人民新報 ・ 第1137 号<統合230> (2004年7月15日)
  
                  目次

● 参院選・深刻な打撃を受けた自民党  小泉政権を追いつめ打倒しよう!

● WPN主催 VOTE for PEACE!

● WPN実行委員会の記者会見  「7・4ピースパレード弾圧事件」について

    声明:ピースパレードに参加した三人の仲間の逮捕に抗議します

● 国労第72回定期全国大会  国鉄闘争の全面降伏の歴史的大会にするな!

● 郵政4・28処分撤回控訴審で東京高裁逆転完全勝利判決  池田実さんに聞く

● 日韓民衆連帯全国ネットワーク主催シンポジウム「第二次日朝首脳会談、第三回六者協議を読み解く」

● 沖縄・辺野古の闘いに連帯して毎週月曜日の防衛庁正門前の抗議・申しいれ行動

● 書評  /  あえて「郵政民営化」に反対する

● 複眼単眼  /  自民党がめざす憲法の素顔



参院選・深刻な打撃を受けた自民党

        
小泉政権を追いつめ打倒しよう!

 参院選では、自民党は目標の五十一議席を下回り、獲得議席数で民主党に及ばないという結果となり、小泉政権は厳しい事態に直面し、九月には党・政府の改造が行われることになった。今後、躍進した民主党など野党の国会での小泉政治への批判の高まり、与党内の軋轢の激化、自民党内の反小泉勢力の活性化、それらとあいまったイラク反戦運動、改憲阻止の大きなうねりによって、小泉反動政権を追いつめ、孤立させて、打ち倒すために大衆運動の大きな統一と前進をかち取って行かなければならない。

 自民党は、「三年間の小泉政治の信任を問う」として、小泉改革の実績を争点に掲げて選挙戦に臨んだが、この自民党敗北は年金、自衛隊のイラク派兵、そして小泉自身の傲慢不遜な態度に対する大衆的批判のあらわれである。
 三年にわたる小泉政治は、「自民党をぶっ壊す」というポーズをとりながら、新自由主義的な規制緩和・構造改革で、企業倒産、失業、地方経済の破壊など痛みを労働者・勤労大衆に押しつけた。その反面、大金融機関救済のためには巨額の税金の投入などを行い、そのなかで年間利潤一兆円をあげるトヨタ自動車など大企業はかつてない繁栄を謳歌している。そして戦争のできる国つくりの有事法制、自衛隊のイラク派兵、多国籍軍への参加を強行し、九条を軸とする憲法改悪を具体化しようとしている。小泉政権は、異常な「小泉人気」に支えられて発足した。それから三年、小泉政治の本質に対する大衆的な認識は深まってきた。小泉は、自民党政治を否定するものではなく、そのもっとも反動的なものを極端化したものであり、それをさまざまな大衆操作技術にもとづいて欺瞞のオブラートに包んだものである。小泉は、選挙直前になって自民党に対する支持の低迷が明らかになるや政権与党である地位をフルに使った。小泉自身の再訪朝と拉致家族の帰国、曽我さん家族の再会、社会保険庁の「改革」などなど矢継ぎ早の政策は、小泉政権の危機感の大きさを示すとともに、大衆的批判に政策論争によって堂々と答えるのではなく、ただただ「サプライズ」の連発によって乗り切ろうとする姑息な政治手法であった。マスコミを駆使しての全力をあげた欺瞞的操作にもかかわらず、小泉自民党は敗北した。かつての「小泉人気」、「安倍人気」は色あせたものとなったのである。
 民主党は議席を増やしたが、共産党は惨敗、社民党は現状維持と参院での憲法改悪に反対する勢力は減少した。たしかに自民、公明の与党は非改選議席と合わせて参院での過半数を上回る議席を確保しているし、小泉は引き続き政権を担当すると表明している。だが、小泉政権の求心力の低下と政局の混乱は必至である。
 自民党・公明党の与党体制は継続することとなった。公明党の獲得議席が堅調であり、また自民党への公明党・創価学会の支援・協力が大きかったことによって与党内での公明党の発言力は強まるだろう。しかし、自民党と公明党では、憲法、教育基本法、安保政策などの重要課題においてかなりの違いがある。
 民主党は、菅・小沢などの年金の未納問題をめぐる混乱の末、岡田を代表に選出し、年金法の白紙還元と自衛隊の多国籍軍参加問題を軸にして選挙戦に臨んだ。これらは、自民党に対する大衆的批判を吸収するものとなった。しかし、年金制度の一元化や年金目的消費税増税などがどういうものかあいまいなままである。いくつかの政治潮流が合流して結成された民主党は党内にさまざまな意見が存在する。安保・自衛隊政策、憲法問題などでは自民党と同じ、ないしそれよりも右の主張を行う者が少なくないことは周知の事実だ。財界ともアメリカとも話の出きる政権交代可能な二大「保守」政党のひとつとしての立場を明確にするにつれて、民主党総体としての右傾化とそれに反発する勢力の違いが出てくる可能性がある。しかし、民主党は有事法制に賛成しながらも自民党から政権を奪取するために、イラク戦争での対米追従や自衛隊の多国籍軍参加にも批判的な立場を保っている。
 改選議席一五の共産党は選挙区で全敗し、比例で四名となり大きく後退した。共産党は党大会で綱領・路線を大幅にソフト化し、そのことによって支持の挽回をはかったが、この方針はまったく成功していない。参院選での歴史的大敗北は共産党に深刻な総括を強いているが、この党が、この間大衆運動の局面で一定程度示しはじめた統一の傾向を強めて行くのか、それとも自党議席第一のセクト主義的議会主義に純化して行くのか注目されるところである。
 改選議席二の社民党は福島瑞穂党首の再選など現状を維持した。逆風の中で健闘した。社民党にはこれを再建の基礎として、民主党への合流を拒否し、古い体質を克服して、市民運動などとの連携を強めることが求められている。
 小泉政治への批判は着実に高まってきている。それを象徴的にしめしたのが、沖縄選挙区における糸数慶子さんの勝利である。糸数さんは、民主党、共産党、社民党をはじめ新社会党や多くの市民団体が支援し、公明党の推薦をうけた自民党候補に大差をつけて打ち勝った。
 自民党は二〇〇五年に、民主党も二〇〇六年には新憲法草案をだす。次期の衆院選では、憲法問題が最大の争点になる。憲法改正発議には、国会議員の三分の二の賛成が要件だ。自民党も民主党も憲法を変えると言っているが、九条をはじめいまのところかなりの違いがあり、改憲手続きを定める国民投票法の制定についても同じではない。
 参院選で状況はかなりの変化を見せている。小泉政権は強気の発言を続けているが、実際には弱体化が見られる。残念なことに反改憲派の議員も減少したが、われわれは、情勢の変化、敵内部の矛盾・意見対立を利用・拡大しながら有利な展望を切り開いて行かなければならない。

