人民新報 ・ 第1124 号<統合217> (2004年3月5日)
  
                  目次

● 国際連帯と反戦運動の歴史的な高地を闘いとろう

    3・20大統一行動の成功を

● 日本原は平和な町つくりへの道を歩む  今年も元気に日本原現地集会

● インターネットで労働運動の前進を  レーバーネット日本が総会

● 憲法21条に保障された表現の自由を侵害する不当逮捕〜イラク派兵に反対する行動をビラで呼びかけた人びとへの   不当な家宅捜査・逮捕に抗議します〜(WORLD PEACE NOW実行委員会)

● あらゆる手段を用いて平和創造の活動を   二〇〇四沖縄宣言

● 超大国アメリカの持続可能性(サステイナビリティー) F  /  関 考一

● 図書紹介  茶色の朝  フランク・パブロフ著 藤本一勇・訳 ヴィンセント・ギャロ 挿絵 解説・高橋哲哉

● せ ん り ゅ う  /  ゝ 史

● 複眼単眼  /  新型感染症とグローバリズム




国際連帯と反戦運動の歴史的な高地を闘いとろう

3・20大統一行動の成功を

 この三月二〇日で、米英軍のイラクに対する一方的な攻撃開始の日からまる一年が経つ。
 国際世論に反し、国際法をも無視して開始された、ブッシュ大統領によるナチの手法にも似たこの無法な攻撃は、その後サダム・フセイン政権の崩壊と、米英軍によるイラク占領にうつった。
 しかし、軍事攻撃の口実とされた「大量破壊兵器の存在」の証拠は捜せなかった。
 いまイラクの民衆は占領軍の撤退を要求して闘っている。
 この占領に小泉政権が自衛隊を送って加担した。歴代政府の見解からしても憲法違反は明白だ。
 自衛隊は現行憲法下で初めて戦時戦場派遣を実行した。多くの人びとがこれに反対し、野党も反対している。
 この第一五九国会では与党は議席の数の論理で派兵を強行承認した。しかし、「人道復興援助」を看板にして、重武装で派遣された自衛隊がイラクの人々に銃口を向けるときは確実にやってくる。小泉政権はそれを想定して、すでにキャンペーンの準備をしている。
 一方、この国会には有事関連で七つの法案と三つの条約・協定案が出される予定だ。
 政府は今月上旬にも閣議決定する予定でいる。
 昨年の国会で武力攻撃事態と予測事態に対する有事関連三法を成立させ、さらにこの国会で「国民保護法制」など有事関連七法を成立させれば有事法制は基本的に出来上がるといわれている。
 民主党もこうした法制の必要性は承認しており、国会の状況は極めて厳しい。
 また憲法改悪のための国民投票法案と国会法改定案も準備されている。
 先の外為法改悪法案の成立に続き、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)への経済制裁法案も相次いで準備されている。
 これらも事実上の有事関連法案だ。
 与党はこうした悪法の提出を準備しつつ、一方では憲法改悪の世論を作り、憲法違反の集団的自衛権行使に道を開く動きや防衛庁の省昇格案、「祝日法」改定案などの成立もねらっている。
 だがイラク占領加担に反対する世論は依然として根強く、さきの1・11集会や1・25集会、2・13集会と、市民や労働組合などの動きも活発になりつつある。
 三月二〇日は、先のムンバイでの世界社会フォーラムでも確認されたように全世界一斉のイラク占領反対の共同行動日だ。この日、昨年の2・15の千数百万の行動に続く歴史的な反戦行動が準備されている。
 日本でも日比谷公園を中心にWORLD PEACE NOWの呼びかけで、市民、宗教者、労働組合、政党などが、従来の枠組みの違いを超えて結集しようとしている。
 全国各地で統一行動が行われるだけでなく、少なからぬ人々がバスなどを使って関東各県をはじめ全国からもこの行動に結集しようとしている。
 自衛隊のイラク派兵反対、イラク占領をやめよ、を共通の課題にして、非暴力の行動原則を基礎に、こうした共同行動が主催者によって意識的に組織されるのは、もしかすると日本では四〇年ぶりのことだと言ってもよいかもしれない。
 多くの人びとがこの実現を願っている。さまざまな障害に打ち勝ち、この画期的な反戦の統一行動を成功させることは、すべての活動者の責任だ。
 三・二〇を必ず成功させ、自衛隊のイラク派兵反対、即時撤兵を闘いとろう。
 その力で有事法制反対、改憲反対の世論と行動を強めよう。
 全国から日比谷公園(野外大音楽堂)に結集し、反戦運動の歴史的な高地を闘いとろう。

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3・1朝鮮独立運動85周年  イラクにも朝鮮半島にも平和を

