人民新報 ・ 第1051号<統合144> (2002年2月25日)
  
                                目次

● 戦争拡大策動のためのブッシュ来日・日米首脳会談に抗議

    日韓民衆連帯の抗議行動
    米大使館にむけ抗議行動  寒風のなか、市民がデモ

● ブッシュの演説会場に届いた市民の抗議の声
       午前の国会前に100名の市民が抗議行動

● 2002年春! すべての争議の勝利を

● 全世界盗聴計画=エシュロン反対

● 資料 
     有事法制に反対する海員組合・全国港湾共同声明

● 資料
     ブッシュ米大統領の訪日・訪韓に反対する日韓市民・民衆の共同宣言

● 報復戦争の国際法上の問題点(下)
      市民集会での阿部浩己(神奈川大学)さんの報告

● 資料
      有事立法への疑義  ( 元防衛庁官房長 竹岡勝美 )

● せんりゅう  ゝ史

● 複眼単眼
         請願デモと山川暁夫とブッシュ来日



戦争拡大策動のためのブッシュ来日・日米首脳会談に抗議

日韓民衆連帯の抗議行動

 二月十七日、戦争の仕掛人であるブッシュ・アメリカ大統領が来日した。
 同日午後からは、「アメリカは戦争やめろ!小泉は自衛隊を撤兵しろ!2・17 ブッシュ来日抗議行動」が闘われ、小雨の中、東京・恵比寿公園での集会と渋谷デモに約六百人の労働者・市民・学生が参加し、日米両政府による戦争策動に抗議した。
 集会では、はじめに、主催者を代表して渡辺健樹さん(日韓民衆連帯全国ネットワーク)が、ブッシュの日本・韓国・中国訪問は「対テロ戦争」を主要議題とするものであり、小泉首相との日米首脳会談は「戦争会談」にほかならないものであり、大きな抗議の声をあげて闘おうと挨拶した。
 つづいて安次富浩さん(名護・ヘリ基地反対協代表委員)が沖縄からの訴えを行った。
 沖縄は、復帰三十年とそれ以前の二十七年の間、アメリカ軍の人権無視・基地公害・レイプなどをいやとうほど経験した。そして現在、沖縄は、中東への派兵の基地として機能させられ、民衆殺戮の基地となっている。アメリカは、世界各地で住民虐殺・破壊・劣化ウラン弾使用などきわめて危険な蛮行を行っている。こうしたことを見ればアメリカこそが、「悪の帝国主義」そのものであり、「ならず者国家」「テロ国家」だと言わざるをえない。民衆を虐殺するその根源は、ヒロシマ・ナガサキでの原爆投下にあり、アメリカは平気で無抵抗の市民を皆殺しにする。いま、アメリカは「良き隣人」のふりをして沖縄に居座ろうとしているが、私たちは名護海上基地建設を絶対に阻止し、米軍基地を必ず沖縄から追い出すために闘う。
 団体からのアピールは、横原由紀夫さん(「報復」戦争と日本の参戦を許さない!広島実行委員会)、田中徹二さん(ATTAC・ジャパン)、高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)、武藤弘道さん(全労協政治共闘部長)、大津健一さん(日本キリスト協協議会<NCC>総幹事)、杉原浩司さん(核とミサイル防衛NO!キャンペーン)、富山洋子さん(テロも報復戦争も反対!市民緊急行動)が行い、ブッシュの来日に抗議し、戦争のための日米首脳会談に反対し、アジアの多くの人にとともに連帯して闘って行こうと発言した。
 集会には、富平(プピョン)米軍基地返還・市民公園を造るための仁川市民会議運営委員長の金聖珍(キム・サンジン)さんが参加し(金さんは、韓国で六〇三の社会・市民団体、労働団体によって構成される「ブッシュ訪韓反対連席会議」から代表派遣され、前日十六日の広島での行動につづいて東京集会に参加し、翌日には大阪での行動に参加した)、次のように述べた。
 ブッシュは戦争の元凶であり、わが民族同胞である朝鮮民主主義人民共和国をはじめイラン、イラクなどを「悪の枢軸」と呼んで侵略戦争を仕掛けようとしており、絶対に韓国に行かせない。絶対に、ここ日本で足止めしたい。アメリカの起こそうとしている戦争は核戦争につながるものだ。昨日、広島で平和公園に行った。そこで影だけ残こして死んだ人の跡を見た。また原爆投下時の八時十五分で止まったままの時計を見た。朝鮮半島で核戦争になれば民衆はみんな死んでしまう。このようなブッシュを一歩たりとも朝鮮半島に足を踏み入らせてはならない。朝鮮戦争では、多くの住民が米軍に虐殺されたが、一九八〇年におこった韓国軍事政権による光州事件での民衆虐殺もアメリカ軍の支持があったからできたのだ。アメリカ型の新自由主義・グローバリゼーションは多くの人びとを路頭に迷わせているが、韓国では農産物の輸入圧力が農民を直撃している。このように韓国の民衆にとって、アメリカこそが悪の根源なのだ。今頃ソウルでも、ブッシュ訪韓反対集会が開かれているが、韓国と日本の民衆、そして平和を愛する世界の民衆の力でブッシュに鉄槌を下そう。
 集会では、「ブッシュ訪日・訪韓に反対する日韓市民・民衆の共同宣言」(別掲・二面)が読み上げられ、集会参加者全員で確認した。
 集会後、デモ行進に出発。警察は、機動隊指揮車をデモ隊の直前や梯団間に割り込ませたり並進規制をするなどの妨害を行ってきたが、き然と抗議し、はねのけて闘い抜いた。