 憲法改悪阻止!
 イラクからの自衛隊の即時撤退!


WPN主催 VOTE for PEACE!

 
多国籍軍参加は違憲・違法だ! 平和のための投票で自衛隊撤退の実現を!

七月四日、渋谷で、一二〇〇人が結集してワールド・ピース・ナウ(WPN)主催による「多国籍軍参加は違憲・違法だ」「平和のための投票で自衛隊撤退の実現を」呼びかける行動が行われた。警察はこの日の行動に対してはじめから挑発的な態度で臨み、パレード途中で二人、解散地点で一人を不当に逮捕した。

 宮下公園で午後二時に始まった集会では、八木隆次さんが主催者を代表してあいさつ
 今日の行動は、第一に自衛隊の多国籍軍参加に反対し、一日も早いイラクからの撤退を要求し、第二に七月一一日の参院選投票日には戦争に協力する候補者を落選させ平和と憲法を守るの候補者を一人でも多く当選させること、第三に日本と韓国が連帯してアメリカの戦争・世界戦略に反対する運動を強めることだ。
 自衛隊がイラクに派兵されることは、その分だけアメリカ軍が最前線に投入されイラクの人びとを殺すことになっている。小泉はアメリカとともにあらゆる戦争に介入出来る体制をつくろうとしている。日本と韓国にはアメリカの巨大な軍事基地があり、地位協定でも共通の問題を抱えている。米軍基地撤去・戦争政策反対で日本と韓国の運動は力を合わせていこう。
 つづいて、FLEX LIFEが平和のコンサート。
 基地はいらない女たちの全国ネットワークの芦沢れい子さんが、辺野古における米軍新ヘリ基地建設着工のためのボーリング「調査」に反対して二ヶ月も闘われている座り込みについて報告し、支援を訴えた。
 漫画家の石坂啓さんが発言。
 日本は曲がり角を曲がりきってしまった。小泉は大変なことをやってしまったわけで、本当に心配だ。小泉は変人ということで出てきたが、本当に世の中を変にしてしまった。
 イラクで人質事件が起きたときに、小泉は「危険なところへいったから」こうしたことになったと言った。ところがアメリカについていって自衛隊を危険なところに送った。
 いまの六〇歳以下の人は戦争を知らない。だからそれ以上の年齢の人には長生きをしてもらって戦争についてもっと喋ってもらいたい。そして出生率がさがっているが、これは当然のことだ。政治家たちに言いたい。子どもを生んで欲しければ、年金で不安にしないで下さい、戦争を止めて下さい、と。
 つづいて、WPN実行委員の高田健さんが、参院選立候補者に対するアンケート調査の結果について発表した。
 当日の行動に参加予定だった韓国民主労働党国会議員イ・ヨンスンさんは、イラクでの金鮮一さんの拘束・殺害と韓国政府の第二次イラク派兵政策反対行動の取り組みために来日が出来なくなったが、メッセージが紹介された(別掲)。
 またバグダットからジャーナリストの志葉玲さんからのメッセージが送られてきた(以下要旨)。
 ……私はサマワで自衛隊の活動を取材しましたが、給水活動は宿営地の近くの村々にすら、ロクに水を配ることができず、付近の住民は今も泥水を飲んで病気になっています。学校の修復も、地元業者に丸投げで、しかも業者は手抜き工事を行っています。イラク戦争の空爆で破壊された学校や民家は今も放置されています。その一方で、自衛隊派遣がアメリカへの協力とみなされ、イラク各地で反日感情が高まり、本当にイラク復興に貢献できるはずNGOや国連関係の援助機関、企業などの日本人のスタッフが現地で活動することは大変困難な状況となってしまいました。……いつまで、私たちは「国民の代表」を名乗る人々の、破滅的な暴走につきあわなくてはならないのでしょうか。そろそろ、こんな馬鹿げたことは終わらせましょう。世界も日本も、きっと今より良くなるはずです。私たちには、より良い未来を選択する自由がある。今度の日曜日に投票にいくこと。それだけでも、とても大きな意味があるのです。VOTE for PEACE! 平和のための投票に行きましょう。

巨大なピースフラッグを先頭にパレードに出発。
 「自衛隊のイラクからの撤退」「自衛隊多国籍軍参加は憲法違反だ」などのシュプレヒコールをあげながら、街行く人びとに平和のための投票をアピールした。この日、警察は指揮官車からいろいろとパレードに干渉したり、プラスチックの楯を構えて、圧力をくわえ、三人を逮捕した。七月六日にはWPNの連絡先となっている、許すな!憲法改悪・市民連絡会事務所と被逮捕者の自宅にガサ入れを行うなど不当な弾圧を続けた。

 三人をただちに釈放せよ!
 自衛隊の多国籍軍参加反対!
 自衛隊は即時イラクから撤退せよ!