 イラク問題と並行して朝鮮半島問題が、世界の平和にとってますます重要な課題になってきている。
 二月二九日午後、東京の上野公園野外ステージで「三・一朝鮮独立運動八五周年 イラクにも朝鮮半島にも平和を」集会が開かれ、終了後、三五〇名の参加者は休日の繁華街を御徒町方向にむけてデモを行った。
 集会は日韓民衆連帯全国ネットワーク、基地はいらない!女たちの全国ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会など多数の団体・個人による実行委員会が主催し、WORLD PEACE NOWが協力した。
集会はさまざまなミュージシャンなどによる演奏をはさみながら進められた。
 実行委員会を代表して日韓ネットの渡辺健樹さんは「先ごろ、六者会談が開かれた。われわれは朝鮮半島の非核化を求めるが、同時に米軍による先制攻撃など不可侵の約束をもとめる。憲法の空洞化から明文改憲への動きがある。政府は対北問題を口実に日米同盟を強化し、イラク侵略への加担を進めている。北東アジアの平和のために、日朝両政府は互いに過去の誤りを清算し、国交を正常化しなければならない」と挨拶した。
 リレートークは「沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック」「WORLD PEACE NOW」「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」「北朝鮮人道支援ネットワーク」「許すな!憲法改悪・市民連絡会」「自衛隊の海外派兵と戦争協力に反対する実行委員会」「在日朝鮮人権利擁護運動」「ウーマンインブラック」などが行い、在日韓国民主統一連合、沖縄満月祭り実行委員会、ピースリンク広島・呉・岩国、不戦へのネットワーク(名古屋)からのメッセージ紹介があった。
 発言は韓国側ゲストのキム・ランソンさん(統一連帯)、日本側は井上澄夫さん(意見広告運動)が行った。
 キムさんは要旨、以下のように発言した。
 記念すべき三・一運動八五周年にあたり、私たちは民族自主と平和を求め、イラク反戦とともに朝鮮半島の平和を望みます。
 イラクの砂漠に日本の「日の丸」が翻りました。この旗は数十年前に世界の各地で翻り、災いを作り出しました。イラクの「日の丸」を見て、そのことをまざまざと思い起こしました。韓国からもまもなく数千の兵士がイラクに行きます。いまや日米韓同盟は戦争同盟になりました。
 しかし私たちが望むのは平和です。韓国の民衆は米軍を韓国から追い出し、腐りきった韓米同盟を断ち切るまで闘う決意です。いま、朝鮮半島に平和が定着するか、戦争に巻き込まれるかの岐路に立っています。平和は自動的にもたらされるものでは在りません。闘いとるものです。私たちが決意して戦えば、それは可能です。

 ピース・イン・イラク

 ピース・イン・コリア


日本原は平和な町つくりへの道を歩む  今年も元気に日本原現地集会

 自衛隊という名の『陸・海・空』三軍がイラクという戦地に派遣されるという状況下で、二・一一日本原集会が開催されました。
 状況を反映して今年は昨年の倍以上の結集を期待していましたが、一〇〇名増の三〇〇名強の結集となりました。でも、じり貧が続いていたなかでの一・五倍増は大きく評価出来ると思います。集会は、部落解放同盟の内海さんの司会で始まり、主催者を代表して福島共闘会議議長挨拶、日本原弁謹団・大石弁護士挨拶、東京日本原農民と連帯する会代表・澤村武生さんの挨拶、現地農民・内藤秀之さんの現地闘争報告、自衛隊は日本原から出て行け大声コンテスト、集会宣言、岩本美作地評議長の団結ガンバロー、閉会挨拶で閉幕しました。集会終了後、「平和憲法の会」岡山を中心に有志四〇名強が日本原駐屯地まで約三キロを地域住民や自衛隊隊員やその家族にイラク派兵の不当性を訴えつつデモ行進を行いました。
 以下、澤村さんと内藤さんの挨拶を要約して報告したい。
 
澤村武生さんの発言

 昨年三月二〇日ブッシュはイラクが大量破壊兵器をもっているからといって米・英軍によってイラク侵略戦争を開始した。しかし、ブッシュがイラク侵略の大義とした大量破壊兵器も生物・化学兵器もなかったことが、国連査察団、更には、最近ではアメリカの調査団長デビット・ケイによっても明らかにされました。プッシュのイラク侵略戦争にはどんな大義もなかったのです。そのアメリカ・ブッシュこそが大量破壊兵器を持ち、九一年湾岸戦争、九・一一事件をアルカイダの仕業としてのアフガン侵略戦争、そして今回のイラク侵略戦争では『劣化ウラン弾』という核兵器を使用しました。アメリカこそが大量破壊兵器をもち、かつそれを使用する人類の脅威となっている。ブッシュが、イラクや北朝鮮を、「悪の枢軸・ならず者国家」と名指ししたけれど、米国こそが核兵器を大量に持ち、世界最大の軍事力を背景に武力行使をする「ならず者国家」の最たるものだ。それに追随する英国もまた「ならず者国家」であり、日本がイラクに、陸・海・空三軍を送ることによって「悪の枢軸」が形成されたといわざるを得ない。五月一日にブッシュは、「戦闘終結宣言」をだしました。一二月一四日にはフセインも米軍に拘束されました。しかし、事態はどうなっていますか。フセインが「ベトナム戦争の二の舞いになる」といった通りの展開になっています。ブッシュや小泉内閣はイラク人民の武力的抵抗を、「テロ」といっていますが、現地では「レジスタンス」「ゲリラ」といっている。米軍の死者は、「戦闘終結宣言」前を大きく上回っているわけで、攻撃を受けるたびに米軍は、「テロリストをかくまっている」「テロリストに資金援助をしている」といっては民家を砲撃し戦車で破壊し、住民を拘束し拷問にかける。そんなことがあいつぐなかでは、住民の武力的抵抗がひんぱんに起きるのは必然といえます。そういう状況のイラクヘ小泉率いる政府は自衛隊という名の軍隊を「人道的復興・支援」の名のもとに派遣したのです。小泉はブッシュの犯罪的な侵略戦争に手を貸そうとしているだけではありません。一九日から始まつた一五九通常国会に、有事関連三法案を補完するための有事関連七法案、三条約・協定の改訂、批准がでてきます。それらをとうして憲法改悪へと進めようとしています。今国会では、憲法改正国民投票法案の提出が予定されています。憲法改悪・徴兵制へと進められようとしています。しかし、米軍の侵略戦争に反対するイラクの人びとの抵抗は、世界中の人びとの反戦運動を活気づけています。日本でも五万人の集会とデモが闘われました。米国内では大統領選挙の季節を迎え、ブッシュの犯罪が暴かれようとしていますし、反戦闘争も闘われています。米・英軍のイラク侵略戦争開始一周年にあたる三・二〇には世界中で国際共同闘争として反戦行動に立ち上がるべく準備を進めています。東京でも歴史的な反戦行動が予定されていますし、今日ここで配られているビラで知りましたが岡山でもやられるようです。この反戦国際共同闘争には数千万人が立ち上がるに違いありません。米国はイラクから追い出される宿命にあります。その米国に加担する小泉政権がこのままでいいのか。一日でも早くイラクがイラクの人びとに戻るよう、世界の人びとと共に閾うことは日本の人民の国際的な義務でもあります。日本を戦争への道に引きずりこんだ小泉政権を直ちに打倒するよう頑張りましよう。

