみた「アフガン問題」の記事があまりにも少ない。
 労働運動が沈滞していても、労働組合が「アフガン問題」をどのように考えているか。そういう記事がもっとほしい感じがする。
 アフガンの問題は、二一世紀の最初の大事件である。二〇〇二年は、この問題から何を学ぶか。その教訓の最大もらさずあげてほしい。
 「人民」の「新聞」の活躍を期待する。

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原発警備に機動隊とパトカー

       
柳田真(たんぽぽ舎) 

 ●中部電力の浜岡原子力発電(静岡県浜岡町)が安全系の重大事故を連続して起こした。
 原発の命づなといわれる緊急炉心冷却システム系の配管の破断と、つづいて原子炉の動きをコントロールする制御棒の駆動装置付近から放射能水が漏れた。中枢部での相つぐトラブルだ。
 ●十二月一日浜岡町で開催された、浜岡原発一号機の事故の分析講演会(静大・小村浩夫氏の講演)に出席したあと、中部電力浜岡原発への申し入れ行動に同行して、噂以上だと痛感した。 
 ●浜岡原発の前にはパトカーが二台と警官、中電の警備員、二重の鉄柵があり、その鉄柵の内側には静岡県警の機動車(大型バスの大きさ)というモノモノしさで二十四時間監視。周辺の住民は税金のムダ使いと批判しているという。「テロからの原発防衛」というが、空からの飛行機激突ならば守れるわけがない。
 根本はテロの原因をなくすこと、そして危険な原発、地震にとても弱い原発を早くやめることだ。
 東海大地震が切迫する中、日々放射能(死の灰)を生み出す原発をやめることこそ、二一世紀の最大の課題=人類史的な課題と思う。
 大事故が発生したあとで後悔しても遅い!

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護憲勢力の結集、労働運動の活性化を

       吉岡徳次(全港湾労組顧問)


 二〇〇二年の新年を迎えましたが、今年の年明けは大変厳しいですね。
 周知の通りアメリカのテロに対する報復戦争に日本も加担して、テロ対策特別法などの参戦法を制定、自衛隊の海外派遣という平和憲法無視の反動政治が横行しているのです。そして今年はさらにすすんで、憲法九条そのものの改悪する動きが強まっています。 
 一方、不況を理由に企業の大合理化で失業者は増大し、賃金をはじめ労働条件の切り下げ、それに医療制度の改悪など、その犠牲がすべて労働者や一般庶民に押しつけられています。しかし、残念ながら今の労働運動には、これをはね返す力はありません。
 したがって今年の重要な課題は、平和を守るための護憲勢力の幅広い結集と、企業の枠を越えた労働者の連帯による労働運動の活性化が痛感されます。新年に当たり「人民新報」のこれまでの諸活動に敬意を表すると共に、今後一層のご活躍を心から期待します。

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日韓民衆・政治犯救援運動の志

       
吉松繁(日韓民衆連帯全国ネットワーク代表世話人、王子北教会牧師)

 謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 皆さまとは一九八〇年の光州民衆蜂起・金大中氏を殺すな!在日韓国人七氏の死刑執行阻止百万人署名以来、日韓連帯運動をともに闘ってきました。
 在日政治犯全員の釈放を実現したいま、改めて大いなる感謝を申し上げます。
 また、九〇年代初頭からは、徐々にではありますが、韓国民主主義民族統一全国連合より連帯の呼びかけがあり、いま、日本の民衆による新たな連帯運動が活発化しています。
 私は、本年古稀を迎えますが、自分の身の丈にあった活動の舵とりをいたします。
 何卒、長年の活動に免じまして、小生のわがままをご寛恕下さいますよう心よりお願い申し上げます。 勿論、日韓民衆・政治犯救援運動の志は貫いて生きる決意でございますので、今後とも宜しくご鞭撻のほどをお願い申し上げます。


