人民新報 ・ 第1128 号<統合221> (2004年4月15日)
  
                  目次

● 自衛隊はイラクから撤退せよ! 米占領軍は虐殺を止めろ! 三人の人質事件の原因は日本のイラク参戦体制だ

● 4・9 陸・海・空・港湾労組20団体、市民緊急行動などが集会・デモ

● 中国人強制連行・強制労働事件  新潟地裁が「国と企業に責任あり」の判決

● イラクへの自衛隊派兵の中止を求める  国会内で「4・5女性のつどい」

● イラクにも朝鮮半島にも平和を! 戦争屋チェイニー来日反対  やめろ日米戦争会談

● 自衛隊派兵反対、イラクに平和を! 使い捨てはゴメンだ  中小・非正規労働者二〇〇四春の共同行動

● 憲法署名の第二次提出

● 映 評  /  アフガン零年 ( 監督・脚本・編集セディク・バルマク )

● せんりゅう  /  ゝ 史

● 複眼単眼  /  三人の救出と自衛隊撤退をめざして闘い続ける市民たち




自衛隊はイラクから撤退せよ! 米占領軍は虐殺を止めろ!

               三人の人質事件の原因は日本のイラク参戦体制だ


 アメリカのイラク侵略戦争、それへの日本・小泉政権の積極的加担にたいして多くの人びとが反対の声を挙げてきた。
 今や、ブッシュ政権がフセイン政権打倒のための最大の口実としてきた「大量破壊兵器」は存在しなかったことが明らかになった。そして、アメリカなどによる占領支配体制にたいする民衆の抵抗運動がイラク各地で激しくなってきている。旧政権派だけでない。スンニー派、シーア派をとわず抵抗闘争は拡大している。追いつめられたアメリカ軍は、現在の抵抗の拠点ファルージャで民衆大虐殺を行っている。だが、米軍の暴挙は、ファルージャの抵抗勢力に対する民衆の増大する支援・援助の拡大が物語っているようにイラク民衆は占領軍に対するいっそうの怒りと解放闘争の高まりをもたらしている。
 昨年五月、ブッシュは戦闘勝利宣言を発した。しかし、現状は占領軍が孤立し、いっそう凶悪な行為にでてきているということだ。現在、イラクにいる外国人が人質とされはじめている。一四日の時点で一七カ国五〇人以上との報道がある。しかし、そのうちでも韓国人、ロシア人、中国人などはすぐに解放されている。
 イラク南部サマワの地に、「非戦闘地域」への派遣、「人道復興支援」の名目で派兵を強行した自衛隊は、不安げに宿営地にとじこもっている。
 こうした状況の中で、四月八日、高遠奈穂子さん、郡山総一郎さん、今井紀明さんが、イラク人によって人質とされたという報道があった。「サラヤ・ムジャヒディン」と名のるグループは、自衛隊のイラクからの即時撤退を要求した。その後、三人を解放するという声明も出された。解放声明は、三人がイラク民衆を支援するために献身的に行動しつづけた姿がイラク民衆の心に届いたためであり、また、家族の皆さんや日本の市民たちが自衛隊の即時撤退こそが三人の命を救うことになると、僅かな期間にあらゆる手だてを通して活動する状況がイラクの人びとに伝わったからである。
 一方、日本政府は、救出にために何もしないばかりか、逆に事態を悪化させる行動だけを続けた。政府は、三人の拘束のニュースがはいるないなや、武装勢力が自衛隊の撤退がなければ三人を殺害すると言っているにもかかわらず、「自衛隊の撤退は絶対にしない」と声明した。小泉純一郎首相は、イラクの抵抗勢力を「テロリスト」と誹謗し、川口順子外相は、アルジャジーラ放送にテレビ出演して傲慢な態度で武装勢力に「屈服」を要求した。近く解放されるという報道に飛びついた安部晋三自民党幹事長は、「自衛隊は撤退しないという日本政府の毅然たる態度が犯人グループを屈服させた」などと調子にのった発言を行ったのである。
 こうした日本政府の態度は事態を悪化させるだけであった。
 三人の事件が伝わると、WORLD PEACE NOWをはじめいくつもの団体、個人は直ちに行動を開始した。九日から連日、首相官邸にむかって激しい抗議・要請行動が展開された(四面「複眼単眼」欄参照)
 いま、イラク全土が戦場となろうとしている。三人の人質は自衛隊の派兵がもたらしたものだ。さらに多くの人びとと共同して、三人を救い、自衛隊の即時撤退させ、アメリカ占領軍の殺戮に反対する運動をいっそう強めていかなければならない。


