人民新報 ・ 第1064号<統合157号> (2002年7月5日)
目次
● 院外の民衆運動を堅持し、武力攻撃事態法など有事三法案の廃案を
● 陸上自衛隊北方機動特別演習 民間機搭乗に市民団体が抗議
● 二〇〇二沖縄ピースサイクル報告 / 基地の島・沖縄で一段と強めた有事法制阻止の気持ち
● 労働運動などの抑圧を狙う東京都の迷惑防止条例改正案 ひとまずは全面改悪阻止
● 『労働情報』創刊二五周年 賑やかに記念の講演会・パーティー
● 戦争屋ブッシュをけっ飛ばせ! 有事法制にレッドカードを! 6・22
反戦平和世界同時行動
● 資 料 / 国労闘争団の復職を求める闘いを支持します
● 憲法調査会北海道地方公聴会 札幌も圧倒的に九条護憲論
● 部落史から取り残された諸賤民について K 陰陽師
(そのA)
● せんりゅう
● 複眼単眼 / 日米外交密約の黒い霧とシラを切りつづけた歴代政府
院外の民衆運動を堅持し、武力攻撃事態法など有事三法案の廃案を
このところ小泉首相、山崎自民党幹事長、町村自民党幹事長代理ら政府与党の幹部が、マスコミが流す「有事法制継続審議か廃案」という報道に反発して、相次いで「有事法制はぜひ成立させたい」などと発言している。これらの発言を額面どおりに受け取れば、彼らの権謀術数に陥しこめられかねないが、一方ではこれらの発言が法案成立への彼らの意思を表現していることも絶対に見逃すことはできない。
七月冒頭の現在、有事法制の国会審議の行方は会期を約一月弱も残しており、いまだに「廃案」どころか、「継続審議」持ち込みさえその帰趨(きすう)は霧の中にある。七月三日には実質的には約一ヵ月ぶりになる衆議院の武力攻撃事態法特別委員会の審議が再開された。
いま反対運動の手を断じて緩めてはならない。ひきつづき有事三法案反対の世論を高め、民主党など野党の動揺の余地を残さず、真に廃案にむかっていかなくてはならない。
この間の大規模な共同行動をはじめとする各種の民衆運動の高揚と合わせて、六月末の各地方議会の会期末に際しては、かつてなく多数の「有事三法案反対決議」「慎重審議を要求する決議」などが次々にあげられた。社会的影響力を持つさまざまな団体なども反対の意思を表明している。六月末の連合(日本労働組合総連合会)中央委員会までもが「この法案のあいまいさと多くの欠陥が明らかになった。さらに政府答弁の不統一や非核三原則見直し発言、防衛庁の情報公開請求者リスト問題などが相次ぎ、提案資格そのものが疑われる事態」だとして「断固反対」の立場を表明した。
NHKが六月上旬に行なった世論調査によると、「小泉内閣を支持しない」という回答が五二%と過半数になったこととあわせて、有事法制を「今国会で成立させるべきだ」との回答はわずか八%にすぎなかった。
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いまブッシュのアメリカはこの秋にも「テロ組織や敵性国家への先制攻撃を認める新たな戦略ドクトリン」をうち出すとしている。これにむけて、先ごろカナダで開催された「主要国首脳会議(G8)」を前にブッシュ米大統領は、身勝手な「対テロ戦争」の論理を適用して、「テロ支援のアラファト議長を排除したパレスチナ暫定国家樹立」という、きわめて挑発的な演説を行なった。つづいてパウエル国務長官やライス大統領補佐官らも同様のキャンペーンを展開している。
ブッシュの六月六日の演説では「テロリストに対する核先制攻撃も辞さない」と言明している。本年年頭のブッシュによる「二〇〇二年は戦争の年」発言、「悪の枢軸国」発言などにつづくこれらの動きは、米軍による国際的な戦火の拡大の危険が迫っていることを示している。
小泉首相はG8では欧州諸国でさえ反発をしめしたブッシュの覇権主義的国際戦略に批判的立場をとることなく、かぎりなく同調した。しかし小泉政権がこの道を進むには有事法制の確立は不可欠の条件だ。
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にもかかわらず、この第一五四国会の運営で小泉内閣は、窮地に追い込まれ、手詰まりになった。
国会における政府・与党の圧倒的多数のもとで、有事法制採決の強行は必至かと言われ、「有事法制の課題は浸透しにくい」というあきらめと敗北主義が一部の活動家をとらえていた年頭の情勢に比べれば、今国会での法案の強行阻止という局面を切り開いたことは、民衆運動側の大きな前進だ。
平和運動の活動家たちはこのことに確信を持たなくてはならない。あきらめれば敗北は不可避だが、あきらめないで、ねばり強く、多様で、重層的で、広範な共同行動を真剣に組織して闘えば、勝利する可能性が開けるということだ。闘いの前進が人びとを励まし、さらに大きな行動に立ち上がらせる。このことこそが、本年前半の闘いの重要な教訓だ。
だがこの悪法・有事法制に反対する今日までの前進は画期的な前進だが、それはまだ初歩的成果に過ぎない。この七月から秋の臨時国会にいたる期間は有事法制をめぐる闘いの今後の帰趨を決する時期だ。立ち止まらずにさらに創造的、重層的、かつ広範な運動を実現しよう。世論の力で戦争屋ブッシュとその追従者小泉政権を打ち倒し、有事法制を廃案に追い込もう。
陸上自衛隊北方機動特別演習 民間機搭乗に市民団体が抗議