NTTの大合理化・リストラ

  
    経営の責任を労働者に転嫁するな

 第二電電・IT関連資本のNTTシェア独占状態を解体させる要求を代弁した政府・総務省の執拗な合理化計画提出要求攻撃の前に、NTT経営陣は十一万人の出向・移籍リストラを強行しようとしている。
 本来、NTTの赤字は経営無策の結果であり、責任は経営陣がとり退陣すべきことである。労使双方はこの要求に対抗し、協調主義路線の崩壊を救うため、労働者に「構造改革の痛み」の犠牲を押し付けようとしている。
 NTTは構造改革「新三カ年計画」として、グル−プ社員数二一万人中、十一万人をアウトソ−シング(OS)の子会社へ移し、このうち五一歳以上の社員約五万五〇〇〇人をNTTから退職させ、OS子会社に再雇用させようとしている。雇用条件は地場賃金と称して月額の一五〜三〇%の賃金カットと三通りの雇用形態を選ぶこととなっている。五一歳以下の社員は現在の賃金でNTTから出向し、五一歳からは同じ道がまっている。津田淳二NTT労組委員長は「雇用確保を重視した日本的な新しいワ−クシェアリングモデル」として、リストラとワ−クシェアリングは全く別物であるにも関らず、でたらめを正当化して、労組の存続に汲々としている。年収一八〇〇万円以上もの御用労働貴族は、生首を切らせない代わりに何でも合理化を受け入れてきた。合理化と引き換えに手当金の引き上げで協力してきた。
 これまでは「雇用か、賃下げか」で労働者を労使一体となって脅し、管理してきた。労働者も僅かばかりの手当額で黙ってきた。しかし、今回の合理化はその一線を越え、「雇用も、賃下げも」やるリストラ計画に進んで協力し、「雇用関係を交渉で積み上げてきたのに、白紙状態にすれば雇用そのものが難しいものになる」と、脅しで押し切ろうとしている。
 一月十六日が三つの選択期限日であり、「雇用形態選択通知書」に判を押して労働者から支店長に提出することで決定される。通知書の注意書には「本通知書の雇用形態の選択欄に○がない場合、並びに、本通知書の提出が期限までない場合は、満了型(現NTTに残る)を選択したものとみなします」「退職日は平成十四年四月三〇日とする」「繰延型及び一時金型を選択する方は、本通知を持って辞職願に代えることとし、後日会社から辞職承認通知書を交付します。なお、辞職承認後の本通知の撤回はおこなえません」とある。個人面談では既存会社の選択意思を示すと「全国配転でいいんだな」とか「ノルマを追求する部署へ配置される」といって脅し、繰延型及び一時金型を選択させるように誘導している。結局はOS会社に行くしかないように仕向けている。 五月一日からは繰延型及び一時金型を選択した社員は現在の仕事をそのまま継続し、勤務場所も同じとしているが、NTTから切り離されてしまえばどうなるかわからないと労働者は疑心暗鬼になっている。OS会社設立資金削減と会社形態まで手がまわらず、とにかくNTTから社員を切り離すことが先決と考えていることが見て取れる。
 OS会社以降の労働条件は三年毎に経営を見直すことになっている。NTT業務の委託費でOS会社を運営することになるのでノルマ増大と第二、第三のリストラは避けられないだろう。さらに今後の退職金、一時金は成果、業績主義を反映させた差別賃金が導入される。今冬の一時金は二・六ヶ月であったが、査定が導入され大多数の労働者はCランクにされ、実際は二・四ヶ月にされた。カットした分はA、Bランクに上乗せ配分され、一〇万から三〇万の差がでた。
 退職希望者数は十二月で一万六四〇〇人になる模様。NTTはこのリストラによって、物件費コスト、人件費コストによる削減施策で、二〇〇二年度の収支改善効果は(人的コスト一〇〇〇億円、各種経費削減一六五〇億円)合計二六五〇億円を見込んでいる。
 職場では早いところは十二月から雇用形態選択の意思確認を個人面談で開始している。労働者の主な心配は家のロ−ン返済と教育費である。会社、組合に相当不満を持っているが、面とむかっては言えてない。面接管理者との争いをさけ、早々とOS会社を選択している人もいる。 選択回答を期限まで延ばす牛歩戦術でやるのがとりあえず今やれる闘いだ。OS会社での処遇によって不満の圧力はさらに増大するだろう。(NTT労働者)


