人民新報 ・ 第1084号<統合177> (2003年1月25日)
  
                                目次

● 世界に届けワールド・ピース・ナウ  東京は七〇〇〇人、全国で一万数千人

● 国会開会日に各界が連携し緊急院内集会  有事法案廃案、イラク戦争反対の決意固める

● 1.18被爆地ヒロシマ発 反戦県民集会  有事法制廃案、イラク攻撃反対

● 国労本部の圧力はねのけ、鉄建公団訴訟の前進を

● 1・18 さっぽろピースアクション  予想を大きく越える参加で大成功

● 労働法制改悪を阻止しよう  改悪案は三月にも国会提出へ

● 資料  首切り自由の解雇ルール法制化を阻止しよう!( 鉄建公団訴訟原告団 国鉄闘争共闘会議 )

● 資料 全日本海員組合中執委がイラク攻撃と有事関連法に反対の声明

● ペンクラブも反戦の声  梅原猛会長、井上ひさし副会長ら熱をこめ

● 小泉靖国参拝に市民団体が抗議  首相官邸前でシュプレヒコール

● 世界各国でイラク反戦の行動展開  ベトナム反戦闘争以来の高揚

● 資料 日弁連会長の在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせ等に関する声明・緊急アピール

● 複眼単眼 / アニメ「アテルイ」を観ながら、戦争のない社会を想う



世界に届けワールド・ピース・ナウ

     
東京は七〇〇〇人、全国で一万数千人

 アメリカのイラク攻撃に対する反対運動が全世界的に広がっている。ブッシュ政権が、アメリカの石油と軍需産業のために、様々な口実をつくりだしてなんとしても開戦しようとするあくどい内実が広範な人びとに知られはじめた。民衆運動の盛り上がりは、それぞれの国家・国際機関を動かし、戦争家ブッシュは孤立しつつある。ブッシュの盟友であり、イラク戦争に積極的だったイギリス・ブレア政権も動揺しはじめた。
 一月一八日には、全世界で、アメリカによるイラク攻撃に全世界で同時に反対の声を突きつける「イラク反戦国際連帯」行動が世界三〇カ国以上でとりくまれ、集会・デモの参加者は近年、最大規模のものとなった。
 日本でも全国の各地で市民団体、宗教者、労働組合などさまざまな人びとが創意工夫を凝らした集会・デモを行った。

