人民新報 ・ 第1148 号<統合241(2004年11月5日)
  
                  目次

● 自衛隊はイラクから撤兵せよ! 香田さん殺害の責任はブッシュと小泉にある

● 10・31団結まつり  一万人以上が参加して賑やかに

● 普天間基地の無条件即時返還・辺野古移設の白紙撤回  沖縄県民会議が東京行動

● 5・3憲法集会実行委の主催でシンポ  憲法改悪と国民投票法案に反対

● 「朝鮮侵略100年、朝鮮解放・分断60年、日韓条約から40年を問う―2005年運動」によるシンポジウム

● パンフレット紹介 / 槌田敦「原爆投下の謎と日本核武装の疑惑」

● KODAMA  /  「ニート」という言葉

● 複眼単眼  /  サマワ陸自宿営地にロケット砲弾が着弾  WPNの警告




自衛隊はイラクから撤兵せよ!

  
 香田さん殺害の責任はブッシュと小泉にある

 一〇月三一日未明(日本時間)、イラク・バグダッドで香田証生さんの遺体が発見された。遺体は頭部が切断され、アメリカ国旗で覆われていた。これはアメリカの戦争を担う日本への警告だと言われている。
 香田さんは、「イラクの聖戦アルカイダ組織」を名乗る武装集団に拘束された。二七日未明には、中東の衛星放送アルジャジーが、四八時間以内にイラクから自衛隊を撤退させるよう要求し応じなければ香田さんを殺害すると警告する武装集団のビデオを放映した。
 これを受けて小泉首相は即座に「テロには屈しない、自衛隊はイラクから撤退させない」と断言した。

連日の官邸前行動

 香田さん拘束のニュースが入った二七日、WORLD PEACE NOW実行委員会は、首相官邸前での行動を呼びかけた。当日午後からの呼びかけにもかかわらず、二〇〇人をこす人びとが集まった(二八、二九日にも首相官邸への行動が取り組まれ、それぞれ数百人の人びとが参加した)。衆議院議員面会所での集会で、司会のWPN実行委員の高田健さんが発言。
 四八時間と残された時間はあまりにも少ない。今日の行動は、緊急に呼びかけたものだが多く人が心配して集まってくれた。
 拘束した勢力は、香田さんのことを自衛隊の関係者だとしているが、これは誤解だ。このことをアピールし、事実がイラクにも届くようにしたい。
 今回の事態は、高遠さんたちが拘束された四月の時とは大きく違う。拘束している側は外国から来た勢力だと思われ、四月の時の地元の抵抗勢力とは違うようだ。四月には国際的な連絡網ができて、かなり早くから「人質」解放の連絡を得ることができた。今回はそうしたことができていない。かなり厳しいことも予想される。
 日本政府は、拘束された人の自己責任をあれこれ言って自らの責任を回避し解放にむけてなにもしない。それどころか、小泉首相がただちに「自衛隊は撤退させない」と発言して、香田くんの生命を危険な状況に追い込んだ。そもそも香田くんが拘束された責任は小泉内閣にある。アメリカのイラク攻撃・占領に小泉内閣は積極的に加担し、サマワに自衛隊を派遣した。サマワは「戦闘地域ではない」ということにしてだ。しかし、サマワの自衛隊宿営地にも砲弾が撃ち込まれるようになってきている。今年の一二月には自衛隊のイラク派遣の期限が切れるが、小泉内閣はそれを延長させようとしている。派遣延長ではなく自衛隊を撤退させるべきだ。
 連日の議面集会には、民主党、社民党、共産党の多くの国会議員も参加し発言した。
 また、四月の「人質」解放のために活躍したピース・ボート、ATTAC・Japanなども発言した。ピース・ボートは、今回も各種の国際連絡を行うとともに、イラク・中東の人びとに真実を伝え香田さんの解放を訴えるためにメンバーをアルジャジーラ(カタール・ドーハ)に派遣した。
 官邸前の行動では、香田さんは自衛隊とは無関係、自衛隊のイラクからの撤退、小泉政権に屈しない、人命尊重、また市民の力で解放を実現しよう、などと日本語、英語、アラビア語で書かれた横断幕、プラカードが掲げられ、シュプレヒコールが繰り返された。
 官邸前行動を終了したあとも、駅頭での宣伝、インターネット、メールをつかった行動などが続けられた。

米の戦争を支える日本

 香田さんの殺害について、小泉首相は三一日に「無辜(むこ)の民間人の命を奪った行為は非道かつ卑劣極まりない」という声明を出し、一方で公明党大会のあいさつで「日本にふさわしい活動を継続していく」とイラク派兵の継続を明言した。
 小泉は自分の責任をまったく直視しようとはせず、香田さんの殺害の原因である自衛隊の派兵をあくまで継続させようとしている。
 今回の事件が示したものは、アメリカなどによるイラク占領が一段と困難な局面になっていると同時に、アメリカの戦争・占領の一環を担う日本に対する攻撃が強化されるようになってきていることだ。
 サマワの自衛隊宿営地を狙った砲撃も、今年の四月に宿営地が完成してから八回にもなっている。自衛隊のつくった日本とイラクの友好記念碑が爆破される事件(一〇月八日)も起きている。
 すでに、「非戦闘地域」のみでの自衛隊の活動を定めたイラク特措法からしても、派兵を続ける根拠はなくなっている。
 ブッシュ政権、ブレア政権、そして小泉政権さえも大量破壊兵器が存在しなかったことを認めた。いまやイラク戦争の正当性はまったくない。イラクにたいする不当な占領を直ちに停止し、自衛隊は撤退しなければならない。
 にもかかわらず、小泉は自衛隊駐留を延長し、その上に増員さえしようとしている。
 われわれは、香田さん殺害を許すことはできない。同時に、この不幸な事態を起こした原因であるアメリカの侵略戦争・占領支配と、これを支持し、加担してきた日本政府の責任を糾弾し、イラク反戦、自衛隊の撤退の闘いを断固として強めて行かなければならない。

