人民新報 ・ 第1049号<統合142> (2002年2月5日)
  
                                目次

● アメリカは戦争やめろ! 小泉は自衛隊を撤兵しろ!日米戦争談合のブッシュ来日に抗議

● 小泉内閣の有事法制、改憲策動に抗し、5・3憲法集会実行委員会発足

● 市民と民主・社民・共産の国会議員ら有事法制反対で院内集会

● 資料 / 公安調査庁による市民団体スパイ問題で日弁連人権救済申立団体の声明

● 市民団体が、有事法制反対、改憲国民投票法案反対で国会ロビー活動

● 市民団体が「有事法制反対」の署名運動をよびかけ

● 東京高裁狭山再審異議申立を棄却 狭山差別裁判打ち砕こう

● 国労闘争団・遺族が鉄建公団を提訴 国労本部の闘争圧殺を許すな

● 春闘をめぐる情勢 (下)

● 書評 /  『9・11 』アメリカに報復する資格はない!

● 複眼単眼 / 永田町を先頭に、この社会は大混迷・大混乱・大腐敗・大退廃だ



アメリカは戦争やめろ! 小泉は自衛隊を撤兵しろ! 
 
              日米戦争談合のブッシュ来日に抗議

 ブッシュ米大統領が二月十七〜十九日に来日し、韓国・中国も訪問する予定でいる。
 ブッシュは昨年末、「二〇〇二年は戦争の年だ」と宣言した。
 先般、日本で「アフガニスタン復興のための国際会議」などが開かれたが、一方では今なお、米軍による空爆と掃討作戦が続いている。一方の手で爆弾を投下し、破壊と殺戮をつづけながら、もう一方で「復興」をするなどという欺瞞を許すことはできない。
 いま米国は冷戦後の世界で、自らの一国覇権体制を確立するため、「9・11」を奇貨として「反テロの国際共同」の盟主としてふるまいつつ、さらにソマリア、フィリピンなどへの軍事介入を強めている。ブッシュは次年度(03計年度)の国防予算をレーガン政権以来の過去二〇年間で最大の伸び率の十五%増の三七九〇億ドルとし、ミサイル防衛(MD)開発、無人偵察機や精密誘導のハイテク機の増強などに投入しようとしている。
 その口実として「対テロ作戦はアフガニスタンで終わらない。地球のあちこちに敵のかげがある。対テロ戦争で完全勝利を達成するために必要だ」と強調する。
 一月二九日に米国上下院合同会議でブッシュは「一般教書」演説を行った。「すでに9・11を行ったと同様の数万人のテロリストが訓練を終えて世界中に散らばっている」とした。
 そのうえで、イラク、イラン、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を名指して「生物化学兵器など大量破壊兵器を開発するテロ支援国家」と非難し、これらの国々への攻撃の可能性とその正当化を試み、再度、この「反テロ」の戦争への同盟国の協力を呼びかけた。
 一方、米国を後ろ盾として、占領地に居座り続けるイスラエルによるパレスチナ民衆への無差別殺戮も、拡大の一途を辿っており、パレスチナとアラブの民衆に堪え難い苦難を強要している。
 今回の一連の訪問先の国々にたいしては「反テロ」の共同を要請している。韓国にたいしては、南北首脳会談でうち出された朝鮮半島の自主的平和統一の流れに水をかけ、駐韓米軍を増強し、北朝鮮に対する緊張激化政策を取りつづけている。
 このブッシュの戦争政策に呼応しているのが小泉政権である。さきの臨時国会で、憲法第九条を踏みにじり、ついにアメリカのアフガン戦争に現行憲法下では初めて自衛隊の参戦を強行した。そしてこの国会では有事法制という名の戦争遂行法、戦時非常立法を成立させようとねらっている。
一方、海上自衛隊のインド洋での参戦を延長させ、すでに「特措法」を根拠に派遣されている第一次艦隊にかわる第二次艦隊四隻(舞鶴の護衛艦「はるな」、大湊の「せとぎり」、佐世保の「さわかぜ」と横須賀の補給艦「ときわ」)を新たに派遣する動きとなった。派遣期間も三月末から五月中旬に変更し、再延長すら検討されている。
 「有事法制」では「自衛隊の防衛出動」を対象に、防衛庁は「第一分類(防衛庁所管)と第二分類(他省庁所管)の法案化」を準備し、さらに政府原案の「第三分類(所管官庁の特定がされていないもの)」法令原案も明らかになった。政府はこれらを有事法制整備の手順を示す「緊急事態基本法(仮称)」と合わせて法制化しようとしている。報道では第一、第二分類だけでも二〇項目以上の私権制限項目があり、第三分類にも港湾封鎖や漁業制限など、憲法の基本的人権の保障原則に抵触する多方面の私権制限におよんでいるものがある。「周辺事態法」では地方自治体には強制ではないように受け取られるように「協力を求めることができる」となっていたが、今回の政府原案では「関係行政機関による総合的な対応」が規定されており、事実上の強制動員に道を開こうとしている。さらに許しがたいことに、かつての戦時中の「隣組」に相当するような民間防衛組織の設立すら想定されている。その意味でまさに小泉政権の画策している有事法制は「国民総動員法」そのものだ。
 こうした動きを強めている小泉首相と、アメリカのブッシュ大統領による日米首脳会談は、まさに「日米戦争談合」というべきものだ。それはアジアの人びとの不安を煽りたて、東アジアに緊張をもたらすものにほかならない。
 この日米首脳会談の危険な動きに反対して、二月十七日「アメリカは戦争やめろ!小泉は自衛隊を撤兵しろ!ブッシュ来日に抗議する行動実行委員会」による共同の行動が呼びかけられた(詳細は別掲)。さらに十八日には「テロにも報復戦争にも反対!市民緊急行動」などによるアメリカ大使館デモ(詳細は次号)も準備されている。
 これらの行動を支持しよう。
 韓国でブッシュ訪韓に対する抗議行動を準備している市民・民衆とも連帯しよう。
 日本の市民・民衆の平和への意志をブッシュ来日・日米首脳会談に対してぶつけよう。