内藤秀之さんの発言

 日本原の計は、二・一一にあります。さて、アメリカの開戦をいち早く支持した小泉は「大量破壊兵器は見つかる可能性の方が高い」(福田官房長官)と強弁しつつも、国連決議に基づいて支持したと言い換えている。それは違う。アメリカが執拗に働きかけたが国連はイラクヘの武力行使を決議しなかった。アナン事務総長は、アメリカを単独行動主義と非難した。湾岸戦争で広島原爆の一四、〇〇〇〜三六、〇〇〇倍の放射能が、イラクを汚染したといわれる。今回も米・英軍は大量の劣化ウラン弾を使用した。昨年一〇月、東地区で実射訓練が行われた、そのとき使用されたのが一一〇ミリ個人携帯対戦車砲と八四ミリ無反動砲です。今回、陸上自街隊はこの二つの兵器をイラクに持って行く。日本原で危険な演習を繰り返し、その砲を持ってイラクの人達を殺傷するようなことは認められない。偵察衛星、迎撃ミサイル、有事法制、イラク派兵などなど、戦争への道をひた走る小泉首相が「大きく育てて欲しい」という木は「憲法改悪へ向かう軍事悪木だ」。そんな木は切り倒そう。日本原は自衛隊に頼らない平和な町つくりへの道を歩む。今年も二・一一集会から、実射抗議・自主耕作・収穫祭・基地学習・交流等の活動を続け、自衛隊のイラク派兵に反対し、危険な演習に反対して闘います。


インターネットで労働運動の前進を  レーバーネット日本が総会

 二月二八日、シニアワーク東京で、レイバーネット日本の第四回総会が開かれた。レイバーネットは、インターネットをつかって労働運動の情報交換・前進をめざすもの。
 はじめに、伊藤彰信代表(全港湾書記長)があいさつした。二〇〇一年の設立以降ウェッブサイトには二六〇〇〇を超えるアクセスがあり、ニーズが高いことを実感させられた。今後の課題は、現在二〇〇名程度の会員を個人会員・団体会員ともに大きく拡大し、また労働組合の側からのインターネットなどメディアの活用を強化していくことだ。
 つづいて事務局長の河添誠さん(東京公務公共一般組合員)が、以下のような二〇〇四年度の活動方針案を提案した。
 運動の現場からの情報発信をさらに進めるために、インターネット・デジカメ講座の開催、ウエッブサイト管理を担う上級管理者のための技術講習を行う。ウエッブサイトの拡充のために、動画の提供、海外情報の充実・国内情報の海外への発信、文化情報の強化、インターネット放送の具体化などを行う。「レイバーフェスタ二〇〇四」への全面的協力。関西でレイバーネット日本のネットワークをつくる。レイバーネット日本の本の出版。海外での労働メディア運動との積極交流。NPO法人化をめざす。
 提案をうけて論議が行われ、新年度の方針を承認し、伊藤代表をはじめ新役員を選出した。

 総会にひきつづいて、木下武男さん(昭和女子大学教授)が「新しい労働運動の可能性」テーマに記念講演を行った。
 いま、グローバリゼーションと社会労働運動の新段階にある。しかし、日本の労働運動・社会運動はヨーロッパにくらべて三周遅れの状態にある。労働運動では、ヨーロッパには個人加盟ユニオンによる労働市場規制型労働運動が昔からある。これが一つ。一九六八年には日本もふくめて世界的に大きな社会運動がおこった。ヨーロッパでは日本と違ってエコロジー、フェミニズムなどの運動が社会にひろがりをもって浸透していった。そして一九九九年のシアトルに象徴される反グローバリゼーションの運動だ。日本でも、緑(エコロジー)とピンク(フェミニズム)と結びついた新しい赤(労働運動)の展開が求められている。その内容は、@企業別労働組合の克服、A個人加盟ユニオン支援NPO、B政策立案のためのネットワーク、C労働組合の中に新しい社会運動の質を持ったNPOを組織する、D職種別ユニオンのネットワーク、E地域経済の再生と雇用創出のネットワーク、などだ。


憲法21条に保障された表現の自由を侵害する不当逮捕

 〜 イラク派兵に反対する行動をビラで呼びかけた人びとへの不当な家宅捜査・逮捕に抗議します 〜

                
WORLD PEACE NOW実行委員会

 イラク戦争への加担を強行する小泉政権は反戦運動への不当な弾圧を強めている。二月下旬、東京三多摩地域で反戦活動を展開してきた立川テント村メンバーに対する不当な弾圧が行われた。
 WORLD PEACE NOW実行委員会は不当逮捕を糾弾する声明を発表した(編集部)