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緊急声明

  
不幸な事態を招いた小泉内閣の責任を問い、自衛隊の即時撤退を要求します。

                          
WORLD PEACE NOW実行委員会

 日本政府によれば、本日、イラクで発見された遺体は香田証生さんであるとのことです。私たちは目下、これ以上に事態を確認するすべはありません。WORLD PEACE NOWは以下、緊急に声明します。
 もし香田さんが殺害されたことが事実であれば、これは、いかなる人びとのいかなる理由によるものであれ重大な犯罪行為です。私たちは心からの悲しみと怒りを込めて、この人道にもとる行為に抗議します。
 同時に、今回の不幸な事態を招いた最大の原因は小泉首相と日本政府による米英のイラク攻撃支持、そして自衛隊のイラク派兵にあることを強調しなければなりません。すでに明らかなように米軍などのイラク攻撃と軍事占領には正当性のかけらもなく、それに無批判に追従した小泉内閣の責任は重大です。
 イラクでは昨年三月の米英軍の攻撃以来、一〇万人を超える人びとが殺され、今日、戦闘はいっそう激化しています。今回はイラクに入った若者が遭遇した事件でしたが、香田さんが殺害されてしまったのは、アメリカと同盟を組み、自国の武装集団を派遣している日本の市民であるがゆえです。であるならば世界中のどこでも、いつでも、いまや私たち日本市民すべてが危険にさらされているのです。重ねて言いますが、小泉内閣の政治責任は極めて重大です。
 WPNは事件発生以来、首相官邸前での連日の抗議要請行動などを通じて、香田君の救出と自衛隊の撤退を主張し、彼の生命を救うため、できる限りの努力をしました。残念ながら、この願いは届きませんでした。こうした事態を絶対に繰り返してはなりません。
 私たちはいまこそ「殺すな、殺されるな」「イラクに平和を」の声を大きく拡げなくてはなりません。
 小泉首相は一二月一四日で期限切れとなる自衛隊のイラク派遣期間をさらに延長すると言明しました。信じがたいような発言です。私たちはいまこそ小泉内閣が自ら制定した「イラク復興支援特別措置法」にもとづき、自衛隊をイラクから撤退させるよう強く要求します。一二月一四日夕刻、WPNは東京・日比谷野外音楽堂でこのための集会を開催し、自衛隊撤退の世論のいっそうの結集をはかる予定です。
 私たちはこの悲しみと怒りを運動の継続の力に変え、あきらめずに行動をつづけます。

 二〇〇四年10月31日

 東京にて


10・31団結まつり

   
一万人以上が参加して賑やかに

 一〇月三一日、東京・亀戸中央公園で「国鉄労働者一〇四七名の解雇撤回!鉄建公団訴訟勝利!戦争と失業NO!10・31団結まつり」が開かれた。
 前日からの激しい雨、時折の雷鳴、稲光で足場も悪く、出足が心配されたが、昼過ぎからは完全に晴れ渡り、例年のように賑やかな「団結まつり」となった。
 メインステージでは、韓国やイラクからの海外ゲストのスピーチ、争議団の決意表明、歌・演奏など盛りだくさんなプログラムが進行した。
 閉会セレモニーの際には、鉄建公団訴訟原告団、全動労争議団、動労千葉争議団がそろって登壇し、決意表明を行った。
 鉄建公団訴訟団の酒井さんは、国鉄闘争は今日の天気のように晴に向かって進んで行きたい、現在、鉄建公団訴訟は大詰めを迎えている、国土交通省前座り込みや個別立証を闘うために全国から闘争団・家族が大勢上京する、そして一二月一日には国鉄闘争勝利のための大集会(日比谷野音)を成功させて行きたい、と述べた。
 全動労争議団の渡部さんは、昨年末の最高裁判決は旧国鉄・清算事業団にたいする一〇四七名解雇の責任を追及する闘いに可能性を開いた、全動労争議団も鉄建公団訴訟を決定した、いろいろな問題もあるが、近い将来に訴訟に立ち上がる、一〇四七名解雇の解決は一刻の猶予もできない、なんとしても勝利させていこう、と述べた。
 動労千葉争議団の中村さんは、闘争団・争議団が一体となって闘うことが重要だ、この闘いを郵政民営化、自治体合理化に反対する闘いと合流させ、労働者の反撃を実現して行こう、と述べた。
 最後に「団結まつりアピール」、「鉄建公団(鉄道運輸整備機構)に解決を求める決議」が確認された。

