人民新報 ・ 第1127 号<統合220> (2004年4月5日)
  
                  目次

● 小泉内閣の憲法破壊政治に対決し、広範な共同行動を

● 3・30〜4・1  国会前連続抗議集会

● イラクの子どもたちへの医療支援を 劣化ウラン兵器を禁止させよう  劣化ウラン兵器禁止市民ネットワーク結成

● 3・27 イスラエル大使館抗議行動  ヤーシン師暗殺に抗議  イスラエル政府に、軍事・占領政策の見直しを要求

● 一〇四七名の解雇撤回! JR・鉄道運輸機構は責任をとれ! 郵政民営化反対! NTTの11万人合理化反対! 労働組合に対する差別をやめろ! 全ての争議に勝利しよう!

● 生産形態転換の一般的法則

● 「5・3憲法集会」成功への協力を
  <とめよう憲法改悪、立ち上がろう9条の実現のために、イラク派兵を許さない「2004年5・3憲法集会」成功への協力のお願い>

● 映 評  /   「わが故郷の歌」 ( 監督・脚本・製作 バフマン・ゴバディ )

● 野沢法務大臣の辞任を要求します

● 複眼単眼 /  春の旅で思った花もいろいろ




小泉内閣の憲法破壊政治に対決し、広範な共同行動を

【進む社会の軍事化】

 自衛隊のイラク派兵という異常な事態と関連して、この社会の隅々まで「反テロ」などを口実とした言論・思想統制の強化が一気に進んでいる。立川での自衛官官舎でのビラ配り逮捕・起訴事件や、社会保険庁職員の「赤旗しんぶん号外」配布逮捕事件などは、それが表面に現れたものにすぎない。「日の丸・君が代」に関連した教職員への攻撃もすさまじい。これを「茶色の朝」や「マルチン・ニーメラ牧師の告白」になぞらえてとらえることを、もはや「オオカミ少年だ」と断ずることができないのではないか。それは順応して生きようとする者には優しいが、立ち止まったり、流れに抗する者には襲いかかってくる性質を持っている。
 昨今の小泉内閣による政治は、ブッシュ米大統領が国連憲章と国際法の積みあげを破壊しているのと同様に、近代の民主主義が前提としてきた「立憲主義」「法の支配」を政府・支配層自らが破壊しつつ執行するというものであり、極度に危険な状況がつくられている。憲法が破壊されつつある。しばらく前では考えられもしなかったような、野田太三法務大臣の改憲議連副会長就任の問題もこの文脈で発生したものだ。そしてマスコミもこれらの事態に対してほぼ沈黙しているのだ。

【悪法が続々と提案】

 悪法山積の第一五九国会は自衛隊イラク派兵を承認し、二〇〇四年度予算案を承認した。現在、三月九日に閣議決定した有事関連七法案、「対北朝鮮経済制裁法案」や年金改革法案の審議に移っている。
 有事法制とはいうまでもなく「戦争をするための法律体系」をつくるものだ。今回の七法案で有事法制は「ほぼ完成」するといわれている。
 それは@国民保護法制、A米軍の行動の円滑化に関する法案(米軍支援法案)、B特定公共施設等の利用に関する法案(交通・通信総合調整法案)、C非人道的行為処罰法案(国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法案)、D外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法案(有事船舶臨検法案)、E捕虜等の取り扱いに関する法案、F自衛隊法改正案の諸法案と、日米物品役務提供協定改正(有事ACSA)案、ジュネーブ条約二追加議定書などだ。

【さらに予測される悪法】

 加えてこの通常国会か、それ以降に提出される可能性がある他の悪法案には、すでに「対北朝鮮経済制裁」法案である「外国為替・外国貿易法(外為法)」が成立し、与党間で「特定外国船舶入港禁止法案」の提出が合意された。さらに「再入国禁止法案」の提出も検討されている。
 憲法改悪のための国民投票法案はすでに自民党や、民主党、公明党の有志議員が参加する憲法調査推進議員連盟(改憲議連、中山太郎会長)が法案を用意しており、議員立法の形で提が準備されている。
 四月二九日を「昭和の日」に改めようとする「国民の祝日に関する法案」の再上程の動きもある。
 特措法方式の限界と派兵恒久法案、あるいは集団的自衛権の合法化を含めた「国家安全保障基本法」案や防衛庁の「省」昇格法案、武器輸出三原則の見直し、非核三原則の見直しなどの動きもある。

【ハイスピードになった改憲動向】

 とりわけ憲法破壊の政治はすさまじい。憲法調査会の四年は「論憲」を看板にしながら、国会の議論を「論憲」から改憲へと誘導し、世論の中に改憲必要論を蔓延させた。
 自民党は〇五年十一月までに改憲草案をまとめることを決め、今次通常国会が終了する六月までに自民党憲法改正プロジェクトチームがたたき台を作成する。
 民主党の菅代表は「幅広い憲法制定運動=『創憲』が必要だ」として、憲法公布六〇周年の〇六年までに改憲の独自案を集約すると表明した。鳩山由紀夫前代表は「自民が来年に憲法改正案を作るなら、それに遅れをとるべきではない」と発言している。この民主党は年内に憲法改正素案を作る予定だ。
 「加憲論」の立場をとる公明党は、神崎代表が「タブーを設けることなく、柔軟な発想で議論を」と呼びかけ、本年十一月の党大会での意見集約を目指して憲法論議を始めた。同党では加憲論と称して九条三項加憲論も強まりつつある。
 衆院憲法調査会の中山太郎会長は「『国民投票法案』と『国会法改正案』はこの国会で継続審議になっても出すべきだ」と、憲法調査会のスピードアップと来年度に改憲発議を可能にする機関=特別委員会の設置と、改憲論議を支えるために憲法調査会の継続を主張している。

