人民新報 ・ 第1085号<統合178> (2003年2月5日)
  
                                目次

● ブッシュ米大統領の一般教書演説は戦争宣言だ いまこそ声を  イラク反戦 WORLD PEACE NOW!

● 世界の人々とともに 2・15 ピースアクション 東京

● 地方自治体で続々イラク反戦決議

● 「もんじゅ」・核燃料サイクルは危険 名古屋高裁金沢支部が画期的な判決

● すべての反石原勢力の共同を、石原都政にNO!  東京都知事選挙が近づく中、市民が集会を開催

● 今年も「五・三憲法集会」実行委員会が始動

● NLPの広島・大黒神島への移転に地元から抗議の声

● 解雇緩和法案を阻止しよう 日本労働弁護団主催の反対集会

● 四党合意破綻後の国鉄闘争  鉄建公団訴訟と最高裁にむけた署名を両輪に

● 憲法調査会で改憲派が積極攻勢  結論を急ぎはじめた改憲派、運営の大幅手直し強行

● 反ナチスのプロレタリア版画家ケーテ・コルヴィッツ

● 複眼単眼  / 作家・辺見庸氏の挑発的言論と犬の糞を踏んだ人



ブッシュ米大統領の一般教書演説は戦争宣言だ いまこそ声を

    
  イラク反戦 WORLD PEACE NOW!

 米国のブッシュ大統領は一月二八日夜(日本時間二九日午前)、連邦議会で恒
例の一般教書演説をした。
 これは異様な戦争宣言演説であり、全世界の多くの人びとの反戦運動の高揚をはじめ国際世論への傲慢な挑戦だった。
 昨年の一般教書演説では北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)、イラク、イラン
を「悪の枢軸」などと規定したブッシュは、今年は「米国と世界のもっとも重大な危険は、大量破壊兵器の入手をたくらむ無法者政権である」として、イラクや北朝鮮、イランを非難し、とりわけイラクにたいしては「有志の連合を率いての先制攻撃も辞さず」との宣言を行なった。
 ブッシュは二月五日の国連安保理でパウエル国務長官がイラクの大量破壊兵器保持の証拠を提示すると述べて、事実上、何も証拠を示さないままにきわめて乱暴に戦争を宣言した。
 「大量破壊兵器を手にしたサダム・フセインは中東制服の野望を復活させ、中東に致命的な大損害を与える恐れがある」「残虐な独裁者が死活的に重要なこの地域を支配することを許してはならない」と述べて、「この国の針路を他国の決定にゆだねることはしない。どのような行動であれ、行動が必要な時、私は米国民の自由と安全を守るだろう」と断言した。
 世界の多くの人びとと多くの国々が米国のイラク攻撃を批判し、戦争の回避を要求している中で行なわれたブッシュのこの演説は、神がかりのユニラテラリズム(単独行動主義)そのものであり、きわめて危険なものだ。いまやブッシュは国際世論の中で孤立しつつあり、足元の米国市民の運動の高揚だけでなく、議会でも民主党議員などの中に戦争反対の声が強まっている。ブッシュの戦争政策を支持するのはイギリスやスペイン、オーストラリアなどと日本の小泉政権だけだ。
 小泉政権と自民党などはこの米国の戦争に対して、イージス艦をアラビア湾に派遣するなど、兵站活動を強化する一方で、イラクの「戦後復興支援策」を検討するなど、驚くべき対応をしている。最近、イージス艦の修理などで民間労働者がまた戦場に派遣されたことも暴露された。まさに有事法制の先取りだ。
 小泉内閣はいま始まった国会では今度こそは有事三法案を採択するとして、「与党単独採択も辞さず」(自民党山崎幹事長)などと発言している。与党は有事法制の審議は予算案が通れば、統一自治体選挙を待たずに開始する方向で準備を進めている。そして五月の連休明けからは衆議院・参議院での強行採決の危険が大きくなる。与党は会期を大幅に延長してでも通す構えでいる。憲法調査会の改憲への動きも早まっている。
 いまやこの国の針路を左右する重大な岐路にさしかかった。反戦の国際的連帯を強め、全国各地でイラク戦争阻止、朝鮮問題の平和的解決、有事法制廃案の闘いをすすめなくてはならない。そのための広範な共同闘争が求められている。世論の大多数はイラク戦争反対だ。いまこそ共同闘争の提唱者、組織者、推進者となって、ブッシュと小泉の戦争政策を阻止する時だ。
 国際的なイラク反戦 WORLD PEACE NOWの声をいまこそ!
 有事法案廃案、憲法改悪阻止の声をいまこそ!
 戦争を止めろ!


世界の人々とともに 2・15 ピースアクション 東京

 ヨーロッパの市民団体が呼びかけた2・15国際共同行動に呼応して、東京でも市民団体が共同して、要旨、以下の呼びかけを発した。これらの市民団体は先の「WORLD PEACE NOW1・18私たちはイラク攻撃に反対します」を成功させた市民団体の有志であり、1・118実行委員会は次に予定されている3・8国際共同行動に継承されることとなっている。