米大使館にむけ抗議行動  寒風のなか、市民がデモ


 ブッシュ米大統領が来日し、日米首脳会談を終えたあと東京・西麻布の「居酒屋」で庶民の味を楽しむという企画がされた。その最中に、「テロにも報復戦争にも反対!市民緊急行動」の呼びかけで、「有事法制と日米軍事協力に反対す2・18市民のデモ」が行われた。この日はデモにさきだって永田町の社会文化会館前で午後六時四五分から集会が開かれた。緊急の呼びかけにもかかわらず、約二〇〇名の人びとが参加した。
 集会では日本消費者連盟の富山洋子さんの挨拶、十七日の日韓民衆が連帯して闘いとった「ブッシュ来日抗議行動」の報告を許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さんが行った。
 市民緊急行動からは、「本日のデモは国会誓願デモとして申請したが、警察が不当にも受け付けず、やむをえず社会文化会館から、赤坂見付、米国大使館前、日比谷公園のコースにせざるをえなかった」との報告があった。参加者は憲法などに保障された請願権を一方的に奪った警察当局の不当な措置に抗議の意思を表明した。   
 「居酒屋会談」をするブッシュと小泉首相のために、この日、警察は一万八千人の警官を動員して都内に厳戒体制を敷いた。また「突然訪れた」とされた居酒屋は、通信社の調査で事前に周到に準備されたヤラセであったことが判明した。
 その後、集会参加者は寒風の中を警察の挑発を跳ね返しながら、日比谷公園までデモ行進した。なお、十七日と十八日には名古屋、大阪、広島などでも市民がブッシュ来日に抗議するデモを行ったし、韓国でも市民・学生が日本の民衆と連帯しつつ、抗議行動を闘った。


ブッシュの演説会場に届いた市民の抗議の声

     午前の国会前に100名の市民が抗議行動


 二月十九日午前、ブッシュ米大統領は参議院で演説し、「反テロ」同盟の強化という危険な戦争拡大路線への日本の協力を訴えた。
 これに抗議する「テロにも報復戦争にも反対!市民緊急行動」(許すな!憲法改悪・市民連絡会、日本消費者連盟など)は午前一〇時から参議院議員会館に百名の人びとを集めて「ブッシュ来日抗議集会」を開いた。集会は市民連絡会の高田健さんが司会し、冒頭に社民党の福島瑞穂参議院議員、中川智子衆議院議員が挨拶を行い、議場でブッシュの発言を監視して闘うと挨拶した。
 日消連の富山洋子代表が主催者側からの挨拶をしたあと、韓国民主統一連合の宋世一国際部長が韓国でも民衆がブッシュ訪韓に抗議して闘っていることを報告した。
 VAWW−NET JAPANの松井やより代表は、タリバンを追放してアフガンの女性が解放されたなどという宣伝はウソで、依然として彼女たちは極度の苦難の中にあることを報告。全統一労働組合の鳥井一平書記長はアメリカ議会で唯一、ブッシュの戦争演説に反対したバーバラ・リーさんを日本に招く運動の報告をした。東ティモール日本文化センターの吉岡さんは自衛隊がまもなく派遣されるが、第一陣が到着する二月二二日は一九四二年に日本軍が東ティモールを侵略して六〇周年にあたるのは果たして偶然なのかと指摘した。
 集会参加者はブッシュの参議院での演説が始まる午前一〇時四〇分になると、警備の警官の妨害を跳ね返して、議員会館前に出てプラカードと横断幕をかかげ、一斉にシュプレヒコールを行った。松井さんのリードで英語のシュプレヒコールも叫んだ。
 「ブッシュは戦争をやめろ」「アフガンの女性や子どもを殺すな」「悪の枢軸発言を撤回しろ」「小泉は戦争協力するな」「自衛隊を撤兵しろ」などの声がブッシュが演説する院内にもとどいた。


2002年春! すべての争議の勝利を

 二月十九日早朝から全一日、寒風をついて「けんり総行動」(二〇〇二年けんり総行動実行委員会、連絡先・全労協)が闘いぬかれた。
 「働く権利・働く者の権利・人間としての権利」と「二〇〇二年春!すべての争議の勝利を」を掲げ、朝九時半の富士銀行(全統一光輪モータース労組・組合否認)前での抗議集会・申し入れ行動を展開し、その後、UBS(埼京ユニオン・解雇、ミニットジャパン・事業所閉鎖)、東京スター銀行(埼京ユニオンカメラのニシダ・倒産)、由倉工業(全国一般由倉工業労組・不当労働行為)、NTT大手町(木下孝子さん解雇)、あさひ銀行(京都コンピューター学院・解雇、東京外語専門学校・解雇、岩井金属・組合否認)、三井住友銀行(東洋印刷・整理解雇、東部労組高砂産業・倒産)、JR東日本(一〇四七名解雇)、阪急交通社(アイ・エー・エス・エス白田さん解雇)、日逓(郵政全労協日逓支部・賃金差別)、郵政事業庁(郵政四・二八不当処分解雇)、東京外語専門学校(解雇)、昭和シェル(賃金差別)、フジTV(反リストラ産経労・解雇)、国土交通省(一〇四七名解雇)への抗議・申し入れを行った。
 いくつかの争議の現状は解決にむかって重大な局面に入っている。 
 全国一般労働組合東京南部東京外語専門学校教員組合は、一九九五年以来六年にわたり組合員十六名の解雇撤回を闘っている。学校経営側は九五年から教員組合の組合員ばかりをターゲットし三次にわたり解雇攻撃をかけ組合員を学校から排除したが、昨年三月には東京地裁は当該十六名中十四名については解雇無効の判決を出している。八月には東京高裁が職権で和解を勧告し和解協議も三回行われているように争議は決定的な段階を迎えている。
 全統一労組光輪モータース分会は、富士銀行と会社の間で一四〇億円にのぼる金額をめぐって争われていた裁判が和解するという会社再建にむけての動きが出てた状況、とりわけ銀行が会社に対して出した条件に「労働争議の解決」があることをうけて、勝利に向けての闘いに全力を上げている。
 総行動に参加する争議は多くの仲間の支援を受けて闘いを堅持し勝利の展望を切り開いている。
 広範な労働者・勤労大衆に犠牲を押し付け大資本のみの利益のために強行される小泉構造改革攻撃が激しくなるなか、解雇・倒産が急速に増加している。
 労働者は大きく団結して、資本・親資本を包囲・抗議し、リストラ・合理化に反撃する大きな戦線を形成して行こう。