 東京での取り組みは、日比谷公園周辺で行われ、約七〇〇〇の人びとが参加して、イラク戦争に反対、平和を願うアピールを行った。
 前日までの天気予報では雪だったが、当日は曇天だが徐々に晴れ間もみえてくる。しかし凄い寒さだ。それをはねとばすように「ワールド・ピース・ナウ」の行動がはじまった。
 パート@は、正午から日比谷野外小音楽堂でのピースコンサート。出演は、かおりん、KP、プー・カングァン、ラナテカ 、五十嵐亜紀、生田卍&soso、「月桃の花」歌舞団、知念良吉、千鶴伽と坂下秀実、パンタとSKI(制服向上委員会)のみなさん。
 つづいて、パートAの野外大音楽堂からのピースパレード。宣伝カーを先頭に、プラカードや旗・横断幕はもちろん、打楽器隊、ええじゃないか隊、沖縄舞踊その他多彩な衣裳扮装などで銀座の繁華街をパレードし、イラク戦争反対、有事法制反対などを訴えた。統一ロゴマークのハート形のプラカードをはじめ英語、朝鮮語、アラビア語などで「平和」を意味する言葉が書かれたプラカードも掲げられるなど、参加者がそれぞれ思い思いの方法で反戦平和を呼びかけた。パレードでは銀座の沿道から飛び入りの参加者や拍手があった。
 銀座パレードを終わって再び日比谷野外大音楽堂へ到着し、パートBのピースラリー・集会が開じまった。
 はじめに、実行委員会を代表して、゙美樹さん(ピースボート)がチマチョゴリを着てあいさつ。
 いま実感として私が最も危機感を感じているのは、一方的に垂れ流されてくる報道に疑問をもたず、鵜呑みにしてしまうことです。フセインの独裁政権は大量の兵器を隠しているから、アメリカにいっぱつおみまいされても仕方ないんじゃないか、そのような考えが無意識に植えつけられています。イラクはひとつの象徴的な例にすぎません。たとえば北朝鮮です。核開発をつづける怖ろしい国だから攻撃されても仕方がない、アフガニスタンはテロを育てる危険な国だから、もしくはパレスチナ、自爆テロを繰り返すから、だから攻撃されても仕方ない、いややられる前にやってしまえ―そんな考えが簡単に戦争肯定につながっていくことが、この社会の実感として本当に怖ろしいのです。今回の1・18ではさまざまな立場の人びとがアメリカによるイラクへの攻撃には徹底的に反対するということで集まり行動しています。戦争は、数百年にわたって取り返しのつかない環境破壊を引き起こします。経済のバランスをぶち壊す戦争、そしてなによりも大きな悲しみと憎しみを生む戦争を止めたいという一心で集まりました。大国の圧力と横暴でいつも殺されるのは市民です。国の暴走を止められるのは市民です。今日、日本中で、世界中で反戦の声が上がっています。今日はひとつの始まりでしかありません。多くの賛同を得て集まった今日の動きは、今後もつながっていきます。ワールド・ピース・ナウでは三月頃に次の行動を起こしたいと考えています。
 大塚照代さん(アジア太平洋平和フォーラム)は、アメリカ・ANSWERのリチャード・ベッカーさんから、国境を越え大陸を越えた声のみがアメリカの戦争を止めることができる、たくさんの人が声をあげることしか戦争を止めるこはできない、というメッセージを紹介し、APA(アジア太平洋平和連合)に属するパキスタンでの米領事館抗議・人間の鎖の取り組み、また韓国での行動を報告した。
 松崎菊也さん(戯作者)は、戦争をやるやつらにたいしては「お前ら、ダメなんじゃないの」といってやることがかなり打撃になると強調し、そして小泉の靖国神社参拝や天皇の手術を題材に支配体制を強烈に皮肉った。
 つづいて岸田正博上人(アジア仏教徒平和会議日本センター)から、活動のためのお布施(資金カンパ)の訴え。
 イラクから帰ったばかりの佐藤真紀さん(日本国際ボランティアセンター)が、「日本はアメリカのような国にならないで」というイラクの子どもたちからのメッセージを紹介した。
 田中優さん(未来バンク事業組合理事長)は、今回のイラク攻撃は石油と金と軍需産業のためのものであり、戦争を行う政権と闘い、隣の人びととともに、金や兵器の不要な社会、エネルギーを石油に頼らない自立エネルギーの生活をめざそうと述べた。
 宇野徹さん(日本聖公会首座主教)は、同じキリスト者としてブッシュが戦争をやろうとしていることを大変悲しく思うと述べ、世界のキリスト教会が戦争に反対していることを報告した。
 朴慶南さん(エッセイスト)は、先制攻撃をやるというアメリカこそ「ならず者国家」であり、一番査察を受けなくてはならないのはアメリカであると述べた。
 集会の最後は、歌手の喜納昌吉さん(すべての武器を楽器に・ピースメーカーズネットワーク)の演奏。多くの参加者も、寒さを吹き飛ばすように壇上に上って踊りの輪を作った。踊りは太鼓の響きに合わせて、会場と一体になって広がり、イラク反戦・有事法制阻止の意気が燃え上がった。
 1・18集会は、平和・環境・人権・国際支援など、日常の活動の分野を大きく超えた様々なNGO、NPOなどの市民団体の共同で実現した。世代を超えた一〇〇人を超えるスタッフが、舞台裏を支えて働いた。その結果、多くの青年層が参加し、各年齢層にわたる広範な戦争反対の運動が創り出され、日本の反戦平和運動が新しい段階に入ったことを実感させるものとなった。


国会開会日に各界が連携し緊急院内集会

         
有事法案廃案、イラク戦争反対の決意固める

 通常国会開催日の一月二〇日、衆議院第二議員会館会議室で、「有事三法案の廃案を求め、イラク戦争に反対する緊急院内集会」が開かれた。緊急集会には、社会民主党土井たか子党首、日本共産党志位和夫委員長をはじめ社民党、共産党、民主党、無所属の四〇名の国会議員と市民団体、労働団体などから約二〇〇名の人びとが参加し、有事法案反対運動をいっそうもりあげ絶対に廃案にしていくための決意を確認しあった。
 緊急院内集会は、平和を実現するキリスト者ネット、平和をつくり出す宗教者ネット、戦争反対・有事法案を廃案へ!市民緊急行動の三団体が呼びかけたもの。
 はじめに司会の高田健さん(戦争反対、有事法案を廃案に!市民緊急行動)が、昨年の通常国会、臨時国会でこの三者の呼びかけで院内集会を開き、今回は三回目となる、与党は今国会で有事法案を通すと言っているし、イラク攻撃が迫っている、今回の集会は非常に重要な意義をもっている、この集会から有事法案を絶対に廃案にしていく運動をつくりだしていこう、と述べた。
 平和をつくりだす宗教者ネットと戦争反対・有事法案を廃案へ!市民緊急行動から主催者あいさつ。
 宗教者ネットの木津博充上人(日本山妙法寺)
 政府はこの国会でなにがんなんでも戦争法を成立させようとしている。それなら私たちはなにがんなんでもこの国会で戦争法を粉砕し廃案にしてしまう。そのためにさらに大きな団結が必要だ。若い人たちが一八日の取り組みに沢山でてきてくれた。こうした力をもっともっと掘り起こしていきましょう。殺すな、殺させるな、殺す法を採用するな、で一貫していきましょう。
 市民緊急行動の富山洋子さん(日本消費者連盟)