「自治労本部の不正事件」に思う

         「自治労の再生」をめざして


 昨年九月三十日、各マスコミ紙により自治労共済関連会社に関して「裏金疑惑」が報道され、十月一日には「右翼との関わり」などが報じられた。更には十月十日には別の関連会社「UBS」をめぐる不正経理で自治労特別執行委員を含む三人が逮捕されるにいたった。そして、四〇億円ともいわれる「借入金」の問題等々、およそ労働組合活動とはかけ離れた事実が次々と明らかになり、私たち組合員を驚かせ、そして失望させた。
 十二月には、元自治労委員長等が脱税で在宅起訴され、更には元委員長の個人的流用(=横領)問題まで明るみとなった。
 これまで明らかになった事実は、東京地検の家宅捜査や国税当局の査察、各マスコミの報道によってであり、自治労としての内部浄化作用が働いた結果ではない。
 社会的正義や公正を求め続ける労働組合であり、一〇〇万組合員を擁し、日本国内における最大の労働組合である自治労を支え、全国の地域で活動してきた組合員にとっては裏切られた思いである。
 自治労本部は「真相究明委員会」を発足させ、真相を究明し組合員に報告し、当事者への処分を行い、再発防止のために「再生委員会」を発足させ、組合員の信頼を回復させるとしている。
 これらの対応は当然のことであるが、依然として真相究明のスピードは遅い。一月末に予定されている臨時大会までに間に合うのかどうか、今のところ疑問である。
 私たちの単組は真相究明されるまでは、自治労本部に納める特別闘争資金の納入を留保する決定をした。県本部単位でも同様の動きがある。いくつかの県本部では、組合費の納入を留保する動きさえある。全国的に自治労脱退の支部が増えてきているという。
 今回の一連の不正事件を見るとき、「総評」が解散し、後に「連合」が発足するとき、「連合」に属するのか、日共系の「全労連」に属するのかで各単組、支部で激しい組織戦争が起こったことを思いだす。おそらくはそのために「組織対策費」という裏金が大量に必要となったであろうし、それが今日の不正を増加させた要因ではあっただろう。今回の事件は皮肉にも、日共系から組織戦争をしかけられるキッカケにもなりかねない。
 私たち自治労組合員としては、何をしなければならないのか。自治労本部あるいは県本部までを、ただ批判するだけではすまない。
 地域で働く仲間とともに闘い、行動していくことによってはじめて失った自治労への信頼を取り戻すことが出来るだろう。
 「自治労の再生」へむけ、私たち末端から闘う体制を創り出していこう。(自治労東京組合員)


東京・南部地域で労働者・市民がアフガン反戦の行動

 十二月十六日、東京・大田区内で、「日本は戦争をやめろ!戦死者を出すな!12・16南部地域行動」が六〇名の参加者で取り組まれた。主催は、港区・品川区・目黒区・大田区で日頃から市民運動・労働運動を進めている個人、団体による実行委員会。
 連日連夜、アメリカ軍の「報復」空爆によって多くの犠牲者、避難民の流出が続き、飢餓が拡大している。自衛隊の軍艦のインド洋への派兵。このような戦争、爆撃と飢餓によるアフガニスタン民衆の殺りくを一刻も早く止めさせ、避難民に食糧を届けることが、今私たちに求められている。以上の趣旨によって、集会、デモ、情宣、カンパ集めという一連の行動が、日曜日の昼から夕方にかけて取り組まれた。
 集会では、はじめにアフガニスタンの前線を取材したジャーナリストの新島洋氏が、スライドを使って報告を行った。北部同盟軍の前線の状況、米軍の無差別爆撃の傷痕が避難民の、とくに幼い子どもたちの生々しい表情とともに語られた。ニューヨーク市民の命もアフガン民衆の命も同じ、「報復」は「報復」を引き起こすだけだと語り、日本政府の派兵についても批判。アフガン民衆の視線に立った支援の必要性を強調する。
 集会終了後、蒲田駅前の買い物客で賑わう繁華街をデモし、アピールを繰り返した。
 その後、駅前でジョン・レノンの「イマジン」をバックに、ビラ撒きとカンパ集めを行う。比較的関心も高く、とくに中・高校生くらいの若い人たちのカンパへの協力が目立った。一時間余りで、二二、六七四円が寄せられた。このカンパに賛同金などから経費を差し引いた金額をプラスして総額四五、〇〇〇円をペシャワール会「アフガン命の基金」に送られた。(東京南部通信員)


