人民新報 ・ 第1111 号<統合204> (2003年10月25日)
  
                  目次

 ● 自衛隊のイラク派兵と占領資金供出をやめよ  対北朝鮮挑発策動を停止し、国交正常化へ進め

 ● ブッシュ大統領の来日に抗議し、700人が大使館へデモ

 ● 石原都政下の教育委員会反動化に抗議

 ● 10・20 鉄建公団訴訟・JR総行動

 ● 資料 / 米国のイラク派兵要求に反対する日韓(韓日)共同宣言

 ● 国鉄労働者1047名の解雇撤回!全ての争議勝利!自衛隊イラク派兵阻止!団結祭に15000人が参加

 ● NTT十一万人リストラ反対!不当配転を許さない! 電通労組が「不当配転取消」訴訟

 ● 中国での「対日新思考」をめぐる議論

 ● 複眼単眼 / 利益優先システムと大学病院の機能不全




自衛隊のイラク派兵と占領資金供出をやめよ

   
 対北朝鮮挑発策動を停止し、国交正常化へ進め

 十七日、赤坂・迎賓館で日米首脳会談が行なわれた。本年五月に米国テキサスのブッシュ邸で行なった日米首脳会談では、小泉首相は世界と日本の大多数の声に逆らい、米英軍などの不法非道なイラク攻撃をあらためて支持し、これへの惜しみない支援を約束した。今回の首脳会談では早くも苦況に陥った米英占領軍を、財政的にも、人的にも援けるための具体的な中身が問われることになった。小泉首相は自衛隊の派遣を確認することと合わせて、「日本の国益や世界の平和のため、やるべきことはきちんとやる。復興人道支援で日本の役割をきちんと果たす」ことを明言した。そしてまず二〇〇四年分として十五億ドル(一六五〇億ドル)の無償資金供与を決定したことを報告した。事実上、米国のATM化した役割を負わされた日本が、見返りに米国に要請したのが「北朝鮮の拉致問題の解決のための米国の協力」だった。これに対してブッシュは「米国としてできるだけ協力する」と答えたという。

初の戦時戦場派兵


 日米首脳会談に先立ち、政府は自衛隊のイラク派遣の概要を固め、ブッシュに報告した。現憲法下初の自衛隊の戦時戦場派遣となる今回の派兵基本計画は、世論の反発とその投票行動への反映を恐れ、姑息にも十一月九日の衆議院選挙投票日のあとに正式発表することになっている。この基本計画に基づいて十一月下旬に派遣実施要綱を策定する。すでに報道されてるところによると、十二月上旬に宿営地設営のための陸上自衛隊先遣隊一五〇人を派兵、来年一月前半に陸上自衛隊本体六一〇人を海上自衛艦などでイラク南部の地域に派遣することにしている。陸自は北海道旭川市に駐屯する第二師団第二後方支援連隊を中核とし、給水、給電、医療支援などを行なうという。航空自衛隊はC130輸送機三機、隊員一五〇人を十二月中旬にカタールかクウェートに派遣し、基地を建設し、イラク国内との間で物資の輸送業務に従事するとしている。総体として自衛隊の派遣人員は一二〇〇人に上ると言われる。
 多くの国々が米国の要求にもかかわらず派兵を拒否し、先に一万人の兵力の派遣を約束したトルコまでが躊躇しているこの時に、日本政府は率先して軍隊をイラクに派遣することと、資金供与を約束することでブッシュの要求に応えようとしているのだ。 
 すでに現地では、派遣される自衛隊は米軍と同様にみなして攻撃の対象とするという反応が起こっている。米軍にたいするイラクの人びとによるレジスタンスは、イラク全土で止むことがないし、デモや抗議集会が繰り返されている。米軍の死傷者はすでに四月の戦闘終結宣言後が宣言前を上回っている状況だ。これは今回の自衛隊イラク派遣が、カンボジアやゴラン高原など、九十年代のPKO派兵とはまた質の異なるものであることを示している。「人道支援」などというのは政府が国内向けの弁解のために考えだした口実にすぎず、まさに今回のイラク派兵は戦時戦場派兵なのだ。情勢をみれば、自衛隊が現地においてイラク人を殺さないことなどありえないし、自衛隊が攻撃を受けることも不可避のことだ。戦後五七年、曲がりなりにも日本の軍隊が海外で殺戮を犯すことがなかったという、誇ってもよいこの一時代が無責任な場当たりの対米追従政策をとる小泉内閣の手で終わらせられようとしてる。
 いま世論の多数は自衛隊のイラク派兵に反対で、資金拠出なども反対だ。あきらめずに派兵反対の行動をさらに展開しなくてはならない。始まった総選挙のなかで、これを争点化しない政党を批判し、派兵推進政党に有権者が審判をくだすよう、訴えなくてはならない。