小泉内閣の有事法制、改憲策動に抗し

      生かそう憲法、高くかかげよう第9条5.3憲法集会実行委員会発足


 五月三日の憲法記念日を契機に、憲法改悪の流れに反撃する運動を大きく発展させようと、「生かそう憲法、高くかかげよう第九条、二〇〇二年『五・三憲法集会』」の第一回実行委員会が、一月三一日、都内で開かれた。この日の会議は「許すな!憲法改悪・市民連絡会」「キリスト者平和ネット」「憲法を生かす会」「憲法会議」など七団体の呼びかけで行われ、四〇団体から五二人の参加があった。
 開会の挨拶は「憲法会議」の田中洋子さん。司会は「憲法を生かす会」の筑紫建彦さんと「女性の憲法年連絡会」の堀江ゆりさんが担当し、冒頭に国会報告として社民党の金子哲夫さんと共産党の春名直章さんが発言した。
 金子さんは先ごろの衆議院憲法調査会の幹事会の状況を報告した。調査会ではすでに改憲を前提としたような議論があいつぎ、今回から設けられる小委員会も「何を変えるのか」という議論の場にされようとしていること。自民党の中川委員などは「調査会設置時の確認などにとらわれる必要はない」などと暴論を唱えている、という。最後に金子議員は改憲派に有利な国会の力関係を院外の闘いでくつがえそうと訴えた。
 春名さんは昨年の五・三集会の大成功を思い出しながら、最近の憲法調査会が急速に変質してきていると報告した。
 実行委員会への提案は市民連絡会の高田健さんが行い、@集会名称を確認し、有事法制問題などのサブタイトルを検討する。A実行委員会は「非暴力」「参加団体・個人を誹謗・中傷しない」「実行委員会の取り決め、合意事項を守る」の原則で運営する。B事務局は八団体で構成する。C会場は日比谷公会堂を押さえているが、他の大きいところも追求する。D形態は集会とパレードで、内容はおおむね昨年の集会の形態を踏襲する。E財政は賛同費と会場カンパでまかなう、などを提案。これは討議のうえ確認された。
 討論のあとキリスト者平和ネットの糸井玲子さんが閉会の挨拶をのべ、第一回実行委員会の成功を確認しあった。


