人民新報 ・ 第1107号<統合200> (2003年9月15日)
  
                  目次

 ● 戦争遂行協議のためのブッシュ訪日と日米首脳会談  イラク派兵と「復興資金」支出反対!

 ●  マスコミがあおる自民党総裁選挙  「戦争をする国」実現へのセレモニー

 ● イラク反戦運動のなかで考えたこと / 金曜連続講座で高田健さんが講演

 ● 脱WTO草の根シンポジウム

 ● 国鉄闘争・鉄建公団訴訟闘争  原告団・家族が新宿駅前で座り込み 

             駅頭大宣伝で歌われた田中哲朗さんの詩

             違法・不当な査問委員会の解散を求める意見書

 ● 教基法改悪阻止へ九月地方議会に陳情を  すでに約三〇〇自治体が反対を決議

 ● 図書 / 岩波ブックレット <民間人も「戦地」へ〜テロ対策特別措置法の現実 > 吉田敏浩・著

 ● 複眼単眼 / 第4権力化するマスメディアの動きとその背景




戦争遂行協議のためのブッシュ訪日と日米首脳会談

               イラク派兵と「復興資金」支出反対!


 小泉内閣が一五六国会終盤でしゃにむに成立させた「イラク特措法」による自衛隊のイラク派兵は、イラクやアラブの民衆の抵抗運動などで暗礁に乗り上げている。「戦闘は終わった」との日本政府の言明にも関わらずイラクの内戦状態は依然、つづいている。
 日本政府の動揺を見て、米国のアーミテージ国務副長官が「逃げるな」といい、「(自衛隊の活動地域については)できるだけ安全な地域を考えているが、お茶会ではないので、まったく危険がないとはいえない」と発言し、日本政府の決断を要求した。
 この恫喝にふるえあがった日本政府は、急遽、先のばしになっていた岡本行夫首相補佐官のイラク派遣を実行し、九月中旬からは政府の現地調査団を派遣することを決めた。それでも自衛隊本体の派遣は時間的に考えて年内には無理だと言われている。
 小泉首相は七月のイラク特措法の議論の時には「自衛隊を出せるということで、出さなければならないわけではない」などと言っていたのに、今回は「イラク支援に日本はひるんではならない」などといい、自衛隊幹部にたいして「困難な任務にも十分対応できる心構えをもって周到な準備をせよ」と指示した。報道によると、この日本政府の対応に不満な米国は一〇月十七、十八両日にブッシュ大統領が来日し、日米首脳会談をする方向で準備にはいっているという。ブッシュ大統領は二十日、二一日にバンコクで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議の際に立ちよるのだといわれている。二三日、二四日にはスペインで「イラク復興支援会議」が開かれ、支援負担の問題が協議される予定になっている。
 さらに十月末にはネオコンの中心的な人物、ラムズフェルド国防長官が訪日・訪韓し、北朝鮮問題、イラク復興支援問題、駐留米軍の再配置問題などで協議にくる予定だといわれている。
 首脳会談では、すでに両国政府の調整で自衛隊のラク派兵問題と米国のアフガン、イラク戦争の経費の負担の問題などが議題になる方向と言われる。九日、ライス大統領補佐官は「イラク復興」に巨大なコストがかかることから「同盟国に協力を求めている」とのべ、日米首脳会談でもこれが主要な議題になるとの見通しを語っている。また米国務省関係者は「イラク、北朝鮮情勢の緊迫化に伴い、『強固な日米関係を誇示する』のが首脳会談の目的だ」と表明した。
 すでにブッシュ大統領はアフガン、イラク戦争と「復興支援」の費用として、議会にたいして来年度の補正予算に八七〇億ドル(一〇兆二千億円)を要求し、その「読み違い」が議会民主党だけでなく、共和党内からも厳しい批判に見舞われ、窮地に立たされている。米国の財政赤字は戦費の膨張などで二年連続で過去最大を更新し、今年は五千億ドルを突破する状況だ。ブッシュ大統領としてはこのイラク戦争の費用の分担を直談判で日本政府に押しつけることで、国内の批判を回避しようとしているのだ。十月七日、ブッシュ大統領は「(イラク復興支援の財政負担について)欧州、日本、中東は貢献すべきだ」などと、日本だけ具体的な国名をあげて要求した。「復興経費」だけで五〇〇億ドルから七五〇億ドルが必要と言われており、うち三〇〇億ドルは米国以外の負担と考えられているという。日本政府にたいする負担要求は「少なくとも二兆円を超えるだろう」と言われる。湾岸戦争当時、日本政府は九〇年度補正予算を組んで、米国の戦費負担と周辺国支援のために一兆八千億円を拠出した。それでも米国から日本は「血を流さない」と批判された。今回のアフガン、イラク戦争への自衛隊の派遣はまさにこの「湾岸戦争後遺症」の日本政府が人的にも「貢献」しようとしたものだが、米国はその程度の「協力」では許さなかった。今回の日米首脳会談で、日本政府は湾岸戦争当時よりも国家財政は悪化し(日本の国家財政赤字は年間比で約六倍)、経済も後退しているにもかかわらず、当時以上の資金拠出を要求されるのだ。これでもなお小泉首相がこのブッシュの法外な要求を受けれるであろうことは火を見るよりも明らかだ。
 米英軍などのイラク攻撃の誤りはすでに明らかだ。正義は占領に反対するイラクの民衆の側にある。小泉内閣はこの米軍のイラク占領を支援し、自衛隊を送ることによってイラクの民衆と全アラブの人びとに敵対しようとしている。加えて次期臨時国会では、アフガン特措法の延長をはかることで米軍のアフガン占領支援も継続しようとしてる。
 小泉内閣の戦争政策を絶対に許すことはできない。

 米英軍のイラク占領反対!
 自衛隊をイラクに送るな!
 自衛隊員はイラクの人びとを殺すな!
 自衛隊員は死ぬな!