陸上自衛隊は北海道十勝管内で、六月三〇日から七月三一日にわたる北方機動特別演習を開始した。これに際して演習参加の自衛官が迷彩服着用のまま民間航空機に搭乗することが判明した。
これは九九年以来、たびたび行なわれているものの、国会での有事法制審議の最中に行なわれる大規模な移動と軍事訓練は、その実質化と先取りとも考えられる。
情報によると七月五日から七日にかけて日航、JAS、全日空など民間航空機を使用して七七名以上、七月二三日から二八日にかけて日航、全日空、JAS、ANKなどを利用して八七名以上が迷彩服で搭乗することが明らかになった。
またすでに七月一日には自衛官の制服着用で日航機を利用し、六三名が羽田から新千歳に移動したことも確認されている。ほかにも相当数が利用する計画と見られる。
「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の緊急の呼びかけで、北海道現地をはじめ全国各地の約一一〇団体にのぼる市民団体が数日間のうちに団体連署を確認し、小泉純一郎首相と中谷元防衛庁長官に中止要請の書面を提出した。
以下、その要請文を掲載する。(編集部)
民間航空機への自衛官の戦闘服着用搭乗の中止の要請
聞くところによれば、自衛隊が六月三〇日から七月三一日まで、北海道十勝管内の演習場で行う予定の「北方機動特別演習」に関して、参加部隊の一部が迷彩服ないし作業服を着用し、民間航空機に搭乗するとのことです。
おりしも国会では有事関連三法案の審議中であり、それが世論の批判の高まりのなかで廃案か、継続審議かというところに追い込まれている最中です。
こうした民間航空機の軍事利用は、この数年来繰り返され、多くの人びとの不安を引き起こしておりますが、とりわけ現在、提起されている有事法制案と関連して、その実質的先取りを意味するものであり、戦争準備体制の日常化の危惧をいだかざるをえません。
先般露呈した「防衛庁にたいする情報開示請求者リスト作成、回覧」問題も解決されたとは思えません。私どもはここに政府・防衛庁への市民の不安と不信をますます増大させることになるような、軍事演習における民間航空機を使用した迷彩服での移動を即時中止するよう要請します。
七月三日
二〇〇二沖縄ピースサイクル報告
基地の島・沖縄で一段と強めた有事法制阻止の気持ち
六月二二日から二六日までの沖縄ピースサイクルで、二〇〇二年ピースサイクルがいよいよスタートした。八六年、大阪の郵政労働者がヒロシマまで走って始まったピースサイクル。それがやがて全国化していく中で、沖縄ビースサイクルも九〇年から始まり、今年で一三回目を迎えた。戦後五七年。沖縄は二三日、沖縄戦の犠牲者を悼む『慰霊の日』を迎えた。軍事基地は、五七年間も居座ったまま、何の状況も変わってない。むしろ悪くなっている。小泉政権は、日本が再び侵略戦争に乗り出し、沖縄に沖縄戦を強要する有事法制を必死で制定しようとしている。そして、人びとの人権は奪われたまま、劣化ウラン弾、PCB、放射能、暴力、何でもそろっている。このような状況の中で、沖縄ピースサイクル二〇〇二がとり組まれた。沖縄の基地の実態を知り、沖縄戦の戦跡をめぐり、沖縄の文化・自然を体験する、そして何よりも沖縄で運動している人たちとの交流を目的に二〇〇二沖縄ピースサイクルはスタートした。
六月二二日(土)
今回は沖縄、長崎、岡山、広島、大阪、東京から一五名が参加した。沖縄は梅雨明けし、強い日差しがカンカンと照り、痛いほどだ。午後に那覇空港に集合し、今回もガイドしていただく宇根悦子さんと合流し、糸数壕(アブチラガマ)へと向かった。観光地として、きれいに整備されている。このガマでは、住民スパイ視・虐殺事件の発生した所でもある。六月の始め頃から付近で捕虜になった住民は収容生活に入っており、もはや戦後の第一歩を歩んでいた。そこで食糧が豊富にあることを知っていた住民がつぎつぎにこのガマにやってきた。しかし、神の国日本の敗戦を信じない軍民は、兵土と住民が交代で見張りに立ち、近づく住民をスパイ視してつぎつぎ殺害していった。皇軍と臣民の末路を示した典型的なこのガマから兵土と住民が投降したのは、敗戦後の八月二二日のことである。なお、日本軍の隊長らは九月まで立てこもっていたそうだ。ガマの中ですべての懐中電灯を消してみる。真っ暗闇の中、水滴の落ちる音だけが響く。当時の状況を考えると何ともやりきれない。その後、ギーザバンタに向かった。具志頭城跡から摩文仁の丘に連なる約四`bの厳しい絶壁で米軍による激しい掃討戦で追い詰められ、逃げ場のなくなった多くの住民が崖から飛び降りた場所である。次に韓国人慰霊塔へ向かった。沖縄戦の悲劇を語るとき、もっとも差別され、それゆえもっとも危険な状況へ追いやられたにもかかわらず、その犠牲の実態とその後の消息は不明のままになっている。彼らの存在を忘れては歴史の真実を語れない。そして、沖縄県立平和資料館へと向かった。二〇〇〇年に新しく建て替えられ、稲嶺知事になってからわからないように改ざんされようとしたり、予断を許さない状況になっている。その後、見学を終えて夜には結団式を行い、明日からの実走の安全と沖縄ピースサイクルの成功を確認した。
六月二三日(日)