日朝交渉再開を

 小泉内閣がこの恥ずべきイラク派兵を正当化するために使うのが、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)による拉致問題だ。商業マスコミの扇動と合わせて、いまや北朝鮮にたいしてなら、あることないこと何を言って攻撃しても許される状況だし、反対に攻撃の問題点を指摘でもしようものなら袋叩きになる始末だ。右翼分子は気に入らない政治家などに銃弾を送り付けて脅迫する。同様の状況が「自由と民主主義」を標榜する米国の九・十一の直後のアメリカ社会にあったことを思い出す。
 拉致問題は北朝鮮の国家的犯罪であり、許されない。その真相の糾明は不可避のことだ。拉致被害者と家族の人権はかならず守られなくてはならない。これらは他の何物とも相殺されるような問題ではなく、未解決の独自の課題だ。日朝両国政府にはその解決のための責任がある。
 しかし、日本政府と小泉首相が自らの政治的野望のためにこれを利用し、「反北朝鮮キャンペーン」を繰り広げることを許すことはできない。問題の解決のためにはこうした策動は有害で、真の解決のためには昨年の日朝平壌宣言を基礎にして、両国の国交正常化をめざした交渉をただちに再開する以外にない。宣言にそれぞれ過不足があろうとも、こうして話し合いの道を歩むこと以外に解決の道はありえない。拉致被害家族の周辺でこれを利用して自らの政治的野心を遂げようとする一部右翼分子と石原慎太郎らのように、無責任に「戦争」を煽り立てる連中は、まさに拉致被害者の人権に敵対するものだ。
 私たちは北朝鮮政府が日本の過去清算問題を盾にして、拉致被害の問題糾明を回避することにも反対だし、日本政府が拉致問題もって北朝鮮をいたずらに挑発し、戦争責任など過去清算問題をあいまいにし、戦争発言まで容認するような政治的術策をとっていることも許せない。
 洪水のようなキャンペーンのなかで、選挙には不利だなどとこの問題に沈黙してはならない。北東アジアに平和と共生の関係を樹立することは、政治の最大課題のひとつであるはずだ。
 この秋、さらに力を結集してイラク反戦、自衛隊派兵反対、占領資金供出反対、北東アジアの平和を実現する闘いを推し進めなくてはならない。憲法改悪に反対し、教育基本法改悪に反対し、通常国会への憲法改悪国民投票法案や有事関連諸法案の上程に反対する運動を全力で起さねばならない。


ブッシュ大統領の来日に抗議し、700人が大使館へデモ

 米国のブッシュ大統領が小泉首相との日米首脳会談のために来日した十月十七日、これに抗議し、米軍などのイラク占領と、自衛隊の派兵に反対する集会が午後六時半から三宅坂の社会文化会館で開かれ、集会後、米国大使館に向けてデモが行なわれた。集会の名称は「ブッシュは戦争をやめろ!来日に抗議する一〇・一七集会」、主催したのは平和フォーラム、市民緊急行動などによる実行委員会で、参加者は約七〇〇名だった。
 集会での講演は川崎哲さん(ピースボート)と大河内秀人さん(パレスチナ子どものキャンペーン)。
 川崎さんは「一〇〇から二〇〇発の核爆弾をもっているといわれるイスラエルは、中東における大量破壊兵器批判の対象にはなっていない。そして米国のイラク攻撃の理由も大量破壊兵器の捜索から、独裁政権の打倒に変った。四月九日の終戦宣言のあともなお戦闘はつづいている。米軍のイラク攻撃は中東全体を混乱に陥れた。ブッシュ大統領は地球上の人類を滅ぼすことのできる力を持つことが平和を実現することだという時代遅れの考え方をもっている。小泉首相はブッシュがいう全てのオプションをテーブルに置くという選択を支持した。武力では問題は解決しない。この危険な道を阻止し、憲法第九条を生かしていくことこそが求められている」と発言した。
 大河内さんは「テロと報復の繰り返しをしている時ではない。数千年の歴史をさかのぼってイスラエルは占領を正当化するが、パレスチナの数千年の歴史を考えるなら、その大部分はユダヤ教、イスラム教、キリスト教が平和的に共生していた時代だ。いまパレスチナに高さ八メートル、長さ三〇〇キロのカベがつくられ、パレスチナの人びとの生活が分断され、生活が困窮に落としこめられている。ここにあるのは、キリスト教とイスラムの対立でも、イスラエルとパレスチナの対立ではない。戦争をしたい人と平和に暮らしたい人の対立であり、多くの人びとがその間にいる。戦争をしたい理由はいろいろあるが、最大のものは戦いになれば儲かる人々がいるということだ」と指摘した。
 集会の最後は「アジアン・スパーク」による「世界がもし一〇〇人のブッシュだったら」というパフォーマンスで、ひきつづいてこのブッシュのお面をつけた百人の人びとを先頭にして、パレードに移った。途中、米国大使館の前では右翼が「ブッシュ大統領歓迎」と叫んで、挑発した。


石原都政下の教育委員会反動化に抗議

 石原都政下の都教育委員会は一昨年、教育目標を変えて「事実上、教区基本法を改定した」「東京から国を変える」「(『日の丸・君が代』を)強制しないという政府答弁がまちがっている」といってはばからない。こうした止めどない東京都教育委員会の暴走を止めようと、十月十五日夜、都内で約七〇名の人びとが集まって市民集会を開いた。