 ブッシュ米大統領は一月二八日の一般教書演説で、「イラク武装解除」のための武力攻撃を強く主張しました。しかし、フランス、ロシア、中国といった国連安保理常任理事国やドイツ、中東諸国など、世界の多くの国々は、これに対して批判を強め、同調するのはイギリスや日本を含めてわずかにすぎません。
 いま、アメリカの横暴に反対する市民は全世界で行動を起こし、一月一八日には三二ヵ国以上で一〇〇万人以上の人々が「イラク攻撃反対」の声をあげました。日本においても日比谷公園で開催された「WORLD PEACE NOW 1.18」には、約七〇〇〇名の分野や世代を超えた市民が参加し、全国でも約三〇都市でこの統一行動に参加するアクションが繰り広げられました。この動きは同日のTVや翌日の国内各紙のみならず、全世界で報道されました。
 こうした声が全世界に広がりつつあるにもかかわらず、アメリカのイラク攻撃の危険性は日を追って現実のものとなろうとしています。こうした状況をなんとかくい止めようと、ロンドンの「STOP戦争連合」が2.15国際共同行動を呼びかけました。
私たちはこの呼びかけに応え、アメリカの戦争政策と、それを支持する小泉内閣に抗議し、二月一五日、平和のための行動を起こします。
 なお、この日の行動は二月一五日にイラクで行われる「戦争よりも祭りを!イラク訪問団 喜納昌吉&チャンプルーズ ピースコンサート in イラク」に連携して行われる意味ももっています。

■日時:二〇〇三年二月一五日(土)6時30分〜
■場所:渋谷・宮下公園 ■7時15分〜渋谷一周ピースパレード+パフォーマンス
●呼びかけ団体 
戦争反対、有事法案を廃案に! 市民緊急行動/アジアン・スパーク/許すな!憲法改悪・市民連絡会/平和をつくり出す宗教者ネット/憲法を生かす会/アジア太平洋平和フォーラム(APPF)/ピースボート/日本消費者連盟/グローバルピースキャンペーン/グリーンピース・ジャパン/フォーラム平和・人権・環境(1月31日現在)
●協力 WORLD PEACE NOW実行委員会
●問い合わせ先(仮)
許すな!憲法改悪・市民連絡会
TEL 03(3221)4668 
FAX03(3221)2558


地方自治体で続々イラク反戦決議

 小泉内閣や自民党の対米追従の姿勢に抗して、米軍のイラク攻撃に反対する地方自治体の決議が相次いでいる。
 すでに昨年末までに十八都道府県の六十を超える自治体がイラク反戦の決議をした。この流れは現在開催されている各自治体の議会でさらに加速されようとしている。
 それらの多くは「国連憲章が武力行使を定めているのは、武力攻撃が発生した場合のみである」「国においては国連憲章にそった平和秩序を確立する努力を尽くすことをつよく要望する」などとして、米国の先制攻撃宣言を厳しく批判し、日本政府の容認・加担の動きに抗議をしている。
 東京の国分寺市議会は「イラクへの戦争は許さないという一点で、世界が団結すべきである」としているし、小金井市議会は「日本政府は憲法の平和的条項を生かして、平和的解決の国際世論を広げることに全力を尽くすべきである」と述べている。
 京都の京田辺市議会決議は「米国に対し、一方的軍事攻撃の計画を放棄することを要請されること」を日本政府に要求し、「いかなる形であれ戦争に加担することを 拒否すること」「インド洋へ派遣されているイージス艦を撤退させること」などを要求している。
報道によれば、すでにイラク反戦の意見書や決議を採択した地方議会は以下のとおり。

北海道 北海道、函館市、旭川市、恵庭市、名寄市、余市町。
福島 福島県。
千葉 船橋市。
東京 立川市、八王子市、調布市、狛江市、稲城市、東久留米市、西東京市、小金井市、国分寺市、清瀬市、町田市。
神奈川 大和市、厚木市、座間市、逗子市、茅ケ崎市、葉山町、城山町。
長野 松本市。
静岡 掛川市。
新潟 六日町。
滋賀 草津市、甲西町、信楽町、土山町、日野町、能登川町、甲良町、水口町、高月町。
京都 京都府、向日市、城陽市、京田辺市、綾部市。
大阪 枚方市、吹田市、高槻市、島本町。
広島 廿日市市、因島市。
香川 香川県。
徳島 小松島市、川島町、牟岐町。
高知 高知市、野市町。
福岡 宗像市、山田市、行橋市。
佐賀 浜玉町。
大分 大分県、別府市。


「もんじゅ」・核燃料サイクルは危険 名古屋高裁金沢支部が画期的な判決

 「国の安全審査の瑕疵(かし)により、炉心崩壊などの事故が起き放射性物質が環境へ放出される具体的危険性を否定できない」。名古屋高裁金沢支部(川崎和夫裁判長)は、高速増殖炉「もんじゅ」訴訟で画期的な判決を出した。原発訴訟での勝利を追い風に、反原発運動の前進をかち取ろう。