資料

 
いわゆる「不審船」への射撃・沈没事件について

  海上保安庁の違法な武力行使と政府の緊張激化政策に抗議する声明
 

                        
日韓民衆連帯全国ネットワーク

 市民団体「日韓民衆ネットワーク」はいわゆる不審船事件に際して、政府と海保への抗議声明を出した。以下はその要旨。(要約・編集部)

■違法な武力行使

 十二月二二日、東中国(「シナ」)海の公海上において、海上保安庁の巡視船による国籍不明の船舶への武力行使が行われ、中国の排他的経済水域内で銃撃戦の末、当該船舶が沈没、海上に投げ出され、漂流していた十五名前後とされる乗員は海上保安庁の船舶による救助もなされないまま、二名が遺体となって収容され、残る人員は行方不明となっている。
 海上保安庁は、今回の当該船舶に対する停船命令について「漁業法違反容疑」で行ったとしている。しかし、自衛隊・海上保安庁自身が「著しく漁具が少ない」とする当該船舶が、日本の排他的経済水域内で違法操業していたと疑うに足る根拠は何もない。まして領海を侵犯したわけでもない。
 それにも関わらず海上保安庁は、停船命令に応じない当該船舶に対して、先に成立した改定海上保安庁法の武器使用権限が領海内に限られていることから、苦しまぎれに「警職法第七条の準用」を盾として、「数度にわたって数百発。そのほとんどが命中」(『朝日新聞』十二月二三日)とされる船体射撃を繰り返した。これにより当該船舶は被弾、火災まで発生している。これらは法の恣意的拡大解釈に基づき、明らかに船体・人員に危害を及ぼすことを意図した違法な武力行使である。銃撃戦はこの後、その結果として生じたものである。
 「海洋法に関する国連条約」は公海上の通行の自由を大原則としながら、第百十条で、公海上でも海賊行為や奴隷取り引き、無許可放送、無国籍船等に対しては臨検の権利を認めている。しかし、その場合も「疑うに足る十分な根拠がない限り、正当と認められない」としており、当該船舶が無国籍船と疑うに足る十分な根拠がないことを含め、いずれにも当てはまらない。
 今回、政府・海上保安庁が根拠としている「漁業法違反容疑」について、同条約第七三条は、排他的経済水域内において、沿岸国の「生物資源を探査し、開発し、保存し及び管理するため(注・この限りで)の主権的権利の行使」を認め、乗船・臨検・拿捕及び司法手続きを含めて取ることを認めているが、その場合でも「拿捕された船舶及びその乗組員は、妥当な供託金の支払い又は他の保証の提供の後に速やかに釈放される」「排他的経済水域における漁業法令の違反に対する沿岸国の刑罰には、関係国による別段の合意がない限り拘禁を含んではならず、また、他のいかなる体罰も含んではならない」とされる軽微なものであって、船体射撃・火災炎上などを惹起させる
ような武力行使は問題外である。
 しかも海上保安庁の巡視船は、沈没により漂流している当該船舶の乗員の救助も行っていない。これは海洋法に関する国連条約第九七条(援助を与える義務)の明白な違反である。

■東アジアの緊張高める「戦争国家」体制づくりのための挑発行為

 そもそも今回の事件の発端は、十二月十八日の米軍の偵察衛星情報による自衛隊への通報であるとされ、その後、無線交信の傍受、海上自衛隊のP3C哨戒機による当該船舶の発見、海上保安庁への通報となり、海上自衛隊はイージス艦まで急派している。それは軍事オペレーション以外のなにものでもない。日本政府には、これらのすべての経過を公開すべき義務がある。
 今回の事件は、日本政府・小泉政権が「戦争のできる国家」づくりに突き進む中で、意図的に作られた事件といわなければならない。この事件を、来年一月に召集される通常国会での有事法制成立や、憲法九条改悪を最大のターゲットとした国民投票法案成立のために利用させてはならない。
 日本政府は、軍事的緊張を高めるすべての行為を中止し、北朝鮮との関係改善を図り、朝鮮侵略・植民地支配への謝罪・補償を基礎とした日朝国交正常化を速やかに行え!

