人民新報 ・ 第1119 号<統合212> (2004年1月15日)
  
                  目次

 ● ACTION 111  自衛隊は行くな! イラクへ行くな!  みんなで阻止しよう

 ● 悪法盛りだくさんの第159通常国会に際して  広範な大衆闘争を展開し、悪政にNOを

 ● イラクへの自衛隊派兵に反対し、民衆運動の高揚にむけ、団結してともに前進しよう  

        今こそ昌益の反戦平和論を!  /  石渡博明(安藤昌益の会事務局長)

        侵略者の「平和」  /  北田 大吉

        マスコミの悪しき誘導を許すな  /  佐藤敏昭(三多摩労法センター代表)

        社会変革の出発点にしよう  /  砂場徹(尼崎市)

        派兵・改憲を許さない民衆大連合を!  /  中北龍太郎(弁護士)

 ● 自衛隊をイラクに送るな!  12.25 防衛庁への要請行動

 ● ストライキで要求を実現した  広島・資源ごみリサイクルの職場で

 ● 戦後はじめて20%を切った労働組合への組織率

 ● 教育基本法の改悪を許すな!  全都道府県から5000人が結集

 ● 超大国アメリカの持続可能性(サステイナビリティー) A  /  関 考一

 ● 図書紹介

  @ 雑誌『技術と人間』二〇〇三年十二月号、特集「憲法改悪と人民の立場」

  A 日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版セミナー4 「内幕ー憲法調査会はいま?」 高田健(憲法調査会市民監視センター)講演記録

 ● 元日に平和の餅つき

 ● せ ん り ゅ う  /  ゝ 史

 ● 複眼単眼  /  「地獄への道は善意で敷き詰められている」との警句を思いだす




ACTION 111

自衛隊は行くな! イラクへ行くな!  みんなで阻止しよう


 一月一一日、日比谷公会堂で、自衛隊のイラク派兵に反対する意思表示を行う「アクション111 戦争を回避せよ イラク派兵は認めない」集会が行われた。二〇日余りの準備期間にもかかわらず一七〇〇人もの人びとが集まった。
 「アクション111」は、数字の「1」が六個ならぶ一月一一日午後一時一一分、全国各地二一ヵ所で一斉に、一分間にわたり同時に音を立て、自衛隊派兵に抗議の意思表示を行った。

 発起人あいさつとして山口二郎さん(北海道大学教授)、佐高信さん(評論家)が発言した。山口さんは、北海道の自衛隊は、札幌の雪まつりでイラク派兵反対の行動が起きるようなことがあれば雪まつりに協力しないというとんでもない強権的な発言を行ったがメディアはほとんど報道していない、憲法で戦争できないと約束しているのに日本は軍優先の社会になろうとしている、本当に危ない状況だ、と述べた。佐高信さんは、ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキそしていまノーモア・ブラッド(血)を叫ばなければならないと述べ、加川良さんの歌を読み上げた。「命はひとつ 人生は一回 だから命をすてないようにね / 慌てるとついふらふらと お国のためなのといわれるとね / 青くなって尻込みなさい 逃げなさい 隠れなさい …… 死んで神様といわれるよりも 生きてバカだといわれましょうよね / きれいごと 並べられた時も この命を捨てないようにね  / 青くなって尻込みなさい 逃げなさい 隠れなさい」。
 つづいて集会に賛同する俳優の米倉斉加年さん、吉永小百合さん、岸恵子さんからのメッセージが紹介された。米倉斉加年さん(「私は自衛隊のイラク派兵に反対します。人を殺して良いといういかなる理由もない。ならば戦争して良いといういかなる理由もない。戦争は人を殺す、無差別に人を殺す。そして兵士より非戦闘員の市民が多く殺される。女、子ども、老人。平和とは人が生きること」)。吉永小百合さん(「日本がまた戦争への道を進むことのないよう、いまみんなで声を出しましょう。自衛隊のイラク派兵に反対します」)。岸恵子さん(「関係ないなどと言わないで。しかたがないとも言わないで。目を開いて世界を見ましょう。いまの日本がどこに行くのか。権威や他者の言葉を鵜呑みにしないで、自分の考えを出しましょう。そして声をあげましょう」)。
 実行委員会事務局からは、今日の趣旨に賛同して各地で展開されている二二カ所(一ヶ所はアメリカ・ロスアンゼルス)での行動について報告された。
 そして、一時一一分。
 シンガーソングライターの横井久美子さんの指揮で、参加者がそれぞれ持ってきた笛や鈴、太鼓などで「自衛隊いくな!」「イラクへ行くな!」などのコールに合わせて約一分間にわたって、反戦の意思表示を行った。
 リレースピーチでは、反戦パフォーマンス・グループの桃色ゲリラ、国際政治学を学ぶ立命館大学の学生、イラクの子どもたちにサッカー・ボールを送った明治学院の高校生、日韓学生交流に取り組む在日コリアン四世の青年、写真家の佐藤好美さん、作家の渡辺一枝さんが、それぞれ派兵反対と反戦平和の思いを語った。
 イラストレーターの黒田征太郎さんはパーカッション演奏を流している横でのライブペインティング。さすがに迫力がある。黒田さんは絵を描き終えて、絵を画くことで戦争への自分の思いを表現したと言った。
 最後に、もう一人の発起人である東京・国立市の上原公子市長が閉会のあいさつ。
 上原市長は、今日は出会いの日、国会へむけて国民の戦争への怒りの声を訴えて行くためにネットワークをどんどんひろげていこう、と述べた。
 集会を終わって、銀座パレードで、市民に反戦を訴えた。