 一月二七日、名古屋高裁金沢支部は核燃料サイクル開発機構(核燃機構、旧動燃)の高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(出力二八万キロワット)<福井県敦賀市>に対して周辺住民が国を相手取り原子炉設置許可処分の無効確認を求めた行政訴訟の控訴審の判決を出した。
 「もんじゅ」は、九五年にナトリウム漏れ火災事故を起こし運転を停止している。
 住民側は、八五年、旧動燃に建設・運転停止を求めた民事訴訟とともに行政訴訟を福井地裁に提訴していた。行政訴訟では、原告に訴えを起こす資格があるかが最高裁まで争われ、全員が認められて、同地裁に差し戻されたという経緯がある。しかし、二〇〇〇年三月、両訴訟とも住民側が敗訴し、控訴していたものである。一審の福井地裁の判決では、安全審査について、審査基準や判断に誤りはなく、事故も審査の合理性を左右するものではないと国側の主張をほぼ全面的に認め、住民側の請求を退けていた。
 名古屋高裁金沢支部では、福井地裁と同様に、設置許可処分の前提となる国の安全審査の妥当性に関し、@ナトリウム漏れ対策、A蒸気発生器の伝熱管が連鎖破損を起こす可能性、B耐震対策、C炉心崩壊事故などが争点となった。
 しかし、名古屋高裁金沢支部の判決は、一審・福井地裁判決を認めず、安全審査は誤ったものであり炉心崩壊事故にもつながるものだと指摘し、全面的なやり直しを求めて、設置許可(八三年五月)を無効としたのである。これは、高速増殖炉をかなめとする「核燃料サイクル」を中心にした日本の原子力政策に見直しを迫るものである。画期的な国側の敗訴・住民側勝訴である。原発訴訟で、住民側が勝訴したのは初めてだ。
 国側は、水と接触すると爆発する恐れのあるナトリウムが建物のコンクリートと触れるのを防ぐために床に敷かれた鉄板(床ライナ)の効果について「実験結果を考慮しても接触防止が可能で、基本設計の妥当性は失われていない」と主張して、事故の再発はないとしてきた。
 しかし事故の再現実験などの結果、裁判所はナトリウム漏れと爆発事故の危険性を指摘した。また、ナトリウム反応熱で連続して細管が破断する事故についても「可能性は排除できない」と判断している。その上、事故による炉心崩壊の危険性までも指摘した。
 こうして、国の安全審査には「看過できない過誤、欠落」があったとし、炉心崩壊に関する審査の不備などについても「慎重な審議を尽くしたものと認めるには余りに大きな疑問がある」と原子力安全委員会の判断を否定したのである。
 なお、判決では「もんじゅ」の立地条件や耐震設計、核燃機構の技術的能力についての住民側の主張は退けられている。
 小泉純一郎首相は、昨年一〇月の国会答弁で、核燃料サイクル計画は「安全性の確保を大前提として、国民の信頼回復と理解にむけてさらなる努力が必要だ」と言っているが、安全性の神話は裁判所によっても否定された。
 この判決は、政府・与党に大きな衝撃を与えた。同日、山崎拓自民党幹事長は、「原子力の安全性確保に努めながら、原子力発電のウエートを高めることは、エネルギー安全保障の見地から進めるべきだ。核燃料リサイクルも当然進めるべきものだ」と記者会見で述べ、従来の政策は変更しないという考えを明らかにした。反原発団体は政府に上告断念と廃炉を要請した。
 しかし、政府は三一日に名古屋高裁金沢支部の判決を不服とし、最高裁に上告手続きをとった。平沼赳夫経済産業相は、上告理由について、「(判決は)過去の最高裁判決を逸脱したり、原子炉等規正法の解釈を誤るなど、法令解釈の重要な誤りがある。受け入れることはできない」と強調している。 
 国や核燃機構は、最高裁上告を取りやめ、名古屋高裁判決に従って、「もんじゅ」をただちに廃炉にし、原子力政策を抜本的に見直せ。
核燃料サイクル施設の総点検・計画中止、プルトニウム循環方式からの撤退、日本の核武装化阻止・原発社会からの脱却にむけて運動を前進させよう。

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 高速増殖炉もんじゅを廃炉に
  ― もんじゅは欠陥だらけの原発、国  の審査には重大な違法があった ―


 本日(1月27日)名古屋高裁金沢支部において、高速増殖炉もんじゅの国の安全審査(原子炉設置許可処分)が無効であるという、判決が下された。 
 これは原告住民が永年主張してきたもんじゅの安全上の多くの問題と国の安全審査の重大な瑕疵を、裁判所が全面的に認めた画期的な判決である。
 私たち原子力資料情報室は、国、核燃料サイクル機構にたいし、判決を尊重しもんじゅを直ちに廃炉にすることを要請する。

 特定非営利活動法人 原子力資料情報室(CNIC)(共同代表:山口幸夫・西尾漠・伴英幸)


すべての反石原勢力の共同を、石原都政にNO!