国鉄労働者一〇四七名の解雇撤回! 鉄建公団訴訟勝利! 戦争と失業NO! 10・31団結まつりアピール

 戦争と環境破壊・「底なしの競争」による際限のない労働条件の切リ下げと貧困の拡大を推し進めるグローバル資木主義が、またひとりの青年の命を奪おうとしている。「大量破壊兵器」のウソが暴かれても、「石油利権」のために占領を統ける米英のイラク占領を支持し、一〇万人を超えるイラク民衆の命を奪ってきたこの戦争に加担した日韓両国の労働者・市民は、占領も武力による人権抑圧もない、平和で民主的な社会を作るイラク市民レジスタンスの闘いと連帯して、イラク占領・撤退をともに闘うことを共に誓い合った。
 日本に於いて、このグローバル資本主義の攻撃の原点となったのが、国家によって筆舌に尽くせぬ人権侵害・不当労働行為を受けた国鉄「分割・民営化」の攻撃だった。この攻撃を皮切りに弱肉強食の市場原埋が生活の隅々まで導入され、働く権利と生存権の破壊は小泉「構造改革」によって一層深刻になっている。年間「自殺者」三万四千人、非正規雇用(パート・アルバイト・派遣)の増加、労働分配率の低下に象徴される生活破壊、若年失業率一〇%を定着させながら『二ート(働く意欲のない若者)』とレッテルを貼り、使い捨ての労働力として将来の夢を奪い続けていることがその証左だ。「国のために働け」と教育基本法を改悪するために「日の丸・君が代」の強制と教職員への処分攻撃を進める東京都教委の攻撃も根はひとつだ。
 しかし、このグローバル資本の攻撃に抵抗するすべての人びとを励ます闘いが、一〇四七名の解雇撤回の闘いだ。国鉄「分割・民営化」の中で、数十万にのぼる退職攻撃・不当労働行為を受けた国鉄労働者の闘いを貫いた被解雇者と遺族二九五名を原告として闘われてきた鉄建公団訴訟は、現在ひとりひとりの原告が不当労働行為を立証する最大の山場を迎えている。そして、清算事業団を解雇された一〇四七名の国鉄労働者が労働組合の違いを超えて大同団結し、この鉄建公団訴訟を共に闘うことが全動労争議団・千葉動労争議団からも表明されている。今こそ国家によって一七年の長期に渡って侵害され続けた人権・名誉を回復する闘いとして、資本のグローバル化に対抗するすべての労働者・市民とともに国際連帯の力で鉄建公団訴訟を勝利させなければならない。戦争と雇用破壊を推進する小泉内閣を退陣させる運動と結び、裁判傍聴・聞争資金緊急カンパを広げよう!、国鉄労働者一〇四七名の解雇撤回!、鉄建公団訴訟勝利!に向けて、12・1けんリ総行動、全国総決起集会を成功させ、鉄建公団に解決を迫ろう!


普天間基地の無条件即時返還・辺野古移設の白紙撤回

                  
沖縄県民会議が東京行動

 日本政府と稲嶺沖縄県政は普天間基地の「替わり」の口実で、名護市辺野古沖に海上新基地建設を強行しようとしている。
 一〇月二五日は、建設着工のための調査に反対する座り込み闘争開始から一九〇日目となった。
 一〇月二五〜二六日、沖縄から基地撤去を求めて代表団が上京した。一〇月二日、那覇で「稲嶺県政・国へ辺野古移設の政策転換を求める県民大集会」が開催された。その集会の主催団体「基地の県内移設に反対する県民会議」の十数名の代表団は、外務省、環境省、防衛庁、内閣府を訪れ、普天間基地の無条件即時返還と辺野古移設の白紙撤回を要求して交渉を行った。

 二五日の午後四時半から、防衛庁・防衛施設庁への申し入れを行い、午後六時半からは定例の毎週月曜日の防衛庁前抗議行動に合流した。

 防衛庁前集会の終了後、牛込箪笥区民センターで「普天間基地の無条件即時返還・辺野古移設の白紙撤回を求めて 沖縄県民会議東京行動の報告会」(主催、辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会)が開かれた。

 はじめにヘリ基地反対協の安次富浩さんが発言。
 辺野古沖新基地建設のためのボーリング工事着工を阻止するために、毎日七〇〜八〇名が駆けつけて、そのほとんどが海上での阻止行動に参加している。
 一一月二一日には、カヌーをチャーターして、建設が予定されている滑走路と同じ二五〇〇メートルまで船をつなげて、いかに大きな海上基地なのか、どんなに海をうめるのかといことを、絵で見せることをやってみたい。そのためには、かなりの数の漕ぎ手が必要だし、かなりの費用もかかるので全国のみなさんにカンパをお願いしたい。
 反対運動の影響は確実に広がっている。名護のダイビング・クラブのオーナーも協力を申し出てくれているが、海中で施設庁のダイバーを待ち受け、「海を破壊するのはやめろ」と説得すると言ってくれている。これだけでなく、いろいろと思いがけないことがおきている。現地は楽しく闘っているが、しかし大変なことも事実だ。
 これから冬に向かうが、この季節は海が荒れて、工事にとっては困難が大きくなる。天の恵みだ。だが、われわれの粘り強い闘いがなければなんにもならない。
 一部では、下地島の民間飛行場へ訓練の場を移すなどということが言われている。しかし町村外相は「普天間閉鎖」を言っていない。下地島、辺野古、そして普天間と三つの基地をもつことができるなどと都合のいいことを考えているようだ。「ふざけるな」と言いたい。
 いま、沖縄では若者たちがさまざまな工夫した行動で、基地反対の運動を展開している。
 各省庁への申し入れでは、県内移設などでは沖縄県民はもう許せないという気持ちが高まっていることをぶつけてきた。力を合わせることが大事だ。

