人民新報 ・ 第1102号<統合195> (2003年7月25日)
  
                                目次


● イラク派兵法、派兵恒久法反対!  侵略戦争の道か、北東アジアの共生の道か

● いくな!殺すな!死ぬな! WPNのイラク派兵法反対の行動

● 米国と英国の反戦団体が、この秋、国際共同行動を呼びかけ

● WORLD PEACE NOWがイラク派兵法反対で対防衛庁行動 自衛隊員の人権問題すら真剣に考えない防衛庁

● 憲法を空洞化させるイラク新法 平和フォーラムがイラク新法反対行動

● イラク特措法反対!自衛隊を戦場に送るな! 7・21 緊急デモ(渋谷)

● 日本共産党の綱領改定について   帝国主義論の否定と現体制の美化  /  橋本勝史

● 国を動かすのは市民社会だ  朝鮮半島と日本の市民の団結を

● 資 料  国の安全保障に関する緊急声明 / 新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会

● 戦争非協力、有事法制を発動させない運動を    埼玉ピースサイクル

● 複眼単眼 / 日米両国間のキシミ そして「国民の法に対する不信」




イラク派兵法、派兵恒久法反対!

  
侵略戦争の道か、北東アジアの共生の道か

 先の米英軍によるイラク攻撃に反対した世論に次ぐような状況で、日本社会の世論の多数は自衛隊のイラク派兵に反対している。国会の前には連日、市民や労働組合が駆けつけ、怒りと抗議の行動を続けている。デモや集会も連日、行なわれている。
 にもかかわらず、いま小泉政権はこの参議院で法案の可決を強行しようとしている。
 今回の米軍のイラク攻撃は、侵略戦争の常とはいえ、その虚構と悪辣さ、汚さにおいて最悪の類いに属するものとして侵略戦争の歴史に名をとどめるだろう。
 米英軍のイラク攻撃の口実とされたサダム・フセインによる「大量破壊兵器」の保有の問題で英国政府が行った証拠の捏造にかかわったとされた科学者、デービット・ケリーはとうとう自殺に追い込まれた。また米国政府が宣伝しつづけたイラクによる炭そ菌、ボツリヌス菌など生物・細菌兵器の保有という情報は湾岸戦争前にCIAが報告した文書の偽造だったことが明らかになった。イラクがニジェールから核兵器の原料のウランを五〇〇トン輸入しようとしたというニジェール政府文書は全くの偽造だった。
 こうして、昨年、パウエル米国務長官が国連で演説した際に配布した証拠文書、「欺瞞と反抗の一〇年」の根拠は今日ではまったく崩壊してしまった。
 前回の湾岸戦争ではクウェートに逃げてきた少女と、油まみれの水鳥がセンセーショナルに宣伝され、米軍支持のための世論づくりに貢献したがこれらは偽造だったことがすでに暴露されている。
 同様に今回も、たとえば「戦争のヒロイン」米陸軍上等兵のジェシカ・リンチの救出事件は国防総省のやらせだったことも暴露された。国防総省は「病院に敵兵がいない」もとでの「決死の救出劇」と、その後の味方同士の車両衝突事故での負傷を銃撃戦での負傷と宣伝した。
 こんなウソにまみれた宣伝をそのままに受け入れて、いち早くイラク攻撃を支持した小泉政権は、大量破壊兵器が発見されず、戦争の大義名分が失われたではないかと指摘されると「サダム・フセインが見つからないといって、サダム・フセインがいなかったことにはならない」という迷台詞を吐いた。
 そしてイラク派兵法を第一五六国会の会期延長部分で審議し、強行するという暴挙にでた。
 秋の臨時国会では内閣改造と解散という、党利党略の政局がらみの日程の都合で、短期間のうちにテロ対策特別措置法の延長を強行しようとしている。そのうえで、米軍の単独行動に個別の特措法では間に合わないとばかりに、恒久的な米軍(多国籍軍)支援・協力法をつくり、政府の判断で随時派兵できるようにするという国会無視の丸投げ法の上程をねらっている。
 いわゆるプログラム法の政策を持つ先の有事関連三法の肉付けのための有事関連五法案も、来年の通常国会では一括法案として提出されると言われる。
 加えて自民党はすでに「憲法改正のための国民投票法案」を与党協議にゆだね、協議が成立すれば国会に提出する構えだ。
 超党派のタカ派集団である「若手議員の会」は集団的自衛権の合憲性を明記する国家安全保障基本法案を準備しはじめた。
 そして来年の年末には憲法調査会が予定した五年の期限がやってくる。
 このままでは、ここ数年で朝鮮半島の緊張の問題を軸にした日本の進路をめぐる決定的な転換期が来るに違いない。
 これとの闘いを闘いぬくことができるかどうか、いま私たちに問われている。


