人民新報 ・ 第1078号<統合171> (2002年11月25日)
  
                                目次

● 戦争をする国か 第九条の国か  ブッシュ・ブレアの後を追う小泉内閣の暴走を許さない

● [談話] 私たちは中教審の中間報告・教育基本法の改悪に強く反対します

                   子どもと教科書全国ネット21事務局長 俵 義文

● 有事法制を廃案に イラク攻撃にNOを! 『私たちの声を国会に』デー

● 石原都政にNO!の声  市民がシンポジウムを開催

● 法制廃案要求 全労協が国会前座込み

● 三池闘争写真展  多くの人々の参加で大きな成功

● 労働法制の改悪を許すな 解雇自由社会を阻止しよう !

● 寺尾差別判決二八ヶ年糾弾中央総決起集会 石川さんの無罪確定まで闘いつづけよう

● 大阪ピースサイクル   有事法制反対かかげ、ストリートライブ&ビラまき

● 図書 /  「戦争する国へ有事法制のシナリオ」 ( 渡辺治+三輪隆+小沢隆一 )

● KODAMA / 最近読んだ本 - 樹人

● 複眼単眼 / 挑発者石原慎太郎と石川啄木のこと



戦争をする国か 第九条の国か

  
ブッシュ・ブレアの後を追う小泉内閣の暴走を許さない 

 衆議院憲法調査会(中山太郎会長)が「中間報告書」をまとめたのにつづいて、中央教育審議会(鳥居泰彦会長)が教育基本法改悪のための「中間報告」をまとめ、さらに福田官房長官の私的懇談会「追悼・平和祈念のための記念碑等施設の在り方を考える懇談会」(座長・今井敬日本経団連名誉会長)がPKOなども含む国の戦争による死者の「国立追悼施設」の建設を答申することになったという。
 改憲、愛国・公共心教育、戦死者の追悼施設建設と、立てつづけにだされてくる政府関係機関の答申などは、日本がいよいよ「戦争をする国」への本格的な体制づくりに踏み込んだことを示している。こうした動きの例は毎日のメディアの報道で見ただけでも枚挙にいとまがない。
 北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の日本人拉致事件批判のキャンペーンを石原都知事や一部マスコミのように、朝鮮敵視と戦争肯定の世論づくりに利用する異常なうごき、これを利用した石破防衛庁長官による「日米ミサイル防衛」開発の推進発言。一方では米国のアフガン戦争に無条件に追随し、特別措置法をさらに半年、自動的に再々延長しただけでなく、歴代政府が集団的自衛権の行使は憲法違反と言ってきたにもかかわらず、それに抵触すると指摘されているイージス艦をインド洋に派遣する動き、そしてタイ陸軍の資財のアフガン戦線への代替輸送、燃料補給対象国を米英からさらにドイツ、フランス、スペインなどに拡大する。これらの事態が何の議論もないままに強行されていく。支配層自らが法を軽視し、法治主義、立憲主義を放棄しかねない危なげな風潮の中で、社会に弱肉強食と暴力主義、むき出しの強権主義が蔓延しつつある。
 米国のブッシュ政権による国際世論や国際法を無視したユニラテラリズムという無法な行動に、当然のように小泉政権が賛同し、みずからの内政もまたそれにならって進めるという、まさに歴史を西部劇の時代の帝国主義にあともどりさせるかのような様相をしめしている。
 いまこそ、これらに対決し、反撃する行動を全力で組織しなくてはならない。すでに欧米各国での民衆の闘いの高揚がある。これらと連帯した多様な反戦の声を全国のいたるところからあげよう。
 すべてのこころある人びとは反戦の大義を掲げた歴史的行動にたちあがれ。


[談話]