ジリジリと太陽が照りつける。今日は慰霊の日、五七年前もこんなに暑かったのか。宿舎から摩文仁の丘を目指して自転車を走らす。沿道には赤や黄のハイビスカスが咲き乱れている。第一九回国際反戦沖縄集会が行われる魂魄の塔へ向かう。今回は新しい試みで、シュプレヒコールをやめて、海勢頭豊さんの『月桃の花』を歌いながらの行進。収穫前のサトウキビが、摩文仁から吹く潮風で揺れている。沖縄戦ではたくさんの住民が鉄の暴風の中で死んでいった、生き残った住民も戦争で最も犠牲をこうむるのは自分たちであること、基地・軍隊は民衆を殺す道具でしかないことを悟った日でもある。真っ青な海に向かって赤旗がなびいた。集会の中で沖縄ピースサイクルとして連帯のあいさつをし、自分たちの平和への思いをぶつけた。歌あり、お話しありと充実した集会だった。
集会後、車で読谷村に人る。知花昌一さんを囲んで交流会を行う。昨年の九月十一日以降、基地周辺の厳戒態勢が、最近まで続いていた。米軍が高度な武器を豊富にもっているのに、それを本土から来た機動隊がビストル一つで守っているのを見て、とても滑稽だったと言っていた。会は、歌あり三線の演奏ありと大いに盛り上がった。
六月二四日(月)
読谷村の知花さんがやっている民宿『何我舎』を出発し、宜野座村潟原海岸まで約五〇`b。今回の実走で一番長く、勾配がきつかった。この潟原海岸で『二見以北十区の会』の東恩納さんらと合流し、昨年から取り組んでいるマングローブの植樹を行った。以前は、マングローブ林だったが米軍の演習時に、戦車を通らせるために抜かれていったとのこと。また、海岸の護岸工事や米軍の射爆訓練によって山が削られ、赤土が流出し、ひどい状況になっている。以前のようにマングローブ林をよみがえさせ、演習を止めさせるための取り組み。昨年、植えた苗木の七割が生きていて、少しずつだが成長していたのには感激した。その後、漁船に乗り、ヘリ基地建設予定地の視察を行った。小さな島に渡り、真っ青な海を見渡す。こんなきれいな所に基地なんてとんでもない。その後、爆音を響かせ戦闘機が上空を飛んでくる。目の前にはキャンプ・シュワープが見える。ここは、なりたての海兵隊員が配属され、六個のスタジアム、ボーリング場などあらゆる施設が整っており、あまりの環境の良さに米兵募集の宣伝にも利用されている。この費用はすべて日本政府の思いやり予算から拠出されている。
その夜は、ジャンヌ(ジュゴン)家で『二見以北十区の会』の方たちと交流をもった。手作りの料理をはじめ、海で獲れた貝などをご馳走になった。
六月二五日(火)
朝五時三〇分に起床。名護市の太平洋側、嘉陽部落近くの海の見える高台、ジュゴンの見える丘と呼ばれている場所を訪れた。この高台は海にせり出し、左右に広がる広々とした海を見渡せる場所にある。絶滅の危機にひんしているジュゴンが現れる条件として、大潮で満月のときに夜から早朝にかけて、この海の藻をたべにくるという。まさしくこの日、その条件は整っていたが、残念ながら現れなかった。
私たちはあきらめて本部港に向かった。本部港よりフェリーで伊江島に渡った。去る三月二一日、一〇一歳で永眠された阿波根昌鴻さんが創られた反戦平和資料館・ヌチドゥタカラの家を見学した。この資料館では、実際に手に触れることができるので、当時の歴史状況が伝わってくるし、阿波根さんが生涯をかけて反戦を訴えてきた生きざまに強く心が打たれた。見学後、伊江ビーチでしばしフリータイム。透き通る海に真っ青な空、まさに楽園のような島。しかし、以前ピースサイクルで来たメンバーに聞くと、サンゴ礁で歩けなかった海も護岸工事の影響か埋れてしまっている状態だという。その後、島内を見学し、阿波根さんと共に反戦を訴え闘っておられる、わびあいの里の謝花悦子さんに講演をしていただいた。
沖縄戦で四月一六日から伊江島への攻撃が始まり一週間で総絶滅したこと、その時点で敗戦にしていれば集団死などなかったし、ヒロシマ、ナガサキに原爆が落とされなかったこと。教育の恐ろしさ(皇民化教育)、大切さ(反戦思想)を実感したこと。戦争屋がいやがることは、人間が連帯し団結すること、そして可能性を追求すること、また、自分自身が障害をもったのも戦争に医者を取られ、十分に診察してらえなかったからという経緯など話された。
咋年の九月一一日以降、沖縄が危ない、自分の命が危ないと非常に緊張した日々が今も続いているし、現在は大失業時代で戦前状況とよくにている。だから平和の武器は学習すること、粘り強く運動することと言われていた。お話を聞き一言一言に重みがあり、考えさせられる講演だった。
六月二六日(水)
いよいよ最終日。いろいろと勉強になった伊江島を後にする。私たちは名護市辺野古に向かい、『命を守る会』と交流する。受け入れていただいた金城さんは、現在の有事法制の状況を非常に危倶しておられ、「無理やり時代を逆戻りさせようとしている。戦争を体験したものとして断じて許すことはできない。このヘリポート基地の建設を阻止することが有事事法制阻止につながる」と強く訴えていた。私たちは交流を終えて那覇空港に向かい、二〇〇二沖縄ピースサイクルを無事に終了した。今回は盛りだくさんの内容で有意義な時間を過ごすことができた。遊ぶときは遊び、学習するときは学習し、非常にメリハリのあるピースサイクルだった。最後に戦争というものは、いつの時代もいきなり始まるのではなく、ある程度戦争の準備が行われてから、ゴー・サインが出て突入していく。ここに至るまであらゆる方法がとられていく。まず国民の思想をコントロールするため、皇民化教育が行われたり、または日本がやっている戦争が正しいと示すためにマスメディアが使われたりする。現在もまさにそう感じる。憲法九条がありながら、あらゆる方法で戦争ができる法律が作られていったり、マスメディァも昔の戦争をほとんど取り上げない状況や、周辺の国からいつ攻撃を受けるかわからないと危機感をあおるなど、コントロールしながら戦争に向かっていると思う。そのためにはどうすべきかを考えさせられたオキナワだった。(二〇〇二沖縄ピースサイクル参加者)