4・9 陸・海・空・港湾労組20団体、市民緊急行動などが集会・デモ

 四月九日、日比谷野外音楽堂で、陸・海・空・港湾労組二〇団体、平和を作り出す宗教者ネット、戦争反対・有事を作るな!市民緊急行動のよびかけによる「自衛隊のイラク派遣NO! STOP!有事法制 4・9大集会」が開かれ、労働者・市民など四〇〇〇人が参加した。
 主催者を代表し、宗教者ネットの武田隆雄世話人が開会あいさつで、緊急のアピール。イラクでの三人の人質事件は自衛隊の派兵にあり、もっとも大きな責任は政府にある、自衛隊を即時撤退させることが、三人の安全を確保する唯一のやり方だと述べた。
 日本共産党の赤嶺政賢衆院議員、社民党の福島瑞穂党首、民主党の生方幸夫衆院議員が発言した。
日本弁護士連合会の海老原信彦さん、全労連の熊谷金道議長、元レバノン大使の天木直人さん、在日韓国民主統一連合、ふぇみん民主クラブが平和にむけたリレー・アピールを行った。
 集会には、フォーラム平和・人権・環境からのメッセージが紹介された。
 最後に、「私たちはすべての軍隊がイラクから即時撤退することを強く求めます。『戦争をする国ニッポン』をつくるための有事関連七法案の提出に強く抗議し、有事体制の完成をどうしても食い止めるために、様々な違いを克服して大きく共同してたたかいます」という集会宣言を確認した。集会の後は、銀座ピースパレードをおこなった。


中国人強制連行・強制労働事件

  新潟地裁が「国と企業に責任あり」の判決

 三月二六日(金)に新潟地方裁判所において、中国人強制連行・強制労働事件新潟訴訟の判決が言い渡された。判決では、被告国と企業(リンコーコーポレーション)の安全配慮義務違反を認め、一人八〇〇万円総額八八〇〇万円を命じた。強制連行裁判で、国の賠償責任を認めたのは初めてのこと。今回の判決は、国と企業の不法行為責任と安全配慮義務違反を認め、国家無答責の法理と時効を排斥し、日中共同声明などによる請求権放棄・消滅を放棄した。この判決は、同じような事件に与える影響は大きい。
 四年余りの審理の過程で、昨年二月に戦後補償裁判で初めて裁判所による現場検証が行われるなど、膨大な証拠を十分に吟味した。判決では歴史的事実の認定や国と企業の共同不法行為など多くの焦点について、原告らの被害の実態を詳細に認定し、国と企業が敗戦後に不法行為を覆い隠そうとした不誠実な対応を厳しく断罪した。
 判決後、原告団、弁護団、支援と共同して、外務省や総理府、企業に対して控訴を断念し、中国人強制連行・強制労働事件の解決をはかるよう要請してきた。これに対して、企業は三月二九日、国は三月三一日に判決を不服として控訴した。外務省中国課は、(一)判決が認めた安全配慮義務違反は、過去の同種の訴訟では否定されている、(二)先の大戦での日中間の請求権の問題は日中共同声明以降存在しない――という主張が理解されなかったとしている。
 この中国人強制連行・強制労働新潟訴訟は、一九九九年八月に国と企業を相手に、アジア・太平洋戦争中に中国から新潟に強制連行された九〇一人のなかの代表として張文彬さんら一一名が謝罪と損害賠償を求めた訴訟だ。
 原告の一人、張さんは、二三歳の時に中国から強制連行され、新潟港で強制労働させられた。その上に、身に覚えのないスパイ容疑で広島刑務所に服役させられ、八月六日に被爆した。今でも、原爆症で悩み続けている。
 現在、中国人強制連行・強制労働事件裁判は、新潟を始め、北海道、長野、群馬、東京、京都(大阪)、広島、福岡、長崎の全国各地で行われ、二〇〇一年七月東京地裁において劉連仁裁判では、国の戦後の救済義務違反を認め、二〇〇二年四月福岡地裁において、被告企業(三井鉱山)の不法行為責任を認める判決が言い渡されている。その後も、国家無答責の法理の排斥や、国の不法行為、企業との共同不法行為や企業の安全配慮義務違反を認める判決が出されている。
 これからの中国をはじめとしたアジアとの友好と信頼関係を築き上げるためにも、国と企業は、被害の実態を直視し、強制連行・強制労働させられた中国人全員に対して早急に謝罪と損害賠償を行い、強制連行・強制労働事件の全面解決する必要がある。原告らは、強制連行・強制労働させられてから六〇年あまりが経過し、平均年齢八〇歳を超す高齢で、残された時間は少ない。原告らは、「子々孫々まで解決するまで闘う」と口をそろえて言っている。

