人民新報 ・ 第1116 号<統合209> (2003年12月15日)
  
                  目次

 ● 小泉首相、憲法解釈の詭弁で派兵を説明 自衛隊派兵を絶対に阻止しよう!

     世論の高揚で追いつめられた小泉内閣 イラクをはじめ全世界の人々と連帯して闘おう

 ● イラクに自衛隊を送るな  12.7市民緊急アクション 銀座でパレード

 ● イラク派兵基本計画にNO  平和フォーラムが院内集会と首相官邸抗議

 ● 公明党中央本部へ申し入れ行動  自衛隊イラク派兵中止の決断を!

 ● 改憲阻止の大きな流れを  第七回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会

 ● C130輸送機をイラクに飛ばすな!  12・7愛知・小牧基地集会

 ● 裁判所は首切り・差別の自由を認めるな  裁判所包囲デモ

 ● 書籍紹介  /  『東海村「臨界」事故』 (槌田敦名城大学教授+JCO臨界事故調査市民の会=編著)

 ● イラクの人々が歓迎する日本人は自衛隊ではない  イラクの人びとの声

 ● せ ん り ゅ う  ( ゝ 史 )

 ● 複眼単眼  /  自衛隊員の彼をイラクに行かせないで 勇気あるたった一人の署名活動




小泉首相、憲法解釈の詭弁で派兵を説明 自衛隊派兵を絶対に阻止しよう!

世論の高揚で追いつめられた小泉内閣 イラクをはじめ全世界の人々と連帯して闘おう


白をクロとすりかえる派兵基本計画

 小泉首相は世論の圧倒的多数の反対の声に耳をふさいで、十二月九日の臨時閣議で自衛隊のイラク派兵基本計画を決定、その後記者会見を開いて「説明」した。
基本計画は派遣可能期間を十二月十五日から一年間とし、陸自は無反動砲など重火器で武装し、イラク南東部で活動、空自はイラクとクゥェート間で物資輸送、海自は輸送艦、護衛艦、各二隻で陸自の装備などを輸送する。小泉内閣はこのようにして戦場に自衛隊を派遣するという暴挙に踏み込もうとしている。首相は「イラク復興支援の協力」「唯一の同盟国・米国への協力」などという言葉で「国民に説明」したが、それは白をクロと言いくるめる類のものでしかない。
 小泉首相は「説明」の途中で、突然、憲法が印刷された紙を振りかざしながら、その前文の一部を引用し、この派兵を正当化しようとした。
 小泉首相は「危険だからといって、人的な貢献はしない、カネだけ出せばいい状況にはない。前文にあるように、日本国の理念、国家としての意志が問われている。日本国民の精神が試されている」と声を張り上げた。報道によれば「この間、首相は自衛隊派兵の問題で説明責任を果たしていないという批判にたいして『時がくれば自分で原稿を書く』と口を閉ざしていた。国民が首相の説明に納得するかどうかの『本番の舞台』で用意した『秘密兵器』が憲法前文の朗読だった」という。

小泉首相が読んだ憲法の一部分

 小泉首相が引用した日本国前文の箇所はこうだった。「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ」
 「自国のことのみに専念してはいけない」から、自衛隊をイラクに派兵するという。自国のことのみに専念して他国を無視している国とは一体どこか。米英両国とそれに追従する日本の小泉政権がもっともその指摘にふさわしいのではないか。
 「平和のうちに生存する権利」、平和的生存権は全世界の人々にあり、イラクを先制攻撃したブッシュ政権を積極的に支持した小泉政権は真っ向からこの憲法の原則に反している。
 自民党執行部に対して、二〇〇五年秋までに党の改憲試案を作成するように指示し、憲法の「改定」を推進しようとする小泉首相が、憲法の一部のみを引用して自らが進める自衛隊の派兵を正当化しようとするのはまったく筋違いで「秘密兵器」などの話ではない。

小泉首相が読み上げなかった部分

 さらに首相が引用した箇所の前にはこの文章がある。「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。」
 自民党の人々が憲法前文のこの部分をとりわけ毛嫌いすることはよく知られていることだ。自民党は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」、安全と生存など保持できないといってきた。だから自衛力と安保条約が必要だといってきた。しかし、この部分と首相が引用した部分は一体なのであって、対立してはとらえられない。首相の前文引用がいかに恣意的で、ご都合主義的であるか、明白だ。
 米軍のイラク占領に参加して「国際社会で名誉ある地位」がしめられるだろうか。国連加盟国の五分の一しか支持していない米国のイラク攻撃に加担することは、世界で孤立することではないか。
 「第二章 戦争の放棄」第九条【戦争放棄、軍備及び交戦権の否認】の項は、あえて引用するが、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」とある。これと「前文」の間には隙間があるというのは小泉流の憲法解釈で知られているが、じつは隙間などない。先のところを首相がゆがめて解釈するから、九条との隙間ができるように見えるだけだ。
 小泉首相はこのようなでたらめな憲法解釈を強弁することで、自衛隊のイラク派兵を強行しようとしている。こうしてこの国を「戦争をする国」へと飛躍させようとしている。この歴史的な犯罪を許してはならない。