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韓国民主労働党国会議員からの連帯メッセージ

 皆さん、アンニョンハシムニカ。

 私は韓国の進歩的な政党である「民主労働党」国会議員のイ・ヨンスンです。ここにお集まりになった皆さんに心から連帯の挨拶を送ります。
 現在韓国ではイラクでの人質殺害事件を機に、イラク派兵反対運動が大きく行われています。
 今回皆さんに直接お会いして韓国の状況をお話しする予定でしたが、お約束を守れずに本当に申し訳ありませんでした。再度お詫びの言葉を申し上げます。
 今、平和な世界を目指す人類の願いは、米国の覇権主義によって踏みにじられています。世界の制覇を狙う米国の侵略戦争に自国の軍隊を送り込むことは、人類に対する犯罪です。これは必ず撤回されなければなりません。
 また、東北アジアの平和を脅かす米国の軍事同盟や朝鮮半島に対する政策も、必ず修正されるべきです。
 私は韓国の民主労働党の党員みんなの心を込めて、ワールドピースナウの集会に参加された皆さんのイラク反戦と自衛隊撤退のための闘いに敬意を表します。これからも、東北アジアと世界平和のために共に手を固く結んで頑張りましょう。カムサハムニダ。

二〇〇四年七月四日
 韓国ソウルにて
 民主労働党国会議員団、イ・ヨンスン


 WPN実行委員会の記者会見

   
 「7・4ピースパレード弾圧事件」について

 七月一三日、衆院議員会館で「7・4渋谷ピースパレード弾圧事件」についての記者会見が行われ、多勢の報道関係者が参加した。
 七月四日、渋谷でWORLD PEACE NOW実行委員会の主催による「VOTE for PEACE 平和のための投票で自衛隊撤退の実現を 多国籍軍参加は違憲・違法だ 7・4渋谷」行動が行われた。集会後のピースパレードで警察は参加者三人を不当逮捕し、六日にはWPNの参加団体のひとつである「許すな!憲法改悪・市民連絡会」や被逮捕者の自宅などに家宅捜索を行った。こうした動きは反戦運動のひろがりにたいする妨害・弾圧であり、断じて許すことはできない。
 はじめに、WPN実行委員会の高田健さんが経過報告をおこなった。
 WPNは七月七日の夜に「声明・ピースパレードに参加した三人の仲間の逮捕に抗議します」への賛同を呼びかけた。一二日までの五日間で反戦運動をはじめ環境その他の四七三団体から賛同が寄せられた。
 WPNは五一団体が参加して昨年からイラク反戦をはじめ平和の活動を行ってきた。七月四日には渋谷で参院選で平和のための投票をよびかける行動を行った。当日ははじめから警察の動きは異常に威圧的だった。警察は隊列をつくって危険物の検査と称して集会前から会場の宮下公園の中へ入り込んだが抗議して止めさせた。入り口での検問や会場に隣接する橋の上や付近の路上から参加者の写真撮影も抗議の申し入れで止めさせた。パレードでも機動隊の指揮官車が前につき、いろいろ勝手なことをアナウンスしていたが、パレードは停止して警察の不当な行為を中止させた。
 途中、パレードを楯で押しまくる警官に抗議したひとりが逮捕され、助けようとしたもうひとりも逮捕された。パレードをストップして抗議した。渋谷駅周辺を一周して宮下公園に戻り、不当逮捕のことなどで解散集会を開こうとしていたとき、警察のやり方に抗議した人が逮捕され、多数の警官からなぐる、蹴る、路上を引きずられるなどの暴行を受けた。以上が当日のおおまかな経過だが、このように警察の警備は異常なものだった。
 六日には家宅捜索がおこなわれた。市民連絡会に一〇人の警察官が入り込み一時間半にわたって捜索しビラなどを押収していった。事務所の周辺にも十数名の警官が配置され、関係のない通行人も通らせないというものものしさだった。
 非暴力の原則をかかげるWPNの集会は平和的なもので、はじめて反戦の行動に参加する人が多いが、今回の警察のやり方は、反戦運動、平和運動に加わってくる人に恐怖心を起こさせるものだ。いま、立川自衛隊官舎にたいする反戦ビラ入れ弾圧などによって、さまざまな表現を萎縮させ、われわれの言論表現の自由を狭めようとする動きがある。われわれは、一日も早く三人を取り戻すとともに、断固としてこれまで通りの活動をしていくつもりだ。
 つづいて内田雅敏弁護士が、被逮捕者の接見や警察・検察への申し入れ・交渉などについて報告した。

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声明:
     