【事態を切り開く力の形成を】

 小泉内閣の憲法破壊の政治と、このような改憲の動きは軌を一にしたものだ。
 支配層が一路、立憲主義の破壊で突き進むとは思えないが、螺旋状に遡っていくであろうことは疑いない。
 いうまでもなく明文改憲を阻止する闘いは、明文改憲の到来の時期がその決戦なのではない。それに先立つ解釈改憲、実質改憲を阻止する闘いの過程がそれだ。
 私たちは、引き続きイラク、インド洋、ペルシャ湾から自衛隊を撤退させる闘いを堅持し、世論に訴えていかなければならない。この闘いは容易ではないが、しかし、この間、一・二五、二・一三、三・二〇とイラク反戦運動の再度の高揚がつくり出されている。このイラク反戦の運動と有事法制を「完成」させない、「発動」させない闘い、改憲の「手続法」を通さない闘いの前進をはからなくてはならない。
 同時に有事三法や先の総選挙で働いたネガティヴ・キャンペーンを打ち返す力として日朝国交正常化というオルタナティブの運動をつくり出すことが必要だ。日朝正常化交渉の開始のなかでこそ戦争責任・戦後補償問題、拉致問題、北東アジアの非核平和地帯化などの解決がはかられる。小泉首相がいう「対話と圧力」の欺瞞ではなく、当事者である韓国の「太陽政策」に学んだ政策、緊張激化を招く「経済制裁」ではなく「対話」こそが必要なのだ。
 これらの闘いの中で、広範な民衆のネットワーク=共同戦線を形成することが求められている。


3・30〜4・1  国会前連続抗議集会

 戦争反対・有事をつくるな!市民緊急行動、陸海空港湾労組20団体、平和をつくり出す宗教者ネット、平和を実現するキリスト者ネットの呼びかけで、三月三〇日から四月一日までの三日間、イラクからの自衛隊の撤退、有事関連七法案・三条約阻止などにむけて国会前集会が開かれた。
 三日間とも、それぞれ一〇〇名以上の人びとが参加し、正午から一時間、戦争反対を訴える集会を開いた。
集会では、呼びかけの四団体からの発言があり、また福島瑞穂党首をはじめとする社民党の国会議員、共産党の国会議員などが国会内外呼応して闘おうと述べた。最終日には歌手の喜納昌吉さんも参加した。