まだ闘いは間に合う、派兵阻止へ

 派兵基本計画は閣議決定されたが、派兵まではまだ時間がある。世論の圧力の前に公明党も動揺を見せている。自民党内にも異論がある。野党は反対している。
 いま自衛隊の派兵を阻止する上で、私たちがなすべきことはたくさんある。全力で行動を起こし、共同を広げ、世論を高めて小泉内閣を包囲しよう。イラクの民衆も自衛隊の派兵に反対している。隣国・韓国の民衆やアジアの人々と連帯して、自衛隊のイラク派兵阻止、憲法第九条改悪阻止の闘いを全国各地で巻き起こそう。


イラクに自衛隊を送るな

   
12.7市民緊急アクション 銀座でパレード

 一二月七日、「もう犠牲者はいらない わたしたちはイラク派兵の中止をもとめます! 12・7市民緊急アクション」が展開された。これは、戦争反対、有事をつくるな!市民緊急行動、許すな!憲法改悪・市民連絡会、フオーラム平和・人権・環境、平和をつくり出ず宗教者ネットなどによる実行委員会が主催したもの。
 集会会場の銀座・水谷橋公園には次々と人々が集まった。
 はじめに、アジスパ&てんつくマン仲間たちによるオープニングパフォーマンス。大きなボーリングの玉が投げられる。それを参加者たちによって加速される。そして小泉たち戦争推進勢力のピンが倒されると大きな拍手が起こった。
 実行委員会からのアピールで高田健さんが、イラクでの二名の外交官の死は小泉内閣に責任があるのに、小泉は「かれらの死を忘れない」とか「遺志を継ぐ」とか言って、自衛隊のイラク派兵を強行しようとしている、しかし今イラク派兵反対は多数派になっている、この反戦の世論を背中にして派兵反対を闘いぬこうとあいさつした。
 平和をつくり出す宗教者ネットの木邨健三さんは、アメリカとともにイラク戦争に参加することは、石油利権のおこぼれを頂戴するためのもので人道支援などではまったくない、不純な動機で憲法違反のイラク派兵は許せない、大きく力を結集して反対していこう、と述べた。
 戦争に反対してイラクで人間の盾となった神崎さんは、私は人間の盾でイラクにいたとき死んだ外交官にも会っているので大きなショックを受けた、自衛隊の人にも家族・子どもがいる、死ねば悲しむ人が増えるのだ、自衛隊の派遣は絶対に止めさせなければならない、と語った。
 納税者ネットワークの関義友さんは、イラク派兵などの重大なことを小泉が国会閉会中審査だけで済まそうとするのは私たち納税者の権利を侵害するものだ、さまざまな闘いで反対していこう、と発言した。
 ジャミーラ高橋さんは、アメリカ軍のつかった劣化ウラン弾でバグダッドを中心にイラク全土が汚染されている、自衛隊の人たちもかならず被曝者になってしまうし、標的となって殺されてしまう、イラクに行かせてはならない、と述べた。
 集会につづいて、日曜日の銀座をピースパレード。パレードの途中からの合流してくる人もいる。ほんの数日の準備期間しかなかった緊急行動にもかかわらず、参加者は七〇〇人をこえた。