 一八日の行動では若い人たちと一緒に行動できたことは、さらなる力をみなぎらせてくれました。戦争こそは最大の暴力です。私たちは、非暴力ということをかかげてこのような力を結集したいと思います。イラクへの戦争準備が進められ、小泉政権はその戦争を支持するという意思表示に他ならないイージス艦派遣を行ってしまいました。この無念さを胸に、この国会で有事法案を廃案にしていく運動のうねりをつくり出していきましょう。
 日本共産党の志位和夫委員長
 いま世界的にアメリカによるイラクへの戦争を許さないという運動が広がっている。多くの国も今度の戦争には反対だという声を上げている。私たちの原点は殺してはならないということだ。イラク問題では話し合いによる平和解決こそが世界の流れであり、戦争の扉を絶対に開けさせるわけにはいかない。そうした中で日本はイージス艦を出した。日本は憲法九条をもつ国の政府として平和解決のための努力こそ積極的にやるべきだ。世界中でもめごとがおこっても武力に訴えないで解決すべきだ。有事法案が通らなかったのは国民の闘いの成果であるとともに、この法案がいかに道理のないものであるかを示している。日本共産党は、他の会派や多くのみなさんとともに有事法案を廃案に追い込むために全力でたたかいぬく。
 社会民主党の土井たか子党首
 有事立法には廃案しかないという気持ちで頑張りたい。戦争によい戦争はない。平和に悪い平和はない。戦争の準備をすると必ず戦争になる。日本には戦争をしないということをはっきり決めている憲法がある。アメリカのイラク戦争を支持しているのは東の小泉、西のブレアと言われていますが、戦争反対の声は世界に広がっていて、ブレアさんも窮地に立っている。いま、日本が世界からどう見られているのか。日本はアメリカの従属変数でしかないのではないかと見られているんです。日本でも有事法制反対の声が高まってきている。そしてこの国会を有事法案を廃案に追い込む国会にして、それを全世界に示そう。そういう気持ちで国会に臨んでいきたい。
 民主党の岡崎トミ子参議院議員
アメリカのイラク戦争予算は膨大なものだが、戦後復興などの名目で日本などの同盟国に負担がかぶせられる。この財政危機の時に小泉さんはどう考えているのか。ビタ一文も出してはならない。戦争の道を許さない、そういう気持ちで私も頑張っていきたい。
 つづいて、一月十八日に行われた「ワールド・ピース・ナウ1・18」の実行委員である゙美樹さん(ピースボート)と内山隆さん(チャンス)が発言した。
 主催者から有事法制に反対する署名が、社民、共産、民主の三党に渡された。
 次は、参加国会議員の『一分発言』。集会に参加した国会議員は、社会民主党から、今川正美、大島令子、金子哲夫、菅野哲夫、北川れん子、重野安正、東門美津子、中川ともこ、保坂展人、山内惠子、山口わか子(以上衆議院)、日本共産党から、赤嶺政賢、大幡基夫、大森猛、木島日出夫、穀田恵二、児玉健次、春名直章、松本善明(衆議院)、井上哲士、井上美代、岩佐恵美、大沢たつみ、緒方靖夫、紙智子、小泉親司、西山登紀子、畑野君枝、八田ひろ子、林紀子、宮本たけし、吉岡吉典、吉川春子(参議院)、民主党から、生方幸夫(衆議院)、江田五月、谷博之(参議院)そして無所属の川田悦子(衆議院)のみなさん。
 青年、女性、市民運動、労働団体からの発言は、日本青年団協議会、フォーラム平和・人権・環境、全日本海員組合、全労協、ふぇみん婦人民主クラブ、航空安全会議、在日韓国民主統一連合、YWCA、平和を実現するキリスト者ネット。また日本婦人有権者同盟からのメッセージも紹介された。