 集会の冒頭、司会の京極紀子さんは、「最近の都教委の動向があまりにひどいので、この集会を準備した。『日の丸・君が代』問題は終わったかのように思われるかも知れないが、現在もなお深刻な問題がつづいている。都教委の動きは石原都政下の教育委員会の動きとして石原の路線を実行しているものであり、『小泉改革』を先取りするような危険なものだ」と発言した。
 講演は「子どもと教科書全国ネット21」事務局長の俵儀文さん。俵さんは要旨、以下のように発言した。
 先ごろ成立した第二次小泉改造内閣は極右政治家を中心とした、教育基本法と憲法の改悪のための内閣だ。この内閣は二〇〇五年に「つくる会」の教科書の採択を支援する内閣でもある。
 政府・自民党はとりわけ湾岸戦争以来、「血であがなう貢献を行なう国家づくりを教育によってつくる」(自民党国防三部会とマクナマラの日米会談)という路線をすすめてきた。以来、自民党の安全保障問題懇談会は戦争をできる国づくり、「張り子のトラ」の自衛隊を「戦争ができる自衛隊」にするために、自衛隊の戦争を支持する国民を、教育によってつくるとしてきた。
 「戦争のできる国づくり」の要素は三つあって、それは「ハード」「システム」「ソフト」だ。「ハード」は軍事力で、すでに自衛隊はその域に十分、到達している。「システム」は今回の有事三法にいたる一連の戦争法や、盗聴法、住基ネット、生活安全条令や相談罪にいたる一連の立法だ。これも完成直前まですすんでいる。
 「ソフト」とは国民の意識の問題だ。これを教育によって準備しようとしてる。それは侵略戦争についての歴史認識の問題や、国家への忠誠心、愛国心の問題での教育であり、これらの総仕上げとして教育基本法の改悪が位置づけられている。これを現場で先取りして使われているのが「心のノート」だ。「心のノート」は「検定」や「採択」も経ていない、いわば違法教材、脱法教材だ。「検定制度」を擁護するのではないが、「補助教材」などということで、文科省自らが定めた「教科書のシステム」を自ら破っている。
 「ノート」は実質的に戦前の「修身」と同じ役割を果たすものだ。教育基本法が改定されれば、「愛国読本」ができるだろう。「心のノート」はそのための布石だ。
 二〇〇五年の教科書採択に向けて、すでに右派は動きだしている。石原都政の下で教育基本法の一〇条、教育への国家の介入・支配に反対という条文はすでに死文化されているが、私たちはまだこれを武器として使うことができると思う。
 俵さんの報告のあとはアピールで、高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)の「石原都知事の暴言に抗議する闘い」の報告、遠藤良子さん(国立市民)の「国立の教育に対する介入とそれに煩多する闘い」の報告などがあった。


10・20 鉄建公団訴訟・JR総行動

 十月二〇日、鉄建公団第10回裁判(口頭弁論)をはじめJR総行動が闘われた。
 早朝からの東京地裁前でのチラシまき宣伝行動につづいて、東京地裁(民事三六部一〇三号法廷)で名寄闘争団の高橋政幸さんが陳述した。高橋さんは、分割民営化時に不当に解雇された苦しみは当人だけではない、家族にも多大な負担を押しつけていると切々と語った(なお、鉄建公団訴訟には一三名の闘争団員・遺族が新たに加わった)。
 裁判闘争を終わって、JR東日本本社、国土交通省、厚生労働省、鉄建公団にたいする宣伝・要請行動をおこなった。
 午後六時半からは、シニアワーク東京で、裁判報告集会が開催された。
 はじめに二瓶久勝国鉄闘争共闘会議議長があいさつ。九月に開かれた国労大会は、またしても機動隊に守られたものとなった。その中で闘争団員二二名が三年間の権利停止という処分を受けた。こうしたことは絶対に許してはならない。共闘会議は現在一五〇団体一五万人に拡大してきている。共闘会議としては四つのことを考えている。第一には、一〇四七名の解雇撤回の戦線をいっそう広げて全労働者の課題としていかなければならない。国労本部の弾圧にもかかわらず鉄建公団訴訟に新たに加わる動きもでてきている。これからもいっそう多くの闘争団員が訴訟に加わるだろう。これが第二だ。それに共闘会議の拡大、最後に大衆運動で政府・JRを追いつめていくことだ。共闘会議は、来年を勝負をかける年としていきたい。
 イギリスの著名な映画監督ケン・ローチさんが特別参加して連帯のあいさつを行った(ケン・ローチさんは民営化とイラク戦争に反対している)。
 私はイギリスの左翼の一員として日本の運動から学びたいと思っている。労働組合は賃金問題などと比べて民営化問題にたいする取り組みが弱い。現在、医療も含めてすべてが民営化されようとしているがこれは非常に危険な動きだ。国際的な大資本によってすべてが搾取されようとしている。イラク戦争も、アメリカによる中東地域の市場、安い労働力、石油を目当てにしたものだ。イギリス政府は「フセインは四五分以内に大量破壊兵器を使うことができる」と言って、それを戦争の口実とした。アメリカのパウエル国務長官もライス大統領補佐官も、少し前まではフセインには侵略の意図も武器もないと言っていた。それが急に大量破壊兵器などを理由として攻撃しかぇた。いま、かれらの言い分がまったくのでたらめだったことは明らかになった。イラク戦争に反対する民衆の運動は全世界的に高揚したが、街頭を埋め尽くした反戦の闘いの勝利は民営化反対の闘いの勝利でもある。なぜなら敵は同じだからだ。私は一五年以上にわたって闘い続けている国鉄労働者に心からの連帯のあいさつを送る。この闘いは民営化と闘う一つの模範となっている。
 加藤晋介弁護士は「裁判の現状と今後の闘い」を提起した。
 われわれは、JRへの採用において組合所属による差別があり、また十分な就職斡旋もなかったことを立証できたと自負している。裁判長は、われわれの証人の陳述にたいする拍手や声援を制止しなくなってきている。これは裁判が有利に進んでいることのひとつの証明ではないだろうか。向こう側の弁護士も採用差別・就職斡旋などの事実には反論できず抽象的な物言いにならざるをえないだろう。国労本部の処分にもかかわらず鉄建公団訴訟に追加参加してくる人がいる。国労本部や国労弁護団でさえも「不当労働行為はあった」と言うのだから、かれらこそ鉄建訴訟をやればいいのだ。これからやらなければならないことは、労働者と家族は本当にひどい目にあってきたのだという陳述をもっともっとやっていくことだ。
 当日の裁判の陳述人だった名寄闘争団の高橋政幸さんが、陳述を終えての感想と決意を述べた。
 台湾鉄道労組、韓国シチズン労組の連帯あいさつ、上京闘争団全員による近況報告がおこなわれた。