 現在、中国人強制連行・強制労働事件の解決に向け、原告団、支援団体、弁護団でドイツの『未来基金』を参考にしながら、解決案を検討している。来年二〇〇五年の日本の敗戦六〇年にはぜひ実現したいと思う。


イラクへの自衛隊派兵の中止を求める  国会内で「4・5女性のつどい」

 四月五日、国会衆院第一議員会館内で、「イラクへの自衛隊派兵の中止を求める4・5女性のつどい」が開かれた。司会はキリスト者平和ネット共同代表の鈴木伶子さん。津田塾大学名誉教授の江尻美穂子さんは、イラク派兵は民主主義の否定だ、いったん有事とされれば私たちの自由は失われる、とにかく諦めないで反対の運動をもりあげていこう、と発言。
 国会からの報告は共産党の山口富男衆議院議員が行い、また、民主党の円より子参院議員(党副代表)、社民党の福島瑞穂参議院議員(党首)、共産党の赤嶺政賢衆院議員、吉川春子、林紀子両参院議員があいさつした。参加者からの発言がつづき、最後に航空労組連絡会議長の内田妙子さんが、イラクへの自衛隊派兵、憲法改悪のうごきが強まっているが三月二〇日の国際共同行動では世界中で大きな反戦のうねりがおきた、これからも戦争に反対し、月の憲法集会など九条をまもり、平和のための生かす共同を広げていこうと述べた。


イラクにも朝鮮半島にも平和を!

戦争屋チェイニー来日反対  やめろ日米戦争会談
 

 アメリカのチェイニー副大統領が東アジア歴訪の一環として来日した。チェイニーは先の湾岸戦争やパナマ侵略戦争、そして今回のイラク戦争とアメリカの戦争を指導をしてきた。チェイニーの今回の歴訪は、アメリカ主導の戦争体制に日本・韓国をいっそう深く結び付けるものだ。チェイニー来日・日米会談はイラク戦争を激化させるともに朝鮮半島にも戦争の危機を煽るものである。

 四月一〇日、渋谷の宮下公園で「来るな!チェイニー やめろ日米戦争会談 4・10緊急行動」の集会が開かれ、四〇〇人あまりが参加した。当日の昼には、自衛隊のイラクからの即時撤退とイラクで「人質」となった三人の解放を求め小泉政権を糾弾する首相官邸抗議行動が行われたが、そこに参加した人の多くも宮下公園の集会に合流した。
 集会は、はじめに実行委員会から渡辺健樹さんが主催者挨拶をおこなった。チェイニーは緊張を激化させそれを利用しつつ、巨利をむさぼる戦争屋だ。今回のイラクをめぐっては戦争ばかりでなく、同時に、占領軍管轄下の「復興」ビジネスでも大儲けしようとしている。チェイニーはその「復興事業」を請け負っているハリバートンの最高経営責任者であり、退職した今も巨額の報酬を受け続けている。単独行動主義・先制攻撃という傍若無人の侵略行為を強めているアメリカ・チェイニー副大統領と、イラク戦争に参戦し、有事法制や北朝鮮制裁法、憲法改悪を推し進める小泉首相との首脳会談はまさに「日米戦争会談」以外のなにものでもない。多くの人びとと力を合わせて、イラクにも朝鮮半島にも平和を実現するために闘いを強めていこう。
 つづいて、VAWW―NET Japan、核とミサイル防衛NO!キャンペーン、海外派兵をやめろ!戦争抵抗者の会、新しい反安保実[、在日韓国民主統一連合、劣化ウラン兵器禁止市民ネットワーク、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、フォーラム平和・人権・環境がリレートークをおこなった。
 集会では、チェイニー訪韓反対行動を準備している韓国の仲間たちからの連帯メッセージ(別掲)が紹介され、最後に集会決議(別掲)を確認した。
 一時間ほどの集会の後は、大勢の人で賑やかな渋谷の街で、戦争屋チェイニーの来日と小泉・チェイニー戦争会談に反対をアピールするデモを行った。