 つづいて、県民会議共同代表の山内徳信さん。
 沖縄は構造的な差別をうけているが、そうした状況にめげず私たちは闘っている。
 アメリカ大使館、外務省などに対して、私たちは要請ではなく抗議を行ってきた。沖縄県民の怒りをぶつけてきた。
 辺野古新基地は絶対にやらせないという気持ちで運動をしている人たちを、私は兄弟姉妹と呼んでいる。
 沖縄は、面積で日本全体の〇・六%、人口は一%だが、在日米軍基地の七五%を沖縄におしつけている。まったく理不尽だ。こうしたことをする人たちはとても兄弟姉妹とは言えない。
 普天間基地は、はラムズフェルド米国防長官さえも「世界一危険な基地」だと言い、辺野古では「こんな美しい海はない」とも言っている。しかし、普天間はそのままだし、辺野古新基地建設を強行しようとしている。また金武町には都市型ゲリラ訓練施設が作られるが、とんでもないことだ。また、米軍基地の再編が言われているが、軍人だけ減らして基地面積は減らさないとも言われているが、これでは何の変化もないのと同じだ。
 戦後、島ぐるみの基地反対闘争が闘われたが、今回は島ぐるみには終わらない。国民ぐるみに、そして環境破壊問題では国際ぐるみの闘いになる。
 ベトナム戦争の時に、当時の横浜の市長だった飛鳥田一雄さんはベトナムむけの戦車を止めさせた。私たちも基地の機能を麻痺させるような闘いを組んでいこう。
 その後、沖縄の代表団の一人ひとりが発言した。


10.26集会  基地をなくそう! 沖縄から日本から

 一〇月二六日、日比谷公園野外音楽堂で、米軍普天間基地の返還、辺野古への移設反対、都市型戦闘訓練施設の建設中止、地位協定の改定をスローガンに、「基地をなくそう!沖縄から日本から 10・26全国集会」が開かれた。
 はじめに、福山真劫さん(フォーラム平和・人権・環境事務局長)が主催者あいさつ。
 この集会は、八団体がよびかけ、三六団体が賛同した。
 一九七二年に沖縄の復帰が実現したが、いま沖縄の米軍基地からはアフガニスタンやイラクへ派遣されている。そして、米軍の存在は県民の生命・生活をおびやかしつづけている。普天間基地の撤去を求めて沖縄の闘いは拡大している。沖縄の熱い思いに、東京で、全国でこたえ闘いを強めていこう。集会に参加した議員のみなさんには国会の中で、基地の問題を積極的に取り上げて欲しい。全国で力を合わせて闘えば、われわれの要求は通すことができる。
 斉藤勁・民主党参議院議員(神奈川県選出)が国会報告。
 小泉総理はアメリカの要求に、常にイエス、イエスだ。そして、米大統領選挙では、ブッシュがひきつづき政権担当者になって欲しいなどと公言している。そんなにブッシュ政権が好きなら、アメリカの五一番目の州知事になればいいのだ。
 沖縄、佐世保、岩国、横須賀から、米軍が出撃している。米軍の世界的なトランスフォーメーションが行われているが、その中で米陸軍第一軍団司令部を神奈川県のキャンプ座間に持ってこようとしている。こんな政権はいらない。アメリカにノーと言える政権をつくろう。そのために力をあわせよう。
 つづいて社民党党首の福島瑞穂・参議院議員(神奈川県選出)。
 沖縄をはじめ在日米軍基地の問題はこの二〜三カ月が最大の山場だ。
 座間に司令部機能を持ってくることは許されない。在日米軍は沖縄を前衛基地とし神奈川を司令部として機能させ、いっそう戦争体制を強めようとしている。
アメリカ政府も「米軍は歓迎されないところにはおかない」といっているが、それなら「要らない」と言おう。日本のどこにも基地は要らない。私たちが頑張れば基地をなくしていくことができる。
 無所属の糸数慶子・参議院議員(沖縄県選出)。
 この夏の参院選で議員となった、沖縄の稲嶺県政が普天間のかわりに辺野古沖に新基地をつくろうとしていることについてを問う選挙だったが、私が当選したのは、県民の反対の意思表示だった。一九九五年の少女暴行事件から今日まで、政府は基地の整理縮小など言いながら実際には沖縄の基地問題はまったく動いていない。小泉は、沖縄の負担を軽減すると言いながら、本土の人たちに負担を拡大しようとしているが、アメリカの基地はアメリカに帰すしかない。全国の人に呼びかけたい。普天間基地の撤去、辺野古新基地と金武町の都市型訓練施設に反対し、地位協定を見直すための運動を広げていこう。
 喜納正春・沖縄平和センター副議長と山内徳信・基地の県内移設に反対する県民会議共同代表、ピースボートの中原大弐さんがあいさつし、集会アピールが確認された。


5・3憲法集会実行委の主催でシンポ

     
 憲法改悪と国民投票法案に反対

 一〇月二三日午後、「五・三憲法集会実行委員会が主催する憲法改悪と国民投票法案に反対するシンポジウム」が東京の日本教育会館で開かれた。
 集会参加者は約三五〇人で、司会進行は山口菊子さん(憲法を愛する女性ネット)と高田健さん(許すな!憲法改悪・市民連絡会)が行った。パネリストの発題のあと、質疑応答があった。

 シンポジウムの最初に江尻美穂子さん(日本YWCA理事長)は次のように発言した。

 私は少学一年で終戦を迎えましたが、「ああよかった、もう防空壕に隠れなくて済む」と思いました。戦争で苦労したのは庶民でした。
 私はキリスト者ですが、聖書からはどうしても戦争とか核兵器は出てこないと思いますが、ブッシュのようにそう思わない人がいるのも事実です。
 私は武力で相手をねじ伏せるようなことを絶対にしてはならないと教えられていると思っています。
 日本YWCAは一九〇五年に誕生しましたが、戦争を止める力になり得ませんでした。戦争中に戦争反対を叫ぶことはむずかしかったわけですが、むずかしかったといってすませるわけにはいかない。
 戦後、どうしたら平和を続けていけるか、真剣に考えました。その時に日本国憲法が私たちに与えられた。YWCAにとってはこの日本国憲法を守ることが柱になりました。平和を破る動きに反対しながら、憲法研究会を作りました。そして一九六二年以来、毎年のように研究会を開いてきました。
 あるとき、パレスチナYWCAから来た方が「銃を持った人がやってきて、戦争のない状態を作っても真の平和ではない。人種差別がある状態も平和ではない」と言いました。
 日本の憲法は外国の平和を愛する人が高く評価しています。「押しつけ憲法」という批判がありますが、本当にいいものだったら誰にもらったとしても大事にすればいいと思います。
 また「丸腰は危険だ」と言う方がいますが、自衛のための戦争をしたら悲惨です。犠牲になるのは弱い人びとです。
 かつての朝日歌壇に「徴兵は命かけても阻むべし 母・祖母・おみな牢に満つるとも」という短歌が載りました。ほんとうにそうだと思います。
 「私は中立だからなにも言わない」という人がいますが、それは改憲に加担することです。声を上げなくてはなりません。