二月二七日早朝、立川警察署は「立川自衛隊監視テント村」のメンバーの自宅など六カ所を家宅捜査し、三名の人びとを逮捕しました。一月一七日に「イラク派兵反対を呼びかける」チラシを、自衛官も住んでいる官舎に配ったことが「住居侵入」になるというのです。
 しかし、ピザ屋さんもおすし屋さんも、引越し屋さんも不動産屋さんも、このようなやり方で、日常的にチラシを配布しています。なぜ、特定のグループが、特定の内容のチラシを配ると、それだけが「住居侵入」になるのでしょうか。このような、手前勝手な「法の支配」に怒りを抑えることができません。しかも、これは「現行犯」逮捕ですらない「令状逮捕」という異例中の異例なやりかたです。私たちは裁判所までがこうした警察の不当な令状請求をそのまま受け入れ容認してしまったことにも強い不安と憤りを感じるものです。
 二月二七日の家宅捜索と逮捕は、イラク派兵に反対して行動している全国のすべての仲間の言論・表現の自由の侵害に直結します。チラシの配布が違法行為とされ、逮捕されるのなら、さらに集会やピースウォーク、あるいは駅頭や街頭でのアピールなど、屋内・屋外での表現活動の制限へとエスカレートしていく危険を感じないではいられません。
 戦争が準備されるときに、真っ先に犠牲になるのは『真実』だ、と指摘した人がいました。私たちは今後も当然の権利である表現の自由の権利を行使し、さまざまな方法で反戦の意思を表現し続けます。日本が軍隊を海外へ派兵し、戦争に協力・参加していくことに反対する声をさまざまな機会にあげ続けます。
 同時に、私たちは何よりも今回の不当逮捕と不当な家宅捜索に抗議し、逮捕・拘留されている三名の人びとの即時釈放を求めます。

二〇〇四年三月一日

 WORLD PEACE NOW実行委員会


あらゆる手段を用いて平和創造の活動を   二〇〇四沖縄宣言

 二月一二日、二〇〇四沖縄宣言が出された。これは弁護士の金城睦さん、新崎盛暉さん(沖縄大学学長)、安里英子さん(ライター)らがよびかけ、沖縄の市民運動家やジャーナリストなど各界の人びと百四十人あまりが賛同したもの(編集部)。

二〇〇四沖縄宣言

 ついに自衛隊がイラクに出動しました。戦後はじめての日本軍の本格的海外派兵です。アメリカのイラクに対する一方的な武力攻撃と占領支配は、国際法に背く、許すべからざる犯罪です。これに武器を持って自衛隊が参加することは、決して国際社会において日本に期待されている役割ではありません。
 日本国民は、第二次世界大戦における加害と被害の悲惨な経験に学び、戦力の保持と武力の行使を永久に放棄することを誓って、平和憲法を制定したはずです。小泉政権は、平和憲法に背き、数々の戦争法をつぎつぎと制定し、さらに「憲法改正」まで行おうとしています。
 もっとも熾烈な地上戦といわれた沖縄戦で、沖縄は住民の三分の一が犠牲になリ、今なお、米軍基地が集中し、さらに機能が強化されようとしています。 こうした状況の中で、生きることを余儀なくされている私たちは、あらゆる戦争に反対し、沖縄から基地をなくすことを通して世界に平和をもたらすことを熱望しています。
 アメリカの無法なイラク攻撃と占領、それに対する反撃、そして巻き添えになり殺されていく多数のイラク民衆。このような惨劇を前にして、沖縄の基地が再び他国への攻撃に利用され、また自衛隊が武器を持って戦場に出向くことは許せません。アメリカの軍事政策に加担する日本政府やそれを追随するような政治的雰囲気を絶対に容認することができません。
 私たちには、声を出して政府を変えていく責任と力があります。戦争の加害者になることも被害者になることもやめなければなりません。
 平和は武力によって達成することはできません。私たちは、街頭で、集会で、選挙で、言論活動や文化活動で、不服従行動で、考えられるあらゆる手段を用いて戦争に連なるすべての動きに反対し、平和創造の活動を展開していくことを宣言します。
 平和を愛する世界中の人々が、ともに立ち上がることを期待します。