 ピースパレードに参加した三人の仲間の逮捕に抗議します

                    呼びかけ:WORLD PEACE NOW実行委員会

 七月四日、WORLD PEACE NOW実行委員会は、「VOTE for PEACE 平和のための投票で自衛隊撤退の実現を 多国籍軍参加は違憲・違法だ 7・4渋谷」を行いました。会場の東京・渋谷の宮下公園には、梅雨の最中にもかかわらず真夏の日差しが照りつける中を一二〇〇人の市民が集まりました。
 この日の行動は、イラクに派兵された自衛隊が米軍主導下の多国籍軍に横滑り的に参加することに反対するとともに、七月一一日の参院選投票日には、人びとの平和への意思を投票で示そう、と呼びかけるものでした。
 しかし、非暴力のピースパレードに対して、この日の警視庁機動隊と渋谷警察署の対応は、敵愾心をまるだしにした、異常なものでした。午後三時二〇分頃から始まったピースパレードに対して、警備の警察官は繰り返しピッタリと張りついて、「早く進め」などと介入し、楯を使って参加者を威圧するなどの挑発を繰り返しました。
 パレードが渋谷区役所前にさしかかる頃、警察官の執拗な介入に抗議した最後尾近くの二人が逮捕されました。渋谷を一周したパレードが解散地点の宮下公園に到着した時点でも、参加者に機動隊が襲いかかり、一人が暴行を受けて逮捕されました。
 この日のパレードは、いつものように非暴力のパレードでした。市民たちは、自分たちの意思を自由に表現する当然の権利を行使していただけでした。ところが三人の参加者が暴行され、逮捕されたのです。
 七月六日には、逮捕された三人の自宅や、WORLD PEACE NOW実行委員会の連絡先である「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の事務所が家宅捜索を受けました。
 私たちは、平和を求める市民の非暴力の行動を押しつぶす、こうした暴行・逮捕・家宅捜索に強く抗議します。自衛隊の海外派兵と戦争をする国家づくり、憲法改悪の動きがどんどん進む中で、市民の基本的人権が否定され、平和を主張する市民が「危険人物」扱いされています。この二月には、立川で自衛隊官舎のポストに「家族の皆さん。ともに考えましょう」とイラク派兵に反対するビラを入れた市民が令状逮捕・起訴され、七五日間も拘留されました。
 私たちは今回の暴行・逮捕に強く抗議し、逮捕された仲間の即時釈放を求めます。私たちは今後とも、私たちの市民としての当然な権利を臆することなく行使し、戦争に反対し、平和を作りだすための行動を大きく発展させていきます。全国の皆さん、平和のためにともにがんばりましょう。

二〇〇四年七月七日


 国労第72回定期全国大会(8月26〜27日)

     国鉄闘争の全面降伏の歴史的大会にするな!

 国労は七月一日、昨年末の最高裁判決および六月一八日のILO理事会における結社の自由委員会報告採択をうけて全国代表者会議を開いた。
 採択された「7・1アピール」は、全国代表者会議は、「JR不採用問題」について「これ以上の長期化は救済の実効性を失う」として「全機関が心をひとつにしてこの機になんとしても解決を図るという不退転の決意を固め」るとともに、「きたる八月二六〜二七日に開かれる第七二回定期全国大会を総団結・総決起する歴史的大会にすることも誓い合った」と言っている。
 鉄建公団訴訟原告団・国鉄闘争共闘会議の「声明」(六月二三日)は、ILOの報告にたいして「『四党合意』を評価しているようであり、解決策がその再来となりかねないことを懸念する」としながらも、報告が「『四党合意』に基づいたものを含む全ての当該労働者・組合に受け入れられる解決策が見いだされなかったことを遺憾に思う」としたことを「『四党合意』が解決策でなかったことを自認し、鉄建公団訴訟原告団を含む一〇四七名が受け入れられる解決策を見いだすべきことをしめしていること」、「最高裁が『国鉄清算事業団(鉄道建設運輸機構)は使用者責任を免れない』との判断を下したことに留意……」について「鉄建公団訴訟に理があることを示していること」、報告が「日本政府に対し、この問題解決のために……政治的・人道的見地の精神に立った話し合いを全ての関係当事者との間で推進するよう勧める」としたことを「政府も鉄建公団訴訟原告団を無視できず、一〇四七名と話し合わなければならないこと」と評価面もあげている。
 国労闘争団全国連絡会議は六月下旬に全国代表者会議がひらかれたがそこでは、@JR各社の採用を含む本人希望に基づく全員の雇用を確保すること、AJR各社に採用されていたならば得た賃金相当額を支払うこと、B厚生年金の回復など四項目を闘争団の解決要求として全体で確認した。
 「7・1アピール」にあるように国労本部は八月全国大会を、「歴史的大会」にすると言っている。国労OBの仲介で、左右両派の修復が進められているとの情報もある。しかし、この大会が闘争団の求める方向で「総団結・総決起の大会」となる可能性は高いとは言えない。鉄建公団訴訟原告団に対する生活援助金ストップ、権利停止などの査問委員会決定は是正される動きはない。
 八月国労大会での本部による闘争終結を許さない闘う態勢を早急につくり出さなければならないときだ。


郵政4・28処分撤回控訴審で東京高裁逆転完全勝利判決

                     
原告・池田実さんに聞く

 六月三〇日、郵政4・28処分撤回闘争は、東京高裁(江見弘武裁判長)で、逆転勝利の判決をかち取った。
 一九七八年、当時の郵政省は生産性向上運動(マル生運動)の名による合理化による人減らし労働強化を労働者に強いていた。全逓信労働組合(全逓)は組合員に対する差別政策に抗して、七九年賀業務をとばす越年闘争を指令し、全国の組合員はそれに基づき一〇〇〇万通余の郵便物を溜める闘いを展開した。七九年四月二八日、郵政省は現場で闘いぬいた青年部の組合員に対して、五八名(東京郵政局管内五五名)の大量懲戒免職処分をはじめ労働運動史上まれに見る報復処分を行ってきた。
 それ以来、処分撤回を求めて闘いが継続された。闘いの途中、全逓本部は労資協調右傾化路線に陥り、闘争を裏切りったが、処分から二五年、今日まで闘い続けた七人の原告・免職者(徳差清さん、神谷努さん、黒瀬英之さん、庄野光さん、斎藤昇さん、名古屋哲一さん、池田実さん)は全国の郵政労働者をはじめ多くの労働者・労働組合の支援を受けて闘いを堅持してきた。そして、七人の原告・免職者は、東京高裁で、解雇を有効とした第一審東京地裁の「原判決を取り消す」そして「昭和五四年四月二八日付でした懲戒免職処分が無効であることを確認する」という歴史的な判決をかちとった。この勝利判決の意義はきわめて大きい。原告の一人である池田実さんにお話をうかがった。(文責・編集部)


