人民新報 ・ 第1113 号<統合206号> (2003年11月15日)
目次
● 総選挙の結果と今後の課題 国会内外で改憲反対の巨大な共同を
● 熱気溢れる11.3憲法集会
● レイバーフェスタ2003〜自由のうたを歌おう
● 東北アジアの平和を考える アリランに虹を 今、日本は何をすべきか
● もう一つの世界を! WSF東京プレフォーラム
● 米国のイラク派兵要求に反対する日韓(韓日)共同宣言 賛同団体 【日本側参加団体】 そのA
● 11・3憲法集会での発言(要旨)
講 演 「法律を慈(いつく)しむとは」 ノーマ・フィールドさん(シカゴ大学)
講 演 「9条の発信がアジアの願い」 小森陽一さん(東京大学)
特別発言 「教育基本法改悪について」 大内裕和さん(松山大学)
● 天木直人氏(前駐レバノン大使)、小池清彦氏(元防衛庁官房審議官、加茂市長)、イラク派兵を厳しく批判
● 資料 / 新潟県加茂市の小池市長(元防衛庁教育訓練局長)のイラク派遣を行わないことを求める要望書
● 複眼単眼 / 醜悪な日本人と中国学生運動考
総選挙の結果と今後の課題
国会内外で改憲反対の巨大な共同を
衆議院議員総選挙が終わった。結果を見て、苦い思いをかみ締めながらも「やはりそうか」という感想を抱いた人が少なくなかったのではないか。
自民党は小泉首相の高率の人気のあるうちにとばかりに解散にうってでたものの、選挙では目標とした単独過半数には達しなかった。保守党の解散合流、無所属の一部取り込みで単独過半数をようやく確保し、公明党との連立で安定過半数を維持、小泉政権の継続に成功した。民主党は目標とした「二〇〇議席で政権交代」は逃がしたが議席を大幅に増やし、比例代表選挙区では自民党を上回る比較第一党となった。共産党、社民党は議席は半減以下で大幅に後退した。この両党の減少部分の多くは小泉政権批判票として、野党第一党の民主党に吸収された。民主の議席の大幅増とはいっても、与党が若干減らした部分とあわせて、この野党の減少分が民主に回っただけで、与野党の構造的にはあまり変化はなかったことも確認しておきたい。
また、マスコミなどの懸命の投票呼びかけにもかかわらず、多くの人びとが棄権し、投票率が「戦後」二番目に低かったということも特記しておくべきことである。
今回の選挙で、何が争われたのだろうか。
特徴的なことは、マスコミを通じて大々的に「政権公約(マニフェスト)選挙」とか「政権選択選挙」などということが喧伝され、二大政党制の実現への関心が煽りたてられたことである。そしてこうした政治の実現こそが民主主義であり、この国の政治の進歩であるかのように語られた。しかし、実際に語られた「改革論争」は、長期にわたる慢性不況下での人々の苦しみをよそに、破綻状態にある年金制度の改革でも、道路など公共事業でも、郵政民営化問題でも、消費税の引き上げ問題でも、与党と野党民主党の政策の間には大差がなく、結局は「小泉構造改革の推進」対「構造改革の本家」の争いであり、「改革」という名の社会的弱者への痛みのしわ寄せ政策の手順や速度の争いに過ぎなかった。小泉改革といわれたこの三年余の経済・財政政策の破綻と民生の破壊推進の悪政と真に対決する立場は、自民対民主の政治構造のなかには存在しなかった。
かろうじて自民と民主の間で対立点として存在した「自衛隊のイラク派兵問題」は、それが今後の国の進路をめぐる最重要問題の一つであったにもかかわらず、争点として大きく浮かび上がることはなかった。この問題では攻める側の民主党の中に、直前に合流した旧自由党のみならず、論争に耐えうるほどの深い合意が形成されておらず、選挙戦の現場ではこれらの問題はほとんど論争にならなかった。
もうひとつの重要課題である「憲法問題」も、これと似た構図であった。自民党のマニフェストは「二十一世紀の新しい日本にふさわしい新憲法の草案を準備〜立党五〇周年を迎える二〇〇五年に憲法草案をまとめ、国民的議論を展開する。個人のプライバシー、環境等、新たな課題に対応するとともに、誰もが自ら誇りにし、国際社会から尊敬される品格ある国家を目指し、あるべき国家についての理念を明らかにする。…憲法改正の具体的な手続きを定める『国会法改正』『憲法改正国民投票法』を成立させる」と書いた。しかし、この数十年来はじめて改憲を選挙公約で公然とうち出した自民党に対して、「論憲」「創憲」を主張する民主党では、対立・差異が鮮明にならず、「政権選択」の争点から外されたのである。
これらの派兵問題、改憲問題での政府・連立与党批判は社民、共産のみが主張することになったが、この両党の主張はマスコミによる「二大政党選択」「政権選択」の選択肢のキャンペーンによってかき消された。にもかかわらず自民党は安保・防衛問題も改憲も信任されたという巧妙な仕掛けができた。事実、選挙後、派兵基本計画を国会審議にかけない理由として、小泉首相は「選挙で信任されている」と居直ったのである。
小選挙区制のもとで、自・民の対立が演出されれば、自民党と一体になって選挙に臨んだ公明党は別として、組織力がない社民党や、一定の組織力があっても単独で闘った共産党は、存在感がきわめて薄くなる。組織票以外の支持票は死に票を恐れて野党第一党に流出しがちである。バーチャル政党「老人党」なども社民、共産の支持者に対して「民主党への評価は留保して、今回は民主党へ」という呼びかけをした。だが、こうした善意の政権交代待望論が、結果として多様な民意を国会に反映させるという民主主義本来のあり方の否定につながる結果を招いたのは悲劇である。
この問題の解決は両党の日常の活動のあり方をふくめ、今後の大きな課題である。
社民党は一部の選挙区で民主党との選挙協力をしたし、選挙中には民主党との連立政権もありうるとの党首見解も表明した。しかし、民主党との選挙協力は一部を除いてほとんど効果がなかった。
共産党は二大政党の選択のキャンペーンに埋没させられる危険を察知して、民主党を自民と同じとする批判キャンペーンを強めながら、社民党についても「改憲派の民主党」との協力を厳しく批判し、社民は真の護憲派ではなく、共産党のみが唯一の野党だとするキャンペーンをした。この共産党の選挙戦術は小選挙区での全選挙区独自候補擁立の戦術などと合せ、議会唯一主義の誤りであり、統一戦線形成・促進の立場に欠けるものとして批判されなければならない。