労働運動などの抑圧を狙う東京都の迷惑防止条例改正案 ひとまずは全面改悪阻止
石原都政による迷惑防止条例の改正はきわめて危険な内容をもっている。
都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」は一九六二年につくられたが、主な目的は、押し売りや不当な客引きなどを防ぐためとされている。今回の「改正」案は、二〇〇〇年施行の「ストーカー行為等の規制等に関する法律」の範囲外の行為を処罰するものとされている。
改正案では「つきまとい行為等の禁止」規定が入った。「つきまとい行為」とは、「職場、学校、地域社会等における関係」「売買、雇用、貸借等の契約関係」「交通事故等の不法行為関係」を原因とし、「ねたみ、うらみその他の悪意の感情を充足する目的」で、「特定の者」やその周りに「不安または迷惑を覚えさせるような行為」と規定して、@つきまとい、待ち伏せ、住居、勤務先などでの見張り、押しかけ、A面会要求、Bしゅう恥、困惑や嫌悪させる発言、文書・図面の送付などを反復することが該当するとしている。
「つきまとい行為」を規制する条例はほかにもあるが、東京都のものは非常にその範囲が広く、正当な労働組合活動である企業や経営者への抗議・要請行動をはじめさまざまな民衆運動、さらにマスコミ活動が規制されるものとなることは間違いない。
また、違反した場合には、改正案は常習者には懲役一年以下か罰金百万円以下を課す(現行で懲役六カ月以下か罰金五十万円以下)というきわめて厳しい罰則を規定している。
労働組合をはじめ市民団体、弁護士(日本労働弁護団・自由法曹団)などは、この間、さまざまな形で反対運動を繰り広げてきた。六月十七日には、全労協は、迷惑防止条例「改正」案反対の要請を行い、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の一部改正」(案)に関する要請書」を手渡した。
多くの反対行動が展開された結果、議会会期終了直前の六月二十一日、都議会の警察消防委員会は全会一致で、「つきまとい」条項を削除する条例改正案の修正を決め、全面改悪は阻止された。石原都政は今後の大改悪の動きを断念したわけではない。石原の動きを注視していかなければならない。
『労働情報』創刊二五周年 賑やかに記念の講演会・パーティー
六月二九日、『労働情報』創刊二五周年を記念する講演会とパーティーが開かれた。
第一部では金子勝さん(慶応大学教授)の講演が行われた。第二部のレセプションのはじめに協同センター労働情報の前田裕晤代表が、四半世紀の活動を振り返り、リストラ合理化など労働問題が重要になっているとき、労働メディアは次々と廃刊されているが、労働情報の位置は一段と重くなってきていると挨拶。
吉岡徳次元総評副議長の乾杯の音頭をうけ、樋口篤三元労働情報編集人など多くの人びとが二五周年の祝辞と今後の活動への激励のスピーチをおこなった。
戦争屋ブッシュをけっ飛ばせ! 有事法制にレッドカードを! 6・22 反戦平和世界同時行動
サッカーのワールド杯が開催されている最中の六月二二日午後、都内で「戦争屋ブッシュをけっ飛ばせ! 有事法制にレッドカードを! 東京行動」の集会とデモが行なわれ、市民団体や労働組合など二八〇名の人びとが参加した。
この行動は「六・二二反戦平和世界同時行動」の一環で計画され、ソウル、プサン、テグ、ウルサン(韓国)、ニューヨーク、ワシントン、ロスアンゼルスほか数カ所(以上USA)、プエルトリコ、マヤクロッツ(以上プエルトリコ)、ブリュッセル(ベルギー)、ナホール(パキスタン)、サンサンルバドル(エルサルバドル)、トロント(カナダ)、ビエケスなどで同時開催され、国内では、札幌、厚木、静岡、浜松、名古屋などで集会その他の行動が取り組まれた。
二時三〇分から始まった集会では、冒頭や合間に「ブッシュ・戦争拡大」「小泉・有事法制」のゴールをブチ破るサッカーのシュートのパフォーマンスや、在日韓国青年同盟によるサムルノリ、沖縄のまよなかしんやさんの歌などを交えながら、さまざまなアピールが行なわれた。 冒頭、主催者を代表して日韓民衆連帯全国ネットワークの渡辺健樹さんが挨拶し、「日米韓の軍事作戦体制にささえられたW杯」を批判し、この反戦平和世界同時行動の意義について述べた。
韓国から来日した韓国側の主催団体の「六月民衆抗争継承・反戦平和大会委員会」のキム・ハッキュ事務局長が要旨、次のようなあいさつをした。
「華やかなW杯の陰で、朝鮮半島ではブッシュの『悪の枢軸』発言以降、再び軍事的緊張が増大している。朝鮮半島で二度と戦争を起してはならない。本日の国際行動は重要な意義をもっている。日本ですすめられようとしている有事法制は、アジアの緊張を増大させ、戦争を引き起こすものだ。今後、われわれは次のことを要求して闘う。米軍のいないアジアを。一〇万の米軍を追い払い、アジアの民衆自らの手で平和を勝ちとろう。日本は侵略戦争と植民地支配の謝罪と清算を行なえ。軍事強化をやめろ。アジアを非核平和地帯にしよう。アジアの戦争の危機の日常化に反対し、軍事拡大政策に反対する。アジアの平和を実現するために、民衆運動の常設機構の創設を」