いくな!殺すな!死ぬな! WPNのイラク派兵法反対の行動

 参議院外交防衛委員会でのイラク派兵法案(イラク復興支援法案)の審議が国会会期末の山場に差しかかった七月二〇日午後、東京・渋谷で市民団体のネットワーク「WORLD PEACE NOW」がどう法案に反対するピースパレードを行った。
 パレードにはアーミールックを着けて派兵反対を訴える十数人の若者たちや、「派兵より非軍事の医療・食料支援を」と訴えるナース姿の若者たちを先頭に六〇〇人の市民が参加し、思い思いに持ち寄ったカラフルなプラカードや衣装で、若者で溢れかえる休日の渋谷の街を元気にデモ行進した。パレードを見て飛び入りで参加する人びともいた。
 パレードに先立って行われた宮下公園での集会では、よろずピースバンドの相馬さんや、生田卍とSOSOによる演奏が行われ、主催者を代表して市民緊急行動の富山洋子さんが挨拶をし「国会の状況は厳しいが、あきらめずにイラク派兵法案に反対する運動を最後まで続ける」と決意をのべた。
 また韓国から来日した平和をつくる女性のための韓国調査センター所長の金貴玉さんが連帯の挨拶をし、「日本は民主主義国だと聞いていたが、それならどうして米国の侵略に加担して自衛隊がイラクに行くのか」と批判、韓国の民衆の運動を紹介しながら、日本と韓国の運動が連帯して平和のためにがんばろうと呼びかけた。
 イラクの市民への支援運動をつづけるジャミーラ高橋さんは「イラクの人びとの支援のために近く、市民組織をたちあげるつもりだ、今から準備してイラクに一緒にいきましょう」と呼びかけた。
 ジャーナリストの志葉玲さんも「イラクではいまでも戦争がつづいている、そういうところに自衛隊を派遣するなどはとんでもない」と発言した。


米国と英国の反戦団体が、この秋、国際共同行動を呼びかけ

 米国の反戦団体「インタナショナル・アンサー」は九月二七日と一〇月二五日の国際共同行動について、以下のような呼びかけを発している。九月二七日については、すでに英国の「ストップ戦争連合」なども呼びかけており、国際的な共同行動になる模様。

 九月二七日「占領と帝国に抗議し、パレスチナからイラク、フィリピン、キューバその他の抵抗者と連帯する界抗議行動デー」
 A・N・S・W・E・Rはニューヨーク、ワシントン、サンフランシスコ、ロサンジェルスその他多くの都市での全米大衆行動を組織しつつある。過去数十年の植民的占領に対するパレスチナ人民の抵抗が中東全体での反植民主義闘争の中心であり続けたが、九月二七日はそのパレスチナ人民の第二次インティファーダの開始の三周年記念日である。帝国に抵抗している全ての人びととの世界的連帯行動となるだろう。

 一〇月二五日「ペンタゴンに向けてのデモ行進 アメリカ軍国主義に反対して全世界は団結する」
 ペンタゴンに向けての国際行進が一〇月二五日に予定されている。これには全世界国ぐにから使節団が参加する。「アメリカ軍国主義に反対して全世界は団結する」というスローガンのもとでのデモはまた、社会保障制度の戦争装置による略奪と国内国外の労働者と貧窮者に対する悪意に満ちた攻撃を止めることを要求する。ペンタゴンに向かう我われの行進中、全ての大陸の国ぐにからの旗の波が、世界の人民に向かって乱暴狼藉を働くブッシュ政権の超侵略的“先制戦争”戦略に対する、全世界人民の抵抗をはっきりと示すことになる。ブッシュ政権はまた、きたるべき紛争で特に第三世界で使用することをはっきり意図して設計された新世代戦術核兵器の開発製造に着手することの承認を議会から勝ち取ったばかりである。行進は、この新しい核兵器競争の即時中止を要求する。一〇月二五日の週末は愛国法に署名した日の二周年記念日なので、我われは司法省前を出発する。
 ここでは全国からの市その他自治体の地方議会議員で非協力行動を始めた方がたが、それぞれの決議を印刷して配布している。このデモはまた、公民権や市民の自由への攻撃への政治的挑戦であり、アメリカおよび、新しい抑制的国家安全法を採択した国において抑制システムの拡張にたいする政治的挑戦でもある。我われのデモは司法省からホワイトハウスを経由し、そしてペンタゴンへ進む。この三つこそ真の「悪の枢軸」である。


WORLD PEACE NOWがイラク派兵法反対で対防衛庁行動

         
自衛隊員の人権問題すら真剣に考えない防衛庁

 七月一七日午後一時半から、反戦市民団体やNGOなどのネットワークである「WORLD PEACE NOW」実行委員会の呼びかけで、三〇人を超える市民が市ケ谷の防衛庁前に集まった。これらの人びとは「自衛隊の皆さん、イラクに行かないで!殺さないで!死なないで!」「私たちは自衛隊をイラクに行かせません」などの横断幕やプラカードをかかげて、防衛庁の職員や自衛官に対して、参議院で審議中の「イラク派兵法」に反対するアピール行動を行なった。
 午後二時からは今川正美衆議院議員(社民)とともに八名の代表団が、六項目にわたる「要請書」(本紙別掲)をもって防衛庁内に入り、防衛政策課の総括係長や防衛庁運用局衛生官付の医学博士など六名の防衛庁職員と話し合いを行なった。市民側の質問には劣化ウラン弾の問題が含まれていたため、衛生官付の医者も同席したようだ。
 この日の行動について、派兵の問題で市ヶ谷の防衛庁に直接、市民が入って抗議したのはこれが初めてだと取材に来た報道関係者も注目した。
 防衛庁側は市民の提起した六項目についてそれぞれ答えたが、それらは政府の国会答弁などでの防衛庁の回答の域をでるものではなく、出席者からは厳しい抗議の声があがった。今川議員も「ここに来た市民団体は、今回の法案で自衛隊がイラクで人を殺すことや、死ぬことを真剣に案じている。自分はこの間、自衛官の人権の問題に積極的に取り組んできた。そうした立場から見て、単なる一般的な回答は許されされない」と、叱責した。
 市民の側は「戦闘地域」「非戦闘地域」の「区別は固定されるものではなく、武装した米軍がいれば侵略者としてゲリラ戦による攻撃を受けるのだ。イラクでは武装した軍人がいるところが戦闘地域なのだ。自衛隊が武装してイラクに行けば、自衛隊がいるところが戦闘地域になるのは目に見えているではないか」と指摘し、「劣化ウラン弾の被害」の問題などについても、繰り返し追及した。その中で、このイラクの人びとや自衛官の生き死ににかかわる重要な問題で、防衛庁には事前のしっかりした調査も準備もないことが明らかにされた。「非戦闘地域の問題はこれから調査する。必ずあるはずだ」というようなレベルであり、劣化ウラン弾については、米国の言い分を鵜呑みにして、放射の被害と劣化ウラン弾の因果関係は証明されていないなどと説明するだけで、防衛庁には劣化ウラン弾への対策で、まともな研究体制や資料の蓄積すらない実態が暴露された。
 午後三時から門前で、要請行動の報告と七・二〇集会の成功に向けてのアピールが行なわれた。参加者は「自衛隊員にイラクの人々を殺させてもならないし、自衛隊員を死なせたくもない。防衛庁は隊員の人権を軽視している」と怒りを込めて発言し、イラク派兵法案の廃案を要求した。