全世界盗聴計画=エシュロン反対

 「エシュロン」という聞き慣れない存在の「全世界盗聴計画」の真実を明らかにし、警戒を呼びかける「エシュロン国際集会」が、二月十六日、東京の中央区で開かれた。集会は超党派の国会議員や市民運動家などの呼びかけで、一八〇名の人びとが参加した。
 この集会には欧州議会エシュロン特別委員会の委員をつとめるイルカ・シュレイダーさんが参加し、講演した。イルカ・シュレィダーさんは欧州議会議員で、元ドイツ緑の党員で、現在は無所属。監視やプライバシー、移民の問題などに熱心に取り組んできた。
 富山大学教員の小倉利丸さんの司会で、最初にこの間、盗聴法問題に熱心に取り組んできた社民党の福島瑞穂議員が挨拶した。
 イルカ・シュレイダーさんの講演要旨は以下の通り。
 エシュロンは第二次世界大戦中に主として英語圏での諜報機関の連合として出発した。のちにこれにカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わり、さらに日本、ドイツ、韓国、トルコ、ノルウェイなどが参加している巨大な、世界最大のコンピュータ・ネットワークだ。
 衛星通信による盗聴網はカナダの最北から、ニュージーランドまで覆っている。日本では青森の三沢に地上基地がある。 エシュロン軍事利用はもとより、米国企業のための産業スパイ、麻薬やテロリズムなどの犯罪対策、特に左翼対策のための政治的諜報などに利用されている。
 欧州議会も調査したが、それぞれの国に関わるため、あまり熱心ではなかっ
た。エシュロンには欧州議会で六〇〇人中、一〇〇人が反対した。各国政府は各
国の多数党で与党が作られており、議会によってこの諜報活動をコントロールすることは事実上、不可能だ。裁判所も検察もエシュロンというデリケートな問題に触れて火傷をしたくないと考えている。
 わたしたちはあらゆる情報機関の廃止を要求して闘わなくてはならない。タリバンやビンラディンは八〇年代、九〇年に米国、パキスタン、サウジアラビアの諜報機関が作ったものだ。サダム・フセインはイランとの戦いで米国諜報機関に育てられた。旧ユーゴではドイツの機関が活動した。パナマからコンゴにいたるまで、諜報機関は自らの存在を正当化するために問題を引き起こしている。
 これを廃止する運動は短期的には困難だが、まず自分自身をこれらの情報活動から防衛するところから始めなくてはならない。


資料 
     
有事法制に反対する海員・全国港湾共同声明

 @.海員・全国港湾は、職場の安全と命を脅かし基本的人権を制限する有事法制に強く反対します。小泉首相は、二月六日の施政方針のなかで戦争に備える有事法制を今次国会で成立させることを明言しています。
 最近の報道によれぱ、その名称を「武力攻撃事態への対処に関する法制(仮称)」とする方向と言われています。政府与党は、数十を超えるといわれる関係法案・政省令の新設や改定など、戦前の国家総動員体制に準じた戦時国家統制と国民動員を合法化する諸法規を包括法案として、一気に国会成立を狙うものと思われます。
 わが国の将来にとって重大な岐路となる法案を、反対世論の高揚を恐れ国民の目の届かぬうちに短期に成立させようとする政府の対応は、国民主権の原則を踏みにじり民主主義を否定する点からも断じて容認できません。

 A.海員・全国港湾は、先の周辺事態法の際には自らの悲惨な戦争体験にもとづき、なによりも職場の安全と命を大切にする観点から共同して反対し、その廃止を強く訴えてきました。周辺事態法は、第一に、憲法の理念と原則を否定し米国が引き起こす戦争に自動的に参戦・協力する体制を整備し、第二に、「後方地域に限定」といえども兵站行動は明白な軍事作戦行為であって民間労働者も攻撃の対象になり、第三に、軍事物資の海上輸送や荷役など米軍作戦に民間協力が強要され、第四に、民間船舶や港湾施設の軍事転用により、国民生活にも重大な影響を及ぼすことを厳しく指摘してきました。また、周辺事態法の後に「民間協力」の拒否には罰則を適用するなどの強制措置を伴う本格的な戦争動員法(有事法制)制定の動きに対し警告を発してきました。