悪法盛りだくさんの第159通常国会に際して

             広範な大衆闘争を展開し、悪政にNOを


 第一五九通常国会は一月十九日から始まり、六月十六日までの一五〇日間となった。七月十一日投票に決まった参議院選挙との関連で延長はないと言われる。
 政府・与党はこの国会で、補正予算案と自衛隊イラク派兵の承認案件を一月中に処理した後、二月はじめから二〇〇四年度予算案の審議を急ぎ、有事関連六法制案、年金改革法案、憲法改悪のための国民投票法案、司法制度改革関連法案、「北朝鮮経済制裁」のための外国貿易・為替法改正法案などの審議・立を狙っている。
 自衛隊のイラク派兵は国会での事後承認が必要とされていることから、今国会の重要議題だ。自民党からも、イラク攻撃の口実とされた「大量破壊兵器」がいまだに見つかっていないことなど、その正当性に疑問を表明する加藤紘一・古賀誠両元幹事長らの動きがあるし、有事法制では賛成に回るであろう民主党もこれには強く反対している。
 今回予定されている有事関連法案は昨年成立した武力攻撃事態法など有事関連法がプログラム法であり、「国民保護法制」などの法整備がないと機能しないことから国会に提出されるもの。具体的には@「国民保護」法制、A自衛隊の行動円滑化のための法制、B米軍の行動円滑化のための法制、C交通・通信の総合的な調整に関する法制、D戦時における非人道的行為の処罰に関する法制、E捕虜の取り扱いに関する法制の六法制で、審議は一括審議にされると思われる。
 憲法改悪のための国民投票法案はすでに自民党や、民主党、公明党の有志議員が参加する憲法調査推進議員連盟(改憲議連、中山太郎会長)が法案を用意しており、与党公明党の承認が得られればいつでも提出、採決の準備がされている。ただし、公明党は最近の創価学会会員有志による「イラク戦争に反対し平和憲法を守る会」の結成と署名運動などの動きもあり、今国会提出には慎重な議員もいる。逆に民主党には野田国対委員長ら、積極派も少なくないので、法案をめぐる動向は予断を許さない。
 いわゆる北朝鮮経済制裁法案は社民、共産を除く各政党所属の多くの国会議員が民族排外主義の跋扈するもとで賛意を表明しており、各地の草の根右翼の動向とともに危険な状況だ。法案の提出は「六カ国会議」や「拉致家族の帰国」問題、核開発問題などの動向と不可分で、北東アジアの緊張激化を促進する「経済制裁法」案の上程を阻止しなくてはならない。
 この間も問題になってきた「教育基本法改悪」案は、これら重要法案目白押しの一五九国会で提出するのは難しく、次回に先送りするというのが政府与党の執行部の判断だが、成立を主張する勢力も自民党内に根強く、絶対に安心できない。
 また年金制度の崩壊の危機の中でいっそう人々に犠牲をしわ寄せするための「年金改革法」案、民事訴訟の弁護士費用の敗者負担制度を含む「司法改革法案、「道路関係四公団民営化法」案などが用意されている。
 報道によれば小泉首相は国会冒頭の「施政方針演説」で、イラク派兵を正当化するため、またも憲法前文の「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」を恣意的に引用し、演説すると言われる。すでに小泉首相は先の派兵基本計画の説明の際に多くの批判を浴びたこの手法に、ひたすらこだわる以外に、派兵の「正当性」を説明できなくなっている。
 航空自衛隊の先遣隊のイラク派兵に続いて、陸上自衛隊の先遣隊の派兵が迫っている。本体派遣の準備も進められている。米国の要請のもとで、この国を派兵国家にしようとくわだてる小泉内閣の危険な政治を打ち破るため、いま、全力で大衆行動を起こし、世論を盛り上げる必要がある。
 すでに一五九国会の冒頭の十九日には市民団体や宗教者による院内集会が準備され、二三日には憲法八団体共催の「憲法改悪手続き法案」反対の院内集会も計画されている。二五日にはイラク反戦の大集会が東京で準備されている。
 共同行動を大胆に展開し、世論の力で小泉内閣の戦争政策にSTOPをかけよう。


イラクへの自衛隊派兵に反対し、民衆運動の高揚にむけ、団結してともに前進しよう  

今こそ昌益の反戦平和論を!