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防衛庁長官・石破茂様

  イラクヘの自衛隊派遣に関する申し入れ

 貴職はいま、イラクに向け一〇〇〇名もの自衛隊を派遣しようとしています。これは日本が、安保理決議もなく大量破壊兵器の証拠もないままの不当なイラク攻撃を支持したのに続き、米英による軍事占領を支援するもので大きな誤りであると考えます。また派遣された自衛隊がイラクの人びとを殺傷したり殺傷されるおそれがあり、自衛官を含む人びとの生命、イラクやイスラム世界と日本との友好関係、そして国際紛争の解決に武力を用いることを禁じた日本国憲法にも重大なダメージを与えかねません。私たちはイラク特措法案に反対し、イラクには自衛隊を派遣するのでなく、国連および人道的国際機関やNGOと連携した文民による真に人道的なイラク民衆の支援を行うことを強く求めます。以上の立場から、貴職にお尋ねいたします。

 @、米英はイラク攻撃後、同国を占領下に置いています。国際法でも政府見解でも、占領は戦争の一部であり、交戦権の行使に該当することが明らかです。安保理決議一四八三も現状を「占領」と認め、実際にも「イラク全土は戦闘状態」(米軍司令官)にあります。このように戦争継続中の米英軍が統治するイラクに自衛隊を派遣し、その鎮圧作戦や占領行政を支援することは、国際法上も実体的にも参戦行為、占領加担行為となります。貴職は、国際法上の軍事占領と占領統治の意味、それへの支援行為をどのようにお考えですか。
 A、イラク特措法案は、自衛隊などは「非戦闘地域で活動」することになっていますが、イラクでは全土で戦闘が続き、毎日数十件の武力衡突が発生しており、米英軍でもいつ、どこで戦闘が発生するかまったく予測できていません。そんな中で貴職は具体的にどのように「非戦闘地域」を選ぶのですか。
 B、イラク各地では毎日のように米英軍と武装勢力との戦闘が行われ、双方に死傷者が続発しています。貴職は自衛隊は「武力行使は行わない」と言いながら、「戦闘行為とは国または国に準ずる者の間のもの」と限定し、自衛隊とイラクの武装勢力との戦闘は「戦闘行為」でも「武力行使」でもないとみなすかの答弁をくりかえしています。貴職は、占領軍に立ち向かう武装勢力または占領行政に抗議する市民は「国または国に嘩ずる者」ではないとして、白衛隊による武力行使、戦闘行為を認めるおつもりですか。
 C、もし自衛隊がイラク国民を殺せば、イラクを含むイスラム社会との歴史的な友好関係に深刻な亀裂が生じ、また自衛隊員が死傷すれば、本人はもちろん家族や日本の私たちにとっても大きな傷となります。自衛隊が米英占領軍の掃討・治安維持を支援することで生命が失なわれたら、貴職はどう責任をとられるのですか。
 D、貴職はイラク現地での自衛隊の支援活動の二一ズについてはこれから調査すると述べられていますが、イラク民衆が求めているのは医薬晶や飲料水、電力、自主的で信頼できる行政組織などによる安全な社会生活の再建です。それらの支援活動は、国連や国際機関、NGOなど経験豊かな中立的な文民が最も適切です。日本はそれらシステムの確立に協力し、それを通じて支援を行うべきだと思いますが、どうお考えですか。
 E、イラクでは、湾岸戦争や今回の攻撃で米英軍が使用した大量の劣化ウラン弾や一部地域でのイエローケーキの搬出・投棄による放射能被害が多発しています。放射能障害の治療について高い経験と技術を持つ日本は、その分野の医療支援こそ求められますが、自衛隊は放射能被曝者の治療・救援の能力を持っているのですか。また自衛官が被曝する可能性も少なくないと思われますが、その対策はどうするのですか。