 続いて高橋哲哉さん(東京大学教授)が発言した。

 週刊金曜日の企画で参院選前に自公民それぞれの憲法調査会のメンバーと対談をしましたので、その報告を含めて話せということでした。
 特に自民党の保岡興治さん、民主党の仙谷由人さんとの議論を報告します。
 自民党憲法調査会が党内議論の中間整理を六月に出しました。
 九条、安全保障に関する議論は予想通りです。
 集団的自衛権を盛り込むなどです。驚いたのは、九条を取り巻く憲法観と国民の権利義務など、その他の項目についてです。「国柄」という一貫した姿勢が貫かれている。憲法の守るべき価値として、「歴史・伝統・文化に根ざしたわが国固有の価値、すなわち国柄や日本人が元来有してきた道徳心など、健全な常識に基づいたものでなければならない」と言っています。
 この国柄を日本人のアイディンテテイとして憲法に書き込みたいのです。国柄はかつての戦前戦中の「国体」です。万世一系の天皇が統治する国柄です。
 驚いたのは憲法二四条。 両性の本質的平等、これは家族や共同体の価値を重視する観点から見直すべきだといっている。
 保岡さんには冒頭にこれを質しました。保岡さんはジェンダーフリーについていっていました。そして「平等という意味が全く何もかも同じだと言うのであれば検討しなければならない」などと言っていました。
 天皇の地位の本来的な根拠は国柄だともいっています。保岡さんは「日本民族二〇〇〇有余年の伝統だ」ともいいます。これは皇紀二六六〇年の話ですか。
 かつての自民党の中にはリベラルな人びとがそれなりの派閥と力を持っていましたが、いまはそれが力を失っています。これはその反映でしょうか。
 もう一つの問題は憲法の性格付けの問題です。
 憲法は主権者が政府に対してやるべきこと、やってはならないことを規定したものです。
 この立憲主義の考え方がいやなのです。
 国民の利益を守るために、国家と国民が協力した共生社会を作るなどといいます。また憲法尊重擁護義務が公務員にあって国民にはないことが気にくわない、尊重擁護義務を国民に課そうとしているのです。極めて復古主義的な考え方が盛り込まれています。
 民主党ですが仙谷さんは「イラク戦争は国連憲章違反だ」と厳しく批判しています。
 しかしその裏返しで、国連が承認した武力行使には積極的に参加させる方向で憲法を考える、主権委譲の考えを盛り込んでおけば国権の発動たる戦争をしなくて済むのだという議論です。
 これでは湾岸戦争タイプの戦争では自衛隊が参加することになる。
 岡田代表が訪米して同じことを言っていました。
 仙谷氏はこの線で民主をまとめる自信があると言っています。
 これらを見るなら教育基本法の改正問題は憲法改悪と全く密接につながっていることがわかります。

 渡辺治さん(一橋大学教授)は憲法改悪のための国民投票法案の問題にしぼって発言した。

 憲法改正にはおおきくいって二つのハードルがある。自民党だけでは出来ない。両院の三分の二の賛成が必要です。
 最近は加憲とか創憲とかいって、衆議院四八〇議席のうち、四六〇議席は改憲を訴える党の議席です。参議院も同様です。
 もう一つは国民投票です。その過半数の賛成を得なければ改憲はできない。近代日本国家は一度も国民投票をやったことはない。自民党は怖がっている。改憲の提案が国民投票で否定されれば「残念だったね」では済まない。その政治の方向が国民に否定されたことになる。
 しかし改憲を考えながらも自民党は国民投票法を制定できなかった。第一のハードルがクリアできなかったからです。いま情勢のなかで、これが政治日程に浮上してきた。
 国民投票法の内容は改憲の成否を決めかねないものです。
 第一に投票は一括方式か、各条ごとの賛否かという問題がある。また「その過半数」とはなにか。有権者数か、投票総数か、有効投票数かです。また国民投票の運動をどこまで認めるかです。公選法のように厳しく規制することはふさわしくありません。
 いま国民投票法をめぐっていくつかの考えがあります。
 今井一さんは「国民投票で決着を」といっています。これは国会や政党への不信があり、また国民投票への過大評価があります。彼は「九条改正国民投票」といいますが、九条を問える国民投票法を制定するには護憲派や真面目な議員の大きな力が要ります。それができるのか。ですから、改憲発議を許さない闘いをやり抜かなくては国民投票では勝てないのです。
 改憲派は九条改憲をやりやすくする国民投票をつくろうとしています。
 しかし、改憲派は十分な意思一致ができていません。
 いま国民の過半数の人びとの声を結集しなくてはなりません。たしかに九条改憲反対の人と自衛隊を認める人のズレはあります。
 護憲政党に投票する人にもズレがあります。しかし、これらのズレを含めてこれまでになかった大きな規模の運動をつくりださなければなりません。
 社民党や共産党や、そして民主党や公明党の中の人びとも含めて可能性を追求する必要があります。 私たちは、二〇〇五年の通常国会に向けて教育基本法改悪、改憲の国民投票法、派兵恒久法に反対する闘いを通じて力を結集して行く必要があると思います。