市民と民主・社民・共産の国会議員ら有事法制反対で院内集会

 一月二五日午前、衆議院議員会館で「有事法制を考える市民と議員の緊急集会」が開かれ、約三五〇名の人びとが参加した。先に開かれた一月二一日の院内集会につづいて、この日の集会でも市民団体をはじめ、超党派で共同の輪を大きくし、有事法制阻止のために闘おうという動きを促進するものとなった。
 集会を呼びかけたのは中島通子(弁護士)、斉藤貴男(ジャーナリスト)、高田健(許すな!憲法改悪・市民連絡会)、海南友子(チャンス)などの市民運動関係者と、参議院から大橋巨泉、福島瑞穂、中村敦夫、田島陽子、高橋紀世子の各議員、衆議院から筆坂秀世、小泉親司、今野東、穀田恵二、辻元清美、川田悦子の各議員など、社民、民主、共産の各党と無所属の議員らだった。
 ゲストスピーチとして渡辺治さん(一橋大学)、斉藤貴男さん(ジャーナリスト)、中島通子さん(弁護士)の三人が発言した。
 渡辺氏は「今回の有事法制は日本にどこかの国が攻めてきた時に備える法律ではない。自衛隊が米軍と共に海外参戦することを正当化するものであり、それを国会の議論を経ず、市民の言論を抑圧して迅速に行える体制をつくるための法律だ。これは自衛隊の参戦行動と日本の軍事大国化を新たな段階に引き上げるものだ。小泉首相は備えあれば憂いなしというが、日本は五五年間、憲法九条という備えをもっていた。九条は軍隊をつくらない、外にださないという憂いを作らない、開かれた備えだった。これを崩そうとしている。この法はアジアと世界に憂いを作る法制だ。これは憲法改悪の前哨戦ではなく、まさに憲法九条改悪そのもの、関ケ原の闘いだ。改憲案がでてきた時では遅いと思う。国会議員は国民に代わって闘うことはできない、いま国民に行動を求めるために訴えよ」と述べた。
 斉藤氏は「有事法制を進めている人たちも、このまま行けばアメリカのために殺されるし、殺させられる。こんなバカバカしいことはない。そして気に食わない人間は監視される。そういう社会が作られる」と述べた。 中島氏は「有事法制が通れば、日本は合法的に戦争ができるようになる。日本は世界でも有数の軍事力をもった国家になっている。しかし、世論調査では過半数が参戦に反対している。特に女性は反対が多い。この女性たちの世論をどのようにして組織化するか、そこにカギがあると思う」と述べた。
 つづいて国会議員から志位和夫共産党委員長、土井たか子社民党党首、大橋巨泉民主党衆議院議員、および無所属の中村敦夫議員、川田悦子議員、高橋紀世子議員が発言した。
 志位氏は「有事立法のねらいは日本が武力行使を受けた際の備えのためではなく、日本を根城に米軍がアジア干渉戦争をする際に自衛隊が参戦し、日本国民を総動員することにある」と発言。
 土井氏は「斉藤さんの話を聞きながら、かつての同姓同名の斉藤さんの国会での反軍演説を思い出している。名演説だが、私はああいう演説をする時がこないように国会にでてきた。しかし、今年、自衛隊が戦場にいっている中で正月を迎えた。戦後が終わって戦前が始まったというのが実感だ。その極めつけは有事立法だ。三月段階で法案が出されると言われているが、法案が出た時では遅い。党利党略でものを考えるのではなく、憲法第九条と前文の考え方を堅持して、結束してしっかり取り組むべきだ」と発言した。
 大橋氏は「有事立法の必要論がいわれるが、いざとなったら関係ない。アメリカを見ればわかる。国旗を燃やすことすら許す国が、いまアフガンからつれてきた人たちの扱いをみれば、超法規だ。戦争になれば超法規だ。いざとなったらやってしまう。備えとは有事法制などではなく、アジアとのネットワークとか、やることがある。アメリカ一辺倒では何も解決しない。私はこの集会にくるのも大変だったが、できるだけのことはするつもりだ」と述べた。
 市民からの発言では許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さん、チャンスの小林一朗さんなどが発言した。
 高田さんは「本日の趣旨と同様の集会を二一日に行い、土井、志位、横路の各氏などとともに共同を確認した。有事法制はまさに改憲そのものだし、これに反対する運動は三月からやればいいという問題ではない。直ちに地域にでて人びとに訴え、大きな世論を形成して闘おう」と述べた。
 小林さんは「九・十一以降、若者の運動を作ってきたが、いままた新しく戦争に関心を持つ人が増えてきた。アメリカではワールド・トレード・センターの被害者の遺族がアフガンを訪れ、報復は意味がないと訴えている。やられたらどうする?と考えるのではなく、やられた人の遺族が報復は意味がないといっているのです。こうした声を伝えていきたい」と発言した。


資料

公安調査庁による市民団体スパイ問題で 日弁連人権救済申立団体の声明


 日本ペンクラブやさまざまな市民・労働・女性・環境・消費者団体など三八団体が、公安調査庁の不当なスパイ活動の対象にされていた問題で、人権救済を要請された日本弁護士連合会は、このほど公安調査庁に「警告書」を発した。以下は一月二三日に発表された申し立て三八団体の声明。

 本日、日本弁護土連合会は、われわれ市民団体が申し立てた公安調査庁による人権侵害の救済申立について、申立内容を正当なものと認めて公安調査庁長官宛の警告書を発し交付した。
 その警告の趣旨は、
@ 公安調査庁は、申立人らに対する調査活動を即時に中止し、今後、申立人らにする一切の調査活動をしてはならない。
A 公安調査庁は、申立人らに対する調査活動によってえた、申立人らに関係する情報を申立人らに開示し、かつ、公安調査庁における文書及び電磁的記録から全て削除し、その結果を申立人らならびに当連合会に対して報告せよ。
B 公安調査庁は、申立人らに対する監視行為を指示する内部文書を国民に対し全面公開して、その監視行為の実態及びそれによって得た情報の具体的活用状況を申立人らならびに当連合会に対し明らかにせよ。
というものである。

 同警告書は、その理由において、「公安調査庁の申立人ら市民団体への団体内部の調査の容認」は、「その団体の結社の自由、その参加者の思想・信条の自由、さらにはプラバシーの権利までを不当に侵害することになることは火を見るよりも明かと言わなければなるまい」と述べている。
 市民団体の活動の自由が、不当な権力的干渉から自由でなければならないことは当然である。不当な公安調査庁の活動の完全な中止と、将来の禁止を警告した日本弁護士連合会の見解の表明が、民主主義と人権の擁護に持つ意義は極めて大きい。
 公安調査庁はすみやかにこの警告に従うべきであり、警告主文2項、3項に従った結果報告をなすべきである。
 また、同警告書は、国民主権の下にあっては国家機関の違法行為が隠蔽されてはならないこと、違法に収集された情報も国民に公開されるべきであることを明らかにしている。 国民の目の届かないところで隠微に違法な行為が行われることを防止するために、徹底した情報の公開が貫かれるべきである。
 いうまでもなく、自由と人権は権力に抗しての不断の努力によってこれを保持しなければならない。われわれ本人権侵犯救済申立団体は、本件日本弁護士連合会警告を完全に実施するまで、公安調査庁への追及行動を継続することを宣言する。