4・10集会への韓国からのメッセージ

 戦争屋ブッシュの右腕、チェイニーの訪韓・訪日反対に立ち上がった平和を愛する日本の仲間の皆さんに、力強い連帯の挨拶を送ります。 
 私たちはまた、チェイニーの日本、中国、韓国の訪問に、皆さんと一緒に、韓国でも反対行動を行なうことをお知らせします。
 
 非常に不安定な情勢のもとでの今回の訪問は、明らかに政治・軍事的目的をもったものです。

 第二回六カ国会談で、米国は北に意図的なCVID方式(完全かつ検証可能で、不可逆的な方法での核計画放棄)と無条件の投降を要求しましたが、これは結局受け入れられず、核問題の対話は暗礁に乗り上げたままです。このような状況のもとで、米国は九月から東海(日本海)にイージス艦配備を確定し、MD構築を加速化して、朝鮮半島をめぐる東アジア情勢を戦争の方向へ追いやっています。今回チェイニーは平和に逆行して、韓日政府に対し、MD体制の構築を早めるため積極的な協力を強く要求するでしょう。

 また、イラク派兵諸国で撤退の動きが拡がり、イラクの反米の闘いが第二の戦争状況へと進む中、米国はこれを打開しようと、韓日両国政府に追加派兵の約束を再確認し、米軍の雇い兵になる戦闘兵の要求など、さらに深刻な要求を突きつけてくるに違いありません。

 さらに、チェイニーは今回の訪問で、米国を中心とした日米韓のトライアングル軍事同盟構造を強化し、東北アジアの新冷戦秩序を具体化させるため、日韓政府に政治的、軍事的な圧迫を露骨に行なうことでしょう。

 私たちは朝鮮半島と東北アジア、そして世界平和に真っ向から反するこの戦争好きなチェイニーの訪問に反対し、米国反対の旗を高く掲げなければなりません。そして、韓国と日本がこれ以上米国の支配戦略におちいらないよう、平和の声を高く上げましょう。私たちは世界一の覇権国家で、帝国主義国家で、そして戦犯国家である米国のような国の国民として生きることはできません。

 チェイニー訪日反対をさけぶ日本の皆さんに熱い連帯を送ります。
私たちの間に海があっても、反戦平和のスローガンは一つです。この闘いもまた一つです。日韓民衆の堅い連帯で、平和の願いを実現させましょう。たゆまない力強い闘いで、反戦平和を勝ち取り、平和な東北アジアを私たちの手で作りましょう。

 戦争屋チェイニーの訪日(訪韓)反対!
 米国の覇権戦略反対!
 米国はMDを押し付けるな!
 イラク戦犯国家、米国反対!
 イラク派兵を押し付ける米国反対!

二〇〇四年四月一〇日

 六・一五南北共同宣言実現と朝鮮半島の平和をめざす統一連帯(略称・統一連帯)
 (注・統一連帯は民主労総・全農・民主労働党・全国連合をはじめ広範な社会・市民・宗教者団体の連合体です)


来るな!チェイニー やめろ!日米戦争会談 4・10緊急行動 決議

 イラク戦争は、いま大きな転換点を迎えつつある。米英軍を中心とする侵略と占領に対するイラクの人々の怒りはかつてなく高まっている。イラク全土が戦場と化し、イラクの人々の激しい抵抗が繰り広げられている。

