人民新報 ・ 第1089号<統合182号> (2003年3月15日)
目次
● ブッシュ・ブレア・小泉を孤立させ、全力をあげてイラク戦争を阻止しよう
● ピースサイクル '03全国ネットスタート会議開催
● 喜納昌吉さん イラク帰国報告会
● WORLD PEACE NOW 実行委員会 3・8の成功めざし、記者会見
● 平和フォーラムの労組などアメリカ大使館前で抗議行動
● 鉄建公団はでっち上げ資料を提出した 3・3 第5回鉄建公団訴訟 JR総行動
● どうしたら戦争を止められるか 明治学院大学国際平和研究所の公開研究会
● 資 料 / 全労協 武力攻撃容認の新決議・イラク戦争反対の決議
(要旨)
● 資 料 / 労働委員会命令の取消訴訟のあり方に関する意見(要旨) 日本労働弁護団
● 編集部・対談 イラク反戦運動の高揚について @
● 本 憲法再生フォーラム編 有事法制批判
● 複眼単眼 / 労働組合と市民運動と若者たち
ブッシュ・ブレア・小泉を孤立させ
全力をあげてイラク戦争を阻止しよう
全世界民衆の反戦運動のうねりがブッシュのイラク攻撃を押し止めている。しかし、アメリカは急速に拡大する反戦の声とフランス・ドイツ・ロシア・中国などの各国政府の査察継続・開戦反対の動きをまえになお無謀な早期戦争発動の策動を強めている。いまこそ、世界の人びとと共に総力をあげてイラク戦争阻止の闘いに立ち上がらなければならない。
三月八日には日本全国各地で、イラク戦争反対の行動が展開された。
東京・日比谷野外音楽堂では、四七の市民団体の呼びかけによる集会「ワールド・ピース・ナウ
3・8」が開催された。
会場にすぐに満杯となり、野音周辺は創意工夫した旗やプラカード、ゼッケンなどを持った参加者で埋まり、主催者の予想をはるかに上回る四万人が結集して、巨大な集会・パレードの隊列で反戦を訴えた。インターネットやメールで集会を知り、こうした行動にはじめて参加する人が多かった。戦争反対の想いを是非とも訴えたいと多くの若者、女性などがかけつけた3・8行動は、反戦の意志が多くの人びとの間に広がっていることを示した(これまで反戦行動の取材に消極的であったマスコミ各社も反戦運動の盛り上がりを報道した)。
ラリー(集会)のスタートは午後二時。それに先だってプレアピール。3・8国際女性デーとのメッセージの交換、広島行動の報告、JVC(国際ボランティアセンター)、イラク市民調査団、沖縄戦の悲惨な経験を述べた上江田千代さん、反戦のポスターやバナーペインティングなどのアートパフォーマンス、そしてウリパラムの朝鮮音楽演奏が会場を盛り上げた。
集会のはじめに、主催者を代表して実行委員会の高田健さんがあいさつした。ブッシュは近くイラク攻撃を開始しようとしている。もし攻撃が始まったらどれだけ多くの人びとが殺され、傷つくのか。私たちはそれを我慢できない。許しがたいことは平和憲法をもつこの国の首相である小泉がブッシュの攻撃を支持していることだ。今日、戦争に反対する行動が北海道から沖縄まで全国各地で取り組まれている。この行動は、@もう戦争はいらない、A米英両政府によるイラク攻撃に反対、B日本政府には、政治的にも、資金的にもこの戦争を支持・協カしないこと、イラク問題の平和的解決のために国際社会の場で行動すること、C非暴力による行動という原則でとりくまれた。時間は限られているが、もっともっと多くの人びとの力を結集して戦争を止めよう。
つづいて、喜納昌吉さんが、アメリカはイラクそして朝鮮で戦争をおこそうとしている、「すべての武器を楽器に」と述べ、「花」を熱唱した。
社会派風刺コントグループ「ザ・ニュースペーパー」の小泉首相そっくりさんの演技が会場を沸かせた。
アムネスティ・インターナショナル日本のイーデス・ハンソンさんは、反戦の声を上げ続けることが大事で、日本政府にイラク戦争を支持しないよう要請する運動をすすめようと訴えた。
ノンフィクションライターの吉岡忍さんは、アフガン・パレスチナなどの殺戮現場の取材してきたが、物事を武力で解決するということはだめだ、いまわれわれの弱さであるばらばらの状態から脱していろいろな動きが出てきたと発言した。
先月イラク現地を訪れていたピースボートのチョウ・ミスさんは、湾岸戦争当時に使われた劣化ウラン弾が大きな被害を生み、今度もそれが使われたらすさまじい影響がでること、そして現地の子供たちが戦争をとても恐れていると報告した。
環境・サイエンスライターの小林一朗さんは、戦争をやって利益をうるものたちがイラク攻撃を急がせていること、北朝鮮に原発を売りつけたのがワインバーガー国防長官が顧問を勤めていた会社であるように、かれらは危機の自作自演をやっているのだと述べた。
人材育成コンサルタントの辛淑玉さんが発言。マーチン・ルーサー・キングは「私には夢がある」と言った。私にも夢がある。それはイラク・朝鮮・パレスチナの子供たちをはじめ、世界のすべての人びとが平和に暮らしていけることです。
オーストリアからの留学生トーマス・ヘネクルさんは、テロ反対の報復戦争はテロそのものであり人道上の犯罪だ、憲法九条は日本からの世界に対する貴重なプレゼントだ、と述べた。
つづいて、「ワールド・ピース・ナウ」からの小泉首相・川口外相・国会議員への「イラク戦争不支持の要請文」が提案された。
ラリーの最後は、音楽演奏。「エイプ」と「パンタと
SKI(制服向上委員会)。
そしてパレードに出発。さまざまの趣向をこらした隊列がつぎからつぎへと繰り出していく。パレードの訴えを聞いて途中から隊列に加わる人も多い。流れ解散地点の東京駅付近は夜遅くまで人の波がつづいた。
イラク攻撃阻止!
