人民新報 ・ 第1115 号<統合208> (2003年12月5日)
  
                  目次

 ● いまこそイラク派兵の中止を   世論の支持を背景に街頭で訴えを

 ● 首相は外交官の死を重く受け止め、派兵計画を即刻中止せよ  緊急衆院議面集会・首相官邸前抗議行動

 ● 自衛隊はイラクへ行くな!殺すな!殺されるな! 11・24行動

 ● 自分たちと同じ苦しみをアフガニスタンやイラクの罪なき民衆に味わわせてはならない

         9・11牲者遺族の会「ピースフル・トモロウズ」のディビット・ポトーティさん

 ● イラクでの日本外交官の活動について  奥克彦参事官の「イラク便り」を読んで

 ● 日本ペンクラブ   「自衛隊のイラク派遣に反対する声明」

 ● 国労本部は臨時大会を開いて事態を説明せよ  臨時全国大会の早期開催を求める要請書

 ● 映画評 /  アイ・ラブ・ピース ( 監督・大沢豊 )

 ● 詩 イラクヘ遣(や)られる自衛隊員に ―与謝野晶子の弟への詩にあやかって  /  薄羽蜉蝣

 ● 戦争の悲惨さを語り継ごう  わだつみ会機関誌『わだつみのこえ』 第119号

 ● 複眼単眼  / 安易で危険な国民投票法論




いまこそイラク派兵の中止を

     
世論の支持を背景に街頭で訴えを

動揺重ねる政府

 十一月二九日、イラク北部の幹線道路を走行中の駐イラク日本大使館関係者三名(日本人二名、イラク人のベテラン運転手一名)が銃撃され、死亡するという事件が起こった。これは米軍のイラク攻撃以来、初めて起こった日本人の犠牲者だ。彼らは同日、ティクリートで開催される予定の米英占領軍当局(CPA)の民主部門が主催する「イラク北部の復興支援プロジェクトの会議」に出席する予定だったという。
 政府からは「痛恨の極み」「テロには屈しない」「自衛隊派遣は取りやめない」「悲劇のりこえ復興i線の初志貫け」などという声が相次いでいる。石原慎太郎東京都知事などは「自衛隊がもし攻撃されたら堂々と反撃して、せん滅すればいい。日本軍というのは強いんだから」(一日、都庁で)とまで言った。
 これらの中で小泉内閣は八日ごろには「派兵基本計画」を策定し、形式的な「閉会中審査」を衆参両院で行い、派兵を実施に移す動きを強めている。
 小泉内閣は米国当局の強硬な要請と、国内世論の反対の高まりの中で再三にわたって動揺を重ねてきたが、いまのところ、航空自衛隊の先遣隊の年内派遣を先行させ、旭川の部隊など陸上自衛隊本体の派遣は来年二月以降と考えているようだ。

米国の不法な戦争を支持した小泉政権の責任

 日本人外交官二名の遺体の帰国などを通じて、「二人の業績をたたえ、遺志を受け継ぐ」などというヒステリックなキャンペーンが、二人の出身高校の生徒まで利用して、イラク派兵を正当化する狙いで始まっている。
 だが、改めて考えてみたい。
 第一に、二人の死は小泉内閣と外務省の指令の下での活動中の死だ。その最高責任は首相小泉純一郎にある。しかし小泉首相から責任者らしい発言は全くない。米国の不法・不当・無謀なイラク攻撃をいち早く支持し、占領を支持し、CPAに協力してきたは日本政府の責任が問われていだ。
 「大量破壊兵器の危険」と「サダム・フセインの独裁政治からの民衆の解放」を掲げて、国際世論の反対を押し切り、一部の有志国だけを率いて攻撃に踏み切ったブッシュ政権は、いまや彼らの大義名分すら完全に破綻している。この戦争を支持した小泉内閣の責任は重大だ。

CPAはイラク民衆の怨嗟の的


 第二に、米国は五月に戦争終結宣言をしたが、イラクの人々の反撃はやまず、拡大・激化してきた。米軍は無差別爆撃を再開し、掃討作戦を強化せざるを得なくなった。その結果、民間のイラク人に多大な被害を与え、民衆の反発が高まっている。バグダットから日本のNGOに来たメールには「米国の侵略を支援するためにイラクへ日本の軍隊が来るというのは、私たちにとって恐ろしいニュースでした。私たちはサダム・フセインを支持したことはありません。しかし、米軍は単なる武装した強盗です。彼らは毎日、イラク人を殺しています。イラクの普通の市民はだれもそれを支持していません。ますます多くの人々が抵抗運動に参加しています。彼らは旧体制の残党でも、テロリストでもなく、普通の人たちです」とある。
 米国がいまイラクで戦っているのはイラクの人々によるレジスタンスであり、そのゲリラではないか。いまやCPAはイラクの民衆の怨嗟の的だ。小泉首相はこの占領政策を「イラク復興支援」の名の下に積極的に支持しているのだ。二人の外交官はイラクでCPAと密接に連携して外交活動をしていたのであり、この日もCPA関連の会議に出席する途中に襲撃されたことを忘れてはならない。