イラク派兵基本計画にNO

 平和フォーラムが院内集会と首相官邸抗議


 一二月八日の昼、衆院第二議員会館第一会議室で、フォーラム平和・人権・環境の主催による「もう戦争はいらない!自衛隊イラク派兵基本計画にNO〜院内集会」が開かれた。
 はじめに平和フォーラム副代表の浅見清秀さんが主催者あいさつ。
 いまだにイラクではアメリカの言っていた大量破壊兵器は見つかっていない。イラク戦争の現状は侵略でしかない。その戦争を小泉首相は支持し、自衛隊の派遣を決め、訓練を行わせている。憲法から見て自衛隊の派遣はありえない。
 国会議員からの国会報告では、民主党の神本美恵子参議院議員が、民主党はアメリカなどによるイラクへの大義のない攻撃にたいして反対し、またイラク特措法、自衛隊の派遣にも反対している、イラクへの支援は自衛隊ではだめだ、自衛隊の派遣はイラク国民の日本への反感をつくり出すだけだ、と述べた。
 社民党党首の福島瑞穂参議院議員は、自衛隊の派遣は自衛隊のためにも日本のためにもイラクのためにもイスラムのためにも世界の平和のためにも役立たない、いま多くの地方議会などから反対意見が寄せられている、自民党の人の中にも派遣反対の人がいる、多くの力を合わせれば派兵させないことが出来る、みんなで頑張ろう、と述べた。
 平和フォーラムからの提起は福山真劫事務局長。
 今日一二月八日は日本が太平洋戦争を起こした日だ。戦争は多くの被害をもたらしたが、その反省が憲法だ。イラクへの自衛隊派兵は憲法を空洞化させることだ。アメリカはイラクの石油利権とイスラエル寄りの政権をつくることを目的として戦争をしかけ、イラクの民衆五〇〇〇人、兵士四〇〇〇〇人、そして米英軍などにも四〇〇人をこえる犠牲者を出した。人的損失だけでなく、イラクの環境、インフラを破壊し、劣化ウラン弾での汚染は半永久的なものとなっている。日本の外交官も殺された。いったい誰が責任を取るのか。ブッシュとネオコン勢力が起こした戦争に小泉政権は日本を引きずり込もうとしている。この七月にはイラク特措法が成立し、一〇月にブッシュが、一一月にはラムズフェルドが来日し、戦争のために財政支援と自衛隊派遣を要請した。しかし、イラクの情勢は特措法が成立した時と大きく変化している。イラク全土が戦場化し、特措法が想定している非戦闘地域などはなくなっている。いま世論の八〇%は派兵反対だ。平和フォーラムは、旭川などでの集会、派兵反対の署名など、日本の若者をイラクで殺させない運動を強めていく。いまからでも遅くない。派兵を絶対に止めさせよう。
 各団体、参加者からのアピールでは、日本山妙法寺の武田隆雄上人、市民緊急行動の高田健さん、新聞労連の明珍美紀委員長がともに闘う決意を述べた。
 院内集会をおわって、首相官邸のそばで派兵反対のシュプレヒコールをあげた。

 * * * * *

自衛隊イラク派兵計画をただちに中止することを求めます

 11月29日、イラクの地で日本の外交官二人が殺害されました。アメリカによる国際法違反のイラク攻撃と占領支配のなかで、すでに約一〇〇〇〇人ものイラク民間人犠牲者が生み出されています。このなかで、米英占領支配に対する反感とレジスタンスが広がり、この一ヶ月間に米軍兵士の犠牲者が急増し、五月のいわゆる戦闘終結宣言以前より以後の戦死者を上回りました。それはかりか、被害は米英を支持する諸国関係者にも及びはじめています。
 小泉内閣が、アメリカのイラク攻撃を世界でもいち早く支持し、占領軍を支える巨額な資金援助を約束したばかりか、自衛隊まで派兵しようとしています。今回の二人の外交官は、小泉内閣の対米追従が生み出した犠牲者にほかなりません。
 いまだに発見されない大量破壊兵器をはじめ、大義がないどころかウソで塗り固められたアメリカの戦争に、世界の市民は反対し大規模な平和行動を重ねています。日本でも世論の六割以上がこの戦争を「正しくない」とし、自衛隊派兵については八割が反対しています。派遣当事者となる自衛隊関係者にも家族を含めて疑間や派遣中止を求める声が相次いでいます。
 しかし、小泉首相は自らの失政を省みず、「二人の遺志をつぐ」「テロに屈してはならない」という暴言のもとに、明日にも自衛隊イラク派遣基本計画の閣議決定を強行しようとしています。
 イラクヘの自衛隊の派遣は、米英の不法な占領行為に参加するものであり、イラク国民の求めるものではありません。自衛官がイラクの人々を殺したり、殺されたりする危険性がきわめて高いものであり、日本国憲法に明らかに反したものです。
 日本がまずなすべきことは、自衛隊をイラクに送ることではなく、米英などのイラク占領軍を撤退させ、国連など国際機関やNGOの人々と連携した非軍事による協力を強化し、イラク人自身の手による復興を支えていくことです。泥沼の戦争におかれたイラクの人々を苦しみから脱却させるためにも、私たちは自衛隊イラク派遣の基本計画に反対し、計画をただちに中止することを強く求めます。
 
フォーラム平和・人権・環境 もう戦争はいらない喧衛隊派兵基本計画にNO〜院内集会参加者一同

 内閣総理大臣小泉純一郎様


公明党中央本部へ申し入れ行動   自衛隊イラク派兵中止の決断を!