            
東京都知事選挙が近づく中、市民が集会を開催

 一月三〇日、石原都政の目玉商品のひとつになってきた「銀行への外形標準課税」問題での裁判は東京高裁の二審判決でも都側の敗北という結果となり、一六二八億円の返還命令がでた。
 同じ日、午後六時三〇分から都内で第二回「石原都政にNO!市民の集い」が開かれ、約一〇〇名の市民が参加し、石原都政の打倒をめざすことを確認しあった。
 この集会を呼びかけたのは「STOP!改憲・市民ネットワーク」「全国自然保護連合」「都労連交流会」「日本消費者連盟」「横浜事件の再審を実現しよう!全国ネットワーク」など十四団体九四人。
 集会の司会は富山洋子さん(日本消費者連盟)が行い、渥美昌純さん(なんで原宿に大規模留置所?撤回してよ!市民行動)、阿部則子さん(都教員)、保坂展人さん(衆議院議員)らの発言のあと、都議会議員の福士敬子さん(自治市民93代表)が「石原都政の四年間とは」という報告を行い、渡辺治さん(一橋大教授)が「石原思想の原点」と題して講演した。
 保坂さんは「目を覆いたくなるような、今日の日本の政治状況は九九年の石原都知事の誕生と無関係ではない。直後の一四五国会では悪法がなだれをうって強行された。もし今度の都知事選で石原を圧勝させたら、さらに事態はきびしくなる。石原は都市再生どころか、都市破壊をしている。いま意見の違いを乗り越えて、反石原、超石原の候補を共同で擁立して闘わなくてはならない。石原新党も警戒しなくてはならない。戦争か平和か、強権か人権か、メディア・ファシズムか草の根民主主義か、これは都政の問題にとどまらない日本の政治全般の問題だ」と発言した。
 福士さんは「石原都知事が自信をもって取り組んだ外形標準課税が二審でも敗北した。判決はいまいち納得できない部分はある。本来は自治体の裁量権を認めた上で公平性をきちんとしなくてはならない。石原知事は三国人発言、ババァ発言をはじめいろんな問題発言をくりかえしているが、一般の批判はまだ弱い。国にたてついて地方自治体として独自の仕事をしたかのように受け止められている。またジーゼルエンジンを規制するというから環境保護派に見られるが、一方で外環(自動車道路)を作っていく。公共事業でも都内の七つの地区には規制がかからない特例地域を作る。ここに大企業が移った結果、いままでのビルは空っぽになっている。こんな政策が進められているのにマスコミは何も書かない。知事を敵に回すことを恐れている。おかしいという話がどこからもでてこない。みなさんと一緒に行動していきたい」と述べた。
 渡辺さんは「前回は石原都政のねらいについて話したので、今回は石原が都政にとどまらず、日本の政治全体の中で役割をはたそうとしていることと関連して、彼の思想を検討したい」とまえおきして、石原が最近、マスコミやジャーナリズムに注目され、支配層の期待を集めているのは、支配層が望む「軍事大国化と新自由主義構造改革」路線と合致しているからだと指摘した。
 そして石原は経済と軍事の両面で強い日本をめざし、弱い国への侮蔑をあらわにする。日本帝国主義の植民地支配を正当化し、高齢者、障害をもった人、女性らに対する差別意識をふりまく。石原の思想には対米自立論と日米同盟論が併存している。また侵略を正当化し、アジアを蔑視する。だから「ワールドカップと並んで日本人が国家といったことをようやく意識するきっかけがもたらされた」とか、「北朝鮮に核ミサイルを発射させない一番の方法は、『日本も核武装する』という宣言をいち早く総理がすることです。『北朝鮮がもし万一、核ミサイルの脅しをかけてくるなら、日本も核武装する決断を迫られよう』とはっきり言えばいいのです。……これが国際社会に、北の核ミサイル放棄に向けてのエネルギーをださせるひとつの方法です」などとも言っている。
 石原にとっては都政は国政に向う手段にすぎない。この危険な石原を倒すことができるかどうか。これは都民の責任だ。その第一歩はこの都知事選挙で石原さんに容赦のない批判を浴びせることだ。反石原でさまざまな勢力が、それぞれの独自性を持ちながらひとつになる必要がある。大きな力が必要だ。ここがいま工夫のしどころだと思う、と結んだ。
 集会の最後に都労連交流会の柳田真さんが「次回は三月十一日に文京区民センターで集会を開く。ここに石原都知事と対決する統一候補が来るような状況をつくりだすために奮闘しよう」と呼びかけた。
 きたる四月の統一自治体選挙の最大の焦点である都知事選挙の問題はいよいよヤマ場にさしかかった。憲法と平和、地方自治、環境、生活破壊に反対する分野など、すべての石原批判勢力が大連合して、石原都政を打ち倒す闘いに結集していくことが期待されている。それはこの社会を覆う暗雲を突き抜けていく可能性を持った重大な政治課題になっている。


今年も「五・三憲法集会」実行委員会が始動 

 一月二九日、都内で「五・三憲法集会第一回実行委員会」が開催され、多くの市民団体や労働団体などが出席し、今年も広く共同して憲法集会を成功させようと、実行委員会の発足が確認された。
 司会を日本YWCAの俣野尚子さん、憲法会議の川村俊夫さんが行い、開会にあたって平和憲法二十一世紀の会の中小路清雄さんが挨拶した。
 社民党の金子哲夫議員、共産党の春名直章議員がそれぞれ憲法調査会の危険な動きを中心に国会報告をした。
 市民連絡会の高田健さんが経過報告と方針の提案を行い、討議の上、確認された。この枠組みで開かれる憲法集会の三回目であり、集会名称は従来のものを継承し「生かそう憲法、高くかかげよう第九条 二〇〇三年憲法集会」とした。またイラク戦争や有事法制、憲法調査会などに関するスローガンを加えることにして、次回、決定する。日時は五月三日午後、会場は東京の日比谷公会堂に決定した。
 プログラムについては講演や挨拶、文化行事などについてさまざまな意見がかわされ、次回に決定することとした。
 最後に、女性の憲法年連絡会の堀江ゆりさんが閉会の挨拶をした。
 なお当日、確認された実行委員会事務局構成団体は、憲法改悪阻止各界連絡会議、「憲法」を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、女性の憲
法年連絡会、平和憲法二十一世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、許す
な!憲法改悪市民連絡会の八団体。


NLPの広島・大黒神島への移転に地元から抗議の声

 防衛施設庁は東京の三宅島などを候補に上げていた米空母艦載機の夜間離着陸訓練(NLP)の厚木基地からの移転問題について、広島県沖美町にある大黒神島(無人島)に移転する計画を進めている。広島の市民団体はいま緊急に以下のように訴えている。