集会では全労協、平和を作り出す宗教者ネット、ATTAC Japan、W杯・天皇訪欧を問い天皇制の戦争責任を追及する共同行動、テロにも報復戦争にも反対!市民緊急行動などがアピールした。
集会は最後にアジア平和連合(APA)準備会からの連帯アピール(別掲)を確認し、世界同時行動日韓共同宣言(別掲)を拍手で採択した。
アジア平和連合(APA)からの連帯メッセージ (要旨)
私たちは、終わりなき戦争と侵略の下で生きています。9月11日のアメリカでの攻撃に始まり、今や新たな高みにまで拡大したアメリカ主導の「反テロ戦争」は、民衆の安全保障と、地域の、そしてグローバルな平和にとっての最新の脅威になっています。
私たちは、ブッシュの単独覇権主義政策に反対します。アメリカの単独行動主義は、アメリカのグローバルな支持基盤を再組織化し、アメリカと同盟諸国のグローバルな資源や市場への支配を再度打ち固めることによって、世界におけるアメリカの政治的・軍事的・経済的支配を強めるためのものです。
こうした政策は、アジアにおける軍事化を促し、緊張を拡大させています。ミサイル防衛(MD)システムの構築、ABM条約の一方的廃棄、先制核攻撃をふくむ先制攻撃の支持に向けた新しい戦略ドクトリンの開発、海外軍事基地の拡張、軍事予算の大幅増額――こうしたことがブッシュの政策なのです。
私たちは、アメリカ政府が平和的手段によって北朝鮮との対立を解決することを強く求めます。朝鮮半島の問題は東アジアの平和にとって決定的です。ブッシュは、北朝鮮、イラク、イランに、アメリカが攻撃する権利を持つ「悪の枢軸」というレッテルを貼りました。これに続いて、アメリカが核攻撃の対象とする目標として北朝鮮、中国、ロシア、シリア、リビアを挙げた「核態勢見直し」(NPR)報告が暴露されました。すでに戦争は世界の広範囲にわたる地域へと広がり、そもそもテロリズムとはなんの関係もないきわめて多くの人びとを犠牲にしています。
私たちは、日本の再軍事化に反対します。日本政府は、日本が海外での戦争を可能にする国家システムを樹立することを狙った有事法の導入を通じて日本を再軍事化することを執拗に追求しています。
私たちは、「戦争に反対し、平和を求める国際行動デー」を主導している韓国の日本の活動家を支持します。
私たちは、アジア平和連合の創設を通じて、グローバルな平和を求め、地域における戦争と侵略に反対するために活動するアジアの人びとの最も広範な団結をうち固めることを目指して活動します。アジア平和連合はアメリカの覇権的支配の樹立と再強化に反対し、平和を愛するすべての人びとの連帯と団結を促し、地域における真の永続的な平和のために活動するよう呼びかけます。
アジア平和連合は、八月三〇日から九月一日までの日程で民衆の平和集会を行い、共同のビジョンと行動プログラムを作り上げ、アジアにおいて効果的に機能するメカニズムを樹立していくでしょう。
二〇〇二年六月一七日
アジア平和連合準備委員会
6・22 反戦平和世界同時行動デー日韓(韓日)共同宣言文(要旨)
私たちは平和を望む!
平和に暮らすのは人間のもっとも根源的な権利であり、戦争と暴力は人類最大の敵だ。地球最大の「和合の祝祭」、「平和の祭典」というワールドカップが開催されているこの瞬間にも、世界は戦争の苦痛に呻吟している。
戦争をやめろ!
9・11事件以後、世界の唯一超大国といわれる米国ブッシュ政権が行う侵略戦争で、何の罪もないアフガニスタンの人々が虐殺され、さらにソマリア、イェメン、インドネシア、フィリピンなどへの戦争拡大政策により、世界は戦争の恐怖に包まれている。ブッシュ政権は世界の人々に向かって、二〇〇二年を「戦争の年」だと宣言し、北朝鮮、イラク、イランを「悪の枢軸」だと決め付け、イラクに対する全面的な軍事攻撃を準備している。戦争がまた、別の戦争を生んでいる。イスラエル・シャロン政権はいわゆる「対テロ」を口実に、パレスチナに対する全面的な軍事攻撃を行った。「ジェニンの虐殺」は、戦争の非人間性をまざまざと見せつけ、全世界の人々に衝撃と怒りを与えた。
私たちは要求する。世界の平和を破壌し、人類の運命をもてあそぶ戦争をすぐに中止せよ!
武器で平和は決して保障できない!
MD(ミサイル防衛)構築の強行とABM条約(弾道弾迎撃ミサイル防衛)の一方的破棄宣言、さらに生物化学兵器条約(BWC)をないがしろにし、核実験凍結を撤回、海外駐屯の米軍基地の拡張、戦後最大の軍事費増額など、ブッシュ政権の一方的な覇権政策と軍備拡張政策は、世界を限りない対決と軍備競争へと追いやっている。破壊される世界の平和と戦争の犠牲の背後には、肥え太る産軍複合体の冷酷な利潤論理がある。
意味のない、平和に反する軍備拡張政策を直ちに止めよ!
戦争で惜しみなく使う金を飢餓と病気で苦しむ民衆に回せ!
戦争は人権と民主主義の敵だ!
9・11以後、各国でのいわゆる「テロ防止法」制定などで、集会やデモ、表現と結社の自由は侵害され、性差別、人種差別が横行している。社会福祉は縮小され、環境と生態系は破壊されている。ヨーロッパや日本のように世界各国で極右勢力がうごめき、急速に右傾化に走っているのも憂慮せざるを得ない。
「新自由主義グローバリゼーション」が「戦争の世界化」を生んでいる!