 一二月九日、小泉内閣はイラク派兵基本計画を閣議で策定した。
 当日午前九時三〇分、自衛隊のイラク派兵に反対する一〇〇人ほどの市民が衆院議員面会所に結集した。集会では、主催者の市民緊急行動の高田健さんがイラク派兵を連日のさまざまな行動で阻止しようとあいさつ。宗教者ネットの石川勇吉さんと社民党の山本喜代宏衆議院議員があいさつ。集会の後は首相官邸にむけた抗議行動を行った。
 つづいて公明党本部への要請行動のために移動を開始。途中、自民党本部前では、派兵反対のシュプレヒコールの声をあげた。
 信濃町の公明党本部に到着。一〇人が代表して会館の中へ。本部前では六〇名ほどが代表団を待ちながら集会。それぞれが与党となった公明党の自衛隊派兵賛成に抗議し、翻意を要求する発言がつづいた。

公明党中央本部様

     これ以上の被害者を出してはならない  自衛隊イラク派兵中止の決断をしてください


 私たちが恐れ、警告していた事態が起こりました。11月29日、イラク北部の幹線道路を自動車で走行中の日本人外交官二人が銃撃を受け、運転手をふくめて三人が命を失いました。
 私たちは、この事件が決して偶発的なものだとは思いません。ブッシュ米大統領が開始した違法なイラク侵略戦争と軍事占領によって、多くのイラク民衆が殺され、生活基盤を破壊されました。「大量破壊兵器の脅威を取り除く」「イラクの人々を独裁体制から解放する」というブッシュ政権の「大義」のでたらめさを肌身で感じたイラクの民衆は、ますます占領支配に抵抗しています。いまイラクで起きていることは「戦争」であることは、現地の米軍司令官がみずから認めています。
 11月に入ってから米軍兵士の死者はうなぎのぼりに増加しており、それとともにイラクに軍隊を送っている諸国の要員への攻撃も拡大していました。今回の日本人外交官の死は、そうした背景で生じた事件です。
 イラクへの戦争とそれに続く占領支配が完全に誤りであったことがあらためて明らかになりました。日本人外交官の死は、何よりも侵略戦争を引き起こした米英政府、ならびにその戦争を支持して自衛隊をイラクに送ろうとしている自・公連立政権の責任です。
 小泉首相は「テロに屈してはならない」「復興支援の国際的責務を果たさなければならない」と語っています。しかし、まずなすべきことは、自衛隊をイラクに送ることではなく、イラク占領軍を撤退させ、国際社会やNGOの人びとと連携した非軍事による支援を行うことです。軍事占領の継続と自衛隊の派兵は、泥沼の戦争とイラクの人々の苦しみがさらに続くことを意味します。
 自衛隊員の間にも、イラクに派遣されることへの疑問と批判が渦巻いています。自衛隊とイラクの人々が「殺し、殺される」ようなことが絶対にあってはなりません。暴力と憎悪の連鎖をここで断ち切らねばなりません。
 世論の圧倒的多数がイラク攻撃に反対し、自衛隊のイラク派兵に反対しています。私たちは、小泉政権がただちに自衛隊イラク派兵の方針を撤回することを求めます。これ以上の被害者を出してはならないからです。小泉首相にこうした決断をさせる上で、発足時に「平和の党」として結党された連立与党の公明党の役割と責任は極めて重大だと考えます。公明党の皆さんが英断を持って小泉首相にイラク派兵の中止を求めるよう、要請します。


改憲阻止の大きな流れを

  第七回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会


 「第七回許すな!憲法改悪・市民運動全国交流集会」が十二月六〜七日にかけて、都内で開かれ、二〇都府県一二七名の人々が参加し、憲法をめぐる情勢や、今後の憲法改悪反対の運動の方向などについて熱心に討議した。今回の全国交流集会は過去六回にわたって開かれた交流集会の中でも参加者と参加県数で最大のものであり、この間の運動の広がりと発展を示すものとなった。

 全国交流集会に先だって午後から開かれた「許すな!憲法改悪・平和のために生かそう、第九条」と題する公開シンポジウムは龍谷大学教授の山内敏弘さん、ジャーナリストの本田雅和さんと市民連絡会の高田健さんで進められ、百数十人が出席した。議論は先の総選挙結果の評価、イラク情勢の評価、憲法問題の現状と今後の課題などに絞られた。総選挙では小選挙区比例代表並列制という悪法のもとで、「政権選択選挙」というキャンペーンが行われ、「二大政党制」へと誘導され、民主主義の本来の姿である多様な表現の道が閉ざされたこと、「護憲」派の連携がますます必要になっていることなどが強調された。イラク情勢についてでは、北海道の自衛隊の派遣予定部隊の家族が職場の友人にもらったチラシで意見広告運動に参加するなど不安が高まっていること、国際法に反する米英のイラク攻撃に追従する小泉内閣の無責任さなどが指摘された。憲法状況では「国民保護法案」など有事法制が通常国会に出されようとしていること、憲法改悪のための国民投票法案も準備されていることなどが指摘された。
 全国交流集会は夕刻から開かれ、プレ企画で学生団体「アジアンスパーク」の「ユージホウ」のダンスとアピールがあった。開会挨拶は市民連絡会事務局長の内田雅敏弁護士、特別発言は雑誌「世界」編集長の岡本厚さん、集会基調提起は市民連絡会事務局次長の高田健さんが行った。
 基調提起では、憲法をめぐる情勢と、そのもとで東京の「五・三憲法集会実行委員会」が半年間の署名運動などの共同行動を提起し、従来の一日共同から持続的な共同に向けて一歩前進したこと、このような共同行動を全国各地で取り組む必要があることが強調された。市民運動が全国各地で、党派や思想信条を超えた共同行動を提唱し、組織し、推進する運動の先頭に立つことが強調された。また九条改憲阻止の五〇〇〇万人署名は長期に慎重に共同で準備して初めて成功するものであり、実現には時間がかかるだろうことなども説明された。国会の野党間の共同を実際に進めるには、院外の市民運動の発展が必要であり、それらの努力のなかで始めて野党の選挙共同なども可能になることも強調された。
 翌日までの討議では、各地からの参加者が熱心に発言し、当面の運動の方向について、共通の認識と共同を確認した。最後に前会一致で集会アピール(別掲)が採択された。今回の全国交流集会は多くの参加者が憲法改悪反対の運動の展望に確信を持てるような討議ができた点で大きな成功をおさめた。各地からの参加者の一部の人々は七日午後に銀座で行われた「イラク反戦、自衛隊派遣反対」のピースアクションにも参加した。

