人民新報 ・ 第1058号<統合151> (2002年5月5日)
  
                                目次

● 世界の人びととともに戦争を止めよう 戦争準備と「国民総動員」の有事法制阻止

      東京の国際連帯集会に一〇〇〇名が参加

● 「国家総動員法」への基礎作りに、いまこそ全力あげて反撃を

● 郵政4・28反処分闘争 23周年 東京地裁不当判決糾弾 新たな闘いへ

● 多国籍企業のために労働者を犠牲にする「日韓投資協定」国会批准NO!

● 有事法制本会議討議開始に、市民らが緊急抗議行動展開

● 有事法制に超党派国会議員と市民が院内集会で抗議

● 「ホームレス」自立支援法 早期に成立させようと国会行動

● マルクスの「過渡期社会」像の検討 B マルクスと労働者生産協同組合 (北田大吉)

● 改憲に怒る「沖縄のこころ」 / 憲法調査会沖縄地方公聴会を傍聴して

● 有事法制に反対するキャッチコピーの選考結果

● せんりゅう (ゝ史)

● 複眼単眼 / NHKによる憲法問題の世論調査の結果を考え



世界の人びととともに戦争を止めよう

    戦争準備と「国民総動員」の有事法制阻止


東京の国際連帯集会に一〇〇〇名が参加

 四月二十日午後、東京港区の芝公園で「世界の人びととともに戦争を止めよう!有事法制に反対 全国集会」が開かれ、その後、銀座に向けたパレードが行なわれた。集会を主催したのは「テロにも報復戦争にも反対!市民緊急行動」などでつくる実行委員会。
 この日の集会はアメリカの「戦争と人種差別主義に反対するワシントン行動(略称・ANSWER)」などが呼びかけ、世界十五ヵ国で取り組まれた国際反戦行動の一環で、東京の集会にはフィリピン、韓国、アメリカからの代表をはじめとする外国代表と、広島、横須賀などの地方代表、沖縄のミュージシャンの喜納昌吉さんをはじめ、都内の市民団体、労働組合、宗教団体などから約一〇〇〇人の人びとが参加し、「反戦平和、有事法制反対」の声をあげた。
 集会では司会を日本キリスト教協議会の西原美香子さんと小平市議会議員の橋本久雄さんが行い、主催者あいさつは日本消費者連盟の富山洋子さん。
富山さんは国際的に連帯したこの日の反戦行動の意義を強調し、小泉内閣が国会に提出した有事法制は戦争への道であり、絶対に許さないとの決意を表明した。
 外国組織からの連帯あいさつは、「非核フィリピン連合」のコラソン・バルディスさん、韓国から来日した三人を代表して「民族自主・民主主義・民衆生存をかちとるための韓国全国民衆連帯」のパク・ソグンさん、アメリカ退役軍人連合のジョン・スチュワートさんが発言し、参加者の熱烈な拍手をうけた。またアメリカの「聖公会・横須賀基地調査団」からのメッセージも読み上げられた。
 日本での有事法制に反対する市民の運動が、ワシントンでのアメリカ市民の反戦集会に連帯し、これだけ多くの外国代表を直接招いて集会を開いたことは画期的なことだ。小泉内閣の有事法制強行の動きが日米共同のグローバルな範囲での戦争対応を想定したものであるだけに、これらの民衆の国際連帯の運動はきわめて重要であり、この日の集会の意義はきわめて重要だ。
 つづいて、先ごろ有事法制を批判する決議をあげた「日本弁護士連合会有事法制委員会」からは、同委員の内田雅敏弁護士が発言し、有事法制の問題点を指摘した。
 また有事法制下では真っ先に「従事命令」が出される当該と想定される航空労働者からは、「航空安全会議」副議長の村中哲也さんが連帯のあいさつと今後の有事法制反対闘争の広範な共同行動を推進する決意をのべ、五月二四日の明治公園での大集会開催を提起した。
 横須賀の「非核市民宣言運動ヨコスカ」の広沢さん、広島の「有事立法はイケン、広島市民連絡会」の沖原さん、「パレスチナ子どものキャンペーン」の北林さん、「日本の有事法制(戦時法制)の確立と軍事大国化に反対するアジア共同声明」運動の渡辺さんらのあいさつを受けたあと、集会宣言が採択された。
その後、沖縄からこの日のために駆けつけた喜納昌吉さんのミニ・コンサートの熱唱があり、会場を沸かせた。集会後は東京駅までのパレード。なお、会場でのカンパは三十数万円があつまった。