小選挙区比例代表並立制という、多様な民意を圧殺する悪しき選挙制度の下で、反政府諸政党が前進することはもともと容易ではない。多数政党によって作られた選挙制度の下での議会選挙の論理と、民衆運動の論理は少なからず矛盾をひきおこすのは必然である。今回も見られたように、議会唯一主義は他の野党との差別化を強調し、攻撃するために民衆運動の共同を破壊するものとなる。議席の多少の増減はあれ、九〇年代以降の連立政権の時代はこの繰り返しであった。社民党や共産党が今回の敗北を繰り返さないためには、この議会唯一主義から脱却し、焦眉の課題である憲法改悪反対の問題で、可能なすべての勢力の結集による巨大な民衆のネットワークの形成のために働くことである。事態を打開する鍵は、国会内で圧倒的な多数を占めつつある改憲派に対抗するもうひとつの巨大な力を国会外で作り出すことにこそある。
熱気溢れる11.3憲法集会
憲法9条の改悪を許さない数百万人の署名を
一一月三日、東京・文京区民センターで、「イラク占領に自衛隊もお金も出さないで 改憲のための国民投票法はいりません 11・3憲法集会」が開かれた。主催は、11・3憲法集会実行委員会(アンポをつぶせ!ちょうちんデモの会、「憲法」を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、STOP改憲・市民ネットワーク、全国労働組合連絡協議会、日本消費者連盟、日本山妙法寺、日本YWCA、VAWW―NET Japan、ピースアクション21、ふえみん・婦人民主クラブ、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、平和をつくり出す宗教者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会)で、週刊金曜日が協賛した。集会には、会場に入りきれないほどの五一〇名が参加し、小泉内閣の憲法改悪と戦争政策に反対する熱気が溢れるものとなった。
はじめに主催者を代表して内田雅敏さん(弁護士)があいさつした。
いま憲法めぐる情勢には厳しいものがある。周辺事態法、テロ特措法、有事法制、イラク特措法がつぎつぎにつくられ、陸上自衛隊がイラクに派遣されようとしている。憲法調査会は答申を準備しており、来年早々には国民投票法が国会にかけられようとしている。いま、憲法を変えて、ますますアメリカと一体化しアジアから孤立するのか、それとも日米同盟の呪縛から逃れ、北東アジア共同の家をつくるのかの大事な瀬戸際にある。今日は全国でさまざまな集会が行われている。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という憲法の三原則を守り実現する闘いを進めて行こう。
門間幸枝さんとピース・シンガーズのミニミニ・コンサートの後、JVC(日本国際ボランティアセンター)のイラク現地調整員の原文次郎さんが、イラクの現状について報告した。
つづいて航空安全会議議長の大野則行さんが、戦争のできる国になるのを阻止する陸海空港湾二〇団体などによる活動について報告し、憲法が保障する自由および権利は国民の不断の努力によって保持しなけれならないこと、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任をおうのであって、公共の福祉は政権与党や大企業への忠誠ではないし、ましてや国連を無視し全世界の世論を無視して他国民の命を勝手に奪おうとするアメリカへの奉仕では絶対にない、と述べた。
講演は、シカゴ大学教授(日本文学・日本文化専攻)で日本を熟知した米国人として日本杜会に鋭い問題提起を行っているノーマ・フィールドさんが「法律を慈しむとは」と題して行った(三面に要旨掲載)。
休憩の後に、小泉・ブッシュの戦争政策を批判する朗読劇「悪魔のささやき」が上演された。
二人目の講演は、「9条の発信がアジアの願い」をテーマに憲法再生フォーラム事務局長の小森陽一東京大学教授(日本近代文学専攻)が行った(三面に要旨掲載)。
特別発言「教育基本法改悪について」は、教育基本法改悪阻止の市民運動に熱心に取り組んでいる大内裕和松山大学助教授(教育社会学専攻)(三面に要旨掲載)。
司会者より会場で行われたカンパには、一九万三千七百三十五円が寄せられたことが報告された。
集会の最後に、許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さんが「今後の運動について」の提起を行った。
この国は大きな曲がり角にたっている。この流れに私たちが立ちはだかり阻止するために何をするのかが問われている。小泉首相は、選挙が終わったら、イラク派兵の基本計画を特別国会にかけるといっている。はじめて、戦時の戦場派遣が行われる。
政府は、特措法では間に合わない、派兵恒久法で、自衛隊をいつでもどこへでもだせるようにしようとしている。日本国憲法の平和主義がズタズタにされようとしている。憲法改悪を許さない態勢をつくるために、来年の五月三日の憲法集会は、共同を強化し、さらに大きな結集をかちとり、五月三日の一日だけでなくだけでなく、来年の五月三日までの半年間に恒常的な共同行動をおこなう。そのもっとも中心的な柱は憲法九条の改悪を許さない署名で、数百万を目標に運動を展開したい。その力を基礎に改憲阻止の五〇〇〇万署名を提起・実現して行きたいと考えている。いろいろ意見はあるとしても憲法九条の改悪を阻止するために一緒に手をつなごうということをこの署名の過程で呼びかけていきたい。憲法九条改憲問題では、私たちは少数派ではない。日本全国の、また全世界の人と手を繋いで絶対に憲法九条改悪を阻止して行こう。
レイバーフェスタ2003
〜自由のうたを歌おう
一一月八日、労働スクエア東京ホールで「レイバーフェスタ二〇〇三〜自由のうたを歌おう」が開かれた。