 マスコミがあおる自民党総裁選挙

        
 「戦争をする国」実現へのセレモニー 

 九月二十日投票の自民党総裁選が告示された。これには現総裁の小泉首相のほか、亀井静香元政調会長(江藤・亀井派)、藤井孝男元運輸相(橋本派)、高村正彦元外相(高村派)が立候補している。マスコミは盛んにこれに関する報道をたれ流している。
 この総裁選挙の結果によって衆議院総選挙の日程などに多少の変動が予想されるが、いずれにせよ来夏の参議院選挙までには総選挙も行なわれるに違いない。見逃すことができないのは、これらの国政選挙を通じて、政治の右翼的な再編成がいっそう進む情勢にあることだ。
 今月末にも召集されるだろう臨時国会では、小泉内閣は十一月で期限切れとなる「テロ対策特別措置法」の延長を提案し、ひきつづき米軍などのアフガン軍事占領に積極的に加担する政策をすすめようとしているし、この国会末の衆議院の解散も濃厚だ。
 政府・支配層は米国のブッシュ政権による単独覇権戦略のもとで不安定さを増大させつつある世界と、朝鮮半島問題を軸に激動する東アジア情勢に対応するため、この総選挙を通じて、自民党など与党の勝利と、社民党や共産党の一層の後退と、民主党の右シフトの推進を期待している。その延長線上に05年から06年にかけて憲法改悪を実現し、「平和憲法」にトドメをさし、長期の願望であった戦争遂行可能な国家づくりを完成させようとしている。この意味で今回の自民党総裁選挙は彼らにとって必要な過程であり、この国の政治の一層の右傾化のためのセレモニーとして位置づけられることになった。
 今回の総裁選挙では、現下の未曽有の長期不況のもとで、産業界をはじめ各界から不満が沸き起こっていることに対して、自民党内の各派がそれぞれ政策を発表し、政策論争を行なう形になってる。しかし、不況にあえぐ経済対策としての名目経済成長率の目標値の設定や、「経済構造の改革」の推進について、実はマスコミを通じて喧伝されるほど各候補者のあいだに確たる対立がないというのが実態だ。
 アメリカのグローバリズムによる世界戦略を容認し、追従する立場をとる支配層にとって、いかにその経済・財政政策が多くの不満を醸成しつつあるにしても、政策選択の幅はあまり大きくないのが実態なのだ。総裁選挙のセレモニーはいくらかの政策選択の幅を示すことで、人びとの不満の一時的なガス抜きと自民党への求心力を生み出すための演出の役割ははたす果たすだろう。
 危険なことに、この総裁選のなかで、よりいっそうの改憲シフトの強化が図られているということだ。
 すでに先月末、小泉首相は05年の自民党結党五〇周年に向け、自民党の改憲案の作成を山崎幹事長ら党幹部に指示し、改憲のための国民投票法案の策定も推進することを表明した。
 来年の通常国会では先の有事三法の具体化のための「国民保護法制」など有事関連五法案が審議されるのは間違いない。これらの法案は「国民保護」などという名に隠れて、「国民」を戦争に全面的に協力させる法案であり、自衛隊のより円滑な戦争体制づきりを可能にし、米軍の戦争にスムーズに協力する法制であり、戦時における捕虜の扱いなども定めるためのものだ。同時に改憲のための手続き法案や、自衛隊の恒常的な海外派兵を可能にするための「恒常的派兵法」や、集団的自衛権の合法化のための「安全保障基本法案」なども企てられている。
 これらの流れにたいして、亀井、藤井、高村の各候補は小泉首相と決定的に対立しているわけではない。極右民族派の石原慎太郎都知事の支援を受けている亀井候補は「二年以内に憲法改正試案を作成し、三年以内に国民投票を実施する」としている。藤井候補は「教育基本法」の改悪をかかげ、高村候補は五年以内の国連常任理事国入りと北朝鮮問題への強硬派の立場だ。四候補ともに、この間の政府・与党が推進してきた危険な路線=戦争を推進できる国家づくりの道において、基本に違いはない。そこにはかつての自民党の中で行なわれた本流、傍流の争いほどの違いもないのだ。それどころかあい呼応しあって、この危険な道の常態化を推進する役割を果たしているのだ。
 これらに民主党内の右派が呼応する構図が着々とつくられつつあることに、警戒心をつよめなくてはならない。この間の国会における安保問題での「総翼賛体制化」を見れば、この動向は予断を許さないものとなっている。手遅れにならないように、全力で反撃を強めなくてはならない。(史)


イラク反戦運動のなかで考えたこと

            金曜連続講座で高田健さんが講演


 八月二二日、東京・文京区民センターで開催された市民講座「戦争と平和を考える金曜連続講座」で、高田健さん(国際経済研究所)が、四〇名の受講者を前に、要旨、つぎのような昨年来の反戦運動の総括的な講演を行なった。