          石渡博明(安藤昌益の会事務局長)

 歴代自民党政権は、日本社会に根深く残る、平和や平等・民主主義といった概念は欧米からの借り物・押し付けであるといった偏見を悪用して、警察予備隊=自衛隊の創設に始まり、解釈改憲につぐ解釈改憲で自らの好戦的な野望を拡大し、ついにはイラク出兵に踏み出すことで、憲法を、そして人びと平和への願いを蹂躙し、日本近代史における愚行を再び演じようとしています。
 こうした歴史の歪曲―捏造が跋扈する今だからこそ、平和も平等も民主主義も日本の風土に自生した民衆の英知であることの証しとして、安藤昌益の反侵略論・平和論が思い起こされなければならないでしょう。一人の昌益の存在は、それに連なる無数の小昌益の存在を想起させます。
 反戦平和の思いを若い世代・世界の人びとと共有するのと同時に、時代を越え地域を越えた民衆の魂の叫びとして受げ継ぎ発展させていくことこそ、私たちの闘いを豊にしてくれるはずです。

侵略者の「平和」

          北田 大吉

 イラクへ自衛隊を派遣する基本計画が閣議決定され、国民に対してその内容が発表された。小泉首相の説明は具体性に欠け、ごまかしに満ち満ちたものである。
 小泉は、派遣される自衛隊は武力行使をしないという。しかし抵抗され攻撃を受ける場合には正当防衛として反撃するという。
 抵抗を受けることをあらかじめ想定し、対戦車砲で反撃するというのは武力行使であり、戦争行為そのものではないのか。
 「侵略者は常に平和愛好者である(ボナパルトはいつもそういっていた)、血を流さずに相手の国土に進駐するのがかれの願いである。」(クラウゼウィッツ『戦争論』)
 侵略を受けた人民が抵抗するのは、人間として当然の権利である。この侵略、占領という事実に目をつぶり、抵抗をテロとして殲滅せんとすること自体が理不尽である。
 日本の人民は、日本の支配者のこの理不尽を絶対に許してはならない。

マスコミの悪しき誘導を許すな

          佐藤敏昭(三多摩労法センター代表)

 読売(〇三・一〇・一〇)の社説には瞠目させられた。日本最大の部数を発行し、テレビ・スポーツに潜勢力を持ち、中央公論を併呑し、文化にも触手のばすこのこの巨大媒体はいま驕りたかぶっている。
 憲法改正を最初に導入、イラク戦争におよんで露骨に国民を指導・支配しようとしている。
 この社説を見ても小泉を評価し、イラク派兵は国家意志の発現であり、日米同盟の観点からも米軍支援は当然、自衛隊員を尊敬せよと説く。かつて六〇年安保の時、六・一七に、新聞七社(ほとんど全国の新聞社が賛同)の共同宣言が発せられた。「社会―民社の両党は、これまでの争点をしばらく投げ捨て率先して国会に帰り……」なる趣旨で「暴力を排し議会主義を守れ」という題目がついている。言わんとする所はわかるが、これが歴史的には日米安保の定着、資本にとって以後の安定成長路線となったことは明かである。歴史を繰り返させてはならぬ。

社会変革の出発点にしよう


          砂場徹(尼崎市)

 天皇と戦後の歴代首相が、よく口にしてきた「先の戦争」とか「不幸な歴史」とかいう言葉の「化けの皮」が剥がれました。小泉のイラク侵略に対し、「反戦」で一致できない国民の思想状況を見るとき慄然とします。私事ですが、二〇歳のとき徴兵され戦争に加担した自分が、生きている間に再び同じ道を歩まされるとは思いもしなかった。「先の戦争」の誤りを反省し、「反戦」の人生を送ってきたつもりの私は自己の反省を検証しなければならない。小泉改革が金持ち優遇、労働者・高齢者・社会的弱者にいっそうの痛みを押しつけることは誰の目にも明かです。
 その小泉のもう一つの大仕事が「イラク侵略」だった。
 大きな曲がり角の今年を「イラク出兵反対・憲法9条堅持」を核に国民の生活要求の闘いの発展に尽くしたいと思います。
 その団結の力は、必ず激動のときを新しい社会秩序創出の出発点となることを確信します。

派兵・改憲を許さない民衆大連合を!

          中北龍太郎(弁護士)

 いま日本は、平和国家から戦争国家へ大転換期に突入しています。
 戦後初めて戦闘で命を奪う危険に満ちたイラク派兵に続いて、恒久派兵法制定そして派兵政策の総仕上げとして改憲の動きが怒涛のように押し寄せています。
 圧倒的軍事力に物を言わせた単独行動主義、先制攻撃で世界の一極支配をもくろむアメリカの野望とそれに組する日本の戦争協力政策が、世界の平和を撹乱する元凶です。
 多数の派兵・改憲反対の世論にもかかわらず、この危険な動きを止められない平和勢力の低迷をなんとしても克服していかねばなりません。
 今こそ、派兵と改憲のための政治システムである保守二党制を打ち破り、平和を構築するため、国政―市民社会―職場を横断する大連合を形成する時です。英知を集めて平和の道を共に築きあげましょう。