 * * * * * *

共同声明・ 憲法改悪のための手続き法案(憲法改正国民投票法案)の国会上程に反対します

 小泉首相はこのほど中山太郎・衆議院憲法調査会会長に対して、改憲のための手続き法案(「日本国憲法改正国民投票法案」とそれにもとづく「国会法の一部を改正する法律案」)の早期成立を図るよう示しました。これを受けて中山会長は、同法案を二〇〇四年の第一五九回通常国会に提出、成立を図ろうとしています。すでに中山氏が会長をつとめる憲法調査推進議員連盟(自民、公明、民主の有志議員で結成)は二〇〇一年秋に「憲法改正国民投票法案」を発表しています。
 先の総選挙を前にして小泉首相は自民党執行部に対して「二〇〇五年秋の結党五〇周年までに自民党の改憲草案を取りまとめる」よう指示し、同党はそれをマニフェストに掲げました。しかし、今回の選挙では自民党はなぜか憲法問題を正面からとりあげることを回避したために、憲法論議は必ずしも盛り上がらず、争点とはなりませんでした。
 「日本国憲法について広範かつ総合的に調査する」として、五年をめどに国会に設置された憲法調査会は、残り期間を一年あまり残していますが、いまだに憲法の実施状況の調査などは行われておらず、「初めに改憲ありき」の議論に終始しています。にもかかわらず、こうした「憲法改悪のための手続きを定める国民投票法案」などの準備が、憲法の精神に全く反する自衛隊のイラク派遣の動きの中で進められています。憲法の遵守義務がある首相自らが「憲法の隙間」とか「自衛隊は誰が見ても軍隊」などという憲法違反の発言を公然と行いながら改憲を指示しているのです。こうした政治的風潮は、憲法の危機であるだけでなく立憲主義そのものの危機です。
 改憲を目指す中山氏たちの議連は「憲法96条の改正規定がある以上、改憲の手続法の策定をしないのは立法不作為にあたる」などといいます。しかし、平和憲法を敵視して解釈改憲を積み重ね、自らも「自衛隊の現状は憲法と大きく乖離してしまっている」などという人びとが、96条の遵守だけをなぜ強調するのでしょうか。これはまったくご都合主義の議論にすぎません。
 私たちは21世紀をブッシュ米国大統領がいうような「新しい戦争の時代」にしたくはありません。日本国憲法が掲げる平和と人権、民主の理念が全世界で花開く時代にしたいと願っています。私たちは倦まずたゆまず一歩一歩、この理想の実現に向かって全世界の人びととともに歩み続けたいと願っています。この憲法の理念をねじ曲げ、ゆがめ、破壊するための「憲法改悪手続き法」(改憲のための国民投票法案)は要りません。いまこそとりわけ第9条を堅持し、世界と日本の平和のために生かすことが必要です。
 以上、連名をもって声明します。

二〇〇四年一月

(呼びかけ団体) 
赤とんぼの会 沖縄県憲法普及協議会 沖縄人権協会 関西共同行動 キリスト者政治連盟憲法9条の会・関西 「憲法」を愛する女性ネット 憲法を生かす会 憲法を生かす会・神戸 子どもの人権擁護協会 杉並憲法集会連絡会 全国労働組合連絡協議会 「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW−NET Japan)  第九条の会ヒロシマ 日本カトリック正義と平和協議会 日本山妙法寺 日本消費者連盟 平和憲法を広める狛江連絡会 平和を実現するキリスト者ネット 平和をつくり出す宗教者ネット 許すな!憲法改悪・市民連絡会

 § § § § §

 この「声明」の賛同団体を広く募集しています。なおこの賛同は団体やグループに限ります。お知り合いのグループにぜひ広めてください。賛同してくださる団体はメールやFAX、郵便で12月末までに下記にご連絡ください。
 許すな!憲法改悪・市民連絡会 東京都千代田区三崎町2―21―6ー302
 Fax 03(3221)2558  kenpou@vc-net.ne.jp