 〇一年の九・十一から〇二年九月のブッシュ・ドクトリンにいたる過程で、米
国の新国家安全保障戦略が確立された。ネオコンに担がれたブッシュ米大統領は「二十一世紀は戦争の時代」と規定し、従来は犯罪の分野にあった「国際テロ」との戦いを「新しい戦争」に含めた。国際世論を無視し、国際法を無視し、国連決議を無視して、イラク攻撃を開始した。これは「先制攻撃戦略」だ。
 これに反対する反戦運動もまた新しい要素を帯びてきた。今回のイラク反戦運動は戦争が始まる前から行なわれた「戦争の勃発を止めるための運動」だった。そして米ソの冷戦期にあったような既成の国際組織の呼びかけで始まるのではなく、各国の新しい反戦ネットワークによるインターネットでの呼びかけによるものだったし、各国の運動が自発的に呼応した運動だった。この統一行動には最大千数百万人が参加した。インターネットの活用に見られるように連帯の手段も方法も異なった。
 それでも開戦になったが、反戦運動は、米国の攻撃を遅らせたこと、国連がブッシュの戦争を支持しなかった。その結果、歴史的にはブッシュは事実上の戦犯になったことなど大きな肯定的な影響を与えた。
 9・11以降、日本でもアフガン反戦運動は起こったが規模は小さかった。WORLD PEACE NOW(WPN)はそれらをひきついで、9・11以降新たに生まれた反戦運動と従来の流れを汲む運動が合流して、反戦・平和・環境・人権などの諸運動の共同として成立した。「もう戦争はいらない、イラク戦争に反対、日本政府の加担に反対、非暴力のアクション」を一致点にして運営した。
 ある日のマスコミの調査で自分も反戦集会に参加してみたいというのが、七%もあった。これは首都圏で換算すると二〜三百万人だ。反戦運動の参加者をこれら「フツーの人びと」にまで広げたいと考えた。そのためには運動の側もその文化の革命が必要だった。どのようにして運動と市民の間にある垣根を低くし、多くの人びとの参加を実現するか、デモやシュブレヒコールやのぼり旗の林立が垣根になるなら、それも薄めようと考えた。参加の仕方も、手作り型、参加型で、いわば杉林型ではなく、雑木林型で行こうとした。
 またメディア対策でも、批判も必要だが、とりあげないなら、取り上げさせて
みようという意気込みと工夫があった。同時に自らの伝達手段であるインターネットを駆使した。結果、三月二十日には一日で三万五千のアクセスがあった。これは反戦運動としては画期的なことだ。
 日本の運動参加者は欧米のそれに比べて一桁少ないという批判がある。そうだが、欧米では既成の政党も労組も参加している。WPNはまだそうしていない。日本の特殊性がある。政党や労組への不信や、学生運動での凄惨な内ゲバの歴史がある。これを段取りをおって解決しなくてはならない。いまはその過程だ。
 WPNの運動がなぜ有事法制反対、イラク特措法反対の高揚につながらなかったのかという批判もある。市民運動に問う前に、政党と労組はそのあり方を再検討しなくてはならない。マスコミで北朝鮮問題をあおりながら、きわめて短期間に国会審議をすませ、世論が起こりにくい状態で強行採決する国会。形式的に審議するだけで、抵抗ができない国会。市民運動も今後は泣き言をいわず、こうした悪政の手法にも対抗できる運動をつくらなければならない。
 戦後の平和憲法体制下の民主主義は弱点も多々あるが、民衆の自覚を確実に高めた。若者たちも否定的な状況ばかりではない。九五年の阪神大震災にみられたボランティアの存在、今年六月に行なわれた「一〇〇万人のキャンドルナイト」運動への六〇〇万人の参加、これらから確信の一端を汲み取ることができるかどうかがカギだ。
 今後は目前の自衛隊のイラク派兵阻止を闘いながら、「国民保護法制」など有事関連五法案や改憲のための国民投票法案に反対し、〇五〜〇六年に向けて、広範な九条改憲阻止の陣形を作り出すことだ。この過程で、非核平和の東アジアの実現と日朝国交正常化を実現していきたい。


脱WTO草の根シンポジウム

   
世界は売り物ではない! 脱WTOへ! 
     
 九月一〇〜一四日、メキシコのカンクンでWTO(世界貿易機構)第五回閣僚会議が開催される。富める者・強い者はより強大に、貧しい者・弱い者はいっそう虐げられるグローバリゼーションの制度的枠組みをつくるのがWTOだ。この資本のグローバリゼーション・WTOに反対する声は世界中で日増しに大きくなってきている。現地カンクンでの行動をはじめ、さまざまな国・地域で、「もうWTOはいらない!閣僚会議を失敗させよう!ニューラウンド開始を阻止しよう!」をスローガンに多種多様な運動が展開されている。
 東京では、九月五日、日本政府への要請行動などが取り組まれ、午後六時半から、文京区民センターで「世界は売り物ではない!脱WTOへ! 9・5脱WTO草の根シンポジウム」が開催された。

タイ農業とWTO

 主催者のあいさつにつづいて、オルタナティブ農業ネットワーク・タイのウボン・ユーワーさんが、タイ農業の現況を報告した。
 タイは農業輸出国だが、農民の半数以上は貧しい。いまタイの農民もWTOの脅威にさらされている。しかし、タイ政府の高官はWTOに賛成だ。WTOでタイは自由に米を世界中に輸出できるようになるからだという。けれどもタイの農民は稲作だけをやっているわけではない。その他の作物へのWTOの壊滅的な影響についてWTO賛成派は見て見ぬ振りをしているのだ。
 それだけではない。WTOはさまざまな自由化を要求している。例えば教育の民営化、土地の商品化などだ。土地の商品化が進んでいるが、それは大きな資本に土地が集められて行ってしまうという結果になっている。WTOのやろうとしていることは一部の金持ちのためだけのものだ。
 ウボンさんは、スライドを映しながらタイ農業について説明した。

WTOと日本農業

 北海道農民連盟からは、日本政府への要講行動についての報告が行われた。
 日本の農地が減っている。かつては六〇〇万ヘクタールあったものが、いまは五〇〇万ヘクタールを切るような状況だ。日本農業全体が非常に大変な条件の下にあるが、日本の食糧基地としての北海道にとってWTOは死活問題となっている。
 北海道の農民は、土地にあった作物で生産性をあげてきたが、いま農業作物は国際的な価格低下に見舞われ、これまでのようにはやっていけないようになって、多くの仲間が農業から離れざるをえなくなっている。北海道はアメリカには及ばないがヨーロッパなみの耕地面積でやってきたのに、それでもいま非常に厳しいし、今後のWTOでいっそう外国産が安く入ってくるなら壊滅的な打撃が予想される。かつてのGATTウルグアイラウンドでも大変な思いをしてきたが、今回のWTOはほんとうに大きな困難をもたらすようだ。競争の激化がすさまじく進められる。
 今日、外務省への交渉で、WTO交渉では日本の農業を守るために頑張って欲しいと要請した。いま多くの人に本当に食糧の生産ということを理解して欲しい、そして農民の気持ちをわかって欲しいと思っている。たしかにほんのひとにぎりの裕福な農民もいるが、ほとんどの農民は豊かでないなかで必死に農業をやっている現状だ。しかし、国内政策でも農業にたいしていろいろと打つ手があるはずだ。
 世界全体を見ても、やがて食糧危機が起きることは確実だ。人口増加だけではなく、自然環境破壊がすすみ、遺伝子組み替え食品の問題もある。これからの世界のためには、一部工業の発展だけでなく、いかにして食糧をバランスをとって供給していくのかが大きな課題となっている。