イラクの子どもたちへの医療支援を 劣化ウラン兵器を禁止させよう

               
劣化ウラン兵器禁止市民ネットワーク結成

 三月二七日、三二〇人が参加して、劣化ウラン兵器禁止市民ネットワーク(NO DU!Net)結成の集いが開かれた。
 はじめに作家の広瀬隆さんが「イラクの危機的状況」について講演。
 原爆などの核兵器ではかなり純度の高いウラニウムを使うが、濃縮後の残りが劣化ウランだ。しかし天然ウランに比べて六〇%の放射能を持っており、劣化ウランの量が膨大であるので、放射能の絶対量は核燃料よりはるかに大きい。アメリカ軍が湾岸戦争ではじめて劣化ウラン弾を使用した。劣化ウラン弾は戦車の装甲板のような硬い物でも貫通し燃え上がらせて内部の人間を焼き殺す。そして気化して大気中に拡散しながら汚染を広げる。湾岸戦争、イラク戦争で多くの人、とくに幼児が殺された。
 劣化ウラン研究会代表の山崎久隆さんが基調の報告。
 日本、イギリス、オランダ、アメリカなどのNGOが劣化ウラン兵器の国際条約を成立させるための団体をつくった。これは大きな一歩だ。国内では、イラク戦争をめぐる国会論戦で、民主党、共産党、社民党、無所属の議員が質問の中で、劣化ウラン弾問題を含めて政府を鋭く追及し、ついに派遣される自衛隊は放射能計測計器を持っていくことになった。これからも国会へ劣化ウラン兵器廃絶の声を届けることが重要な課題だ。地方議会でも、全国の七四五の自治体議会がイラク戦争反対の決議をあげ、その中にはイラクでの劣化ウラン弾使用に言及しているものもある。昨年の六月に川口外相は在日米軍基地に劣化ウランがあることを認める国会答弁を行ったが、嘉手納弾薬庫(沖縄)、張尾・前畑弾薬庫(長崎)、岩国海兵隊基地(山口)、秋月・広・川上弾薬庫(広島)、浦郷弾薬庫(神奈川)、横田空軍基地(東京)、三沢空軍基地(青森)などにはかなりの確率で劣化ウラン弾が貯蔵ないしは通過していると見られる。劣化ウラン兵器に反対する運動は、各地の反基地闘争、また在韓米軍基地との闘いとも連動したアジア的な規模で考えられなければならない。ウラニウムを使った劣化ウラン兵器は、非人道的な兵器だ。ウラニウム被曝は、ヒロシマ・ナガサキが繰り返されていることだ。こうした戦争犯罪を止めさせることは、私たちの責任だ。
 つづいて、アラブの子どもとなかよくする会の西村陽子さんがイラクへの医療支援の報告、日本国際ボランティアセンター(JVC)の佐藤真紀さんのイラク現地報告、フォトジャーナリストの森住卓さんのイラク写真のスライド、ネットワーク参加団体からの発言があった。
 最後に、たんぽぽ舎の柳田真さんが、次のように当面の具体的方針を提起した。
 市民ネットワーク(NO DU!Net)は、イラクの子どもたちへの医療支援、劣化ウラン兵器禁止のキャンペーンのために、以下の活動を行う。第一に写真パネルの貸し出し、第二に連続講座(劣化ウラン早わかり講座)の開設、第三には衆議院議長・参議院議長にあてた劣化ウラン兵器禁止署名運動の第二期をやり抜くことだ。その要求は、@国会は劣化ウラン弾などウラニウムを使用した兵器の製造も使用も保管も認めないという決議をあげること、A日本政府は劣化ウラン兵器禁止を定めると国内法を定めるとともに国連総会に劣化ウラン兵器禁止決議を提案すること、B日本政府は劣化ウラン兵器の影響によりガンや白血病に苦しむ多くの人びとを救済するため医療支援・医療技術者育成などの積極的な援助を行うこと、だ。そして、第四の課題は外務省交渉、第五に五月のベルギーでひらかれる「NO DU国際会議」への代表派遣だ。その他、市民ネットのシンボルマークの募集、月刊ニュースの発行、会員(個人・団体)や賛同人(個人・団体)の拡大、そして市民ネットに参加する団体の各種活動への協力だ。

劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワーク

(たんぽぽ舎 東京都千代田区三崎町二―六―二)
 03(3238)9035   http://www.jcan.net/tanpoposya/


3・27 イスラエル大使館抗議行動  ヤーシン師暗殺に抗議

      
イスラエル政府に、軍事・占領政策の見直しを要求

 三月二二日、パレスチナのイスラム原理主義組織「ハマス」の精神的指導者ヤーシン師がイスラエル軍武装ヘリのミサイル攻撃で暗殺された。アメリカ・ブッシュ政権の「反テロ」戦争に勢いづいたイスラエル・シャロン政権がパレススチナ抵抗運動の勢力拡大を阻むため、暗殺という卑劣な手段に踏み切ったのである。
 こうした暴挙にたいして世界各国から避難の声が上がった。
 しかし、アメリカ政府は、イスラエルの「テロに対する自衛権」に理解を示した。アメリカの姿勢は、アラブ諸国はもとより、国連やヨーロッパ諸国がイスラエルを強く批判しているのと対照的なものであり、アメリカ=イスラエルの好戦的な右派連合が形成されていることを物語っている。
 EU(欧州連合)は二六日の首脳会議で、「国際法に違反する殺害には一貫して反対する」とイスラエルを非難した。
 アラブ諸国は、国連安全保障理事会にイスラエル非難決議を提出した。賛成票を投じたのは、中国、ロシア、フランス、アンゴラ、チリ、パキスタン、スペイン、アルジェリア、ベニン、ブラジル、フィリピン。またイギリス、ドイツ、ルーマニアは、イスラエル人に対する「残虐行為」を非難する形での修正を求めた。しかし、アメリカただ一国の拒否権発動によって決議はつぶされた。パレスチナ自治政府は、アメリカの拒否権行使は、イスラエルに殺人許可を認めたものだとして、米国を非難し、今後、パレスチナ自治政府は決議案を国連総会に提出する方針だ。総会(一九一カ国・地域が加盟)では、パレスチナ自治政府への支持が多い。
 日本政府は、今回の事態に対して、イスラエルに自制を求める態度をとっているが、イスラエルの駐日大使コーヘンは二六日に記者会見し、ヤーシン師暗殺の正当性を強調するとともに、日本政府がイスラエルを断固支持しないことへの不満をもらした。
 シャロン政権の行動を支持することによってアメリカは、アフガニスタン、イラクにつづいて、パレススチナでも戦争の泥沼に入り込もうとしている。あるところでの問題が解決しないのに次々と戦争を拡大している。このことによって、アメリカは、イギリスやイスラエルなどの極少数の親米「有志連合」を除く大多数の国々との軋轢を増大させている。スペインはすでに戦争連合から離脱を宣言した。その影響は大きく広がろうとしている。