C130輸送機をイラクに飛ばすな!  12・7愛知・小牧基地集会

 一二月七日一時から、「イラク派兵を止めよう!〜小牧基地からC130輸送機を飛ばすな〜」の集会・デモ・小牧基地への申し入れ、官舎へのビラ入れ行動が闘われた。小牧基地南のエアーフロントオアシスには、全国からの参加も含め、二〇〇名が結集した。集会には北海道・横須賀・呉・北九州・沖縄・韓国から連帯のメッセージが届いた。小牧基地にたいして、主催のピースアクションと浜松のNO!AWACSの会からの申し入れ文章を提出した。

 自衛隊のイラク派兵を止めよう!12・7小牧現地集会アピール(要旨)

 とうとう日本人の犠牲者が出てしまいました。テレビで映し出されたご遺族のみなさんの悲しみのようすは、見ていてとてもつらいものです。心からご冥福をお祈りします。私たちは、ご遺族の深い悲しみを想う時、この悲しみは、イラク全土で毎日くりかえされている光景であることに、あらためて気付かされます。なんの正当性もない米・英のイラク攻撃。それを支持した日本政府。今や世界中をおおい始めた悲しみと憤りの根源はここにあります!  
 しかし、世論の多くは自衛隊のイラク派兵に反対しています。ブッシュへの機嫌取りは誰の目にも明らかだし、自衛隊のイラクへの戦時派兵は、日本の将来にとって、とても危険な選択であること、わかってきたからです。そして、人の命さえもてあそぶ小泉首相に、人々は失望しています。「どこが危険かはわからない」、「危険といえば危険」などと無責任な発言を繰り返してきた小泉政権。いまさらとりつくろった「国民への説明」とは何なのでしょう。自衛隊員とその家族の人たちから、多くの不安や疑問の声が発せられています。「断れない。命令されたら行くだけ。イラクに行きたい人なんていない。」。こんな悲痛な声があげられています。自衛隊員はイラク侵略と占領に疑問をもっているのです。自衛ではなく、「軍隊」となることへの疑問でもあります。私たちと立場は違っても、同じ想いがあるのです。
 侵略と占領支配に加担しない。「軍隊」をもたない。これは「かつての侵略戦争」の反省に立った私たちの切なる願いです。今、平和憲法のはたす役割はますます現実性をもってきています。私たちは大きな岐路に立たされています。
 小牧基地から派遣されると言われているC130輸送機3機は、機体を空色にぬりかえられ、イラクの人たちに見られないようにして、米・英軍の武器弾薬や生活物資を輸送することになります。これが復興支援のはずがありません。自衛隊派遣は現地で望まれてはいません。C130輸送機が派遣されれば小牧基地は侵略戦争に加担することになります。また、空中給油機の小牧基地への配備計画もはっきりしてきました。小牧基地は侵略戦争の基地と化しています。
 これ以上、イラクでどんな犠牲も出してはいけません。自衛隊を派兵してはいけません。米・英軍の占領を止めなければいけません。小牧基地を侵略拠点にしてはいけません。

 自衛隊はイラクへ行くな!

 小牧基地からC130輸送機をとばすな!


裁判所は首切り・差別の自由を認めるな   裁判所包囲デモ

 労働裁判で反動的な判決が相次いでいる。東京高裁では村上敬一裁判長の全動労判決、反リストラ産経労などへの逆転反動判決をはじめ、横須賀基地じん肺事件(鬼頭季男裁判長)や横浜市従・保育士労災裁判(石川善則裁判長)など、この間の判例をまったく無視する判決が出されている。労働裁判だけではない。戦後補償問題その他でも司法の反動化は明らかだ。裁判闘争を闘っている争議団・戦後補償団体・人権団体は、こうした司法のあり方について共同して怒りの声をぶつけてきた。
 一二月一一日には、東京・霞が関で、「『誰の番人?裁判所!』12・11裁判所包囲デモ」が行われた。行動に参加した労働者は、雨をついて、「裁判所は団結権を守れ!」「争議権を蹂躙するな!」「公正な判決を出せ!」「裁判所は憲法を守れ!」などのシュプレヒコールをあげた。
 国会請願では、共産党と社民党の国会議員がデモ参加者を激励した。