WTO論議の現状

 日本消費者連盟の山浦康明さんは、WTO閣僚会議の現況報告を行った。
 WTOのミニ閣僚会議が、七月末にカナダで開かれ、そこで、これまで対立していた、アメリカとEUが歩み寄り、八月の一三日には農業に関するアメリカ・EUの共同提案がまとめられた。八月二四日には、カンクン閣僚会議の宣言文(第二次案)がWTO一般理事会カスティーヨ議長より配布され、討議が始まった。その案は、ドーハ宣言のカンクン会議での具体化、農業交渉の枠組みの提案、非農産品市場アクセス問題、途上国への配慮問題、新分野などからなっている。これはアメリカ・EUの歩み寄りという流れの中で出されてきたもので、日本や途上国はかやの外に置かれている。農業では関税の大幅一律削減と品目別の柔軟な削減方式の折衷案である。新分野の投資、競争、貿易円滑化などの問題では日本は交渉開始に積極的である。

遺伝子組み換え作物

 つづいて国内での経済・軍事的グローバリゼーションに対する活動報告にうつった。
 ストップ遺伝子組み換え汚染種子ネットの入沢牧子さんは遺伝子組み換え大豆作付けに対する闘いを報告。
 遺伝子組み換え作物の国内作つけが各地で行われている。それに反対する行動も展開されている。茨城・谷和原村での遺伝子組み換え大豆作つけについて報告する。この五月に、今年も遺伝子組み換え大豆の作つけがおこなわれるらしいと情報が入った。六月には役場とも連絡をとって地主に「作つけ中止要請」をおこなったが、モンサント社の除草剤耐性大豆の播種が行われた。七月には現地に事前視察を行ったが、すでに開花していた。これは余所の作物にも遺伝子組み換え作物の花粉がつく種子汚染という大変な事態になる。写真を取り、花芽を一時間ほど摘んだがとても間に合わない。いろいろな集会や役所交渉をおこない、七月二六日は強風で汚染が広がろうとしているなかで現地に行き、地主に交渉したが聞き入れない。ついに鋤込み作業を開始し刈り取らざるをえなくなった。農水省は責任ある対応をしていない。ほかに岐阜、滋賀でも作つけが行われたが、県が生産者に鋤込みを要請し生産者がそれを実施した。遺伝子組み換え作物の国内作つけは、各地で鋤込みで刈り取っているが根本的な解決を見ていない。しかし脱WTO運動などでの連携を強めて解決にむけて頑張っていきたい。

WTOと女性労働

 女のワーキングライフを考えるパート研究会の酒井和子さんは、企業のグローバリゼーションと女性労働者の闘いと題して発言。
 いままで農水省などとの交渉が話されたが、私たちは厚生労働省ととの交渉をやっている。私たち労働者もグローバリゼーションに大きく影響されている。労働の分野でのグローバリゼーションを見てみると、男性女性を問わずだが、とくに女性は非常に大きな打撃を受けるようになっている。女性労働は日本だけでなく、アメリカでもどこでもそうだが、多国籍企業化が進む一方で、首切りを行って儲けを大きくしようとするなかで企業に狙い撃ちされている。正社員の首を切ってパートにしていく、派遣労働者にする。アメリカの例でいえば、白人男性以外にしわ寄せさがいく。その結果、雇用が非常に不安定になり、賃金が切り下げられる。だから一つの仕事だけではとても生活していけない。二つも三つも仕事をせざるを得ない状況になっている。しかしヨーロッパでは、社会的な規制がかけられており、労働者にたいする攻撃は一定の歯止めがかけられている。それはグローバリゼーションにたいする運動の成果だと思う。しかし日本では企業別の労働組合の弱さがあり、小泉の構造改革が労働者の権利を奪い、労働法制の改悪が進んでいる。これはグローバリゼーションのあらわれだ。すでに女性の場合は半数が不安定雇用となってしまっている。

グローバルな反戦運動

 許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さんはイラク反戦・軍事のグローバル化に抗する闘いについて発言した。
 ブッシュは9・11以降の戦争を新しい戦争といっているが、それに反対する闘いも新しい反戦運動とよぶことができる。イラク反戦では戦争がはじまる前から運動が全世界的に高揚した。こんなことはベトナム反戦でもなかったことだ。多くの人が、もしかしたら戦争を止められるのではないかと思うくらいのもりあがりだった。それから、かつての運動では、世界のセンターがあってそこが反戦をよびかけたが、今回は、あるところのネットワーク組織がよびかける、そしてそれに全世界からそれぞれに責任をもって応えるという形だった。全世界をインターネットで繋いだ。これらが、今年の反戦運動の新しい特徴だ。「WORLD PEACE NOW」について見れば、ブッシュがイラク攻撃をはじめた三月二〇日にはホームページに三五〇〇〇を超えるアクセスがあった。数年前までは反戦運動も、いわば専門家が主体だったが、今回は普通の人が反戦運動にたちあがったこと、そしてその人たちがもっと広範な人びとに呼び掛けた。あるマスコミのアンケートで、イラク反戦の行動に行動に参加したいと思っている人は首都圏でも二〇〇万〜三〇〇万位に換算できる結果がでていたが、それらが三月二一日の五万人の結集となって表現された。反戦運動も脱WTOの人びとと連携して、もう一つの世界をつくっていきたい。

韓国からの特別アピール

 工場閉鎖攻撃と闘うために来日し親会社と交渉を行っている韓国シチズン労組より特別アピールが行われた。韓国シチズンは、韓国・馬山市の自由貿易地域にある日本シチズンが一〇〇%出資する会社だが、シチズンはより多くの利潤をえるために中国へ企業移転させるため工場を閉鎖に追い込んだ。労働者のほとんどが二〇年勤務の平均年齢四六歳の女性労働者だ。労組は工場閉鎖に対抗して工場占拠で闘っている。
 集会の最後に、脱WTO草の根キャンペーンの田中徹二さんの行動提起、栗原学さんから9・13グローバル・ピース・マーチへの参加の訴えがなされた。