事件の直接の原因はイラク派兵の決定

 第三に今回の事件は、自衛隊のイラク派兵計画という「イラクの人々にとっての恐ろしいニュース」なしには起こりえなかっただろうという問題だ。この点でイラク特措法を強行し、派兵を決定した日本政府には直接の責任がある。ただただ米国の要求に追随し、自らもイラクの石油などの「復興利権」を求めて、日本国憲法からみていかなる意味でも成り立たない重装備した自衛隊のイラク派兵を、強引な「論理」で正当化し、派兵の準備をしてきた政府の責任は重大だ。

日本はイラクの人々と戦うのか

 第四に、「テロに屈せず、ひるまず」とばかりに、このまま自衛隊のイラク派兵に踏み切れば、自衛隊はイラクの民衆を殺し、またイラクのレジスタンスによって殺される事態が生ずるのはあきらかだ。「非戦闘地域への派遣」の物語は今日ではお笑い種だ。
 そしてイラクの人びとによる反撃や、それに便乗したテロリストによる戦火が、日本国内をも含む世界的範囲で起こることをとめることはできなくなる。
私たちはテロには反対するが、イラクの民衆には抵抗権があり、自衛権がある。それが武装反撃になったとしても、責められるものではない。そうした事態をまねくとすれば責任の第一は米国政府と、自衛隊を派兵する日本政府にあることは明白だ。

世論はイラク派兵反対だ

 いま、世論は政府の政策に強く反対している。各種の調査を見ても、「イラク戦争は間違いだった、イラクに自衛隊を派遣すべきではない」という意見が圧倒的多数を占めている。社民、共産両党だけでなく、民主党もイラク派兵に反対している。
 この声に逆らってイラク派兵を強行する小泉内閣に反対する闘いを、いまこそ全力で強化しなくてはならない。
 市民運動は全国各地、とりわけ派遣部隊に予定されている現地などで、連続的にさまざまな行動を展開している。政府への緊急抗議行動などだけではなく、与党・公明党への行動も起こしている。平和フォーラムも国会行動や派遣部隊の旭川現地などでの行動を入れ始めた。全労連系は一〇日に大集会を予定している。連合も十四日にイラク派遣反対の集会を開く。
 いまこそ世論の支持を背景に、街頭に出て派兵反対の声を上げよう。知恵を絞り、さまざまな人々と共同して、緊急に小泉内閣批判の大衆行動を起こそう。


首相は外交官の死を重く受け止め、派兵計画を即刻中止せよ

            
緊急衆院議面集会・首相官邸前抗議行動

 十二月一日正午から午後一時まで、「首相は駐イラク大使館関係者の死を重く受け止め、自衛隊の派兵計画を即刻中止せよ」という主旨で、緊急衆院議面集会と首相官邸前抗議行動が行われ、折からの雨の中にもかかわらず、一二〇名の市民や宗教者が参加した。
 この日の行動を呼びかけたのは「戦争反対・有事をつくるな!市民緊急行動」「平和をつくり出す宗教者ネット」「平和を実現するキリスト者ネット」で、当日同時刻に行動を呼びかけていた他の市民団体も合流した。この行動が呼びかけられたのは前日の午後であり、まる一日もない緊急行動で、行動はFAXやインターネットで呼びかけられ、広がった。
 駐イラク大使館関係者三名(日本人二名、イラク人一名)の銃撃による死亡事件に関して、政府は「ひるまない」とか「遺志を受け継いで活動する」「国際社会にたいする責任を果たす」などと強弁し、右派マスコミが「イラク派兵を中断すればテロリストの思うつぼだ」などと書き立てるなかで、「これ以上の犠牲者をだすな」「小泉内閣は全責任を負え」「派兵計画を即時中止しろ」などの要求を掲げた市民の緊急の行動が行われた意義は大きい。
 十二時から開かれた衆院議面集会では、司会を「市民緊急行動」の高田健さんが行い、武蔵野市議の山本ひとみさんの経過報告のあと、「日本山妙法寺」の武田隆雄上人が主催者挨拶をした。また「在日韓国民主統一連合」の宋世一さんが「韓国でも派兵反対の世論が高まっている。軍人でも派兵を拒否して闘う人がでてきた」などを報告した。「ふぇみん婦人民主クラブ」の山口泰子さんも「自衛隊の派兵を許さない」決意を表明した。「市民緊急行動」の国富建治さんは、全国各地で市民が派兵を阻止するために闘っていることを紹介、七日の小牧基地闘争、二〇日の札幌での人間の鎖の行動などを紹介した。議面集会では共産党の高橋ちず子衆議院議員が挨拶した。
 その後、ただちに首相官邸前に移動し、報道関係の注目の中、五枚の横断幕やさまざまな手作りのプラカードを掲げて抗議行動をした。警察がさまざまに行動を妨害したが、雨の中、予定通りに集会を続行した。発言したのは「基地はいらない・女たちの全国ネットワーク」の芦沢礼子さん、「平和遺族会全国連絡会」、「日本消費者連盟」の冨山洋子さん、「キリスト者平和ネット」の鈴木怜子さん、「宗教者平和ネット」の僧侶などで、最後に駆けつけた社民党の福島瑞穂党首も「派兵反対、行動する社民党としてがんばる」と発言した。集会は最後に「市民緊急行動」の八木隆次さんのリードで官邸に向かってシュプレヒコールを行った。その後、代表八名が総理府に入って抗議した。