 全逓の指令に基づいて闘い懲戒免職という不当な処分をうけたのに、全逓は途中で闘争を放棄し、逆に闘いに敵対するようになっていきましたが……

 一九七五年のスト権奪還のストライキが敗北して以降、労働組合運動は大きく右へシフトしました。八〇年代の中ごろからは郵政の場合はクロネコヤマトとかとの業務競争で事業危機感がひろがります。この状況にあわせる郵政労使の協調関係をつくるために、九〇年ころに社会党の田辺誠(全逓出身)と自民党の金丸信(郵政族)が話し合い、4・28闘争が郵政労使関係の「のどもとに刺さった骨」ということで切り捨てようとしたわけです。
 その全逓は今年の大会で日本郵政公社労組(JPU)となりました。労働組合でありながら、公社総裁にコントロールされた第二労務部としての姿があきらかになってきています。郵政公社では、郵便・集配に長時間勤務が導入されるなどものすごい合理化が進められています。「高サービス」の名のもとに、その実は儲けの多いところへの業務の集中、国際化など、多くの利用者にはサービス低下になるようなことがもくろまれています。

地裁判決と高裁判決の違いはどのようなものでしょうか……

 一審の東京地裁判決は、簡単に言えば、動機はどうあれ業務を妨害した、だから処分は正当なものだということでした。しかし高裁判決は、労組としての闘いがあったということです。高裁判決は、「本件闘争については、それが、全逓の意思決定の下に実施され、郵便事業の大規模な阻害という重大な事業秩序違反があるにもかかわらず、いわば本件闘争の首謀者として、違法な争議行為の実施の意思決定への関与を理由に、公労法に基づく解雇又は国家公務員法に基づく懲戒免職を受けた労働組合の地区本部以上の組織の役職者が異常に少ない。一方、全逓の意思決定に従い、全逓から見れば忠実に、郵政省から見れば執拗に、争議行為を実施した五五名(当局の当初の判断によれば、一三〇数名)もの多数の者が、大半は、地方本部、地区本部又は支部はもとより、分会の役員でもなく、本件闘争の実施についての全逓の意思決定に参画したといい難いにもかかわらず、最も過酷な懲戒免職(相当)とされた」として、「本件闘争を理由として控訴人らに対してされた懲戒免職は、全逓の意思決定に従って違法な争議行為を実施した組合員に課されうる懲戒処分の選択及びその限界の決定につき、考慮すべき事実を考慮せず、社会通念に照らして著しく不合理な結果をもたらし、裁量権の行使を誤った重大明白な暇疵があり、取消しを免れず、また、無効というべきである」としたわけです。
 この判決をでてから直ぐに、私は出身郵便局へいってただちに仕事をさせろと要求しました。

 高裁判決の当日の状況についてお話下さい……


 一審での判決がひどかったものですから、高裁でもよい判決がでないのではないかという雰囲気はたしかにありました。でも、高裁ではなにか違うなという感じをもちました。それは江見裁判長が郵政側の処分について疑問を出したり、もし地位確認がなされた場合は省としてどうするのかなどという発言があったからです。弁護士もリップサービスかもしれないが変なことをいうなあと言っていました。私自身は、絶対に勝利するとまでは考えませんでしたが、ひょっとしたらという感じで判決を待っていたわけです。
 高裁で判決出された直後は、私たち原告も傍聴席も一体となってこれまでつもりにつもった感情が爆発したという大変な状況になりました。もう晴天の霹靂(へきれき)というか奇跡が起こったというか、思ってもみない大逆転勝利判決だったわけですから。

 この判決の意義についてどう考えていますでしょうか……


 まだ判決の意義についてあまり大局的には考えていないのですが、お祝いの言葉やら大きな反響が寄せられています。国労の組合員や闘争団をはじめ全国の労働者・労働組合・争議団などの人びとが我がことのようによろんでくれています。また、フランスやニュージーランドの郵便労働者などからもたよりが到着しています。
 今回の判決をみれば、闘い続けること以外には勝利できないということをつくづく感じさせられました。日本の労働運動はだめだだめだといわれ、私もそう思いますし、国鉄闘争などそれぞれ厳しい状況にありますが、今回のことはひとつの希望になっていると思います。
 一四日が上告の期限ですが、国に最高裁への上告を断念させて判決を確定させ、職場に復帰することを要求して闘うとともに、勝利報告集会などで高裁逆転勝利判決の意義を確認していきたいと思っています。