国鉄闘争・鉄建公団訴訟闘争

  原告団・家族が新宿駅前で座り込み 

横田厚さん(釧路)が陳述

 九月八日、鉄建公団訴訟闘争が闘われた。
 午前十時半からの裁判(東京地裁・民事三六部)では、九回目の鉄建公団訴訟口頭弁論が開かれ、釧路闘争団の横田厚さんが陳述した。横田さんは、国鉄の分割民営化時に行われた採用基準は、業務への習熟度ではなく所属労組であり、国労に所属しているという事だけで差別されJR会社に採用されなかったことを明らかにした。

怒りの座り込みスタート

 裁判を終って、新宿に移動。JR東日本本社に申し入れが行われる。
 同時に新宿駅西口では、闘争団・家族による「怒りの座り込み」が行われた。 沖電気争議団の田中哲朗さんなどによる歌、裁判報告、コールなど多彩なパフォーマンスで、駅頭の人びとに一〇四七名の解雇という国家的不当労働行為と解雇撤回をアピールした。

四党合意の破産
 
 国鉄闘争勝利共闘会議の二瓶久勝議長は次のように述べた。
 いま働くものをめぐる状況にはたいへん厳しいものがある。失業率は五・五%という高率のままである。年間に自殺者が三万人を超えるが、その三分の一は経済的な理由によるものだ。
 首切り自由の風潮の中で、それに闘うべき労働組合の多くが抵抗できない状況にある。しかし、私たちの共闘会議は、国労に所属しているというだけで首を切られた一〇四七名を守り抜こうと思っている。いま、国鉄・清算事業団の承継法人である鉄建公団をあいてに裁判をしている。採用差別などで、労働委員会が認めたように不当労働行為は厳然としてあったし、また、国鉄・清算事業団は当然やるべきであった再就職の斡旋もしていない。そうしたことが明かになってきている。そもそも、分割民営化を行った中曽根康弘元首相自身が、国労つぶし、そして総評をつぶす、そのために分割民営化したんだと明らかにした。闘争は解決にむけて大きな山場にさしかかっていた。しかし、二〇〇〇年の五月三十日にJRに法的責任がないとする四党合意ができた。そこで、国労本部は、四党合意についての幻想をまき散らしながら闘争を収めようとした。しかし、闘争団を切り捨てることによって「解決」をおこなうというようなことは絶対に許せない。そこで、私たちは、共闘会議を結成し、一〇四七名の解雇撤回のために闘う体制をつくった。だが、昨年末には、その四党合意が三与党の離脱で完全破綻してしまった。本来なら、国労は労働組合として、新しい闘う方針で再出発すべきところを逆に、鉄建公団原告団に責任をなすりつけてようとしている。闘う闘争団への査問委員会がつくられ、九月の一三〜一四日に予定されている国労大会では、闘争団を権利停止を含めて処分するようだ。私も国労大会には何度も行ったが、労組の大会で機動隊に守られながら開かれるというのはない。何千名もの機動隊を導入しなければ大会ひらけない、そういう状況が国労本部のいまの姿だ。共闘会議は、できるなら鉄建公団訴訟の原告団にすべての闘争団が参加して闘いを大きく前進させるべきだと思っている。統一と団結が共闘会議としての希望だ。だが、残念ながらそういう兆候は全くない。
 共闘会議は、国労だけでなく労働組合の大きな流れをつくって闘いたい。国労の闘いはその突破口としてある。いまのすさまじいリストラのながれ、そして労働組合がなかなか闘えない状況に抗する動きが必要だ。

鉄建公団訴訟の意義

 加藤晋介弁護士が鉄建公団訴訟について報告した。
 いまから一七年前にJRが国鉄から民営化された。いま国鉄の分割民営化はあたかも成功したかのように言われている。しかし、実態はどうか。民営化されたときの国鉄の赤字は二八兆円だった。いま、それは三〇兆円になっている。これでもJRの改革成功したといえるだろうか。この借金は国民一人あたり約二五万円だ。四人家族なら一〇〇万円ということになる。こうして民営化のつけがみなさんの肩にかかってきている。
 分割民営化の時に、それに反対した国労の組合員に対して、すさまじいいじめがあった。もう十数年もたったのにまだ解決していないのかと思っている人も多いが、いじめがあったのだから救うのは当然だ。
 国鉄の赤字が膨らみおおきな問題になったが、その原因は何か。当時マスコミがあおったヤミ給与・カラ出張などというような慣行が、大変な赤字を生んだのだろうか。
 例えば、時間内入浴の問題だ。糞尿が垂れ流しの当時の国鉄の職場で、保線や建築の仕事が終わったら、身体を洗うのがどこが悪いのか。それがあたかも違法であるかのように宣伝された。これは意図的なものだった。赤字がすべて労働者のせいだとされた。しかし。、どう考えても二八兆円もの赤字を労働者が怠けただけでできると思えるだろうか。できるわけがない。だいたい企業の赤字というものは経営者の責任でできるものだ。国鉄を考えても、無理矢理に利益があがりっこないローカル線を引いたのが誰だったのか。あるいは新幹線を採算を無視して引いたのは誰だったのか。これは労働者がやったことではない。そういう責任を無視して、みんな労働者に責任があるように宣伝された。そして国労にいる人たちをいじめた。
 国鉄の分割民営化の過程であきらかにいじめがあった労働委員会は認めていた。一九九八年五月まではそれが主な流れだった。。しかし、その流れが東京地方裁判所の判断で覆えされてしまった。国鉄改革法二三条というこむずかしい法律があって、裁判所のその解釈で、いじめをやったのは国鉄であってJRではない、JRには責任が問えないという判決を出した。
 しかしこれは誰が考えてもおかしい。昨日まで国労組合員をいじめていじめていじめぬいていた奴が、施設も人もみんな引き継いで、なんで責任取らなくてよいのか。こんな理不尽なことがあっていいのかというのが多くの人の当然の反応だ。 
 けれども東京高等裁判所でも改革法二三条で責任がないという。では、あったいじめの責任は誰がとればいいのか。裁判所の言い方でも国鉄に責任があるという。国鉄は清算事業団へ債務を引き継いだ。その清算事業団を鉄建公団が承継した。だとしたら責任を鉄建公団に取ってもらおうというのが鉄建公団訴訟だ。
 あったいじめは誰かが責任を取らなければならない。大人の世界がこういうことなら、子どもたちも、何があっても、しょうがない、長いものにはまかれようという風潮がでてくるのは当たり前だ。社会自体がいじめや理屈が通らないことを前にしてしようがないで流れていく。われわれは、国鉄で起こっていることは、みなさんの職場や家庭などで起こっていることと無縁ではないと思う。儲けのためには、リストラ、出向、賃下げはあたりまえだという流れは正されなければならない。
 国鉄赤字が膨大に膨れ上がっているが、それだけではない。いま、国と地方には八〇〇兆円とも一〇〇〇兆円とも言われる借金がある。一人あて五〇〇万〜六〇〇万円の借金ということだ。こうしたものをわれわれの世代は次の世代に残していいのか。少なくとも、きちんとした処理をしなければばならない。
 われわれが鉄建公団訴訟でもとめていることは、人らしく生きること、利潤や効率はその次でいいではないか、きちんとした生きがい、きちんとした権利、それをみんなの力で守って行ける社会をつくっていこう、そのためにこそ、今のような社会風潮の発端となり、一七年間苦労してきた一〇四七名問題の解決のためにあなたの手をさしのべて欲しいということだ。