二〇〇四年二月一二日


超大国アメリカの持続可能性(サステイナビリティー) F

                             
 関 考一

十二、資本主義が自らの胎内で孕む新しい生産様式

 アメリカを中心とする経済的不均衡が一段と拡大しIMF(国際通貨基金)でさえ「ドル暴落の危険性を指摘」(〇四・一・九)せざるを得ない状態となっている。この現状は、社会的生産が資本主義的利潤追求という狭い限界を突き破ろうとする現れであり資本主義的生産に代わる新たな生産様式の物質的存在条件(オートメーション)が孵化されつつあることを示すものでもある。そしてまた剰余価値追求を原動力とする資本主義的生産に代わる協業的性格を全面的に開花させた生産のあり方こそ次の生産様式をとなるものである。
 マルクスは資本主義的生産の動態自体がこうした革命的変革を不可避とするとして次のように述べている。「いつでも一人の資本家が多くの資本家を打ち倒す。この集中、すなわち少数の資本家による多数の資本家の収奪と手を携えて、ますます大きくなる規模での労働過程の協業的形態、科学の意識的な技術応用、土地の計画的利用、共同的しか使えない労働手段への労働手段の転化、結合的社会労働の生産手段としての使用によるすべての生産手段の節約、世界市場の網のなかへの世界各国民の組入れが発展し、したがってまた資本主義態勢の国際的性格が発展する。この転化過程のいっさいの利益を横領し独占する大資本家の数が絶えず減ってゆくのにつれて、貧困、抑圧、隷属、堕落、搾取はますます増大してゆくが、しかしまた、絶えず膨張しながら資本主義的生産過程そのものの機構によって訓練され結合され組織される労働者階級の反抗もまた増大してゆく。資本独占は、それとともに開花しそれのもとで開花したこの生産様式の桎梏となる。生産手段の集中も労働の社会化も、それがその資本主義的な外皮とは調和できなくなる一点に到達する。そこで外皮は爆破される。資本主義的私有の最期を告げる鐘が鳴る。収奪者が収奪される。」(資本論第二四章いわゆる本源的蓄積)
 また先にもふれたがマルクスが「機械は、……直接に社会化された労働すなわち共同的な労働によってのみ機能する。だから、労働過程の協業的性格は、今では、労働手段そのものの性質によって命ぜられた技術的必然となる」としたことに基づけば、新たな労働手段であるオートメーションによってもその社会的生産に基づく協業的性格は一段と深化し、部分だけの専門性や生産過程の把握ではいまや生産は困難となり、より全般的な生産に関する知識や技術を身に付けた労働者相互の協働が不可欠となっている。根源的な解決である革命的変革に至るまで資本主義の内部においてもこの協業的性格を持つ生産が追及されなければならないが、それは極めて限定的ではあれ現実的な可能性を持っていると思われる。
 すなわち協同組合的生産が持つ新しい形態への可能性である。
 「労働者たち自身の協同組合工場は、古い形態のなかでではあるが、古い形態の最初の突破である。といってももちろん、それはどこでもその現実の組織では既存の制度のあらゆる欠陥を再生産しているし、また再生産せざるをえないのではあるが。しかし、資本と労働との対立はこの協同組合工場のなかでは廃止されている。たとえ、はじめは、ただ、労働者たちが組合としては自分たち自身の資本家だという形、すなわち生産手段を自分たち自身の労働の価値増殖のための手段として用いるという形によってでしかないとはいえ。このような工場が示しているのは、物質的生産力とそれに対応する社会的生産形態とのある発展段階では、どのように自然的に一つの生産様式から新たな生産様式が発展し形成されてくるかということである。資本主義的生産様式から生まれてくる工場制度がなければ協同組合工場は発展できなかったであろうし、また同じ生産様式から生まれてくる信用制度がなくてもやはり発展できなかったであろう。信用制度は、資本主義的個人企業がだんだん資本主義的株式会社に転化して行くための主要な基礎をなしているのであるが、それはまた、多かれ少なかれ国民的な規模で協同組合企業がだんだん拡張されていくための手段をも提供するのである。資本主義的株式企業も、協同組合工場と同じに、資本主義的生産様式から結合的生産様式への過渡形態とみなしてよいのであって、ただ、一方では対立が消極的に、他方では積極的に廃止されているだけである」(資本論第二七章資本主義的生産における信用の役割)

 ※ ここでの「結合的生産様式」についてであるが、どのような生産様式なのかただちに理解可能な訳語となっていないといえよう。この点に関して田畑稔氏の優れた労作である「マルクスとアソシエーション」(新泉社)によれば「アソシエイテッドな生産様式」とすべきものとされている。田畑氏が提起した本来の意味は「『アソシエーション』は諸個人が自由意志にもとづいて、共同の目的を実現するために、力や財を結合するかたちで「社会」をつくる行為を意味し、また、そのようにしてつくられた『社会』を意味する」のであり「従来のマルクス研究で「アソシエーション」視点が《隠れて》しまった事情を、マルクス文献面とマルクス解釈面の両面から、反省している。文献面では、たとえば大月全集版の場合。Assoziationにたいして、じつに二〇にものぼる訳語があてられ、「アソシエーション」は事実上《概念としての統一性》をまったく失っている。……解釈面の問題としては、いわゆる『唯物論的歴史観』における『社会』カテゴリー(「社会的編成」「社会的生活過程」など)の位置づけのあいまさが反省される。……マルクス理論が『社会理論』としてもつ大きなポテンシャルに、残念ながら焦点があたっていなかった。非アソシエーション型の一種の抑圧社会が『マルクス主義』の名で正当化されたことと、このことは密に関連していたというべきであろう」と鋭く指摘しこれまでの「ソ連型社会主義を尺度とした」マルクスの未来社会像に欠落していた「アソシエーション」論を新しい角度から光をあて甦らせたのである。
 しかしながら田畑氏は「概念としての統一性を回復するために、マルクスからの訳語についていえば、『アソシエーション』と日本語訳するのが良いと考える」として外来語の表現形態である片仮名表記を「不自然の謗(そし)りを覚悟して」使用されている。しかしその主旨はよく理解できるとしても片仮名とは本来「漢字に同伴した補助文字に発し……その名の『片』が片割れ、不完全を意味するように、不完全な文字である。」(「二重言語国家・日本」石川九楊 NHK BOOKS)「日本においては、漢字とは政治と思想の言葉の別名であり、平仮名とは生活の言葉の別名であるから、政治や思想や生活に掬(すく)い取られることのない商品の言葉が、カタカナ語として我々の身辺を駆けめぐっているのである」(同前)
 そうであれば如何にその本来の意味に接近しようという意図であってもカタカナ訳語を使用する限り「それは、社会や人間にとって必要不可欠なものではない証し」(同前)にならざるをえない。そこでアソシエーションの訳語として「協同社会」「協同組織」とするのが適当とする意見もあるが、今日までの「協同」は「組合」と一対の「協同組合」として使用されることが多く、個々人が自由意志に基づいて共同するという未来の社会組織が持つ新たな概念を表現する言葉としては的確ではないと思われる。こうしたことからここではアソシエーションを「協働体(アソシエーション)」ないしは当面「自発的協働体(アソシエーション)」とし必ず「傍字」=ルビを振ることを提案したい。[注 本稿で使用する文字ポイントではルビ小さすぎ判読不明となるのでかっこ内にカタカナで表すことにしたい]
 「協働体」の「協働」は文字どおり協同して働く意味であり構成員の平等性を表し「体」は小から大までの(たとえば団体、企業体、自治体、欧州共同体など)様々な組織や社会を指すからである。また「協働」の用語は近年、「共同」や「協同」に代わって福祉やNPOの分野で新しい協力・共同形態を指すものとして拡がり使用頻度が増していることも着目すべきである。また当面「自発的協働体」とするのは、「ソ連型社会主義」の悪しき影響によって未来社会が強制と抑圧の組織として描かれていることに対して新しい組織像・社会像があくまで個々人の主体的自主性を基礎としていることを表現するためである。「傍字」=ルビを使用するのは「振り仮名は、いわば読みを与えるためのものだが、ここでのルビは読みを与えるためだけではなく、言葉の意味と比喩の力動性(ダイナミズム)を創造するための『傍字』である。」(同前) またこれまで提案した観点からいって労働者自身の協同組合的生産も「協働組合的生産」と既存の「協同組合」と区別して使用するようにしてはどうかと考える。
 以上、アソシエーションを「自発的協働体」と表すことについて述べたがその可否については、今後皆さんのご判断をお願いしたい。