二〇〇三年七月一七日


憲法を空洞化させるイラク新法 平和フォーラムがイラク新法反対行動

 七月一〇日、社会文化会館ホールで、フォーラム平和・人権・環境主催のイラク新法廃案集会が開かれ、市民・労働者約七〇〇人が参加した。
 はじめに主催者を代表して浅見清秀・平和フォーラム副代表が、イラク新法は憲法を空洞化させるものであり廃案にするためにがんばろうとあいさつした。
 民主党の小林守・衆議院議員<副幹事長>と社会民主党土井たか子党首があいさつ。土井党首は、自衛隊の派兵ではなく憲法にもとづいて人道支援こそが進められるべきだ、イラク特措法を阻止するために闘おう、と述べた。
 つづいて、前田哲男・東京国際大学教授、フリージャーナリストの志葉玲さんが講演した。
 集会を終わって参加者は国会に請願デモ。デモ参加者と国会議員は、衆院では通ってしまったが諦めずに国会の内外呼応した闘いで参院での廃案を勝ち取ろうとシュプレヒコールをあげた。


イラク特措法反対!自衛隊を戦場に送るな! 7・21 緊急デモ(渋谷)

 七月二一日、渋谷で、アメリカの戦争と日本の参戦を許さない!実行委員会(新しい反安保実Z)主催の緊急デモが行われ、約八〇人が参加した。
 集合場所の宮下公園での出発集会で、実行委員会の山本英夫さんが、米英のイラク戦争開始の理由付けがウソも明らかになってきた、国会会期終了は目前に迫っている、イラク派兵法案を阻止するために全力でがんばろうとあいさつした。


首切り容認判決をやめろ!  最高裁に抗議の行動

 この間の労働裁判では、労働者の闘いが地方裁判所で勝利判決をかちとっても、東京高裁や最高裁が、地裁判決を覆して使用者側の解雇権を認めるという不当な判決を出している。とりわけ反労働者的な判決を乱発させているのが東京高裁村上敬一裁判官だ。
 首切り自由を許さない実行委員会は、東京高裁村上裁判官を団結権否認の確信犯として、徹底的に批判し罷免する運動を展開し、また、最高裁には、まともな審議をさせ、高裁判決を追認することのないように要請してきた。

 七月一四日、最高裁に抗議する「あまりにひどいぞ裁判所!怒りの最高裁包囲デモ」(主催・首切り自由を許さない実行委員会)には五〇〇人(二七争議団、五市民団体)が参加して行われた。
 正午、社会文化会館前に集合。行動参加者は、不当判決を乱発する東京高裁村上裁判官の似顔絵に鎖をかけたり、その他多彩なプラカードをもって、最高裁に向けてのデモに出発した。「ふざけるな裁判所!」「村上はやめろ!」などのコールで最高裁包囲行動が闘われた。


日本共産党の綱領改定について 

        
帝国主義論の否定と現体制の美化
                                   橋本勝史
 
 日本共産党は、第七回中央委員会総会で第二十三回党大会で論議・決定する党綱領改定案を採択した。大会は十一月二十二日に召集されている(解散・総選挙の場合は延期するとしている)。
 共産党の現綱領の基本路線は一九六一年の党第八回大会で決定されたが、その後四回(一九七三年、七六年、八五年、九四年)にわたって綱領改定をおこなってきた。七中総に綱領改定案を提案した不破哲三議長は、綱領の正しさは「四十二年間の政治的実践によって試されずみだ」とした上で、これまでの改定は「いずれも、組み立ての全体を変えない範囲での部分的な改定」だったが、「今回は、二一世紀の新しい情勢の諸特徴とこの間の日本共産党の政治的、理論的な発展を十分に反映した綱領改定案をつくるように、全力をそそいだもの」だという。
 七中総における不破の綱領改定提案報告は、綱領改定案だけではわからない、今回の改定の意味をかなり露骨に表明している点で重要であるので、不破提案にそって、今回の綱領改定を見ていきたい。引用が多くなるがご容赦願いたい。
 今回の改定案は、帝国主義、独占資本などさまざまなマルクス主義のキー概念について変更が行われていて、様々な意見が共産党内外からでてきている。 今回の改定が共産主義の装いをいっそう薄くした右への大きな転換であることは明かであるが、それは、共産党六一年綱領を抜本的に変更しようとするものではなく、不破の言うように、六一年綱領の延長線上にあり、しかも、その必然的発展の一つの到達点となっているところに特徴がある。いま、日本は政治、経済、社会のすべてにわたってかつてない危機的状況を見せている。その資本主義の危機を「ルールある資本主義」づくりによって解決しようというのだ。こうした時にこそ、労働者、勤労人民そして世界の人びととともに、資本主義でない別の社会をつくりだす方針と希望を与えるのが、「共産党」という名の政治組織でなければならないのだが、今回の綱領改定で日本共産党はまったく逆の方向へもう一歩進んだ。
 改定綱領案の構成は、@戦前の日本社会と日本共産党、A現在の日本社会の特質、B世界情勢――二〇世紀から二一世紀へ、C民主主義革命と民主連合政府、D社会主義・共産主義の社会をめざして、である。問題は多岐にわたるがここでは、アメリカ帝国主義からの自立の問題、日本帝国主義・軍国主義の復活、天皇制、自衛隊、世界の情勢の見方(以上今回)、民主主義革命論、社会主義・共産主義の問題などについて触れていきたい。(文中敬称略)

戦後日本と日米安保条約
 
 「第二章 現在の日本社会の特質」で、戦後日本の特徴を、「独立国家から従属国家への転化」「天皇専制から主権在民への政治制度の転換」「半封建的な地主制度の解体とその影響」の三点にまとめている。
 不破は言う。「対米従属の状態におちいったこと」の根幹には、日米安保条約という軍事同盟にあるが、「この従属国家の状態から真の主権独立国家に転換するということが、今日、日本が直面する最大の国民的課題」だとして、これを、「日米安保条約を条約第十条の手続き(日本政府が廃棄の意思をアメリカ政府に通告する)によって廃棄し、対等・平等の立場にもとづく日米友好条約を結ぶ」ことによって解決するとしている。
 六一年綱領、その発展としての人民的議会主義路線にもとづいて、議会における多数派を形成し、政府として破棄通告をおこなうというものだ。