戦争反対!
ピースサイクル
'03全国ネットスタート会議開催
三月一日、二日の両日、東京でピースサイクル03全国ネットスタート会議が開催された。
この全国会議は毎年、全国の各ネットが持ち回りで世話を引き受けて開催されるが、今年は三多摩ネットが企画してくれた。
東大和変電所を見学
全国各地のネット代表の参加者は、生憎の雨の中を一日午後一三時にJR青梅線の牛浜駅前に集合した。
ここから、恒例のフィールドワークで、米軍横田基地の見学と説明を受けた。
横田基地飛行差し止め訴訟団の方々(代表福本道雄さん)が、雨に濡れながら案内をしてくれた。
晴れていれば横田基地の全貌が良く見えるという瑞穂町の展望台に上った。雨に霞んで良く見えなかったが、基地の大きさは良くわかった。土曜日ということで、軍用機は飛行しておらず、騒音はなかったが、説明者の方が「いつも今日のように静かなら…」と言われたことが印象に残った。
それから、さらに東大和の戦災建造物の保存を求める市民の会の方々の案内で東大和変電所(写真)を見学した。
太平洋戦争末期の昭和二十年(一九四五年)に、日立航空機立川工場の変電所であった建物が、他の工場施設とともに銃爆撃を受けた当時のままで残されている。機銃弾や破片が建物の中まで貫通している痕跡を見ただけで、そのときのすざまじい情景が想像できる。目をつむって説明を聞いていると、逃げ惑い無残に死んでいった人びとの姿が目に浮かんできた。
あらためてこのような戦争遺跡の保存に努力された人びとに、敬意を感じるとともに、反戦の気持ちを強くした。
少し遠くて複雑な道のりを、宿舎であるよみうりランド会館まで車で移動して、夕食をとり、フィリピンのサンロケダムの問題に取り組んでいる波多江秀枝さんから、映像を交えて、日本の企業利益のからむフィリピンの国家プロジェクトとしてのサンロケ多目的ダムの現状と問題点について説明を聞いた。地球環境が戦争に深く関わっていることが良くわかった。
この後、参加者全員での交流会があり、再開を喜び合う仲間、熱心にこれからの取り組みについて語る人ありで恒例のことながら、ほとんど明け方まで親交を深めた仲間もいたようである。
全国ネットスタート会議
二日目は朝からは、本題のピースサイクル03全国ネットスタート会議にはいった。全国ネット事務局の司会で、議事が行われた。
会議は、取り巻く情勢の特徴を確認しあい、アメリカのイラク攻撃に反対する声の高まる情勢を見据えつつ、日本が戦時下のインド洋にイージス艦を派遣し、戦争を行うための有事法制を成立させようとしていること、教育問題でも危うい状況になってきていることなどが確認された。
そして、全国共通課題として、@アメリカの武力攻撃反対A有事法制反対のとり組みB原発のない社会をC自然との共生Dすべての人びとに人権をE教育問題へのとり組みFこれらをふまえて思い(ピースメッセージ)をペダルにこめて一年間を通して活動することを確認しあった。
全国ルートは今年も、沖縄、広島、長崎、六カ所村を到着地として、各ネットが設定することや、原則的には全国をつなげることを決めた。
さらに、ピースサイクルとして重要な意味を持つピースメッセージの目標数や自治体訪問など昨年を上回るよう取り組むことなども確認しあった。
平和への思いを乗せて
特に今年は、昨年の一部ネットの事故をふまえて、安全対策を重視することも確認しあった。
議論すべき内容に対して時間が足りなかったが、参加者全員でメインスローガンを確認しあい、今年もまた、平和への思いを乗せた銀輪で日本中を走り抜け、世界に向かって走ることを誓い合って、二日間の会議を終えた。 (投稿 T・O)
喜納昌吉さん イラク帰国報告会
「WORLD PEACE NOW」実行委員会によるピースウイークの最後の日である七日夜、喜納昌吉さんのイラク帰国報告会が、東京の全水道会館で開かれ、二〇〇名の市民が参加した。集会では翌日の3・8への結集が呼びかけられた。
WORLD PEACE NOW 実行委員会 3・8の成功めざし、記者会見
三月四日、国会で「WORLD PEACE NOW」実行委員会による記者会見が開かれ、市民連絡会や、ピースボート、グリーンピース、チャンス、ふぇみん婦人民主クラブなどの代表が出席した。この日は朝日新聞朝刊にグリンピースによる意見広告が掲載されたことも報告された。