 @いくら無人島と言っても、NLPの影響は能美町、大柿町、江田島町、倉橋町、音戸町、広島市、廿日市市、大野町、大竹市、呉市を始め、山口県など広い範囲にわたって騒音、事故の危険性を振りまくものです。日米政府当局の人権感覚の無さに驚きます。
 神奈川県の住民がどれだけひどい目にあって、それを克服するためにどれだけのエネルギーを使ってきたのかを考えましょう。
 A本土に新しい基地をつくることになります。空母の母港を横須賀においていることに、すべての出発点はあります。
 B騒音、墜落事故だけでなく、瀬戸内海の環境を破壊することにもなります。
 Cこの訓練を受けたパイロットが、イラクなどでの戦争を担うことになると言う問題もあります。
 豊かな国が貧しい国に爆弾を落とすのはごめんだ!
 軍事訓練の手助けはごめんだ!
 郷土の環境破壊反対!
 生活破壊反対!
 協力しないぞ!


解雇緩和法案を阻止しよう 日本労働弁護団主催の反対集会

 小泉内閣は、構造改革の一環として財界の要求を受けて労働者の生活を悪化させる労働法制の改悪を強行しようとしている。
昨年末に厚生労働省の労働政策審議会が「解雇ルール」、有期雇用の拡大、企画型裁量労働の拡大など労働基準法「改正」についての建議を出した。これは、物の製造への労働者派遣、派遣期間制限の長期化など労働省派遣法「改正」とともに、雇用の安定を脅かす物である。その中でも、首切りを容易にする「解雇ルール」の導入はきわめて重大である。これは、解雇の「ルール」を法制化するという名の下に、使用者の解雇権を規制している現在の判例法理を後退させ、さらに解雇無効の場合であっても金銭支払による労働契約終了判決の申立権を使用者に新たに付与する等を内容とする(@使用者は労基法などで禁止されている場合を除き、労働者を解雇できるが、正当な理由のない解雇は権利濫用で無効とするA無効と判断された解雇について、労使双方が裁判所に金銭解決を申し立てられるようにする。使用者からの申し立てには、公序良俗に反していない、雇用関係を継続するのが困難な事情があるなど一定の要件を課すなど)。労働法制の改悪について、厚生労働省は二月からの法案要綱審議をへて、今通常国会に法案を提出するとしている。
 いま、労働運動のさまざまな潮流も一致してこれに反対する動きが進んでいる。多くの労働者・労働組合の力を結集して労働法制改悪を阻止しよう。

  一月二十三日、日本労働弁護団主催の「『解雇緩和法案』に反対する緊急集会」が開かれ、連合、全労連、全労協などの労組や弁護士など約二百人が参加した。
 日本労働弁護団の宮里邦雄会長が「解雇に関する建議の内容と基本的問題点」と題して基調報告を行った。 
 これまでの労働者の闘いは、客観的に合理的理由がなく、社会的相当性を欠く解雇は無効であるという実質をかち取ってきた。厚生労働省は、この解雇濫用法理を法律に明記することを今回の法改正で行うと言う。労働基準法に「使用者は、労働基準法等の規定によりその使用する労働者の解雇に関する権利が制限されている場合を除き、労働者を解雇できる。但し、使用者が正当な理由なく行った解雇は、その権利の濫用として、無効とする」という条文を加える考えであるといわれる。だが、このような条文は、解雇は自由であると解釈される危険が充分にある。そもそも労働者を保護する法律としての労基法にこうした規定を加えるのは労基法の基本的性格に全く反するものである。このように解雇を原則として自由であるとして、例外を規制すると法律で明記することになれば、これまでの裁判で確立された法理は否定され、解雇に拍車がかかるのは言うまでもない。そして、その解雇訴訟では、労働者側が解雇には正当な理由がないと立証しなければならなくなる可能性も出てくる。
 また、建議が裁判で解雇に正当な理由なしとして労働者が勝ち、その労働者が職場復帰を希望しても使用者の側から金銭支払による労働契約終了ができるとしていることが問題だ。本来、無効となった解雇では、職場復帰を求めるか金銭解決を求めるかは労働者側の選択のみとし、使用者に申立権を認める必要はない。もし、使用者の側からも金銭解決を求めても良いということになれば、使用者はあらゆる解雇事件で申し立ててくることは明らかだ。そうなればこれまで以上に職場復帰は難しくなる。そして、金さえ払えばいつでも労働者を職場から追い出せるという風潮を生み出しかねない。これは雇用責任についての使用者のモラルハザードだ。
 このような内容をもつ建議の立法化は絶対に許してはならない。「解雇ルール」は、働く者の権利にかかわる基本問題だ。全労働者・労組が取り組まなければならない緊急課題だ。
 宮里弁護士の基調につづいて、厚生労働省・労働政策審議会の労働側委員である小山正樹さん(JAM副書記長)が報告。
建議は使用者にとって有利な、そして不当解雇され職場復帰を求める労働者には大変な壁をつくり出すものだ。法案要綱審議は一月に予定されていたが突然に二月に延期された。これは、金銭解決の部分で厚労省と法案づくりにかかわる内閣府法制局など他省庁との調整がうまくいっていないのではないかと思う。今後の労働側の取り組み次第では法案に影響を与えることが可能であり努力する必要がある。
 二人の発言の後は会場からの発言となった。
 解雇撤回闘争を闘っている労働者は、不当解雇が認められればそれは即職場復帰だし、建議が法律になっても組合員は争える、しかし未組織労働者は抵抗できない、これが法制化されれば失業者の増大は明らかだ、と述べた。
 労政事務所職員などで構成する都庁職労働支部の組合員は、労政事務所などに寄せられる相談では解雇が一番多いが、金銭解決が法律化されれば職場復帰は一層難しくなる、と発言。
 また、参加した弁護士からは、厚労省はドイツの金銭和解を参考にしたというが、ドイツでも実際には金銭和解はほとんどない、その金銭和解も一年分の賃金を出せば、すぐ解雇だ、と報告(これに対して、宮里弁護士が、日本のそれでは、まだ裁判終了までの期間のバックペイの扱いなどは、まったく明確になっていないと、発言した)。
 最後に集会は、「解雇ルールの法制化等の労基法等『改正』についてのアピール」を確認した。