  私たちは中教審の中間報告・教育基本法の改悪に強く反対します

                   
子どもと教科書全国ネット21事務局長 俵 義文

 文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会は、11月14日、「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画のあり方について」の「中間報告」を発表しました。これは、教育基本法を抜本的に「見直す」ものですが、その「見直し」の内容は、教育基本法を改悪する以外の何ものでもなく、私たちはこれに強く反対するものです。
 教育基本法は敗戦直後の一九四七年に「(憲法)の理想の実現は、根本において教育の力にまつべき」として、「教育及び教育制度全般を通じる基本理念と教育原理を宣明することを目的として制定された」(旭川学テ判決事件最高裁大法廷判決、一九七六年)教育に関する根本法規です。教育基本法の制定は戦前・戦中の教育に対する反省を前提にしたものでした。
 教育基本法の理念は、決して時代遅れになっていませんし、今日でも立派に通用するだけでなく、憲法と共に国際社会に誇るべきものです。
 「中間報告」を見ても、教育基本法を「見直す」必要性は明らかにされていません。中間報告は、教育の「深刻な危機」「教育荒廃」や時代・社会の変化などをあげていますが、そのことは教育基本法を変えなければならない理由にはなりません。
 「中間報告」は、「新しい時代を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成」を教育の目標とし、「個性に応じた教育」「公共の精神、道徳心、規範意識」「国を愛する心」「伝統、文化の尊重」などを教育基本法の基本理念に加えようとしています。
 このような教育基本法の理念に反する内容を盛り込み、教育基本法の基本理念を大きく変えてしまおうということにこそ、「見直し」の意図があるといえます。
 「公共の精神」は、新たな「滅私奉公」をめざすものといえ、また、「国を愛する心」は愛国心教育を基本理念にするものです。「公共の精神」「国を愛する心」「伝統、文化」などを教育の基本理念に加えるのは、国家主義的な教育をめざすものであり、憲法にも違反するものといえます。
 政府・文部科学省は、「日の丸・君が代」の強制によって「内心の自由」を侵しつづけていますが、これらを教育基本法の理念に加えることによって、子どもの心の中にまで入り込み、菅理・統制するものだといえます。
 中教審は教育基本法「見直し」とセットで教育振興基本計画を策定し、「基本計画の策定の根拠となる規定」を「教育基本法に位置づける」としています。これは、国家の教育内容への支配・介入を禁じている教育基本法を骨抜きにする危険性があります。教育基本法の理念を実現する施策という名目で、時々の政府の教育政策を教育・教科書や教育現場に強制できるようにすることにねらいがあります。もし、教育振興基本計画が必要なら、教育基本法に根拠規定がなくても策定・実施は可能です。
 「中間報告」の基本計画は、「教育荒廃」をもたらしたこれまでの文科省の教育政策を教育基本法によって根拠を与え、教育をいっそう強権的に統制するものといえます。基本計画は、教育をすべて数値化することや個人の心にまで踏み込む内容など、私たちは「中間報告」の基本計画にも反対であることはいうまでもありません。
 政府は、新ガイドライン関連法、テロ特別措置法、有事法制によって日本を「戦争する国」に変えようとしています。教育基本法の改悪は、「日の丸・君が代」や「奉仕活動」の強制、歴史歪曲教科書の問題、『心のノート』の押し付けなどと一体となって、「戦争をする国」の国民をつくることをめざすものであり、憲法改悪へのステップです。
 いま必要なことは、教育基本法の「見直し」ではなく、基本法を教育のすみずみにまで生かし活用する政策・施策の実施です。国民の教育への権利を保障し、教育の自由を実現することこそが緊急の課題だと確信するものです。

二〇〇二年十一月十四日 

(要旨・文責編集部)