第一部の「映像メッセージ〜世界から日本から」は、あなたがつくる三分ビデオ一挙公開と副題され、「立ち上がるマイノリティーと女性たち〜アメリカの新しい労働運動」、「あしがらさん」、「ディストピア!JAPAN」、「ブッシュを裁こう」、「僕の学校現場日記」、「山野和子のひとり争議」、「娘の時間」、「ヨドバシカメラの社員虐待事件」、「ジャパンユニオンの紹介」、「弥生運送支部の闘い」、「反リストラ産経労・リストラとたたかう男」、「首切り自由は許さない実行委員会・7・14最高裁包囲デモ」、「日韓生コン労働者共同闘争委員会・われら生コン労働者」、「台湾鉄道の民営化反対! 二〇〇三年八月交流記録」、「ケン・ローチ世界を語る」、「韓国の音楽グループ・ZEN」、スティーブ・ゼルツアーさんの「イラク反戦運動への弾圧」などが上映され、制作者などが発言した。現場の人びとによる映像を使った訴えは、言葉や文字だけによるものにくらべて説得力があり、労働運動の発展のための有力な手段であることを感じさせられた。
第二部は「闘いから生まれた歌」。横井久美子さんのミニコンサート、沖電気争議団の田中哲朗さんの歌、沖縄のうた、韓国のうたなどがつづく。
第三部では、アメリカでリストラや戦争政策と闘うマイケル・ムーア監督の映画「ザ・ビッグ・ワン」が上映された。映画では、唯一の超大国になったアメリカ内部の悲惨な現実、そこでは突然の解雇、貧富の差の拡大、産業の空洞化と地域の荒廃が広がっていること、そして世界的な靴会社ナイキ会長をムーア監督自身がインタビューし、それが段々と世界の労働者を搾取する大金持ちにたいする逃げ場のない追及に変化していくところなどが描かれていた。
最後のトーク&ディスカッションでは、木下昌明さん(映画評論家)、広木道子さん(CAWネット・ジャパン)、ケント・ウォンさん(アメリカ労働運動家)、平賀健一郎さん(中小労組政策ネット)が発言。アメリカにおけるアジア系労働者の組合の指導者であり、大学で労働運動研究者であるケント・ウォンさんは、アメリカの労働者構成の変化、とくに女性、移民労働者、マイノリティーが増えてきているが、これまでの労働組合はその対処に失敗してきた、だが、いま、新しい動きとして、それらの人びとの中からオルグを養成し、組織化を第一の優先課題として取り組んでおり、そこに労働運動の未来があると語った。
東北アジアの平和を考える アリランに虹を
今、日本は何をすべきか
朝鮮半島情勢の緊迫化に伴い、市民レベルで、さまざまな形による北東アジアの平和を求める試みが行われている。
十一月一日午後、東京の全電通ホールで「東北アジアの平和を考える アリランに虹を 今、日本は何をすべきか」というピース・トーク・ライブが開かれた。主催したのは音楽家の喜納昌吉さんらによる実行委員会。三五〇人の市民が参加した。
在日の音楽家や舞踊家、喜納さんのミニライブなどとあわせ、金子勝・慶応大教授、姜尚中・東京大教授、喜納さんによるシンポジウムが行われた。それぞれ、要旨、以下のような発言をした。
金子氏は、自衛隊のイラク派兵が日本の進路を決定的に変える契機になる。慣れっこになってはならない。多くの国々が米国の提案に面従腹背でそっぽを向いているのに、日本政府だけは派兵でも、資金でも協力している。湾岸戦争でも当初の九〇億ドルが一三〇億ドルに増えた。今度も五〇億ドルですむと思ってはならない。いま米国政府は一枚岩ではないが、それこそが危険だ。国家安全保障会議は機能不全だ。米国の双子の赤字は深刻だ。米国の均衡やバランスが崩れる要素は大きい、と指摘した。
姜氏は、北朝鮮が危険だから米国のイラク戦争に協力しなければならないと言う図式を日本のメディアがあおった。朝鮮では休戦協定五〇周年だ。北は核というわれわれが肯定し得ない禁じ手を使って、アメリカに向かった。しかし、いま六者協議がはじまってる。これは成功するのではないだろうか。米国は中東を理解していない。日本の対朝鮮外交もボタンのかけ違いでAPECで破綻した。イラクではテロリストが暗躍していると言われるが、いつでも市民がそれになりうると言う意味で、スペイン市民戦争の義勇軍の状況ではないか。イラク派兵は日本にとって、八・十五にまさるとも劣らない歴史的事件だ。日本は極東の英国化した。一〇〇〇万人が海外に出ている状況を外務省はどう考えているのか。ありうるアメリカの自損自壊で、日本の強硬派は自存自衛の核武装化へ行く可能性がある、と警鐘をならした。
喜納氏は、武器や経済力でものごとを解決する方向を捨てるべきだ。人類や地球はもはや痛みに耐え切れなくなっている。民族益、国家益ではなく、地球益、人類益を考えるような流れを作らなくてはならない。この人類のクライシスをチャンスにかえよう。六者協議もチャンスの契機にしようと訴えた。
もう一つの世界を! WSF東京プレフォーラム
十一月二日、東京・文京区民センターで、一八〇人が参加してWSF(世界社会フォーラム)にむけてのプレフォーラムが開かれた。世界社会フォーラムは、多国籍業と大国だけの世界経済フォーラムに対抗して、二〇〇一年、ブラジルのポルトアレグレ市での第一回から毎年、全世界から環境や貧困の問題に取り組むNPOや労働組合などが数万人の規模で集まって会合を開くもので、来年の一月に第四回フォーラムはインドのムンバイ(ボンベイ)でひらかれる。
メイン集会でのWSFの説明の後、分科会に別れて報告・論議を行った。
反戦・平和分科会では、アジア平和連合、ピースボート、原水協からの報告の後さまざまな反戦運動からの問題提起があった。
労働分科会では、韓国シチズン労組、台湾の鉄道民営化、アジアの労働運動のネットワーク活動、全労連の国際活動、日雇い労働者の闘いなどの報告が行われた。
ジェンダー分科会では、グローバリゼーションと連帯経済、ジェンダーと人間の安全保障、国家安全保障から人間の安全保障へ、ジェンダー・環境都市ネットワークに向けて、グローバルとローカルを結ぶ―ジェンダー視点からの地域政治の試み、ジェンダーの視点からの教育、世界社会フォーラムから北京プラス10に向けて、などの報告が行われ、連帯経済はオルタナティブになりえるのかなどの問題で活発な論議が行われた。
WTO・経済のグローバル化分科会では、GATTの成立から先ごろのWTOカンクン会議(メキシコ)の決裂までの歴史を中心に詳しい説明がなされた。
ユース分科会では、ワールド・ピース・ナウなどさまざまな面白い活動をしている若者のからの報告を聞いて、もう一つの世界を楽しく創ることについてディスカッションを行ない、一人ひとりの問題意識の大切さなどの意見が出された。