平和フォーラムの労組などアメリカ大使館前で抗議行動
米国のイラク攻撃の危険が迫っているなかで、労働組合関係団体も動きはじめている。
「連合左派」系労働組合などで構成される「フォーラム平和・人権・環境」(福山真劫事務局長)は加盟労働組合に呼びかけて、毎週一回木曜日の正午から午後一時まで米国大使館前抗議行動を続けている。
二月六日は大使館前に約五〇名の労働組合員と宗教者、市民団体の代表などが集まり、イラク戦争をやめよと声をあげた。
はじめに福山事務局長が基調的なあいさつをおこなった。
そのなかで、アメリカのイラク戦争反対をかかげて市民団体と協力して運動を展開すること、3・8集会を支持すること、毎週木曜日のアメリカ大使館前抗議行動は戦争を止めるまで、当面継続することなどの方針を述べた。
日本山妙法寺の木津博充上人と「WORLD PEACE NOW」実行委員会の高田健さんが連帯挨拶し、続いて参加した各労働組合の代表が決意表明をした。
NO WAR! 始まる前に止めよう!イラク戦争 in
大阪
三月八日(土)、扇町公園(大阪市北区)において「始まる前に止めよう!イラク戦争in大阪」が開催された。会場には約一〇〇〇人が集まり、戦争反対の声を上げた。
参加者自身が作り上げる市民集会。壇上には発言したいと名乗り出た個人、団体が思いのたけをスピーチした。
「戦争イヤ」という中学生。プラカードを準備してきた大学生。「合格と戦争をストップすることが今の願い」と言う受験生。
若い人の発言が目立った。
プラカード、ゼッケン、様々なパフォーマンスを繰り返しながら、中之島野外音楽堂までピースウォークを行った。
途中、自民党府連、アメリカ総領事館に向けて、「戦争するな!」と抗議。道行く人に「戦争に反対しましょう!」とアピールをおこなった。次週、三月一五日(土)にはさらに規模を拡大して、同じく扇町公園で反戦集会が予定されている。
アメリカのイラク攻撃を許さない闘いはさらに強まっている。
今こそ立ち上がろう、行動しよう!(大阪通信員)
鉄建公団はでっち上げ資料を提出した
3・3 第5回鉄建公団訴訟 JR総行動
三月三日、鉄建公団訴訟の五回目となる裁判が開かれ、全一日のJR総行動が展開された。
鉄建公団のウソを暴く
東京地裁の前での情宣行動が行われ、口頭弁論は午前一〇時三〇分に開始された。
原告側は、準備書面で被告の鉄建公団(=清算事業団=国鉄)が再就職斡旋などをちゃんとやったなどという主張の欺瞞性を暴露し、北海道・音威子府闘争団の岡嶋孝一さんが、鉄建公団側が出した就職斡旋の回数を書いた表がねつ造されたものであることなどを証言した。
鉄建公団は、再就職斡旋は適正に行われた、原告らは地元JRへの採用に固執した、社員の採用はJRの自由な意思により決定されるものだから、被告に原告らをJRに就職させる責任はない、そして労働委員会の救済命令は地裁で取り消され、それが高裁でも維持された、と主張しているが、再就職斡旋は、斡旋の回数を書いた表だけしか出していない。そして、斡旋回数や内容はまったくのでたらめであることをこれまでの裁判で原告側は立証の陳述を行ってきた。
証拠資料は捏造された
今回の岡嶋孝一さん(音威子府闘争団)は、次のように陳述した。
「私は三年間で合計六件(公的部門が四件、民間会社が二件)の紹介がありました。おそらく音威子府雇用対策支所での就職斡旋は、私が一番多かったのではないかと思います。個人面談については、私の手帳のメモには三年間で七回しかありません。ところが、鉄建公団から示された書証には、私に対して三年間で職業指導が二一回、就職斡旋が一二回なされたようになっていますが、この数字が何を根拠に出されたのか全く理解に苦しみます。……再就職斡旋のデータは、雇用対策支所の管理者によってねつ造されたものであり、信頼に値するものとはいえません。改めて、日時や企業名、斡旋担当者名など、詳細な証拠資料を提出することを求めます」。
今回の裁判でも、被告側の主張のでたらめさと証拠のねつ造が明らかにされた。
裁判所での行動につづいて、大量のガードマン・社員・警察で守られるJR東日本会社にたいする抗議行動が闘われた。
報告集会で団結を確認
夜には、日本教育会館で、二六〇人が参加して「イヤです! 戦争・リストラ 3・3鉄建公団訴訟報告集会」が開かれた。
二瓶久勝国鉄闘争共闘会議議長が主催者あいさつをおこなった。