 B.海員・全国港湾は、周辺事態措置法の全面的な強化・補完法として機能する有事法制制定に反対します。私たち船員・港湾労働者にとっては、周辺事態法の発動によってわが国領土をも武力衡突に巻き込み、次いで防衛出動下の「従事命令」発動による強制的軍事徴用、船舶航行や海運活動、港湾施設の戦時統制など容易に可能とするための法整備を認めることはできません。

 四.海員・全国港湾は、今、わが国が行うべきことは、領土が他国の直接的軍事侵攻を受けて国家間の全面的な武力衝突という政府自らも否定する「ありえない事態」を前提に、基本的人権や私権の制限を含め、あらゆる分野で軍事優先の国家統制を可能とする法制度を準備することではなく、平和憲法を持つ国として「平和の理念」を掲げた徹底した多角的な外交努力こそ安全保障政策の要であることを強く訴えます。
 私たちは、戦争の悲劇を繰り返した二〇世紀から「平和な二一世紀」へ、そして平和な海と平和な港の実現を強く希求します。そのために、真っ先に戦時動員の対象とされる陸・海・空・港湾の交通運輸労働者はじめ、広範な有事法制反対の声を結集して運動することを決意し、ここに共同してアピールします。

二〇〇二年二月一五日

全 日 本 海 員 組 合 全日本港湾労働組合協議会


資料
    
ッシュ米大統領の訪日・訪韓に反対する日韓市民・民衆の共同宣言         

 平和な世界を願って二十一世紀を迎えた今日、私たちはかつてない危険に直面している。
 最も強力な軍事力と最も傲慢な対外政策を一手に握ることによって、人類史上最も危険な国家として浮上した米国が、世界に向かって「戦争」を宣言したのだ。テロへの「報復」という名目で、テロとはまったく無関係な罪もない命を殺戮している米国は、アフガン戦争の炎を世界各地に拡散しようとしている。すでにフィリピンへの軍事介入も開始されている。これらの命令を下している当事者こそブッシュ米大統領にほかならない。
 ブッシュ大統領はまた、一月二十九日の一般教書演説で朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)、イラン、イラクを「悪の枢軸」だと名指しし、緊張を煽りたてている。とりわけブッシュ政権が、私たちの祖国であり、私たちの隣国である朝鮮半島に再び戦火を持ち込むものだという内外の憂慮を耳にするとき、私たち日韓(韓日)の市民・民衆はあらためて大きな怒りと憂慮を禁じえない。
 私たちはまた、新自由主義・グローバリゼーションの名のもとで、他国の経済主権を奪い、アメリカ式資本主義(新自由主義)を押し付ける米国の政策が、全世界の民衆を飢餓と絶望のどん底に追い込もうとする事実を直視せざるを得ない。
 このようなところから、私たち平和を愛する日韓の市民・民衆は、ブッシュ米大統領の訪日・訪韓に強く反対し、共同の要求を発するものである。

 1) 戦争拡大を中止し、朝鮮半島への戦争政策を中止せよ!
 2) 新自由主義、グローバリゼーション政策中止せよ。韓米・日韓(韓日)投資協定反対!
 3)ミサイル防衛(MD)強要、戦争武器の押し売りを中止せよ!
 4) 沖縄の新鋭海上基地の建設計画を撤回し、韓国、沖縄・日本におけるすべての米軍基地を全面返還せよ!
 5) 住民虐殺から漢江毒物垂れ流し事件まで、米軍犯罪を謝罪し韓米行政協定を改定せよ!
米軍犯罪、騒音・環境犯罪を謝罪し、日米地位協定を改定せよ!
 6)六・一五南北共同宣言の実現のための朝鮮半島南北の努力を干渉、妨害するな!
 7)金大中政府はアフガニスタンへの派兵を撤回し、屈辱的韓米協調を中止せよ!小泉政権はアフガニスタンから自衛隊を撤兵せよ!
 8)有事法制の成立と日米軍事協力強化の動きを中止せよ!

<韓国側>
 民族自主・民主主義・民衆生存権をかちとるための全国民衆連帯(準)
 米軍基地返還共同対策委員会
 米軍虐殺蛮行真相究明全民族特別調査委員会・南側本部
 不平等なSOFA改定国民行動
 MD阻止と平和実現共同対策委員会
 ヨンサン(龍山)米軍基地返還運動本部(準)
 六・一五南北共同宣言実現と朝鮮半島の平和のための統一連帯
 戦争反対・平和実現共同実践
 投資協定・WTO反対国民行動(KOPA)
など六〇三の市民、社会、労働団体

 (注)表記されている団体は、民主労総、全農、全国連合はじめ主要な在野団体、市民、宗教者団体等が総網羅されている共同闘争機構です。

<日本側>
 【広島】アメリカは戦争やめろ!小泉は自衛隊を撤兵しろ!ブッシュ来日抗議広島2・16集会(●主催・代表連絡先 「報復」戦争と日本の参戦を許さない!広島実行委員会<共同代表:横原由紀夫、湯浅一郎>)
 【名古屋】ブッシュ来日反対2・16行動実行委員会(●代表連絡先 テロも戦争も反対 ピースアクション、不戦へのネットワーク)
 【東京】ブッシュは戦争やめろ!小泉は自衛隊を撤兵しろ!2・17ブッシュ来日抗議行動実行委員会(●代表連絡先 沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、戦争協力を拒否し、「有事法」に反対する全国FAX通信、日韓民衆連帯全国ネットワーク、許すな!憲法改悪・市民連絡会)  
 【大阪】戦争やめろ!ブッシュ来日・訪韓に反対する2・18緊急集会(●主催「しないさせない戦争協力」関西ネットワーク、●代表連絡先 関西共同行動(中北法律事務所)、おおさかユニオンネットワーク)