メディア分科会では、選挙の時の報道や最近の中国・西安事件、またインターネットが反戦平和運動にもたらした影響などについて論議が行われた。
米国のイラク派兵要求に反対する日韓(韓日)共同宣言
賛同団体 【日本側参加団体】 そのA
(共同宣言文は本紙前々号に掲載)
全労連全国一般・法律会計特許一般労働組合池袋分会/全労連全国一般労働組合東京地方本部/全労連・全国一般労働組合東京地方本部文京台東分会/全労連・全国一般労働組合東京地方本部平和民主主義委員会/第9条の会・オーバー東京/第九条の会ヒロシマ/立川自衛隊監視テント村/たんぽぽ舎/茅ヶ崎平和の白いリボンの会/地球市民講座(天草)/CHANCE!pono2/通信産業労働組合/天皇制に問題あり!福岡連絡会/天皇制の強化を許すな!京都実行委員会/天皇制を考える広島ネットワーク/東京合同法律事務所/東京自治体労働組合総連合会/東京平和委員会/徳島県平和委員会/特定非営利活動法人 草の根援助運動/苫小牧の自然を守る会/とめよう戦争への道!百万人署名運動/とめよう戦争への道!百万人署名運動・千葉県連絡会/富山県平和委員会/仲立証券争議支援共闘会議/長野県アジアアフリカラテンアメリカ連帯委員会/長野ピースサイクル実行委員会/名護ヘリポート基地に反対する会/日韓教育フォーラム/日韓民衆連帯全国ネットワーク/日中友好協会新宿支部/日朝協会/日朝協会鹿児島準備会/日朝協会東京都連合会/日本科学者会議/日本科学者会議核戦略問題研究会/日本科学者会議東京支部/日本科学者会議東京支部武蔵野通研分会/日本カトリック正義と平和協議会/日本キリスト教協議会国際関係委員会/日本キリスト教団神奈川教区 国家秘密法反対特別委員会/日本基督教団九州教区平和・人権部門/日本基督教団西中国教区宣教委員会社会部/日本キリスト教団新発寒教会/日本国際法律家協会/日本国際法律家協会東海支部/日本国民救援会諏訪地方支部/日本ジャーナリスト会議/日本消費者連盟/日本の戦後責任を清算するため行動する北海道の会/日本反核法律家協会/命どぅ宝ネットワーク/ヌチドゥタカラ(命こそ宝)ヒロシマ/練馬平和委員会/NO!AWACSの会浜松/NOレイプNOベース女たちの会/ノリト鳴鼓(風物)/バークレーに続こう!有事法制にNO!ピースアクション/VAWW−NET Japan/派兵チェック編集委員会/浜松月桃の会/林百郎法律事務所/林百郎法律事務所労働組合/反原子力茨城共同行動/反資本主義行動/反天皇制運動連絡会/はんてんの会(兵庫)/ピースアクション21/ピースアクション浜松/
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11・3憲法集会での発言(要旨)
講 演 「法律を慈(いつく)しむとは」
ノーマ・フィールドさん(シカゴ大学)
日本国憲法は第二次大戦の大変な代償を払ってえたものです。アメリカでは、休日に一般の市民が集まって憲法を論じることはありません。私のまわりにも、戦争に反対している人はいるが、集会にまで行くという人はほとんどいません。現状に対する意識が希薄だと思います。
私は、自分の国の憲法を論じる集会がもたれることをうらやましいと思います。日本の国民が憲法をみずからのものにしてきた歴史を世界に広げなければなりません。その存続が危ぶまれている現在だからこそ、そう感じていています。平和をぬきにしてはすべてがはじまりません。いまわれわれが空爆の対象であったら、ここに集まることもできないし、毎日の生活、仕事にいくこともできません。それらすべての生活の根拠が平和なのです。しかし、その実感をとらええていくことは難しい。
憲法九条は非現実的だと言われるが、法律というものは、いずれにしろ多かれ少なかれ抽象的なものです。身近にある現実とはすぐには結びつきません。
今日のお話のタイトルは「法律を慈(いつく)しむ」です。いささか意外に思われた方も多いと思います。私に取っての課題は、法律というものの抽象性をどうやって身近なものとするのかです。抽象的なものを具体的な行動、具体的な生活環境、私たちが知っている人びとの現状に訳していかなければなりません。同時に、逆に創造力を発揮して、知らない人たち、知らないところ、知らない事件が起こったところに身をおいてみることです。そうした二つのことが、九条に対する私たちの感性を育てていきます。
ひさしぶりに日本国憲法を読み返してみました。たとえば第三章「国民の権利及び義務」です。非常に理想的な理念を掲げている素晴らしい章です。この中には、アメリカの憲法や啓蒙思想をうけた法制度の中の言葉が入っていますし、日本国憲法にはアメリカの憲法にないような、ジェンダー・両性の平等などが入っています。非常に感動し涙が出てくるような条項です。また一三条には「すべて国民は個人として尊重される」とある。これはあるべき姿であって現実にはそうなっていません。二五条では「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とあります。健康で文化的な生活が言われていますが、健康を保障する、それだけだって大変なことです。唯一のスーパーパワーとなったアメリカでは、大半の国民は健康を保障されていません。「国はすべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛星の向上及び増進に努めなければならない」ともあります。すべての生活部面ですよ。日本でも大変なことになってきていますが、日本の福祉社会はアメリカにくらべてはるかに健全です。アメリカではまったく放置されています。この憲法二五条も闘って確保して行かなければならないものです。
アメリカの福祉はますます縮小されていますが、イラク戦争は大変な国民の税金を使ってやっている。私の娘は幼稚園の先生になりました。それで、身近にわかってきたことがあります。シカゴ市立の幼稚園から小学校まで遊び場がまったくない。アメリカは、この十数年にわたって公教育を社会的義務としてやってこなかったのです。大都市の有名校以外は多かれすくなかれそういう状況におかれています。イラク戦争が長引けば長引くほど医療・教育は犠牲にされていきます。