自衛隊はイラクへ行くな!殺すな!殺されるな! 11・24行動

 「自衛隊はイラクへ行くな!殺すな!殺されるな!11・24行動」による集会とデモが、二四日午後、渋谷の宮下公園で開かれ、約三五〇名の人びとが参加した。この日の行動は米軍のイラク占領がイラクの人びとの抵抗で泥沼化しつつあるなか、自衛隊をイラクに派兵することは許さないという決意を込めて行われた行動だ。
 集会では沖縄から「平和市民連絡会」の豊見山雅裕さんが戦争反対の国際連帯の重要性などを訴える挨拶した。
 この集会に寄せられた韓国とフィリピンの平和団体のメッセージが紹介された。
 国内の団体からは女たちの戦争と平和人権基金の細井明美さんがイラク訪問の報告、戦争に協力しない!させない!練馬アクションの池田五律さんが自衛隊朝か駐屯地での日米共同軍事演習に反対する一・一八集会の呼びかけ、許すな!憲法改悪・市民連絡会の土井登美江さんが憲法改悪に反対し、9条を守り、平和のために生かす署名運動の提起などをした。
 小牧基地で自衛隊派遣反対運動に取り組んでいる愛知の「有事法制反対・ピースアクション」と北海道で自衛隊をイラクに送らない運動をしている「ほっかいどうピースネット」からの連帯のメッセージも紹介された。
 集会後、参加者は渋谷の繁華街をイラク派兵反対を訴えてデモ行進をした。
 以下、豊見山さんの発言要旨。
 先日、ラムズフェルドが沖縄に来ました。私たちは今日のイラクの状況を作り上げた張本人の彼に対して、抗議の行動をしました。イラク侵略をした米国も英国も、いま重大な危機に陥っています。安泰なのは小泉政権だけで、これは私たちに大きな責任があります。私たち沖縄平和市民連絡会はイラクに代表団を送りました。私たちは米国の戦争はとめられなかったが、イラクからの医薬品のSOSに対して、再度、訪問団をおくり、届けました。大海の一滴に過ぎないけれども、こうした行動を続けたい。いま、再度、仲間がイラクに入っています。いまイラクの人々は占領に反対して闘っているし、これは当然の権利だ。そういうなかで自衛隊がイラクに行くことは私たち市民がイラクの人々と作り上げてきた信頼関係をを壊すことになります。マスコミは米兵が殺されたことは報道するが、その何倍ものイラクの人々が殺されていることは報道しません。私たちはそういう情報をきちんと把握しなくてはならないと思います。
 私たちは韓国の米軍基地撤去闘争とも交流を強めています。韓国と日本の両方で米軍基地の再編強化が行われています。これを許すことはアジアと世界の人々の命を奪う基地を作らせることになります。これをとめるために闘いたいと思います。そのためには国際連帯の闘いが重要だと思いました。この間、私たちは韓国、フィリピン、インドネシア、台湾、プエルトリコ、ビエケスの人々と交流してきました。これらの人々とお互いが顔の見える関係を築いて行きたいと思っています。そして本土のみなさんとの連携が重要だと思っています。ともに協力して闘いましょう。


自分たちと同じ苦しみをアフガニスタンやイラクの罪なき民衆に味わわせてはならない

         9・11牲者遺族の会「ピースフル・トモロウズ」のディビット・ポトーティさん


 米国9・11犠牲者遺族の会「ピースフル・トモロウズ」の共同代表のディビット・ポトーティさんを招いた集会が十一月二八日夜、東京都内で開かれ、三五〇名の市民が参加した。
 集会はキリスト者や、知識人、市民運動家などで作られた実行委員会が主催した。この集会の後、ポトーティさんは韓国のソウル市で講演をした。
 ピースフル・トモロウズは9・11以降、「自分たちと同じ苦しみをアフガニスタンやイラクの罪なき民衆に味わわせてはならない。わたしたちの家族の死を相互人間性という新しいパラダイムの新生に変容させる機会にしなければならない」という信念のもとに、全米を駆け回って軍事力による報復攻撃に反対して活動してきた。
 9・11以降、米国社会を覆った熱病のような報復攻撃支持と「愛国運動」の中で、迫害を跳ね返して闘ってきたピースフル・トモロウズと日本の平和運動との連帯の意味は大きい。ピースフル・トモロウズは昨年八月にはリタさん、十月にはライアン君が来日し、日本の平和運動の中に大きな足跡を残しているが、今回は日韓連帯しての取り組みであり、また意義深いものがあった。
 集会では日本キリスト教協議会の小笠原公子さんが司会を行い、大韓川崎教会青年有志による「平和のパフォーマンス」のあと、ポトーティさんの講演があった。
 リレートークはこの日のために韓国から駆けつけた「生命と平和大学院院長」の金容福さん、作家の中山千夏さん、東大教員の高橋哲哉さんだった。