「対テロ戦争」は、新自由主義のもう一つの別の顔だ。新自由主義政策は、社会福祉と労働権を破壊することによって、社会的不平等を深化させる。女性と児童への労働搾取と人身売買、性的搾取と虐待が増えるなど、社会的弱者に対する保護は失われていく。全地球的な葛藤と戦争の根本原因は不平等を深める貧困の拡散にある。
公正のないところ平和もない。人類の和合と真の平和を築くための努力は、戦争に反対するとともに、抑圧と社会的不平等に反対し、社会的公正を具現するために注がれなければならない。
朝鮮半島とアジアの平和は世界平和への近道!
米国ブッシュ政権のアジアに対する覇権的戦争政策と日本の軍事大国化によって、朝鮮半島とアジアは世界でもっとも危険な戦争地域になる危機にある。
韓国、沖縄・日本本土に配備されている米軍戦力は、米軍のアジア全域に対する軍事行動を支え、削減されるどころかかえって強化されようとしている。
とりわけ私たちが憂慮するのは、ブッシュ政権の朝鮮半島政策は危険水域を超えているという点にある。ブッシュ政権は「悪の枢軸」発言に次ぎ、朝鮮半島で核戦争の道を開く「核態勢秘密報告書」まで作っている。朝鮮半島に平和の可能性を開いた九四年のジュネーブ包括合意や二〇〇〇年の米朝共同コミュニケは、意図的に無効化されつつあり、二〇〇三年がひとつのターニングポイントになるとも言われている。
私たちは宣言する。朝鮮半島での戦争は決してあってはならない。
日本政府は軍事大国化路線を放棄せよ!
米国と日本の好戦勢力が推進する日本の軍事大国化は、朝鮮半島と北東アジアの緊張をさらに高めている。小泉政権と日本の軍国主義勢力は、過去の侵略と植民地支配に謝罪と賠償を要求するアジアの民衆の声に、侵略と支配を美化する歴史教科書の歪曲と靖国神社の参拝で応え、自衛隊の海外派兵を推し進め、有事(戦時)法制と憲法九条の改悪に踏み込もうとするなど、軍事大国化の完成を強行している、最近では、現職閣僚が「核武装」の可能性まで公言している。
人類の良心の連帯と行動のみが唯一の希望だ!
アフガニスタンで、中東で、ヨーロッパで、南米と北米で、そしてアジアで、戦争に反対し立ち上がっている反戦平和のうねりは、戦争の暗雲立ち込める人類の未来に一条の光となっている。私たちは、ワールドカップが開催されている韓国と日本が発議し、平和を願う世界の人々が共にする<6・22反戦平和世界同時行動デー>に際し、宣言する。
―世界平和を破壊する米国の覇権的戦争政策と「対テロ」戦争反対!
―戦争を契機に世界的に一層深刻になっている人権蹂躙と民主主義・社会福祉・環境の後退反対!
―日本の有事法制と軍事大国化反対!
―MD(ミサイル防衛)構想など、軍備政策反対!
―戦争司令部米軍基地の新設、拡張反対!米軍基地を全面返還せよ!
―貧困と社会的不平等を生み出す新自由主義グローパリゼーション反対!
―侵略・植民地支配に対する日本政府・天皇制の責任追及を!
二〇〇二年六月二二日
資 料
国労闘争団の復職を求める闘いを支持します
十五年前、中曽根政権によって「国鉄改革」が断行されてから、日本の社会は急速にキナ臭いものになりました。
国策としての「国鉄分割・民営化」にたいして、日本のジャーナリズムはなんの異を唱えることもなく、むしろ国労組合員の悪口の記事を連日掲載していました。総評は解体されて「連合」になり、社会党は与党に組み込まれて解党されました。最近の「マスコミ規制」や「有事体制」の国会上程、さらには憲法改悪論議まで、非戦と民主主義にむかってきた戦後の営為は、一挙に投げ捨てられようとしています。
全国の国鉄の職場で、国策を強行するために、労働者の誇りを奪う不当労働行為が繰り返され、組合活動家を「人材活用センター」という収容所にいれて屈服を迫り、大量の労働者の自殺を発生させ、ついに一〇四七名もの解雇者をだしたのです。しかし、いまでも地域の労働者にささえられて、解雇の不当性を追及し、行商などによって生活をささえ、たたかいつづけている労働者とその家族がいます。
自民党、公明党、保守党の与党と杜民党は、「不当労働行為」はなかった、と認めることを前提にして、「白紙」の解決案を国労に押しつけ、同労組を混乱させておりますが、非解雇者たちのうち三〇〇人のひとたちは、それは闘争放棄だとして、拒否しております。これは反対のための反対ではなく、十五年間、人間としての尊厳を賭けてたたかってきた思いを地に捨てることはできない、との主張なのです。それは労働者として、そしてなによりも人間として、譲ることのできない一線なのです。
公共性を捨て去った国鉄解体と労働組合を分断させた不当労働行為の乱発は、その後のリストラのやり放題と失業者の激増、労働者の権利の剥奪を急速に押しすすめました。
わたしたちは、不当労働行為という名の政府の不正と強権を批判し、解雇を撤回することをもとめる意見広告「JRに人権を!」を、朝日新聞(九五年五月三日)に掲載したものです。
解雇を認めず、不当労働行為の解決をもとめる労働者がいるかぎり、わたしたちはそれを支持します。それが杜会に民主主義をひろめるための運動として大事だ、と信じるからです。
わたしたちは、鉄建公団(旧国鉄清算事業団)にたいする解雇無効、地位確認をもとめる訴訟を支詩します。誤りと不正は、ただちに正されるべきだと考えるからです。