自衛隊をイラクに送るな!  12.25 防衛庁への要請行動
      
 一二月二五日、航空自衛隊先遣隊イラク派兵前日のこの日の正午から、市ヶ谷の防衛庁に対する要請行動が行われた。これは、戦争反対、有事をつくるな!市民緊急行動、平和をつくり出す宗教者ネット、平和を実現するキリスト者ネットの呼びかけによるもの。
 ウィークデーの昼にもかかわらず、多くの団体・グループが駆けつけ、一五〇人近くの人が参加した。
 リレートークでは、作家の中山千夏さん、宗教者平和協議会の石川勇吉さん、日本キリスト教協議会(NCC)の鈴木伶子議長、日韓民衆連帯全国ネットワークの大畑龍次さん、市民の意見30・東京の吉川雄一さんなどが発言した。
 ついで、石破茂防衛庁長官に対する要請書「自衛隊をイラクに送るな! 派兵『基本計画』に基づく『派遣準備命令』『派遣命令』の撤回を」を読み上げ担当官に手渡した。要請文では「イラクの人々は、日本の復興支援を求めていますが、決して占領軍の一部を構成する自衛隊の派遣をもとめているわけではないのです。私たちはイラクに派遣される予定の自衛隊員やその家族・友人・恋人の間に不安や反対の声が渦巻いていることを知っています。私たちは、自衛隊員とイラクの人々が『殺し、殺される』関係に入ることがあってはならないと思います。今からでも遅くはありません。私たちは自衛隊派兵の『基本計画』ならびにそれに基づく『派遣準備命令』『派遣命令』をただちに撤回し、イラクに自衛隊を送らないことを強く求めます」と派兵反対を求めている。
 他にも、他に三つのグループが要請文を渡した。「戦争行くな!」「イラクに行くな!」などのコールをあげた。
 防衛庁前集会の後、参加者はJR市ヶ谷駅に移動し、ビラ配り、署名集めをおこなった。短時間の内に署名が集まり、市民の派兵反対の声の拡ひろがりが感じられた。


ストライキで要求を実現した  広島・資源ごみリサイクルの職場で

 一月七日付けの「中国新聞」は、広島市が回収した資源ゴミを、業者が選別する市西部リサイクルプラザと市北部の資源選別センターで、業者と契約する労働者五〇人がストライキに突入したと報じた。
 資源ごみ選別事業に落札した業者ナカメタルは、外国人労働者への差別、障がい者の雇用打ち切り、新年度からの賃金切り下げを主張していたが、労働組合(スクラムユニオンひろしま)の側はこの撤回を強く求めていた。労働者たちは、障がいのある作業員の雇用継続、新年度からの賃下げの取りやめなどの要求をおこない交渉してきたが決裂し、六〜七日にはゴミが搬入されるなかストライキに入った。その後、会社は組合の要求を受け入れて、労働者の勝利で終わった。
 闘いの結果かち取られた協定書は内容は次のようなものだ。
 「ブラジル人、ペルー人への夏期一時金二万円の支給、一〇月一日からの有給休暇一〇日間の支給、皆勤手当の支給を確認する。夏期一時金は冬期一時金の支払日に行なう。退職したアベ・ハルミ、ガルシアにも支給する。一〇月一日からの有休と皆勤は次回給料日で清算する」「団交時における『障がい者は生産性が低いので、来年度全員解雇する』との発言は撤回する」「冬期一時金については、夏期一時金プラス一万円で妥結する。基本的に一律三万円とする」「来年度の賃金決定にあたって、会社は労働者の賃金を一律に引き下げることはしない。査定基準を明確にし、賃金を上げる者、賃金を下げる者は、査定を入れ、行うようにする。なお、査定基準は事前に組合に明らかにし、協議するものとする」「ストライキ期間中、非組合員は出勤扱いとし、一〇〇%の賃金保障を行なう。皆勤手当も付ける」。
 闘いでは、冬期一時金と在日外国人の権利回復が軸になったが、組合の要求は、ほとんど通ることになった。そして重要なことは、今回の闘いのなかで、市役所が、これまでの不安定な雇用契約(一年雇用)を変更して雇用の継続的確保を確約したことである。
 この闘いから確認できることは、労働者が団結して闘えば、差別分断、雇い止め解雇や労働条件の切り下げを阻止することが出来るということだ。


戦後はじめて20%を切った労働組合への組織率

 昨年一二月に厚生労働省は、二〇〇三年六月末時点での全国の労働組合推定組織率を発表した。全雇用者数五、三七三万人(昨年より二五万人増)のうち組織率は一九・六%。前年を〇・六ポイント下回って、戦後初めて二〇%を割った。組織率は二二年連続で過去最低を更新している(前年と同率だった一九八一年を含めると二八年連続)。
 一〇〇〇人以上の大企業の推定組織率は五一・九%(前年より二・九ポイント下落)だが、九九人以下の中小企業の推定組織率は一・二(前年より〇・一ポイント下落)に過ぎない。また、パート労働者の組合員数は三三万一〇〇〇人(前年を一三・一%上回る)となったが、パート労働者は一〇九八万人と急増し推定組織率は三・〇%となっている。
 労働組合員数は一、〇五三万一〇〇〇人で前年に比べ二六万九〇〇〇人減(九年連続の減少)となった。
 産業別で減少では、製造業の一四万四〇〇〇人減、金融・保険業の三万八〇〇〇人減、運輸業の三万七〇〇〇人減と、すさまじいリストラ合理化の影響がうかがわれる。


教育基本法の改悪を許すな!