二〇〇一年十二月二八日


「女性国際戦犯法廷」ハーグ最終判決報告集会

  
ついに裁かれた日本軍「慰安婦」制度 昭和天皇と東条英機ら9人の指導者に有罪判決

 二〇〇〇年十二月に東京で開廷された日本軍性奴隷制度を裁く「女性国際戦犯法廷」の最終判決が、十二月三〜四日、オランダのハーグで出された。判決は当初、昨年三月の予定だったが、詳細、厳密な検討の結果、二四五頁、一〇六六パラグラフの膨大な判決文となり、歴史に残る国際文書となった。
 判決文は、「慰安婦」制度の事実認定と法律適用について詳しく述べ、昭和天皇と東条英機ら九人の被告個人について刑事責任有罪と、国家責任について認定したあと、日本政府と元連合国への勧告が十七項目にわたり示されている。

判決の要点
(1)個人の刑事責任
 レイプと性奴隷制(人道への罪)九人。昭和天皇裕仁、安藤利吉、畑俊六、板垣征四郎、小林躋造、松井石根、寺内寿一、東条英機、梅津美治郎  命令責任と実行責任で有罪
 マパニケ村のレイプ(人道への罪)二人。昭和天皇裕仁  命令責任で有罪、実行責任では証拠不十分により無罪。山下奉文――命令責任と実行責任で有罪。

(2)国家責任
 日本政府――日本軍性奴隷制の損害、それによる継続的責務不履行に責任があり、その両方について被害者への賠償義務がある。

報告集会

 最終判決の報告集会はVAWW−NETジャパンが主催して十二月二二日に東京・社会文化会館ホールで開かれた。
 集会の一部は「最終判決法廷」報告。全体的な報告をした松井やよりさんは次のように語った。
 最終判決をハーグで行ったことで法廷の意義が欧州にも、より拡がった。ヨーロッパ各国をはじめ四〇社ほどの報道関係者が取材した。判決内容は一層深まった。判決が出るまでには、判事をはじめ女性の法曹関係者がたくさん関わったことで女性に心を寄せた判決となった。 「判決  結び」のくだりでは、被害女性に敬意を表し、名乗りでた女性の強靱な精神と威厳を称えている。そして「被害者には、博物館もなく、無名の『慰安婦』には墓碑もなく、未来の世代への教育もなく、そして裁きの日もなかった」とし、さらに「歴史のページに名を刻まれるのは、犯罪を犯した加害者の男性たちであり、それに苦しめられた被害女性たちではない。この判決には、表舞台に出て自らの経験を語り、それによって少なくとも四日間は、悪を断頭台に送り、真実を王座に据えたサバイバーたちの名前が記されているのである」としている。
 思えばこの問題は、カン・ドッキョ(姜徳景)さんが描いた一枚の絵から始まった。世界の女性たちが支え、いまも紛争状態にある全ての戦争被害の女性たちにつながった。判決の法廷は地球市民の力で開かれた。
 勧告を伴う判決はハーグにある日本大使館に届けたが、門もあけず迷惑そうに大使館員が受け取っただけだった。今後は勧告をどのように実現していくかが課題になる。
 国際法廷で法的構成を準備する中心をになった川口和子弁護士は検事団の立場から次のように判決を評価した。「ハーグでは外国の人たちから、東京で法廷を準備した日本の女性たちの貢献度を十分に強調すべきだと言われたことは印象的だった。研究者の努力の成果として出された公文書を捜し出したこと、日本女性のなかにも被害女性がいることを立証したこと、加害者である日本兵の証言を出したことなどが上げられる。
 もう一つ、法廷が死者を被告としたことや、弁護士もつけないなどというデュー・プロセスを満たしていない、人民裁判だという批判に対して、判決が明確な法廷の位置づけをしたことは大きな成果だ。これについては法廷が『民衆法廷』であり、処罰を実行する権限はないこと、などを明らかにした」と。
 弁護士の東澤靖さんは、ハーグには国際司法裁判所がすでにあり、今後も国際的裁判所の設置が予定されている。ここで最終判決を出したことは意味があったと指摘した。判決については、@「慰安婦」制度についての経過、その理由、広がりなどの事実認定をしたこと、A「慰安婦」問題は極東裁判で裁かれるべきであった、根拠となる法律は厳密に当時の法律を適用した、B十人の被告への罪について、昭和天皇も名前だけだったのではなく、二・二六事件への対応、戦陣訓などの証拠を検討し、監督者として有罪とした、などについて指摘した。
 神奈川大学教員の阿部浩己さんは国際法の視点から判決を評価した。阿部さんは「法廷は『模擬法廷』ではなく本物の民衆法廷だ。なぜなら、国際法は主権をもつ市民・民衆のものなので、国家が本来果たすべき法的義務を果たさない時、民衆がその実現をはかることができる」という。さらに「判決」は「人道に対する罪・奴隷制禁止規範をジェンダーの視点から見直した。男性の経験で作られた国際法を女性の経験・視点で見直した」と述べた。
 集会ではハーグの判決が行われた「法廷」と、「日本人慰安婦」を中心にしたビデオが上映された。
 第二部の「法廷」の今後  勧告をどう実現していくか  では、裁判官、首席検事からのビデオメッセージが紹介された。その後、勧告評価として、 @教科書記述、国民基金について、A映像記録と記録の保存について、BNHK裁判の意味と歴史認識の問題などについての報告があった。会場討論などがつづいた。
 「女性国際法廷」は最終判決によって国際的評価がたかまり閉廷した。今後、目前のNHKの番組改ざん抗議をはじめ課題は大きい。政府と国際社会に責任をとらせるため、民衆の力で粘り強く勧告実現に向けて運動していかなければならない。 (Y)