「経済進出は危険でない」

 また日本独占資本主義と日本政府の対外活動の問題について次のように述べる。「私たちは、これまでの綱領では、日本の独占資本主義が独占資本主義として復活・強化してゆけばゆくほど、その活動が帝国主義的な特徴、性格を強めてゆく、という見方に立っていました」。
 たしかに六一年綱領は、「日本独占資本は、……経済的には帝国主義的特徴をそなえつつ、軍国主義的帝国主義的復活のみちをすすんでいる」としており、現綱領でも「日本独占資本は、……アメリカの世界戦略にわが国をむすびつけつつ、軍国主義、帝国主義の復活・強化の道をすすんでいる」としている。
 だが、この規定は現状に合わないので変えるという。「実際、アジア諸国が、日本の対外活動について警戒の目を向けているのも、日本の大企業の経済活動ではなく、軍国主義の復活につながる日本の対外活動であります。大企業・財界の対外的な経済進出にたいしては、そのなかの問題点について、個々の批判はあっても、対外進出そのものについての批判や告発はありません。これは、偶然ではありません。現在の世界の政治・経済の情勢のもとでは、独占資本主義国からの資本の輸出、即『経済的帝国主義』とはいえない状況が展開しているわけです」。アジアの支配階級が、日本の商品・資本を「歓迎」しているから、帝国主義ではない、とする。それも、いま日本は、経済力を背景に、防衛予算世界第二位の軍事大国に突出している時期に、独占資本の「経済]進出はアジア諸国人民に危険がない、と断言する。これは日本帝国主義を美化する以外のなにものでもない。

「日本は君主制ではない」


 つぎに「天皇制」について。 戦後の第二の変化は、「政治制度の転換」で、「天皇主権という専制政治に終止符がうたれ、国民主権の原則が憲法に鮮明にされました。これは、日本の政治制度の大転換をなし」た。このことによって、「国民の多数の意思にもとづき、国会を通じて、社会の進歩と変革の道を進む」という議会主義の道が、「日本の政治史上はじめて、制度面で準備されることになった」としている。とくに「形を変えて天皇制の存続を認めた天皇条項は、民主主義の徹底に逆行する弱点を残したものだったが、天皇は『国政に関する権能を有しない』ことなどの制限条項が明記された」ことが重要だとしている。
 天皇制について、六一年綱領は「戦前の絶対主義天皇制は、侵略戦争に敗北した結果、大きな打撃をうけた。しかし、アメリカ帝国主義は、日本の支配体制を再編するなかで、天皇の地位を法制的にはブルジョア君主制の一種とした。天皇は、アメリカ帝国主義と日本独占資本の政治的思想的支配と軍国主義復活の道具となっている」としていた。しかし、不破によると、よくよく「憲法の天皇条項を分析すると」、「主権在民の原則を明確にしている日本は、国家制度としては、君主制の国には属しません。せまい意味での天皇の性格づけとしても、天皇が君主だとはいえない」ことが<発見>された。「実際、憲法第四条に『天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない』ことを明記して」あるから、大丈夫、問題ではないという結論に達する。憲法に主権在民の規定があるからという理由だ。法律の文言にそれがあれば、それがすべてだというのだろうか。そもそも、戦後の日本国家体制は、敗戦にあたり降伏する条件として、日本支配階級は、軍部の一部にすべての責任をなすりつけ犠牲にして天皇制すなわち旧支配体制を存続させたのであり、かれらにとって基本的に「国体は護持」されたのである。そして、日本国憲法には、平和・主権在民などとともに、天皇条項が組み込まれたのである。そして、反動勢力は天皇を有効に活用してきたのであり、その権限の拡大、イデオロギー的復活を執拗に推し進めてきた。共産党は、元号、日の丸・君が代の強制、昭和の日などが法制化される今日、六一年綱領の規定すら抹殺しようとしているのである。これに、日の丸・君が代闘争からの逃亡、また二〇〇一年の雅子出産時の国会「賀詞決議」への賛成などに明らかなようにすでに既定の路線となっている。

「当面」自衛隊は容認

 自衛隊について、六一年綱領は「日本の自衛隊は、事実上アメリカ軍隊の掌握と指揮のもとにおかれており、日本独占資本の支配の武器であるとともに、アメリカの極東戦略の一環としての役割をおわされている」が、改定案では「日本の自衛隊は、事実上アメリカ軍隊の掌握と指揮のもとにおかれており、アメリカの世界戦略の一翼を担わされている」となり「日本独占資本の支配の武器である」という規定がなくなる。軍隊の階級性規定が消えたのだ。すでに、第二十二回党大会(二〇〇〇年)で、自衛隊問題の段階的解決として三段階論(安保条約廃棄前の段階、安保条約を廃棄して軍事同盟からぬけだした段階、国民の合意で憲法九条の完全実施にとりくむ段階)をだしているが、当然の自衛のための軍隊保持は当然だとして容認論を進めた。