        
全都道府県から5000人が結集

 「憲法改悪の前には教育基本法の改悪を」、これが中曽根をはじめ改憲派の目論見だ。
 一二月二三日には「ここでとめなきゃ、憲法改悪への道」を合い言葉に、東京・日比谷公会堂で、「子どもは『お国』のためにあるんじゃない! 教育基本法改悪反対! 12・23全国集会」(主催・同実行委員会)が開かれた。全都道府県からの参加者で会場は満杯となり階段・通路に座り込んで講師の話を熱心に聞いた。入場できない人も多く会場外にはスクリーンも設置された。集会後のパレードをふくめると五〇〇〇人のもの参加があった。
 教育基本法は憲法と一体のもので憲法とともに平和・人権・主権在民などの確立に積極的な役割を果たしてきた。それが政府・与党が強行しようとしている方向で改悪されるなら、教育は人びとの権利としての教育から、国家の統治のための教育へと大きく逆転させられてしまう。教育基本法の改悪は、教育の問題にとどまるものではなく、国民投票で憲法を変えるための世論形成の前提づくりでもあり、九条を含めた憲法改悪をに直結している。
 この集会は、昨年八月名古屋でおこなわれた「夏の全国合宿in名古屋」で教育基本法改悪を阻止するためには何をしなければならないのかをめぐって熱い議論をかわした参加者の総意で開催が決定され、大内裕和さん(松山大学)、小森陽一さん(東京大学)、高橋哲哉さん(東京大学)、三宅晶子さん(千葉大学)の呼びかけに、全国各地の教職員、教育問題をはじめさまざまな問題に取り組んでいる多くの人びと・団体が賛同して開かれたもので、「意見の相違を認めあい教基法改悪反対の一点で一致し、ともに行動をとる」ものとなった。
 集会では四人の呼びかけ人が、教育基本法改悪が戦争体制づくり、憲法改悪のためののものである危険性を訴えた。
 大内裕和さんは、現場で進行している「個性化」教育なるものが実は、生徒一人ひとりの個性までを「評価」し、競争を強いるものであること、文部科学省が行っていることは財界の狙いでもある新自由主義のなかで闘い抜けるひとにぎりのエリートをつくることで、その他の生徒はおいて行かれるばかりだ、教員にたいしても管理が強化されてきている、こうしたことによって憲法改悪の条件をつくろうとしている、と発言した。
 三宅晶子さんは、子どもたちに押しつけられようとしている「心のノート」について、他の人を押し退けても新自由主義の競争社会で生き残れ、踏みつけられ差別されてもそれを我慢するというような心にしていくものだ、と述べた。
 高橋哲哉さんは、教育基本法の改悪は日本の教育を一%のエリートをつくりだしその他がそれを支えるような体制をつくろうとするものであり、アメリカのような社会を実現させようとしていると批判した。
 つづいて「しゃべり場」のコーナー。「日の丸・君が代」の強制と闘う教員、学校統廃合反対する高校生、障害児教育への乱暴な介入、イラク反戦を闘う高校生、愛国心教育を批判する在日コリアン高校生など中高生、教師、市民の計二十三人が思いを語った。
 また集会では韓国の全教組などからのメッセージが紹介された。
 政治風刺コント・グループ「ザ・ニュースペーパー」は、小泉首相のそっくりさんなどが登場してアメリカのイラク戦争支持などのパフォーマンスを演じ、教育基本法を改悪しようという連中を皮肉に演じて会場を沸かせた。
 集会の最後に、呼びかけ人の小森陽一さんが、通常国会が一月にはじまるが、この国会に教育基本法改悪案を上程させないように全国で共同・協同の運動を巻き起こそうと、まとめの発言をおこなった。
 集会アピールを全員で読み上げ拍手で確認し、都内パレードに出発した。

12.23全国集会 集会アピール(要旨)


 本日、私たちは組織・団体の枠を超えて全国から集まり、経験や問題意識を交換し合い、教育基本法の改悪がいかなる問題をもっているのかをお互いに確認しました。教育基本法が二〇〇三年三月二〇日、アメリカがイラク攻撃を開始したのと同じ日に出された中央教育審議会答申の方向で改悪されるならば、教育は子どもたち一人ひとりの個人を尊重することを基盤とするものから、国家戦略を担う人材育成のためのものへと変えられることになります。
……
 教育基本法はその成立の経緯と内容からいって、平和主義を最大の特徴とする日本国憲法と強い一体性をもっています。小泉首相は、二〇〇五年までに憲法改悪の路線を確立することをすでに明言しています。教育基本法が改悪されることは、九条を含めて日本国憲法を改悪することにつながっています。今年成立した有事法制によって「戦争のできる国家」づくりを進めてきた政府が、それを担う「国民」を育成することを可能とするために、教育基本法の改悪が狙われているのです。世論の強い反対を押しきってイラクへの自衛隊派遣が強行されようとしている今、教育基本法の改悪が行なわれようとしていることは、その関係を明確に示しているといえます。

 教育基本法の改悪は、かつて日本が行なった侵略戦争に対する強い反省に基づいて教職員が実践してきた反戦平和教育、子どもたち一人ひとりを大切にする視点から差別の撤廃を目指してきた教育における平等主義、それらをともに解体することを狙っています。本日の集会に参加した私たちは、教育における国家主義と差別化を推進し、再び戦争のできる「国民」づくりにつながる教育基本法の改悪を全力で阻止することをここに宣言します。