徴兵制度がなくなってアメリカの軍隊へは、職、教育、医療が欲しい社会の底辺の人たちが兵士となって入っています。イラク戦争で犠牲になっているのは黒人などのマイノリティーの比率が高くなっています。それで徴兵制復活で犠牲を平等になどという皮肉な発言が出るほどになっています。これが大国アメリカの実情です。宣言、理念というものを大事にして法律の威厳をもたせていかなければなりません。それが政府やっていることの違法性や嘘の度合いをはかる手段になります。
アメリカの憲法の理念など、私たちが尊重したい法律、それを本当に重視していかなければなりません。市民が関心をもって見守らないと、平和と民主主義でも、それを理由にして戦争を起こす嘘が横行します。アメリカはイラク戦争で何と言っていますか。アメリカの戦争は、イラクに個人の尊重など文化的な生活をもたらしていなせん。アメリカの軍隊に入っている人にももたらしていません。アメリカでは9・11以降、とてもいやな愛国者法が出来て、国民に保障されている言論の自由などの人権がどんどん蝕まれています。貧富の差ますます広がっています。アメリカの社会はますます生きにくくなっているのです。日本でもこの状況がすぐそこにまで来ています。日本の人たちに、日本をアメリカのようにしないためにこの事実をひろく知っていただきたい。日本では、政権側がなぜこれほど夢中になって憲法改悪に熱をあげてきたのでしょうか。かれらが九条を破棄しなければならないとおもったところに、九条がはたしてきた役割があります。つまり、戦争への非常に強力な歯止めとして機能してきたのです。また一国平和主義について言われていますが、私は一国でも平和主義があったほうがよい。ないよりどんなによいかわからない。すでにコスタリカのような国もあります。アメリカにここまで密着してきた日本で、憲法の掲げる平和主義でここまでやってきた。このことは他の国の人びとの大きな力になっています。ヨーロッパの国の独立路線とちがって、日本の政府は威厳のない態度をとっています。独立国の尊厳ない小泉さんは一国かいらい国だといわれても仕方がない。
日本ではもうすぐ選挙です。その結果がどうなろうとも、私たちは太平洋をこえて手を携え、憲法九条をまもり世界に広げていきましょう。
講 演 「9条の発信がアジアの願い」
小森陽一さん(東京大学)
私はノーマ・フィールドさんと同じ日本文学研究者で、いままでさまざまな学会で同席してきたが、市民集会では同席し話をするのははじめてのことです。私たちのような文学研究者が、このような場所で話をしなければならないほどに日本の状況は追いつめられているのだと思います。
今日の多くの新聞は、選挙前の世論調査を発表して、年金はどうなる、郵政民営化は、また自民党か民主党か、政権交代はどうなるだろうかなどと報じています。
しかし、今回の総選挙のいちばん大事な争点は隠されてしまっています。しかし、産経新聞は社説で憲法、教育基本法の改正こそが大事だと書き、引退を迫られた中曽根が、自分の手がけてきた憲法、教育基本法ようやく改正される時になったのに引退とはなんだ言っていましたが、そこにこそ今回の最大の争点があります。
この間、国連安保理の決議もなくイラク攻撃が行われ、産経や読売は国連はもう時代遅れだ、アメリカとイギリスの二国間同盟のようなものによって集団的自衛権を行使すれば良い、こちらのほうに現実的な効力があるのだといっている。
九〇年代後半において、日本は戦争する国へ大きく踏み出しました。一九九九年の周辺事態法でアメリカが世界のどこかで戦争を起こした場合に二国間軍事同盟にもとづいて自衛隊が後方支援、これは軍事用語では兵站ということです。後方支援がなければ戦争が行えないし、アメリカを軍事的に支えるようになった。二〇〇一年のテロ対策特措法では、前線に展開していくアメリカの艦船に燃料を補給し続けている。イラクへ向かう艦船への補給も明らかになっています。日本の自衛隊はいまアメリカの無料ガソリンスタンド化しています。イラク復興という美名でアメリカが破壊したイラクの立て直しを世界に肩代わりさせているし、日本は突出した額を支払うことを約束させられています。無料ガソリンだけでなく、無料での現金自動引き下ろし機となっている。
イラク戦争を起こさせない一〇〇〇万人のデモでは、「石油のための戦争NO」がスローガンとなりました。イラクの石油にアメリカは大して依存していないという説もあるが、イギリスや日本は大きく依存している、イラクの石油を支配することによって、イギリスと日本に言うことを聞かせるとうことです。
アジアではどうするか。周辺事態法が通った時に「アーミテージ・レポート」が出たが、それはヨーロッパにおいてイギリスがはたしているのと同様な役割をアジアで日本に果たさせようとしている。憲法九条を改悪して二国間同盟にもとづ8く集団的自衛権が発動できるようにする。それに答えて有事法制三法がつくられた。これは朝鮮半島で戦争が起こったときに アメリカ軍と自衛隊が協力し合いながら軍事行動できるようにするためのものです。
すでに解釈改憲の最終段階に入っています。戦場に自衛隊を送り、そこで武力を行使する。それが、総選挙を前にして私たちが迎えている状況です。
歴史を振り返ってみれば、アメリカは天皇を使って日本支配しようとし、天皇は個人的延命のためアメリカの言うことを聞いた。そして、沖縄をアメリカ世界戦略の拠点へと差し出したのです。一九四七年九月の天皇は、沖縄をアメリカに提供する手紙を送った。いまの憲法はアメリカからおしつけられたといわれる。しかし自衛隊こそが朝鮮戦争の時からアメリカ軍を補完するものとしてつくられたものです。その上、日本全国にこんなにあるアメリカの基地にはおもいやり予算がつけられている。
憲法九条は最高法規であり、戦後の日本の信頼信義の原型をつくっているものです。これをなし崩的に破壊している。これは人間としてやってはならぬことであり、世界に信義を失うことになります。