市民団体が、有事法制反対、改憲国民投票法案反対で国会ロビー活動

 一月二九日午後、「有事法制」と「憲法改正国民投票法案」の国会上程に反対する市民団体のメンバーは、衆議院議員第一、第二会館と、参議院議員会館の民主党、公明党、無所属などの国会議員事務所を訪ね、要請行動を行った。
この日の行動に参加したのは、昨年の「9・ 」以来、共同行動を積み重ねてきた「キリスト者平和ネット」「日本山妙法寺」「テロにも報復戦争にも反対・市民緊急行動」などの人びと。
市民たちはこれらの団体が共催して、今期通常国会開催日の一月二一日に開いた「有事法制反対 憲法改正国民投票法案反対 院内集会」(本紙前号報道)の報告文書と、「憲法改正国民投票法案反対」の四二九団体・個人の「声明」を届けながら、各国会議員がこれらの悪法に反対するよう訴えた。
初めてロビー活動に参加した若者は「もっと相手から反論がされるかと思ったら、案外、うなずいて聞いていた。また他の議員にもぜひ要請してください、などともいわれた」と報告していた。 (K)


市民団体が「有事法制反対」の署名運動をよびかけ

 政府がこの国会に提出を狙っている「有事法制」に反対して、このほど、三つの市民団体(キリスト者平和ネット、日本山妙法寺、テロにも報復戦争にも反対、市民緊急行動)が共同で署名運動を呼びかけた。署名の要請文を掲載する。署名用紙の請求は「許すな!憲法改悪・市民連絡会」(FAX03・3221・2558)へ


 憲法前文の「平和に生存する権利」は、日本に住む私たちだけでなく全世界の人びとの普遍的な権利です。その実現のため、憲法第9条は不戦と戦力の放棄を世界に宣言しています。
 しかし政府は、日本を武力攻撃する国があるとは考えられないのに、「戦争」を想定した「有事法制」を制定しようとしています。それは米国が主導する戦争で、自衛隊と米軍が合同して日本全域で戦闘行動を自由に行ない、私たちの土地も家屋も施設も作戦に使い、暮らしに必要な物資を取り上げ、病院や陸海空の輸送や土木建築や通信や物資・食料の生産・販売など、数多くの部門で人びとを命令によって戦争協力に動員するという「戦争体制」づくりにほかなりません。
 このような戦争体制がつくられると、憲法が保障している「人身の自由」や「生活権」、「移動・居住の自由」、「労働者の権利」、「財産権」などが大きく失われ、戦闘に巻き込まれて生命を奪われ、他国の人びとの生命を奪うことにもなります。また近隣諸国に対して、「日本は戦争の準傭をしている」という危険なシグナルとなるでしょう。
 平和と人権そして生命を何よりも大切にしたい「平和を実現するキリスト者ネット」、「日本山妙法寺」、「テロにも報復戦争にも反対!市民緊急行動」の三団体は、共同して有事法制に反対する行動を呼びかけています。私たちも「有事法制」に強く反対します。
 このため私たちは、次のことを求めます。

<請願事項>
一、日本に戦争体制をつくり、平和と基本的人権と生命を脅かす「有事法制」を制定しないこと。
一、政府と国会は、海外の戦争への参加や武力行使をやめ、日本の社会を軍事化せず、いかなる国際紛争も平和的に解決し、大幅軍縮と相互信頼をアジアで推進し、非軍事の国際協力に徹して、これ以上の戦争の惨禍を誰もが被らないようにするために全力を注ぐこと。

衆議院議長綿貫民輔様
参議院議長井上裕様


東京高裁狭山再審異議申立を棄却

        
   狭山差別裁判打ち砕こう

 一月二十三日、東京高裁第五刑事部(高橋省吾裁判長)は、狭山事件の第二次再審請求の異議申立を棄却する不当な決定をおこなった。
 一九六三年に埼玉県狭山市で女子高校生が誘拐されて、脅迫状がとどけられ、四十人もの警官が張り込みながら犯人を取り逃がし、そして女子高校生は遺体となって発見された。世論は警察の失態に非難を集中させ、窮地に立った警察は、なんの証拠もないまま部落青年の石川一雄さんを別件逮捕し、予断と偏見をもって犯人にでっちあげた。一審は死刑判決、二審は無期懲役判決(一九七七年に無期懲役判決が確定)が出たが、石川さんはただちに再審請求を申し立てた。八六年八月に第二次再審請求を東京高裁に申し立てたが、九九年七月、東京高裁(高木裁判長)は再審請求を棄却した。この不当な棄却決定に対し弁護団は直ちに東京高裁に異議申立をおこない石川さんの無実を証明するたくさんの新証拠を裁判所に提出した。脅迫状の筆跡が石川さんの筆跡と一致するとされていたが、その根拠となった警察の鑑識の筆跡鑑定はひじょうに杜撰(ずさん)であった。学者・専門家や元鑑識課員なども筆跡は異なるという分析を行い弁護団は鑑定書として裁判所に提出している。
 しかし高橋裁判長の異議申立棄却決定は、弁護団が提出した筆跡鑑定などの新証拠を全く無視したものであり、九九年の再審請求棄却決定を追認したにすぎないものである。高裁の異議申立棄却決定は、元鑑識の専門家による鑑定を、「独断にすぎない」「推測の域を出ない」などといっている。
 このような今回の異議申立棄却決定における裁判所の姿勢には、なにがなんでも棄却するということであった。これは、参戦・有事立法確立、憲法改悪のという流れのなかですすむ司法反動化のあらわれであり、断固として糾弾しなければならない。
 石川一雄さんは無実を叫びつづけてすでに六十三歳になった。石川さんは、棄却決定に「真実は一つであり、私はあくまでも自分の信念を貫き、そして身の潔白が明らかになるまで闘い抜くつもりでおります」と言っている。
 部落差別に基づく冤罪がはれるまで狭山裁判・狭山闘争は終わらない。再審無罪まで戦い続けなければならない。差別に反対し人権の確立を求め、異議申立棄却決定に断固抗議し、石川一雄さん、狭山弁護団とともに、断固として闘い抜こう。