ワシントンでは10万人

 この日、アメリカのワシントンでは「STOP THE WAR」「戦争と、人種差別、失業と貧困に反対」のスローガンをかかげて、平和団体、市民団体、アラブ系市民やイスラム教徒も含めて約一〇万人の市民や労働者らが参加する大デモンストレーションが行なわれた。アメリカでは9・11以降、反戦デモが続いてきたが、この日の行動は最大のもの。
ホワイトハウスから司法省までの沿道には「戦争反対」「パレスチナに自由を」という声が響きわたった。
 集会では「今日、これだけ多くの人びとが集まったからには、ブッシュ政権がアメリカの名のもとにアフガニスタンを爆撃し、パレスチナ人を殺戮し、イラクを脅迫することは許されない。アメリカ国民が求めているのは、仕事と人間らしく生きるためのお金であって、パレスチナ人に対する戦争ではない」との発言などがあった。
 同日のサンフランシスコのデモには三万五千人の市民が結集した。


 「国家総動員法」への基礎作りに、いまこそ全力あげて反撃を

 二六日、衆議院本会議で主旨説明が行なわれた「有事(戦時)関連三法案」は、憲法第九条や前文でうたう平和主義の法体系と完全に対立する戦争法体系をうち立てようとする悪法であることが鮮明になってきた。
 いわゆる武力攻撃事態なるものは「武力攻撃が予測される事態」まで含まれ、「判断は国際情勢、相手国の意図、軍事的行動などを総合的に勘案してなされる」「事態の進展によっては(武力攻撃事態と周辺事態が)併存することはあり得る」(小泉首相)などという説明でも明らかなように、強大な権限を持つ、内閣と安全保障会議の長である首相の主観的恣意的判断で運用されることになる。
 また、首相は地方自治体や指定公共機関への指示権限を持ち、代執行も可能になるなどの権限を有することも明らかにされている。
 さらに「国民は…実施する際は必要な協力をするよう努める」など、「協力」の義務化のねらいがあり、違反者への罰則規定も含まれるなど、かつての「国家総動員法」に道を開くものになっている。
 小泉内閣は与党内の根強く存在する消極論をも押し切って、なぜこれらの戦争遂行法案の強行をいそぐのか。それは、一部では六月にもありうると言われる米軍のイラク攻撃の動きや、ブッシュの「悪の枢軸国」発言にみられる近い将来の北東アジアの有事(戦争)、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)攻撃への対応のための体制作りだといっても過言ではない。
 平和を願う日本の民衆はアジアや世界の人びとと共同して、全力をあげてこの戦争への道、有事(戦時)法制三法案の採択をなんとしても阻止しなくてはならない。


郵政4・28反処分闘争 23周年

  東京地裁不当判決糾弾 新たな闘いへ


 四月二六日、東京・文京区民センターで、「不当な判決をぶっ飛ばせ われわれの運動と力で免職者を職場に取り戻すぞ」をスローガンに4・28反処分23周年集会(郵政4・28を共に闘う全国ネットワーク)が開かれた。
 はじめに、4・28ネット全国代表幹事の吉岡徳次さん(元総評副議長・元全港湾委員長)がつぎのようにあいさつした。
 労働運動は停滞期にあるが貴重な前進面もある。この郵政の4・28反処分闘争のような闘いを長期に堅持している労働者・労働組合がいることもそのひとつだ。また、民間でも中小は頑張っている。いまは、労働運動と政治反動に反対する闘いを一体として進めることが重要だ。
 つづいて、郵政労働運動の大先輩の大塚正立さん、幹事の吉野信次さん(千葉県松戸市議)、平賀健一郎さん(中小労組ネット)が連帯のあいさつを行った。
 郵政の民営化を前に、民間の職場・労働組合のあり方を学習するということで、JTの労組・全たばこの活動家の萩原次夫さんの講演、寸劇が行われた。
 郵政労働者の人権を守る会、赤羽共に闘う会の発言につづき、最後に被免職者の池田実さん、名古屋哲一さんから、反処分闘争二十三年周年を一つの契機として勝利に向かって前進する決意が表明された。
 池田さんは、毎年四・二八を迎えると、新しい年が明けたように感じる、闘いは長ければよいと言うわけではない、民営化を前に郵政内の労組も再編されているが、そうした中で闘い続けられる体制を作り出すことが重要だ、と述べた。
 名古屋さんは、東京地裁の判決では、指導した者よりも単純参加者のほうが重い処分をうけたことについて問題点があったようなことを言いながら、しかし処分は妥当だとしているなど矛盾した内容になっているが、こうしたことは今後の闘いで突いて行きたいと、述べた。
 集会に先だって開かれた全国ネットの第十一回総会では、三月二十七日の東京地裁による四・二八処分での不当判決に高裁への控訴を確認し、「4・28闘争は、多くの郵政内争議や新マル生で苦しむ現場の仲間の抵抗運動の原点に位置するものです。郵政省と全逓本部はすみやかに謝罪をすべきです。4・28処分を撤回すべきです。郵政現場でも『4・28』を知らない世代が増えている状況で、より積極的に職場で地域で働きかけをしていきましょう」と確認した。
 また「東京総行動・けんり総行動・争議団合宿・『首切り自由は許さない』闘い・『春の共同行動』など、民間争議団に学び連携しながら闘いを地域に社会に広げていきましょう。…宅配便労働者・金融関係労働者との共闘なども視野におく必要があります。またニュージーランド郵政労働者との交流から培ってきた国際連帯をさらに進めると共に、レイバーネットなど新しいメディアとの交流も広げていきたいと思います。反改憲やピースサイクル等にも力を傾注しましょう」などの第十一期の方針を決定した。


多国籍企業のために労働者を犠牲にする「日韓投資協定」国会批准NO!
 