 ありがとうございました……


日韓民衆連帯全国ネットワーク主催シンポジウム

    
 「第二次日朝首脳会談、第三回六者協議を読み解く」

 七月七日、文京区民センターで、日韓民衆連帯全国ネットワークの主催で「7・7緊急シンポジウム 当面の朝鮮半島情勢をめぐって―第二次日朝首脳会談、第三回六者協議を読み解く―」が開かれた。
 「日韓分析」編集・日韓ネット共同代表の北川広和さんが「第二次日朝首脳会談の分析・評価〜小泉再訪朝の狙いはどこに」と題して報告。
 きょうの朝日社説は「北朝鮮、金総書記の小泉頼み」と書いている。朝日だけでなく日本のマスコミは、日朝国交でも北朝鮮の狙いは指摘するけれど、日本の狙いについては触れていない。マスコミや評論家は、小泉は、年金未納の追及から逃れるため、参院選を有利に展開するため、サミットで存在感を示すため、後世に名を残すためとか言っているが、これは表面的・個人的理由にすぎない。
 日本が日朝国交正常化を急ぐ理由には政治的、経済的なものがある。政治的には戦後処理を完成させることだ。日朝関係は日本に唯一残された戦後処理だ。そしてそれを実現させることは日本が帝国主義としての自立を意味する。小泉による日朝国交正常化と戦争国家化は矛盾しない。経済的な狙いは次のようなものだ。正常化後には日本から経済協力金が朝鮮に供与される。それで日本の商品を買うとか日本のゼネコンが朝鮮で工場・インフラ建設などを行うことによって還流させること、南北縦断交通網やエネルギー・ラインを利用してロシアからの天然ガスなどの資源を日本に運ぶことだ。また、現在アジアでは中国の影響力が急速に拡大しているが、それに対抗して、日本が主導権をもつ東アジア経済圏を形成するためだ。こうしたことは、日本財界の意向を反映している。五月の小泉再訪朝について、日本経団連の奥田碩会長は「拉致被害者の帰国という前進がみられたことは良かった」としたうえで「国交正常化に向けた交渉に全力あげて欲しい」と注文をつけている。
 日本が国交回復を急ぐには外的要因もある。それは南北朝鮮の統一気運のもりあがりだ。二〇〇〇年六月には南北首脳会談があり、それで二〇〇二年九月のはじめての小泉訪朝・日朝首脳会談があり、今年四月の韓国総選挙でいっそう統一への気運がもりあがり、五月の小泉再訪朝があったという様なことだ。
 私たちは、日本政府・財界の日朝国交正常化の目論見を許してはならない。あくまでも謝罪と償いを基本に正常化交渉をおこなうように政府などに働きかけていく必要がある。
 つづいて日韓ネット共同代表の渡辺健樹さんが「第三回六者協議の分析評価と米軍再編の動き」と題して報告。
 さきごろ開かれた第三回六者協議では一定の変化・進展があった。アメリカの基本姿勢は変わらないが、安全保障、エネルギー支援、正常化交渉などでの段階提案など一定の変化を示した。日本政府も、拉致問題と核の切り離し、エネルギー支援への参加表明、小泉再訪朝など日朝正常化への努力が見られる。
 六者協議での議長声明の骨子は次のようなものだった。@朝鮮半島の非核化という目標に向けた(六者の)コミットメントを再確認し、その目標に向けた第一段階の措置を可能な限り早期にとる必要性を強調、A六者は、核問題の平和解決を求めるのに際し、「言葉対言葉」と「行動対行動」という段階的プロセスをとることの必要性を強調、Bこの文脈で、六者すべての提案、示唆・提言が提示された。六者間で相違が残っているが、今後の作業の上で共通要素があることに留意。共通基盤を拡大し、相違を縮小するための議論が必要、C第四回六者協議を九月末までに開催で合意。作業部会に対し、非核化の第一段階の措置の範囲、期間および検証、並びに第一段階の対応措置を定め、適当な場合第四回協議に提言。可能な限り早期に部会を持つ権限を付与。
 これから六者協議の構図が見えてくる。以前は<南北中口4対2米日>という関係だったものが<南北中口4対日1対米1>というものに変わってきている。こうした事態は、ブッシュがイラクと大統領選に足を取られていること、韓国の社会と政治で対米対北姿勢で地殻変動が起きていること、東アジアの経済統合の加速化などがもたらしたものだ。
 北朝鮮でも大きな変化が起こっている。金正日政権は改革開放政策を基本路線にした。市場原理を利用して経済建設を行っている。こうした中で小泉の訪朝が行われた。今後、依然として予断は許さないものの、平和解決への展望もありうると思う。
 在韓米軍の一二〇〇〇人削減や配置転換は、アメリカの軍事戦略における日本の位置を高めた。アーミテージ・リポートでは日米同盟を米英同盟並みにするとされ、日本をランク1の「戦力展開拠点(PPH)」に格上げし、小泉政権は有事法体制の完成と集団自衛権行使へむけて進み、日米共同作戦態勢を本格化させようとしている。
 「異議あり!日韓自由貿易協定」キャンペーンの土松克典さんが「当面の朝鮮半島情勢をめぐって」と題して報告。
 日本政府は、WTOなど国際機関を中心とする交渉で二国間協定(FTA)を重点とする方式でグローバリゼーションに対処しようとしている。昨年のメキシコ・カンクンでのWTO交渉の決裂などから多国間での協議はやりづらいと思っているからだ。
 日本政府のFTAの状況は、日本・シンガポール新時代経済連携協定(〇二年一一月)、メキシコ(〇四年四月合意)、現在交渉中のものが韓国、マレーシア、フィリピンなどであり、検討中のものはオーストラリア、インドネシア、ASEANなどがある。しかし、日本だけを見ていると全体像を見失う。東アジアでの動きは、ASEAN+3(中、韓、日)を構成一三カ国が対等な立場で参加する東アジア首脳会議にする構想など予想以上に早いテンポで進んでいる。朝鮮半島でも、南北をつなぐ鉄道網、サハリンのガス・パイプラインの供給網建設などの動きがある。韓国で世界の巨大企業の代表者が集まる世界経済フォーラム東アジア会議が開かれ、参加団は朝鮮政府に開城工業団地の訪問要請を出す(朝鮮政府は拒絶)など朝鮮半島の市場化か狙われている。
 さいごに大畑龍次さんが、韓国の総選挙後の状況について紹介した。
 総選挙後の韓国政局の争点は、国家保安法の改廃問題と第二次イラク派兵だ。北を敵とする国家保安法については議員の九〇%が撤廃ないし修正に賛成している。これは南北間の関係改善を反映したもので、互い宣伝放送の禁止、オリンピックでの同時入場や、野党ハンナラ党の議員二五人の金剛山訪問がある。
 イラク第二次派兵ではウリ党六七人、民主労働党一〇人などが再検討を求めていたが、イラクでの金鮮一さんの拉致・殺害を契機に国論二分状況になっている。国民の過半数は派兵反対だが、与党ウリ党は派兵支持に傾いている。しかし、KALやアシアナ航空など六労組でつくる航空連帯や民主労働党などは派兵反対、兵員輸送阻止をもとめて座り込み闘争を行っている。