「朝鮮侵略100年、朝鮮解放・分断60年、日韓条約から40年を問う―2005年運動」によるシンポジウム

 「来年の二〇〇五年は、朝鮮が日本の植民地支配から解放を勝ち取り、そして同時にもたらされた南北分断から六〇年を迎える。またこの年は、一九〇五年に伊藤博文が日本軍・憲兵隊を引き連れて朝鮮王宮に乗り込み、時の政府閣僚らを軟禁・脅迫して結ばれた第二次日韓協約(乙巳保護条約)からちょうど一〇〇年、さらに一九六五年の日韓条約締結からも四〇年を迎える」として、「朝鮮侵略一〇〇年、朝鮮解放・分断六〇年、日韓条約から四〇年を問う――二〇〇五年運動」が呼びかけられ、このほど同実行委員会の主催によるシンポジウムが開かれた。
 一〇月二三日、東京の文京区民センターで行われた集会には百数十名の市民が参加し、「朝鮮半島の統一問題と日本」(北側広和)、「米軍再配置と日本の戦争国家化」(池田五律)、「日韓自由貿易協定(FTA)と東アジアの経済統合」(大野和興)のテーマとパネリストで議論された。 司会は日韓ネット共同代表の渡辺健樹氏がおこない、渡辺氏は冒頭に朝鮮侵略の一〇〇年を問いつつ、二〇〇五年運動を立ち上げる意義について発言した。そして、この日、来日した米国のパウエル国務長官の動きを批判し、彼の訪日、訪韓に抗議した。
 このシンポには韓国の「イラク派兵反対非常国民行動」(三五一団体)からも「反戦平和を願う日本の民衆に送るメッセージ」(別掲)がよせられた。
 シンポジウムでは北川氏が「六・一五南北共同宣言四周年を迎えて、韓国では国家保安法の撤廃への動きに見られるような統一への熱気が高まっており、南北分断六〇周年を統一元年にしようという運動が起きている」と報告、「小泉首相の一年以内にも国交正常化があり得るという発言は、この南北統一の高まりに対する危機感によるものだ」と指摘した。
 池田氏は「米軍再配置は冷戦に変わる脅威さがしによって、テロという新たな脅威を見つけたことによるもので、あらたな戦略〜二つの大規模戦域戦争へ対応するための前方展開戦略の維持と、テロなど小規模緊急事態に対応するものだ。これに基づいて韓国での米軍再配置と、在日米軍の再配置が行われつつある」と述べた。
 大野氏は「これからの東アジアでの経済情勢を見るとき、日韓、中国、ASEANの三つがキーワードになる。日韓FTAは日韓統合資本によるアジア戦略としての意味を持つもの。中国経済は予想以上に順調で、世界の工場から世界の市場へと飛躍しつつある。中国は政治大国であるだけでなく経済大国にありつつある。これらのなかで、労働基本権、人権、女性の人権、生活権などを獲得するアジア民衆運動の連携が構想されるべきだ」と述べた。
 最後に各界からのアピールがあり、「許すな!憲法改悪・市民連絡会」の高田さん、「沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック」の吉田さん、「在日韓国民主統一連合」の宋さん、「日韓FTA交渉に反対する十一月日韓共同行動」の平賀さんから発言があった。

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反戦平和を願う日本の民衆に送るメッセージ

 朝鮮半島と東北アジアの平和のために日々努力されている日本の仲間の皆さんに、心からの同志愛を送ります。

 イラクの状況が泥沼化して、朝鮮半島の核問題の平和的解決をめぐる六者協議が中断されているこの時期に、米国大統領選挙を目前に米国務長官パウェルが日本と韓国、中国を順番に訪問するといいます。
 今回パウェルの東北アジア訪問の政治軍事的目的は、米国大統領選挙で少しでも有利な状況を作ろうとするのと同時に、平和に反し、米帝国主義のユニラテラリズムを貫きたいがためです。
 特に、韓国のイラク派兵延長法案の決定も目前に迫っており、ヨンサン(龍山)米軍基地の移転とピョンテク(平澤)基地の拡張をめぐり、韓国民衆と米国間に緊張と対決の気運が高まっているこの時期のパウェル訪問は、いつもと同様に韓国政府を圧迫し、実利を得ようとする陰険な目的が込められているのです。
 さらに第三回六者会談以後、意図的にこれまでの成果を踏みにじり無理な要求を押し立てて米朝間の緊張を高めてきた米国は、三カ国訪問により自国の論理を正当化させ、北に対する孤立と圧迫を強め、北に白旗を振って無理やり投降させようとしています。
 
 私たちは、このように米国の対北朝鮮圧迫政策と東北アジアの戦争政策に一貫して服務してきたパウェルの訪日と訪韓に断固反対します。
 米国は世界制覇の夢を捨て去るべきです。全世界にテロを広げた主犯である米国ブッシュ政権に対し、強力な国際反対戦線で闘うことによって、戦争と死を限りなく生産し続けることに終止符を打たねばなりません。
 反戦平和のための韓日民衆の連帯は、世界を平和に導くために大きく寄与することでしょう。私たち韓国の民衆は、日本の反戦平和を願う皆さんと共に、いつも志を共にし、私たちの握った手が平和につながることを信じています。
 共にがんばりましょう。