 四月二六日、衆議院外務委員会で日韓投資協定が外務委員全員の起立・賛成(共産党・社民党を含む)で承認され、本会議に送られた。
 日韓投資協定は、数年前から日韓両国政府間で話が詰められ、昨年暮れに基本合意に達した。
小泉純一郎首相は、三月二一日から二四日に韓国を訪問した。この訪韓はサッカーのワールドカップの成功などが目的だと発表されたが、実際は日韓投資協定の締結と日韓自由貿易協定の推進を狙うものである。二二日に日韓投資協定は、小泉と金大中大統領立会いのもとに正式に締結された。
 日韓投資協定の内容は公開されていない。
しかし、日本企業に膨大な特恵を与える内容となっていると言われる。また、労働運動を規制する文言が含まれている。当初の日本政府案には「労働問題の解決には真摯に対応する」という条項があった。これは八〇年代に韓国に進出した日本企業の理不尽な行為に韓国労働運動が果敢に抵抗運動を展開し敗北した経験から、日本資本の要求を受けて日本政府が進出先での労働運動を規制しようとするものであった。日韓両国労働組合の反対などで、さすがにこの表現は本文には盛り込めなかったが、協定前文には「労働者と使用者との間の協調的な関係が有する重要性を認識し」という形で入り込んだ。これを拡大解釈して行けば、労働運動への介入となる大きな可能性がある。
 四月二六日の早朝からは、日韓投資協定NO!緊急キャンペーンをはじめ日韓ネット、中小労組政策ネット、レイバーネット日本、ATTAC Japan、在日韓国民主統一連合、在日韓国青年同盟などによる抗議行動が行われた。
 民衆の基本的人権や生活権、労働権よりも多国籍企業の利益優先する日韓投資協定の国会批准に反対しよう。


有事法制本会議討議開始に、市民らが緊急抗議行動展開

 政府は四月二六日午後一時からの衆議院本会議で「有事(戦時)法制三法案」
の主旨説明を行なった。
 これに抗議する市民たちは同日正午から緊急に衆議院第二議員会館前を中心に一〇〇名が結集し、抗議集会を開き、シュプレヒコールなどで抗議の声をあげた。
 この日の緊急抗議集会を主催したのは「許すな!憲法改悪・市民連絡会」「キリスト者平和ネット」「日本山妙法寺」の三団体で、共産党の赤嶺政賢衆議院議員、社民党の今川正美衆議院議員、民主党の佐々木秀典衆議院議員が有事法制に反対して闘うとの決意表明をした。各議員には全国から集まった有事法制反対の請願署名が手渡された。
 集まった市民からは、都内のさまざまな地域で活動する市民諸グループや日本青年団協議会、都議会議員など自治体議員、宗教者などがつぎつぎに発言し、五・二四集会を準備している「航空安全会議」の山本議長も連帯あいさつをした。
 発言者たちからは口々にさらに地域での活動を広げ、大きな共同行動を起こし、世論を盛り上げる必要性が強調された。


有事法制に超党派国会議員と市民が院内集会で抗議

 有事(戦時)法制の衆議院での本格的討議強行に先立ち、「第四回有事法制を考える市民と議員による緊急集会」が参議院議員会館で開かれ、約二〇名の国会議員と五〇名の市民が参加した。
 この院内集会は社民党の福島瑞穂参議院議員などが中心になって、共産党や無所属、および民主党の一部の議員などを呼びかけ人にして超党派で積み重ねられている連続した企画の一環。
 集会では共産党の筆坂秀世書記局長代行と社民党の土井たか子党首が発言した。また市民団体側からは「許すな!憲法改悪・市民連絡会」などの発言があった。
 小泉政権はこの日の「主旨説明」を足場に、連休明けの七日からにも、すでに
発足した衆議院特別委員会(五〇名)で「有事(戦時)法制」の審議を開始しようとしている。自民党の議員の発言によると、まだ法案が人びとにほとんど知られていない状況であるにもかかわらず、政府与党は六〇時間程度の審議時間をとれば強行に十分と考えているといわれ、事態はきわめて重大だ。
 運動側の大奮闘が望まれる。


「ホームレス」自立支援法 早期に成立させようと国会行動

 小泉政権の新自由主義「構造改革」攻撃のなかで失業者はますます増える情勢にある。四月二六日、リストラで職や家を失った野宿生活者が、「ホームレス自立支援法」の早期成立を要求して国会請願行動を行った。デモには、都内各地や関西、名古屋、北九州、川崎から野宿生活者や支援のボランティアが参加した。民主党が昨年、ホームレス支援について就職のあっせんなどを柱とした法案を提出し、四月には与党三党も「ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法案」を決め、与野党協議を経て成立する可能性がある。