資料

   米国のイラク派兵要求に反対する日韓(韓日)共同宣言


 米国の反戦団体UFPJやANSWERが呼びかけて準備されているイラク占領反対の一〇・二五国際反戦行動に際して、ブッシュ大統領からイラク派兵を強く要求されている日本と韓国の市民団体が、以下の派兵反対の共同宣言をだした。賛同団体は韓国側三〇〇、日本側二〇〇団体を超え、大きくひろがった。賛同団体は次号で紹介する。 (編集部)

 全世界の平和を愛する人々の反対と抵抗にもかかわらず、イラクへの侵略戦争を引き起こした米国ブッシュ政府は、日本と韓国(韓国と日本)など世界各国にイラクへの派兵を要請した。米国のイラク派兵の要請は、自国の軍事経済的利益のみで行った戦争行為の後始末を国際社会に押し付けようとする「単独行動主義」の最たるものであり、国際社会に向けた傲慢(ごうまん)姿勢そのものだ。

 世界は米国が敢行したイラク戦争を、ウソと偽善、独断と覇権に貫かれた明白な侵略戦争であり、歴史的に最も非道な戦争だと見なしている。イラクに大量破壊兵器はなく、米国ネオコンらの「フセイン9・11テロ背後説」は、完全なウソとでっち上げだった。戦争の名分は紙くずと化し、米国の利益だけのための一方的な侵略戦争であったことは誰の目にも明らかとなった。
 世界は米ブッシュ政府を、国連など最低限の国際秩序さえ踏みにじり、21世紀を平和と友好の新世紀として創ろうとする人類の夢を粉々に砕いた、極悪な世界平和の敵だと見なしている。

 米国の非道なイラク戦争はまだ終わっていない。米国の石油利権と中東覇権のためだけにイラクの人々は犠牲になっている。5月1日、ブッシュ大統領の終戦宣言以後、むしろ多くの米軍死傷者が続出し、イラクだけでなくイスラム民衆の命がけの反米抵抗へと拡がっている。また抵抗のための極端なテロと米軍の報復攻撃という悪循環は加速化し、世界平和を深刻に脅かす方向へとつき進んでいる。
 このような中で行われようとする国際的なイラク派兵は、米国のイラク侵略・占領政策を強化し、イスラム民衆のさらに強い抵抗をもたらす結果を招くだろう。派兵国家は米国と共に、イスラム民衆に銃口を向ける侵略の同調者―敵国となるだろう。

 東アジアと世界の平和を願う日本と韓国(韓国と日本)の人々は、ともに手を携え、米国のイラク追加派兵の要求を糾弾し、これを決して許さないことを表明する。私たち日韓(韓日)の平和を愛する人々は、両国のイラクへの派兵はイラクの人々にさらに大きな悲劇と戦争の拡散だけを招くと確信する。
 イラク戦争を本当に終わらせるためには、国際的な派兵と米軍の作戦指揮下で構成される多国籍軍の創出ではなく、イラクから米軍の即時撤退がなされなければならない。米国はこれ以上外国軍の駐留を望まないというイラクの人々の叫びに耳を傾け、イラクの主権をイラク人に一日も早く返還すべきだ。

