人民新報 ・ 第1149 号<統合242(2004年11月15日)
  
                  目次

● 米軍はファルージャ虐殺をやめろ! 小泉政権の攻撃支持を許すな! 自衛隊はイラクから撤退せよ!

● 日韓自由貿易協定交渉を即刻中止せよ!

● 教育基本法の改悪をとめよう!  11・6全国集会に五五〇〇人

● きっと勝つ! たたかいは今  家族が語る国鉄闘争18年

● 郵政労働者 第25回全国職場交流会

● 全力をあげて9条改憲を阻止しよう!  「憲法改悪を許さない 11・3憲法集会」 (東京)

● 11・3 輝け九条! 大阪のつどい

● ヒロシマから9条改憲反対を

● 書評  /  高田 健 「護憲は改憲に勝つ」

● KODAMA  /  大衆運動と新しい「武器」

● 複眼単眼  /  震災など天災と政治の無責任




米軍はファルージャ虐殺をやめろ!

   
小泉政権の攻撃支持を許すな!  自衛隊はイラクから撤退せよ!

 米英軍は一一月八日、イラク・ファルージャヘの総攻撃を開始した。
 米軍とカイライ政権のアラウィ首相は、市民がアルカイダ幹部と言われるザルカウィ氏をかくまっている、引き渡さなければ軍事的総攻撃を行うという「最後通牒」を発し、ファルージャ包囲網をしいた。そして、攻撃準備の一環として七日には、北部クルド地域を除くイラク全土に「非常事態宣言」を発令した。来年一月の「民主的選挙」の日程が迫っているにもかからわらず、イラク民衆の占領への怒りを背景にした闘いで、「治安」状況は一段と悪化している。これを、アメリカは、外部から潜入してきたひとにぎりのテロリストの仕業であるとして、ファルージャ攻撃をしかけたのである。
 しかし、ファルージャの住民は、ザルカウィなどいないと言っている。アメリカは「大量破壊兵器の存在」と同じ様なでっち上げの口実でまたも大虐殺を強行しようとしているのだ。
 小泉首相は、このファルージャ攻撃・大虐殺に率先して支持表明を行った。
 アメリカをはじめとする多国籍軍は、すでにイラク民衆一〇万人以上を殺している、と報道されている。
 ファルージャ攻撃に反対し、自衛隊のイラク派兵延長阻止・撤退の闘いを強めて行かなければなならない。

 一一月一〇日の午後六時から、アメリカ大使館前でファルージャ攻撃に反対する行動が展開され、緊急の呼びかけにもかかわらず三五〇人もの人びとがかけつけた。
 よびかけは、戦争反対有事をつくるな!市民緊急行動、アジア太平洋平和フォーラム(APPF)、アジアンスパーク、ATTAC Japan、イラク戦争に反対する市民と議員の会、かながわ平和憲法を守る会、基地はいらない!女たちの全国ネツト、グリーンピース・ジヤパン、グローバルピースキャンペーン、憲法を生かす会、STOP!改憲・市民ネットワーク、たんぽぼ舎、CHANCE pono2、地球平和公共ネットワーク、ナマケモノ倶楽部、日本山妙法寺、日本消費者連盟、VAWW―NETジャパン、PEACE ON、ふぇみん婦人民主クラプ、フオーラム平和・人権・環境、平和憲法に学び行動する目黒の会、平和と民主主義をめざす全国交歓会、平和の白いリボン行動・藤沢、明治大学駿台文学会、ユーゴネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会で、WORLD PEACE NOWが協力した。
 大使館前集会では、ブッシュ米大統領宛の抗議申し入れ「ファルージャヘの軍事作戦を直ちに停止してください。これ以上の人殺しはやめてください」が確認され、代表が大使館に渡すために出発した。集会では、よびかけ団体から、アメリカのファルージャでの大虐殺と小泉政権の攻撃支持を批判し、米英軍の即時の戦闘の中止と自衛隊のイラクからの撤退を求める発言が続いた。