「帝国主義論は旧い」

 つぎに、世界情勢について。ここも大幅に変更されたところである。二〇世紀に達成されたものとして「植民地体制の崩壊」「各国の政治体制として国民主権の民主主義の流れ」「国際連合の結成」三つの変化をあげている。旧植民地は政治的に独立をかち取ったとしても、資本主義世界の国際関係のなかで、先進国に従属・搾取される構図を見ず、国民主権の民主主義の流れが生産関係・社会体制と関係なく美化されているが、とくに、レーニン「帝国主義」論を時代の変化を口実に否定している点が重要である。
 レーニンは帝国主義を、「独占体と金融資本との支配が形成され、資本輸出が卓越した意義を獲得し、国際トラストによる世界の分割がはじまり、そして最大の資本主義諸国による地球の全領土の分割が完了した、そういう発展段階の資本主義」と規定したが、不破は「二〇世紀の後半に、世界情勢には、この点にかかわる巨大な変化が進行しました。すでに見たように、植民地体制が崩壊し、植民地支配を許さない国際秩序も生まれました」という。「植民地そのものがなくなってしまったのです。それだけでも時代は大きく変化しました。こういう時代ですから、資本の輸出なども、以前のような、経済的帝国主義の手段という性格を失ってきています」とする。アジア諸国では日本の軍事的侵略は脅威だが、経済進出は、まったく危険性のないものということがレーニン帝国主義論否定の「理論的な」文脈のなかでも繰り返されている。
 そして言う。「独占資本主義というのは、独占体が中心ですから、独占体に固有の拡張欲とかそれを基盤にした侵略性とか、そういう性格や傾向を当然もっています。しかし、今日の時代的な変化のなかでは、それらが、植民地支配とその拡大とか、それを争っての戦争などという形で現れるという条件はなくなりました。そういうときに、すべての独占資本主義国を、経済体制として独占資本主義国だから、帝国主義の国として性格づける、こういうやり方が妥当だろうか。この点は、根本から再検討すべき時代を迎えている」と。
 しかし、現実の資本主義世界には多くの問題があることは否定し得ない。
改定案でも「現在、資本主義世界がぶつかっている諸矛盾」を七つの代表的な項目(「広範な人民諸階層の状態の悪化、貧富の格差の拡大、くりかえす不況と大量失業、国境を越えた金融投機の横行、環境条件の地球的規模での破壊、植民地支配の負の遺産の重大さ、アジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカの多くの国ぐにでの貧困の増大」をあげ、「その一つひとつが、二一世紀に資本主義の体制の存続の是非を問うような深刻な内容をもって、進行しているのです」として、「巨大に発達した生産力を制御できないという資本主義の矛盾」の現れとしてとらえる。例えば環境問題をあげて「今日の資本主義にこれを解決する能力がないとしたら、それはまさに、資本主義が地球の管理能力を失っているということの証明にほかなりません。同じような深刻さが、ここに代表としてあげた七つの矛盾のすべてに現れています」と言っているのである。だが、資本主義の体制の存続にかかわる問題ではあるが、その解決は、資本主義・帝国主義体制を革命するのではなく、あくまで資本主義体制の枠内で解決すべきものされる。資本主義そのものによってうみだされ解決不能の状況にたち至っているのであるならば、その解決は体制変革以外にはありえない。それが、なんの根拠もなく、社会主義革命ではなく、民主主義革命(資本主義体制内での改革)とされる。その任に日本共産党があたるというわけだ。
 しかし、帝国主義という規定を全くなくすわけではない。「党の綱領で、ある国を『帝国主義』として告発するのは、どういう時か?」として「党の綱領というのは、経済学の文献ではなく、政党の政治文書であります。その綱領で、ある国を『帝国主義』と呼ぶときには、それは独占資本主義にたいする学問的な呼称だということではすまないのです。『帝国主義』という呼称には、その国が、侵略的な政策をとり、帝国主義的な行為をおこなっていることにたいする政治的な批判と告発が、当然の内容としてふくまれます」とし、「最近でも、イラク戦争の問題をめぐって、独占資本主義国のあいだで、先制攻撃戦争という道に国連無視で踏み出したアメリカ、イギリスと、これに反対するフランス、ドイツが対立しました。この対立を、帝国主義陣営内部の対立、矛盾と見てすむか、そうではなくなっているというところに、世界情勢の今日の変化があるのではないでしょうか」と、アメリカ、イギリスとフランス、ドイツの対立は「帝国主義間矛盾ではない」とする。そしt、アメリカの政策を変えれば帝国主義でなくなるとする。当然、日本は帝国主義ではない、復活さえしない。ただ、イラクなどの問題でアメリカの政策に従っているから悪いだけだ、と。