呼びかけ人(五十音順)
鎌田慧(ルポライター)/川田悦子(衆議院議員)/佐高信(評論家)/佐藤昭夫(早稲田大学名誉教授)/新藤宗幸(千葉大学教授)/芹沢壽良(高知短大名誉教授)/中村敦夫(参議院議員)/針生一郎(評論家)/前田憲二(映画監督)/前田哲男(軍事評論家)/師岡武男(評論家)/山口孝(明治大学名誉教授)/吉川勇一(文筆業)
(二〇〇二年六月十五日現在)
憲法調査会北海道地方公聴会 札幌も圧倒的に九条護憲論
憲法調査会は二〇〇〇年一月の発足以来、二年半が過ぎた。当初「五年をメド」に出発しているので、それに従えば折り返し点に来た。国会での調査会は多数派の与党改憲派のペースで既成事実が積み重ねられている観があるが、地方公聴会では改憲派の思惑が通りにくく、中山会長らはいらだちを見せている。
六人中改憲反対が五人
衆議院憲法調査会(中山太郎会長)は六月二四日午後一時から、北海道札幌市で五回目の地方公聴会を開催した。これは衆議院選挙の全ブロックでの開催をめざして開いているもので(沖縄は特別に開催地とした)、昨年の仙台、神戸、名古屋、今年の名護につづいて開かれたもの。
意見陳述人は公募した中から選抜された六人。応募したのは北海道内各地から六二人で、うち改憲反対が五五人だった。陳述人はひとりだけが改憲の主張をしたが、他の五人は「憲法第九条改定反対」「有事法制反対」の立場を明確にして発言した。改憲派が圧倒的多数を占める憲法調査会の委員による選抜方式にもかかわらず、改憲反対の立場を主張する人が多数を占めるのは、各地方公聴会共通の傾向だ。これは応募者の圧倒的多数が改憲反対の立場であり、その反映だ。ある商業紙はこれを評して「地方は護憲派が多数」と書いたほどだ。
多様な立場から護憲論
最初に発言したのは大東亜商事株式会社社長の稲津定俊氏で「天皇元首制」の明記、「九条放棄、自衛権と国防軍創設」の明記、「世界秩序維持への積極的協力」、「国防の義務と国民徴兵制」の明記などの改憲論を主張した。
農業の石塚修氏は「循環農業をめざしている農民だ。日本国憲法は非常によくできている憲法。価値基準や国家理念を失っている現在にこそ、国民全体にとって必要な基本法だ」と述べ、「改憲論者は押しつけ憲法などというが、自衛隊も安保も有事法制も農業破壊も米国による押しつけだ」と批判した。
北海道弁護士会理事長の田中宏氏は護憲の立場を明らかにしたうえで、「北海道には五万人余のアイヌ民族が居住しており、ヤマト民族とは全く異なる言語と文化を享有している。かれらに対して日本国憲法が掲げる基本的人権の尊重、とりわけ民族による差別の禁止がどれだけ徹底しているか疑わしい」と指摘。最近でも鈴木宗男衆議院議員や平沼赳夫衆議院議員などから「単一民族国家発言」が続発していることに注意を促した。そして「日本国憲法の精神が未だこの国の隅々にまで及んでいないのであって、憲法改正を議論する前に、政治家はもっとやるべきことがあるはずだ」と改憲派を指弾した。
そして田中氏は「アイヌ民族の先住民族としての権利の回復」を実現し、民族差別の謝罪と共生、アイヌ民族文化の尊重、国会での「民族議席」の制定、アイヌ基本法の制定などを主張した。
これだけの具体的な指摘をうけたにもかかわらず、のちの質疑応答では自由党の武山百合子委員が「日本人は農耕民族だから」などと「単一民族論」の類の発言をする始末で、その議論の水準の低さに会場の失笑を買っていた。
大学生の佐藤聖美さんは就職差別やDVなど女性への差別が依然として根強くあり、憲法の精神にそって実質的な平等が保障される法律の制定が必要だと述べた。
小樽商科大学の結城洋一郎教授は日本国憲法の立脚する諸原理、すなわち基本的人権の不可侵、国民主権、恒久平和主義(戦力不保持と国の交戦権の否定)などは人類長年にわたる知的・政治的な営みの到達点でり、いかなる困難があろうとも堅持すべきものだ」と述べたうえで、現憲法は古典的な代表制の性格が色濃く、主権者国民の優位性を確保する手続きが不完全などいくつかの問題点を指摘した。
対抗調査会も開かれる
公聴会終了後の記者会見で中山会長は「第九条のことばかり言う人や、公聴会は意味がないと言う人など、二十一世紀がきているというのにあまりにも古い考えだ。憲法を変えるというとすぐ反発されるが、もっと広い立場で憲法を見なくてはならない。北海道には情報格差がある。どうも憲法のことがわかっていないようだ」などと陳述者を攻撃した。
北海道選出の自民党の中川昭一委員は「今回の公聴会は淋しく、恥ずかしい思いがした。北海道の悪い面がでた」と不満を述べた。
終了後、市内の市民会館に道内各地から百人ほどの市民が集まって「憲法調査会は札幌で何を調査したか? 市民が開く公聴会」を開いた。市民公聴会では五人の陳述人からの報告や質疑があり、最後に憲法調査会市民監視センターの高田健さんが、憲法調査会の経緯と実態について報告した。
部落史から取り残された諸賤民について K
陰陽師 (そのA)
大阪部落史研究グループ