 二〇〇二年二月十六日


 報復戦争の国際法上の問題点(下)

      
市民集会での阿部浩己(神奈川大学)さんの報告


D 米国のアフガニスタン攻撃は自衛権により正当化されるのか


 アメリカは自衛権の名のもとに武力攻撃を開始した。現行の国際法においては集団安全保障体制を除けば、国家が単独で、あるいは他の国とともに行う武力を正当化しうる唯一の根拠が「自衛権」だ。したがってアメリカも「自衛権」に基づく武力行使だと言った。
 しかし、前項で見たような幾重もの要件がクリアされているのか。
 まず武力攻撃があったと言えるのか。
 九月十一日、民間航空機を強制的に進路を変えて世界貿易センターやペンタゴンにに激突させ、多くの死傷者をだした。これは武力攻撃と言えるのか。民間航空機を武器化した、被害の大きさを見よ、武力攻撃に相当する攻撃ではないかという声がある。
 しかし、そうだとしても九月十一日の行為を行った勢力をかくまっているのはアフガニスタンだ として攻撃したが、かくまっているというだけで攻撃することは許されない。アフガニスタンの政府が、九・十一をやったとされるアルカイーダを命令・管理していた、あるいはそれに相当するような関与をしていたとみなすことができるのか。これが問われる。いまにいたるも命令・管理・関与の証拠は示されていない。
 さらに緊急性の要件がある。九月十一日の事件によって、アメリカは「緊急、やむをえない場合」に攻撃したのか。実は四週間すぎてからだ。緊急性の要件を満たしていないのではないかと考えるほうが合理的だ。アメリカはいつ起きるかわからないから、緊急性の要件を満たすのだというが、いつ起きるかわからないからというのは「先制自衛」であり、これは禁止されている。
 では均衡性の要件はどうか。アメリカは内戦の一方の側に加担し、タリバン政権そのものを転覆した。その過程で大規模な国外難民、国内難民を発生させ、大規模な人間の苦痛を発生させた。これは国際人道法によって守られたさまざまな規範 、たとえば健康の権利、教育を受ける権利、社会保障にたいする権利などが実現される機会を大規模にはく脱した。これらがアメリカが受けた攻撃と均衡がとれていると言えるのか。
 ところでブッシュ大統領は議会で「これは文明全体にたいする攻撃だ」と言った。アメリカ個別の利益ではなく、文明全体の利益のための闘いだということで、日本をはじめ多くの国々を動員することにした。「文明の戦い」に「自衛権」が妥当するのか。自衛権はあくまで攻撃を受けた国を暫定的に守るために限られている。アメリカが考える国際社会はイコール・アメリカで、アメリカ一国の利益イコール文明全体の利益と考えれば、なるほどと思う。しかし、これはアメリカの支配エリートとそれをささえている人びとにしか通用しないだろう。
 暫定性の問題。国連の集団安全保障体制に移行しなくてはならないが、アメリカはその気配をみせない。国連事務総長がそれでもいいと最初に言ってしまった。アメリカが依拠するふたつの安保理決議はすでに見たようにアメリカの軍事力の行使を容認したものではないし、安保理にかわってアメリカに憲章第七章にもとづく武力行使を求めたものでもない。
 アメリカのアフガン攻撃は自衛権をめぐる国際法の要件と多くの場面で齟齬(そご)をきたしていると考えられる。

E 米国の空爆には国際法上問題はないのか

 では自衛権の名のもとに武力行使が許されたとして、個別の軍事力行使、たとえば空爆はどうか。「誤爆」「不随的被害」の名のもとに民間の死傷者が去年の十二月七日の段階で三千七百人を越えているという報道があった。個別の軍事力行使について国際法が細かい規制を始めたのは無差別戦争観の時代だ。たとえば一九四九年に作られたジュネーブ条約は四つある。その後、一九七七年に別に二つの条約ができた。そのひとつが「ジュネーブ第一議定書」だ。これは条約に入っていない国も拘束する世界慣習法と言われている。
 「予期される具体的かつ直接的な軍事的利益との比較において、過度に、巻き添えによる文民の死亡、文民の傷害、民用物の損傷またはこれらの複合した事態を引き起こすことが予想される攻撃」、これを無差別攻撃とよび禁止している。
 無差別攻撃でなくするためには、軍事目標に限られるという「空爆の目標の設定において誤りがないこと」、小さい軍事施設を攻撃するのに大規模な殺傷能力をもった爆弾を落とさないなど「空爆の方法、手段が適切であること」「過失により文民に不必要な被害が生じないこと」がクリアされなくてはならない。
 三千人以上の一般市民が死に、住宅集中地域が攻撃されたというのは、きちんと検証しなくてはならないが無差別攻撃の可能性が高い。それ以上に問題なのは方法・手段で、あまりにも大規模な殺傷能力をもった爆弾があまりにも多く投下された。これは無差別攻撃といわれてもやむをえない。さらに考えなくてはいけないのは、橋が壊され、学校が壊され、道路が破壊され、建物が破壊されるということで市民生活それ自体が長期間にわたってできなくなる。これも無差別攻撃だ。ジュ ネーブ第一議定書ではこうした違法行為をひきおこしたアメリカは賠償責任を負う。そして賠償責任は個人も負うと書いている。もしもそれを意図的に、故意にやったら戦争犯罪人として処罰の対象になる。