 ポトーティさんの講演要旨は以下のとおり。

 二年前にワシントンDCから「テロで愛する人々を失ったことは悲しいけれども、その死を利用して、その名においてアフガニスタンの人々を爆撃することには断固として反対する」というデモをやりました。
 9・11で死んだ私たちの愛する人々の死は世界で毎日殺されているたくさんの人々の一部に過ぎないと思います。軍隊は私たちを守ってくれない。そうであるなら、私たちはともに生きるしかありません。私たちは「米国は善良で強大な国家だ」という妄想を捨てなければならない。米国人の多くは恐怖に支配されているために、こうした考えに立てませんでした。そしてアフガンへの爆撃を支持し、「愛国法」を支持し、不法なイラク爆撃を支持しました。
 恐怖と不安による暴力で報復することで、更なる恐怖と不安、暴力を生み出しました。
 しかし、この間、私たちの言葉と思想には力があることも学びました。人間的になることで、弱さをさらけ出し、手を取り合うことで、大きな力が生まれることも知りました。
私の母は事件の直後に「息子の死で、私がいま味わっている悲しみを世界の他の人々に決して味あわせたくない」といいました。
 彼女は世界の人びとの悲しみに目を向けることで、自分の悲しみを癒したのです。この訴えを広げる中で、同じように考えるピースフル・トモロウズの他のメンバーと知り合いました。
 私たちは、どんなときでも、どんな理由があっても、殺戮はいけないということを学びました。私の国がアフガニスタンやイラクにやっていることはあの国にも、また攻撃した側の米国の兵士にも一〇年も、二〇年も後遺症を残します。
 彼らは怒りを体の中に抱え込んで生きていくのです。
 原爆については米国では抽象的に扱われていて、それが人類にもたらした影響などについては考えていませんでした。被爆者の会の人びとにあったときに、被爆者が人類全体の問題として原爆を考えているのを知って感銘しました。
 テロは本当の問題の現象にすぎません。私たちが本当に闘うべきものはテロではなくて、帝国主義だとか、物質主義だとか、軍事主義、愛国主義、そして自分の命は他のものよりずっと価値があると考えるような思い込み、それらと闘わなくてはなりません。
 私たちは立ち上がらなくてはなりません。自由とは選択です。
 歴史は悲しみに満ちたものではあるけれど、私たちが立ち上がれば歴史に息を吹き込むことはできます。手をとりあって、仲間同士のつながりによって、軍事主義を阻止することができます。それがピースフル・トモロウズの使命です。みなさんが私たちとともに仲間に加わってくれることをねがってやみません。