1.18被爆地ヒロシマ発 反戦県民集会  有事法制廃案、イラク攻撃反対

 一月十八日、広島市中区の城北公園で、有事関連法案と米国のイラク攻撃に反対する「広島県民大集会」がひらかれた。
 県内各地の市民団体などから約千五百人が、思い思いのプラカードや横断幕などを持って集まり、戦争反対を訴えた。
実行委共同代表の岡本三夫広島修道大教授が「ヒロシマの市民運動を世界が注視している。対イラク戦争を全力で阻止し、これに加担することを目論む小泉政権の有事法案を廃案に追い込もう」とあいさつした。
つづいて集会のきっかけとなる「声明」を出した学者や宗教者、医師たちが次々と発言した。
 児童文学者の三浦精子氏は「有事法制が成立すれば、国際平和協力といった名のもとに戦争に向かわせる新たな『平和教育』が生れてしまうのではないか」と指摘した。
 労働者部隊を代表し全港湾関西・中国支部委員長川田氏が「イラク攻撃、有事法制反対」を強く訴えた。
 最後に、イラク攻撃や朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核開発などに反対するアピールを採択した。 集会終了後は、市中心部を約二・五キロをデモ行進した。
 厳しい冬の合間の、デモ日和であり気持ちの良い締めくくりであった。
 何としても、有事法制粉砕の闘いも、「今日の天気」のように行きたい。
 頑張ろう! (広島通信員) 


国労本部の圧力はねのけ、鉄建公団訴訟の前進を

 一月一七日、鉄建公団訴訟原告団は、「新たな局面で鉄建公団訴訟を軸に勝利解決をめざす決意」を発表した。四党合意が完全破綻したにもかかわらず、国労本部は、鉄建公団訴訟裁判の取り下げの圧力をかけてきている。原告団は、鉄建公団訴訟こそが問題の解決の道を開くものであることを明確にした。

新たな局面で鉄建公団訴訟を軸に勝利解決をめざす決意(要旨)

 二〇〇三年の新春を迎え、鉄建公団訴訟原告団を代表してこれまでのご支援への感謝と闘う決意を申し上げます。
 私たちは四党合意が消滅した今こそ国労本部は、この間の運動の総括と反省の上に立って、改めて闘う方針を示さなければならないと考えます。
 しかし、残念ながら本部は一部闘争団に責任を転嫁し、最高裁の闘いも、鉄建公団訴訟も、新たな方針も一切考えていない現状にあります。こうした無責任、無方針の姿勢は厳しく問われなければなりません。 
 私たち鉄建公団訴訟原告団は、昨年支援の皆さんと共に築いた土台の上に、鉄建公団訴訟を軸として、最高裁に対する弁論の開始と公正な判断を求める闘いや、ILO闘争での国際世論の喚起など大衆運動を具体的に取り組み、勝利解決への道筋をつける年にして行くことを決意しています。 
 全国でご支援いただいている多くの皆さんと共に、一人ひとりの力を寄せあい、粘り強く、勝利するまで闘い抜く決意を内外に明らかにするものです。

 二〇〇三年一月一七日

 鉄建公団訴訟原告団  団長 酒 井 直 昭


1・18 さっぽろピースアクション   予想を大きく越える参加で大成功 

 米帝のイラク攻撃反対!世界一斉行動で、北海道では札幌・函館・小樽が市民集会を行った。
 「雪祭り」の準備が始まった札幌では、四〇〇名もの老若男女三〇人余りの団体が結集して、ピースアクションを盛り上げた(主催者は一〇〇人程度の集会と予想ー嬉しい誤算となった)。
 まず午後一時から、大通り公園周辺を創意工夫したプラカード・ゼッケン・お面・垂れ幕・チラシなどを持ち寄り、ピースウオークをしながら札幌市民にアピールを行った。
 終了後、自治労会館で「イラク市民訪問調査団」からの現地報告を受け、その後ミニコンサート・フロアー交流・リレートークを行い、米帝のイラク攻撃反対の行動をこれからも継続していくことを確認して集会を終えた。
 全国的な反戦闘争の高揚にむけ、連帯してがんばろう!(北海道通信員)