自民党は二〇〇五年までに憲法九条改悪を中心とした行動日程を決定して、一気に憲法を改悪しようとしている。小沢自由党と合流した民主党は公然とは憲法九条を変えるとは言わず、しかし実際には改憲しようとしている。総選挙後は二大政党によって改憲競争が行われようとしています。総選挙で私たちがやるべきことは隠された争点を明確にすることです。総選挙まであと一週間しかないが、憲法の改悪は最大多数の国民のためにならないこと、福祉や教育、その他すべてが戦争にそそぎ込まれる、これは国の破壊だということを仲間はもちろん、仲間じゃないような人にも訴えていかなければなりません。
特別発言 「教育基本法改悪について」
大内裕和さん(松山大学)
憲法と一体の深い関連をもつ教育基本法の問題について話します。
この二〇年余りにわたって行われてきた教育改革、じつは改悪なんですけれども、それの集大成としての教育基本法の改悪という段階にきている。
教育改革は、「ゆとり」と「個性化」という名のとても耳触りの良いことが掲げられていますが、しかし実際には教育現場を追い込んでいるものです。
「ゆとり」では、学校の完全五日制と学習内容の三割カットが実行されていますが、ゆとりは生まれていません。先生方の百人中百人が、まったくゆとりがなくなったと言っています。さまざまな生活指導とか心のケアとかの教育活動は減っていないし、逆に多様化していて、五日の間、走り回っている状況があります。それでも足りなくて土曜日曜もいろいろ仕事があります。
教科書は薄くなり、時間数減っていて、時には一週間も間があいて、授業の前半に先週に習ったことを思い出させるのに時間が取られていて、ゆっくり教えることが出来なくなっている。そして、ついて行けない子どもが出てきてもどうにも出来ない。いま言われている「ゆとり」とは公教育予算のカット、教育の私事化、教育への社会の責任の法規です。一方で私立の学校では教育時間は減っていない。教育負担できる子どもだけが教育を受けられるということです。もう一つのスローガンの「個性化」ですが、これは現行の教育基本法で言う個性とは全く違って、学校目標の個性化ということです。
また、新しい学力観では、子どもの意欲や態度を採点する、それも教科ごとに採点するということになっています。四〇人学級でこれまでの授業の他にそんなことがどうしてできるでしょうか。結局、手を挙げる回数程度で判断するしかなくなっています。そして、先生方は職員室でその結果をパソコンに打ち込む。他の先生と対話する時間だってなくなります。でも、それが教育委員会でいい先生だと評価されています。このような風景は学校だけでなく日本のほとんどの職場でおこっていることだと思います。先生方も形式的なことばかりが優先されていて、教育基本法とか憲法とか大きな問題には関心がもてなくなっていっています。
教育現場では、心とか個性とかとても人間的な言葉を使いながら、逆に非人間的な状況がひろがっています。多忙で個性を許されない教育現場です。そして教育熱心な先生方であればあるほど悩んで学校現場を去っていっています。
教育基本法改悪の最大のポイントは、大競争時代の国家戦略として教育を位置づけることです。現行の教育基本法では個人の尊重、個人の尊厳など個人がポイントです。これにたいして、国家戦略として教育を位置づける。その重点は二つです。ひとつは、グローバル化した経済競争に勝ち抜くための人材育成、もうひとつがグローバル化した市場秩序を維持するための人材育成です。新自由主義の競争原理と国家主義の導入で、「たくましい日本人」「郷土や国を愛する心」「伝統・文化の尊重」などがうたわれています。教育改革では、復古主義・戦前回帰の面だけではなく、新しい派兵国家を支える人材の育成が狙われています。
今年三月に出た中央教育審議会の答申は愛国心と教育振興基本法の導入を言っています。理念法から行政施策法へ、教育内容への文部科学省の介入への変更であり、これが導入されると教育が根本的に変わってしまいます。
教育基本法の改悪を主張する人たちは、これからの日本では一部の勝ち組エリート、これは積極的に戦争命令を出す人と戦争に参加させられる多くのノンエリートへの社会的格差が拡大し、社会不安が広がる、だから人びとが反抗的になったり荒れないような対策が必要で、それが教育改革だと思っています。そのために道徳教材の「心のノート」などで行政あげて子どもの心を導くようにする。最近でた日の丸・君が代にかんする東京都教育委員会通達などもその一環です。
憲法と教育基本法は条文がほとんど対応していますから、日本国憲法改悪と教育基本法改悪は表裏一体のものとして進められています。小泉は、自民党の結党五〇年の二〇〇五年一一月に党としての憲法改正案を策定すると言っています。教育基本法改悪は小泉改造内閣のこの数年に達成すべき課題となっています。いま、戦争の出来る国家づくりの最後の課題として、根強い平和意識の払拭、軍事行動に対する肯定的な国民意識の育成、戦争を担う国民を育成していくこと教育改革ということです。
教育基本法改悪がどうなっていくかは、この国が戦争の出来る国家になるかどうかの分かれ目になっています。
天木直人氏(前駐レバノン大使)、小池清彦氏(元防衛庁官房審議官、現新潟県加茂市長)
シンポジウムでイラク派兵を厳しく批判
十一月二日、東京大学駒場キャンパスで「日本外交と『反テロ』世界戦争」をテーマに緊急シンポジウムが開かれた。前レバノン大使で、小泉首相のイラク戦争支持に批判的意見を具申して外務省を「解雇」された天木直人氏や、元防衛庁官房審議官で新潟県加茂市長の小池清彦氏をはじめとして多彩なパネリストによるもので、若者や研究者、市民が多数参加した。緊急シンポジウムは東大駒場教員有志や公共哲学ネットワーク、CHANCE!pono2が共催した。
天木氏はアメリカのブッシュ大統領がイラク戦争を開始する直前と二日後に小泉首相と在外公館に宛て、イラク攻撃は間違いであるという意見具申を行った。第一部では、「天木氏『解雇』事件が問いかけるもの」と題して、天木直人氏が一時間ほど『さらば外務省』(講談社)を著した心境などを話した。