二〇〇三年一二月二三日

教育基本法改悪反対! 12・23全国集会参加者一同


超大国アメリカの持続可能性(サステイナビリティー) A

                                関 考一


六、恐慌とは何か

 恐慌とは、産業革命後資本主義的生産と流通が主流となった一八二〇年代頃から発生した景気循環の一局面であり広辞苑では「景気の循環過程における最悪の経済状態。過剰生産にもとづいて起こる資本主義の矛盾が爆発し、一時的に矛盾を解決する現象。価格の暴落、失業の増大、破産、銀行とりつけなどが起きる。」とされている。
 景気循環は基本的に一、停滞局面 二、活況局面 三、繁栄局面 四、恐慌局面の四つの局面を繰り返しながら変動している。なかでも恐慌は過剰となった資本価値を暴力的破壊することであり、マルクスは「共産党宣言」の中で次のように指摘している。「商業恐慌のときには、既製の生産物ばかりか、すでにはたらいている生産力までも、その大部分が、周期的に破壊される。恐慌期には、これまでのどの時代の目にも不条理とおもわれたであろうような社会的疫病―すなわち過剰生産の疫病が、発生する。社会は突然一時的な野蛮状態につきもどされたことに気づく。なにか飢饉が、なにか全般的な破壊戦争が、社会からいっさいの生活資料の供給を断ったかのように見える。工業も商業も、破壊されたように見える。いったいなぜか。あまりにもおおくの生活資料、あまりにも多くの工業、あまりにも多くの商業を、社会がもっているからである。」
 またエンゲルスは「反デューリング論」三編二理論的概説で「じっさい、最初の全般的恐慌が起こった一八二五年このかた、商工業界全体は、すなわち文明諸国民全体とその付属物となっている多少とも未開な諸国民との生産と交換は、だいたい一〇年に一回、めちゃめちゃになる。交易は停滞し、市場はあふれ、生産物は山と積まれたままで売れ口がなく、現金は姿を隠し、信用は消滅し、工場は運転をやめ、労働者大衆はあまりに多くの生活手段を生産したために生活手段にこと欠き、破産に破産がつづき、強制競売に強制競売がつづく。停滞が幾年か続いて、生産力や生産物が大量に浪費され破壊されると、やがて山積みにされた大量の商品が多かれ少なかれ下がった値段ではけてゆき、やがて生産と交換とがしだいにふたたびうごきはじめる。その歩調はしだい速くなって速足となり、この産業上の速足は駆足に変わり、さらに歩度を速めて、ついにふたたび産業、商業、信用、投機上の本式の障害物競馬の手ばなしの疾駆となり、最後に命がけの跳躍をやったのち、またもや、―恐慌の壕の中にゆきつく。そして、こういうことがたえず繰りかえされるのである。いまではわれわれは、一八二五年以来まる五回もこういうことを経験しており、現在(一八七七年)その六回目を経験している。そして、これらの恐慌の性格はきわめてはっきりしているので、フーリエが最初の恐慌を過剰からくる恐慌と名づけたのが、これらすべての恐慌にぴったりあてはまるほどである。」と恐慌と景気循環を描写している。
 恐慌の特質とは「過剰生産」が必ずその根底に存在するということであり、その「過剰生産」=不均衡を暴力的に解消し均衡を回復しようとすることにある。景気刺激策や需要の回復などで活況局面に転換可能な停滞局面=いわゆる不況とは異なって恐慌の発生には巨大な不均衡の存在が前提となっている。
 二十一世紀初頭の現在、世界経済はアメリカを軸にこうした巨大な不均衡がますます拡大する中にある。国連貿易開発会議(UNCTAD)は〇三年一〇月「二〇〇三貿易開発報告」を発表したが、その中で「労働と製品の両市場は世界的に供給過剰状態にある。」「世界経済は需要不足による供給過剰の拡大に直面している。」と指摘している。

七.恐慌の発生の根源@「生産と消費の矛盾」

 
 マルクスは恐慌発生の根拠について「資本論」で次のように指摘している。「他方、労働者の消費能力は、一方では労賃の諸法則によって制限されており、また一方では、労働者は資本家階級のために利潤をあげるように充用されるかぎりでしか充用されないということによって制限されている。すべての現実の恐慌の究極の原因は、やはり、資本主義的生産の衝動に対比しての大衆の窮乏と消費制限なのであって、この衝動は、まるでただ社会の絶対的消費能力だけが生産力の限界をなしているかのように生産力を発展させようとするのである。」(資本論第三〇章貨幣資本と現実資本T)
 また「資本主義的生産様式における矛盾。労働者は商品の買い手として重要である。しかし、彼らの商品―労働力―の売り手としては、資本主義社会は、その価格を最低限に制限する傾向がある。―もう一つの矛盾。資本主義的生産がそのすべての潜勢力を発揮する時代は、きまって過剰生産の時代となって現れる。なぜならば、生産の潜勢力は、それによってより多くの価値が単に生産されうるだけではなく実現もされうるほどには、けっして充用されることができないからである。しかし、商品の販売、商品資本の実現、したがってまた剰余価値の実現は、社会一般の消費欲望によって限界を画されているのではなく、その大多数の成員がつねに貧乏でありまたつねに貧乏でなければならないような社会の消費欲望によって限界を画されているのである。しかし、これは次の編ではじめて問題になることである。」と述べている。
 資本の本性は可能な限りの剰余価値の取得を目指すものである。それゆえに資本の生産物(商品資本)の価値が不変資本(c)+可変資本(v)+剰余価値(m)によって構成されているということは、生産の担い手である賃労働者が自らの労働力を売って自らを再生産(必要労働)する価値を生み出すと同時に更にそれを超える剰余価値(m)を生産するのであるから、資本は剰余価値を極限まで増大させようとして必要労働を可能な限り減少させ制限しようという衝動に突き動かされることになる。
 ここに今日、問題となっている「利潤追求」の為に極限までのパート化・合理化・リストラ・アウトソーシング外部委託・生産拠点の海外移転(低賃金の中国や第三世界諸国)を強行して労働者の生活水準を最低限まで押し下げようとする資本の本源的な姿が現れている。
 「インドの植物の遺伝子情報に関し米企業が米国内で特許を取得する。インド国民もこれを尊重しろと言う。果たしてフェアなことだろうか」(日経1/1)とジョゼフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は警告しているが、このようなグローバリゼーション・アメリカ中心の世界市場化はアメリカの経済的覇権確立の狙いと相俟って「利潤が全ての経済」へ衝動は際限なく強まろうとしている。 (つづく)