 私たちは、日米韓(韓米日)同盟を名分として、ブッシュ政府が日本と韓国(韓国と日本)に派兵と占領経費の負担要求の圧力をかけていることを糾弾し、たとえ一人でも一銭たりとも侵略戦争に加担できないことを宣言する。
 私たちは、日韓(韓日)両国政府に、国際社会を平和の流れに変えるため、米国の派兵圧力を断固拒否し、派兵決定方針を即時撤回することを要求する。両国政府は、米国の侵略同調者の汚名を自らに課す愚行を決して行うべきではなく、日韓(韓日)両国の市民・民衆に世界史的な不名誉をなすりつけてはならない。
 私たちはまた、米国の戦争政策に便乗し、加速化する日本の軍事大国化の流れに対し、日韓(韓日)の市民・民衆は歴史的警戒心を持ち、ともに手を携えて排撃することを表明する。

 私たちは、もう一つの"戦争火薬庫"と呼ばれている朝鮮半島の平和を守るためにも、国際的な戦争気運を強化するイラクへの派兵を決して許さないことを強調する。日本と韓国(韓国と日本)は、朝鮮半島の戦争をくい止め、東アジア圏の平和を守る主役になるべきであり、東アジアに戦争の気運を呼び込む先頭に立つべきではない。

 日本と韓国(韓国と日本)の平和を愛する人々は、米国のイラク派兵をくい止め、世界に向って繰り広げる米国の戦争政策を断絶させるため、あらゆる努力を傾けるだろう。私たち日本と韓国(韓国と日本)の民衆は、平和の名において固く手を結び、世界の平和と友好という人類の望みを実現するために、献身的に寄与するだろう。

 <私たちの要求>
 米国は国際的な派兵要請を撤回し、米軍はイラクから撤退せよ!
 日本と韓国(韓国と日本)政府はイラクへの派兵方針を撤回せよ!


国鉄労働者1047名の解雇撤回!全ての争議勝利!自衛隊イラク派兵阻止!

                              団結祭に15000人が参加

 一〇月一九日、東京・亀戸中央公園で、「つくり出そう!戦争と失業・環境破壊のない社会を!10・19団結まつり」がひらかれ、晴れ渡った秋空の下、一五〇〇〇人をこえる多くの労働者や市民があつまった。
今年のメインスローガンは、「国鉄労働者一〇四七名の解雇撤回!全ての争議勝利!」「自衛隊イラク派兵阻止!」だった。国労全国大会で闘う闘争団員二二名にたいする権利停止処分が行われたが、その処分を強行した寺内前書記長は北海道にかえると国労分裂・新労組結成の先頭にたった。このことは四党合意路線が昨年末に与党三党が離脱して完全破綻したのにつづいて、国労本部右派のでたらめぶりを示したものとなり、闘う闘争団・鉄建公団訴訟団の主張の正しさを立証するものとなった。国鉄闘争は、吹き荒れるリストラに抗する闘い・争議の中心となってきたが、この役割の一層の発揮が求められている。また、今回の団結まつりは、ブッシュの要求に積極的に応える小泉内閣によって自衛隊のイラク派兵に反対するものとしてあった。

 午前一〇時、メインステージで開会セレモニーがおこなわれた。はじめに二瓶久勝・国鉄閾争共閾会議議長が、国鉄闘争は新しい段階を迎えた、闘いを前進させすべて争議に勝利しようと開会あいさつを行った。
 団結まつりのゲストとして、台湾鉄道労組、韓国シチズン労組、韓国・東アジア反戦会議、声を上げる軍人家族の会のロバート・スミスさんたちが紹介された。
 つづいて闘い報告。
 台湾鉄道労組の張華宏さんが発言した。世界各国で民営化攻撃が吹き荒れている。台湾の鉄道労働者も同じ問題に直面している。台湾では日本の国鉄の分割民営化が成功したというキャンペーンが行われているが、日本に来てそうではないことがわかった。われわれは、この事実を台湾で宣伝して行きたい。最近、われわれの労組はスト権を確立した。日本の運動に学んで、これからも頑張って行きたい。労働者の団結万歳!
 鉄建公団訴訟原告団団長の酒井直昭さんは、政府・JRの責任を追及する鉄建公団訴訟が前進していることを報告した。
 韓国東アジア反戦会議のウ・シャンスさんは、戦争では第一に子どもや老人など弱い人びとが犠牲になる、韓国は増強派兵しようとし、日本も軍隊を派遣しようとしている、韓日をはじめ国際的な運動で戦争勢力と闘おう。
 会場は、反戦や労働裁判をテーマにした広場企画、『人らしく生きよう―国労冬物語』などのビデオ上映、そして全国の闘争団、争議団、労組、市民団体の模擬店が賑わった。
 ステージでは、バンド演奏、田中哲朗さん(沖電気争議)の歌とトークなどがあり、ロバート・スミスさん(声を上げる軍人家族の会)の報告、高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)の10・25国際共同行動に向けてアピール、そしてさまざまな争議団、国労闘争団、全動労争議団、千葉動労争議団、国労に人権と民主主義を取り戻す会からの決意表明、そして来日して闘いつづける韓国・金属連盟シチズン労組からの発言があった。
 最後に星野良明東京清掃労組委員長が閉会のあいさつ。闘う闘争団の主張の正しさがいっそう明らかになってきている、いまこそ労働者は大きく団結してリストラ攻撃に反撃していこう。
 団結まつりは大成功で終了した。