書籍紹介

   
『東海村「臨界」事故』

     (槌田敦名城大学教授+JCO臨界事故調査市民の会=編著) 高文研 125ページ  本体価格1000円 

 いま日本の原発をめぐる状況は大きな転換期を迎えようとしている。原発の危険性、資料改ざんなどに象徴される秘密性についての認識が広まり、そして推進側の主張してきた経済性についても疑問が呈されてきている。
 一二月八日、北陸電力、関西電力、中部電力の常務が石川県珠洲市役所を訪れ、珠洲原発の中止を伝えた。
 九日には、警察庁は、イラクへの自衛隊派遣に関する基本計画が閣議決定されたことを受け、日本がテロの標的になる恐れがあるとして、米政府関連施設、原子力施設などの警備とテロ関連の情報収集を一層強化するようにと全国の各警察本部に通達した(すでに警察は一昨年の9・11事件以降、原子力発電所などの重要施設にはサブマシンガン装備の機動隊を配置するなどの対処をしてきた)。警戒場所は約六五〇カ所。米軍基地など米国関連施設(一七四カ所)、米国支持国の大使館など(六二カ所)にくわえて、一六道府県の三四カ所の原子力関連施設があげられている。
 一方、関西電力高浜原発でのプルサーマル計画が再び動き始めた。高浜原発は英核燃料会社によるウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料の不正製造によって足踏みしていたが、関電は来年三月までにMOX燃料の製造を契約する方針を決めたのである。
 このように原発をめぐる状況は大きな変化を見せているが、忘れてならないことは、東海地震の真上にある静岡・浜岡老朽原発の存在をはじめとして大規模事故の可能性が増大していることだ。

 危険な原発を一刻も早く停止・解体させる運動をつよめていかなければならない。一九九九年九月三〇日に起こった、死者二人、六六七人の被曝、三一万人が避難したという日本最大の原子力の惨事JCO東海村「臨界」事故の原因を明らかにし、その責任を問うことは反原発の闘いを進めていく上で大きな意義をもっている。
 JCO(日本核燃料コンバージョン株式会社)のある茨城県東海村は、日本の原子力開発の発祥の地であり、いまもその開発拠点である。
 本書の「はじめに JCO臨界事故はなぜ起こったか」で、菅井益郎國學院大学教授は、「(東電などのトラブル隠しによる原発運転停止や「電力供給危機」キャンペーンなどによって)日本の原子力安全体制の根本的な欠陥を暴露したJCO臨界事故の影が薄くなり、その記憶の風化が急速に進みつつあるように思われる。私たちは日本の原子力開発のメッカである東海村で想定外の事故が発生したこと、また迅速な事故対策ができなかったことを深く受け止め、この事故の真の原因を究明することが、きわめて重要だと思う」と書いている。
 「旧動燃が引き起こしたJCO臨界事故」で槌田敦教授は、事故責任をバケツ作業をおこなった現場にだけに押しつけようとする会社や国の嘘を暴露し、旧・動燃(核燃料サイクル開発機構)による無理な均一化の注文こそが臨界事故の原因であること、事故のあと動燃と科学技術庁の責任が消された陰謀、日本の原子力技術者が臨界などの基礎的事柄も理解していないという実態、おまけに安全審査官自身が動燃からの出向者であることなど癒着関係の存在、そして日本の核兵器用プルトニウム生産の可能性(高速実験炉「常陽」)などについても説得的に展開している。
 その他、事故当日の記録(その日の東海高校)、臨界事故裁判、政府に対する質問、住民被曝者の闘い、資料など内容は豊富だ。


イラクの人々が歓迎する日本人は自衛隊ではない   イラクの人びとの声

 以下に紹介するのは、イラクで人道支援に当っている日本人女性高遠菜穂子さんのメールからの転載で、イラクの人びとの本音が聞こえる。メールには英文もありますが日本語訳文のみを掲載する(編集部)。


 みなさん、こんにちは。バグダッドより高遠菜穂子です。イラク人から日本政府あてに送られたメッセージです。
 転送、転載OKです。これらはもうすでに政府あてにメールしたものです。

 § § §

 あなたは本気でイラクに軍隊を送るつもりですか?もし、私の意見を聞いていただけるなら、どうか送らないでください。なぜなら、私たちは日本の兵隊がイラクで殺されるのを見たくないからです。もし、本当に私たちを助けたいとお思いならば、この国の再建を武器ではなく、日本のテクノロジーと産業でここに来てください。
 追伸:ティクリートで殺された日本人二名の殺害事件は本当に悲しい事件でした。なぜなら、私はたくさんの日本人の友達がいるからです。

 次に友達のコメントを載せます…『日本の政府はアメリカ政府に従ってばかりではいけない。自国の決断を自身で下すべきだ』( ディア アル ドレイミー  タクシー運転手 バグダッド)

ディア スレイビー
バグダッド イラク

§ § §

 日本の方々が私たちイラク人の現在抱えている問題を解決に来てくれることに感謝します。日本の皆さんには医薬品と医療設備などをお願いしたいです。

四三歳 イラク人

 § § §

 私たちは世界中から来てくれる友人を歓迎いたします。彼らはイラク人のことを考えてくれるからです。軍隊としてではなく、友人として来てほしいです。

 カドゥム アビッド
 三〇歳 医者

 § § §

 戦争反対!殺さないで!もうたくさんだ…。私たちはバース党と独裁者サダムでもう十分にそういうことは味わった。私たちは日本人から『平和』を学びたい。日本人はアジアの友人だ。『平和』『安全な生活』『自由』これらが私たちイラク人の求めるものです。