   * * * * *

 三月二七日、「許すな!憲法改悪・市民連絡会」など約二〇の団体の呼びかけによるイスラエル大使館前で抗議行動は約二〇〇人が参加して行われた。警察は、参加者が多すぎるとして大使館前での行動にさまざまな妨害を行った。参加者は梯団に分かれて大使館前で集会を行い、「パレスチナに平和を」、「和平交渉の進展を」「断ち切ろう、暴力の連鎖」などの横断幕やプラカードをもち、また平和のろうそくを掲げて、「イスラエルはパレスチナの占領をやめろ」とシュプレヒコールを上げた。中東史が専門の法政大の奈良本英佑教授は「イスラエルがヤーシン師を暗殺したことによってパレスチナに平和を実現する動きがとまった。パレススチナでの紛争はいっそう拡大する。イスラエルがパレススチナ人に対する弾圧を止めることが、話し合いによる解決への道をひらく」と述べた。参加者は、イスラエル政府の暴挙を糾弾し、シャロン首相あてに事態の平和的な解決をもとめてる要請文(別掲)を送った。

要 請 文

   イスラエル首相 アリエル・シャロン 殿

 ・ 私たちはアハメド・ヤーシン師暗殺に抗議します。
 ・ パレスチナ自治区での破壊・人権侵害行為の即時中止を要求します。
 ・ 和平の障害となる入植地の拡大や分離壁の建設の即時中止を要求します。
 ・ 国連決議や国際法を遵守し、和平交渉を進展させることを要求します。
 
 三月22日、イスラエル政府は、シャロン首相の指示により、アハメド・ヤーシン師を空爆で殺害しました。このこと自体、許されない蛮行であるだけではなく、パレスチナの抵抗運動を先鋭化させる挑発行為であることは明らかです。事実、ヤーシン師がイスラエル軍の撒退を粂件に停戦を表明していました。今回の暗殺が、停滞していた中東和平にとどめを刺し未曾有の衝突を招くでしょうが、責任はシャロン首相はじめイスラエル政権にあります。
 そもそも、西岸・ガザ地区の軍事占領や入植地の建設自体が、国連決議や国際法に違反したことであり、イスラエル・パレスチナ問題の本質です。「分離壁」の建設をはじめ、入植地の拡大などによるパレスチナの分断は、人々の生活を困窮させるのみならず、自治政府の指導力を低下させ、「原理圭義」勢力の台頭を促し、パレスチナ杜会に「テロの温床」を育ててきました。いまこの瞬間にも、イスラエルはパレスチナ人地区であるガザ・西岸に、圧倒的な軍事力を現在も展開し、家屋破壊や空爆、封鎖や略奪など、人々の命や生活を奪い、壊滅的ダメージを与え続けています。ヤーシン師殺害に対する報復の自爆攻撃が行われてしまうかもしれませんが、それを口実にイスラエルが更なる人権侵害や占領体制の強化を行うことを国際社会は危倶しています。
 「イスラエルには自分たちの安全を守る権利がある」ことは当然です。しかし、暗殺は決して正当化できるものではありません。しかも新たな憎悪が問題の解決をますます遠ざけ、イスラエルの人々を脅かす結果になります。問題はイスラエルの人々の安全のみならず、イスラエルの強硬策とそれを支持するアメリカの姿勢は「国際テロ組織」を刺激し、国際社会全体をも脅かす不安定要素となりつつあります。
 イスラエル政府は、和平文渉や国際社会に対する責任を果たすべきです。私たちは、イスラエル政府に対し軍事・占領政策の見直しを強く求めます。

二〇〇四年三月二七日

 Israel Palestine Peace Now 3・27 参加者一同


一〇四七名の解雇撤回! JR・鉄道運輸機構は責任をとれ!

郵政民営化反対! NTTの11万人合理化反対!


労働組合に対する差別をやめろ! 全ての争議に勝利しよう!


 国鉄の分割・民営化にともなう不当な大量解雇は、今日の大リストラの先駆けとなったが、一〇四七名の解雇撤回・地元JR復帰を掲げた運動は新時代の労組運動の中核となって闘い続けられている。

 国労本部によるJRに法的責任なしとする四党合意は完全に破綻した。四党合意は、二〇〇〇年五月三〇日に本部の一部集団によって突如発表され、二〇〇二年一二月六日に与党の自民・公明が離脱を宣言して消滅した。それは、なんの成果を生み出さず、それどころか国労組織と支援に大きな混乱と対立をもたらしただけのものであった。四党合意破綻という事態に直面して、とりわけ昨年末の最高裁不当判決がでて以降は、旧国鉄=鉄建公団(鉄道建設運輸施設整備支援機構)の責任を問う裁判を軸に政府・JRに反撃を加えていく路線の正しさは一段とはっきりしてきた。にもかかわらず、本部は、鉄建公団訴訟を闘う原告組合員二二名への三年間の権利停止の統制処分や闘争団への生活援助金凍結の見直しを行おうとしていない。いまこそ、国労は、鉄建公団訴訟に取り組み、あくまでも国家的な不当労働行為を追及する原点に立ち返るべきだ。本部は統制処分、生活援助金凍結などの理不尽な仕打ちといやがらせをただちに止めるべきときである。
 三月二七日、「一〇四七名の不当解雇撤回、国鉄闘争に勝利する共闘会議」(国鉄闘争共闘会議)の総会がひらかれた。二瓶久勝共闘会議議長は主催者あいさつで、今年こそ国鉄闘争の解決にむけて、闘争団の資質を高め、解雇撤回を闘う一〇四七名の統一、国労本部に援助金停止と統制処分を解除させることが必要だと述べたが、今まさに闘争の飛躍をかけて団結を拡大し、闘いを前進させるべき時である。