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石川一雄さんの決意

 只今裁判所よりの棄却という知らせを聞き、前回同様に強い憤りを感じております。
 私、石川一雄としては齋藤・柳田鑑定や足跡鑑定などの新証拠、科学的な鑑定によって、高橋裁判長の勇気ある判断を期待しておりましたが、再び再審が棄却されて、法の正義とは力によるものか、と心の中で自問自答しながらも、最高裁に再度自分の真実を貫き通すため上訴しようと思います。
 真実は一つであり、私はあくまでも自分の信念を貫き、そして身の潔白が明らかになるまで闘い抜くつもりでおります。
                              2002年1月24日
                                             石 川 一 雄


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国労闘争団・遺族が鉄建公団を提訴

         
国労本部の闘争圧殺を許すな

 一月二十八日、国労闘争団・遺族二百八十三名は鉄建公団にたいする訴訟を提起した。原告団の内訳は、北海道が遺族四名を含む二三二名、九州の四八名、本州の三名で、原告団長は酒井直昭さん(北見闘争団)、事務局長は佐久間誠さん(名寄闘争団)。
 鉄建公団は、JRには解雇の責任がないとするこれまでの裁判の不当判決においても、鉄建公団は清算事業団(清算事業団は国鉄を承継)を引き継ぐものであるとしている。この裁判は、清算事業団の解雇(一九九〇年四月一日)の無効と地位の確認、不払い賃金の請求などを、鉄建公団に対して求めるものである。訴訟の代理人の加藤晋介弁護士は「分割・民営化の過程で不当労働行為があった事実ははっきりしているのに、国鉄とJRはちがうというだけで責任が置き去りにされてしまった。責任は旧国鉄(政府)とJRの双方が負うべきもの。JRに対しては現在最高裁で争っている。もう片方の旧国鉄の責任を追及するのが今回の裁判。不当労働行為をしておいて解雇できるのか、ということを争いたい」と述べ、また提訴にあたっての原告・弁護団の声明では「清算事業団の解雇は、『再就職特別措置法』の失効に伴うものとして強行されましたが、『特措法』が期限切れになっても、清算事業団法の再就職促進目的がなくなったわけではなく、まして解雇規定が法律にあったわけでもなく、JRの労働委員会救済命令不履行を放置したまま行った解雇は、解雇権の濫用であり無効です。いうまでもなく、今回の鉄建公団提訴によってJRの不当労働行為を免責しようとするものではありません。一九八七年の採用差別の責任は、採用の主体であるJRが負うことは当然のことです。国鉄もまた、国労組合員等を排除する差別的な採用候補者名簿を作成した責任を負っています。これが国鉄が行った第一の不当労働行為です。そして、一九九〇年には国鉄を引き継いだ清算事業団が解雇を強行し、賃金収入の道を断つというもう一つの不利益扱い、第二の不当労働行為を行いました。この第二の不当労働行為からの回復をめざすのが鉄建公団訴訟です。私たちは、この訴訟の中で、第一の不当労働行為の事実とともにJRの不当労働行為責任をも明らかにしていく決意です」と述べている。
 この提訴の闘いにたいして、国労中央執行委員会は一月二十三日、「一部『闘う闘争団』の新たな訴訟に対する取り組みについて」で、「今日まで、JRへの採用を柱とした要求の実現の努力を全てを否定し、国労運動の破壊行動となる」として「本部は、これまでの努力と合わせ、本部方針に従わない場合の措置として、規約に基づく厳正な対処をせざるを得ない」としてあくまで妨害し、二月三日に予定される国労拡大中央委員会で、本部は四党合意強行の首謀者が画策した組織分裂にたいする断罪に優先して、闘う闘争団・家族への統制処分を行い、一気に闘争終結にまでつきすすもうとしている。
 闘争団・家族の新たな闘争を支持しよう。


春闘をめぐる情勢 (下)

政府経済見通し

 一月二十五日、小泉内閣は閣議で、二〇〇二年度の政府経済見通しを正式決定した(左図参照)。それは、経済ゼロ成長(実質マイナス)、そして完全失業率は増えるというものだ。〇一年の完全失業率の実質見通しを五・二%として、〇二年度にはさらに〇・四ポイントの五・六%とするものだ。
また同時に、「経済改革と経済財政の中期展望」も正式決定した。これは二〇〇二年度から五年間の経済運営指針となるものだが、そこでは実質国内総生産(GDP)の伸び率を〇二年度〇%、その後は民需主導で経済が上向き〇四年度以降は平均一・五%以上になるとしている。
 だがはたしてそうか。経済企画庁長官だった堺屋太一に代表されるように政府サイドはつねに楽観的経済予測をたてたが、ことごとくはずれ日本経済はまさに今日の危機的な状況に陥ってしまった。