有事法制を廃案に イラク攻撃にNOを! 『私たちの声を国会に』デー

 アメリカ・ブッシュ政権による国連決議や国際法の精神すら無視した単独覇権主義のイラク総攻撃の危険が迫る中、欧米諸国では相次いで大規模な民衆の反戦デモがくり広げられている。
 東京でも、十一月一五日午後六時から「有事法制を廃案に イラク攻撃にNOを! 11・15『私たちの声を国会に』デー」の行動がとりくまれた。三五〇〇名の人びとが日比谷野外音楽堂で集会を開いたあと、国会までデモ行進をした。
 この集会は一〇月二六日に同じ日比谷野音で行われた「有事法制を廃案に イラク攻撃にNOを!10・26全国集会」につづくもので、主催の実行委員会には「フォーラム・平和・人権・環境」「戦争反対・有事法案を廃案に!市民緊急行動」「原子力資料情報室」など、労働組合や市民団体が参加している。
 集会は「市民緊急行動」の中尾こずえさんの司会で始まり、オープニングの
「ヨッシーとジュゴンの家」の歌や、写真家の豊田直己さんの報告、「ウリパラム」のチャンゴの演奏、NGO非戦ネット、北海道平和フォーラム、佐世保地区労などの挨拶があった。
 主催者を代表して堀峰夫(フォーラム・平和・人権・環境副代表)さんがあいさつした。
 各界からの発言では民主党衆議院議員の小林守さんが「有事法制の廃案をめざし、アメリカのイラク攻撃を許さず、世界の人びとと連帯して闘おうという集会に、民主党の心ある国会議員を代表して挨拶する」と前置きして、
「私たちは昨年の同時多発テロからだけ見て物事を考えるわけにはいかない。アメリカの自由や正義を相対化して、歴史的に見なくてはならない。タリバンや、サダム・フセイン政権を作ってきたのはアメリカではないか。また日本をこのアメリカに呼応して戦争ができる国にしようとする有事法制に反対して闘う」とのべた。
 社民党の土井たか子党首は「イラクが国連決議を受け入れるというのに、フセイン政権の存在そのものが問題だと言いだした。こんな無茶な話はない。米国は世界の長い歴史の中で作られてきた先制攻撃禁止の原則を踏みにじろうとしている。世界中で反戦デモの高揚がある。これに連帯したい。小泉内閣はテロ特措法を延長し、ブッシュに協力しようとしている。しかしこの法律のどこを読んでもイラク戦争に協力してよいと書いてない。有事法制を廃案にし、平和憲法を生かし、戦争を止めよう」と訴えた。
 みどりの会議の中村敦夫代表は「外交・防衛をアメリカに丸投げする小泉内閣は恥ずかしい。アメリカは残り少ない自国の石油埋蔵量を恐れ、埋蔵量世界第二位のイラクを手に入れようとしている。典型的な侵略戦争だ。アメリカでは石油のために血を流すなというスローガンが掲げられている。この戦争に反対し、これに協力するために作られようとしている有事立法に反対する」と挨拶した。
 つづいて「STOP!有事法制、12・1大集会」実行委員会からの連帯のメッセージが紹介された。
 また「日本国際ボランティアセンター・アフガン現地代表」の谷山博史さん、「アラブイスラームの子どもたちを助ける会」のジャミーラ高橋さんから報告があった。福山真劫(フォーラム・平和・人絹・環境事務局長)さんの行動提起の後、決議を採択したた。
 参加者は市民団体を先頭に衆議院と参議院に向けてデモをした。議員面会所では社民党と民主党の国会議員と秘書団がデモを迎えた。


石原都政にNO!の声  市民がシンポジウムを開催

 石原慎太郎東京都知事の極度に度を越した好戦的で、差別的で、民族排外主義的な発言が、つぎつぎとマスコミを賑わしている。政治不信が高まる中で、マスコミは「石原新党」待望論などを無責任に煽り立てる。図に乗った石原は「北朝鮮と戦争をやる」とか、「憲法を停止しろ」とか、その発言をますますエスカレートさせている。
 こうした発言やパフォーマンスに見られるファシズム的な傾向は、彼のすすめる都政の場面においても例外ではない。
 このほど、石原都知事の東京都における悪政を暴露し、これと闘うことを訴える集会が開かれた。
 十一月十五日夜、東京で「十一・一五石原都政にNO!市民の集い」が開かれ、会場いっぱいの一三〇名の人びとが集まった。
 集会は富山洋子さん(日本消費者連盟代表)の司会で開会した。
 シンポジウムでは海渡雄一さん(弁護士)がコーディネーターを行い、五人のパネリストが発言した。 はじめは斉藤貴男さん(ジャーナリスト)が発言し、都知事の外国人差別や
女性蔑視など精力的な取材で得た石原都知事の実像をえぐりだした。
 佐高信さん(評論家)は石原と対談した経験などもひきながら、強そうに見える石原知事の弱点を指摘した。
 渡辺治さん(一橋大学教授)は、小泉首相と石原都知事を比較し、ともにサッチャー、レーガンのやった新自由主義で日本の構造改革をやろうとしていると指摘した。その「改革」はグローバリズムのなかで生き抜こうとする企業のために、国内では経済や教育の格差拡大を進め、対外的には企業の権益を守るための軍事力強化の方向となると述べた。
 都で働く教員は、人事評価が導入され、生徒との接触がどんどん少なくなっている教育現場の荒廃の実態を報告した。
 清掃の職場で働く女性職員は、管理強化と自己規制で、職場では石原都知事の意向をおもんばかった行動ばかりが横行し、良心的な職員が窒息させられている状況を赤裸々に報告した。
 パネリストの発言につづく会場からのアピールでは、「石原都知事の『ババァ発言』に怒り、謝罪を求める会」の土井登美江さんは、都知事の女性蔑視発言について抗議する公開質問状や訴訟、都民への宣伝活動などの取り組みを報告した。
 「全国自然保護連合」の清水孝彰さんは、都知事が排ガス規制の一方で高速道路建設をすすめるなどの欺瞞性を指摘した。
 「都労連交流会」の柳田真さんは、都で働く労働者と市民の連帯を訴えた。
 集会では、近づく東京都知事選挙にあたり、石原に対抗する候補者を広く連帯して擁立していくことが閉塞状況を打開する方法であるという方向が示された。(首都圏通信員)