 四月一三日には、国鉄労働者一〇四七名の解雇撤回、ILO勧告の完全履行を求める「4・13 国鉄闘争支援大集会」が開かれる。 これは、伊藤誠(経済学者)、金子勝(立正大学教授)、芹沢寿良(高知短期大学教授)、暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)、早川征一郎(法政大学大原社会問題研究所教授)、山口孝(明治大学名誉教授)を呼びかけ人として、ナショナルセンターの枠や主義・主張を乗り越えて「一日共闘」として、全都的な大集会として開催されるものだ。
 集会の日時は次のとおり。
 「4・13 国鉄闘争支援大集会」
 と き 4月13日(火)  18:30〜
 ところ 日比谷公会堂

 一三日夕方の「大集会」の前には、午後からの半日行動「首切り自由は許さない! 4・13行動」が行われる。首切り自由は許さない!実行委員会は、大集会を成功させ、そして争議解決を実現すべくこの行動を行うとしている。
 「団結権否定の12・22最高裁判決糾弾!」、「一〇四七名の解雇撤回! JR・鉄道運輸機構は責任を執れ!」、「郵政民営化反対! NTTの11万人合理化反対!」、「労働組合に対する差別をやめろ!」、「全ての争議に勝利しよう!」をスローガンに、13:00〜14:00 鉄道運輸機構(旧鉄建公団)<JR新橋駅>、14:15〜14:45 郵政公社<地下鉄虎ノ門駅・霞ヶ関駅>、15:15〜15:45 NTT持株会社<地下鉄大手町>で、その後に、「大集会」に合流する。

 小泉政権の新自由主義的構造改革攻撃は、失業と賃金・労働条件の大幅な低下をもたらしている。
 団結を固め拡大して、「国鉄闘争支援大集会」をはじめ、四月一三日の諸行動を成功させるために奮闘しよう。


生産形態転換の一般的法則

 関孝一さんの連載「超大国アメリカの持続可能性(サステイナビリティ)」(@〜H)を読んで考えることがあった。それは、唯物史観の基礎にある生産力と生産関係の矛盾についてだ。すなわち、資本主義をこえる生産力はなにかということにかかわる。

マルクス主義によれば、機械制大工場の確立によって資本主義はみずからの足で立つことになったが、資本家の労働者にたいする搾取が行われ、工場の中には精神労働と肉体労働の分離、別の言葉で言えば構想と遂行の分離が著しいものとなり、労働疎外が進むことになった。しかし、そのなかで、労働者階級は訓練され、団結を形成して革命的階級になっていくとされた。
 マルクスは機械に対する膨大な研究を前提に「資本論」を書いた。マルクスは、数多くの機械についての研究ノートを遺している。それは生産力についての真摯な探求であった。
 社会主義・共産主義社会においては、資本主義と同じように機械制大工場が生産力の基礎となるのだろうか。それとも新しい何かが新社会の生産力・技術的な基礎となるのか。マルクスには、はっきりと機械(↓資本主義)、X(↓共産主義)とする文書はないようである。とにかく私はいままでのところ見つけだすことは出来ていない。
 しかし、それらしきものがまったくないわけではない。ひとつは、マルクス・ライブラリA『一八六一〜一八六三草稿抄 機械についての断章』(大月書店)の一二一〜一二二頁のつぎのような箇所だ。
 以下、参考に長文だが引用する。「さまざまな地質系統の順次的[交替]について、ひとは、截然と分離された諸時代が突如として現われるなどと考えてはならないが、さまざまな経済的社会構成の形成についても同様である。マニュファクチュアの萌芽は、手工業のふところで生まれ、早くもあちらこちらで、個々の分野で、また個々の過程にたいして、機械が使用されはじめるのである。この最後に述べたことは、個々の過程に水力と風力を利用している本来のマニュファクチュア時代(人力や畜力も〔利用される〕が、それは水力と風力の補欠としてにすぎない)にはいっそうよくあてはまる。しかしこれは、個々的な〔現象〕であって、支配している時代の特徴を表わすものではない。フーリエのいうように、時代の主軸をなすものではない。最も偉大な発明――火薬、羅針盤そして印刷術――は、最も驚歎すべき自動装置の一つである時計と同様に、手工業の時代に属している。それはちょうど、天文学におけるコペルニクスとケプラーの最高に天才的かつ革命的な発見が、観測の機械的補助手段がすべてまだその幼年期にあった一時代に属していたのと同じである。同様に、紡績機械や蒸気機関も、手工業とマニュファクチュア――そこで組み立てられた――にもとづいて、同じくまた、この時代に発達した機械学などにもとづいてつくられたのである。あとに続く[生産]形態の物質的な可能性は――技術学的諸条件もそれに対応する作業場の経済的な構造も――先行する形態のなかでつくられるという一般法則が[ここに]貫いている。革命的要因としての機械労働は、直接には、欲求が古い生産手段の充足能力を越えて増大することから呼び起こされるのである。しかしこの[供給]を越える需要の増大そのものは、手工業を基盤にして行なわれた発見と、マニュファクチュアの時代に創設された植民地体制およびある程度までこの体制によってつくりだされた世界市場とによって生みだされたのである。ひとたび生産諸力に革命――それは技術学的な[革命]として現われる――が起これば、生産諸関係にもまた革命が起こる」。
 ここでマルクスは、「あとに続く[生産]形態の物質的な可能性は――技術学的諸条件もそれに対応する作業場の経済的な構造も――先行する形態のなかでつくられるという一般法則」と言っている。共産主義の物質的可能性は、資本主義のそれとはことなり、その<技術学的諸条件もそれに対応する作業場の経済的な構造も>、資本主義の中で生み出されることを、唯物史観の「一般法則」として述べている。ただ、この文章の草稿という性格(発表されることを直接的な目的としていない研究過程の段階の生産物としての)は、それをマルクスの思想としてよいのか判断に迷うところがあるが…。