 資本主義において孵化される新たな生産様式への過渡的形態であるところの協働組合的生産はいまのところ国鉄闘争などの労働争議における闘争継続の有力な手段として一定の成果と経験を培ってきている。そしていまマルクスのいう「資本と労働との対立はこの協同組合工場のなかでは廃止されている」ことに着目するならば近年世界的に急拡大しているNPOの持つ活動目的と内容は極めて重要である。NPOとはNonprofit Organization又はNot-for-profit Organizationの略で、「非営利組織」や「非営利団体」などの民間組織を指すが、文字通り「非営利」ということこそが資本主義的利潤追求の既成の企業・組織と根本的に異なる新たな理念をもった社会的組織としての特長をもっている。「多くの個人がNPOに理想ともいえるほどの強い期待を抱くのは理由がある。それはNPOが創ろうとしている組織、つまりNPOというコミュニティ自体の姿が、会社生活や学校生活に疲れた人々には、なんとも魅力的に映るからだ。NPOのめざすコミュニティの姿とは、(1)ゆるやかなネットワーク、(2)平等でフラットな組織、(3)『この指とまれ』主義、(4)本当の『個の尊重』、(5)多様性への寛容、に集約される」(コミュニティビジネスの時代 岩波書店)とNPOがめざす姿が示されているが、「自発的協働体(アソシエーション)」型組織と多くの共通性や親和性があることがわかる。こうしたNPOの理念と運動が多くの人々を引き付け大きな拡がりを持つ原動力となっているのであり、その事業規模は、欧米においてはGDPの五〜二〇%を占め雇用規模でも同様の大きさを占め一段と拡大する傾向がある。しかし日本におけるその規模はまだ小さい段階にあるが「NPO法人は一万五千近くに達し毎月五百前後が誕生している」(日経〇四・一・二四)そして最近では「事業型」が生まれ、介護保険事業の訪問介護に携わるNPO法人の中には年商二、三億円、スタッフの数が百人を超える団体まで出現しているという。(同前) 
 こうしたNPOの急拡大は、一方でその克服すべき問題点も明らかにしつつある。それはNPOが福祉・介護・ボランティアなどの分野に比較的多く形成され、ケインズ主義の破綻の表れでもある中央・地方の財政危機に対応した行政の下請け化・民営化を補完する役割を担わされていることである。それはまた独占資本による福祉削減など一連の「新自由主義的構造改革」路線に沿う側面を持つものとなっている。こうしたことから現在の多くのNPOは、組織の零細性・脆弱な収入構造・官依存傾向・経営戦略の欠如などの問題を抱えている。NPO運動がより拡大し社会的生産の一定の比率を占め新しい「自発的協働体(アソシエーション)」的性格を高めるためには、その比重を社会的消費部門よりも社会的生産部門に置くことであり労働者自身の運動との深い結合を実現することにあると思われる。
 この点を重視したマルクスは次のように指摘している。「われわれは、協同組合運動が、階級敵対に基礎をおく現在の社会を改造する諸力のひとつであることを認める。この運動の大きな功績は、資本に対する労働の隷属にもとづく、窮乏を生みだす現在の専制的制度を、自由で平等な生産者の連合社会(注 自発的協働体=アソシエーション)という、福祉を、もたらす共和的制度とおきかえることが可能だということを、実地に証明する点にある。」(全集十六巻 中央評議会代議員への指示)「われわれは労働者に、協同組合商店よりは、むしろ協同組合生産にたずさわることを勧める。前者は現在の経済制度の表面にふれるだけであるが、後者はこの制度の土台を攻撃するのである。」(同前)
 こうしたことから進行する資本による「構造改革」攻撃の中で新たな労働運動がNPO運動と結びつき平等な関係の生産と雇用を創造していくことを目的意識的に追求する意義は大きなものがあり、新たな生産様式への架け橋となる可能性を秘めている。 (つづく)