鉄建公団訴訟は前進している。しかし国労本部は闘う闘争団を査問にかけるなど国鉄闘争全体を運動を止めさせようとしている。こうした策動を許さない闘いの前進と支援の拡大をかち取って行こう。
萩尾健太弁護士(鉄建公団訴訟弁護団)と原告の岡嶋孝一さん(音威子府闘争団)が裁判の報告、国鉄闘争共闘会議の内田泰博事務局長が要請行動について報告し、鉄建公団訴訟原告団の酒井直昭団長が決意表明した。
休憩をはさんで、鉄建公団訴訟の集いでは恒例となった新企画シリーズのだしもので、今回は「ためになるコメント??<参考者誤元凶>(三公社五現業をもじったもの)」では、名古屋哲一さん(郵政4・28免職者)、木下孝子さん(全国一般東京労組NTT関連合同分会書記長)、田島省三さん(国労博多闘争団員)などが出演して、思いを語った。
どうしたら戦争を止められるか
明治学院大学国際平和研究所の公開研究会
三月一一日、明治学院大学で、同大学国際平和研究所の公開研究会「イラク攻撃を考える」が開かれた。はじめに、JVC(日本国際ボランティアセンター)の佐藤真紀さん、PARC(アジア太平洋資料センター)の越田清和さん、研究所の勝俣誠さんが、それぞれアメリカが行おうとしている戦争に対するイラク、アジア、アフリカの人びとの反応を報告した。武者小路公秀教授は帝国として国際世論を無視した独断的な行動が世界を脅かしていると発言した。また、参加したフランス人は、フランス政府が安保理での拒否権発動まで覚悟してブッシュの無謀な戦争に反対しているのは平和と均衡という国際法の原理に基づいていると述べた。
会場の教室はすぐに一杯となり、はじめて反戦デモに参加した学生、数日中にイラクに出発する看護士をはじめ参加者が、どうすれば戦争を止められるかなどについて遅くまで熱っぽい論議が続いた。
全労協 武力攻撃容認の新決議・イラク戦争反対の決議
(要旨)
一、米政府は、二月二四日に英・スペインと共に武力攻撃容認の新たな「決議案」を国連安保理に提出した。三月七日には国連査察委員会の新たな追加報告がなされた後に速やかな採決を求めるとしている。また、ブッシュ米大統領は、決議案の成否にかかわらず、すでに一五万人を越える軍隊と六空母艦隊を派遣し、イラク攻撃を強行する構えを強めている。
二、日本政府は、二月一八〜一九日に行われた国連安保理の公開討論で原口大使が武力攻撃容認の「新決議」採択の発言をした。武力攻撃容認の「新決議」採択の発言をしたのは六二カ国中、日本と豪の二カ国で圧倒的多数が「査察継続」を求める発言であった。
このことからも米英等の武力攻撃容認の「新決議」は、国際世論からも孤立している といえる。日本でも国民の七八%がイラク攻撃に反対している(朝日の世論調査)。しかし、小泉内閣は、「国連決議があった方が望ましい」とし、日米同盟関係を理由に武力攻撃容認の「新決議」支持でODA援助を背景に中間派諸国の説得に動いている。
三、全労協は、フセイン政権の独裁体制を容認するものではない。
しかし、これまで国連査察委員会が現地査察をしているが「大量破壊兵器」は発見されていなし、「アルカイダ」との関係の証拠も上がっていないのである。米国の論理は、発見されようがされまいが「国連決議違反」だとして「イラク戦争」を強行することにある。
四、ブッシュ米大統領の真の狙いは、世界最強の軍事力を背景にして米国を嫌うフセイン政権の破壊し、親米政権を創ることである。そして、イラクの石油権益を支配し、中東諸国をも再編成・支配をしようとしているのである。
五、世界の労働者市民による反戦運動は巨大な高揚をつくり出してきている。それは、二月一五日の「世界反戦行動日」には、ロンドン二〇〇万人、スペイン三〇〇万人を筆頭に世界六〇カ国、六〇〇都市で一〇〇〇万人をはるかに越える巨大な反戦運動のうねりが世界を一周し、米英両政府を大きく揺さぶっている。
全労協は、米英等の武力攻撃容認の「新決議」・「イラク戦争」に反対である。ましてや小泉内閣が、武力攻撃容認の「新決議」を支持し、ODA援助を背景に中間派諸国に圧力をかけていることを容認することはできない。全労協は、独自の取り組みと同時に、多くの労組、市民団体、宗教者団体等と連帯して幅広い「共同闘争」で闘うものである。
以上 決議する。
二〇〇三年三月四日
全国労働組合連絡協議会(全労協)
資 料