争議団などの決意表明
 
 つづいて、東京清掃労組、反リストラ産経労、全国一般東京NTT関連労組、雪印食品労働組合争議団、そして美幌闘争団員の遺族の決意表明が行われた。また、座り込み集会では、ルポライターの鎌田慧さんと衆議院議員の川田悦子氏からのメッセージもが紹介された。
 最後に、裁判で陳述にたった横田厚さんが、道行く人に、あなたもリストラされる、そういう時代になっている、団結し自分たちの権利を主張すべきときだ、と訴えた。

                    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

駅頭大宣伝で歌われた田中哲朗さんの詩

   忘れていないかと、風が問いかける
   あきらめていいのかと、風が問いかける
   あなたの悲しさは、あなただけのものではない
   あなたの怒りは、あなただけのものではない
   歴史のかべに、風は立ち向かって吹く
   今は見えなくとも、風は木々をゆらす
   風になろう 風として生きよう
   海を越えて 憎しみを乗り越えて 
.
 平和への想いが、青空に舞い上がる
 抑圧の枯れ葉を吹き落として行く

   あなたの闘いが風を運んで行く
   あなたの優しさを風が広げていく
   むなしさも、苦しさも、風は包んで吹く
   今は見えなくとも、風はよみがえる
   風になろう、 風として生きよう
   海を越えて 憎しみを乗り越えて

.
                    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

資 料

違法・不当な査問委員会の解散を求める意見書


 国労本部は国鉄闘争の終焉を狙い、その矛先闘う闘争団員に向け査問員会を設置した。九月一三〜一四日の国労大会では闘う闘争団員に対する不当な処分を強行しようとしている。本資料は九州の闘争団員による本部・査問委員会への意見書である。(編集部)

 
 国鉄労働組合中央執行委員長 高嶋昭一様

 査問委員会議長 田中浅雄 様


 査問委員会は、憲法三二条が保障する裁判を受ける権利を侵害しており、私たちは即刻解散するよう求めます。

 国労本部は、鉄建公団訴訟の原告と最高裁訴訟への参加申立人に解決できない責任を転嫁していますが、「四党合意」による解決とはゼロ+αであり、本部もそれを知らされていたことが、自民党の甘利副幹事長の言葉によってすでに明らかになっています。「JRに法的責任がない」ことを国労が認めさせられた通りに、解雇の撤回もこの間の被害に対する補償もなく、「解決」とはとても言えない超低水準の中身でした。解雇が撤回されなければ当然年金等の回復もあり得ず、闘争団員は生涯不利益を被り続けることになります。

 国労本部が、闘争団員の切実な要求を無視して、「四党合意」を受け入れたことこそが問題です。責任は本部にあり、違法・不当な査問委員会は直ちに解散すべきです。

 加えて私たちは、労働組合にあるまじき書記への首切り攻撃を中止し、広域配転を撤回するよう本部に強く求めます。

     以 上

二〇〇三年八月二八日

 矢野隆志(門司地区闘争団)、城島信章(博多闘争団)、野田博幸(博多闘争団)、高尾勝幸(博多闘争団)、田島省三(博多闘争団)、原田亘(鳥栖地区闘争団)、善理知郎(鳥栖地区闘争団)、樋渡光男(鳥栖地区闘争団)、岩田和己(鳥栖地区闘争団)、杉本篤敬(鳥栖地区闘争団)、石崎義徳(鳥栖地区闘争団)、富松勲(鳥栖地区闘争団)、上津原博(鳥栖地区闘争団)、石橋邦夫(鳥栖地区闘争団)、前田幸友(鳥栖地区闘争団)、城戸博之(鳥栖地区闘争団)、
猪股正秀(佐賀地区闘争団)、大串潤二(佐賀地区闘争団)、野口賢治(長崎地区闘争団)、桑原元己(長崎地区闘争団)、深浦義孝(長崎地区闘争団)、木下光宏(長崎地区闘争団)、速見篤(佐世保地区闘争団)、浦川和彦(佐世保地区闘争団)、岩藤治彦(佐世保地区闘争団)、藤田貴久男(佐世保地区闘争団)、前田成男(佐世保地区闘争団)、南里隆芳(佐世保地区闘争団)、力武春人(佐世保地区闘争団)、高田末博(佐世保地区闘争団)、赤峰正俊(大分闘争団)、平嶋慶二(熊本闘争団)、吉田信輔(熊本闘争団)、池田行弘(熊本闘争団)、平井康博(熊本闘争団)、田添重則(熊本闘争団)、野田学(熊本闘争団)、蓑田浩司(熊本闘争団)、杉義樹(熊本闘争団)、江崎静男(熊本闘争団)、田中浩治(熊本闘争団)、坂本正(熊本闘争団)、林田裕昭(熊本闘争団)、浅井英治(熊本闘争団)、松浦成治(熊本闘争団)、木田正雄(熊本闘争団)、岩崎松男(姶良・伊佐闘争団)