労働法制改悪を阻止しよう  改悪案は三月にも国会提出へ

解雇自由の解雇ルール

 昨年の十二月二十六日、厚生労働省内の労働政策審議会は、解雇ルールの法制化や有期雇用契約の緩和などが含まれる「今後の労働条件に係る制度の在り方について」を坂口力大臣に提出した。
 厚労省は、労働基準法「改正」についての法案要綱審議を一月末からはじめて三月には国会に提出するとしている。
 今回の見直しは、小泉構造改革攻撃の柱として、総合規制改革会議の報告・答申や政府の規制改革推進計画などを受けて、労基法の労働者保護規制を一層緩める方向で検討を行ってきた。
 建議には解雇ルールをはじめ、企画業務型裁量労働制の緩和、有期雇用契約の上限期間延長(一年から三年に)などが盛り込まれている。
 とくに解雇については原則自由・例外規制として、解雇ルールでは、一カ月前の予告や労災補償期間の解雇禁止など既に労基法で規制されている場合を除いて、使用者は「労働者を解雇できる」。しかし、正当な理由のない解雇は権利の濫用として無効とする、と規定するとされている。解雇を濫用してはならないという法理は当然にも明記されるが、実際に解雇を制限する「整理解雇の四要件」は無視されたままだ。
 また、解雇が無効な場合にも、労「使」双方が裁判所に対して金銭解決を申し立てられる制度の創設を規定するとしているが、使用者からも申し立てができるということは、正当な理由のない解雇と認められても、金さえ払えば当該労働者を職場から追放してもよいということだ(なお、金銭の額については勤続年数などを考慮したうえで厚生労働大臣が定めるとしている)。
 こうした解雇ルールの導入は、不当な解雇を制限できるなどといえるものではなく、法文を悪用して、使用者の安易な解雇の横行や使用者に無制限な金銭解決の道を開くことであり、不法な解雇を金で合法化するやり方である。
 すべての労働者・労働組合の力を結集して、労働法制改悪阻止の大きな運動を巻き起こそう。

厚生労働省などへ抗議

 一月一六日、争議団で構成する「首切り自由を許さない!実行委員会」、鉄建公団訴訟原告団、一〇四七名の不当解雇撤回・国鉄闘争に勝利する共闘会議は、東京高裁と厚生労働省に抗議行動を展開した。
 昨年一〇月二四日、東京高裁第八民事部(村上敬一裁判長)は全動労組合員に対するJR採用差別事件で、差別しても不当労働行為に当たらないとするとんでもない不当判決を出した。また、東京高裁は国労組合員に対するJR採用差別事件でも、不当労働行為があったとしても、JRは責任を負わないとする不当判決(二〇〇〇年一一月八日と一二月一四日)を出している。これらは、首切り自由とする小泉構造改革攻撃の流れに対応する裁判所の反動化の明白なあらわれである。
 厚生労働省にたいしては、労働法制改悪を撤回するよう抗議を行った。

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資料

  首切り自由の解雇ルール法制化を阻止しよう!

解雇の自由を原則化しようとする厚労省

 政府は不当にも、首切り自由の解雇ルールを通常国会で法制化しようと動いています。
 厚生労働省は昨年一二月三日、労働政策審議会労働条件分科会に対し「今後の労働条件に係る制度の在り方について(報告)(案)」を示しました。これを受け入れる形で、労働政策審議会は一二月二六日、坂口厚生労働大臣に建議を行いました。
 解雇ルールに関するその中身は、「使用者は、労働基準法等の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇できるが、使用者が正当な理由がなく行った解雇は、その権利の濫用として、無効とすること」を労基法に規定することが必要であるとしています。
 これは、解雇の自由を原則として打ち出すものであり、判例法理として確立している正当事由を欠く解雇は無効という原則を覆す極めて不当なものです。禁止事項を規定している労基法に、使用者には解雇する権利が原則としてあるということを盛り込もうというのです。
 本来真っ先に立法化すべき整理解雇四要件はないがしろにされています。

金銭解決制度の導入をねらう厚労省

 厚労省はまた、不当解雇の解決方法として、一定額(労働者の勤続年数その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める額)の金銭の支払いを命ずる判決を求める権利を使用者側に与えようとしています。
 これでは、『金さえ出せば解雇は自由』というとんでもないことになってしまいます。
 解雇を自由化してリストラを促進しようとする政府に抗議し、解雇ルールの法制化を阻止するために、一緒に怒りの行動を起こしましょう!

      鉄建公団訴訟原告団

      一〇四七名の不当解雇撤回、国鉄闘争に勝利する共闘会議


資料

全日本海員組合中執委がイラク攻撃と有事関連法に反対の声明

 イラク情勢と海員組合の対応について

 昨年来の陸海空港湾労組二〇団体による「STOP!有事法制」の闘いの一角を担ってきた海員組合のこの声明は、
連合をはじめ労働運動に重要な影響を与えるに違いない。(編集部)