 アドナン ハルダン
 ジャーナリスト

 § § §

 親愛なる小泉さん
 イラク人は日本人のことが大好きです。そして、日本からのNGOの人々は日本に対するさらなる良い印象を私たちに与えてくれました。どうか、この評判を落とさないようにしてください。そして、私たちの破壊された国を再建するために民間の会社を送ってください。一人の民間人として私が思うのは、軍隊を送ることは私の国イラクでの暴力を増長させるだろうということです。

 さようなら、ジャパニーズフレンド
 ワリード
 バグダッド

 § § §

 私たちは日本人を歓迎いたします。なぜなら彼らは、医者、技術者、芸術家だからです。反対にアメリカは戦闘家ばかりです。

 ジアド ムハンマド スビー

 § § §

 もし、日本人が武器を持って来るというなら、私たちはそのような人たちを望んでいません。アメリカを助けるために来るのなら、来てほしくありません。私たちが外国人に望むことは、イラクの再建を手伝ってほしいということだけです。国連、そしてNGOの方を大歓迎します。

芸術学校の教師

 § § §

 私たちはビジター、NGO、医者、エンジニア(技術者)、企業を歓迎します。軍隊はもうやめてください!

 ムハンマド ザイード
 バグダッド


せ ん り ゅ う

 選挙おわったから足利つぶそう

 景気上向きだって銀行二つつぶれた

 武富士異様な社員管理政府のマネ

 いやな想出 殺られたぞ英雄だ

              ゝ 史

二〇〇三年一二月

○ 中国への侵略戦争当時のこと、爆弾三勇士とか英雄がまつりあげられて戦意の鼓舞が計られたことを想い出す。まっていました、とばかりの英雄視報道には小泉政府の自衛隊イラク派兵願望がからんでいる。


複眼単眼

 自衛隊員の彼をイラクに行かせないで 勇気あるたった一人の署名活動


 いまは岩波文庫になっている日本戦没学生記念会編の「きけわだつみのこえ」の巻頭に、一九四九年八月三一日付で編者のひとり渡辺一夫が、フランスの詩人ジャン・タルジューの短詩を掲げている。

 死んだ人々は、還ってこない以上、
 生き残った人々は、何が判ればいい?
 死んだ人々には、嘆く術もない以上、生き残った人々は、誰のことを、何を、嘆いたらいい?
 死んだ人々は、もはや黙ってはいられぬ以上、
 生き残った人々は沈黙を守るべきなのか?

 十五年戦争が終わって以来、多くの人々が戦争について考えてきた。決していい加減ではなかった。にもかかわらず、その総括が不十分で、反省と清算が中途半端だったことのつけがいま押し寄せてきた。とりわけこの国が形態を変えたとはいえ、天皇制を残してしまった恨みは大きい。歴史の断絶の不徹底さに付け込み、「帝国」の復活が謀られ、五八年をへて、とうとう軍隊が海外に戦場に派兵されようとしている。「死んだ人はもはや黙っていられない」だろう。
 本誌の前々号に札幌と、千葉の「派兵されようとしている自衛隊員の恋人たち」のことを書いた。昨日の帆船集会ではこの千葉の女性が集会によせたメッセージを聞いた。
「本来、参加して皆様にご挨拶すべきところですが、彼に迷惑がかかるので、お手紙にします」という主旨のことをいっていた。
十二月十一日の朝日新聞に「彼を行かせないで たった一人の街頭署名活動 札幌・千葉」という感動的な記事がでた。あの二人の女性がそれぞれひとりで派遣反対の署名集めを始めたという。札幌の女性は零下二・五度の札幌のアーケード街で一〇日午前から夕方七時過ぎまでかかって一三〇人の署名を集めた。千葉の女性は八、九ひの両日で、一六〇人の署名を集めた。ブーツを履き、ザックを背負って小さく書かれた「自衛隊派遣反対!!」と書かれた署名板をもって一人たって署名を集めている若い女性の写真も掲載された。
その写真を見て、ジーンとするものがあった。思わず札幌に駆けつけてそばに立って居たくなった。「手伝ってもいい?」と聞いてみたいし、迷惑だったら離れて見守って居たくなった。札幌の方々、千葉の方々、どうかおねがいします。彼女らにそっと寄り添ってあげてください。黙って立っているだけでもいいですから。
これから、このような思いをする若い娘らがこの国で続出するかもしれない。
勇気をもって署名にたった娘たち。「わだつみ」の世代にはなかったあたらしい、励まされる動きではある。彼女らは訴える。「こういう思いをしている人がいることを、たくさんの人に知ってほしい」と。(T)