                    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 団結祭りでは、「有限会社・協同倶楽部」の記者会見もおこなわれ、社長の前北富雄さん(北見闘争団)が活動についての報告と物資販売について要請を行った。
 国労は一九九一年に労闘争団の運動資金を支える目的で国労生活事業センターが発足させ翌年に法人として株式会社アルバを設立した。ところが、国労本部は四党合意に反対する闘争団に生活資金支給を停止し、アルバ経由の物資販売も拒否している。協同倶楽部は一〇四七名の不当解雇撤回をめざして闘争団支援の物資販売をしている。
 今回、闘争資金作りと生活資金対策にむけた企画で、倒産企業の再建を目指して闘っている自主生産ネットワークの仲間の協力を得て、携帯電話のストラップをつくった。これは、音と光の夜汽車シリーズの第一弾でSLのD51型だ。受信すれば光るだけでなく、携帯電話にダウンロードすればあのD51汽笛が自然音で聞こえる。
 自主生産ネットの武田和治さんは、携帯ストラップではミニチュア電車のものは他にもあるが、汽車の自然音を出せるのは他にはないと技術的にも先端を行っていることを強調した。
 つづいて前北さんが着信の実演。機関車の懐かしい汽笛が響いた。
 新しい段階に突入した国鉄闘争の前進のために、多くの人びとの注文が寄せられることが期待される。是非、ご購入を!

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有限会社 『協同倶楽部』 北海道旭川市宮下通り4丁目左1号 国労旭川会館内
TEL 0166(20)7228 / FAX 0166(20)7229

Eメールアドレス kyodoclub@luck.ocn.ne.jp 


NTT十一万人リストラ反対!不当配転を許さない!

            
電通労組が「不当配転取消」訴訟

 十月一七日、東京・全水道会館で「NTT十一万人リストラ反対!不当配転を許さない!10・17東京集会」(主催・電気通信産業労働組合)が開かれ、電通労組員をはじめ一二〇名の労働者が参加した。
 NTTの大リストラの中で、賃金三割カットの退職・再雇用を拒否して、東北などから首都圏に「見せしめ・報復」の遠隔地・異業種に不当配転配転された。この日、電通労組の組合員九名は、東京地裁に「不当配転取消し」を求めて提訴した。請求の要旨は、配転先に勤務すべき労働契約上の義務がないことを確認し、原告らへの各金三〇〇万円の支払いである。
 はじめに電通労組大内忠雄委員長があいさつ。裁判闘争の課題は、第一にNTTリストラの違法性・不当性を社会的に暴露することだ。次に小泉構造改革攻撃の雇用破壊の性格を明らかにすること、NTTの公共性が儲けのために破壊されており企業の社会的責任を追及していくことだ。この闘いは、小泉構造改革を打ち砕き、戦争と新自由主義、経済のグローバル化に反対するものでもある。NTTの中でリストラ反対を闘う全ての労働組合が共同の闘いを進め、労働者に勇気を与えるものにしていきたい。
 連帯のあいさつが、全国労働組合連絡協議会子島利夫事務局長、全国一般全国協議会中岡基明議長をはじめ、神奈川県共闘、全統一労働組合コーリン分会、東京東部労働組合、闘う闘争団、NTT一一万人リストラ反対宮城県共闘、通信産業労働組合、全国一般東京労組NTT東日本関連合同労働組合、大阪電通合同労組、四国電通合同労組、ATTAC―JAPAN首都圏、SUD―PTT(フランス・郵政電信電話労働組合から行われた。
 来日してシチズン本社への抗議・要請行動を闘っている韓国シチズン労組は、韓国工場の閉鎖と中国移転の攻撃に反対する闘いを報告した。
 つづいて新美隆弁護士が、裁判闘争の意義と争点について発言した。
 最後に、九名の原告が壇上に並び決意表明が行われ、前田裕晤電通労組全国協議長の音頭で「団結頑張ろう」をおこなった。