労働委員会命令の取消訴訟のあり方に関する意見(要旨)
日本労働弁護団・取消訴訟研究会 (二〇〇三年二月)
労働法制の大改悪、労働裁判での反動判決の続出とともに、労働委員会の形骸化が進んでいる。労働委員会制度は、憲法で保障された労働者の団結権などの存在・尊重を前提としたものである。労働委員会で不当労働行為の救済命令(=企業に是正を求める)が出ると、企業側は、その命令に従うのではなく、労働委員会命令の取消の裁判に訴えるケース(取り消し訴訟)が多い。そして、現在、労働委員会命令の全部または一部が取消訴訟において取消される事例が増えている。同時に、労働委員会が裁判所で取消されないようにと、不当労働行為救済命令をだすのを自己規制するようになってきている。労働法制改悪阻止とともに労働委員会制度の形骸化・消滅に抗して闘うことは、労働運動にとって重要な課題である。日本労働弁護団の取消訴訟研究会は、司法改革推進本部の労働検討会にたいして「労働委員会命令の取消訴訟のあり方に関する意見」を申し入れた。(編集部)
労働組合法の中に、以下の規定を置き、また実効性確保のための制度を創設すべきである。
一、労委命令尊重の原則
労委命令が十分な証拠収集権限を行使したうえ、専門的知識を有する公益委員の会議によって発せられる以上、その専門機関としての認定及び判断は最大限尊重されるべきであり、明白な証拠の欠如又は明らかな裁量権逸脱がない限り、労委命令の取消を命ずるべきではない。このことは、労委制度が、不当労働行為救済の専門機関として設置されている、その制度趣旨からも当然の帰結である。よって、裁判所は取消訴訟の審理にあたっては、明白な証拠の欠如又は明らかな裁量権の逸脱がある場合を除き、労委命令を尊重しなければならない旨の規定を置くべきである。
二、判断・評価の準則
不当労働行為とは、労働者に憲法で保障されている団結権・団体行動権を、使用者が侵害する性質の行為か否か、換言すれば、組合員の組合活動に対する意欲を萎縮させ、組合活動一般を制約する効果を有する行為か否かの観点から判断されるべきものである。私法上の権利の行使であっても不当労働行為となりうることを忘れてはならない。
しかるに、取消訴訟に臨む裁判所の現在の姿勢はかかる観点が極めて稀薄であり、組合・組合員に私法上の権利がない限りあるいは私法上有効な措置であれば、不当労働行為には該当しないとして結論を出してしまうケースがまま見受けられる。
かかる裁判所の誤った姿勢を歪すために、取消訴訟の審理における裁判所の判断のあり方について以下のような準則を設けるべきである。
裁判所は、取消訴訟の審理にあたっては、不当労働行為と指摘された当該行為の私法上の権利関係や表面上の理由ではなく、使用者が、従来とり来たった態度、当該行為がなされるにいたった経緯、それをめぐる使用者と労働者ないしは労働組合との接衝の内容および態様、右行為が当該企業ないし職場における労使関係上有する意味、これが労働組合活動に及ぼすべき影響等諸般の事情を考察し、これらとの関連において当該行為の有する意味や性格を的確に洞察、把握し組合活動一般を制約する効果の有無の観点から、労委命令の取消事由の存否を判断しなければならない。
三、実質証拠法則の導入
専門機関である労委が、十分な証拠収集権限を行使したうえでなした認定事実が裁判所を拘束することは、専門性の尊重と審理の迅速の要請から当然の帰結である。また、前記一及び二からも同様の結論が導かれる。
よって、独禁法八〇〜八二条にならい、労委の認定した事実は、これを立証する実質的な証拠があるときは、裁判所を拘束する制度を導入すべきである。
四、審理の迅速化
裁判所は、速やかに争点整理をなし、新たな主張・証拠の提出を原則として認めず(当該主張、証拠を労委では提出できず、かつ、不提出に過失がない場合を除く)、証人尋問を行うとしても必要最小限に止めなければならない。
五、救済命令の実効性の確保 ― 緊急命令の早期発令
前述したように、現在の裁判所の緊急命令についての審査は、制度の使命を空洞化させている。緊急命令制度を実効的なものとするためには、一見明白な誤りがない限り、緊急命令の必要性が疎明される場合には、裁判所は速やかに緊急命令を発出しなければならないものとし、緊急命令の発令要件を、原則として必要性の存在に限定することを立法上明記すべきである。