四党合意破綻後の国鉄闘争  鉄建公団訴訟と最高裁にむけた署名を両輪に

 一月二七日、鉄建公団訴訟の闘いが取り組まれた。
 午前一〇時半から東京地裁で第四回鉄建公団訴訟口頭弁論が開かれ、傍聴その他の行動に一五〇名が参加した。
 夜には飯田橋・シニアワーク東京で「攻め込むぞ ! 鉄建訴訟に最高裁署名 1・27裁判報告&総決起集会」が開催された。
 酒井直昭・鉄建公団訴訟原告団長(北見闘争団)が「国鉄闘争の現段階と原告団の決意」を述べた。国労本部が進めてきた四党合意は完全に破綻し、鉄建公団訴訟が敵に切り込む主戦場になった。われわれはこの訴訟を取り下げることはないと断言する。小泉政権が動揺してきているいま、情勢は有利である。JR内部の国労に人権と民主主義を取り戻す会の仲間とともに、これまでの国労本部の不透明な経過を正していきたい。
 二瓶久勝・国鉄闘争共闘会議議長は「解決の道筋をつける年へ」と題して発言。昨年は四月に共闘会議を結成し全国三〇カ所以上の連鎖集会を行い、闘いを広げてきた。今年は、@鉄建公団訴訟をすすめ、原告団を支える大衆運動を広げる、A国鉄闘争の勝利で日本労働運動の展望を切り開く、B共闘会議の強化と拡大、をめざす。
 当日午前に開かれた東京地裁での鉄建公団訴訟第四回口頭弁論の報告は、萩尾健太弁護士が行った。今日、鉄建公団側が出してきた証拠は、国鉄の分割・民営化当時に行われたマスコミのキャンペーンのヤミ・カラなどの新聞記事類で、証拠書類の説明書で、こうした労働者は差別してもかまわない、といってきた。ついに向こうは、いままでないとしてきた不当労働行為そのものをだしてきた。かれらは、不当労働行為かも知れないが、当然だという。これは、昨年の全動労判決の、国是としての国鉄改革に反対した者は切り捨てても構わない、国鉄の再建という特別な状況下では、それに反対した者を採用差別しても不当労働行為に当たらない、という判決を、国労の場合でも出させようと考えているからだ。また、向こうは、時効を出している。そして、清算事業団の就職斡旋などの当時の資料がなくなっていると言っている。しかし、かれらは、個々の労働者に斡旋をしたという立証をしなければならない。われわれも、個別の事例で証拠を挙げての立証していく。これがカギとなっている。
 陳述人の仁部敏雄さん(北見闘争団)は、組合差別の実態、解雇された仲間の自殺など国鉄・清算事業団の許しがたい行為について陳述したと報告した。
 つづいて、新しい試みである「闘争団ビデオメッセージ二〇〇三」が上映された。これは、北海道・九州・本州の闘う闘争団が自らの手で映像に収録した力強い決意表明であった。
 佐藤昭夫早稲田大学名誉教授(鉄建公団訴訟弁護団長)は、「四党合意の後遺症の克服―再生される幻想を打ち破ろう」という問題提起を行った。
 行動提起は、内田泰博国鉄共闘会議事務局長(旭川闘争団)。今年は、闘争団の上京・オルグの体制を強化し、首都東京を騒然とさせるような状況をつくり出す。物販では利用されやすく買いやすいものをそろえ運動を広げる。二〇〇三年を反撃の年として闘うために一人ひとりが腹を固め、共闘会議の充実・加盟の拡大をはかる。そしてメインの運動として最高裁署名の運動に取り組む。これは、連続して東京高裁が不当判決を出していることに対して、最高裁に@下級審がJRの使用者性について異なった判断をした以上、最高裁は大法廷で弁論を開催し、統一した判断を示すこと、A最高裁は憲法の番人として、憲法二八条の団結権保障、憲法九八条二項の「条約及び国際法規の誠実遵守」という観点に立って、JRの採用差別の不当労働行為責任を明らかにし、労働者を救済する公正な判断を示すこと、を求めるものである。署名では、五〇〇〇団体、個人五〇万筆を目標として取り組み、三月三日の第五回地裁口頭弁論にあわせて行われるJR総行動で最高裁に提出する。鉄建公団訴訟と最高裁署名を同時に取り組むのは、最高裁で向こうに不当労働行為がないとされれば鉄建公団訴訟も敗ける。逆もまた同様なことになる。署名の目標を実現し、三月のJR総行動を大きく展開しよう。
 つづいて、争議団が登壇し紹介された。
 最後に、闘う闘争団共同代表の原田亘さん(鳥栖闘争団)の音頭で団結ガンバロー。
 四党合意は完全破綻した。国労本部の圧力をはねのけ国鉄闘争の勝利にむけて前進しよう。