有事法制廃案要求 全労協が国会前座込み

 全国労働組合連絡協議会東京協議会(東京全労協)は十一月十八日午前十時から十二時まで、衆議院第二議員会館前で「有事法制廃案!」をかかげて座込み行動を行なった。
 東京全労協は「石原都知事『戦争』発言糾弾!有事関連三法案を廃案に!在日外国人の人権確立」などのスローガンをかかげて、都知事交渉などを闘ってきた。
 さらにこの十八日の行動につづいて、二五日にも国会前座込み行動を予定している。
 国会前の集会では藤崎良三全労協議長や市民緊急行動の高田健さんが連帯の挨拶をして、有事三法案の廃案をめざして、最後まで闘うことを訴え、「STOP!有事法制 12・1大集会」の成功をめざして共同することを訴えた。


三池闘争写真展  多くの人々の参加で大きな成功

 「一九六〇年・三池写真展」は一一月一一日にはじまり、一七日に終了した。
 三池闘争は、三井鉱山資本による大量の「人員整理」と組合活動家を狙い打ちにした指名解雇に反対し、全国の労働者の支援を得て闘われ、名実共に総資本と総労働の激突といわれた。その闘いは六〇年安保闘争と結びつき、日本の労働運動の歴史に輝かしい足跡を残した。
 写真展前日の一〇日には「三池闘争と現代」と題したシンポジウムが開かれた。
 写真展では、大衆的な基盤に立脚した大闘争の記録写真とともに組合の腕章、坑内員のヘルメット、キャップランプなどが展示されていた。
 その中には組合員たち闘争の合間につくったパイプ(写真上)もあった。それは、単なるパイプではなく、武装警官隊や会社に雇われた右翼暴力団からの攻撃から身を守る「武器」ともなったものだ。
 三池闘争の記録および関連ビデオが連日上映された。
 実行委員会の発表によると、入場者数は一〇〇〇名をこえ、二〇〇万円をこえる多くのカンパも集まったという。
 最終日の一七日には、「記念レセプション」(写真下)が開かれた。そこでは、さまざまな政治潮流の多くの人びとが発言し、全国の労働者が総結集して闘った三池闘争にふさわしいものとなった。
 展示された写真を中心にした写真集(三〇〇〇円)、二〇〇三年カレンダー(一〇〇〇円)が発売されている。問い合わせは、「同時代社」(千代田区西神田二―七―六 電話〇三・三二六一・三一四九)まで。


労働法制の改悪を許すな 解雇自由社会を阻止しよう !