なお、緊急命令申立権は、労委のみではなく、当該事件の当事者である組合及び組合員にも与えられるべきである。
六、確定判決の実効性の確保 ― 間接強制制度と補償金支払命令
労委命令の全部又は一部が確定判決によって支持されたにも拘わらず、使用者がこれに従わない場合、現行法では使用者に刑罰(一年以下の禁固又は一〇万円以下の罰金)が課されるのみである。刑罰には制裁の意義と共に事実上履行を強制する意義もあるが、刑罰だけ、ことに一〇万円の罰金では履行強制の意義は無いに等しい。従って、履行を強制する手段として間接強制に準じた制度が導入されるべきである。さらに、相当の期間を経過した後に原状回復がなされても、団結権侵害の救済として十分でないばかりか、使用者に対する不当労働行為の抑止力としても不十分である。これでは団結権侵害に対する制裁としては十分といえず、団結権侵害を受けた労働組合や当該労働者に対する補償措置が必要である。
従って、確定判決違反の使用者に対しては、当事者たる組合又は組合員の申立に基づいて、事案の性質、内容、違反の程度などに応じ、団結権侵害に対する相当な補償金の支払を判決において命じうる制度を創設すべきである。
編集部・対談
イラク反戦運動の高揚について @
編集部・A 三月八日のイラク反戦集会は東京・日比谷で四万人、全国では四十
数箇所以上で五万数千人の参加になりました。これをどう評価するかですが。
編集部・B イラク反戦集会では二月十四日の全労連系の集会が二万五千と言われました。三・八はイラク反戦運動では国内最大の盛り上がりを見せました。これを主催した「WORLD PEACE NOW」実行委員会は、四七の市民団体やNGOによって構成され、二〇〇団体近くの賛同を得て開催されたこと、これらの団体が日常の活動のエリア、例えば平和・人権・環境・国際支援・文化芸術などの違いを越えて結集していることに特徴があります。
よびかけの仕方も従来の形態とは異なり、インターネットを駆使し、国内の市民団体はもとより外国系の人々とも連携して広めました。なんらかのイラク反戦の行動をしたいと考えている人はたくさんいる、それが参加する場所や方法がわからないだけだと確信して、メディアにたいする工作もさまざまに工夫され、実践されました。その結果、事前に集会が多くのメディアで報道されたし、新聞などの意見広告にも力を入れました。その上で会場も個人や初めての人が参加しやすいように、努力もされましたし、旧来の集会ではめずらしような、集会の英語と手話の通訳も用意するなど、工夫がこらされた。
編集部・A 日本の反戦運動が欧米の運動のようになぜ盛り上がらないかという議論も一部にありました。
編集部・B そういう議論は作家の辺見ら評論家に多いのですが、必要なのは解釈することではなくて現状を変革することだと思うのです。百の議論よりも百枚のビラをというスローガンを言ったことがありますが、それは原因を解明する努力が必要ないと言いたいのではありません。
私が作家の辺見の議論に組みしないのは、あれこれと運動の現状を批評しこと足れりとするのではなく、そうした現状を変革するために努力することが大切だと思うのです。辺見の言説にはいかに鋭いものがあっても、現実変革の努力へのまぜっかえしにしかすぎない日和見主義のニヒリズムを感じるのです。現実に三・八は四万人まできたではないか。昨年の反戦運動は二千人までいったのはなかった。これは国際的な運動と国内的な努力とが結びついた成果です。
編集部・A しかし、欧米の運動から立ち後れていた日本の運動のマイナスの特殊性はどこにあるのでしようか。
編集部・B いつかていねいに論じる機会があればと思いますが、簡単に言え
ば、第一に旧来の左翼を批判した新左翼がもっていた内ゲバ主義の問題。これは欧米の運動からみても異常に深刻なものでした。スターリン主義の党建設論とも関連する重要問題で、この結果、六十年代以降でも百名以上の人々が殺され、数千名の人々が傷つきました。これで日本の青年学生運動は大衆的基盤を失いました。
第二に、労働組合の右傾化です。総評の解体と連合の誕生を経て、日本の労働
運動は反戦運動にとりくむことが、ほとんどなくなりました。日本ではイラク反戦で全日建などわずかの組合だけがスト権を立てているという惨状です。
第三に、マスコミの第四権力化です。マスメディアの右傾化が急速に進行し、