 これらの人々は、ブッシュ米大統領や小泉首相がいう「一握りのテロリスト」などでは断じてない。多くの普通の市民たちが起ち上がっているのだ。
 占領軍は、いまや怒れるイラクの人々の大海原に包囲されているというべきだろう。
 「人道復興支援」というきれいごとを並べて、占領軍の一翼を担う自衛隊もその例外ではない。
 四月八日、日本人NGOの三人が拘束された。「自衛隊が派兵されれば、日本人NGOも敵国人と見なされかねない」と指摘されてきたことが起こってしまった。私たちは、彼らを救うためにも、自衛隊の即時撤退を要求する。彼らに何かがあれば、その全責任は自衛隊派兵を強行した小泉首相と自公政権与党にある。

 こうした中で四月一〇〜一三日、米ブッシュ政権のチェイニー副大統領が訪日し、中国・韓国も歴訪する。石油利権にまみれ、イラク戦争を仕掛けた張本人の一人だ。
 これに参戦し、有事法制や北朝鮮制裁法、憲法改悪を推し進める小泉首相との首脳会談はまさに「日米戦争会談」にほかならない。
 私たちは、小泉・チェイニーの日米戦争会談の中止を要求する。

チェイニーの東アジア歴訪はまた、韓国へのイラク追加派兵の督促、日本海(東海)へのイージス艦常駐配備など「ミサイル防衛」の推進、新たな「対テロ戦争」のための東アジア駐留米軍の再編や対北朝鮮など―東アジアの緊張を高めるものである。

 イラクにも朝鮮半島にも平和を!

 私たちは、米国のイラク占領を即刻中止し、韓国、沖縄・日本などに駐留する全米軍を撤退させることを強く要求する。

 戦争の使者・チェイニーは東アジア歴訪を即刻中止せよ!
 小泉政権は、自衛隊をイラクから即時撤退させよ!

二〇〇四年四月一〇日

 来るな!チェイニー やめろ!日米戦争会談 四・一〇緊急行動参加者一同


自衛隊派兵反対、イラクに平和を! 使い捨てはゴメンだ

          中小・非正規労働者二〇〇四春の共同行動


 四月七日、「自衛隊派兵反対、イラクに平和を!使い捨てはゴメンだ 中小・非正規労働者二〇〇四春の共同行動」が展開された。
 春の共同行動は、共同のスローガン(@自衛隊派兵反対、イラクに平和を!、A使い捨てはゴメン!安心して働ける職場を!、B生活できる賃金を!互いに助け合える職場を!C働くものすべてに差別のない同じ権利を!職場に均等待遇を!)の下、中小・非正規労働者の要求を実現するために、地方自治体や行政機関、経営者団体などに直接その声が反映されるような運動を作り上げることを目的としている。そのために、労組運動だけでなく、様々な地域・生活要求の運動を結びつけ、交流会や中小を中心とする「春闘」への相互激励、オルグ行動、争議支援行動・集いなどを計画している。
 七日の正午に、厚生労働省前に集合してビラまき・宣伝行動を行い、つづいて、全統一労組光輪分会企業危機問題でみずほ銀行へ抗議・申し入れ、金融庁では埼京ユニオン・カメラのニシダ労働憤権について申し入れ、NTT持株会社では電通労組のNTT強制配転中止を要求、トヨタ東京本杜ではフィリピントヨタの組合つぶしで抗議行動、ユナイテッド航空へは日本航空サービスでの妊娠を理由とした雇い止め解雇に抗議・申し入れ行動を行った。
 午後六時半からは、新橋・交通会館ホールで「中小労働者〇四春の総決起集会」が開かれた。
 集会は北関東ネットの中村宗一さん(国労高崎委員長)の司会ではじまった。
 主催者を代表して平賀雄次郎さん(全国一般なんぶ委員長)があいさつ。
 今年の春闘はイラク派兵という戦争情勢の中で闘われている。大企業の春闘で業績連動での数百円の定昇を連合指導部などは「成果」だと評価しているが、こうした姿勢は問題だ。労働組合の役割とはなにかが問われている。中小の労働者をめぐる状況はきわめてきびしいものがある。中小春闘はこれからであり、共同行動を強め広げて連休明けから六月ころまで闘って要求をかち取って行かなければならない。
 連帯あいさつは藤崎良三全労協議長、外国人の動向の密告を呼び掛けるホームページの閉鎖を要求して運動しているストップメール通報連絡会の金子由佳さん。
 全統一書記長の鳥井一平さんは、昼の行動の報告と参加組合の紹介を行った。
 来賓あいさつで福島瑞穂社民党党首は、イラク反戦と労働者の権利のためにともに闘おうと述べた。
 集会を終わって銀座デモに出発。労働法制改悪NO!、小泉改革NO!、自衛隊のイラク派兵NO!、戦争NO!、憲法改悪を許さないぞ!、非正規労働者の権利を確立しよう!、生活できる賃金を闘いとるぞ!、年金改悪を許さないぞ!、サービス残業糾弾!、中小労働者は闘うぞ!、移住労働者と共に闘うぞ!、全国の仲間とともに闘うぞ!、〇四春の闘いに勝利するぞ!、などのシュプレヒコールをあげた。