 小泉内閣の構造改革攻撃が労働分野で強まっている。
 解雇基準・ルール化などを盛り込んだ「改正」労働基準法や労働者派遣法・職業安定法の見直しなどをめぐる労資の攻防戦が、いまひとつのヤマ場にさしかかっている。
小泉内閣は、年内には法案要綱を確認し、来年一月からの通常国会に各改悪法案を提出することになっている。
 この改悪は、今年三月の閣議決定「規制改革推進三カ年計画」と政府の総合規制改革会議の中間取りまとめ(今年七月)が打ちだした方向、すなわち終身雇用と年功序列賃金という「日本的雇用慣行」といわれるものを前提とした労働基準法を変え、雇用契約などの面で一段の規制緩和を進めるというものだ。その焦点は「解雇自由」を法制化することである。かれらは、現在、法律上の規定がなく、解雇権濫用法理や整理解雇四要件などによっている「解雇基準」は、あまりにも労働者保護的であり、これをなくす必要があるというのである。
 労基法は数年前に「改正」されたばかりだ。しかし、労基法だけではない。今回の労働法制改悪は、労働基準法(解雇基準・ルール、有期労働契約期間の拡大、裁量労働制の拡大)、労働者派遣法・職業安定法(派遣労働者の拡大、派遣期間の延長、紹介予定派遣の規制緩和、求職者からの手数料徴収・紹介事業の許可制の緩和)などという大規模なものである。

「正当な解雇理由」

 解雇問題を見てみよう。
 小泉内閣は「構造改革」に伴って予想される「雇用の流動化」に法律面で備える狙いをもって、労働法制のいっそうの改悪に臨んでいる。
 しかし、どういう解雇基準が妥当かという難問があるうえに、経営者の権限乱用を招くことは必至であり(それが改悪の狙いだが)、労働者の権利を否定することは明かであり、労働者・労働組合の大きな反発をもたらすものとなっている。
 今年、厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会は、労働契約の終了、有期雇用契約の拡大、裁量労働制などを軸に労働法制「改正」の議論を行ってきた。
 とくに「労働契約の終了で発生するトラブルを防止する」ためとして、企業が労働者を解雇する場合に「正当な理由」が必要だとする規定を労働基準法に盛り込む検討をしている。
 これまで「三カ年計画」や総合規制改革会議中間とりまとめでの提案と労使の議論として、@解雇基準やルールについて立法で明示することを検討し、A解雇の救済手段として「金銭賠償方式」の可能性の検討が行われた。また労働政策審議会では、解雇する場合に「正当な理由」が必要との規定を労働基準法に盛り込むことが検討され、就業規則の必要記載事項に「解雇の事由」が含まれることの明確化が提案された。
 こうした論議のなかで、労働側は、@労働基準法については、労働時間、労働契約等に関する労働者保護が不十分であり、これらの強化の改正が必要、A解雇については、解雇権濫用法理や整理解雇四要件を法制化すべきで、この緩和には反対する、としている。
 それに対して、使用者側の意見は、@整理解雇四要件の立法化や刑罰法規である労働基準法に解雇ルール及び手続きを規定することは労使自治への行政の介入であるため反対、A解雇無効の場合に復職をさせずに損害賠償するという方法が認められないのは問題がある、などとしている。

有期雇用の拡大

 労働基準法の有期労働契約の拡大問題での、労資の主張の違いも著しい。
 現行の労基法では、雇用契約の期間について、原則一年(博士号の取得者や新製品の研究開発の職種などは特別に三年未満まで)の「有期契約」と期間を定めない事実上の「終身雇用」の二本立てとなっている。
 労働側は、有期労働契約の期間の拡大については、原則一年、特別の専門職などを三年とする現行規定を維持を主張している。これに対し、使用者側は、最長五年の労働契約の締結が可能になるように契約期間制限を早期に緩和せよと要求している。企業の側は、いまのものは企業の裁量の幅が狭く、雇用機会拡大の観点からも、契約期間の選択肢を増やすべきだ、としているのだ。
 裁量労働制では、労働側の主張として、@裁量労働制の対象の拡大や制度要件の緩和を行うことに反対、Aホワイトカラー労働者のエグゼンプション(労働基準法の適用除外)については、長時間残業、過労死などが集中する現状では認められない、とするのに対し、使用者側は、@企画業務型裁量労働については、対象業務の拡大と制度導入の際の手続きの簡素化の早期実施、Aホワイトカラー・エグゼンプション制度の早期創設を要求している。

労働者の団結で反撃を

 小泉内閣の狙う労働分野での構造改革方針は、今までにもまして雇用の分野に市場原理主義を持ち込み、労働法制をさらに緩和しようとするものである。
 失業率が五%を超える状況の中にあるのに、小泉は倒産・失業が増大することが「構造改革が進んでいる証拠」などと放言している。こうした労働者の生活を無視した小泉のやり方、そして労働者に一方的に犠牲を押しつけながら儲けている大資本の横暴を決して許さない。
 全国の労働者・労働組合は、首切り自由社会をもたらす労働法制緩和のための法改悪に強く反対し、労働者の権利と安定雇用を確保するため解雇規制や有期雇用を制限する労働法制の確立のため闘おう。