陰陽道を広く民間に広めた人たちは、「陰陽師」という名称の人たちだけではなく、さまざまな呼び名、自称・蔑称も含めてあった。解放出版杜『部落史研究1』の多様な被差別民の世界では、陰陽師を便宜的に『散所系』に括り、唱門師、散所、院内、暦師、万歳村、曲舞、上原相人、博士などなど地方・場所・階層・歴史・役割により異なった人々を紹介している。彼らは多くはひとつの集落を形成し、かたや農業を営み、季節によって長期の旅にでて暦を売ったり、正月に万歳をしたり、お祓いなどをして生計を立てていた。その中でも特に声聞師(しょうもんじ、唱聞師・しょうもじとも言う)や修験陰陽師は陰陽道を民間に広めるのに影響を与えた。
声聞師は宗教的・呪術的な職能に従事するものを言うが、『大乗院寺社雑事記』によれば「陰陽師、金口、暦星官、久世舞、盆彼岸経、毘沙門経等芸能、七道者自伝」するものと説明がある。金口とは金鼓を打ちながら念仏をを唱える者、暦星官は宿曜道を用いてト占をするもの、毘沙門経とは正月に毘沙門経やその他の祝詞をとなえ、また札を配って歩くもの、盆彼岸経は盆彼岸に家々を廻って経を読み札を配るものをいい、何れも占術宗教的なものがその内容であり、その芸能的な内容も重要な構成要素であった。芸能といえば彼らは座的編成をなし、大和などの声聞師は五ヶ所・十座など整然とした座構成が作り上げられていた。
芸能的側面とは別に戦う戦闘組織の側面も持ち合わせていた。『中世・近世の民衆と芸能』(阿吽杜)の中で、天文二(一五三三)年四月法華一揆の高揚する京都で声聞師が二度にわたって放火を受けたことや、文禄二(一五九三)年に、秀吉が京都・大阪・奈良の声聞師を狩りだし、一三一人の陰陽師を尾張に送って荒地の開発に従わせるように命じたことが取り上げられている。そして彼ら自身で攻撃を受けた場合、各地より多くの人員を動員して戦っていた。それは護身用以上に、棒術だとか石合戦とか、かなり特殊な戦術を伝承していたのではないか、「印地の党」の流れだと上記書は推測している。(つづく)
せんりゅう
W杯おわって遺跡のようになり
歓声の跡は悲鳴の地方税
金権のムネムネ会のお葬式
続々と腐れ会社のお詫び文
儲かるは銀行ばかりの不況風
求人のパートもデフレとなりました
窓ぎわでPCやっている課長
キーボードおぼえる指のおそいこと
失敗の治療費も支払わされ
憲法のしらぬところでリムパック
有事法作らせてはならじ語気つよし
ゝ史
二〇〇二年六月
複眼単眼
日米外交密約の黒い霧とシラを切りつづけた歴代政府
その事件は七〇年安保・沖縄闘争の最中だった。当時、若さにまかせて駆け回っていた日々だったが、その事件は鮮明に記憶にある。
国家権力の本性を示した「イヤーな感じ」の事件だという印象が残った。ただ、それを運動の中で問題にして取り上げた記憶はない。もしかすると、街頭宣伝などではその話題に触れたかも知れないが、若さのゆえに「国家なんてそんなもんさ」とハナからせせら笑っていただけだったかも知れない。
その「イヤーな感じの事件」が最近、よみがえった。 それは「沖縄返還交渉にともなう日米密約事件」、あるいは「外務省機密漏洩(ろうえい)事件」などとして話題になった。毎日新聞社の西山太吉記者が入手した「沖縄返還交渉」に関する外務省の公電を、社会党(当時)の横路孝弘衆議院議員が暴露して、日米密約疑惑を追及した。
一九七二年の「沖縄返還」に伴う日米政府密約には、当時「核ぬき本土並み返還」などと言われながら、裏では核の配置を容認した「核密約」の存在の問題が有名だ。
この外務省機密漏洩事件は「沖縄返還に伴い、返還された土地の現状回復のために米国が支払いを求められた四百万ドルの資金を日本政府が提供する」という密約で、当時の日本政府が米国政府に頼んで「秘密了解」にしてもらったものであり、その上で政府は「補償費用肩代わり密約はない」と否定し、現在の政府もその立場を受け継いでいるもの。
西山記者はその外務省公電を知り合いの外務省事務官の女性から入手したが、いつのまにか問題がすり替えられ「記者が事務官をそそのかして不正に手に入れた」ことへの批判となり、国家公務員法違反で西山記者と事務官が逮捕、起訴された。
西山氏は一審では無罪だったが、二審と最高裁で有罪とされた。
この過程でと野党とマスコミによる「密約」疑惑追及もしぼんでしまった。
この事件の真相を示す書類が、三十年を経て「米国立公文書館保管文書の秘密指定解除措置」で公開された「ニクソン政権関連公文書」の中から見つかった。
これにたいして最近、西山氏は「裁判で外務省は偽証を繰り返してきた。最高裁も国家の奉仕者にすぎない。だれが罪を犯したのか、自然に証明されつつある」と語った。
福田官房長官はそれでも「肩代わりしていないので、密約の必要もないというのが論理的帰結だ」としらを切った。
日米外交が密約だらけというのは「常識」に属するが、結局、権力者はこの福田談話のようなことで逃げきるのが常だ。
それでも米国は情報公開制度があるから、事実上の時効になったあとで公文書が公開されて露呈する。
六〇年安保の際の「藤山・マッカーサー口頭了解」での核持ち込み合意密約、前出の沖縄返還における核密約などが露呈されているし、新ガイドラインの際にも密約があったと言われている。
それにしても一方的に断罪された、当時の外務事務官だった女性は、いまはどこでどうしているだろうか。
今回の文書公開で、少しは恨みが晴れただろうか。(T)