 現代の特徴は、グローバリゼーションといわゆるIT革命だが、IT革命なくしてはグローバリゼーションはない。IT革命の中核はデジタル化だが、高速計算、コピー、変形、伝達……などは、機械が肉体的労働の補助としての役割を果たしたのと同様に、精神労働を補助するものとして機能している。しかしどちらも人間的な活動に全面的に取って変わることは出来ないし、資本主義制度の条件下では、人間的な苦役をうみだす作用をともなう。しかし、歴史の発展は弁証法的なものだ。グローバリゼーションとIT革命が、資本主義にとって、労働者階級にとって、また次の経済社会構成にとっていかなる意味を持つのか、が問われなければならない。
 いずれにしろ、マルクス・エンゲルスによって端緒を切り開かれた理論は、その後の歴史的な経過をうけて、発展させていかなければならないということは言うまでもない。 (K)


「5・3憲法集会」成功への協力を

 とめよう憲法改悪、立ち上がろう9条の実現のために、イラク派兵を許さない「2004年5・3憲法集会」成功への協力のお願い

 平和と人権の実現をめざす皆様の日頃のご活躍に心から敬意を表します。

 さて、私たちは今年も憲法記念日の5月3日に下記の次第で「5・3憲法集会」を開きます。つきましては、この憲法集会の成功のためにぜひご協力をお願いいたします。 広範な市民が参加する「5・3憲法集会」は、これまで3回とも会場に入りきれないほど熱気あふれるものとなり、大きな成功をおさめてきました。これは多くの人びとが近年の政治の動きに強い危機感を抱き、「平和憲法を守る」広範な共同行動の必要性を感じとっていることを示すものです。今回は会場を野外音楽堂に移し、従来に倍する規模で開催します。

 現在、小泉内閣は米英のイラク占領に協カし、自衛隊まで派兵してしまいました。この国会には有事関連7法案が出されています。そして与野党の有力政党は改憲案づくりを開始し、あからさまに9条改憲論を展開しています。私たちは、こうした動きを何とかとめたいと考えています。私たちは、憲法改悪に反対し、ますます貴重な役割を果たすべき第9条を守り、実現する決意をこめて、今年の「5・3憲法集会」を大きく成功させたいと考えています。つきましては、ひとりでも多くの方々を集会にお誘いくださいますよう、お願いいたします。

 なお、実行委員会はいま9条改憲に反対する署名や、憲法改悪に反対するポスター・ロゴマークの募集(賞金あり)にも取り組んでいます。これらの件は事務局団体にお問い合わせください。

 集会名称:とめよう憲法改悪、立ち上がろう9条の実現のために、イラク派兵を許さない「2004年5・3憲法集会」

 開催日時 2004年5月3日(月)13:00開場、14:00開会
 集会会場 日比谷公園野外大音楽堂

 (リレートーク)
 横井久美子、平和を創る女性の会(韓国)、平和のテーブル(イタリア)、志位和夫日本共産党委員長、福島みずほ社民党党首。コント・ザ・ニュースペーパー。その後、パレード

(参加原則一非暴力、参加団体・個人を誹謗中傷しない、実行委員会の合意を守る)

 とめよう憲法改悪、立ち上がろう9条の実現のために、イラク派兵を許さない「2004年5・3憲法集会」実行委員会

<事務局団体>

 憲法改悪阻止各界連絡会議 03(3261)9007
 女性の憲法年連絡会 03(3401)6147
 「憲法」を愛する女性ネット 03(3592)7508
 平和を実現するキリスト者平和ネット 03(3203)0374
 憲法を生かす会 03(3226)8765
 平和憲法21世紀の会 03(3641)6991
 市民憲法調査会 03(3592)7633
 許すな!憲法改悪・市民連絡会 03(3221)4668 FAX03(3221)2558