 * * * *

ファルージャヘの軍事作戦を直ちに停止してください。これ以上の人殺しはやめてください。

     
アメリカ含衆国大統領ジョージ・W・ブツシュ様

 私たちは、いま言いようのないほどの悲しみと怒リに包まれています。あなたが米大統領に再選された直後に開始したファルージヤヘの全面的軍事攻撃は、イラクの一般市民への無差別の大量虐殺であり、まぎれもない戦争犯罪です。
 あなたは、「イラクの大量破壊兵器の脅威」や「国際テロ組織アルカイーダとのつながり」を口実に、国際法や国連憲章をも踏みにじってイラクヘの侵略戦争を開始しました。しかしこれらの口実はすべて嘘でした。二〇〇三年三月の戦争開始以来、すでに一〇万人にのぼるイラクの人々が殺されています。
 あなたは、「イラクに自由と民主主義をもたらす」と宣言しました。しかしアメリカの占領がもたらしたものは、殺戮と生活破壊、治安の混乱、そして人権蹂躙でした。アブグレイブ収容所での米軍によるイラクの人々への拷問・虐待が、あなたの言う「自由と民主主義」がなんであるかを物語っています。
 イラク軍事占領が続けぼ続くほど、一般市民のアメリカヘの不信と憎悪は高まるばかりです。イラクの平和と復興は、軍事占領や今回のような一方的軍事作戦が続くかぎり、現実のものにはなりません。
 今年の四月、米軍はファルージャを包囲し、「動くものはすべて撃つ」軍事作戦を行いました。その結果、老人や女性、子供たちをはじめ、一〇〇〇人近い人々が無差別に殺されました。あなたが敵にまわしたのは、決して「一握りのテロリストや凶悪な犯罪者」ではなく、イラクの一般民衆でした。
 今、あなたは一〇月以降再びファルージャヘの爆撃を繰り返し、住む家や病院を破壊して多数の市民の命を奪うとともに、ついにファルージャ市内に突入して殺人と破壊のかぎりをつくしています。私たちは断言します。「自由と民主主義と平和の敵」はあなた自身だと。いったい、あなたはどれだけの人の命を奪えば気がすむのでしょうか。
 アナン国連事務総長も、あなたに書簡を送り、ファルージャヘの攻撃をやめるよう警告しましたね。しかしあなたは、無視しました。
 あなたは大統領に再選されたことで、この戦争が信任されたと思っているかもしれません。しかし、アメリカ国内でも多くの人々が反対しています。世界の世論の多数はイラクヘの戦争と占領は間違っていると考えています。あなたの盟友である小泉首相のいる日本でも、週半数の世論はこの戦争に反対し、自衛隊の撤退を求めています。
 イラクの人々やアメリカ人や日本人を含む外国人の命が失われるのはもうたくさんです。
ただちにファルージャでの軍事作戦を中止してください。そしてあなたたちの兵士を本国に帰還させてください。それこそがイラクの「平和と復興」を実現する一番の近道です。
 あなたが、これ以上罪を重ねないことを私たちは望んでいます。
 ファルージャの人びとを救え!米英軍はイラク・ファルージャヘの総攻撃をただちにやめよ!

11・10米大使館抗議・要請行動参加者一同


日韓自由貿易協定交渉を即刻中止せよ!

 一一月一〜三日、日韓両国政府は、日韓自由貿易協定(日韓FTA)第六回政府間交渉を行なった。
 昨年一〇月、日韓FTA共同研究会報告書が日韓両政府に提出された。報告書では、貿易赤字など韓国側に不利があるものの、日韓産業間の戦略的提携がすすむことで両国に有利に働くとされている。しかし、FTAが現実化すれば、韓国では中小零細企業の倒産や合理化による労働者の解雇など悲惨な状況がもたらされるのは必至だ。農業分野では、両国とも食料生産基盤がいっそう悪化することになる。また、さまざまな人の健康と安全にかかわる基準が「貿易の迅速化」の名の下に大幅に規制緩和されることになる。その上、「非関税措置」と「ビジネス環境整備」のためと称して労働運動をはじめ農民、環境、消費者運動などを取り締まる条項が盛り込まれようとしている。そして昨年末から交渉が開始された。

 第六回日韓FTA交渉に抗議して、初日から最終日までの三日のあいだ、日韓の労働者・市民団体による抗議行動が東京の外務省前で展開された。
 韓国からは、民主労総と韓国労総、民主労働党、農民団体、「自由貿易協定・WTO反対国民行動」など一四団体で構成する日本遠征闘争団の約一〇〇人が来日した。
 日本側では、中小労組政策ネットワーク、異議あり!日韓自由貿易協定、全統一労働組合、脱WTO草の根キャンペーンなどによって構成された「日韓FTA交渉に反対する11月日韓共同実行委員会」が共同行動に参加した。