天木氏は「いま自分はにわか平和運動家のようになっているが、私の話が必要で、聞いてもらえるところならどこへでも行きたい」とのべた。そしてレバノンに大使として着任以来、「中東の情勢の中で、問題の中心はイラクではなくパレスチナ問題だ。すでに当事者では解決できないほどの状態にまで悪化している」と指摘した。また「かつて南アフリカを担当している時にアパルトヘイトにたいするマンデラ氏の力に大変感銘を受けた」ことや「日本の平和な状況で、世界には日本で全く想像もできないほどの惨状が多々ある。当たり前のように考えている日本の平和が憲法に助けられている」ことや「中東では日本が平和国家として知られているし、好感をもたれている」ことなど外務省勤務の経験を交えながら証言した。米国についても「第二次大戦以降アリカは戦争がなければなりたたない社会になっている。アメリカのメディアはそうしたアメリカ社会の現実を隠す役割となっている」と批判した。小泉首相の外交については「深い洞察もなく、目先だけの方針で行動している。昨年九月の北朝鮮との会談も、支持率が上がるだろうというだけで、外務官僚の情報を使った。深い洞察もない方針なので、拉致問題やアメリカの怒りに逢い、固まってしまった。批判にたいしては居丈高に対応するだけだ。竹内次官や岡本行夫のいいなりになっている」と切り捨てた。さらに外務省のスキャンダルについて「あまりにも全庁に拡がっていて、すぐには受け入れられなかったのが実情ではないか。ここ二年、外務省は本気で外交などできる状況にはなかった」と語った。
「いかに変えていくのか?日本外交の貧困」をテーマにしたシンポジウムの第二部では五名が問題提起した。小池・加茂市長は「国を滅ぼし、国民を不幸にするイラク派兵」について、板垣雄三・東大名誉教授は「新しいビジョンを求めて」として中東研究の立場から、岡本厚・『世界』編集長は「北東アジアの平和と安定のために」について、小林正也・千葉大教授(比較政治学)は「日本外交に公共性はあるか?」について、さらに翻訳家で『世界がもし一〇〇人の村だったら』の再話者の池田香代子さんは「外交は誰のため?」についてそれぞれ発言した。
パネリストのなかで特に小池加茂市長は、七月八日付けと一〇月二二日付けの二つの文書を、ゆっくりと音読しながら、説明を加えて問題提起した。そして「自衛隊は、日本国憲法に基づく防衛のための部隊であり、イラク派遣は憲法違反である。シビリアン・コントロールをする側がしっかりしないと、軍の側はイラク派遣などで大変なことになる」と述べた。また「自衛隊内ではイラク行きには誰ひとり賛成はいないが、命令には逆らえない。劣化ウランについての心配も高い。OBは派遣にみな反対している」などの実情を報告した。
異色の顔触れを揃えた緊急シンポジウムだったが、外務、防衛の官僚経験者がともに、憲法の平和主義が国際社会でいきる日本に役立っていることを指摘した事実は重い。(Y)
資料
新潟県加茂市の小池市長(元防衛庁教育訓練局長)
自衛隊のイラク派遣を行わないことを求める要望書
新潟県加茂市の小池市長(元防衛庁教育訓練局長)は首相と防衛庁長官などに七月に送った要望書(本紙八月五日号掲載)につづいて、一〇月二二日にも改めて新しい要望書を送付した。以下、その要旨を掲載する(編集部)。
内閣総理大臣様
内閣官房長官様
防衛庁長官様
外務大臣様
元防衛庁教育訓練局長
新潟県加茂市長 小池清彦
一、イラク特措法は憲法違反の法律です。
二、 イラク特措法第2条第3項は、「戦闘行為」を「国際的な武力紛争の一環として行われる人を殺傷し又は物を破壊する行為をいう」と定義し、政府は、「国際的な武力紛争」とは、「国又は国に準ずるものの間の武力紛争」であって、「国に準ずるもの」とは、せいぜいで交戦団体であると説明しておられます。しかし、「交戦団体」であり得るためには、相手方がこれを承認することが必要ですから、「交戦団体」というものは、めったに存在するものではありません。
三、従って、イラク特措法においては、国家間の武力紛争における戦闘行為のみが戦闘行為と定義されているのです。即ちイラク特措法においては、正規軍の戦闘行為のみが戦闘行為なのであって、不正規軍との戦闘行為即ちゲリラ戦は、戦闘行為ではないのです。これは、戦時国際法上の「戦闘行為」の概念とは全く異なるものです。
四、イラク特措法では、不正規軍とのゲリラ戦の戦場であるイラク全土が非戦闘地域なのであって、イラク全土が自衛隊を派遣できる地域となっているのです。
五、民主党の菅代表の「イラクのどこが非戦闘地域なのか言って下さい」との質問に対し、総理は「私に分かるわけがないじゃないですか」と答弁されました。これは完全にごまかしで、イラク特措法によれば、「イラク全土が非戦闘地域であります」というのが正確な答弁であったはずです。
六、現代の戦争は、ほとんどが不正規軍とのゲリラ戦です。イラク特措法の論理に従えば、自衛隊を世界のほとんど全ての戦場に派遣することが可能です。
七、ゲリラ戦の戦場に派遣された武装した部隊である自衛隊は、不正規軍であるゲリラから攻撃を受ければ、これに応戦し、戦闘が行われ、武力が行使されることになります。自衛隊の派遣は、不正規軍であるゲリラからの攻撃を受ければ、さらには攻撃を受けそうになれば、武力を行使することを、その派遣の目的の一つにしているのです。
八、一方、「武力を行使する目的を持って、武装した部隊を海外へ派遣すること」即ち「海外派兵」は、憲法第9条に違反する許されざる行為である」というのがこれまでの日本国政府の一貫した憲法解釈であり、このことは現在も変わっておりません。しかし前述のとおり、ゲリラ戦の戦場への自衛隊の派遣は、明らかに海外派兵です。従って、イラク特措法は明確な憲法違反の法律です。
九、このような憲法違反の法律に基づく、憲法違反の自衛隊イラク派遣は、厳に慎むべきです。
一〇、本年五月一日のブッシュ大統領の戦闘終結宣言から一〇月二〇日までのわずか半年もたたない間のゲリラ戦における、米軍の死者は二〇〇人、英軍の死者は十八人、その他の国の軍隊の死者は四人といわれております。負傷者の数は、その五倍近くにのぼるものと推定されます。これは、米英軍の攻撃が開始されてから米大統領の戦闘終結宣言までのイラク軍との戦闘期間中における米軍死者一三九人、英軍死者三三人の合計を大きく上回るものです。イラク全土が不正規軍によるゲリラ戦の戦場なのです。航空自衛隊の航空機の派遣を計画しているというバグダッド空港に至っては、ゲリラ戦の戦場の中心部です。輸送機に鉄板を貼ったくらいで、飛行中のミサイル攻撃や駐機中のロケット攻撃を防げるものではありません。