  残侠伝(其の壱)

     
組合新聞の改革に着手

 大失業時代が日本にもようやく上陸してきた。これはレーニンが革命の条件がどのくらい成熟したかを計る目安とした命題のうち「労働者階級も食って行けなくなったとき」という現象がはっきりしてきたという意味で好いことだ。
 自分はと言えば、見果てぬ夢を追い続けたせいというか、なんとか搾取から逃れようというか、働くのがイヤな哲学(『働くのがイヤな人のための本』日本経済新聞社)のせいか、失業だらけの人生だ。いちばん長い職場がたったの六年。それでも良くガマンしたと今では感心している。
 朝五時から夕方七時までのキツイ労働だったが、唯一の救いは組合運動とそれにともなう数々の人との出会いだった。二年目くらいに血が騒ぎ、選挙に出たら甘いマスクのせいか、晴れて執行委員に当選、教宣部長と相なった。月八千円なりの手当と会議一回につき二千円が入ってくることは後で知った。係長手当を上回る。すべて組合費から出るわけで、今思えば自治労はじめ現在の組合運動をダメにした一つの元はこの特典である。
 御用組合を絵に描いたような組合の中で左派を貫き通すためには、それなりの保身手段を打たなくてはならない。自分は金にならない仕事の方で行政とマスメディアを最大限に利用して、自分の名前が週一回は新聞やテレビに流れるようにし、常務や専務の弾圧から逃れることに成功した。ちなみに、後にこの会社へたたきつけることになった辞表の全文が朝日新聞に載って、一万円也の原稿料が入った。
 はじめに手をつけたのが、レクの案内ばかりでくそ面白くない組合新聞の大改革。この中で知り合ったのが真知子さん。専務秘書で広告のデザイナーをやっていた。社員食堂で顔を見るだけだったが、みんなが振り向く花のような存在。
 新聞をカラーコピーにし、内容も会社批判に重点をおいたものにしようと、事務の愛子さんに相談すると「いい人が本部にいるよ。長谷川さん」と紹介されたので、めったに入ることがない本部棟(自分は工場)の緑の絨毯に足を踏みいれた。
 いつも会社幹部をつるし上げる団交をする会議室を通り過ぎると、いちばん奥の右側が長谷川さんのブースだと受付嬢が教えてくれた。隣には専務のコンピューターがあった。もしかして、と思ってブースをのぞくとデザイン用のパネルやデスクが並び、足もとにはなぜか本物かニセものかわからないおびただしい銃火器や弾丸やら手榴弾がちらばっていた。
 これだけあったら工場を丸ごとふっ飛ばせるなァと思いながら手近にあったM ライフルを持ち上げると「うごくな!」と背中から女の声がした。恐そるおそる振り返ると、ハデな花柄のエプロンを制服の上にきて、三脚をつけたままの重そうな機関銃の銃口を大股ひらいてこちらにむけ、笑顔で立っていたのが真知子さんだった。
 これが組合新聞を変える第一歩であった。(高橋龍児)