教基法改悪阻止へ九月地方議会に陳情を
   
        
すでに約三〇〇自治体が反対を決議

 「戦争遂行可能」な国家づくりのための憲法改悪策動の前哨戦として、教育基本法を改悪し、「愛国心」や「公共心」などを盛り込んでいこうという動きが、このところいっそう強まってる。
 右翼組織「日本会議」(会長・三好達<元最高裁長官>)は七月〜八月に全国キャラバンを行い、各地の県議会などで陳情書の採択をめざした動きを強めている。これらの陳情を採択したのは茨城、神奈川、滋賀、岡山、愛媛の各県議会をはじめ合計一〇の自治体。今後も動きはつづくとみなければならない。
これらの動きは一連の戦争法の策定に連動するものであり、反動をゆるさず、反撃する運動が急務になっている。
 一方、現在、改悪反対の請願・陳情を採択した自治体は全国で二七一自治体あり、その数では右派を圧倒している。しかしまだ、全国の自治体数の一割にも達していないことも事実だ。まもなく各地で始まる九月議会に対して、私たちの努力を飛躍的に強めなければならない。
 勢いに乗る右派の攻撃に対して各地で力強い反撃もはじまった。
 この夏、広島県では「つくる会」教科書採択の攻勢に反撃し、それをつぶしたし、愛国心評価を導入した福岡県では、市民の反撃で現在は一校も実施している学校はなくなった。

 現在までに教育基本法の改悪反対の陳情を採択したのは以下の諸自治体。

北海道 旭川市・稚内市・伊達市・登別市・釧路市・岩見沢市・北広島市・根室市・美唄市・赤平市・滝川市・千歳市・名寄市・留萌市・富良野市・小樽市・芦別市・深川市・陸別町・上磯町・清水町・森町・壮瞥町・様似町・三石町・本別町・比布町・追分町・幌加内町・黒松内町・上士幌町・えりも町・剣淵町・津別町・士幌町・中札内町・神楽町・中富良野町・池田町・興部町・白老町・余市町・江差町・岩内町・上川町・鷹栖町・音威子府村・忠類村議会
 青森県 三戸町・大畑町議会
 岩手県 釜石市・宮古市議会
 秋田県 合川町議会
 宮城県 名取市議会
 福島県 福島市議会
 茨城県 下館市・美浦村議会
 埼玉県 上尾市・和光市・北本市・草加市議会
 千葉県 船橋市・市川市・流山市・東金市議会
 東京都 江戸川区・日野市・国分寺市・清瀬市・国立市・小金井市・武蔵村山市・東久留米市・調布市・西東京市議会
 神奈川県 茅ヶ崎市・座間市議会
 山梨県 都留市議会
 長野県 伊那市・諏訪市・富士見町・明科町・豊科町・長門町・坂城町・小海町・池田町・小布施町・丸子町・立科町・南木曽町・上松町・穂高町・臼田町・川上村・南相木村・武石村・青木村・麻積村・坂井村・朝日村・山形村・清内路村・豊丘村・阿智村・南信濃村・小川村・宮田村・上村・松川村・山口村・原村・坂北村・北御牧村・浅科村・本城村・中川村・下條村・梓川村議会
 新潟県 長岡市・五泉市・上越市・加茂市・新発田市・両津市・村上市・燕市・白根市・新津市・小千谷市・安田町・津川町・与板町・小国町・妙高高原町・山北町・鹿瀬町・田上町・寺泊町・柿崎町・相川町・津南町・聖籠町・出雲崎町・吉川町・亀田町・六日町・小出町・松之山町・清里村・古志村・菊島浦村・朝日村・三和村・三川村・中里村・牧村・神林村・中郷村・頸城村・京ヶ瀬村・笹神村・上川村議会
 石川県 金沢市・加賀市・輸島市・松任市・羽咋市・鹿島町・志雄町・押水町・能登島町・七塚町議会
 岐阜県 御嵩町議会
 愛知県 知立市・尾西市・一色町・佐屋町・八開村・十四山村・飛島村議会
 三重県 四日市市・菰野町議会
 滋賀県 永源寺町議会
 大阪府 高槻市・枚方市・堺市・泉大津市・狭山市議会
 兵庫県 高砂市・西宮市・小野市議会
 奈良県 大和郡山市議会
 鳥取県 米子市・鹿野町・八東町・日吉津村議会
 島根県 安来市・大岡市・溢田市・石見町・美都町・大杜町・湖陵町・日原町・海士町・仁多町・瑞穂町・頓原町・布施村・八雲村・知夫村・五箇村・都万村・柿木村・羽須美村議会
 岡山県 高梁市・勝山町・吉永町・久米南町・勝田町・東粟倉村・新庄村議会
 広島県 因島市・音戸町議会
 香川県 財田町・塩江町・三野町議会
 高知県 高知市・須崎市・土佐市・土佐清水市・安芸市・佐川町・佐賀町・夜須町・土佐町・香我美町・赤岡町・三原村・大方町・大野見村・芸西村・酉土佐村・十和村・吾川村・日高村・大月町議会
 福岡県 北九州市・行橋市・山田市・大牟田市・中間市・直方市・粕屋町・小竹町・頴田町・香春町・稲築町・鞍手町議会
 熊本県 荒尾市・宇土市・庫岳町議会
 大分県 別府市議会
 宮崎県 日向市議会
 沖縄県 沖縄市・平良市・読谷村・恩納村・北谷町・大里村議会