憲法調査会で改憲派が積極攻勢

       
結論を急ぎはじめた改憲派、運営の大幅手直し強行

 一月二〇日から第一五六通常国会がはじまり、衆議院憲法調査会(中山太郎会長)は一月二二日、二八日に幹事懇談会を開いた。幹事は自民、公明、民主、自由の各党幹事で構成され、社民、共産はオブザーバーとなっている。ここで確認
された「この常会における日程及び調査テーマにつて」という中山会長、仙石由人会長代理が提案した今後の運営の基本方針には、憲法調査会の運営に関する重大な問題が多々含まれている。

強引な「中期的(運営)計画」

 第一に、衆議院憲法調査会の今後一年から一年半にわたる進め方の中期的計画を立てたことだ。日本国憲法一〇三箇条全体をいくつかのテーマに分け、「日本国憲法の運用実態と課題」について「テーマ別調査」を行ない、前記の期間内に全体をカバーするとした。
 従来は「日本国憲法制定経緯の検討」とか「二十一世紀の日本のあるべき姿について」などという恣意的なテーマを設定し、現行憲法を故意に落としめるキャンペーンによって改憲ムードの醸成をはかってきた改憲派が、いよいよ本格的に憲法全体への批判に乗り出そうというわけだ。一年から一年半という期間は発足時に確認された「調査期間は概ね五年とする」ということから来る時間ではあるが、これはきわめて強引だ。実際のところ、時間は過ぎたが、憲法の調査はほとんどまともに進んでいないことは多くの指摘があるところだ。最大限、あと一年半で調査を終えることができるような実態にはない。にもかかわらず、こうした決定をするのは、まさに「はじめに改憲ありき」でしゃにむに突き進もうとしていることの証左なのだ。
 中山会長らはなんとしても当初の予定通り、五年で「調査」を終え、憲法調査
会を「改憲のための常任委員会」に改組したいのだ。改憲をめぐる事態は予断を許さない状況になった。
 この衆議院の動きに刺
激されたのか、遅れがちだった参議院憲法調査会も、前回の臨時国会で会長を野沢太三に代え、この国会では早々と二月だけで三回(従来は月に一〜二回の開催程度)の調査会を入れるという異常なテンポの日程を設定した。

会議の回数を増加させ、半年のスケジュールを決めた

 第二の問題は衆議院憲法調査会の開催回数を増やし、午前・午後の小委員会を月に二回開催するのに加えて、総会(全体討議)を一回行なうことにした。従来は多くても月に二回だった。これを六月の会期末までに計十四回、スケジュールを入れ、総会の討議テーマまで決めてしまった。これは異例のことだ。そして他に地方公聴会を二回行なうとした(実施する地域は未定)。
 小委員会は午前九時から十二時と、午後二時から五時の開催で、多数委員を擁してる自民党や民主党は交替で出席すればいいが、少数会派の社民、共産の委員にはすべてに出席しなくてはならないので、たいへんなハードスケジュールだ。スケジュールには時間の問題だけではなく、議論を深めるためのそれぞれの委員の準備の問題もある。これらがおざなりにされる危険性をは
らんだ計画なのだ。
 各小委員会の「各回ごとの調査テーマの割り振り界」も各小委各四回のテーマを手回しよく決めてしまった。例えば「最高法規」小委員会は第一回は「象徴天皇制@天皇の地位・皇位継承を中心として」として、元共同通信記者の高橋紘を参考人に招く。第二回は「象徴天皇制A天皇の権限・国事行為を中心として」で、参考人は交渉中という具合だ。「安全保障及び国際協力」小委員会は第一回は「非常事態と憲法@テロ等への対処を中心として」、第二回は「非常事態と憲法A自然災害等への対処を中心として」となっている。「基本的人権」小委員会の第一回は「教育を受ける権利(教育基本法改正を含む)」だ。なんともおどろおどろしいテーマ設定だ。ここには「憲法が現実にどのように生かされているか、いないか、その原因は何か。憲法の精神にそった政治の実現のために」という憲法調査に必要な基本的な姿勢は全く欠如している。これは憲法調査の名に値しない。
 また毎月月末に行なう総会の討議テーマは一月は「現在の国際情勢と国際協力について(特に、イラク問題・北朝鮮問題をめぐる憲法的諸問題)」、二月、三
月、五月は小委員会の調査報告を受けて別途、討議。四月は「憲法記念日を迎え
るにあたっての自由討議」、六月は「科学技術の進歩と憲法の在り方」、あるいは「非常事態と国民保護法制」とされている。危険なテーマ設定だ。

新しい小委員会は「前文、天皇制、改正手続き……」をテーマ

 従来の四つの小委員会(政治機構の在り方、地方自治、基本的人権、安全保障と国際協力)のうち、政治機構と地方自治の小委員会を統合して「統治機構」小委員会に一本化し、新たに「前文・天皇制・改正手続、最高法規」を議論するための「最高法規としての憲法の在り方」小委員会を設置することにした。
 この四つの構成で日本国憲法の全体の議論がカバーできるというのだ。
 特に新設された「前文、天皇制、改正手続き」を議論する小委員会の設置は問題がある。これまでの憲法調査会の運営から見て、この小委員会では改憲派の委員の多数を利用した改憲キャンペーンガ本格的に展開されるに違いない。