六一年綱領路線の行き着くところ


 天皇制の問題、アメリカ帝国主義の問題、自衛隊の問題、国際情勢とレーニン『帝国主義論』について、見てきた。共通するのは、憲法、安保条約などの条文を「変革」の根拠とすることだ。ここには、階級的な力関係についてのマルクス主義的な観点は全く欠落し、すべてが投票箱に集約される。アメリカ帝国主義、日本独占資本、自衛隊幹部が、かれらの死活的な利権の放棄をだまっておこなうと仮定してでもいなければ、こうした「分析」はでてこない。
 法律にどう書いてあろうと、憲法がどのように規定していようとそれは、支配階級にとっては大きな問題ではない。かれらは、憲法九条で禁じられ、吉田内閣時代には戦力をもたないとしていた。支配階級は、朝鮮戦争に乗じて、警察予備隊は警察力を補助するものとして再軍備に乗り出し、戦車も当初は「特車」だと強弁しながら、今日、世界第二位の軍事予算をもつ超級の軍隊をつくりあげた。
自衛隊の海外派兵についても、すこし前までは国連活動の一環という理由だったが、今回は国連の名前もなしに、イラクに派兵を強行するまでに至っている。天皇制の「復活・強化」でも同じだ。先にもふれたが天皇制、日の丸・君が代攻撃への屈服、アメリカへの「合法的」安保条約破棄通告論、そして三段階論によって、当面(いつまで続く?)の自衛隊容認論となっている。
 このような安保・自衛隊容認論は、ひと昔前の社会党の右傾化の後を追うものである。当時の社会党の右傾化は、総評解体とあいまって、中曽根流の「戦後政治の総決算」を許すことになった。その結果として、社会党政権は近づくどころか(村山政権は労働者・勤労人民大衆にとってどんな積極的な意味があったのか)、自らの解体と大部分の民主党への吸収となった。その民主党は、有事法制に賛成に回るなど第二保守党の性格をあらわにしてきているのである。
 今回の綱領改定に現れた「新」路線は、六一年綱領路線の延長にある。
 だが、それが不破路線が全面的な開花し(今回の綱領改定は不破の遺言とも言うべきものだ)、そして宮本段階が完全に終焉を迎たということである。 (つづく)

     


国を動かすのは市民社会だ

      
 朝鮮半島と日本の市民の団結を

  「北東アジアの平和と非核化のために」と題する日韓平和集会が七月二一日午後、東京・御茶ノ水の総評会館で開かれ、約一三〇名の参加者を前に、韓国の「平和をつくる女性のための資料センター」代表の金貴玉さんらが発言した。
 弁護士の海渡雄一さんの主催者あいさつのあと、金子勝・慶応大学教授が「イラク攻撃は大量は会兵器が見つからないことで、ウェポンズ・ゲート事件化しつつある。イラクではゲリラ戦が行われている。この戦争は長期停滞に陥った世界経済をさらに奈落の底に陥れつつある。ウォーターゲート事件との違いは、日本もその戦争の当事者だという点」と指摘した。
 梅林宏道・ピースデポ代表は「核兵器こそ大量破壊兵器だということを忘れるな。米国はいま『O―PLAN五〇二七』というタイ北朝鮮作戦を実行中だ。従来の核抑止論が、核戦争の危機を生み出したのだ。米軍主導の東北アジア安保構造から、市民主導の安全保障構想への転換が必要だ。そのなかに東北アジアの非核地帯化構想を位置付けなくてはならない」と述べた。
 金貴玉さんはつぎのように述べた。
 朝鮮半島は南北に分断され、そのうえに戦争まであった。まだ多くの人びとが傷ついている。だからこそ再び戦争を起こしてはならないという思いは強い。イラク戦争のはじまった日、ソウルでは数戦の人びとが自主的に集まってきて、「戦争反対、平和実現」のスローガンを叫んだ。
朝鮮半島では、米軍が戦争を起こそうと思えばいつでも戦争を起こせる状態にある。朝鮮半島の和解と統一は南北朝鮮だけでは不可能なのだ。しかし、売国は鮫のように巨大だが、秋刀魚でも何千何万と集まれば勝てると思う。
 第一に、朝鮮半島の非核地帯化、北東アジアの非核地帯化の課題がある。これは私達の生き残りをかけた問題だ。
 第二に、この問題での日本の位置の重要性の問題がある。昨年の九・一七声明は私たちにとって、不満は残ったが、日本が自主外交に踏み出したものと受け止められ、歓迎された。しかし、金正日談話から逆流が生じた。日本の支配層は朝鮮戦争のときのように、また危機を利用して大もうけしようとしているのではないか。
 ポスト冷戦と言われるが、朝鮮半島は冷戦の構造から脱していない。この問題の解決には、朝鮮半島と、日本の市民が団結する以外にない。アジアの問題はアジアの人びとの手で、と言いたい。国家を動かすのは市民社会だ。ノムヒョン大統領を生み出す闘いの中で、わたしたちはこのことを強く感じた。


資 料

 国の安全保障に関する緊急声明 
/ 新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会

 自民、民主、公明、自由、新保守各党の若手の右派議員で作る「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」(代表委員は武見敬三参院議員、事務局長は岩屋毅衆院議員で、石破茂防衛庁長官や民主の前原誠司衆院議員なども参加。自民六〇名、民主三〇名、公明三名、自由三名、保守一名はか、計一〇三名)は六月二三日、国の安全保障に関する緊急声明を出した。きわめて危険な内容なので紹介する。(編集部)
 
 北朝鮮は先の「日朝平壌宣言」での合意事項を遵守していないばかりでなく、その後も国際機関による核査察の一方的拒否、それに引き続く「核拡散防止条約」からの脱退、さらにはミサイル発射実験の実施、加えて核兵器開発の言明など、再三にわたって挑発的行為を繰り返し、我が国ならびに北東アジア全体の平和と安定にとって極めて深刻な脅威となっている。
北朝鮮が保有しているとされる使用済み燃料棒8000本からは7〜8個ほどの核兵器開発に要するプルトニュウムが抽出可能だとされており、見方によれば、既に1個から2個の核爆弾が製造されているとも言われている。
 我が国の全土を射程内におさめる弾道ミサイルを配備している北朝鮮が、核兵器をはじめとする大量破壊兵器を保有することは、我が国の国民の生命と財産が常時、北朝鮮の軍事的脅威にさらされることにほかならず、断じてこれを容認することはできない。
我が国はこれらの軍事的脅威を抑止し、阻止するために粘り強く外交努力を継続するとともに、あらゆる防衛上の対策を早急に講じるべきである。
以上の考え方に基づき、我々は以下の諸点を政府に対し、強く要望する。
1. 北朝鮮の核開発は断じてこれを容認せず、また、これを容認しようとするあらゆる提案を断固拒否すべきこと。
2. 米中朝の協議に一刻も早く我が国と韓国を参加させる枠組みを作ること。
3. ただちに導入可能な弾道ミサイル迎撃のための装備を配備するとともに、米国と共同研究中の「ミサイル防衛構想」の実現を急ぐこと。
4. 時代に応じた「専守防衛」の考え方を再構築するために、これまでの国会
答弁でも容認されているように、我が国に対する攻撃が切迫している場合等、必要最小限の相手基地攻撃能力」を保有することができるようにすること。
5.「集団的自衛権」についてのこれまでの政府解釈を見直すことを前提に、いかなる場合にそれが行使可能かについての研究を開始すること。