NTTリストラの中止を求める申し入れ書

日本電信電話株式会社  代表取締役社長和田紀夫殿

                         二〇〇四年四月七日

自衛隊派兵反対、イラクに平和を!使い捨てはゴメンだ 中小・非正規労働者二〇〇四春の共同行動

電通労組全国協議会議長 前田裕晤


 貴社はこの三年間、五〇歳以上の労働者にNTT退職を強要し、一五〜三〇%もの賃金カットを行ったうえでグループ内子会社に再雇用するというリストラを進めてきました。これまでに六万人をこえる労働者が退職を余儀なくされ、深刻な生活危機に喘いでいます。
 また、退職を拒否した労働者に対しては、非人道的な単身赴任や長距離通勤を含む広域配転を行っていると聞いています。
 業務上の必要性などまったくない『見せしめ、嫌がらせ』のための配転だと言われています。
 その上さらに退職者の企業年金まで減額しようとしており、子供の進学や住宅ローンなどの負担をかかえ、健康を維持するだけでも大変な中高年労働者や退職者が、なぜこれほどに過酷な仕打ちを受けなければならないのか、甚だ疑問に感ずるところであります。
 貴社は労働者を退職させなければならないほどまでに深刻な経営危機の状態にあると言うのでしょうか。
 昨年九月期決算でトヨタ自動車を抜いて連結経常利益日本一になった企業、日経ビジネス一月五日号「世界一千社番付」において世界ナンバーワンに輝いたという企業、三月期決算で八兆円を売り上げ、五八二〇億円の純利益を上げたのは一体どこの会社だったのでしょうか。
 華やかなコマーシャルの裏に賃金カットや配転に四苦八苦する一〇万の中高年労働者が存在する、彼らの犠牲の上に、貴社は巨万の富を築いているではないのですか。
 私たちは、同じ労働者として、また電話・メディア利用者として見過ごすことのできない大変な事態であると者えています。
 そもそも貴社は、私的利益を追求すべき企業ではなく、国民生活に欠くべからざる公共サービスを提供し、利益は利用者に還元する責務を負っているはずありますし、ましてそこに働く労働者の生活は、安定的な公共サービスを維持する上での重大な担保というべきであります。
 日本を代表する巨大企業であり、また世界一の金持企業であるNTTグループが進めるリストラは、ひとりNTTだけの問題ではありません。
 あらゆる企業に絶大な波及効果をもって全社会的にもリストラを加速させているのです。さらにその中高年労働者イジメは、日本の高齢化社会に暗い影を落としています。貴社のリストラは、もはや第一級の社会問題であるといわざるを得ません。
 そうした観点から下記の項目を申し入れますので、貴社の誠意ある回答を要望します。

    記

 一、NTT「構造改革」=退職・賃下げ萬雇用を即時中止すること。
 二、退職・再雇用者への賃金カットを中止し、元の賃金水準に戻すこと。
 三、『見せしめ・嫌がらせ』の広域配転を即時中止し、元の職場に戻すこと。
 四、過剰な利潤追求をやめ、その利益を労働者、利用者に遺元すること。
 五、大失業・雇用不安の状況を踏まえ、企業の社会的責任として全国で新卒高校生を大幅に雇用すること。

                         以上


憲法署名の第二次提出

 四月五日、二〇〇四年五・三憲法集会実行委員会は衆議院議員面会所で「憲法改悪に反対し、九条をまもり、平和のために生かす」ことを求める署名の第二次提出(一二万七千筆余り)行動を行った。