マルクスの「過渡期社会」像の検討 B

  
マルクスと労働者生産協同組合

                      
北田 大吉

六、労働者生産協同組合

ルイ・ブランは普通選挙にもとづく共和制国家の実現を目指したが、国家が採るべき方策として銀行、鉱山、鉄道などの国家所有化、産業の国家管理、生産協同組合の国家による設立を主張した。後期チャ―ティズムも一八五一年の運動綱領において「土地の国民所有化」を掲げたが、国民所有化は実際には国家所有化に傾斜していった。当時のさまざまな傾向の共産主義者たちは、革命によって樹立する新たな国家権力に依拠して経済構造の変革をはじめとする社会変革を推進していこうとする傾向が強かった。あらゆる生産手段を国家所有化し、国家権力を積極的に活用することによって社会革命を切り拓こうとする革命的国家主義の要素を保持していた。マルクスやエンゲルスもこのような流れに掉さしていたことは間違いがない。この時期のマルクス・エンゲルスの過渡期社会像の基本的特徴としては、採るべき経済方策のなかに、「万人の労働義務」につづき「産業軍、とくに農耕産業軍の設置」がる。ヴァイトリングの構想した「財産共同体」においては、「労働組織は農耕階層、工業労働者層、教育階層および産業軍よりなる」とされ、労働が義務であり、一五歳から一八歳までの健康な青年は全員「軍隊式に組織された」産業軍にはいり、「鉱山、鉄道、ダム、運河、道路などの建設、森林の開拓、地の干拓、大規模な不毛地の開墾」に従事することとされていた。「労働者は、没収された封建的所有をそのまま国家所有地として労働者の入植地にあてるよう要求していたが、これはマルクスの「アソツィアツイオン(協同組合)」構想とは対立する内容であった。
 マルクスとエンゲルスは、当時は革命と改良を絶対的に分離し、改良闘争を革命を阻害するものとして排撃していた。このような傾向は必然的に協同組合の軽視に導いた。彼らは当時はまだ、労働者生産協同組合に労働者の生産の自主管理の思想がこめられていることに気づかなかった。この当時のさまざまな傾向の共産主義者たちは、資本主義の発展とともに噴出してくる社会的害悪の根源を私的所有にあると考え、財産の共同所有の構築によって資本主義体制を超克しようとしていた。私的所有の廃止にいたる道筋としては、生産手段の全般的な国家所有化を想定していた。
 初期マルクスには『経済学・哲学草稿』にみられるような「疎外された労働」の止揚による解放の観点が存在したが、エンゲルスは当初より所有を根本問題とする傾向が強かった。これがマルクス亡きのちに、マルクスとエンゲルスの未来社会像、したがって過渡期社会像の若干の相違をもたらすことになった。
 マルクスは「階級闘争は必然的にプロレタリアート独裁に導く」と考えた。国家の中央集権化は、本来、国家の消滅という目的と一致しないが、マルクスとエンゲルスは、当時は、労働者階級がブルジョア国家の中央集権化を徹底させることによって目的達成が可能と考えて国家の中央集権化を要求していた。この意味において、一八四八年ごろまでのマルクスとエンゲルスは、国家集権的な過渡期社会の建設を基本路線としていたということができよう。
 しかしマルクスのもともとの関心は、労働者階級を資本・賃労働関係のくびきから解放することにあったから、その解放の形態の発見が最も主要な関心事であった。一八六〇年代にマルクスと親交の深かったチャ―ティズム左派のアーネスト・ジョーンズは、ライバルとしての労働者協同組合には対立的であったが、「労働の解放は協同組合を基礎としなければならない」という原理は承認にしていた。主としてジョーンズとの関係を通じて労働者生産協同組合運動を知ったマルクスは、未来社会における協同組合の重要な役割を認識するにいたった。マルクスの思想の根底には、「共産主義はたんなる理念や理想などではなく、現在の状態を止揚する現実的な運動」であるという観念が次第に強固な地位を占めつつあった。マルクスの関心の焦点は、協同組合工場が資本主義的生産もとでの資本家と労働者との階級的支配・隷属関係とはまったく違った仕方で編成されていることであった。マルクスは、こうした労働者生産協同組合に未来を見出し、新社会への移行の展望のなかに生産協同組合を位置づけたのであった。マルクスは、「労働者自身によって設立された協同組合工場は、資本家が生産上の機能者として余計なものとなったという証拠である」と述べている。