映 評

   「わが故郷の歌」


    監督・脚本・製作 バフマン・ゴバディ

    02年 イラン映画 クルド語 100分

    02年 カンヌ映画祭フランソワ・シャレ賞


 イランのクルド人監督のバフマン・ゴバディは、00年に発表した「酔っぱらった馬の時間」で高く評価された。第二作目の「わが故郷の歌」はイラン・イラク国境のクルド民族居住地を舞台にしている。
 クルド人はトルコ、シリア、イラク、イラン、アルメニアの主に山岳地帯に居住し、二〇〇〇万人以上の人口を数える。各国政府から常に弾圧され、クルド語を話すことを禁じられたこともあった。一九八〇〜八八のイラン・イラク戦争時にはイラク北部のクルド人に化学兵器が使用され甚大な被害をこうむったとも言われている。
 かつてトルコで活躍したクルド人映画監督ユルマズ・ギュネイは「群れ」(78)、「敵」(79)などきわめてすぐれた作品を旁だしたが、トルコ政府に投獄されたこともあり、40代の若さで逝去してしまった。
 
 物 語

 イラン・イラク戦争後、フセインの弾圧に耐えかねた民衆は国境地帯に終結していた。クルド民族主音楽家ミルザは息子のバラートを呼び寄せた。
 別れた妻がイラク領地で困っているうわさを聞いたからだ。ミルザと兄のアウダ、弟バラートは三人で妻ハナレを捜すために苦難の旅に出る。兄は大家族を残したまま、父の命令に従った。弟が所有する自慢のサイドカーつきオートバイに乗ってここから珍道中が始まる。途中で警官を装った盗賊に楽器やオートバイを奪われたり、結婚をめぐる騒動にまきこまれ、むりやり歌わされたりする。荒涼とした砂漠地帯やがて山岳地帯に変わり、イラク領に入るころには降りしきる雪に行く手をはばまれてしまう。キャラバンの人びととはぐれ、たどりついた山の頂には子どもをつれた教師が飛行機についての授業を行っていた。戦争などなかったような明るくふるまう彼らは、実は難民キャンプに住む孤児たちだったのだ。さらにその先ではイラクの化学兵器による大量殺戮のあとの集団墓地の捜索風景に出会ってしまう。最後には父親だけが残り、雪深い山中をとぼとぼ歩いていく。妻ハナレは化学兵器の後遺症のため、言葉を喪って余命いくばくもない状態になっていた。ミルザはハナレから幼い娘を預かりおぶって国境地帯を声、故郷をめざす。雪深い山には国境線をしめす鉄条網がしかれているが、ミルザはそれを踏み越えて行った。
 
 この映画は戦争の無意味さを、悲惨さを、ある面では告発した映画である。また山岳地帯に住むクルド民族が一つの国を持てないことへのいらだたしさ、無念さを描いた映画でもある。しかしそれだけにとどまらない。絶望と悲惨さの裏にあくなき希望への希求が隠されてもいるのだ。民族楽器をかなでる父子三人は実際クルド民族の伝承者であり、学校の教室で、結婚式でかなでられる音楽は民族の一体感を感じさせている。
 父ミルザはかつて一緒に生活した妻ハナレが戦争の後遺症で言葉を失い、幼い娘を育てられなくて、ミルザに託すが、老いた彼ミルザにとってこの幼い娘の成長がこれからの希望であり、独身の弟バラードは自慢のオートバイはなくしたが、集団墓地で兄の遺体が見つからずなげき悲しんでいた美しい女性に恋をし、パートナーにする。それが彼の希望であり、兄アウダは後継ぎの男の子が生まれずに何度も結婚を繰り返すが旅の途中の難民キャンプで音楽の才能に恵まれた二人の子どもを見つけ養子にし、後継者にする。それが兄の希望となる。悲惨さのなかに次の時代につながる希望を見せているのが、この映画のスパイスであり、ゴバディ監督の非凡なところかもしれない。
 でも、この映画のなかで、私がもっとも感心したのは、青く澄んだ空が見える山頂で孤児たちに献身的に教師が教えているシーンだった。空に浮かぶ飛行雲を見上げて、「飛行機は二つのことをする。ひとつは人や物を運ぶこと。もうひとつは爆弾を落とすことだ。これは悪い。爆弾でみんなの家をこわされた……」。
 そしてみんなで紙飛行機を飛ばす。そこに爆撃機の轟音がかぶさる。ゴダディ監督は、この子どもたちにクルド民族の未来を託そうとしているのかもしれない。

 パレスチナのハマスの指導者ヤシン師がイスラエル軍に殺され、イスラエル軍の蛮行は世界の注目するところになっているが、それにくらべてクルド問題はなぜ世界から注目されないのだろうか。

(東 幸成)

岩波ホールで上映中


野沢法務大臣の辞任を要求します
 
 憲法調査推進議員連盟という名の改憲をめざす議員連盟の総会で、現職の野沢太三法相(自民党・参議院議員)が同会の副会長に就任した。憲法を尊重すべき現職閣僚が改憲議連の副会長に就任するという許すべからざる行為は、まさに憲法 条違反そのものだ。憲法改悪阻止各界連絡会議、「憲法」を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、女性の憲法年連絡会、平和憲法二一世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会は連名で野沢法相の辞任を要求する声明を出した。(編集部)