 イラクに対するアメリカの全面的な武力攻撃の準備が進むにつれ、あくまで平和的な手段による解決を望む国内・国際世論は日増しに大きくなっている。われわれ海を職場とする者にとって、「平和な海」は安全に安心して働くための絶対的条件であって、再びペルシャ湾・中東周辺海域を「戦場の海」に変えるイラク攻撃に強く反対する。
 ペルシャ湾・中東周辺海域は、大型の原油タンカーや液化天然ガス運搬船(LNG船)など、日本の経済・国民の暮らしを支える多数の民間船舶が行き交う重要な海上交通路となっており、多くの日本人船員と、共に働く外国人船員が就労している。アメリカのイラク攻撃が始まれば、安全航海の重大な阻害要因となることは明白であり、乗組員とその家族の心労は想像に難くない。しかも報道では、日本は「米英に次ぐ三番目の敵対国」に位置付けられているという。一旦戦端が開かれれば、中東周辺に限らずマラッカ海峡など東南アジア海域はじめあらゆる海域で、わが国関係船舶が長期にわたってゲリラ的な攻撃対象とされる恐れも極めて大きい。政府は、船主の要請や国民の理解があればペルシャ湾内の日本タンカーを護衛するために、海上警備行動の名目で自衛艦の派遣も視野に入れた検討を進めているという。現行憲法上の疑念は当然として、今日、運航コスト切り下げを目的に日本法人所有の外航タンカーの大部分がパナマやリベリア籍へ便宜置籍化され、日本国籍を有するタンカーはLNG船などの一部に限定される外航海運の現状にあって、一体「日本タンカー」とは何を指すのか、甚だ疑問の残るところである。いずれにしろ、海上における戦争のルールを規定している慣習国際法では「敵国軍艦、軍用機の護衛の下で航行する民間船舶は軍事目標とする」ことが明確にされている。われわれは、民間船舶が「軍事目標」とされる一切の行為に反対する。
 イラン・イラク戦争では、日本人船員の乗り組む四〇七隻の民間船舶が被弾し、六五〇人の船員が死傷した。その後の湾岸戦争の際も、乗組員の安全確保を最優先に、懸命にエネルギーロードを維持し職責を果たしてきた。万が一のことがあれば、こうした過去の経験を踏まえ、労使緊密に連携し可能な限りの安全対策を講じ万全を期す。とりわけ、外航組合員の乗る船舶の殆どが外国人船員(非居住特別組合員として登録)との混乗船となっている現状を重視し、船内のチームワークと士気の確保のために労働組合としての責任を果たす。
 なお、アメリカの始める戦争に日本が積極的に加担し、民間船舶と船員の戦時強制動員に道をひらく「有事法制」の制定に引き続き反対し廃案を目指す。

二〇〇三年一月八日

全日本海員組合中央執行委員会


ペンクラブも反戦の声

     梅原猛会長、井上ひさし副会長ら熱をこめ

 日本を代表する作家・文筆家の文化団体である「日本ペンクラブ」が、新年の一月十一日に「いま『戦争と平和』を考える」をテーマにして講演会を開催した。
 会場は東京・内幸町の日本プレスセンター内のホールで三〇〇名の聴衆がつめかけた。
 総合司会の高橋千歛破さん(同クラブ理事)は、「九・一一テロからアフガン空爆の二〇〇一年に緊急の講演会を催し、いかなる戦争にも反対することを訴えた。それから一年、相変わらずテロは頻発し、イラク空爆の危機は続き、パレスチナ、チェチェン問題も泥沼化している。そこで再び平和を訴える」と会の趣旨を語り、当日の参加申込が定員の二倍以上あったことも報告した。
 第一部はペンクラブの会長、副会長が「戦争と平和」への思いを語った。
井上ひさしさん(副会長)は、「ブッシュ政権とはなにか」という題で、ブッシュ米大統領の言動をたどることで、その好戦性を浮き彫りにした。
三好徹さん(副会長)は、「戦争とマスコミ」と題して、戦争中の日本マスコミの閉塞状況を体験的に報告した。
梅原猛さん(会長)は、「いま平和を守ることの意味」と題して、自らの徴兵や徴用の体験を語り平和の大切さを語った。また平安時代や江戸時代など日本の伝統は平和国家であること、教育基本法や憲法をかえることには反対であることにもふれた。
 第二部のパネルディスカッションでは四人の理事が「私たちは何をすべきか」をテーマに語り合った。
 新井満さんは、長野オリッピックの閉会式に平和・環境・共生をイメージしてプロデュースした映像や経験を話した。
松本侑子さんは、「世界でも普通でない良い憲法をもっている私たちは有事法制を成立させず、外国人を一人も殺さないために何でもやろう」と語った。
米原万里さんは、「ベトナム戦争の頃はベトナム民衆の側に日本人の想像力があった。直接に被害がない今は当時とちがう。反戦運動もイメージを働かせなければうまくいかない。二一世紀の戦争の恐ろしいところは戦争ではなく単なる鎮圧となっていることだ」と戦争の性格を指摘した。
阿刀田高さんは、「自分のようにラグビーに夢中の人も関心を寄せるような平和の訴え」の必要性を述べた。
 最後に加賀乙彦さん(副会長)が、「例えばイラクのような独裁体制下の市民には体制への責任はないが、民主主義体制の下の市民には政府の行動に責任がある」とのべ平和への行動を訴えた。
 日本ペンクラブは昨年も平和を求める声明を多く出している。
 感覚の鋭敏な作家の集まりである同クラブは、現在の国際情勢に強い危機感をもち、平和を求めて行動し、連帯しようとしている。
 その切迫感がひしひしと伝わる講演会だった。 (首都圏通信員)