戦争非協力、有事法制を発動させない運動を    埼玉ピースサイクル

 七月一四日梅雨がまだ明けず、降ったり止んだりの中ミニピースが午前10時、八高線丹荘駅前を出発。ここで二ルートに別れ、自治体訪問七ヶ所を回った。夕方には群馬ネットとの引継ぎを県境の刀水橋で行った。
 一五日は雨も上がり本実走が行われた。計画では四ルートであったが、蓮田コース参加者が今年は準備が整わず中止となった。
 熊谷、寄居、浦和コースで自治体訪問九ヶ所東電一ヶ所を実走した。各コースとも東松山市役所で合流し、丸木美術館に結集した。
 県庁を訪問した参加者の報告では通年であれば県議員、職員が拍手で出迎えるはずだったのが、今年は土屋県知事の政治献金事件でマスコミが押しかけており、それどころではなく、マスコミには「なんだ自転車か」といわれる中、要請を行ったと話していた。
 他の自治体の町長からは何を訴えているか分かるよう自転車にもっと目立つように工夫したらどうかと励ましの言葉もあった。
 丸木美術館では各コースの報告と三多摩への引継ぎを行った。交流会は場所をかえ、国労熊谷支部事務所で五時すぎまで行われた。
 今年のピースサイクルスタート会議が三月に開かれた頃は、有事法案反対を掲げていたが、今ではイラク派兵法が国会審議されている。来年明けには「国民保護法」「米軍支援法」「自衛隊支援法」「国際人道支援法関連法二法」など五分野の法制を有事関連法制として国会へ一括提出予定とされている。
 戦争法を恒常化させる動きに反対し、戦争非協力運動、有事法制を発動させない運動を職場、地域で作り出すことは急務なことであり世論へのアピールが一層必要となってきている。 (埼玉通信員)


複眼単眼

  
 日米両国間のキシミ そして「国民の法に対する不信」

 小泉首相の類例をみないほどの対米追従ぶりにそのひずみがさまざまに顕れてきた。
 イランの原油開発への投資に米国が「イラク復興支援の結果、イラクから輸入すればいいではないか」としてマッタをかけた。しかし、日本政府としては安定的に原油を確保するというエネルギー政策上、輸入先はできるだけ多方面にしておきたいわけで、これがイランを「悪の枢軸国」と規定するブッシュ政権のカンに触ったわけだ。
 日本政府は米国の「二千個のブーツ派遣」の要求にしたがって、イラク派兵法を急いでいるが、憲法や従来の政府答弁などとの関連で、国会対策上は派遣部隊の活動は「非戦闘地域」での輸送支援などに限ると言わざるをえない。「安全地域における給水活動」などをするという政府の見解に、米政府高官は「そんなの間に合っている。もっとちゃんとした占領米軍支援活動をやれ」とどう見ても危険地域と思われる地区への自衛隊の派遣を要求した。
 これにカチンときたのが衆院のイラク復興特別委員長の高村正彦元外渉だ。高村派の総会で次のように発言した。
 「(イラクへの自衛隊の派遣について)米国の占領下で作られた憲法のもとで自衛隊を(事実上の戦場であるイラクに)出すことがいかに大変かを、米国にも理解してほしい」 「憲法は幸か不幸か、世界でもっとも改正しにくい規定をもっているという現実があるなかで、私たちはたいへんな努力をしてい自衛隊を送るんだということを理解してほしい」 高村特別委員長も大変だろう。拡大解釈に拡大解釈をつづけ、およそ合憲の域からは説明もつかないほど遠く離れた政策展開をしてきたのに、米国はこれでもか、これでもかと図に乗って要求してくるのだから。法案はやっと衆議院を通過させて、いま参議院の大詰にきているところで、人の気も知らないで勝手なことを言ってくれるなと言いたいところなのだ。
 七月九日の参議院憲法調査会で自民党の椎名一保委員は解釈改憲の問題についてこういった。 「九条二項は文面どおり中学生のような目で読めば自衛隊は憲法違反だ。この間、無理に無理をかさね、木に竹を継ぐような憲法解釈でやってきた。こうした不誠実な状態が国民の法に対する不信を助長している」
 それはそうだが、椎名さんよ、待ってくれ。一体、どの党がそのような法に対する不誠実な政治をやってきたというのか。あんたはいったい、どこの党員なのだ。無責任な言動はやめてほしいものだ。ブッシュは国連憲章や各種の国際法を無視して戦争を行い、小泉政権も「ポチ・ジュン」と揶揄されるほど従順に、国際法や憲法を無視してこの米国を支持し、協力する。これが「国民の法に対する不信を助長している」のだ。(T)