イラクでの日本外交官の活動について

     奥克彦参事官の「イラク便り」を読んで


 十一月二九日、イラクで殺害された日本外交官はどんな「任務」を行っていたのだろうか。報道では、事件当日はティクリートで開かれる復興支援会議出席とイラク北部対象の政府開発援助(ODA)の事前調査を行う予定だったという。
 死亡した二人のうちのひとり在英日本大使館の奥克彦参事官は、外務省のホームページの中にある「省員近思録」で「イラク便り」を連載していた。奥参事官は、「在英国大使館。CPAを通じた人的協力に参画中」と紹介されている。CPAは連合国暫定当局などいろいろな訳があるが、要はアメリカによるイラク占領統治機構である。
 奥参事官は、一一月一三日付けの「イラク便り〜テロとの闘いとは〜」で、イラク南部のナーシリーヤに展開しているイタリア国家警察部隊が自動車爆弾テロに襲われ多くの死者を出したことについて書いている。「現場を見るために早速ナーシリーヤに向かいました。……これはテロとの闘いです。二〇〇一年九月一一日にアメリカ人だけでなく多くの日本人もアル=カーイダのテロの犠牲になり、私たちはテロとの闘いを誓ったのですが、ここイラクでもテロリストの好きなままにさせるわけにはいきません。地元の人に尋ねてみると、確たる証拠はないのですが、このような民家に囲まれた場所に自爆テロを仕掛けるなどというのは、到底イラク人のやることではないと皆言います。犠牲になった尊い命から私たちが汲み取るべきは、テロとの闘いに屈しないと言う強い決意ではないでしょうか。テロは世界のどこでも起こりうるものです。テロリストの放逐は我々全員の課題なのです」と「テロ」との闘いを強い調子で述べている。
 また、九月七日付けの「イラク便り〜岡本総理補佐官イラク再訪〜」では、「今度は、イラクの国内事情をより多面的な視点から把握することを目的とする訪問です……現地のイラク人による市評議会(市議会に相当する組織)と各地のCPA調整官、それに軍の司令部を訪れて、イラクの復興がどの程度進んできたのか、緊喫の問題は何か、治安状況はどうか、など様々な角度から現状を把握して小泉総理に報告するのが目的です」と、岡本補佐官の訪問が主にアメリカ占領軍との話し合いによる現地の軍事・治安情勢の調査であり、自衛隊派兵の条件整備の一環であることをあかしている。奥参事官は、軍事・政治・経済すべてにわたる「テロとの戦争」の重要な一翼を担当していたのだ。
 政府や産経、読売などの一部右派マスコミは、自衛隊がやろうとしていることは水の浄化などの人道支援であると言っているが、軍隊が派遣されることは、小泉政権のブッシュへの忠誠の証であり、アメリカによるイラクへの戦争と支配の不可欠な構成要素なのである。
 小泉首相は、「非戦闘地域もある」、「攻撃される可能性はあくまでも可能性だ」などと強弁して、自衛隊派兵を準備してきたが、ここにいたって重大な困難に直面するようになった。イラクに非戦闘地域などないのだ、攻撃される可能性ではなく現実となったのだ。
 アメリカ・ブッシュ政権のイラク侵略戦争強行は、フセイン政権の大量破壊兵器の保有を口実にしたものであった。それはウソであり、英米政権によって大々的に情報操作がなされていたものだということが否定できなくなった。「フセインが倒れてイラクは民主化された、イラク民衆は喜んでいる」というお話も空語化している。五月の段階で、ブッシュ政権は「勝利」宣言をおこなったが、それも粉砕されてしまった。そもそもアメリカが戦争の相手としたイラク・フセイン政府は「降伏」宣言をしていない。戦争は大規模戦闘からゲリラ戦に移っただけだ。戦争が終わっていないのだから、すでに占領統治の段階に移ったというのも正確ではない。こうした戦争が継続している状況で、日本の外交官は、奥参事官自らが述べているようにCPA=アメリカの側にたって「反テロ戦争」に従事しているのである。
 自衛隊のイラク派兵は、いっそう日本がイラクをはじめ中東各国の民衆に敵対する立場を鮮明にすることだ。派兵を絶対に許してはならない。(MD)


日本ペンクラブ

 
 「自衛隊のイラク派遣に反対する声明」

 われわれ日本ペンクラブは、平和を愛し、言論表現の自由と人権を守る立場から、これまでいくたびも、米英軍の対イラク戦争に反対し、米英軍を支援する日本政府に抗議する声明を出してきた。
しかるに、小泉政権と政府与党は、日米同盟重視を理由に、アメリカ政府の要請に応じて、近々イラクへ自衛隊を派遣しようとしている。
 われわれ日本ペンクラブは、そうした小泉政権と政府与党に対し、深い憤りをもって抗議するとともに、自衛隊をイラクへ派遣しないよう要求する。
 もとより、われわれ日本ペンクラブは、米英軍のイラク戦争に反対するからといって、人々を恐怖政治で支配していた旧サダム・フセイン政権を擁護する立場ではないし、また過激派の無差別テロには絶対に反対である。
 そもそもイラク戦争はアメリカが世界の世論を無視し、国連安保理の同意を得ずに強行した無法な戦争である。戦争の「大義名分」にされた大量破壊兵器も見つかっていない。しかも、現在イラクは米英軍の占領下にあり、どこもかしこも戦場である。そのイラクへ自衛隊を派遣することは、イラクの「復興支援」にはならず、米英軍の占領統治を「軍事支援」することにほかならない。イラク人から自衛隊は米英軍の一翼を担う部隊と見なされ、必ずやイラクの武装勢力から攻撃されることになるだろう。
 いまや政治家ひとりひとりの良心が痛切に問われている。
 小泉政権や国会議員諸氏は、そういう事態が起こるのを知りながら、あえて日本自衛隊の若者たちをイラクの戦場へ派遣し、血を流させるつもりなのか?
 われわれは、イラクの復興と統治は米英軍によらず、国連の支援の下、イラク国民自身の手によってなされるべきであると考える。
 暴力とテロの応酬からは、決して平和は生まれない。日本政府は自衛隊をイラクに派遣して、火に油を注ぐよりも、真に友人であるならば、アメリカ政府を説得してその矛を収めさせ、暴力とテロの連鎖を断ち切るように訴えるべきである。ベトナム戦争のように泥沼化する前に、アメリカは早急にイラクから軍隊を撤退させ、国連主導の復興に譲って、即時、イラク国民に主権を返すよう説得すべきではないか。
 敗戦後、われわれ日本国民は、他人の不幸の上に自らの幸福を作らない、二度と再び若者を戦場に送らない、と誓ってこれまで歩んできた。日本が敗戦により平和を得てから半世紀以上、日本の軍隊を海外に派兵することなく、武力を使って他国を侵略せずに今日まで来たことを、われわれは誇りに思う。
 日本ペンクラブは、小泉政権と政府与党が国民を二度と再び戦争に駆り立てないことを国民に誓い、イラクへの自衛隊の派遣を取り止めるよう、強く要求する。