十一、日本国憲法の下で自衛隊法第52条(服務の本旨)には、「隊員は、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、・・・事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努め、もって国民の負託にこたえることを期するものとする」とあります。ここには、自衛隊の使命は、「わが国の平和と独立を守る」ことだとはっきり明記してあるのであって、外国のゲリラ戦の戦場に赴くことだとは書いてないのです。さらに自衛隊員は、「服務の宣誓」の中で、この条文に定めてあることに加えて、「日本国憲法を遵守」することを宣誓しており、憲法違反の海外派兵に参加してはならないのです。
十二、自衛隊員は、日本国憲法の下で祖国防衛のために自衛隊に入隊して来た人達であって、イラクを始め世界のゲリラ戦の戦場に赴くために入隊して来た人達ではありません。それなのに「国益」の二文字を以て、外国のゲリラ戦の戦場で、自衛隊員の命を危険にさらし、命を犠牲にすることを強いることは、憲法違反の行為であることはもとより、政府の契約違反行為であり、甚だしい人権侵害です。
十三、貴台は、理不尽なる海外派兵によって自己の崇高なる祖国防衛の志に全く反して、遠く異境のゲリラ戦場に派遣され、一つしかない生命を危険にさらされることに対する二四万の自衛隊員とその家族の無念と悲痛な思いが全くお分かりにならないのでしょうか。
十四、日本国政府は、アメリカを支援し、イラク復興のため諸外国に比して極めて多額のお金をお出しになるとのことです。初回分として十五億ドル(一五六五億円)のお金をだすことは、その是非は別として、それだけで十分アメリカ政府を満足させるものであることを指摘するにとどめておきます。一方、人を出すということは我が国の存亡と国民の幸せに対し、極めて重大な好ましくない結果を生むのです。フランス、ドイツ、ロシア、中国は、金も人も出していません。イスラム教国は、いずれも派兵していません。アジアで派兵しているのは韓国のみで、この国は朝鮮戦争でアメリカに大きな恩義がある特別の国なのです。
十五、平和憲法の下で、イラク派兵が強行されるならば、もはや、憲法の歯止めはなくなります。現在は、世界の戦場のほとんど全てが不正規軍とのゲリラ戦の戦場なのです。かくて、世界の警察官としてのアメリカの行くところ自衛隊は世界のほとんどの戦場に派兵されることになります。その時自衛隊に入隊しようとする人は激減し、徴兵制を敷かざるを得なくなりましょう。その結果再び日本人は、海外の戦場で命を落とすことになるのです。
十六、憲法第9条が存在しているがゆえに、日本国民は、朝鮮戦争にも、ベトナム戦争にも、その他多くの戦争に参加することから免れることができました。日本は、海外派兵中心の防衛政策から祖国防衛中心の防衛政策に転換すべきです。そのことは、「剣は磨くべし、されど用うべからず」という古今の兵法の鉄則、日本武士道の本義にも合致することです。みだりに兵を動かさず、自衛隊員の命を大切にして、二四万の自衛隊員とその家族をいつくしみ、渾身の勇を振るってアメリカの圧力から自衛隊員とその家族を守ってこそ、真の為政者であり、大和もののふであると確信します。
冷酷なる為政者として日本歴史に名をとどめるようなことは、決してなさらぬよう心からお願いするものです。
敷島の大和心を人問はば イラク派兵はせじと答へよ
複眼単眼
醜悪な日本人と中国学生運動考
「中国の西安で一〇〇〇人の反日デモ」などの事件が数日にわたって日本の新聞でも報道された。
事件は一〇月二九日夜、西北大学の文化祭「文芸の夕べ」で、日本人留学生が中国人を侮辱するような「わいせつ寸劇」を演じたことに端を発した中国人による抗議行動。その結果、寸劇に関わった日本人留学生三人と日本人教師、計四人が退学・解雇処分となり、十一月一日には四人が「反省文」を出したことで一応、落ち着いたといわれる。
反省文には「(笑ってもらうことが目的で、侮蔑する意図は全くなかったが)私たちの行為は中国の思想、民族性ならびに風習などに対する認識の欠如からきたもの」などとある。
しかし事件当日、駆けつけた日本大使館員に対して、この留学生らは「どうして中国人学生が怒ったかわからない」と語っている。まさに、何も理解しないままの、うわべだけの謝罪だ。
たかが「文芸の夕べ」に「わいせつな裸踊り」というもので、なぜ大げさに騒ぐのかと考える向きもあるだろう。事実、一部の報道からはそういう臭いがした。しかし、この「文化」は日本の企業社会に根強くあるものだ。この貧困で下品な「文化」に中国人を見下す大国意識が被さったのだから、それは見るに耐えない醜悪なものだったろう。
おりしも九月十八日には広東省珠海のホテルで発覚した日本企業による大規模な集団売春事件が大々的に報じられたばかりだ。このところ中国などでの日本の企業人や観光客によるこうした「事件」は下火になったように見えるが、実際のところ、枚挙にいとまがない。中国政府の「改革・開放」政策の導入以来、堰を切ったように流れ込む日本資本は、中国の安価な資源と労働力を収奪し、市場としても収奪をはかった。中国政府が主観的に切り離そうとしても、カネとヒトと文化は切り離せない。まさに「帝国主義」なのだ。最近では留学生などといっても中国の文化を学ぼうなどとは毫(ごう)も考えない輩が、日本社会の生活の延長で中国に滞在する。この学生たちが特別に異常なのではない。「わからない」のは当然なのだ。
中国の公安当局はデモに参加した「学生でない身分不明者五二人を処分した」というが、いまや中国社会には貧富の格差の問題など、小さな火がつけば燎原を焼き尽くすほどの社会不満や対日不満が醸成されているのではないか。
かつて一九一九年、第一次大戦の講和条約の結果による抑圧に抗議し、北京の学生らによる抗日の運動が始まり、全国規模での「五・四運動」となって、中国のナショナリズムと民主主義の新しい展開が起こった。この民族主義は反帝国主義・反封建主義の革命運動として、やがて新中国の誕生につながった。今回の西安のような事件の累積は「資本主義」時代の中国にとっていかなる意味を持つのだろうか。(T)