人びとに正当な情報がはいりにくくなりました。
これらのマイナス要因を突破して、大衆的な反戦運動が立ち上がるのは容易ではなかったのです。今回、国際的な連帯をバネにこの壁を突破しつつあるのはすばらしいことです。
編集部・A 国際的な運動との連帯はどのようにすすめられていますか。
編集部・B 従来からの運動のさまざまな継続と合わせて、インターネット時代の反戦運動ということができるような気もするのは、例えば「WORLD PEACE NOW」のウェブサイトには英文版があります。これらを通じて米国のANSWERやロンドンのSTOP戦争連合などと情報の連携をします。従来から国際ボランティア活動をしていたグループや国際連帯活動をしていた団体にとっては当たり前ですが、日本の反戦市民団体が本格的にそうした外国の反戦運動と連携をとりはじめたことです。
特徴的だったのは二月十五日の全世界的な共同行動でした。世界で六百都市三千万とも、千数百万とも言われた、ベトナム反戦を超える大規模な統一行動の日、在日のさまざまな外国の友人たちが渋谷での行動に参加してきました。日本の運動で英語の通訳をつけたデモというのは珍しいものです。そうせざるをえないほど在日外国人の参加が多かったのです。先に触れたように、三・八集会も英語の通訳をつけました。
編集部・A これらの反戦運動に若者たちの参加が目立ちますね。
編集部・B そうです。高校生や中学生などの参加がありますし、二十代の若者たちの参加も多いです。ある友人は「かつては反戦運動はダサイとみられていたが、もはや反戦運動に参加するのがトレンディと思われる時代に入った」と言いました。そういいきれるのかどうかは別としても、明らかに変化があります。
朝日新聞の投書欄にでたものですが、「戦争いいの? デモで叫ぶ娘」という四八歳の主婦の投書です。渋谷の反戦デモに参加して「ハンバーガーを食べている人やショッピングしている人に、そんなことしている場合じゃないよと叫びながら歩いた高三の娘さんが、帰ってきて「たくさん集まっていたよ。外人さんも大勢きてくれて、反戦の絵をプリントしたTシャツもらったから着て歩いた」と報告する。その夜のニュースで「渋谷のデモは五千人」「フランスは二〇万人、イギリスは一〇〇万人」と聞き「やっぱり日本は少なすぎる!」三月八日に日比谷でまた反戦デモがあるから行こうと思っているんだと娘は話しています。よし、私も八日はとても忙しい日だけど行こう。夫も行くといいました。そうだ、みんなで行動をおこそう。その日、娘は本当にステキでした。という投書です。(つづく)
本
憲法再生フォーラム編 有事法制批判
岩波新書 740円
イラク戦争反対の声の高揚の中で、有事法制問題の進展について、見落とすようなことがあってはならない。すでに政府与党は予算案の衆議院通過を果たしたことにより、武力攻撃事態法案特別委員会の再開を野党側に申し入れ、昨年の臨時国会で廃案になった与党側の修正案を再度提出する方向で、強行突破も辞さない構えだ。
私たちも正念場を迎える有事三法案廃案をめざす運動の再構築のためにも、状況の分析力を貯えておく必要がある。
本書は活動家が改めて有事法制を批判するうえで、コンパクトで使いやすいものになっており、おすすめできる本だ。
この本は「憲法再生フォーラム」(代表ー小林直樹・暉峻淑子・高橋哲哉、事務局長ー小森陽一)という学者・研究者の組織が、研究会で議論されたことを、各執筆者がまとめたもの。
内容は、第一章・自由を捨てる選択をするのか(高橋哲哉)、第二章・なぜ、いま有事法制なのか(渡辺治)、第三章・有事法制のしくみと問題点ー戦後日本の有事法制はどのようにつくられてきたか(古川純)ー武力攻撃事態法案の仕掛けを診る(水島朝穂)、第四章・立憲主義の危機ー問題の核心は何か(小林直樹)ー立憲主義を壊す有事法制論(杉原泰雄)、第五章・私たちの暮らしに何がおきるのかー現実主義の末路(間宮陽介)ーわたしたちの生活はどうなるか(暉峻淑子)、第六章・有事法制によらない安全保障の道(水島朝穂)、第七章・「憲法」か「有事法制」か(加藤周一)となっている。
第五章で間宮は言う。「いまの日本の大きなパラドックスは、自由化と平行して、いや自由化の名のもとに、国家統制の全体化が進んでいることです。国家が土足で個人の領域に侵入することーこれこそ『全体主義』のもっとも確実な微表なのですから」と。