F アフガニスタンの新しい政権の樹立にアメリカが直接関与したこと


 アフガニスタンがどのような政権を樹立するのかについて、外部の勢力がかかわることは、国際法上での大原則の人民の自決権に触れる。どのような政治・経済・文化体制を設けるかはその国の人たちが決める。そのアフガニスタンの人たちの自決権をふみにじることになる。

G テロ行為実行者の処罰の問題


 アメリカはビンラディンを捕捉して、あるいは殺して処罰するという。九月十一日の事件は国際法上、最大の非難をあびてもおかしくない。アメリカだけでなく、どこでおきようと非難を受ける。その行為を引き起こした人は犯罪者として処罰をすることが必要になってくる。
 本来、このような事件が起きたら、暫定的にアメリカが自衛権を行使することがあった場合でも、安保理に事件が付託され、そのもとで犯罪者の引渡しをもとめ、処罰するという集団的な体制のもとで行っていくというのが、国際法が本来、予定していたことだ。
 犯罪者はどこで処罰されるか。米国でやるのか、国連の法廷を設けるかの二つがある。アメリカの中でやる場合でも、通常の法廷でやるか、軍事法廷でやるか。アメリカは通常の法廷は避けたいといっている。しかし、アメリカのどの法廷でやるにしても、あるいは特別の国際法廷でやるにしても、守らなくてはいけない国際法のルールがある。処罰されるまでの被疑者としての処遇はきちんとしなければならない。裁判も証拠に基づいて裁きを受ける。被疑者、被告人の人権をまもらなくてはならない。
 そうでなければ裁判自体が一方的な勝者の裁きとなり、禍根を残すものとなる。
 刑罰の問題でも、ヨーロッパに今回の事件にかかわったとされる人が大勢いる。アメリカは引き渡しを求めているが、欧州の国は引き渡せない。アメリカには死刑があるからだ。国際法上は死刑を禁止するながれが大きくなっていて、日本、アメリカ、中国はそれに抵抗している大国だ。
 被疑者のアフガニスタン人がキューバのグアンタナモ基地に一六〇人以上、移送された。アメリカはこれを「不法戦闘員」だというが、国際法ではこういう言葉はない。アメリカが今回、作り出した特殊な用語だ。捕虜か、犯罪の被疑者かのどちらかだ。
 このように武力攻撃を開始した段階、そして個々の武力攻撃をみても、そして新政権の樹立の過程をみても、またとらえた人の処遇を見ても、無数に国際法上の問題がひそんでいることがわかる。これらの問題の多くが無視されている。かろうじて、キューバに移送された人たちを国際法にもとづいて行えという声がヨーロッパからでている程度だ。日本政府はこれらに批判的な姿勢を示したことが一度もない。

H 日本の振る舞い、国際法への関わり

 すくなくともアメリカの行ってきた行為の多くが国際法上、違法行為だったとすれば、それに加担している国もまた国際法に違反している国となる。賠償責任も負う。
 アメリカは今回の事件を通じて「イスラエル化」している。イスラエルは中東の中で、アメリカは世界的な規模でやっている。軍事・治安維持機能が強化されることは、不安感が再生産されることになる。そうなると脅威をできるだけ外に排除したいと思う。国境の管理が強まり、脅威を引き起こしているとされる異質なものを排除する力学が大きくなってくる。その異質なものの典型として、難民や外国人の締めだしがすすんでいく。
 日本のアフガニスタン難民の処遇がそれを端的に表している。二〇〇一年一月から十一月にかけて、七七名のアフガニスタン人難民の申請があった。うち難民認定されたのは一人。不認定が二六名。九・十一がおきてからはアフガニスタンからの難民申請者だけをねらって収容する事例がでてきた。二三名も収容された。他の国からきた難民申請者は収容されないのに。これは難民条約に違反するものだ。
          