二〇〇四年一〇月二三日

韓国にて  イラク派兵反対非常国民行動


パンフレット紹介

槌田敦(名城大学教授)著

「原爆投下の謎と日本核武装の疑惑 − IAEAは日本の核武装を容認した−」

 
          B5判 36頁 400円

 たんぽぽ舎の新刊パンフの「原爆投下の謎と日本核武装の疑惑―IAEAは日本の核武装を容認した―」は、日本が大量破壊兵器保有にむかって進んでいるのではないかという「疑惑」をめぐる問題を扱っている。著者は、槌田敦・名城大学教授。
 
 第一章の「IAEAは日本の核武装を容認した」は、「日本はアメリカの手先として核兵器を使うことになるのか」と副題され、日本の核武装能力・志向について分析されている。
 今年の六月、国際原子力機関(IAEA)理事会は、突然、「日本の原子力利用には核兵器転用の疑いはない」として、査察回数を五分の一程度に大幅削減する方針を示した。
 「核開発の懸念のない国に実施する査察方式(統合保障措置)を日本にも適用することになった。この措置はオーストラリア、ノルウェー、インドネシアの三カ国の研究用原子炉に適用されていたが、日本のような広範な原子炉を持つ国に適用されるのは初めて」。
 北朝鮮の核問題をめぐっては、六者協議が続けられている。近ごろ、韓国の核開発問題が浮上した。台湾も同様だ。日本についても核開発疑惑があった。
 「強烈だったのは、一〇年前のイギリス・サンデータイムズ紙の記事である(一九九四年一月三〇日)。これによれば『日本は核兵器に必要なすべての部品をすでに保有し、濃縮プルトニウムを組み込むだけで核兵器は完成するという英国防省の秘密報皆書が、前年一二月、内閣に提出された』という。……この報道は、日本の政界を激震させた。……羽田首相は、……『日本は核兵器を持つ能カがある。科学技術や経済のすべての面で』と語ったのであった」。
 ウラン二三五が六〇%以上に濃縮された軍用ウラン、またはプルトニウム二三九が九四%以上濃縮された軍用プルトニウムが核兵器となる。軍用ウランは、六ヶ所村(青森県下北半島)のウラン濃縮工場が完成すれば、いつでも生産できる。軍用プルトニウムは、原発で発生する程度のプルトニウムでは核兵器用には役に立たないが、高速炉の常陽ともんじゅでは生産可能で、「高速炉常陽は、これまでに軍用プルトニウムを三〇キロ生産した」という。日本は、まさに「第一級の核疑惑国」なのである。
 日本の核兵器製造能力はあるが、核武装への志向はどうか。
 「何故IAEAは、日本の原子カは平和目的で査察の必要はないとお墨付きを与え、日本の査察を減らしたのであろうか。これには、アメリカなど白人諸国の利益が関係する。彼らにとって、アジアの核は不気味である。中国、インド、パキスタンが互いに反目しあい、核戦争する可能性がある。その時、アメリカを軸に西欧諸国の多国籍軍が、核兵器で、これらの国を抑えると、どのように反撃されるか分からない。そこで、その役目を日本にさせようというのである。『アジアのことはアジアで』という原則を、核戦争にも適用するのである。アメリカはすでに、日本の核開発を容認している。日本の高遠炉もんじゅを認め、その使用済み燃料(ブランケット)の再処理に使う遠心抽出器を日本に売った」。そして、「まず、日本を守るアメリカの『核の傘』を止める。そうなれば、日本は独自の核を開発すると主張することになる。そこで、沖縄にあるアメリカの核兵器を日本に売って使わせる。そして日本にもアメリカの監視下ではあるが、核兵器の製造を許す。その結果は、日本と中国の核開発競争ということになる。これは、アメリカや西欧諸国にとって、またとない経済的利益となる。目障りな東洋の両国が、かつての米ソのように冷戦によって疲弊することは明らかだからである」。
 この章のほかには、
第二章「原子爆弾と世界大戦の終了、そして被爆国日本の核開発」(第二次世界大戦と無差別爆撃/原爆投下都市の選定理由/戦争終結に向けてのアメリカでの動き/ソ連の参戦と天皇制容認との関係/日本に降伏させないためのポツダム宣言/危険な日本の核開発)
 第三章「福田発言と日本の核武装、そして六ヶ所」(核武装に向かう日本の歴史/日本の核兵器製造能力/アジアの核抑止は日本に任せる/第三次世界大戦と日本の核武装)となっている。

 アメリカとの軍事同盟の中で、日本の軍事力の増大はとどまるところを知らない。小泉政権は、ブッシュ政権の戦争戦略に積極的に加担し世界に自衛隊を展開させようとしている。一方で反戦運動、アジア諸国の連携の強まりと平和友好関係の構築の努力も進んでいる。
 日本の核武装化も一部右翼勢力は声高に唱えはじめた。だが、アメリカが日本に核武装を許すのには高いハードルがある。日本核武装問題はアメリカの覇権に対抗するものになるからだ。この面では日本核武装化を認めるのは極めて難しいのではないだろうか。
 このパンフは、アメリカと連動した日本の軍国主義化の動きを考える上での一つの問題提起として検討されるべきものであろう。