図書

    
 茶色の朝

  フランク・パブロフ著 藤本一勇・訳 ヴィンセント・ギャロ 挿絵 解説・高橋哲哉

  発行・大月書店 定価・一〇〇○円+税


君は「茶色の朝」の到来を拒否するために闘えるか

 これは私と君のことではないか

 これは遠いよその国の話だろうか。
これは遠い昔の話だろうか。
これは誰か知らない人の話だろうか。
これは現実から離れた物語だろうか。
そうではない。読んでいる君自身が問われているのだ。
フランスのグルノーブルに住む臨床心理学者フランク・パブロフが書いた、この小さな本(哲学研究者の高橋哲哉氏の解説や、ヴィンセント・ギャロ氏の美しい挿絵をふんだんに挟み込んでも、日本語でわずか四〇数頁にしかならない本)の語りかけるものを君は胸を張って、背筋を伸ばして聞くことができるだろうか。

 一九九八年に最初に一冊一ユーロ(約一三〇円)で出版され、二〇〇二年、大統領選挙で右翼「国民戦線」のルペンが十八%の支持を得た選挙からブームとなり、教材などにも使用されて、フランスではベストセラーになったという。フランスではすでに五二万部が売れ、その後、イギリスやドイツなど一〇カ国以上で翻訳されている。日本では昨年十二月に出版され、初版六千部はほぼ売り切れだと言う。
パブロフはフランスとブルガリアの二つの国籍を持つ研究者で人権運動家、子どもの心理と人権のスペシャリスト。彼の父親はファシズムに反対して戦った「スペイン人民戦線」のブルガリア人義勇兵の経歴を持ち、パブロフに「自由のためには戦いつづけなければならない」と教えた。

寓話の筋書き

 俺と友人のシャルリーは日常の続きでぼんやりと話をしていた。彼は最近、犬を安楽死させたという。「病気のせいじゃない、茶色の犬じゃなかったからだ」。実は先月、俺は白黒のぶち猫を始末したんだ。茶色の猫が一番いいと証明されているそうで、法律ができて、自警団が毒入り団子を無料で配布したからだ。驚いたが、「あまり感傷的になっても仕方がないし、犬は茶色が一番丈夫と言うのは多分本当なのだろう」と思った。
 しばらくして、今度は俺が新聞「街の日常」の廃刊をシャルリーに教えた。「茶色の犬」事件に関して、この新聞は毎日この法律をたたいたからだ。
 「じゃあ、競馬情報は何を見ればいいんだ」「そりゃあ、『茶色新報』だ、競馬とスポーツネタはましらしい」。
でも、今度は「街の日常」系の書籍が図書館や本屋から撤去された。犬や猫の単語に「茶色」がついていなかったかどで。シャルリーは「法の網をかいくぐったり、いたちごっこをしたって、国民にはなんの徳にもならないんだしさ、あ、茶色のいたちね」といった。
 いつしか二人とも茶色になれた。とうとう競馬もあてた。茶色記念だ。いまでは奴は茶色の犬を飼い、おれは茶色の猫を飼っている。
「まるで、街の流れに逆らわないでさえいれば、安心が得られて、面倒に巻き込まれることもなく、生活も簡単になるかのようだった。茶色に守られた安心、それも悪くない」と思った。
 ある日、シャルリーが以前、黒の犬を飼っていたかどで、自警団に襲われた。「国家反逆罪」だそうだ。これでは犬や猫を愛する人間は全員逮捕されてしまうだろう。茶色党の奴らが最初のペット特別措置法を出してきたときから抵抗すべきだったんだ。でも俺には仕事もあるし、毎日やらなきゃならないこまごましたことも多い。   「だれかがドアをたたいている。こんな朝早くなんて初めてだ・・・いま行くから」

高橋哲哉の解説

 俺とシャルリーがなんとなく日常生活をおくるうちに、社会のあらゆるものが茶色にされる、そんな時間の不気味さ、恐ろしさを描いた現代の寓話。
 フランスの読者にとっては茶色はナチスを連想させる色だ。いま、ヨーロッパで極右運動が広がっている。そして、二〇〇二年、フランスの大統領選挙で、極右のルペンが社会党のジョスパン候補を抑えて二位になり、シラクと決選投票に持ち込んだ。ひとびとはこの小さな本を発見した。「極右にノンを」の超えが広がり、パブロフはベストセラー作家になった。
 高橋はいう。『茶色の朝』の物語が、現代日本社会に生きる私たちにとっても、決して無縁ではないことはすでに明らかでしょう。「ファシズム」や「全体主義」という用語を厳密に適用できるかどうかは別としても、現代日本社会には、それらにつながる排外主義、差別主義、国家主義への強い傾向が確実に存在します。つまりものごとを「茶色」に染めていく傾向が存在するわけです。茶色の朝を迎えたくなければ、まず私たちは「思考停止をやめることだ。考えつづけることのうえに、はじめて勇気を持って発言し、行動することが可能になる」と。