I 国際法を市民の手に

 テロ行為の温床にきちんと向きあっていかなくてはならない。その温床が経済のグローバリゼーションであることも言うまでもない。経済のグローバル化の進行によって貧富の差が拡大し、社会分裂が進行し、不安定な状況が訪れ、そこにテロが腰を落ち着ける温床が生まれることは指摘されている。
 しかし、経済のグローバリゼーションを推し進めてきているのも国際法だ。その最大の機動力は世界貿易機関(WTO)であり、国際通貨基金(IMF)だが、これは条約・国際法によって成り立っている。つまりテロの温床を生み出しているのも国際法だ。
 国際法はひとつの顔だけをもっているのではなく、いろいろな顔をもっている。人権を擁護するための国際人権法、軍縮をすすめていく国際法もある。他
方、市場原理を広げていこうとする分野もある。国際経済にかかわる分野は国際法で大きな力をもっている。
 本来、まもられるべき国際法が守られていないと同時に、国際法そのものが果たして私たちの利益を本当に反映するものなのかどうかの問いかけが必要だ。
 国際法はだれが作ってきたか。だれの利益を反映するものであったか。第一に日本を含む先進国中心の利益をになってきたのが国際法だった。そして男性だった。また過去の問題を扱い、将来の問題を扱うことを許さず、現在の秩序だけをまもろうとする現在中心主義。これを守ろうとして国際法が機能してきた。それが国際経済の分野にもっとも端的にあらわれでている。
 そのような国際法を変えなくてはならない。どのような方向に変えるかは、これまでの国際法を考えれば必然的にあきらかになる。非欧米的、市民的、女性的、過去・未来の経験に「ひらく」こと、こういう形で実現してはじめて国際法の変革が可能になる。
 たとえばアフガニスタンの復興会議の陰に忘れられた三七〇〇人の民間人の死傷者の救済、これをどうするかは大きな問題だ。国際法違反でひき起こされた被害にたいして直接に賠償を求める運動をつくることは絶対に必要だ。これを国際法をつかってやっていくところに、国際法を変革していく道があるのではないか。
 国際法は今回、沈黙を強いられた。沈黙のあとにでてくる国際法はまったく別の姿に変容するかも知れない。武力行使に関しては新しい時代の正戦論が大きくなっていく可能性がある。しかし、それを進めているのはだれで、どういう利益が生ずるのかをきちんと見極めなくてはならない。
 全世界で起きている市民の運動に希望をもっている。国際法を踏み越える支配エートに対抗する市民の声に、国際法の再構築への共感が投影されている。(おわり)


資料

国会議員有志各位への陳情(2002年1月下旬)

      
有事立法への疑義

                
元防衛庁官房長 竹岡勝美  

 元防衝庁官房長の竹岡勝美氏は、一月下旬、「有事立法への疑義」という文書を国会議員有志へ送った。 竹岡氏は、一九二三年生まれ、京大法学部卒後、国家地方警察本部入庁、警視庁交通規制課長、防衛庁人事教育局長などを歴任し、七七年に防衛庁官房長、七八年に防衛庁調達実施本部長、八〇年退任という超エリート防衛官僚であった。
 しかし竹岡氏は近年の危険な軍事大国化の流れに警鐘を乱打する活動を行っている。今回のこの文書もそうした活動の一環である。議員に対するあいさつなど文書の一部を割愛して掲載する。(編集部)


  ※ ※ ※ ※

 『本格的な有事法制』とは、日本に届き得る距離にある周辺隣国のいずれかの国が、日本本土に空と海から猛攻を浴びせ、制空、制海権を確保の上で、地上軍を日本に上陸侵攻させ、自衛隊に防衛出動が発令され(防衛出動待機命令下も含む)、国土が戦場と化す「有事」(戦時)の事態に対応し、これに抵抗するために一億の国民は総動員され、国民皆兵の総抵抗の国家体制を律する法制を指すのではないでしょうか。
 最近の防衛庁の準広報誌「セキュリタリアン」の有事法制特集号にも「有事の際、敵は先ず空からの攻撃を加え、海から侵攻して来ることになる」と説明しています。
 戦時下の日本(国土が戦場化していないで専ら国外で闘っていた)では、有事法制として既に戒厳令、徴兵制、軍機保護が整備され、日中戦争が進む昭和十三年前後に「国家総動員法」が立法され、併せて「防空法」や「言論、出版、集会等の臨時取締法」が整備されました。そして、昭和二〇年六月頃、沖縄陥落後の本土決戦に備えて、十六〜六〇才の男性、十七〜四〇才の女性を兵役に服させる「義勇兵役法」まで用意したと聞きました。
 今、これらの有事法制を復活させよと言うことでしょうか。
 問題は、現憲法も、政治も、国民世論も、このような日本がカタストロフィに陥るような国土の戦場化という「有事」をまともに現実のものとして想定してこなかったのではないでしょうか。その証拠に国土の戦場化に伴い、一基でも爆砕されれば国土が核地獄と化す原子炉を五十二基まで構築してきて何の危機感も生じてきませんでした。
 今、有事立法を迫られている防衛庁、内閣官房の当局者は困惑しているのではないでしょうか。
 憲法遵守義務が科せられている官僚として、前記のごとき、国土が戦場と化した一億総動員下の有事法制は、真剣に考えれば、超憲法的な法制にならざるを得ないからです。拙論のごとく、先の森喜朗首相も「有事法制の検討は憲法の範囲内で行い、旧憲法下の国家総動員法は検討の対象としない」と答えざるを得ず、今、伝えられている第三分類に踏み込む有事法制案も、「国民の避難、誘導」「民間船舶、航空機の航行制限」「電波の使用制限」「捕虜の取扱い」等の第二分類に近い当たり障りのない憲法の範囲内の項目が挙げられていると言います。これで有事法制推進論者は納得するでしょうか。
 しかし、彼らにはどのような具体策があるのでしょうか。
 私が防衛庁官房長として防衛庁内局の責任として昭和五二年八月から発足させた「有事法制の研究」も「憲法の範囲内で」「自衛隊の有事の行動に関する法令の不備の補い」という第一、第二分類のみにしぼり、しかも研究の段階にとどめました。これは有事立法の端末にすぎません。私には国土が戦場と化した戦禍の甚大さは想像を絶しましたが、その際国家総動員、国民総抵抗体制を律すべき法制については、政治の決断に委ねました。幸い今日まで有事法制は全く無用でした。
 周辺隣国に一方的な対日侵攻の意図など全く見えないのに、超憲法的な国家体制にまで踏み込みかねない有事立法と、今、なぜ騒ぐ必要があるのでしょうか。徒に周辺隣国への敵意と警戒心を煽ることにはなりませんか。
 有事は国土の戦場化と見る私には「自衛隊法」の「治安出動」や「警察法」の「緊急事態」は入りません。不審船騒ぎや国際テロ事件も対象外ではないでしょうか。所管法令の補備で済みましょう。
 私は日本の外交、防衛に有事をもたらさぬ「抑止」を期待します。米国に率先してでも、北朝鮮をも含む朝鮮半島や中台間の和平に献身して戴きたい。