図書

  岩波ブックレット
    民間人も「戦地」へ〜テロ対策特別措置法の現実

            吉田敏浩・著    A5版七二頁四八〇円

 秋の臨時国会では十一月で当初予定した二年間の期限切れとなる特措法、米軍のアフガン占領・支配を支援するためのテロ特措法の延長が審議されようとしている。自衛隊はインド洋、アラビア海でいまなお米軍への際限のない支援活動を続けている。特措法の延長はこの米軍のなどの不法なフガン攻撃・支配にさらに加担しつづけようというものだ。
 本書はこのテロ対策特措法の延長を許さない闘いにとって必読の書だ。
 二年前の米国にたいする無差別同時テロにたいする報復として、米軍のアフガニスタン攻撃の目標とされたアルカイダのビン・ラディン氏とタリバン政権の指導者のオマル師の捕捉は、開戦以来二年近くになるというのに、依然として果たせず、米軍の占領に対するフガンの人びとの抵抗はつづいている。
 米国などの軍事力に後押しされたカルザイ政権は首都カブールを支配するだけで、それ以外の地域にはその権力は及んでいない。依然としてアフガンの内戦と軍閥の支配はつづき、最近ではタリバンの復活傾向が顕著であることも語られている。米軍などの占領軍は泥沼に陥っている。
アフガン民衆の生活は喧伝された「民衆の解放」からはほど遠く、苦難はつづき、一時帰還した難民の再度の国外大量流失もつづいている。米軍のアフガン攻撃が果たして何であったのか、アフガンの現実の語るところはその非を説いて雄弁だ。
 本書のタトルである「民間人も『戦地』へ〜テロ対策特別措置法の現実」という題は衝撃的だ。
 筆者も昨年来、この事実を重視し、各所でことあるごとに報告し、注目を呼びかけてきたが、著者は職場の取材と国会での議論の分析の上に、「民間人の戦場への派遣」が進んでいることを詳細にまとめている。
本書の構成は「密かに民間人技術者を派遣」「現に危険性があるのに」「もの言えぬ軍需産業の職場」「危険な出張は拒否できる」「自衛隊海外派兵と有事法制の危険な道」「自分が同じ立場に立ったら」となっている。
 最初は、著者が〇二年十月、防衛庁管理局装備企画課に問い合わせた時、「特措法で作戦中の自衛艦艇の修理に民間企業の技術者が派遣されてた」との回答を得たことであり、同時にその艦名などが明らかにされた。
 派遣は七月に四名と二名、八月に三名と三名、十月に五名と四名、今年一月に七名と二名と、実に多数の労働者が派遣されていた。
 しかし、この派遣先と企業名は秘密である。職場でも箝口令がしかれているような雰囲気だという。上司は法的な根拠もないのに「軍事機密だ」などと圧力をかけるという。こうした状況なのに、労組もマスコミも問題にしない。
 会社の門前で配られる「会社は派遣要請を断れ」というビラは、会社側の目を気にする労働者が多く、受け取られない。しかし、もの言えぬ職場だが、不安は大きく、門前でのハンドマイクによる訴えに耳を傾けていく労働者は多いという。
この実態を多くの人に知ってもらいたい。(鈴)


複眼単眼

  
 第4権力化するマスメディアの動きとその背景

 各地でお話する機会に、「マスコミ報道はどうしてこうもひどくなったのか」と質問を受けることがしばしばあるので書いておきたい。
 新聞各社が加盟する日本新聞協会には「新聞倫理綱領」というのがある。
 曰く「国民の知る権利は……言論・表現の自由のもと、高い倫理意識をそなえ、あらゆる権利から独立したメディアが存在して初めて保障される。新聞はそれにもっともふさわしい担い手でありつづけたい」「報道は正確かつ公正でなければならず、……論評世におもねらず、所信をつらぬくべきである」「新聞は公正な言論のために独立を確保する」(二〇〇〇年六月制定)。なかなか立派なものだ。
 また新聞各社は社是や編集綱領をもっている。「不偏不党の地に立って言論の自由を貫き、民主国家の完成と世界平和の確立に寄与する。真実を公正敏速に報道し、評論は進歩的精神を持してその中正を期す」(朝日)「われらは真実と公平と友愛をもって信条とす」(読売)などだ。
 現在のマスコミの状況にはこんな綱領などどこへやらの風潮がある。誰もが感じるように、ジャーナリズムにとって不可欠の「権力との緊張関係」の確保という原点がまったく見失われているのだ。緊張関係ではなく、ますます癒着していくように思える。 なぜそうなるのか。
 まず前提は新聞といえども商業新聞だということだ。
 第一に日本の商業新聞は実に紙面の半分が広告であり、経営はこの広告収入に大きく依存し、収入に占める比率も販売収入と約半々づつになっているのだ。
 広告主のほとんどは大企業であり、なかには政府広告もあり、防衛庁の広告もある。権力や財界にこびへつらうメディアの体質はこれらでつくられるのは否定できない。
 第二はマスコミ界での巨大総合情報産業化の進行だ。新聞、テレビ、ラジオ、出版、各種の新メディアなどを統合した巨大な産業が立ち現れつつある。
 この過程で、政府や金融資本、電気産業などとの結びつきは不可避的に強くなるし、相互の競争がそれらをいっそう熾烈なものとする。
 第三は、中曽根内閣以来、特に顕著になってきた審議会政治だ。
 議会での審議を軽視し、各界の有力者を加えたいわゆる識者による審議会(ほかに各種民間臨調も)づくりと、その中へのメディアの幹部たちのとりこみだ。審議会を通じて、政府の政策づくりにメディア各社の幹部が関わる形で政策協力体制がつくられる。マスコミ各社が「政治改革」を一斉に礼賛し、後押ししたのはこれによるものだ。
 第四は各種メディアにたいする右翼などの暴力的テロ攻撃の効果。
 そうしたときにかならず「ペンは暴力に屈しない」などと叫ばれるが、八七年の朝日新聞阪神支局攻撃はやはりその後の同紙の論調に影響したことがさまざまに語られている。
 第五は記者クラブ、番記者制度などによる権力の情報のたれながし、情報操作の体制が確立していることだ。結果として、検察や、警察などに利用される体質が作られる。
 紙面の都合で概略しか書けないが、これらの要素から昨今のマスメディアの右傾化の問題を考えてみる必要があるのではないだろうか。 (T)