失業と株安

 前号で十一月の完全失業率について書いたが、総務省が一月二十九日に発表した十二月のそれは五・六%(前月比で〇・一ポイント悪化)で過去最悪を四ヶ月連続で更新することになった。なお、厚生労働省が同日発表した十二月の有効求人倍率も〇・五一倍で前月比で〇・〇一ポイントの低下となった。さすがに竹中平蔵経済財政担当相も同日の閣議後の記者会見で、構造改革の進行により失業率の悪化は予想していたとしながらも「予想よりも早く到達したことに憂慮している」と述べ、失業率の悪化が政府の当初の予想を上回るペースで進行しているとの見解を示さざるをえなかった。
 そして、一月三十日、東京株式市場で日経平均株価は続落、ついに一万円台を割った(昨年十月十日以来、約三ヵ月半ぶり)。これには、、外務省のゴタゴタ、エンロン破綻以来くすぶっていた米企業会計に対する不信感の高まりによるニューヨーク株の急落などがつみかさなっておこったものであるが、その基礎には、日本の経済、政治、社会の危機の深化がある。

あやしげなWS論

 このごろ失業対策としてにわかにワークシェアリング(WS)論がさかんになってきている。昨年十二月には、坂口力厚労相、笹森清連合会長、奥田碩日経連会長らが出席して、政労使によるワークシェアリング検討会議が開かれ、検討事項として、@意義・在り方A推進に必要となる環境整備B政労使の役割分担を確認し、今年の三月には一定の合意を出した。一月十五日には、その第一回実務者作業委員会の会合が開かれた。しかし、小泉政権、日経連、そして労の代表が連合というこの組み合わせのWS論なるものは、過酷なリストラ・合理化に薄いベールをかけるもの以外にはなりようがない。
 二十一日には厚生労働省が、「個別労働紛争解決促進法」(昨年十月より施行)にともなって全国に設置した「総合労働相談コーナー」の相談内容(十〜十二月)を発表した。相談は、二〇、四七〇件だったが、そのうちリストラ関連は五〇%を超えるものとなった。

 小泉は、倒産・失業が増えるのは、構造改革が進んでいることを示しているなどとの詭弁を弄しているが、職を失ったり、賃金・労働条件が下がり続けているのを実感した大衆の怒りが噴出するのは間近に迫っている。
 二〇〇二春闘を労働運動の反撃の契機とするために奮闘しよう。


書評

テロ国家の親玉アメリカに対する別のテロ集団の挑戦


  
9・11 』アメリカに報復する資格はない! 

      ノーム・チョムスキー 山崎淳[訳]/文芸春秋刊 1143円+税


 著者のノーム・チョムスキーはアメリカのマサチューセッツ工科大学教授で、専門は言語学。しかし、ベトナム反戦運動に参加し、以来、アメリカの政治や軍事・外交問題などについての批判を積極的にくり広げてきた。
この本は二〇〇一年九月十一日の『事件』以来、約一ヵ月の間に各国のメディアのさまざまなインタビュアーがチョムスキーに聞いた七編の記録を編集したものだ。編集した原稿を印刷に回す締切日が十月五日だったそうで、十月七日(日本時間は八日未明)に始まったアメリカのアフガン空爆以降の事態については、本書では論評されていない。
 これについては以降もチョムスキーは日本のマスコミのインタビューなどにも積極的に応じており、朝日紙や毎日紙などでその発言を目にした読者も少なくないだろう。

アメリカの横暴

 一月二三日に毎日新聞に掲載されたインタビューで彼は次のように語っている。
「(米国で)愛国心の復活が見られるのはその通りだが、同時に反対意見や抗議の強い流れもある。米軍の攻撃でどんな被害がでたか、どんな残虐な結果になったか知られていない。最近、世界貿易センターの被害者がアフガニスタンを訪れ、米軍の空爆の被害者と会って連帯感を表明した」
 また本書でもたびたび例示されるニカラグアについて、こうも述べている。「テロリズムからの防衛が自衛であり、軍事力の行使を意味するなら、ニカラグアも、米国に対し軍事力を行使する権利があったことになる。この国の左翼政権を打倒するため、米国は右派勢力を支援し、内戦を起こさせた。その結果、何万人も犠牲になり、9・ と比較にならない被害がでた。国際司法裁判所は八六年、ニカラグア政府の訴えを認め、米国の介入を不当と判定した。ニカラグアが軍事行動に出なかったのは、その力がなかったからだ。(米国では)だれも原則など信じない。テロリズムという時、われわれに対するテロのことであり、他者へのテロではないのだ」と。
 そして「戦争はテロ攻撃への対応というが、米英軍の指導者は、アフガニスタンの指導部を変えるまで軍事攻撃を続けるといってきた。米国の法律ではテロリズムを『暴力行為や人命に危険な行為をともない、強制や脅迫で政府の政策に影響を与えたり、市民に強制し脅迫する』と定義している。明らかに、米英の主張はテロリズムの公式定義そのままだ。……米欧や多くの国が、自分の利益を実行する時に『これは自衛だ』と言ってきた。一九三〇年代、日本が旧満州(中国東北部)を占領した時も、中国人のテロに対する自衛を理由にした。何も変わっていないのだ」と指摘。
 このインタビューの最後でチョムスキーは「対テロ戦争」への反対論が強いこととの証明のひとつに日本のメディアのインタビューについて触れて「六〇年代は私の発言を引用する日本のメディアはなかった。だが、九月からは私はこのように連日、コメントを求められている。「9・ 」は小さな出版社からだしたが、ニユーヨークタイムズ紙のベストセラー・リストに載った。こんなことはこれまでなかった」と語っているのはおもしろい。ただし「そうかな?」という疑問符付のうえでだが……。
 本書は十・七以降については触れられていないが、それによって本書の価値や、本書から学ぶものが大きく減少するということはない。チョムスキーの思考は一貫していて、その分析の延長上にアメリカのアフガン空爆批判は容易に想定されるし、その本質的なものをつかむことは比較的容易だからだ。