中国での「対日新思考」をめぐる議論
    
 中国の対日政策の「変更」についてさまざまにマスコミ報道されている。その契機となったのは、中国の隔月刊学術雑誌『戦略と管理』二〇〇二年第六期(二〇〇二年一二月)に掲載された馬立誠氏<「人民日報」評論員(論説委員)>の「中日関係新思惟―中日民間之憂」(「対日関係の新思考」)という論文であった。
 そこでは次のような主張が展開されている。「閉幕したばかりの共産党第一六回大会では、『新たな創造』が強調された。対日関係でも、そうでなくてはならないと思う。古い観念を投げ捨て、新思考を始動させることは、今この時にあたって、きわめて重要なことだ。まずは、戦勝国、大国としての風格を持つことだ。日本に対して苛酷である必要はない。戦争が終わって、もう六十年近くもたっているのだ」、「村山富市・元首相、小泉純一郎首相らは、中国の盧溝橋や瀋陽などを相次いで訪れ、哀悼をささげ、日本が侵略戦争を発動したことへの反省を表明している。日本の謝罪問題はすでに解決しており、文書化の形式にこだわることはない」、「「(第二の経済大国となった日本は)アジアの誇り」、「政治大国、軍事大国になろうとする日本の希求、例えば平和維持活動での海外派兵に対して、我々はびくびくしたり疑ったりすることはない」。馬氏は、こうした日本評価の一方、中国で台頭している反日反米の民族主義については、現代の「義和団」であり「自大」「排外」主義だとして厳しく批判している。
 これを「読売新聞」(二〇〇二年一二月一二日)は「人民日報の著名評論員、自国の<反日>行動批判」として報じた。この記事が、今回の事態のはじまりとなった。
 つづいて『戦略と管理』二〇〇三年第二期(二〇〇三年四月)には、中国人民大学教授の時殷弘氏の論文「中日接近と<外交革命>」が掲載された。主要な論点は、国際情勢の機軸に米中対決をおき、対米牽制のため日中の接近をはかるべきであるという。時氏は、そのために、@歴史問題における日本政府の現在の態度で満足する、A日本のODAにもっと感謝の意を表す、B日本の軍事大国化への懸念を公に表明することを控える、C東アジアの政治・安保問題での日本の大国としての参加を積極的に要請する、D日本の国連常任理事国入りの希望を積極的に支持する、という政策提言を行っている。 
 馬、時両氏の論文はいくつかの雑誌などに訳載され、「読売新聞」「産経新聞」や「文藝春秋}「中央公論」をはじめマスコミは、馬・時論文は中国共産党・政府の意を受けたものであり、中国の対日政策が劇的に軟化したという論評がつづいた。ちなみに両氏とも日本問題の専門家ではない。
 そして、この一〇月に、「対日関係の新思考」をはじめ馬立誠氏のいくつかの文章が、「中国で大論争を巻き起こした今年最大の書」なる宣伝文句をつけ、中央公論社から『〈反日〉からの脱却』(四六判 四〇〇頁 二九〇〇円)と題して出版された。訳・解説の杉山祐之氏は、昨年一二月の「人民日報の著名評論員、自国の<反日>行動批判」を書いた読売新聞記者である。
 こうした中で、右派潮流は、中国国内にも日本の主張を理解する空気が高まっている、歴史問題・尖閣列島問題・首相の靖国参拝問題などでの日本側の対中国強硬政策が功を奏した、中国は屈しつつあると評価するまでになっている。
 たしかに中国において、対日政策をめぐる討論そのものでは、この一〇年くらい、「百花斉放」「百家争鳴」といっていいほどの多様な意見が出されている。その背景には、冷戦終結とソ連崩壊、アメリカの覇権主義・強権政治の露骨化などの国際情勢の激変、日中間では、両国の経済関係の緊密化、日本の政治大国化と中国の経済大国化、「周辺事態」法と台湾の関係、日本の右傾化とりわけ小泉内閣発足後の状況と中国側の反発などがある。当面、中国は経済建設を中心においており、日本との摩擦を避けようとしていることは間違いない。だが、日本は「周辺事態」の中に台湾を位置づけ、日本・台湾関係を格上げし、歴史教科書問題、小泉の靖国神社参拝、あいつぐ閣僚の暴言、自衛隊海外派兵、そして憲法改悪という動きを強めている。
 ドイツはナチスの犯罪を総括して謝罪し、補償を行った。こうしてヨーロッパでの和解・共同が実現した。これに反して、日本支配層は、かつての侵略戦争を反省して中国をはじめアジア諸国・民衆と真の和解を実現する道を自ら閉ざす方向に進んでいる。
 中国では、日本からの逆輸入の形で、馬論文は有名になり、『<反日>からの脱却』に収められている「『対日関係の新思考』への反響」にもあるように、馬論文は大論争を引き起こすことになった。 
 中国のもっともポピュラーなインターネットのひとつ「人民網」も中国での馬論文をめぐる「騒動」の一端を示している。その二〇〇三年一月一七日のものには、「小泉首相の靖国参拝問題、歴史専門家も厳重抗議」という記事があった。市民の問に、中国抗戦史学会会長の白介夫氏(元北京市政治協商会議主席)、中国抗戦史学会執行会長の劉述礼氏が答えていた。馬氏についてもふれられている。
「我が国の外交は内政不干渉の原則に基づいており、我々が靖国参拝を非難することは法理上できないのではないか」という市民の問に、白介夫氏は「私は小泉氏の靖国神社参拝と内政不干渉の問題を混同すべきではないと思う。これは日本の内政問題ではなく、中日友好関係に関わる事柄だ。彼が参拝したのはかつて中国に対し残酷な侵略を行った重大な戦争犯罪者を祭った靖国神社なのだ。戦争犯罪者を参拝するということは、彼らの行為や中国に対する侵略行為を正当化することにほかならない」と答え、また市民の「日本は後ろ盾があるから怖くないのではないか?我々の側にも馬立誠氏のような人間が多すぎるのではないか」という問に、劉述礼氏は「人民日報指導部によれば、馬立誠氏は同紙評論部主任ではなく、ただの編集記者にすぎない。彼の見方は個人的なものであり、人民日報や政府の見方を代表しているわけではない」と答えている。中国でも馬氏の主張が問題となっているのがわかる。
 新聞・雑誌でさまざまな主張が表明されているが、ネット上ではもっと激しい論戦がくりひろげられているようだ。
 日本では馬・時論文がマスコミに大きく報道されている一方で、それらに対する批判は余り目につかない。だが、最近、『日中「新思考」とはなにか―馬立誠・時殷弘論文への批判』(新書版 一六八頁 一四〇〇円 )が出た。著者は、金煕徳・中国社会科学院日本研究所教授(中華日本学会常務理事)と林治波・「人民日報」評論員(論説委員)。出版は日本僑報社(電話 〇四八―四三二―七三三二)。その「あとがき」で金煕徳教授は、「『馬・時文』に何らコメントする気にはならなかった。中国国内の対日政策の討論で様々な視点が提示されるのは健全なことと思われる一方、『馬・時文』をめぐる議論そのものは、日本研究の専門分野とは相対的に離れたものだと考えたからである。しかしそれから半年の間の推移をみていると、『馬・時文』を巡って日中間で起こった白熱した議論は、一向に収まる気配をみせない。…この議論は、現実の日中関係と密接に関わるイッシューとなってしまい、重要な研究課題として浮上してきたのである」として「日本国内でも愈愈『対中新思考』をめぐる活発な論議を始めるべきではないだろうか。日中共同で二一世紀相互関係に関する『新思考』を模索する段階に入っている」と書いている。
 馬氏の論文は、日本の政治経済についての皮相な分析と超楽観的な日本賛美、それにもとづく政策提言、それがあたかも中国の対日「宥和」政策への転換を意味するとして、右よりの一部勢力に大いに持ち上げられ、それが現在の日本政治の右傾化を合理化するように使われている。北東アジアの平和が、求められる現在、新たな時代を切り開く運動にとって、馬立誠、時殷弘氏らの分析と方針が大いに持ち上げられているのにたいして、金煕徳、林治波氏らの批判は日本でもっとよく知られていくべきであろう。(MD)