問い合わせ先

 たんぽぽ舎 / 東京都千代田区三崎町二―六―二 ダイナミックビル 〇三(三二三八)九〇三五


KODAMA

  「ニート」という言葉


 近ごろ気になる言葉に、「ニート」と言うのがある。「Not in Education、Employment or Training」という英語の頭文字をとって「NEET」。
学校へも行っていない、雇用もされていない、訓練中でもない、という意味だ。
イギリスで九〇年代後半からつかわれるようになった言葉だという。
 一〇月二一日、第一生命経済研究所が「NEET人口の将来予測とマクロ経済への影響」と題するレポートを発表した。
 「ニート」は、一五歳〜三四歳の非労働力人口のうち、通学と家事手伝いを除いた人とされ、二〇〇〇年の七五万一〇〇〇人だったが、二〇一〇年に九八万四〇〇〇人、二〇一五年に一〇九万人、二〇年には一二〇万二〇〇〇人になるという。
 そのうち、一五〜二四歳の「ニート」は、「ニート」全体に占める割合が〇五年の四二・六%だが一〇年には四六・八%に上昇する。
 「ニート」増加が経済へ及ぼす影響では、「ニート」の期間が五年の場合、生涯賃金は標準的な労働者に比べ七四・四%、一〇年の場合は半分程度になるという。
 単に収入の問題だけではない。社会的にも大問題である。
 労働政策研究・研修機構副統括研究員の小杉礼子さんはニートを四分類している。
@ヤンキー型(反社会的で享楽的。「今が楽しければいい」というタイプ)
Aひきこもり型(社会との関係を築けず、こもってしまうタイプ)
 B立ちすくみ型(就職を前に考え込んでしまい、行き詰ってしまうタイプ)
 Cつまずき型(いったんは就職したものの早々に辞め、自信を喪失したタイプ)。
 その原因として、年齢のミスマッチなどの経済状況・産業構造の問題、スキルのミスマッチという能力開発問題、何をしたいのか分からないというこころのミスマッチなどが上げられている。
 小泉構造改革と新自由主義・グローバリゼーションの中で、日本社会は崩壊の兆しを見せているが、その典型的な表現のひとつだろう。
 新自由主義の政策は、一部の大資本の自由な儲けのための条件をつくり、それ以外のものは放置したままにする、それが広範な労働者の賃金・労働条件の低下をもたらし、そしてまたそのことによって資本の儲けの条件をつくりだすのだ。
 そもそも、現代の生産力水準は、労働者の長時間労働の雇用を不要にする段階に近づいている。その水準にあった体制は社会主義なのだが、国家は資本の利益のための生産関係を護持することになる。
 フリーター激増が社会問題となったが、「ニート」問題はいっそう深刻だ。
 危機を深める現在の体制に大変革が求められていることの一つの象徴的なあらわれだろう。(MD)


複眼単眼

 
サマワ陸自宿営地にロケット砲弾が着弾  WPNの警告

 WORLD PEACE NOWのウェブサイトを開くと「ありうる不測の事態に備えて〜WPNからの提案」というのがある。
 それには「自衛隊がイラクで重大事件を起こした場合(あるいはそれに類似した問題が起こった場合)に備えて行動マニュアルを策定し、全国一斉行動を行う」とあり、
 @全国一斉行動について(統一アクション)。
 ●その日↓誰でもできること、一人一人がそれぞれ見える行動をする。白いリボンをつける。家の窓から白いスカーフをだす。(中略)
 ●その直後の日曜日↓地域での行動・集会
 ●次週の土曜日↓全国集会(東京)
 A特に東京では、その日(日本時間の十五時までなら、その日の十八時から衆議院第二議員会館前集合、それ以降なら翌日十八時から衆議院第二議員会館前集合)連続三日↓首相官邸への抗議行動↓座り込みテント村設置
(どこに置くか、未定)。
 ●その直後の日曜日↓一三時〜ハチ公前集会と宣伝(連続三日のうちに日曜が入ったら、官邸前の行動はこれに切り替え)
 ●次週の土曜日↓全国集会(東京)。

 このWPNの提起に対して「自衛隊員が死ぬのを待っているのか」などの口さがない非難はあったが、全体として市民運動の中ではこの方針は定着しているようだ。
 一二月一四日で自衛隊のイラク派遣はまる一年になる。この間、自衛隊の現地での性格は独立「人道復興支援」部隊から、多国籍軍所属「復興支援部隊」へと大変りした。これによってWPNが危惧した事態は、さらに現実のものとなりつつある。
 一〇月二三日夜(日本時間二三日午前五時頃)、イラク南部サマワの陸上自衛隊宿営地にロケット弾攻撃があり、一発が着弾した。幸い、このロケット弾には信管が装着されておらず、爆発はなく、死傷者は出なかった。不発弾は直径一〇七ミリ、長さ七〇〜八〇センチ。信管が装填されていないのは現地の抵抗勢力の重大な警告で、自衛隊は侮ってはならない。当時、自衛隊は宿営地内で待避措置をとったというが、それほど緊迫している。サマワの宿営地の四方は防護柵や土塁が積まれているが、砲弾はその内側に着弾した。派遣当時、自衛隊幹部は「最強の防護施設」と自慢したが、やすやすと越えられてしまったのだ。これは四月二日の宿営地設置以来、自衛隊に対する現地勢力の七回目の攻撃で、宿営地内に着弾したのは初めてだ。
 イラクでは来年一月の選挙を前に米軍の掃討作戦は激化し、各地で虐殺がつづいている。イラクの人びとの反撃も強まり、イラク全土での戦闘は激化している。
 サマワでも市の中心部や自衛隊宿営地、オランダ軍などへの攻撃が激化した。
 八月の攻撃の際、拘束された武装勢力メンバーが持っていたビデオは「自衛隊は占領軍であり、即時撤退しなければ攻撃する」と述べていた。もはやいかように考えてもイラク復興支援特別法が派兵の前提にした「非戦闘地域」などではない。
 WPNが想定した事態が来ることのないように、政府は一刻も早く自衛隊を撤退させるべきだ。もし、自衛隊員がイラクの人びとを殺し、あるいは殺される事態が起きればその全責任は小泉内閣にある。
 追記・これを書いた直後、香田さんが拘束されてしまった。(T)