寺尾差別判決二八ヶ年糾弾中央総決起集会

    石川さんの無罪確定まで闘いつづけよう

 去る一〇月三一日、日比谷野音において、午後一時より「寺尾差別判決二八ヶ年糾弾中央総決起集会」が開催されました。
 日比谷野音に入ると、解放同盟の各支部が、前段集会をやっていて元気が出る。
 しかし、寺尾差別判決後二八年も続いていることには敬意を表するが、石川さんがいまだに仮出獄の身分で完全無罪ではないことに疑問を持ってしまう。私は、毎回中央集会には参加しているが、石川さんの不屈の闘志には頭の下がる思いだ。
 集会が始まり、司会の挨拶・議長団選出につづいて弁護団の経過報告。
 弁護団報告では、膨大な量の新鑑定を出し、弁護団も石川無実を確信し、内外の闘いをリンクし闘うことが強調された。
 狭山共闘・狭山住民の会の連帯の挨拶があり、狭山住民の会は、今年一五〇を突破し各地で闘われていることが報告された。
 そして、石川さんご夫妻の挨拶だ。一雄さんは、「再審請求が棄却され、特別抗告審に入っていますが、全証拠を開示するまでもなく私を再尋問していただけれぱ、私が無実だということは明白です」と述べ、歌二首を披露された。
 早智子さんも、一雄さんの後を受けて、無実を確信し訴えられた。早智子さんは、インターネットでホームページを作成されているそうですが、そこで大変元気づけられるそうです。 集会を終わって、デモに移った。
 私は、石川一雄さんの獄中・仮出獄と続く長きに亘る権力による拘束は絶対許せない気持ちだ。これだけの新証拠が出ているにもかかわらず、前にも触れているが完全無罪を勝ち取ることが出来ないことに疑問を持ってしまう。
 もちろん、検察・裁判所の反動が主な理由でしょうが、私たちの闘いも生ぬるいのではないか。解放同盟・弁護団が出来ないことを、一五〇を超える住民の会が連携し引き受けれぱ、違った道が開けるのではないかと思います。
 これからも、石川さんの無実の確定まで闘い続けようと思います。(大阪・労働者)


大阪ピースサイクル

 有事法制反対かかげ ストリートライブ&ビラまき

 一一月十三日、寒風ふきすさぶ梅田の陸橋の上、大阪ピースサイクルの歌姫隊+α、計五人で「有事法制反対」の看板をかかげ、ビラまき&ストリートライブ(もどき)を行いました。
 もし、有事法制が成立すれば、いつでも戦争をすることができる…戦争に協力したくないし、なによりも子どもたちの未来に戦争を残したくありません。今、反対の行動を起こさなければきっと後悔する、何かしなければと思いついたのがこの企画でした。私たちはピースサイクルで歌のグループを作っていて、どうせやるならただビラをまくだけでなく、楽しく歌を唄いながらやりたいなと思い「ビラまき&ストリートライブ(もどき)」となりました。
 「私たちは戦争をするための法律『有事法制』に反対します」という看板を立てて、「有事法制って戦争をするための法律なの?」と題して有事法制の危険性を書いたビラ、MC、そして東京の集会ではおなじみ(?)の「ゆうじ君」の歌を唄い、市民運動で知り合った仲間たちと一二月一四日に企画しているコンサートの宣伝とともに約一時間訴えました。
 寒さのせいか、家路を急いでいるのか、興味がないのか、いつもにも増して、足早に人々は通り過ぎいきました。結局ビラは六〇枚ぐらいしか撒けませんでした。
 成果はあまりなかったけど、一人でも多くの人に有事法制の危険性を訴えれたことは成果だったと思います。やらなければ、何も伝わりませんからねっ!
 地道だけど、成果もあまり期待できないけど、続けていくことは大切なことなので、寒さにめげず継続していきたいと思っています。(大阪・里見)