七、個人的所有


 『共産党宣言』においては、「共産主義の特徴は、所有一般を廃止することではなくて、ブルジョア的所有を廃止することである」と述べられている。しかし、それにすぐ続いて、「近代のブルジョア的私的所有は、……一部の人間による他の人間の搾取にもとづく生産物の生産と取得の最後の、そして最も完全な表現である」から、この意味で共産主義者は、自分の理論を私的所有の廃止という一語にまとめることができる」と述べて、「ブルジョア的所有の廃止」という表現を「私的所有の廃止」とおきかえてもよいことを認めている。「資本は個人的な力ではなく、社会的な力である。資本が共同の所有、社会の全成員に属する所有に変えられても、個人の所有が社会の所有に変るわけではない。所有の社会的性格が変るだけである。すなわち、所有はその階級的な性格を失う」のである。
 これは難解な叙述である。「私的所有」は廃止されるので、階級的性格を失った資本は、もはや私的所有たることはできない。しかし私的所有の社会的所有への転化は、個人的な占有や個人的所有の廃止ではない。
 後期マルクスの著作に属する『資本論』は、積極的に、「個人的所有」を承認する。協業および土地と労働そのものによって生産される生産手段の共同占有を基礎に「個人的所有」が成立する。所有の歴史は「自分の労働にもとづく私的所有」↓「他人の労働の搾取にもとづく資本主義的私的所有」↓「協業および土地と労働そのものによって生産される生産手段の共同占有を基礎とする個人的所有」という発展行程をたどってきた。
 エンゲルスは、「個人的所有」を「消費手段の所有」と解釈し、生産手段については最初から「個人的所有」をいっさい認めていない。エンゲルスのこの解釈は通俗的である。しかし、資本主義的社会構成体のもとにおいても消費手段は基本的に私的所有ではなかったであろうか。
 マルクスは、未来社会の基本原理を平等ではなく→、自由であると考えていた。平等の原理は、過渡期においてやむなく採用する原理であって、未来社会においては消失すべきものである。『資本論』においては、マルクスにより「小経営」が過大なくらい高く評価されている。それは小経営が「労働者自身の自由な個人性の発展」の基礎だからである。マルクスが私的所有とは異なる個人的所有を過大なくらい高く評価するのも、未来社会における諸個人の自由な発展を基礎にしているからである。マルクスが小経営の存在のゆえに資本主義に先立つ時代に郷愁を感じるのはゆえなしとはしないが、この時代の「家父長制」の存在を不問に付し、家父長制的家族労働の搾取の上に成り立っている小経営的生産関係を美化するのはやはり過ちというほかはない。
 マルクスは、原始的蓄積によって解体された自分の労働にもとづく私的所有のもつ個人性という肯定的モメントを、資本主義時代に達成された成果を基礎にした上で、来社会のために積極的・発展的に継承しようとする。図式的に示すならば、「自分の労働および家父長制家族の労働の収奪にもとづく私的所有」↓「他人労働の搾取にもとづく資本主義的私的所有」↓「協同労働にもとづく個人的所有=社会的所有への発展」ということになる。この際、個人的所有を社会的所有と抽象的に切り離すことは間違いである。私的所有としてある資本がそれ自体潜在的にはすでに「社会的」でもあったように、ここでいう個人的所有は同時に社会的所有でもある。個人的所有は、私的資本主義的所有がその階級的性格を失い潜在的にではなく顕在的に社会的所有となると同時に、姿を現わすのである。

八、分権制

 パリ・コミューンは、地域自治体の自由な連合による連邦制を志向した。
 国家による「上からの」統一ではなく、地域自治体による「下からの」統一であった。コミューン国家は、社会の上に立つ強大な国家による中央集権的統一を解体し、新たに編成し直された社会の側からの政治的統一を求めた。ブルジョア国家は、コミューン型国家へと抜本的に変革され、中央集権制は分権制に再編成された。コミューン国家は、中央機関をすべてを拒否するというのではない。コミューンを基体とした最小限の中央政府をもつ連邦国家を志向したのである。『共産党宣言』においては、まだ中央集権的国家が志向されていたが、マルクスはパリ・コミューンの歴史的経験を経ることによって、協同的諸組織を軸にした社会に照応する国家像の再構成をやむなくされたのであった。 
 プロレタリア革命後の過渡期の国家に課せられるのは、国家内部においては分権化と自治の拡充であり、対外的には国際的な連合である。等しく「協同社会」をめざすとはいっても、ブルジョア社会内部における協同組合の存立を廃却した『共産党宣言』段階と協同組合を社会編成の基軸にすえた『フランスにおける内乱』以降の段階とは、その内容において重大な変化が起こっている。
 レーニンは、国家は「一定の発展段階における社会の産物」、「階級対立の非和解性の産物」であり、「社会の上に立ち、社会にたいしてますます外的なものになっていく権力」であると述べた(『国家と革命』)。
 ブルジョア国家は、プロレタリア革命によって、プロレタリアート独裁とおきかえられることによって廃止される。プロレタリアート独裁という国家または「半国家」は、協同社会の実現によって死滅する。未来社会においては、「社会より生まれ、社会の上に立ち、社会とますます疎遠なものとなる」国家は、その出身母体である社会へと再吸収される。
 国家を生みだしたのは「利益社会」であるが、再吸収するのは「共同社会」である。『ゴータ綱領批判』は、「労働を解放するためには、労働手段を社会の共有財産にたかめること、総労働を協同組合的に規制し労働収益を構成員に分配することが必要である」と述べている。マルクスは、資本主義的生産様式が移行する高度の生産様式を「協同組合的生産様式」と規定している。
 マルクスは生産手段の公有化を要求したが、土地を協同組合の手に移すことには反対した。マルクスは、いっさいの富の源泉は労働であるという主張に反対し、土地もまた富の源泉であると主張した。土地はもともと労働生産物ではなく、自然のものである。したがって土地の商品化は擬制であり、土地の商品化が労働力の商品化および生産手段の商品化の基礎となっている。
 マルクスは、むしろ土地の国民所有化を主張した。国民所有化は、もちろん、国家所有化とは異なる。マルクスの影響が強かった国際労働者協会ブリュッセル大会は、「耕地を社会の共同所有財産に変えること、および鉱山、鉄道と同様の条件で、土地を国家の名において農業組合に貸しつけることが決議され、バーゼル大会では、「社会は土地の私的所有を廃止して、共同所有に転換する権利をもっている」と決議された。これは社会的所有、協同組合的経営、国家による管理を意味していた。
 マルクスの「自然もまた労働と同じ程度に使用価値の源泉である。そして労働そのものも一つの自然力たる人間労働力の発現にすぎない」という叙述から、マルクスの思想の根底にはエコロジー的視座が存在していたことがわかる。