本のすすめ

 この本は「俺」や「シャルリー」のようなごく普通で良心的な周囲の人々にお薦めしていただきたい。まわりにはそのような知り合いがたくさんいるはずだ。茶色の朝が来ないように、そうした作業をしながら、それぞれが自らを問いなおしてほしい。俺は「俺」ではないか。
 パブロフは東京新聞(三月一日)のインタビューにこたえて言う。「朝起きて、虹の色を見ていたいと思うなら、『眠ったままではいけない』。これは受け入れられないと思うものにはノンと言えるように考え、戦ってほしい。戦車も軍隊もなくても、自由は見えないうちに奪われてしまうのだから」 (S)


 せ ん り ゅ う

 お国を愛せと強制ワイセツだ

 ブッシュ菌に感染した小泉病

 無くても可能性は一〇〇%正しいのだ

 イラク丼とて食えねえブッシュ料理

 投資家もブッシュ下ろし投機する

 《金つり人形》使いのソロスさん

 これこそがハァー弱者虐待政治

                  ゝ 史

二〇〇四年二月

 ○ 小泉政権は日本の軍国化へ向けて教育基本法の柱に愛国心を据えようとしている。かつての軍人勅諭+教育勅語の今日版の出現を恐れる。
 ○ 地震の起きる可能性は確実にある。しかし、大量破壊兵器はどうだろう。大統領の大嘘つきめ!あぁ哀れ米国軍兵士よ。
○ 糸ではなくて金であやつれるのは米国大統領らしい。投資家ソロス氏の腕のほどは。


複眼単眼

 
新型感染症とグローバリズム

 このところ未知の感染症が相次いで日本やアジア、世界の人びとを怯えさせている。
 BSE(牛海面状脳症)、SARS(重症急性呼吸器症候群)、鯉ヘルペス、鳥インフルエンザなどの文字が、メディアの上で毎日のように踊っている。BSEでは二一日、国内一〇頭目が神奈川県で確認された。SARSは中国南方の人々の食材としてのハクビシンの原因説などが語られているが、実のところいまだに原因は解明されていない。
 SARSの国内感染はとりあえず阻止できたようだが、観光産業や商社員の海外往来なども足止めをくうなど、商業活動は打撃をうけた。
 鯉ヘルペスでは霞ヶ浦や琵琶湖などの養鯉場が閉鎖の危機に瀕し、鳥インフルエンザでは東南アジアで猛威をふるっている中、山口県に続いて大分県でも発生し、カナダでも発生が確認された。いま渡り鳥媒体説が語られているが、そうであれば被害はさらに広域化せざるをえない。
 ふりかえれば、私たちは「食」をめぐって、このところ常に不安に脅かされてきたように思える。犯人説が出たカイワレは食卓から消えたが、O157による食中毒の問題はいまだに解明されていない。野菜とダイオキシンの関係や、遺伝子組替え農作物の問題等々、不安は尽きなかった。
 八〇年代に英国などで猛威をふるっていたBSEは、二〇〇一年九月、とうとう、国内でも感染牛の発生が確認された。一部の食品業者はラベル表示を偽造したりして、さらに消費者の不安をあおった。それがようやく落ち着いたかに見えたのもつかの間、二〇〇三年十二月には米国でBSE感染牛が発見され、今回は神奈川県で同県二頭目の発生だ。政府は米国産牛肉の輸入禁止の措置をとった。米農務省はカナダ産牛のせいだと居直っている。二月、使用牛肉の九割を米国産に頼ってきた最大手の牛丼チェーンの吉野屋が牛丼販売を中止し、他の店もこれを追っている。長期の不況の中で、家計に占める昼食費を切り詰めざるを得なかった中年のサラリーマンが、若者と一緒に紅生姜をたっぷりかけた牛丼の並をかき込むと言う風景すら失われるのだ。
 これらとの関連で、食糧のグローバリズムの問題が指摘されている。実際のところ、これら新しい感染症の特徴は感染経路がわからないほど、地域を超え、国境を超えて発生している。グローバリズムをかかげる米帝国主義とそれに追従する日本や欧州の帝国主義、これらはそれぞれ形態は違っても穀物メジャーによって「発展途上」国から食糧資源を収奪し、あるいは逆に食を押しつけ消費させる。世界の食と食糧は帝国主義に支配され、統合され、融合されてきた。消費者も中国で育てられたホウレンソウなどの野菜を食べ、オマーンのインゲンを食べ、東南アジアや南アメリカの果物を食べ、イスラエルの柑橘類を食べている。魚は南米チリ原産や東アフリカ近海から来ているものもあるし、地中海のマグロも食べるという具合だ。その消費の仕方はほとんど浪費に近く、残りは大量に放棄される。
 その結果、食糧自給率は軽視されてきた。本来、食糧自給率はその国の政治的独立を計る食糧安保の指標であるだけでなく、自分たちの食べ物は自分たちで作り、消費するという消費本来のあり方にかかわるもので、環境保護に通底するものだ。
 外国に比べても日本の食糧問題の実態はひどいもので、食糧自給率は四〇%、なかでも穀物自給率は二八%にすぎない。コメだけは九五%だが、小麦は十一%、大豆は五%、トウモロコシはゼロだ。牛肉は三一%が米国依存、小麦は四六%、大豆は七二%、トウモロコシは九七%が米国依存だ。牛丼消滅の悲劇はここに根源がある。
 でも、これを契機にもういちど食糧・農業問題を考える契機になれば、これもいいんじゃないの?。あまりにも私たちは農や食に鈍感にならされてしまっているのだから。(T)