図書紹介

歴史の最前線に競り上がってきた憲法問題
  多様な角度から日本国憲法を論じるために

 新年になって、憲法問題の周辺はいっそうあわただしくなってきた。今回のイラク派兵は多くの人びとが憲法違反と考えているし、小泉内閣によって憲法が極度に軽んじられていることも多くの人びとが実感している。これまで政治の場面で不当に無視されてきた憲法が、もはや無視できなくなったのだ。
 先の自衛隊派兵の基本計画で、小泉首相が憲法前文を恣意的に引用して、自らを正当化しようと試みたように、この国の支配層は平和憲法を足蹴にすることによって、自らの政治権力の成立根拠にしてきた立憲主義自体の崩壊という事態を引き起こしている。
 そのことがまた多くの人びとにこれまでとは異なる時代がこの社会に到来しつつあることを予感させている。「戦後」から「戦前」へ、そして今、「戦時」の重い扉が開かれようとしている。
 この通常国会にかけられる諸法案の多くが政府・与党が憲法の支配から離れていこうとする意志に基づくものだ。憲法改悪のためのふたつの手続き法案、「国民保護」法制など有事関連六法案、自衛隊のイラク派兵の承認などがそれだ。
 この改憲派の攻勢に対して、私たちは多様な角度から積極的に憲法問題を論じ、反撃していかなくてはならない。
 最近のふたつの出版物を紹介する。

@ 雑誌『技術と人間』二〇〇三年十二月号、特集「憲法改悪と人民の立場」


 この特集は二〇〇三年十一月三日に都内で行われた「イラク占領に自衛隊もお金も出さないで、改憲のための国民投票法はいりません」というタイトルで開かれた憲法集会の記録を中心に編集されている。
 集会での講演の記録(全文)が三本のほかに、巻頭に主催者の一人である「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の高田健さんの「イラク派兵と明文改憲の動き」という文章が掲載されている。
 講演はノーマ・フィールド(シカゴ大学教授)さんの「憲法の抽象性と具体性」、小森陽一(東京大学教授)さんの「九条をめぐる支配層のまやかし」、大内裕和(松山大学助教授)さんの「教育基本法改悪の狙い」があり、米国在住のノーマさんのもの以外は講演者が記録に手を入れている。この三人はいずれも憲法学者ではなく、ノーマと小森は日本文学の研究者、大内は教育社会学の研究者だ。
 文学や教育学者として実績のある研究者が、平和運動や教育基本法の改悪に反対する運動などに積極的に関わりつつ、その中で憲法を論じているために、それぞれの考察が深みのある、質の高いものとなっている。
 ノーマが日米両国を深く知っている立場から、米国社会の興味ある実態を明らかにしている点も読み応えがある。たとえばノーマが紹介しているエピソード、朝日新聞のニューヨーク支局長が米国南部取材財してたとき、その酷い差別の実態を見て、「この程度の国から与えられた憲法なのか」と思ったという話はなど重い。
 小森は日本の戦後史を振り返る中で、意欲的に憲法問題を論じており、迫力ある報告となった。ちなみに筆者は『天皇の玉音放送』という本を昨年夏、五月書房から出したばかりだ。
 大内は教育基本法を巡っての支配層との攻防を軽妙に、しかし鋭く描き出しており、読むのが苦にならない。彼は若くて運動でもフットワークの軽い、若者に人気のある期待のもてる研究者だ。
 また、高田は運動者の立場から集会開催の問題意識の背景を論じ、「『普通の国=帝国』への道を阻止する『新しい市民運動』の構築」の課題について、今後の運動の構想と統一戦線の構想・展望について述べている。