せんりゅう

 不審船を撃沈しちゃう不審あり

 助けずに証拠の口をふさいどく

 銃撃の的に憲法おいてある

 九条を曲げる砲火のかっこよさ

 防衛庁、侵略庁を目指しつつ

      ○

 年の瀬を死刑執行でしめつける


                 ゝ史

 二作目 大海に溺れる者が反撃できるだろうか。反撃をおそれてたすけなかったとの弁明。
 四作目 銃撃そして出火のビデオ記録をテレビニュースで見せました。かなりしつこくビデオ撮りしているようです。沈没の映像もあるはずですが。、見せてはまずい沈没だったのでは? 疑問不審があります。(二〇〇一年十二月二十七日)


複眼単眼

    「年賀状」で語ること 語られたこと


 「年賀状は新年になってから書くのが当然だ」という信念をもっている友人も少なくないから悪くもないかなとも思う。
 今年、特に迷ったのは「自衛隊が戦場に出て行っている時代なのに、白々しく『新年おめでとうございます』もないもんだ」と思ったからだ。そこで「迎春」とした。これだって春を迎える「喜び」を表現する言葉だから五十歩百歩かも知れないが。
 いただいた年賀状にもことしはとりわけさまざまなメッセージがあった。皆さんの友誼に感謝を込めつつ、その一部を紹介する。
 「もはやこの国は新たな『戦前』ですらなく、『戦中』へと突入と言っても過言ではありません。……大変な年になりそうです」
 「私たちの九条、並びに二五条が守られる『優しい国』に何故になれないのでしょうか!。新年のお慶びを率直に申し上げられないのが、真に口惜しいのです」
 「こんな時だからこそ、一年が暮れ、新たな年が始まることをひとつの区切りにしたい……こころ新たにどうぞ二〇〇二年もよろしく!」
 「日本左翼の総括が不可欠と思っております。ご健闘を期待しています」
 「こんなひどい状況だから少しでもやらねばと思っていて……」
 「とんでもないことが、いともたやすく行われています。アメリカの資本主義が世界を飲み込もうとしています。二〇〇二年が市民からの平和行動の年となることを祈ります」
 「自分の力のなさに悔しい思いもしていますが、今年こそ希望の光の見える年になるよう」
 「早く、頑張らなくて済む世の中にしたいものです」
 「ひどい状況です。今年もハッパをかけてください」
 「もう世界平和を人まかせにはできません。各自が自分で考え、自分ができることを実行することだけが実現への道として残されているだけです」
 「小生儀『ニトロなめ、杖をつきつつ大同を思う』(大同とは理想郷のことなり)」
 「国会を見ると暗い気持ちになりますね。でもその時のためにも今がんばっておかねば!」
 「哀しみも怒りももろとも年明けぬ。今年もまた共に行動しましょう」
 「威勢よき正義の声に踊らされむかしも千万の人が死にたり」
 「桜は枯れているように見えても新芽を抱き暖かい春の訪れをまっています」
 「テロの根絶は戦争の根絶からと考えています」
 「とんでもない時代、どうぞお体にも気をつけてください」
 「いよいよ正念場ですね。がんばりましょう」
 「権力に押し切られないようにもっと力を合わせたいですね」
 当方の賀状にはプリントしたものだけでなく、、それぞれの方々に合わせたオリジナルな言葉を書き添えなくてはと思いつつ、今年もほとんど果たせなかった。徹夜してでも書けばよかったと思うのは、あとの祭りだ。(T)