本書の威力・翻訳者の告白

 評者はこの本で展開されるチョムスキーの議論にすべて賛成というわけではない。しかし、アメリカのアフガニスタン戦争にたいして、いまアメリカのインテリゲンチャが伝えてくるこうした論評の意義の大きさに比べれば、それはほとんど気にならない。
 読み終えて興味深かったのは本書の「訳者あとがき・解説」だ。それによれば訳者・山崎淳はつい先ごろまで『タイム』と『ニューズウィーク』の熱心な読者で、国際情勢や米国事情には「ある程度通じているつもりだった、しかし、多くのアメリカ人がそうであるように、本当のことは何も知らなかったのである。私がいかに迂闊(うかつ)であり、目が節穴同然だったか、本書はそれをみごとに証明してくれた。目から鱗(うろこ)が落ちた。本書を訳しながら、チョムスキーの他の本も読んでみた。ますますその犀利(さいり)なアメリカ分析に感じ入った」という。山崎の率直さにも敬意を表する。ここに本書の威力が見事に示されている。
 山崎は解説の後半部分で、小泉首相が「暴力団の親分が暴力に反対する」というのとそっくりなブッシュの「反テロ戦争」にのって自衛隊参戦法を作り、「これで国際社会に堂々と仲間入りできる」と胸をはったことに対して疑問を投げかけている。
 「はたしてそうか。国際社会が米国とその同盟国を意味すると考えるならばそれでよかろう。……日本国憲法九条はこのような時にこそ最大限に活用すべきではなかったか。戦争放棄の思想は、決して軽いものではない。日本の凡庸な政治家が日本の存在感を世界にアピールする好機をまたもや逸した、と思えて残念でならないのである。……もし米軍が核兵器を使用するようなことになったら、同盟国日本はなんとすればいいのか」と。山崎の心配をよそに、すでに準核兵器といわれるきわめて非人道的と言わざるをえない爆弾も投下された。そうしておいて復興援助だという。そのための会議が日本で開かれた。食糧と一緒に爆弾を投下する感覚。破壊しながら援助を語る感覚は欧米諸国や日本の支配層の中に蔓延してしまった。そしてチョムスキーがいうように、メディアや多くの知識人が「世俗的僧職者」化しているなかで、これらの感覚は広く人びとのなかにも蔓延している。
 山崎は二次大戦後の米国が戦争、爆撃をした国二〇ヵ国の一覧表を眺めた。
 中国(一九四五〜四六、一九五〇〜五三)、朝鮮(一九五〇〜五三)、ガテマラ(一九五四、一九六七〜六九)、インドネシア(一九五八)、キューバ(一九五九〜六〇)、ベルギー領コンゴ(一九六四)、ペルー(一九六五)、ラオス(一九六四〜七三)、ベトナム(一九六一〜七三)、カンボジア(一九六九〜七〇)、グレナダ(一九八三)、リビア(一九八六)、エルサルバドル(一九八〇年代)、ニカラグア(一九八〇年代)、パナマ(一九八九)、イラク(一九九一〜九九)、ボスニア(一九九五)、スーダン(一九九八)、ユーゴスラビア(一九九九)、そして現在、アフガニスタン。
 山崎は「大リーグやハリウッド映画やフルブライト留学生の米国」が、実は「戦争の国でもある」ことに気づかされた。そして「人権とか自由とか民主主義といった気高い理想のほうに気をとられすぎてきたような気がする。私は、米国得意のプロパガンダにまんまとしてやられてしまっていたのだ」と告白する。訳者の「あとがき」を延々と紹介するという奇妙な図書紹介になった。しかし、評者はこの部分をぜひ紹介したいという衝動に勝てなかった。