以上


せんりゅう

 パチ友のおけら話は吉野屋で

 かいかくは貧者に耐えろの策ばかり

 チモールで侵略の予行演習

 有事法八紘一宇をかくしてる

 憲法の枠に入らぬ有事法

 カフカの『城』より難解外務省

 国会に張りぼてのような声響き

 核実験しといて親善外交

 アメリカの絶対悪をほめている

 ブッシュ戦略明治天皇にご挨拶

 ブッシュだけ公式参拝でござい

 貧民が怖くて反テロ外交

 一般論としてあのうのうでございます


             ゝ史
 
         …………

 階級支配。階級的な敵が、かつてはソ連を中心とする社会主義圏に代表されていた。冷戦構造としてその対立が象徴されていた。今や、階級的な敵は貧民貧国として全世界に広がっている。反テロ戦略構造の形成のためにブッシュ来日だ。

* 第一句 パチ友とはパチンコ屋でできる友人のこと。次の句を想い出す

 パチンコ屋おやお隣さんもですか

 オイルショックの頃、失業者を描いた名作。作者は蓮夫だったと記憶している。
* 第三句 東チモールへ自衛隊六八〇人を道路や橋の建造という名目で送り込む。不況下のゼネコンに頼めばいいものを。
* 第六句 フランツ・カフカ『城』は官僚制を痛烈に批判した文学。難解なことで話題となった。 

* 第十三句 国会で答弁する政府高官。


複眼単眼

     
請願デモと山川暁夫とブッシュ来日

 「憲法第十六条・何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令または罰則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない」
 今では当たり前になった国会デモの形態のひとつに「請願デモ」というのがある。憲法のこの条項を生かした人民の「請願権」の行使だ。警察が公安条例などによって、「国会の静穏の確保」などの口実で民衆の国会デモを許可しないことに対抗して、国会議員に対する人民の「請願権」を行使し、デモが禁止されている国会で出迎える国会議員に「請願」にいくと言う形で、事実上のデモを実現するための表現形態だ。
そのため、国会に向かったデモ隊は国会近くでいったん止まり、旗やプラカードをおろして、宣伝カーもつかわず、請願行進に変わる形をとる(これが六〇年安保闘争のときは、全学連の元気な若者たちからは粛々とお参りする葬式になぞらえて「お焼香デモ」と揶揄された。この全学連の批判は当時、右傾化していた共産党への反発からでており、理解できるが、請願デモ戦術一般への批判としてはきつすぎたと思う)。そして国会前で議員の出迎えを受け、署名などを手渡し、デモが国会を離れると再び旗を立て、デモ隊形に移行するのだ。
 初めて体験する人は、この形式の異様さに怒ることもあるし、デモ隊も抵抗して、いったんおろした旗を歩き出したらすぐ立てるという抵抗をして、元のデモ隊形の復活をする。ハンドマイクでガンガン、シュプレヒコールもする。だから請願デモは国会議員が出迎えるのが条件になる。
 この「請願デモ」という奇抜なデモをあみ出したのは知恵者・故山川暁夫同志であることはあまり知られていない。
当時、山川同志は共産党員で川端治と名のっていた。山川同志は晩年、「国会議員に対する請願権と言うのは国会だけでなく、国会議員のいるところ、どこでも行使できるのだから、地方などでもっと創造的に使うべきだ。例えば新幹線の中でやってもいいんだよ」となんども筆者に語った。
 残念ながら、山川同志のこの提案を実現できないうちに彼は亡くなった。
 ブッシュ米国大統領の訪日のさなか、市民団体の「テロにも報復戦争にも反対!市民緊急行動」は二月十八日の夜、国会請願デモを申請した。「ブッシュは戦争をやめろ、小泉は自衛隊をアラビア海から撤兵しろ」という要求のデモだ。社民党の国会議員などが出迎える予定だった。
 しかし、警察は「日本にとってのVIP中のVIPの来訪中だ」という口実で申請を受理しない。押し問答のすえ時間切れで、申請者はコースを変え、永田町から赤坂見付、米大使館前のコースとなった。
おそらく、「請願デモ」が警察の妨害で実現しなかったのはこれが初めてではないか。本来、何日でも粘るべきだったとか、即時、妨害排除の仮処分申請をすべきだったとか、いろいろ問題もあるとは思われる。
 この日、デモ隊は寒風の中、元気にがんばった。ブッシュと小泉が「庶民の味」を楽しむために、居酒屋で一人一万円の酒と料理で会食している時刻にシュプレヒコールを高らかに叫んで行進した。デモの並列規制に出た警官隊の撤退を要求して、デモをストップして抗議し、とうとう警官隊を追い返した。米大使館前でも声を限りにシュプレヒコールをたたきつけた。しかし、「請願デモ」が不当に妨害されたこの日を忘れてはならない。二度と警察のこういう暴挙を許してはならない。
 二月十二日は山川同志が亡くなってまる二年目だった。 (T)