映 評

   
  アフガン零年

   監督・脚本・編集セディク・バルマク

   2003年製作  35ミリ・カラー   上映時間 82分


 この映画を観て暗たんたる想いに捕らわれない人はいないと思う。そしてこのような結末にせざるを得なかったことからアフガニスタンの人々が二三年続いた戦争により押しつけられてきた絶望の計り知れなさかを痛感することができる。
 この映画の当初の題名は「虹」で、ラストは主人公の少女が四番目の妻とさせられたマドラサ(宗教学校)の老師の手から逃れ、希望の象徴である虹をくぐる場面で終わるはずであった。
しかし、主人公を演じたマリナ・ゴルバハーリが撮影の途中で戦争中に起こったことを思い出して瞳に涙をあふれさせ、そのために撮影がしばしば中断したことを重くとらえたバルマク監督はアフガニスタンの悲劇は今も終わっておらず、虹を描くのは嘘になると思いラストシーンを削除した。
 偶然に監督と出会ったマリナは、物心ついた頃に家を爆撃されて二人の姉は家の下敷きになり死亡、タリバン軍の拷問で脚に後遺症を負い働けない父、乳飲み子を抱える母の代わりに五歳の頃から幼い弟と街で物乞いを始めて八年間にわたり一家の生計を支えてきた。
 監督は「彼女の目には千の物語りがあった」と語っているが、一つ一つの物語りの悲しみを心の奥に深く沈み込ませたまなざしが映画を支えている。
 その他にも母親役はパキスタンの難民キャンプで六年間生活したこと、祖母役は国内の避難キャンプで監督が見つけたことを知って、戦争がアフガニスタンの人々に落とした影の大きさを深く思い知らされち映画は未亡人の女性たちが仕事を求めるデモの場面から始まる。女性は守られるべき存在というイスラムの教えを曲解したタリバン政権下で働くことはおろか、身内の男性を同伴せずに外出すると刑罰を科せられる現状では、男性がいないということは生活の糧を失うことを意味する。
 タリバン兵はデモの女性たちに向けて発砲し、さらに放水で蹴散らしていく。これに巻き込まれた少女と母親はその場から逃げることができたが、看護婦として働いていた母は職を解かれ、祖母を加えた一家は明日の食にさえ窮する現状に追い込まれてしまう。
 父をはじめ一家の男性を戦争でみな失った家族が生き残る道は娘を少年に見せて働きに出すしかない。
 おさげ髪を切られ少年の姿となった少女は死んだ父親の戦友だったミルク屋のもとで働くことになるが、少女とばれたらタリバンに殺される恐怖に怯える少女にとって通りを歩くことさえも恐怖の連続でしかない。
 街のすべての少年がタリバンのマドラサに招集されることになり、少女も連れさられることになる。
 ちなみにタリバンはイスラム神学校生徒を意味する。
 映画の冒頭で、一緒にデモ鎮圧から逃れた街のお香屋の少年が少女をかばってくれるが、まわりの少年たちにあやしまれることになり、井戸に吊るされた少女は恐怖による衝撃から初潮をむかえることになる。
 強引にブルカを被せられた少女は投獄され、宗教裁判の場に引きずりだされるが、マドラサの老師が自分の妻にするので命を救ってほしいと願い出る。
 たしかに少女の生命は救われたが、これは老師という監獄に引き戻されたにすぎない。老師の妻は無理やり妻にされたにすぎず、誰も彼を愛してはいないのだ。
 少女の祖母は「虹をくぐると少女は少年に変わり、悩みが消える」という昔の話をしてなだめるが、ついに虹は出ることはなかった。
 観終わった後で色々と考えさせられる映画であった。
 タリバンは長く続いた戦争により疲弊し、そしてソ連を撃退したムジャヒディ〈イスラム聖戦士)が腐敗堕落して民心を失ったことで台頭してきた。
 しかし、当初彼らを歓迎したアフガンの民衆はタリバンに全てを奪われることになってしまったのである。
 心配症と言われるかもしれないが、このことを現在の日本に置き換えることができると私は考えている。たとえば毎年三万人を超える自殺者が出ているが、この数は一〇年以上も続いた第二次インドシナ〈ベトナム)戦争における米軍死者の半分を上回るのだ。
 銃弾こそ飛び交っていないものの、今の日本では静かな内戦が起こっている。一方、「強い日本」を全面に押し出て改憲を叫ぶ政党が与野党を問わず第一党になっている。
 映画ではタリバンをひそかに呪う民衆の声を描いているが、この姿が五年、十年先の私たちの姿にならない保証はないのである。
 あるべき未来の姿を考える読者諸兄に鑑賞を勧めたいと思って筆を執ることにした次第である。 (樹人)