書評

 「生活者の視点に立てば、郵政民営化という視点はでてこない」〜民営化問題を考えるヒントを与えるくれる一冊

   あえて「郵政民営化」に反対する

              (日本評論社) 1600円

 著者は、滝川好夫氏。一九五三年生まれ。現在、神戸大学大学院経済学研究科教授。専攻は金融経済論。著作には、「入門 新しい金融論」「ケインズなら日本経済をどう再生する」「EViews計量経済学入門」など多数ある。

 本書は、小泉構造改革下の郵政民営化が人びとの暮らしにどうかかわってくるのかをテーマに、三部、九章から論を展開している。

 第1部「小泉政権は、消費者政策を大きく変えようとしています。」では、小泉竹中構造改革で、貯蓄残高を減らしている世帯を増やし、ハイリターン商品を求めようとして金融トラブルに巻き込まれる世帯が増えていることを報告している。金融機関に対する指導もこれまでの事前指導型から事後監視型へ変わってきており、小泉構造改革の下では、消費者の権利は保護されるべきものではなく消費者自らが実現に努めるべきものとの位置づけにとされていることに警鐘を発している。

 第2部、「郵政民営化は必要か」では、郵政事業を民営化してもユニバーサルサービスが維持できるのかと疑問を呈し、郵政民営化は、地方人に痛みを押しつけるものであり満場一致は成立せず、そのために小泉竹中構造改革は、郵政民営化を独裁的手法で強行しようとしている、としている。

 第3部「郵政事業をどう運営する」がこの本の核心的部分である。とりわけ、第9章「生活者の視点から郵政事業はかくあるべきです」の中で著者は、郵政事業への運営についての具体的な提案を随所に展開している。
「行政による保護」から「新しい公による保護へ」の中では、「創造的市民社会」の実現を訴えている。
 この「創造的市民社会」を実現するためには、次の視点で一人ひとりの市民の自立を支えることが必要だとしている。
 @わが国や地域の歴史・文化・伝統の上に立って、自らの生き方を主体的に選ぶことができ、自らの行動に責任をもつこと。
 Aさまざまな生き方、価値観を受容しつつ、必要な人には適切な社会的支援が提供される、支え合い共生する社会の実現を図ること。
 B「公」を担うのは行政という考え方ではなく、支え合い、共に生きるための領域を社会全体で担うという新しい「公」の概念に基づき、行政がコーディネーターの役割を果たしつつ、住民、事業者等のさまざまな主体との協働で課題を解決するシステムを構築すること。
 二一世紀の消費者保護は、この新しい「公」による保護であり、郵便局はこの「新しい公」の担い手たるべきであると結論づけている。この視点は、郵政全労協(現在の郵政労働者ユニオン)の郵政民営化問題での政策パンフと共通する視点の提起と言える。
 その上で、更に具体的に消費者(利用者)の「参画と協働」が重要であり、日本郵政公社を規制するために「独立の規制機関」も提案している。
 また、「郵便貯金」を地域金融機関、信用金庫や信用組合と提携し、地域経済へ協調融資する仕組みを提案していることも注目される。
 本書は、郵政民営化を阻止し、地域利用者や国民に真に開かれた郵政事業を確立する運動に役立つ一冊である。(矢吹 徹)


沖縄・辺野古の闘いに連帯して毎週月曜日の防衛庁正門前の抗議・申しいれ行動

 沖縄・辺野古の闘いに連帯して、毎週月曜日の午後六時半から、防衛庁正門前で抗議・申し入れ行動(よびかけ 「辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会」)が行われている。
 七月五日は、防衛庁前で集会、シュプレヒコールをおこない、代表して、「うちなんちゅの怒りととともに! 三多摩市民の会」が抗議文を石破茂防衛庁長官、山中昭栄防衛施設庁長官に出した。

 うちなんちゅの怒りととともに! 三多摩市民の会の抗議文(要旨)

 辺野古への海上基地建設のため、ボーリング調査が防衛施設局により強行されようとしている。これを許さない「命を守る会」をはじめヘリ基地反対協議会や平和市民運絡会による座り込みで作業が中断されてすでに二ヶ月以上になる。日本政府は依然として調査をあきらめず、土日を除くほとんど連日に押しかけ、調査再開を強行しようとしている。私たちは、日本政府がボーリング調査を完全に中止し、この基地建設そのものを白紙撤回することを強く要求する。
 ……沖縄の海兵隊などからもイラクヘの派兵が行われている。私たちは、沖縄の基地がイラク侵略の拠点として使われていることにも強く反対する。また、占領軍への協力にしかならない自衛隊のイラク派兵も直ちにやめるべきである。
 私たちはこれ以上、沖縄が戦争の拠点として使われることに断固反対する。新たな基地建設、基地強化につながる辺野古でのボーリシグ調査を直ちに日本政府・防衛庁・防衛施設庁は中止し、基地建設計函そのものを白紙撤回せよ。