複眼単眼

   
 利益優先システムと大学病院の機能不全

 歯の関係で近くの大学病院に通っていた。一回目の診察のあと、痛み止めなどの薬をもらって様子をみようということになったが、その時に「以降は都合で担当医が替わる」と告げられた。
 二回目にいくと、予約していたにもかかわらず「(新しい担当医は)他の患者さんの手術中だから」ということで、臨時に別の医者が私と会って、「代役ですみません。薬は前回と同様のものを出しておいてくださいと言われてます」といって、診察もしなかった。
 それから一ヵ月後、病院にいって、また決まり通りに受け付けに予約票をだして待っていたが、四〇分も待っても案内もなにもない。
 窓口の側に「四〇分以上待っている方は受け付けにお尋ねください」とはり紙がしてあるので「何も連絡ないが、どうしたのか」と聞くと、しばらく調べてから、看護士が「予約票を間違って違う場所に置いてしまい、その予約票は誰も見ていなかった。すみません。しかしすでに担当の先生は手術に入って五時間はかかります」という話。「すみません」は何回も連発されたが、気分はおさまらない。
 私は医者にいくために、前々からその日は空けておくという努力を払い、その挙げ句に、何時間もまったく無駄にされてしまったのだ。
 よく言われることだが、病院というやつは、長い長い時間待たされて、五分程度の診察、そしてまた薬を出してもらうのに長く待つのだ。
 医者のほうは五分ごとにベルトコンベアに載った何かのようにつぎつぎと診察し、薬の処方箋を書くわけだが、患者のほうは生きた人間で社会生活もしている。利益優先システムの中の医者は患者が待っていること自体の苦痛などはほとんど考えないか、考えられない。
 抗議を受けると「すみません。今後は気をつけます」の連発で、出てくる関係者が全てそういうのだが、心から謝罪しているとは思われない。誤っておかないと面倒なことになるからというのが、こっちにはありありとわかる。特に大学病院にはこういう傾向があるのではないか。
 さんざん抗議すると科長なども出てきて「すみません、すぐ代わりの者が診ますから」「そういうことのないような教育をしているのですが、偶然、二回重なったわけでして、今後、さらに気をつけます」などというのだが、謝られてもこちらは知ったことではないし、喧嘩したあと自分の口の中をいじってもらうほど、こちらも鷹揚ではない。結局、啖呵をきって、「もう行かない、転院する」と心に決めた。
 この喧嘩は私にとっては何の益もないわけで、後味の悪さだけが残る。それにしても病院というやつはどうしてああも威張るのか。患者のほうは自分の体が人質にとられてるようなものだから、すこぶる不利な立場に置かれる。高い医療費をとられた上に、患者のほうがペコペコするのはまったくおかしいことだ。
 こんな不当な扱いとは喧嘩してしまうという性分は、当分、治りそうもない。(T)