二〇〇三年一一月二六日

 社団法人 日本ペンクラブ  会長 井上ひさし

 日本ペンクラブのホームぺージ 

http://www.japanpen.or.jp/honkan/seimei/031126.html

国労の闘う組合員を処分した前本部書記長が首謀者の国労北海道分裂

    国労本部は臨時大会を開いて事態を説明せよ

 国労弟七一回全国大会(九月一三〜一四日)は、四党合意から与党が離脱し完全破綻が誰の目にも明らかになった最初に開かれた大会であり、四党合意路線の誤りを総括し闘う路線と清新な執行部の確立が求められていたものであった。ところが、国労本部は、鉄建公団訴訟を闘う二二名の組合員に対して権利停止三年を決定した。これは労働組合として絶対にあってはならない大汚点を印すものとなった。
 ところが大会後一ヶ月もたたないうちに、国労北海道では、闘う組合員を組織の統制に従わないと言う口実で処分した中央本部書記長であった寺内寿夫をはじめ、道本部書記長、道本部副委員長などが中心となって国労組織を分裂させ、北海道鉄産労(JR連合)と合流して新たな組合を結成する策動を公然化させた(一方、国労本部は国労北海道の各級機関の執行権を停止させたりの処置におおわらわだ)。
 これらの事態は、四党合意完全消滅につづいて、国労本部の路線の破綻を示すものとなった。
 国労本部は、こうした事態にたち到った理由と今後の方針を、組合員、支援・共闘の仲間たち、すべての労働者の前に明らかにする義務がある。
 一一月一九日には、全国大会の代議員有志による「臨時全国大会の早期開催を求める要請書」をもって、代表四名が国労本部を訪れ、要請行動を行った。

臨時全国大会の早期開催を求める要請書

国鉄労働組合中央本部
執行委員長 酒田 充殿

 国労北海道本部の「脱退・分裂」が、一〇月二六日の新労組結成でその姿が明らかになりました。しかも、驚いたことに寺内前中央本部書記長及び佐藤北海道エリア本部書記長らが、その組織的脱退の首謀者であったこと。そして、そうした動きについては現地の国労組合員から指摘されていたにもかかわらず、現執行部は適切な処置をせずに、分裂行動を許す形になったことは、極めて重大な責任問題と考えますので以下の点で要請し、誠意ある回答を求めます。

 一.脱退首謀者の寺内及び佐藤・藤原ら専従機関役員の組織的脱退を許してしまった責任をとって、
中央執行委員会は総辞職すること。従って、その寺内前中央本部書記長集約に基づく第七一回定期全国大会方針は無効であり、直ちに臨時全国大会を開催し新たな執行部と闘う方針を確立すること。

 二.闘争団の要求に基づく解決実現のためには、当事者の納得する闘いが必要である。従って、闘争
団全国連絡会議の主体的な議論を尊重し、自主的な行動を保障して国労総体が財政及び運動面で支えきる体制を図ること。

 三.脱退首謀者である寺内及び佐藤両名が加わった査問委員会答申は無効であり、二二名の闘争団員への統制処分は撤回すること。同時に、一部闘争団への生活援助金支給凍結などの制裁措置を撤回し全国三六闘争団の団結の再構築を図ること。
さらに、今回の「分裂首謀者」に対する査問委員会の設置を行うこと。

 四.国労の組織破壊の一環であったと思われる寺内前中央本部書記長主導による書記の不当配転を撤回し、そのことによる国労の組織混乱を取り除き組織運営の正常化を図り、組織一丸となった体制
をつくること。

 五.政府にILO条約を守らせ、早期解決を迫る大衆運動を一層強化し、一〇四七名の当該労働組合
及び争議団との共闘、関係団体・支援共闘組織との関係を修復・強化すること。

 六.想定される年内中の最高裁判決が、仮に敗訴したとしても第七一回全国大会での宮里弁護士提起の「不当労働行為追及の必要性」から、当時の国鉄の不当労働行為責任追及として、その承継法人の国鉄清算事業本部への提訴を行うこと。               以 上

 国労第七一回定期全国大会代議員

 青柳義則(東京地本)・阿部裕明(東京地本)・有田 修(近畿地本)大谷一敏(東京地本)・金平 博(東京地本)・唐沢武臣(高崎地本)工藤 伸(北海道本部)・小林一成(北海道本部)・小林春彦(千葉地本)斎藤信明(高崎地本)・坂口智彦(千葉地本)・佐藤清司(水戸地本)関口広行(高崎地本)・谷岡春儀(東京地本)・谷崎正信(東京地本)千葉愛一郎(新幹線地本)・宮下敏明(高崎地本)・渡辺歳央(仙台地本)