地方公聴会を開催したという既成事実づくり

 今国会期間での地方公聴会の開催日をあらかじめ、五月十二日と六月二日の二回に決めた。これも異例のことだ。
 加えて二二日に出されたペーパーでは「実施要領はこれまでの反省も踏まえて再検討する」と述べているのは注目しなければならない。
 「永田町は改憲、地方は護憲」などといわれるように、この間の他方公聴会は
国会と地域での、憲法に関する感覚の落差が大きいことを示してきた。公聴会の開催・運営にあたった会長らはいつも煮え湯を飲まされる思いであったいことは想像に難くない。
 公募した結果として意見陳述人が改憲反対の人が圧倒的であることに不満をもっている中山会長らが、陳述人の選抜方式に手をいれてくる可能性がる。
 しかし、これらの一連の方針を見ると、イラク戦争や有事法制、集団的自衛権
の問題などで、改憲がまったなしの情勢になりながら、憲法調査会が必ずしも思うようには進んでいないことへの中山太郎会長ら改憲派のあせりがうかがえる。
 ひきつづき憲法調査会の監視をつよめ、さまざまな方法での抗議の大衆運動を強めていく必要がある。  (S)


反ナチスのプロレタリア版画家ケーテ・コルヴィッツ

 コルヴィッツ展:2月3日(月)〜15日(土)/11:00〜19:00日祭休み/ギャラリーせいほう  東京都中央区銀座8−10−7東成ビル 03−3573−5335

 一八六七年北ドイツのケーニヒスベルグに生まれ、一九四五年、モーリツブルグで没。
 ドイツのプロレタリア版画の先駆者で、社会主義者。医師の夫と共にベルリンの労働者街に住み、その飢えと死が蔓延する生活や戦争体験を表現した。ナチスに弾圧され、一九三七年には「退廃芸術」の烙印を押され、美術館から撤去された。彼女の作品は永く日の目をみなかった。代表作は「職工の蜂起」(一八九八年)「農民戦争」(一九〇八年)など。
かつて中国の魯迅も彼女の「版画選集」を編集したことがある。魯迅は「深夜に記す」でコルヴィッツにふれ、「この画集をもったことで、世界中どこにもわれわれと同じ仲間である辱められ虐げられた人々があり、しかもこれらの人々のために悲しみ、叫び、そして闘っている芸術家がいるということがわかる」と述べた。 (G)


複眼単眼

   作家・辺見庸氏の挑発的言論と犬の糞を踏んだ人


 最近、辺見は次のような話を『サンデー毎日』二月九日号の「反時代のパンセ」という文章で紹介した。
 日本海側の県に住まう辺見の友人が一月十八日、イラク攻撃反対のデモの呼びかけがあったので集合場所の公園に行った。「いくらなんでも五百人くらいは集まると思ったのに、たったの百人。寒いので公園を歩き回っていたら、犬の糞を踏んだ。犬の糞を靴底につけたままのデモは、シュプレヒコールするでなし、ジグザグ行進するでなし、ジョン・レノンだかだれかの曲をスピーカーから流して歩くだけのうそ寒く、しょぼくれたものだった」という話だ。辺見はこれに同情して「あんなもの、いったいどんな意味があるのか、児戯、滑稽、無惨、あほらしさ、はずかしさ、むなしさ」と一・一八行動を最大級の表現で罵倒する。そしていう。「このところのデモは数少ない戦闘的例外をのぞけば(ほう、どんな人たちのデモのことかねぇ、教えてよ、辺見さん…筆者註)、鼻につく。なぜあそこまで『健全で温和な市民』を装い、非暴力と無抵を誇る必要があるのか」と。そしてさらにいう。「陰熱(ひどく冷めた殺意に似た心意と辺見は解釈して)を私も体内に育てている。イラク攻撃と有事法制に反対するあらゆる表現はもっと冷静に戦闘化すべきだと私は思う」。
 「冷静に」などという前後の脈絡のない修辞でごまかしてはいるが、これは挑発そのものだ。そして作家の辺見は「人影もまばらな集会で犬の糞を踏む。…その情けなさをぽくぽくと食う。すると、陰熱が静かに躰いっぱいに広がるのだ」と表現する。
 『サンデー毎日』の同じ号に「『いまなら戦争を止められる』ネットを通じて集まった若者たちの思い」という記事があり、「世界中でわき起こる『NO WAR』の波のなか」というグラビアがある。辺見の論考と、これらの記事とを比
べれば、問題はおのずと明らかになる。
 「冷めた殺意」を育てつつある辺見さんよ、評論して悪いとは言わないが、若者たちは行動を組織しているのだ。ただ罵倒しているのではなく、自分で辺見流の運動を、デモを組織してみたらどうか。
 このところの反戦運動の停滞から、この辺見の随筆などにみられる思想が、一部のオールドをひきつけているのも事実だ。しかし、停滞を打開する道は辺見のような路線の延長上にはない。辺見の友人が「犬の糞を踏んだ」のは災難だったかも知れないが、当然だという気もする。
 日本海の側のある町で百人のデモがあった、それはすばらしいことではないか。この日、新潟でも、富山でも、金沢でも、舞鶴でもあった。全国の数十箇所でこうした行動があった。こうしたことはここしばらくなかったことだ。辺見はここに可能性を見て取ることができないだけだ。辺見はまず己れのそれを嘆くがいい。
 こんな評論家のみせかけの戦闘性にだまされてはならない。 (T)