九、独裁とは

 資本主義社会から共産主義社会への政治的過渡期の国家がプロレタリアート独裁である(『ゴータ綱領批判』)ことは承認するにしても、この「独裁」が過渡期全体を最初から最後までを貫いて発現するのか、それとも過渡期のなかの政治的危機の時代にのみ発現するのかという問題は重要である。
 「独裁とは重大な言葉である。そして重大な言葉は、やたらにつかってはならない。独裁は鉄の権力であり、搾取や無頼漢を抑圧するにあたって革命的に大胆で、容赦ない権力である」と述べたのはレーニンであった(『ソヴェト権力の当面の任務』)。
 プロレタリアート独裁が搾取者や無頼漢の抑圧のために発現する権力であるとすれば、その発現は搾取や無頼漢が大手を振って横行する危機の時期にかぎられるべきであろう。これは国家の本質とその発現形態(政治形態)の問題であろう。
 あらゆる国家の本質は階級的抑圧にあることは明らかである。その意味で、ブルジョア国家が民主共和制という政治形態を採っていようと、その本質はブルジョア独裁である。プロレタリアート独裁は多数者の少数者にたいする独裁であるから、人民にたいしては歴史上かってなかったほどの民主主義的権力である。しかし搾取者や無頼漢にとっては断固たる革命の権力である。だが、国家の本質が階級独裁であることは、この本質のさまざまな発現形態(政治形態)の多様性に無関心であることではない。
 一般的にいって、国家が政治的・経済的危機の時代には、国家の支配層は平時の民主主義的政治支配を継続することが困難になって剥き出しの独裁に訴える、これが国家緊急権体制である。このような独裁はもちろん、国家の本質の発現である。だからといって、支配階級は常にこのような本質の発現のみによって政治支配をおこなうのではない。「政治」的支配は、むしろ本質を隠して支配する階級国家の性格を表現している。
 過渡期の国家としてのプロレタリアート独裁も、その本質が(少数者にたいするものではあっても)その目的が抑圧にあるかぎり、「社会の上に立つ」権力であることは否定できない。しかし抑圧されるものが多数者ではなくて少数者であること、この少数者もやがてはかぎりなく無に近くなり、いずれは社会の自律により規制可能なものになることがはっきりしているかぎり、この権力が一面では「社会に従属」し、社会に完全に吸収される権力であるといえる。
 プロレタリアート独裁の国家がいつまで続くかという問題は、ひとえにプロレタリアートの政治的成熟の程度にかかっている。この国家がプロレタリアートの手を離れて特定の官僚層の手に握られる場合には、この官僚層が新しい革命によって打倒されないかぎり、この「半国家」がいつまでも続くばかりでなく、やがて新しい支配階級に支えられた普通の「国家」に変質する可能性をもつ。
 その場合、かつての資本主義的所有が国家所有化されていることは、なんの救いにもならないであろう。「国営」、「国有」ということならば、資本主義的社会構成体のなかにもいくらでもその例にはこと欠かないのである。
 重要なことは、ほんとうの個人的所有が実現され、これが協同組合を通じて、ほんものの社会的所有へ止揚されることである。このような協同組合が連合して、一つの大きな協同組合へ統合されること、これがマルクスのいうアソシェーションである。資本がすでに社会的という性格をもっていたように、個人的所有も社会的であり、個人的所有=社会的所有という即自的な統一にあるからである。
 このように考えるならば、プロレタリアート独裁は、できるだけ短時間のうちに、過渡期の課題である未来社会の経済的基盤づくりの任務を達成し、できるだけ短時間のうちに、原始社会を除いて、歴史上はじめて「独裁」をその本質とする国家を止揚して、未来社会を準備しなければならない。その際、具体的筋道において国家止揚の過程を明確にし、いやしくも国家権力の強化とか国家の肥大化、官僚化を許容するようなことがあってはならない。(つづく)