二〇〇三年一一月一九日

映画評

 
アイ・ラブ・ピース

   監督・大沢豊

   出演・忍足亜希子/林義文/アフィファ/宍戸開/山本圭/星由里子/酒井和歌子/田村高広ほか

   118分


 私の国は、私が生まれる前からずっと戦争をしていました。だから平和がどういうものなのか、よくわかりません。ただ、地雷の恐怖から解放され、どこでも自由に歩けることが平和なら、私は平和を愛します。(地雷で片足をなくしたアフガニスタンの少女パリザットちゃんを演じたアフィファちゃんの言葉)
 米国による9・11の「報復」攻撃のターゲットにされて、一挙に注目を集めたアフガニスタンは、以来二年が経って、また忘れられた国になろうとしている。米国によるイラク攻撃と軍事占領という事態の中で、イラクで占領反対の動きが強まるのと並行して、アフガンでも米国の占領に反対する動きが強まり、戦闘が続発している。ペシャワール会の中村哲さんらの医療・生活支援のボランティアたちが粘り強く活動を続けているが、支援を必要としているアフガンの人々の問題はあまりに多い。この映画はあらためて戦争とその後遺症に苦しむアフガニスタンの人々の実情と、国際支援の重要性を啓発してくれる。
 この映画はアフガンの戦禍による荒廃や、生活に苦闘しながら生きていこうとする人々の様子を伝えてくれる。
 物語は地雷で片足をなくした少女・パリザットと、義肢装具士をめざすろう者の花岡いずみ(忍足亜希子)との出会いを軸に、アフガンの人々と日本で義足製作のボランティアを続けているひとびとの交わりを描いたもの。戦争しか知らない「アフガニスタンの子どもたちのために私にもできることがある」と、困難な課題に挑戦しながら努力し、成長していくいずみは、とうとうパリザットの笑顔をみた。
 この数年、「アイ・ラブ・ユー」「アイ・ラブ・フレンズ」などで忍足亜希子を主人公にしてろう者たちと映画を作ってきた監督の大沢豊は東京で行われた試写会でこう語った。
 映画をつくることはたいして難しいことではありません。作品を大勢の人に見て頂くことがいま大変難しいのです。しかし、これをクリアしないと次にすすめません。この映画でテーマにした障がい者の国際貢献はそのための社会基盤の整備や環境づくりがすすめばもっともっと可能性がでてくる。手話というすばらしい言語が外国での会話に可能性を開く。ハンディキャップがプラスに転化する可能性がある。いま、ろう学校で学んでいる子どもたちがもっともっと自由に活躍できるようになることを願っています。
 アフガンはイラク戦争が始まってから状況がだいぶ厳しくなっている。目が離せない。アフガンの映像もたくさん取り入れています。ぜひご覧ください。

 十二月二〇日より銀座シネパトスで上映
 一月二四日より立川シネマシティで公開予定

  自衛隊員よ! 行くな! 殺すな! 死ぬな!

 この「イラクヘ遣られる自衛隊員に」は、東京昭島市の橋本左内さんが、 ・ 国会前集会で読み上げたものです。

イラクヘ遣(や)られる自衛隊員に ――与謝野晶子の弟への詩にあやかって――

                                               薄 羽 蜉 蝣

 一 ああ弟よ、君を泣く 殺されたまうことなかれ
  イラクの戦は大義なき 石油メジャーのためなれば
  米軍指揮下の軍隊は ゲリラ攻撃免れず
  訓練乏しき君ゆえに 脆くも犠牲となり果てむ
  末頼もしき才能を 砂漠の塵にするなかれ

 二 ああ兄君よ、君を泣く 殺しの輩となるなかれ
  平和憲法あるゆえに 不殺生戒守りたる
  清き歴史のキャンパスに 血糊の文字を書くべきや
  勇猛果敢の君ゆえに 多く「戦果」を上げしとて
  イラクの民の怨念を 砂漠の砂に染むなかれ

 三 ああ父君よ、君を泣く 傷つきけたまうことなかれ
  妻子を守るためにとて 妻子を持てる彼の国の
  同じ民衆に発砲し 殺傷すれば交々に
  同じ家族に悲しみと 生計(たつき)の難を生ぜしめ
  子々孫々に忘られぬ 恨みを砂漠に撒くなかれ

 四 ああ恋人よ、君を泣く 心狂わすことなかれ
  ベトナム侵せしかの時も アフガン攻めしその時も
  心優しき若者は 厳しき戦に消耗し
  麻薬に教いを求めしも 永久に心は帰らじな
  愛する者をも忘れ去る 砂漠の幻影(かげ)とはなるなかれ

 五 ああ男らよ、君を泣く 犯罪人とはなるなかれ
  戦争放棄の憲法に背きて遺りし軍隊が
  専守防衛の口実で 拡大増強重ねつつ
  海外派兵も可能にし 遂に戦地へ赴けば
  人道正義に反逆の 戦犯者とはなるなかれ