喚きや嘘に脅かされないこと

 本書には多くの論点がある。そのいくつかだけ指摘して、あとは読者にまかせようと思う。
 ひとつは「9・ 」の位置づけ。チョムスキーは「米国は、一八一二年の英米戦争以来、本土を攻撃されたり、脅威にさらされたことはなかった。それが初めてさらされた」「(欧州内戦による破壊を別とすれば欧州も同じだ)ごく希な例外はあるけれども、被害を与えた外国に攻撃されたことはない」と指摘する。
 つぎは「アメリカこそテロ国家の親玉だ」という指摘。その例としてチョムスキーはニカラグア攻撃では一九八六年に米国は国際司法裁判所で国際テロのかどで有罪にされ、国連の安保理事会ではアメリカだけが反対したことを挙げる。「ニカラグアが受けた被害は、先日ニューヨークで起きた被害よりもはるかにひどいものだった」と指摘する。
 「9・ 」の実行者について。チョムスキーは、オサマ・ビンラディンは米軍のサウジ駐留、イスラエルのパレスチナへのテロ、イラク攻撃による荒廃などへの怒りを共有していることを確認するが、彼が計画・実行者であることには懐疑的で、彼のネットワークが関与していて、鼓舞したことはあり得ると述べている。「ビンラディンは自分はこの作戦のことは知らなかったと言ったが、真実を述べた可能性は十分あり得る」と冷静に見ようとしている。その上で「犯人が、CIA、エジプト、パキスタン、フランスの情報機関により、サウジアラビアの資金で、組織され、武器を与えられ、訓練された傭兵軍隊にルーツを持つテロリスト・ネットワークから来たことはほとんど疑う余地がない。……(ブレジンスキーの説明では)これら軍隊の組織化が始まったのは一九七九年であった。……(アフガンでロシアと闘うために)米国は同盟国と一緒になって、おそらく十万人以上の巨大な傭兵軍隊を編成した。……彼らは『アフガニス』と呼ばれているが、ビンラディンがそうであるように、多くはアフガニスタンとは別な国の出身者である」と指摘する。
 最後にチョムスキーは社会活動家に次のようなメッセージを送る。
 「社会活動の目標が、これ以上の残虐テロの可能性を減らし、自由と人権と、民主主義の希望を前進させることにあるなら、今度の犯罪の背後に潜む要因をさぐる努力をいっそう強め、さらに精力的に、いままで決意をもって取り組んできた正しい大義に身をささげるべきだ。南メキシコの……司教は、悲惨と抑圧を散々見てきた人だが、北アメリカの人びとに、米国が『その経済権益を擁護するため非常にたくさんの暴力を揮った』後、『なぜかくも自分たちが憎まれているのかをよく考えてみる』よう促している。これに耳を傾けなければならない。……ヒステリックな喚き散らしや嘘に脅かされぬこと、真理と、正直さと、自分がすること、あるいは、し損なうことによる人間への影響を懸念する道を踏み外さぬようにすることが重要である。すべて自明のことばかりだが、こころに止めておく価値はある」と。
 異議のないところだ。 (S)


複眼単眼

永田町を先頭に、この社会は大混迷・大混乱・大腐敗・大退廃だ


 なんということだろうか。このコラムで書かなくてはならない問題が追いつかないほどにドッとでてくる。永田町周辺の実態があまりにデタラメすぎるのだ。
 政府を批判したNGOをアフガン復興会議から排除した外務省官僚と自民党の鈴木宗男議運委員長。この連中が「NGO参加」などと言ってみても所詮、こんなもの。NGOなんてさしみのつまほどにも考えていない輩だから。それが外相更迭と外務次官、議運委員長の辞任などの「三方一両損(?)」の茶番劇となった。小泉首相の無責任さかげんが露呈した。
 この過程で首相の「女の涙」発言が飛び出した。二九日には衆参の女性国会議員二一名が連名で「首相の猛省を促す」という怒りの要求書を発表した。文書は「女性の発言や怒り、哀しみに偏見」を持ち「『男の涙』と区別された『演技性』『弱さ』などの差別・偏見を表す」と指摘した。
 それは決して「言いまちがえ」などではなく、小泉の思想性の浅薄さを示すものだ。それは森前首相や石原慎太郎らにも通じる自民党の政治家に共通するものであり、この社会に根深い問題に通底する問題だ。
 そうこうしているうちに今度は民主党の大橋巨泉議員が辞職。本紙今号が報道しているように、二五日の院内集会では有事法制批判を展開していたが、とうとう「自爆」してしまった。彼を三顧の礼で迎えた菅直人が「議論は党内で」と圧力をかけたからだ。彼が民主党から立候補したこと自体が、その水準を問われる問題だが、しかし、それでも立候補した時の公約は守ろうとしていたことは理解できる。彼が民主党内で有事法制に反対の声をあげつづけ、党外の勢力と連携するならそれなりの意義はあったはずだ。しかし、大橋にはそこを頑張りぬく覚悟はなかった。非難をしてもせんないこと、ご苦労様と言うべきか。
 二八日、共産党は「不審船」問題発生以来、一ヵ月の沈黙を破って「見解と提案」を発表。どうして今頃になったのか、これでは「前衛」ではありえないのはもとより、政党一般としても失格といわれて仕方があるまい。背景には共産党のこの問題での政治方針が、現実に適応できない誤った路線だということがあるのだが、もちろん、それへの公式の反省はない。
 さてさて永田町ではないが、雪印。アメリカではエンロン。疑惑とウソが新聞の見出しにならない日はない。子どもたちは野宿者を襲撃し、警察官の犯罪はあとを絶たず、史上最高の失業率の中で自殺者は激増する。これではまったく紙面が足りないね。(T)