図書

研究者による活動者への意欲的な問題提起 「戦争する国へ有事法制のシナリオ」

     渡辺治+三輪隆+小沢隆一 旬報社 一四〇〇円

 先の国会で継続審議となった有事三法案に対して、この臨時国会の間も気を緩めないでさまざまな闘いが継続されている。
小泉内閣は所信表明で最重要課題と確認したにもかかわらず、この臨時国会での強行を躊躇している。闘いは継続されなくてはならない。
 こうした時期に運動論に触れた研究者の意欲的な本がでた。ぜひ運動圏での議論の材料に使ってほしい。
 本書の第一章「いまなぜ有事法制か」、第二章「有事法制は何をもたらすか」につづく、第三章「有事法制のない世界と日本をめざして」がそれである。
 三章は「有事法制が通ったら日本はどこへ?有事法制から改憲へ」(渡辺治)、「有事法制がなくて、テロや不審船がきても大丈夫なのですか?」(小沢隆一)、「平和・護憲運動は有事立法にどう対抗してきたか?」(和田進)、「有事法制反対運動はどこまで進んだか?いかに闘うか?」(三輪隆)、「武力によらない平和な世界と日本をつくるために」(渡辺治)からなっている。
 一見してわかるように、これらの執筆者はいずれも日本共産党系とみられる研究者たちである。
しかし、本書が運動圏の者にとってもかなり同意できる問題提起であるのは、これらの人びとが日本共産党の縛りをゆるめて、それを相対化しながら書いているところにある。本書はこうした姿勢によって有事法制反対運動の論理と実態についての全体を知りたいものにとっては十分に有効なものとなった。
 しかし、不満も残る。たとえば、渡辺が「一国主義的運動の限界」を指摘するとき、彼はどこを見ているのだろうか。すでに日本の有事法制反対運動がその限界を突破して、アメリカや韓国・アジアの人びとと連帯を作りだしはじめていることを彼は知らない。あるいは彼はそう言うことで、共産党系の運動を批判しているのかも知れない。そうであるなら、対案として現実に存在する、決して小さくない、これらの運動を評価すべきだろう。ほかにもあるが、それはさておき、研究者によって、こうした実践的な試みがなされたことに共感する。(斉藤)


KODAMA

    最近読んだ本      樹人

 本書を読み終わって最初に感じたことは、自主性がなくひたすらアメリカの顔色をうかがう属国としての日本の姿、そしてそれを利用し目分の省や部局の勢力拡大しか考えない官僚の浅ましい態度であった。
 二月二六日、米国防総省が発表したアフガニスタン報復戦争の貢献国リストに日本が載らなかったことに対し、中谷防衛庁長官(当時)はラムズフェルド国防長官に釈明と陳謝を求める手紙を書いた。
 べーカー駐日米大使のもとに留め置かれた手紙に反応したアメリカは、ただちに日本の名を追加した改訂版を発表し、その理由を単純なミスとして事を収めた。
 しかし、新たな改訂版を発表する前日の五月二一日、アフガニスタンでの掃討作戦を指揮する最高責任者であるフランクス米中央軍司令官は、記者会見で六八ヵ国に謝意を表明したが、会見終了寸前まで日本の名が出ることはなかったのだ。
 報復戦争を支援するため、約二一〇〇名の自衛隊員を乗せた護衛艦三隻と補給艦二隻を派遣し、それまでに米に軍に八七回、英軍に三回の洋上給油を行い、約四〇億円もの燃料費を負担しただけでなく、パキスタン国内のアフガン難民への救援物資を輸送した日本、しかしアメリカにとっては忘れてもかまわない国なのだ。
 その理由は、本書に記されているように国の在り方と行く末を考えることなく、ひたすらテロ対策特別法の成立を急いだ政権担当者、政府の基本方針のなさにつけこみ、省・部局の権益拡犬しか念頭にない官僚たちの数々の策動を見れば明らかだと思う。
 その姿は国際社会で自国の立場を確立しようとするものではなく、宗主国の顔色をうかがいながら権益のおこぼれにあずかろうとする属国のものでしかない。
 主人にとっては、家来が己の為に働くのは当たり前で、時々頭をなでて死なない程度にこき使いたいのだ。
 米国にとって、日本は六〇ヵ国以上の同盟国の一つにしかすぎず、二万三千人が働く国防総省の中で直接日本との窓口となるのは三人しかいないにもかかわらず、アメリカの動向に一喜一憂する日本は対等のパートナーではありえない。
 昨年九月一一日の同時多発テロ以降の動きを追うと、二二〇億の援助にもかかわらず国際的には評価されなかった湾岸戦争の失態を繰り返さず、あわよくば米の後押しで常任理事国入りをねらって積極的に活動した。
 柳井駐米大使は一五日にアーミテージ国務副長官と極秘会談を行い、当時の田中外相を無視して意見書を提出する。
 防衛庁の「制服組」は暴走し、海上幕僚は九月二一日に事前の報告なく米空母キティホークの護衛(伴走)を行い、米海軍の同型艦と瞬時にしてデータを交換できるイージス艦派遣に奔走し、国防族の議員を積極的に訪問するようになる。
 「背広組」の内局は、戦闘地域に自衛隊を派遣しないよう努めたが、アメリカの圧力に腰砕けとなった。
 最後に政府、一日の早いテロ対策特別措置法案成立を目指した小泉政権は戦闘地域の確定など、集団的自衛権や武力行使の一体化などに関連する微妙な問題では憲法論議を回避し続けた。
 かつて国連平和維持活動(PKO)協力法、周辺事態安全確保法審議では自衛隊を危険な場所に行かせない立場をとり、九三年五月のPKO活動中に起こった文民警察官殺傷事件に際して、撤退論をぷち上げた小泉は見事に変節したのだ。