第六章で水島が引用しているドイツの平和人権活動家のK・ヴァクが一九九一年の湾岸戦争の時に出版した『たたかう平和主義』の中の次のような言葉は含蓄がある。
政治は別の手段による戦争の高尚な継続である。戦争だけが誤っているのではない。政治が戦争に通ずる時、この政治は今も昔も誤っている。一九九〇年八月二日(イラクのクゥエート侵攻)だけでない。一九九一年一月十七日(湾岸戦争開始)だけでない。その前から誤っていたのである。……政治は別の手段による戦争の高尚な継続だということをクラウゼビッツを読み替えて我々が確認する時、我々は、平和とは戦争が現実に存在しないこと以上のことを意味している事実に言及したかったのである。そして、我々は、政治過程が、国家内部の紛争にも平和的な手段によって解決されるように政治過程を組み立てることを主張したかったのだ。……この意味で、国家内部の政治も国家間の政治も民主的性格を必要とする。ローザ・ルクセンブルクが「自由とは常に、自分と違ったふうに考える人々の自由である」と述べたことは、社会内部だけでなく、社会間(国家間)
でも必要である。……平和を欲するなら、それは平和的手段によっ創出されねばならない。他の道はない。
私たちはあらためて有事三法案の廃案をめざす闘いの決意を固めなければならない。
複眼単眼
労働組合と市民運動と若者たち
「連合」が先日行なった一週間の労働相談で約千件の電話相談があったそうだ。東京新聞三月七日の記事によると、ある三十代の男性で残業は毎月百時間、支払われる残業代は三分の一か二。もうひとりの二十代の男性は百時間を超える残業で支払いは五〜二〇%。四十代のある男性は二十日連続出勤で残業は二百三十時間。労組は「がまんしてくれ」というだけ。三十代の男性の妻は「就寝中に夫がうなされ、このままでは夫が壊されてしまう」という。「心底、疲れ果てた。発作的に電車に飛び込むかも知れない」という人もいた。労働者の自殺が多い、ほんとうにイヤな社会だ。
こんな問題が放置されていて、何が労働組合かと思う。労働条件と命の問題に取り組まない組合なんか、「××食らえ」だ。しかし、言わせてもらえば、自分の労働条件のことだけやっていて、社会や世界の問題に取り組まない労働組合なんて、「××食らえ」の二乗だ。何が「前衛だ!」と思う。
労働組合への結集率が悪いとなげく前に、闘わない労組など存在価値がないのだ。労働者が闘わないのではない。地域で市民になって反戦運動や地域運動をいきいきとやっている組合員は少なくない。組合活動家は労働組合を作ることも、市民組織を作ることも、労働者を組織し、闘い、鍛える点においては遜色ないという観点に、切り替える必要があるのではないか。
最近、ある組合の幹部と話していて、うちの組合の若い人たちも「WORLD
PEACE NOW」のような運動だったらやるかも知れないとポツッというのを聞いた。そうだと思う。幹部が運動形態を伝統的なスタイルだけに固定しているのかも知れない。いたずらに若さにおもねる必要はないが、その感覚を知らなければ一緒に闘えないのではないか。おきまりの方法だけでなく、組合員の知恵と意欲を引き出してみる必要がある。
組合用語の「動員」という言葉は市民運動ではとても嫌われる。戦後の労働組合運動には戦争用語が多い。当時は戦地から帰ったばかりだったゆえか、それとも左翼自体が「戦争が好きだった」ゆえかは確かめていないが、組合運動には戦争用語が実に多い。特に「動員」という言葉は没主体性の好例とされ、嫌われる。こんな言葉は好きでなかった労働者でも、組合幹部になるといつしか使いだす。それが活動家としての一種のステータスになっているのかも知れない。動員で人を動かそうとする運動は民主主義に欠けるのだ。
市民運動を一緒にやっている若い仲間が、ある日、「最近、いろいろな人々がデモに参加するけど、三十代、四十代の男性の参加が一番少ないんですよね」としみじみ言っていた。そりゃそうだろうと思う。この年代層がこの資本主義の社会経済を支えている。家庭を支えている。会社でもまだ少しは上がある。頑張らなくてはならない、そう考えている層だ。これが運動にでてくるようになったら、この社会は根底から揺らぐだろう。
働いてボロボロになる道を選んではいけない。人間らしく闘う、魅力ある労働組合について考えようよ。 (T)