  小泉靖国参拝に市民団体が抗議  首相官邸前でシュプレヒコール

 またも国内外の批判を押し切って、一月十四日、小泉首相は靖国神社への参拝を強行した。それもどさくさにまぎれ、抜き打ちで行うことで批判をかわそうとするかのような姑息なやり方であった。
 平和遺族会をはじめ、都内の宗教団体や、許すな!憲法改悪・市民連絡会などの市民団体の三〇名ほどの人々は、一五日正午から、永田町の首相官邸前で抗議行動を展開した。


世界各国でイラク反戦の行動展開  ベトナム反戦闘争以来の高揚

 イラク攻撃をやめろの声が全世界で渦巻いた。
 アメリカの反戦市民団体「インターナショナルANSWER(Act Now to Stop War & End Racism いまこそ戦争を止め、人種差別をなくすために行動を)」が呼びかけた一・一八反戦行動は、米国の首都ワシントンDCに五〇万人、サンフランシスコに二〇万人が結集したのをはじめ、日本の日比谷公園の七千人をはじめとする全国二十箇所近くの都市での一万数千人、韓国、香港、パキスタン、シリア、トルコ、エジプト、アイルランド、英国の各都市で一万人、フランスのパリなど各都市で二〇万人、スペイン、イタリア、ベルギー、ドイツ、ロシア、カナダ、アルゼンチンなど中南米各国、南アフリカなど全世界で、少なくとも三〇ヵ国を超える国々で行動が取り組まれた。参加者はのべ百万人を超えた。
 このような世界規模での反戦運動の高揚は一九六〇年代後半からのベトナム反戦運動以来ということができる。これは米国のブッシュ大統領の危険な帝国主義的戦争策動に全世界の多くの人々が危機感と怒りを抱いていることの証左だ。
 アメリカの集会では「今日のデモは戦争支持という神話をうち砕いた。今日、全世界でイラク戦争即時阻止の民衆パワーが発揮された」と宣言された。ワシントンDCでの集会では、ラムゼー・クラーク元米国司法長官、俳優のジェシカ・ランゲ、タイン・ディリー、下院議員のジョン・コニャーズなどが発言した。


資料

日弁連会長声明・緊急アピール
 
 在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせ等に関する会長声明

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 朝鮮民主主義人民共和国(以下「北朝鮮」という)は、二〇〇二年九月一七日の日朝首脳会談で日本人拉致事件を公式に認めるに至ったが、同日以降日本各地で、朝鮮学校に通う子どもたち多数と朝鮮学校が心ない人たちによる嫌がらせや脅迫的言動に遭っている。
 例えば、朝鮮学校に通う子どもが、登下校中、駅のホームや電車の中で腕を捕まれる、民族衣装のチョゴリを引っ張られる、「植民地時代に朝鮮人を全員殺しておけばこんなことにはならなかった」「朝鮮に帰れ」などと言われる、すれ違いざまに「拉致」と言われるなどの被害を受けている。
 朝鮮学校は、学校のホームページの掲示板への書き込み・手紙・電話などにより、朝鮮学校の子どもに対する危害の予告が行われ、そのために一時的に休校せざるを得なかった例もある。
 これらの嫌がらせや脅迫的言動は,在日コリアン(在日韓国人・朝鮮人)の子どもたちの生命・身体の安全と自由を脅かし、教育を受ける権利を侵害している。
 同時にこれらの行為は、憲法第十三条及び世界人権宣言第一条・第二条・第三条をはじめ、国際人権規約、人種差別撤廃条約、子ども権利条約などにおける人の尊厳の保障及び人種差別禁止の理念及び規定に反する。

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 北朝鮮による拉致行為は、拉致被害者に対する重大な人権侵害行為であると同時に、逮捕・監禁罪及び国外移送目的略取罪に該当する刑法上の犯罪行為であって、許されるものではない。当連合会は二〇〇二年九月一九日、日本政府に対し、刑法上の犯罪として徹底的に捜査し、北朝鮮による拉致行為及び被害実態の真相の究明、生存者の家族との面会等の実現,被害に対する補償の実現を強く要請した(同日付会長声明)。
 しかし、在日コリアンの子どもたちは、北朝鮮による拉致行為に対して何らの責任がないことは明らかである。現在行われている嫌がらせや脅迫的言動はいかなる理由であっても決して許されない。