 【発行】(株)技術と人間社
 定価八五〇円+税
 電話03−3260−9321

A 日本ジャーナリスト会議(JCJ)出版セミナー4 「内幕ー憲法調査会はいま?」 高田健(憲法調査会市民監視センター)講演記録

 本書は二〇〇三年七月にJCJ出版部会の主催した講演会での講演記録だ。二〇〇〇年一月に国会の両院に憲法調査会が設置されて以降、今日までのべ一〇〇会以上にわたる全審議を傍聴してきた筆者の講演の記録であり、国会の委員会審議の実態がなまなましく報告されている。もともと講演という話し言葉を、書き言葉に変えて編集しているので、こなれていない面はあるが、長さは読み進むには適当だ。先に著者は技術と人間社から『改憲・護憲、何が問題か、徹底検証憲法調査会』を出したが、本書はそのダイジェスト的な面も有している。
 本書の随所で高田は議会制民主主義の名による国会審議の欺瞞的な側面を暴きだしながら、与党の圧倒的多数による国会支配という現状のもとで、少数派の反政府党=改憲反対派の国会審議のあり方が、現状のままでいいのか、民主主義の道はこれ以外にないのかとの問いを発している。
 こうした問いかけに対しては、野党から聞こえてくるのは、とにかく選挙で勝たないと仕方がないという愚痴ばかり聞こえてくる。そうした角度から、改憲派の政府与党への批判にとどまらず、護憲はの野党へも厳しい物言いがなされている。
 憲法調査会は本年末には当初の設置目標期間のまる五年を迎える。改憲派からは「次は改憲のための常任委員会の設置だ」「二〇〇五年には改憲案の作成だ」「二〇〇七年には改憲だ」などという声が高まってきている。それだけに、憲法調査会の憲法論議の実態を知っておくことは必要だ。
 最後に衆議院の「傍聴人心得」が掲載されている。主権在民とは名ばかりのお上意識丸出しの「心得」には笑わされる。

 【発行】日本ジャーナリスト会議出版部会 三〇〇円 A5版四五ページ
 電話03−3291−6475


元日に平和の餅つき

 小泉内閣による自衛隊のイラク派兵の動きを危惧する人びとが、新年の元日の昼、東京・渋谷のハチ公まえで「平和の餅つき」パフォーマンスを行った。振袖姿や、迷彩服姿のスタッフがイラクに自衛隊を送るなと呼びかけた。
「1・25WORLD PEACE NOW」のアクションを知らせるシール付の切り餅のパックとビラのセット一〇〇〇個は一時間あまりですべてなくなった。


せ ん り ゅ う 


 サル知恵のごとき派兵をするゴマすり

 本年は小泉君をリストラだ

 国家意思諸君の意思をしばりあげ

 ビンボーを支えていた米国牛

 目次だけ読んだ書棚を眺めてる

 小泉を支えるクソのクソ談義

 公明は小泉教祖を御信心

 公明党挙国一致へ地獄道

 米軍居座ってイラク平和なし

 軍支配これじゃ平和も春もない

               ゝ 史

二〇〇四年一月

 ○ 正月もアルバイトの仕事だ。読もうと思って買った本がいつのまにか書棚いっぱいになっている。手掛け途中になっている仕事もいくつも机上に重なっている。元旦、吉野屋はばかにすいていた。米国牛BSEのせいだろう。ふと川柳をメモしつつ虚しくも侘びしくもある。


複眼単眼

 
「地獄への道は善意で敷き詰められている」との警句を思いだす

この通常国会に「憲法改正国民投票法案」と「国会法改正案」が出されようとしている。これは改憲派が企てている憲法の改悪を実現するための手続法案だ。いま用意されている法案自体も問題が非常に多いが、何より問題なことは、この法案の目的が憲法改悪にあることだ。
 すでに市民運動の中からはこれに反対する動きがでており、近く共同声明も発表される。
 これまでも自民党と旧自由党(現在は民主党に合流)は積極推進派で、自民党の安倍晋三幹事長や、中川秀直国対委員長、中山太郎改憲議連会長、保岡興治自民党憲法調査会長などが成立を急いでいる。
これに民主党の中から呼応する声が出始めた。野田佳彦国対委員長は「日本国憲法は本来、改正を念頭においており、その手続き法ができていないのはこれまでの怠慢だ」などと積極発言をしているし、民主党憲法調査会の仙石由人会長も容認発言をしている。
公明党はいまのところ手続き法案は改憲案と一緒にやるべきだと「慎重姿勢」だ。社民、共産は反対。
 民主党は自由党との合同以来、さらにスタンスを右に移しつつあることが憲法問題でも見える。いままで改憲発言には「慎重」だった菅直人代表も「憲法を作る姿勢は民主主義の基本だ」などといい、二〇〇六年までに民主党独自の改憲案を策定する方針を進めると表明した。最近、あるパーティーで菅がこういうと、同席していた小泉首相が「自民と民主で改正できるじゃないか」と声をかけ、「修正協議すればよい。第一党と第二党がこれでいいとの案で国民合意できる」と言ったという。この場で菅は「ありえない」と言ったというが、こういう危険な空気ができているのだ。
 ごく一部だが、憲法問題に関心のある研究者や市民のなかでも、この手続き法案に反対すべきではないという人がいる。今井一氏(ジャーナリスト)のことはこの欄でも取り上げたことがある。他の人でも、「手続法を作ること自体は憲法に書いてあるので反対できない」とか、「市民側から積極的に法案をだして、憲法をよりよくしていく可能性を追求すべきだ」などという人もいる。こういう類には「いい加減にしろ」と一喝したくなる。
 こうした人びとは、いま国会に出されようとしている法案を問題にしているときに、超一般論を述べ、結果として、「改憲手続き法案をこの国会で作ろう」という世論を作ろうとしている改憲派の動きを補助する役割をはたすのだ。民主党の菅代表の意見もそうだ。今、自民党が平和憲法を変えたいと攻撃をかけてきているときに、「改憲は民主主義だ」などとお説教することが、いかなる役割を果たすのか。とてもとても政治に責任を持つ発言とは思えない。
 喝!      (T)