 一二日の行動では、「明治大学駿台文学会」が代表して抗議文を読み上げた。

 明治大学駿台文学会の抗議文
(要旨)

 先目の参議院選挙において、沖縄では米軍基地の縮小・撤去を掲げる糸数慶子氏が当選した。この結果は、普天間基地の早期全面返還、辺野古への新基地建設反対という沖縄の人びとの声が反映されたものに他ならない。日本政府・防衛施設局は沖縄の人びとの声を聞き、辺野古におけるボーリング調査の中止、新基地建設の白紙撤回を決断するべきである。
 ……現在、沖縄には在日米軍基地の七五%が集中している。それは、「本土」―沖縄の支配―被支配の歴史的な関係が今なお存続していることをあらわすものに他ならない。「琉球処分」以後の神縄に対する「本土」による過酷な支配、その帰結としての沖縄戦、敗戦後の米軍政、「復帰」後、日米安保体制下の米軍基地の維持・強化。同時に私たち「本土」の人間が、このような日本政府を事実において容認し続けてきたことを何度でもとらえかえさなければならないと考える。私たちは「本土」による沖縄に対する差別を許さず、沖縄から米軍基地を撤去し、あらゆる戦争を許さない行動こそを継続していかなければならない。私たちは、辺野古の座り込み行動に連帯するために、この間薪基地建設を許さないという主旨で情宣活動をおこない、支援カンパを呼びかけてきた。私たちは今後も座り込みに連帯し、沖縄からすべての米軍基地が撤去されるまで闘っていく。
 この間の米軍再編の動きは、在日米軍の役割を「最重要」と位置付けている。イラク戦争においては沖縄の基地から米軍が出撃し、いまだにイラク民衆を抑圧し続けている。今後もアメリカ・ブッシュ政権が掲げる「対テロ」戦争において沖縄を中心とする在日米軍・海兵隊が「重要」な位置を占めていくことは確実である。辺野古への新基地建設は、「対テロ」と称した侵略戦争を視野にいれた海兵隊の基地の強化に他ならない。新基地建設の事実上の着工であるボーリング調査は断じて認めるわけにはいかない。
 私たちは沖縄の人びととともに、沖縄からそして日本から米軍基地を撤去するまで闘い続ける。防衛庁・防衛施設庁に対して、辺野古における新基地建設のためのボーリング調査を即刻中止し、普天間基地の早期全面返還を実現し、新基地建設計画の白紙撤回を要求する。


複眼単眼

  
自民党がめざす憲法の素顔

 今年六月、自民党政務調査会が作成し所属国会議員に配布した「憲法改正のポイント〜憲法改正に向けての主な論点」というA5版一〇頁ほどの小さなパンフレットがある。自民党の各議員が演説草稿や宣伝物を作るときの政策アンチョコ(虎の巻)のようなものだ。
 その書き出しの見出しには「自民党がつくる憲法は、『国民しあわせ憲法』です」とある。本文にも「私たちがめざす、この新しい憲法を一言で表すとすれば、それは国民の、国民による『国民しあわせ憲法』ということです」と書いてある。ちょっとこちらが気恥ずかしくなるようなキャッチフレーズだがよく読むと、自民党は「国民のしあわせ」をどう考えているのかがわかる。
 曰く「国民の誰もが自ら誇りにし、国際社会から尊敬される『品格ある国家』をめざす」「人間の本質である社会性が個人の尊厳を支える『器』であることを踏まえて、家族や共同体が、『公共』の基本をなすものとして位置づけられた憲法」「歴史、伝統、文化に根ざした我が国固有の価値(すなわち『国柄』)や、日本人が元来有してきた道徳心など健全な常識を大切にし、同時に、日本国、日本人のアイディンテテイを憲法のなかに見いだし、憲法を通じて、国民のなかに自然と『愛国心』が芽生えてくるような……憲法にしなければならない」というのだ。
 「品格ある国家」「個人の尊厳の基本は社会性」「家族・共同体、公共性」「歴史伝統文化など国固有の価値」、そして「愛国心」、これでは「国民」は「不幸せ」になるのではないだろうか。
 そして「前文」は「憲法の顔」であり、現行憲法前文は全文書き改める、表現も「平易で、わかりやすく、美しい日本語」を用いるという。さてさて、ここに引用した「国民しあわせ憲法」の説明は「平易で、わかりやすく、美しい日本語」でしょうか。意味不明というか、カビの生えた概念というか、そして究極には「愛国心」だものね。なにをか言わんやだ。
 次の「『現実の平和』を創造し、非常事態に備える」の項では、「和を尊び、命を慈しむ我が国古来の伝統・文化を基本にすえ、我が国民の生命と財産を守り、より積極的に世界の人びとの生命・人権を尊重するという立場から、自衛のための戦力保持や国際協力(国際貢献)に関する規定の創設」を主張している。
 そして、ごていねいにこうもいう。「現在は、国際テロリズムや北朝鮮の拉致事件などがあり、『憲法9条を世界にPRすれば平和になる』というような状況ではないのです。国及び国民の安全が確保できるような憲法9条の改正をする必要があるのです」と。
 では言わせてもらおう。イラクに自衛隊が派兵されてから、日本のNGOが危険になった。そして日本ではテロの危険がどこでも叫ばれ、監視社会になった。朝鮮半島の平和のために韓国は太陽政策をとり、緊張緩和をめざしている。非武装の国、コスタリカのねばり強い外交努力が平和を作っていること。沖縄戦では日本軍は住民を守らなかった。(T)