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 これらの嫌がらせや脅迫的言動は、朝鮮学校に通う子どもを含む在日コリアンに不安と恐怖を生み出しており、早急な対策を講じることが必要である。
 当連合会は、前記憲法及び国際人権法に基づく政府の責務として、日本政府に対して、在日コリアンの子どもたちへの嫌がらせや脅迫的言動を防止するための対策を直ちに講じるとともに、国籍や民族が異なっても、何人も安全・平穏に生きる権利を保障し、そのための方策を講じ、実現することを要請する。
 当連合会は、今後、国籍や民族の異なる人々が共生する社会の実現に向けて、いっそう積極的に取り組む決意である。

  二〇〇二年十二月十九日

  日本弁護士連合会  会 長 本林 徹

  緊急アピール
 
 北朝鮮が日本人拉致を認めて以来、朝鮮学校に通う子ども達に対する嫌がらせが続発しています。
 しかし、在日コリアンの子ども達には、拉致について何の責任もないことは明らかです。
 憲法と国際人権法は、人間の尊厳を保障し、人種差別を禁止しています。
 在日コリアンの子ども達には、差別を受けることなく安心して生活し通学して勉強する権利があります。嫌がらせはそうした権利を侵害するものであり、決して許されません。
 日本弁護士連合会は、人権の擁護を使命とする法律家の団体として、わが国の全ての人々に対し、
 
 @ 在日コリアンの子ども達に対する嫌がらせや脅迫的言動を決して行わないよう、

 A 国籍や民族が異なっても、一人ひとりがお互いの人権を尊重し共生できる社会をつくるよう、強く訴えます。

二〇〇二年十二月十九日

日本弁護士連合会  会 長 本林 徹


複眼単眼

   
アニメ「アテルイ」を観ながら、戦争のない社会を想う

 以前、本欄で阿弖流為(アテルイ)について書いたことがあるが、ご記憶の方もおられると思う。アテルイはいまから一二〇〇年前の奥州に実在した人物で、大和(ヤマト)側からは蝦夷(えみし)と呼ばれた人びとの若きリーダーの名だ。
 このほどアテルイ没後一二〇〇年を記念して、長編アニメーション「アテル
イ」が製作され、上映会が開かれた。『一・一八ワールド・ピースナウ』の成功の翌日、心地よい疲れを感じながらも、有楽町の読売ホールにでかけた。
 この日は監督の出崎哲さんの上演挨拶があった。出崎さんは、この戦いは大和の職業軍人の軍隊の侵略に対して、アテルイに率いられた素人の民衆が抵抗した歴史であり、余剰農産物の普及と富の蓄積を狙う大和と、自然の中に生きる縄文の人びとにも通じるアテルイたちの集落の違いなども見てほしい。何よりも「蝦夷が京都に攻め上ろうとしたのを坂上田村麿が征伐した」などと説明する誤った歴史観を覆したいというようなことを述べた。同感であった。大和側とは反対に、アテルイたちが領土の拡大を必要としない生産様式の中に生きていたことは明らかだ。
 青森県の三内丸山遺蹟の発掘でも証明されたのだが、古代の東北地方は豊穣な大地だった。森があり、野原があり、川があり、
海がある。木の実や果物が採れ、獣たちがいる。アテルイの時代には馬など最小限の牧畜や栽培も行なわれ、産出する金や鉄の生産を通じて、大陸との通商さえも行なわれていた。
 大和はこの広大な地域を手に入れようと、再三にわたって侵略軍を送り、出城を築いては支配地を拡大した。中でも知られているのは「征夷大将軍・坂上田村麿」だ。降伏した部族は「俘囚(ふしゅう)」と呼ばれ、農奴化された。
 七八九年、ついに大和は五万の大軍を投入してきた。アテルイたちはゲリラ戦を展開して、故郷を守る。大和の軍には殺人マシーンと化した将軍らがいる。アテルイは敢然と反撃しつつも、こうした戦争のない時代の到来を望み、その道を模索する。機会があったらぜひ見てもらいたい作品だ。
 筆者は、つねづね従来の大和中心史観に抗して、縄文文化や古代東北人の「豊かさ」を見いだそうとする人びとの努力に敬意を表している。
 しかし、このアニメがそうだというのではないが、ことさらに縄文の豊かさを強調するのは誤りだと思っている。やはりかの時代は生きていくのには厳しい時代だったのだ。人びとは毎日、毎日、食糧と住まいや着物の確保に追われつづけたにちがいない。飢えと病に倒れた人も多かったに違いない。これはあまり理想郷化して考えてはならなことだ。ただし、これらの人びとはできるだけ戦争を回避した、戦争を必要としなかった人びとだ。
 映画を見終えて、いつの日かくるであろう人類社会が、つつましく豊かに、戦争のない社会であることを想った。(T)