戦争の悲惨さを語り継ごう

 わだつみ会機関誌『わだつみのこえ』 第119号


 今年は「学徒出陣」の六〇周年にあたる。日本戦没学生記念会(わだつみ会)の機関誌『わだつみのこえ』 第一一九号が先ごろ発行された。
 その巻頭言は次のように言っている。「いま政府は、人も金も気前よくと米国に求められてイラク派兵をもくろみ、憲法廃棄への意志をあからさまに見せつけている。『生き残った人々は沈黙を守るべきなのか!』」と。
 今号は、学徒出陣六〇周年を記念して、戦没学生の手記『きけわだつみのこえ』読書感想文の特集で、中学生、高校生、大学生、一般からの入選作が載せられている。
 中学生の中村華子さんの「海に還った彼らの叫び」は書いている。
 「……死を目前にしても、学問への探求心を失わず、最後まで感謝の心を以て、人間らしく生きようとした若き学徒兵たちの魂の叫び。私たちは心を研ぎすまし、海に還った彼らの叫びを聞かなければならないのだと思います。それが、私たち生きているものの努めだと思うのです。  『あんな戦争は、二度と起こしてはならないよ』  『あんな辛い思いはぼくたちだけでたくさんだよ』
 わだつみとなった彼らの声は、終戦から五八年がたつ今も、潮の遠鳴りとなって、私たちの心に呼びかけ続けているのに違いないのです」。
 その他、8・15集会の記録、論説「戦争経験と反戦平和」、「名選手 松井栄造を偲ぶ」、「ある朝鮮人将校の死」、元学徒兵が語る「学徒出陣」から60年、遺稿・遺品を訪ねて、書評など、充実した内容。

(頒価一〇〇〇円、送料二〇〇円)

 日本戦没学生記念会(わだつみ会)
Tel・Fax〇三(三二六九)八〇七一

ホームページ http://www.wadatsumikai.lookscool.com/

複眼単眼

   安易で危険な国民投票法論


 各地の住民投票運動などで活躍してきたジャーナリストの今井一が、「『憲法九条』国民投票」(集英社新書)という本を出した。 これがなんともひどい本なのだ。今井のこの間の住民投票問題での仕事が一定評価できるものだけに、なんとも惜しい気がする。
 今井は本書で、憲法の9条の条文と実態の乖離がひどく、憲法は死にかけているので、改憲派が提起する「9条改正」の国民投票をやってはっきりと決着をつけるべきだ、主権は国民にあるのだから、国民投票はやらせないという「護憲派」の態度は間違いだ。政府は「国民投票での承認」という憲法の規範によることなく、解釈改憲で「軍隊をもち」「戦争をする」体制をなしくずしにつくってきた。私たち国民の無関心、曖昧な姿勢が政府につけいる隙を与えてきたのだ。だから国民投票をやろう。ただし、その際、「九条改正案が承認されなかった場合は(自衛隊は国境警備隊や災害救助隊などに段階的に改組し、戦力・軍隊でない組織にしなければならない、と国会で確認し)、政府はこれを履行するという『約束』を掲げた上で実行する国民投票でなければやる意味がない」とつけ加えている。
 今井の議論は勘違いもはなはだしい。紙面の都合で触れないが、住民投票の論理と国民投票の論理は相当に異なるし、国民投票一般と改憲のための国民投票もまた大きく異なる。今井の議論にはこの区別がない。
 「改憲の国民投票法」案は国会が作る。この国会は改憲の自民党が単独過半数をしめ、自公連立が圧倒的多数をしめ、民主党の改憲派も入れれば三分の二どころではないほどの議席がある。
 解釈改憲が進んできたのは「9条があいまいだから」ではない。これほど明瞭な文書はないくらいだ。しかし政権与党が数の力にまかせて、でたらめな解釈をして、違憲状況を作ってきた。この連中は実際には立憲主義にたたない人々だ。「国民の側の責任」を指摘すること自体は反対しないが、最大の責任はこうした歴代の政権与党にある。同列では断じてない。どのような憲法ができようと、この連中は都合が悪くなれば、また解釈改憲から、はじめるだろう。
 今井もそれを心配して「政府はこれを履行するという『約束』を掲げた上で実行する国民投票でなければやる意味がない」などというが、そういう条項を盛り込むことが与党改憲派が多数の国会でできるのか。「盛り込めなければ意味がない」というのだったら、結論はいまの与党の下での「憲法改正のための国民投票」は「意味がない」ことになる。「意味がない」どころではなく、危険なのだ。これは今井の論理矛盾だ。極楽トンボが、無責任に言うだけ言って、結果として改憲派の露払いをする役割を果たすとしたら、その結果にどう責任をとるのか。
 今後、さまざまな改憲攻撃が来るのだから、こういう本も呼んでおく必要があると思う。(T)