「9・11と日本外交」
 久江雅彦著/講談社現代新書/全一九四ページ/定価・六六〇円(税別)


複眼単眼

  
挑発者石原慎太郎と石川啄木のこと

 こういう輩との闘いを倦むことなくつづけなくてはならない。ものわかりがよくなったり、智者ぶって、批判を手控えたりしてはならない。愚直に、正面から体当たりで、異議申し立てをしつづけなくてはならない。
 石原慎太郎東京都知事の言動である。
 この人物は「(拉致被害者の)子どもを、ひとりでも北朝鮮が迫害するなり、病気と称して殺したりなんかしたら、これはもう指弾の対象、そういう国と日本は堂々と戦争をしたっていい」「憲法もヘチマもない」(十一月十日、テレビ朝日)と言い放った。
 同様の発言は六月の『ニューズウィーク』誌での「私が総理大臣だったら、北朝鮮と戦争してでも取り戻す」というのにも見られた。
 石原はこうした挑発的で好戦的な発言を再三にわたってメディアに対して繰り返している。そしてその背景には、思想的な朝鮮人、中国人への蔑視と排外主義がある。こ ういう発言が都知事の憲法尊重・擁護義務に反することも承知のうえで「ヘチマ」発言をする。発言の仕方はビートたけしも似ている。それが一定部分の支持を受けることを計算している。しかしたけしはタレントで、慎太郎は都知事である。憲法にたいする立場が全く異なるのだ。
 冒頭に書いたのは自戒でもある。あきらめてはならないのだ。腹の底からの怒りに裏打ちされた声をあげつづけなくてはならないのだ。
 「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国憲の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を可決する手段としては、永久にこれを放棄する」(憲法第九条第一項)。この国は「正義と秩序を基
調とする国際平和」の実現を、戦争以外の手段で行なうと固く決意し、憲法に定めたのである。石原のような輩の言動を許してはいないのだ。
 ある県の市民グループの会合でお話したときに聞いたことだが、この町でも在日朝鮮人の子どもたちへのこころない迫害が起きている。子どもたちは恐がって、通学の電車ではみんなで乗る車両を決めているという。それを知った市民たちが有志で「あなたたちへの迫害を許しません」という意思を赤と青の布きれで表した小さなリボンを作り、それを付けて通学時に同じ電車に黙って乗っている運動をしている。この話はうれしかった。子どもたちはどんなに励まされただろうかと思った。
 理不尽なものへの怒りを! そして怒りを行動へ! いまそういう時ではないかと思う。ふと石川啄木を思い出した。
 かつて一九一〇年の頃、啄木は論文「時代閉塞の現状」を書いて強権との闘いを主張し、また次のような歌を詠んだことがある。いまから九二年も前のことである。

地図の上朝鮮国にくろぐろと墨をぬりつつ秋風を聴く

                                                      (T)