改憲に怒る「沖縄のこころ」

  
憲法調査会沖縄地方公聴会を傍聴して

 「憲法違反の有事法制はファシズムにつながる道だ」
 「沖縄は米軍占領と闘って平和憲法を勝ちとった。押しつけ憲法論は沖縄には通用しない」
 「沖縄を売り渡した天皇メモは憲法九十九条違反だ。二十一世紀になってさらに沖縄に新たな基地を作るのも憲法違反だ」
 四月二二日午後、名護市の「万国津梁館」で開催された憲法調査会沖縄地方公聴会では、沖縄選出の公述人たちからするどい指摘が相次いだ。居並ぶ自民党、公明党などの委員たちは渋面をあらわにした。

 二二日午前、衆議院憲法調査会の派遣団は沖縄南部の「平和の礎」などを訪れたあと、沖縄サミットで建設した名護の「万国津梁館」で沖縄公聴会を開催し
た。沖縄から選ばれた公述人は六人。うち改憲反対の立場を明確にした人は四人。あとは元自衛隊員と自民党の沖縄県会議員だった。あとで聞くと公述人には二五人が応募し、うち改憲派は三人しかいなかったそうだ。改憲派の委員たちはこの三人から公述人を選ぶのに苦労したという。沖縄の改憲反対の声の強さを実感したにちがいない。
 冒頭、中山太郎会長は沖縄を開催県に選んだ理由を「(四六年の)制憲議会選
挙では沖縄の選挙権は停止され代表を送れなかった。その後は直接軍政下に置かれるなど、分離された」とのべ、復帰三〇年を迎える沖縄で開催する意義を強調した。
 だが、それにしては公聴会開催と公述人公募や傍聴人公募要領は沖縄でも広く告知されてはおらず、開催時間もわずかに四時間弱、公述人も六人と、あまりにもおざなりなものだった。中山会長らがその建前とは反対に「憲法調査会は沖縄でも開いた」という実績づくりをねらったことは明らかだ。
 噴出する沖縄の怒りにたいして、自民党や公明党の委員からは「ファシズムとはなにごとか」「憲法を議論することも許さないというのか。これは沖縄の特殊性か」などという差別的で、不当な発言が飛び出した。
 公述人の山内徳信氏(元読谷村長、元県出納長)は「九条改憲は時代錯誤で、孤立と自滅の道を歩むものだ。政治家は憲法九九条を守れ。いよいよ平和憲法が生きる時代がきた。有事法制に反対だ」とのべた。
 新垣勉氏(弁護士)は「五六年も放置してきた沖縄で、なぜいま公聴会を開く
のか。沖縄の実態をふまえた議論でなくては意味がない。唯一地上戦を経験した沖縄、県民はあらゆる戦争協力をさせられたのに、日本軍は県民を守らなかった。この体験から沖縄では『命どぅ宝』と言う。軍事力は政府を守っても、地域住民の命や財産は守らない」と指摘した。
 大学一年生の稲福絵梨香さんは「奉仕活動の義務化は誤りだ。学ぶことは戦前は義務と言われたが、権利だ。有事にそなえるというが、かつての誤りを繰り返すのではないかと案じている」と指摘した。
 中山会長や委員とのやりとりで会場が騒然とするなか、傍聴席からも崎原盛秀(反戦地主会)さんらが発言した。「天皇と日本政府は沖縄を切り離し、沖縄に苛酷な犠牲を強いた。沖縄は銃剣とブルドーザーで土地を奪われた。改憲はこの沖縄のこころをふみにじるものだ」と指摘する意見に傍聴席から強い拍手が起きた。
 公聴会がおわったあと名護市の勤労福祉会館で「守ろう平和憲法・公聴会報告会」が開かれ、百五十名の人びとが参加した。主催は名護の平和センターと統一連の共催。公述人の新垣氏は「十五分で何を言うか悩んだ。いいたいことがありすぎる。実質的な改憲のねらいをもった有事法制がすごいスピードでだされている。これがファシズムでなくてなんであろうか。われわれの運動もスピードが求められている。必要なときには寝ないで闘おう」とのべた。
 今回の地方公聴会傍聴は沖縄の心を深く実感し、エネルギーを充填できた傍聴だった。国会では改憲の声が高まっているが、地方では仙台、神戸、名古屋と地方公聴会は圧倒的に改憲反対の声だ。沖縄はその頂点だった。(S) 