 <五月初旬までJR恵比寿駅近くの東京都写真美術館ホールにて上映の予定>


せんりゅう

 起立します反戦歌こぶし挙げて

 赤字 兆円国債だす兵もだす

 口ふさがれた有事駅のゴミ箱

 魔性だな参拝違憲鼻でわらい

            ゝ 史

二〇〇四年四月

 ○ 法学者政治学者諸氏に問いたい。憲法違反の政治行動をする議員は国民の意思を代表するに足るのか。たとえ首相の地位にあっても国民から信託を受けている一議員であるはずだが。 
○ 「君が代」斉唱の際に起立しなかった教師が処分された。思想信条の自由を生徒に教えているのだろうか。思想は弾圧されるのだという教育効果が恐ろしい。教育現場の戦時色だ。


複眼単眼

  三人の救出と自衛隊撤退をめざして闘い続ける市民たち



 四月七日、イラクで日本人のNGO活動家と良心的なフリーのジャーナリストが、イスラム戦士を名乗るグループによって拘束された。
以来、今日まで六日あまり、三人は未だに解放されていない。事件を知った全国の市民グループは直ちに救出に動いた。
 インターネットを通じてイラクの拘束者グループに「三人は私たちの仲間であり、あなた方の友人だ。ブッシュのイラク攻撃と小泉の自衛隊派遣に抗議し闘っている人びとだ。三人を直ちに解放せよ」との連絡を送り続けた。自らの所属する国際ネットワークの手づるを駆使してメッセージを伝えようとしたNGOもある。カタールまで飛んでアルジャジーラに出演したNGOもあった。該当や学校で署名運動をする人びと。駅頭に立ち、アピールする人たち。メディアに要請や抗議をする人たち。多くの市民たちが自発的に動き出した。その有様は大変感動的だ。阪神大震災の時のボランティアとはまた異なる形態だが、これは歴史に残る市民運動といえるのではないか。
 国会周辺では金曜日の昼から昼夜の連続集会が警察の厳しい規制に抗しながらWORLD PEACE NOWの主催で開かれた。
 日曜日には一二時からの集会に二五〇〇人、同日午後六時からの集会に二五〇〇人、翌月曜の集会に一二〇〇人が集まり、首相の派兵政策を批判する声で国会周辺は騒然となっている。夜遅くまで座り込む人びとも少なくない。自発的に駆けつけた様々な労働組合の旗も混在している。今井君と同世代の若者たちの参加も多い。中学生や高校生も多く参加している。土曜と日曜に集会で集めた「家族の滞在費支援のカンパ」は計一二五万円を超えた。
 これらのNGOの発信の一つが拘束者のグループに届いた。それからしばらくして「一両日中に解放する。日本人は自衛隊の撤退のために活動してほしい」というメッセ時が届いた。マスメディアが「解放声明」を入手したのはそのあと、一二時間後のことだ。
 しかし、それまで米国に頼む以外は何もしなかった政府は、厚顔無恥にも「自衛隊を撤退させない」という断固たる姿勢が「解放」を言わせたなどと言い始めた。
 彼らは何もしなかっただけでなく、米軍に「救出協力依頼」をし、最初に「自衛隊を撤退させない」と言明して、解放のための努力を妨害したのだ。
 以降、三人の解放のスケジュールは二転三転している。状況は予断をゆるさない。本誌がみなさんの手元に届く頃、三人は帰ってきているだろうか。
 この緊急事態の中、私もこれらのまさに憲法第九条を体現するようなこれらすばらしい市民たちの中で引きつづき共にありたい。(T)