 野沢太三参議院議員・法務大臣は、三月三〇日に開かれた憲法調査推進議員連盟(中山太郎会長、衆参三一七人の国会議員で構成)の総会において、その副会長に就任しました。これは、現職の法務大臣として絶対に許されることではなく、私たちは野沢参議院議員がただちに法務大臣を辞任することを要求します。
 憲法調査推進議員連盟は、「新時代の憲法について議論を行う」(設立趣意書)との目的のもとに、これまで自民、民主、公明等各党が憲法改悪を促進するための論議を重ね、また、「憲法改正国民投票法案」の作成など、憲法改悪の準備作業をおこなってきた運動組織です。野沢法務大臣の議員連盟副会長就任は、改憲運動を主導する意思の表明にほかなりません。
 法務大臣は、閣僚の一員として「憲法を尊重し擁護する義務」(憲法第九九条)を負うだけでなく、「基本法制の維持及び整備、法秩序の維持」(法務省設置法第三条)という特別の責務を負っています。野沢法務大臣の行動は、これらを公然と踏みにじるものです。
 とりわけいま、自衛隊のイラク派兵など憲法の破壊がかつてない規模でおこなわれ、これを追認するものとして第九条を中心とした憲法改悪の動きが強まっています。野沢法務大臣の憲法調査推進議員連盟副会長就任は、こうした動きに拍車をかけるものであり、日本の政治が憲法にもとづいて行われていないことを内外に示すものであり、立憲主義への不信を高めるものといわざるをえません。
 私たちは、重ねて野沢法務大臣の辞任を強く要求します。

二〇〇四年三月三一日

 憲法改悪阻止各界連絡会議
 「憲法」を愛する女性ネット
 憲法を生かす会
 市民憲法調査会
 女性の憲法年連絡会
 平和憲法二一世紀の会
 平和を実現するキリスト者ネット
 許すな!憲法改悪・市民連絡会


複眼単眼

   
春の旅で思った花もいろいろ

 今朝のテレビで誰かが春の色は早春の花の黄色から、春爛漫の花盛りの桃色、そして晩春の木々の芽吹きの緑色と三色に変わるという話をしていた。
 なるほどと思った。福寿草も水仙もみずきもロウバイも、早春の花には黄色が多いのも確かだ。もとより白梅もあるけれど。そして桜や桃のピンクの花が今は真っ盛り。朝晩に桜などの花々を眺めながら、ときに風に含まれる香りも感じつつ歩いて駅に向かうのは、やはりうれしい。
 桜だけみても咲く時期がそれぞれに異なる。桜はバラ科の花で、緋寒桜などが早く、ソメイヨシノ、続いて枝垂れ桜、山桜、八重桜と咲き移る。これからの時期、しばらくはこれらの花々が私たちの目を楽しませてくれることになる。
 小学校の教科書などでは、桜は春の四月と決まったような書き方をするときがあるけれど、実は日本列島は細長く、それぞれ桜の開花の時期が異なるものだ。
 琉球列島の桜は一月から始まるし、北海道の桜は五月にも咲くはずだ。梅、桃、桜の順に咲くというのも一定ではない。私が生まれた福島県の三春地方などは梅・桃・桜が同じ時期に咲くから三春というとの説もあるほどだ。
 桜一つとってもかくも多様なのだ。にもかかわらず、なぜ一つでなければならないのか。なぜ「単一民族」など、「単一」がいいことだと思うのだろうか。おそらくそれは社会支配のありようと関係しているのだろう。
 先日、所用で宮城県まで出かけてきた。東北新幹線は進行左側に次々といい山がいくつも見えるので、晴れた日の旅では大変楽しみだ。
 いずれも活火山群で、栃木県の奥、福島の手前に那須山がある。福島県に入ると中央部に安達太良山が座る。
 かつて高村智恵子が「ほんとの空」があるといった山だ。さらに北上すると吾妻山系、県境を越すとまもなく樹氷で知られた蔵王の勇姿が出てくる。いずれも山頂部には白い雪を戴いていた。
 田んぼは田起こしが終わり、花は北に行くに従って桜から梅に変わっていく。山の木々の芽吹きも緑から白に変わり、やがて無機質の灰色になっていく。
 あちこちに見える農家は回りがさまざまな花の木や草花に取り囲まれ、これが現実のものかと疑わせるほど美しい。重労働の農作業の合間に、作物を作る手を少し休めて代々の農民たちが手を尽くして育ててきたのだろうとおもう。
 五〇年代以降、この路線は東北本線として、出稼ぎの人びとと集団就職の若者たちを上野駅まで運んだ。それぞれに無数の悲喜こもごもの人生のドラマがあった。
 いまでは始発駅は上野から東京に変わった。仙台まで一〇時間もかかった旅は新幹線で二時間あまりになった。それでも桜前線のスピードは全く変わらないのに気づいて、我ながらおかしかった。
 興ざめなことに、仙台でも東京でも、「警察当局のご指導とご協力により、テロへの対策として駅のゴミ箱を封鎖しております。なお車内に不審な物があったら駅係員までお知らせください」というワンパターンの社内放送が流れていた。「ご指導による」のだと……。(T)