 ――― 有事法制に反対するキャッチコピーの選考結果 ―――

 このほど、「市民緊急行動」が募集していたキャッチコピーの優秀作品が発表された。

 最優秀コピー:(賞金5万円)
  「国家守って、人守らず」 地球市民さん(大阪)

 優秀コピー:(賞金1万円)
 「人を殺さないことが、罪になる時代へ」 白田眞樹さん(東京)
 「戦争は、準備をするとやってくる」 佐野真紀さん

 発表に際し、主催者は以下のメッセージを出し、コピーの活用を呼びかけている。

 今後、これらはもちろん、佳作・一次選考通過作も含め、有事法制反対行動
のあらゆる局面で自由に使用・利用・活用していきましょう!
 プラカードや意見表明で、どんどん使いましょう!
 なお、佳作・一次選考通過全作品や、今回の選考システムについて掲載した
ページが、 http://peaceact.jca.apc.org/actios/copy.html にあります。


せんりゅう

 例大祭神を崇めて御参拝
 参拝で有事の犠牲うつくしく
 解釈は無宗教と意地を張り
 七十万弗ブッシュ庶民を知らず      ※@
 じゃま者は殺せアル・カポネのごとし
 機密費の機密なわけがよく分かり
 赤字あかじと言いぜいたくざんまい
 わが有事公設秘書で攻められる
 ほしいのは腐敗管理体制だね
 腐敗だらけで憂事法案かい?
 ブッシュからうまれる有事に「ヘイ」と言い
 違憲立法へいき小泉の罪
 豪官邸でまず有事を考え
 官邸は立派に法案は粗末
 備えとの中味は危ぐばかりです
 「ご自分の意思ですから……」は罰とする
 予測という定義で有事発動
 謀略も有事であったそうだった
 地震よりよっぽどこわい有事法
 総動員法と言わぬでずるい
 危機管理されるいのちがおびえてる
 奉仕心庶民の徳をほしがり      ※A
 法治なし独裁有事法と知れり

              ゝ史 

二〇〇二年四月二六日

 ※@ ブッシュ大統領の二〇〇一年度の所得七十一万一千四百五十二ドルであったとホワイトハウスが発表。
 ※A 有事法の有効性は国民の奉仕教育の成果にかかっている。数百年の武士道の国だからよく知っていて、「軍人勅諭」より先に「教育勅語」を制定した知恵だ。今、奉仕心の教育が有事法関連のもう一つの政策課題となっている。むろん、靖国参拝も有事関連であることは明か。


複眼単眼

    
NHKによる憲法問題の世論調査の結果を考える

 憲法記念日が近くなるとさまざまなマスメディアが憲法問題の世論調査をする。今年は憲法施行五五周年。三月はじめ、NHKが行なった世論調査を(世論調査の在り方そのものの問題点の検討は省略したうえで)検討してみる。
 十六歳以上の男女三六〇〇人を対象にした面談調査で、回答は二三三六人(回答率六四・九%)だった。
 この結果は「見出し」的に言うと「憲法改正すべき五八%」ということになる。これは十年前の調査より二三%ふえたという。「改正の必要なし」は二三%で十九%減少した。「どちらとも言えない」は十一%、「わからない、無回答」が八%だった。
 しかし、この結果、「世論は改憲派が多くなってしまったのか」と考えるのは早計というものだ。改憲派と反対派の最大の焦点である憲法第九条については、「改正の必要あり」が三〇%、「改正する必要はない」が五二%なのだ。「どちらとも言えない」は九%、 「わからない、無無回答」は八%だ。
 これをみると依然として九条護憲派は過半数なのだ。ここに改憲阻止の運動が勝利できる一つの根拠がある。
 改憲派はこれをうち破るために別の改憲の理由を付け加え、それによって世論の多数を獲得しようとしている。そうした策略が「改正すべき」が五八%という数字になる。こうした策動のひとつに「環境権」「プライバシー権」などの「新しい人権」論があるが、NHKの今回の調査ではこれは発表がない。しかし、「改正する必要がある」という理由の最大のものは「時代が変わって対応できない問題がでてきたから」で八一%、「新しい人権」論もこれに含まれるのだろう。PKFなどを指すとみられる「国際社会での役割を果たすために」は九%、改憲派の伝統的論拠である「押しつけ憲法」論も九%と少ない。
ほんとうは「時代が変わって対応できない」ものといわれるほとんどがそうではなく、現行憲法の精神の活用で解決できるのだ。さらに他の改憲理由として「首相公選制」の導入のためには六一%あった。
 これらの「新しい人権論」や「首相公選制」導入論は五八%の改憲論のうち、
実に約半分を占めていることになる。
条改憲派が多数派になるのは決して容易ではない。そこでまったく無責任な「解釈改憲」論による政治が横行することになる。「有事(戦時)法制」はその最たるものだ。改憲が容易にできないのなら、「解釈改憲」による憲法の空洞化でやってしまえとばかりに。(T)