 十一月一日、共同闘争団は、警察が何重にも警備する外務省に向けて、過剰警備・弾圧に抗しながら、シュプレヒコールをあげ抗議行動を展開した。外務省の向かい側の農水省前の歩道で日韓民衆の共同集会を開き、日韓労働社会市民団体の共同声明「日韓民衆の生活を破綻の崖っぷちに追いやる日韓自由貿易協定交渉は即時中止せよ!」を読み上げ、座り込みと抗議行動を行った。民主労総と韓国労総の代表は、連合、全労連を訪問し、日韓FTAへの取り組みと闘争協力を要請した。
 二日、抗議書簡を渡そうとする共同闘争団に対して、外務省は事前の約束を反故にして書簡を受け取らない不誠実な対応。闘争団の抗議に対して警察が弾圧、二人が負傷し、病院に送られた。その後、外務省前での行動が一段落して、国会前に代表団は移動した。歩いて国会に向かったグループに対して、警察は横断舗道上に隊列を組んで移動を阻止し、抗議した労働者たちにタテで襲いかかり、全日建労組組合員一名を不当逮捕した。官庁街での衝突の発生という警備上の失態を糊塗しようとする丸ノ内署による「報復」だったと見られる。国会議員会館前での集会では、民主党や社民党の議員からの発言を受け、不当逮捕に抗議した。ついで、闘争団は、日本経団連に向かったが、警察が道路を封鎖したため、歩道に座り込んで抗議行動を行った。夕刻からは、渋谷・宮下公園で日韓労働者共同集会が開かれ約五〇〇名が参加し、全労協議長、韓国側遠征闘争団団長が発言し、全統一労組の鳥井一平書記長が日韓FTA反対共同行動について報告し、当日の不当逮捕に対する抗議声明が確認された。
 三日は休日だが両国政府の交渉は行われていた。この日も警察の厳重な警備をはねのけて農水省前で座り込みの抗議集会を行った。

<日韓労働社会市民団体の共同声明>

日韓両国民衆の生活を破綻の崖っぷちに追いやる日韓自由貿易協定交渉は即刻中止せよ!

 ……日韓FTA交渉に反対して、韓国から韓日FTA阻止韓国民衆遠征闘争団が来日し、日本ではこの遠征団を受け入れてともに闘うために、日韓FTA交渉に反対する11月日韓共同行動実行委員会が結成された。そして、本日より交渉期間中の一一月三日まで、私たち日韓の労働社会市民団体は、日韓FTA交渉に反対する一一月日韓共同行動に取り組むことを宣言し、日韓両国政府交渉団に以下のことを強く要求する。

 これは、日韓FTA交渉に反対する日韓共同行動の第一歩であり、この日韓連帯の歩みはさらに大きく広がっていくだろう!

 一、日韓両国政府は、日韓FTAにかんする交渉テキストと交渉の全過程を公開せよ!

 一、日韓両国政府は、「非関税措置」や「ビジネス環境整備」を隠れミノにした労働者民衆の権利侵害措置をただちに撤回せよ! 

 一、私たちの労働・生活・環境・人権を破壊する日韓FTAをはじめとする、すべてのFTA交渉を即刻中止せよ!

二〇〇四年一一月一日

 日韓FTA交渉に反対する11月日韓共同行動実行委員会(日本)

 韓日FTA阻止韓国民衆遠征闘争団(韓国)


教育基本法の改悪をとめよう!

      11・6全国集会に五五〇〇人


一一月六日、日比谷野外音楽堂で、「かつて子どもだった人に 今の子どもたちに そして未来の子どもたちへ 戦争しない国で生きたい 子どもは『お国』のためにあるんじゃない!」をスローガンに「教育基本法の改悪をとめよう!11・6全国集会」が開かれ、五五〇〇人が参加した。
 はじめに、司会者から、この集会が、五点の実行委員会の申し合わせ事項(@教育基本法改悪反対の一点での幅広いネットワークをめざした運動である、A非暴力であること、B互いに誹謗、中傷、攻撃を行わない、C意見の相違を認め合い、一致点を大事にする、D組織、個人にかかわらず、互いに対等、平等である)にもとづくものであること、教育基本法改悪の動きに対して全国で反対する運動が行われていること、今日の集会を成功させ一層おおきな反対の声をあげていこう、と発言があった。
 北海道をはじめ各地からの報告・発言、呼びかけ人による報告、会場での参加者インタビュー、ニュースペーパーのコントなどのパフォーマンス、メッセージの紹介など盛りだくさんのプログラムが進められた。国会議員のあいさつでは、福島瑞穂社民党党首(参議院議員)、民主党の生方幸夫衆議院議員、共産党の石井郁子衆議院議員が発言した。
 呼びかけ人の小森陽一東京大学教授は、「情勢、意義、平和、愛国心」と題して報告。
 今日の集会は、北海道から沖縄まで各地から参加しての文字どおりの全国集会となった。来年そうそうの通常国会に上程が予定されている教育基本法の改悪を阻止するためこの秋のうちから力をつくる出発点の集会となった。国家は、非常事態での国民の協力の義務、愛国心の強調で、戦争動員を狙っている。教育基本法の改悪は、国家の命令に服従し、お国のために生命を投げ出す子どもをつくること、教育の面から国民を統制することだ。それを率先してやっているのが、石原都政だ。職務命令で、教員や保護者までもしばろうとしている。日の丸・君が代の強制は、二度と戦争を起こしてはならないという思いを心の中からなくそうとするものだ。
 大内裕和松山大学助教授は、「新自由主義の『教育改革』」と題して報告。
 新自由主義の教育政策は、市場原理を重視するものだ。九〇年代に「ゆとり」と「個性化」の名で導入された。しかし、それによって子どもたちはいっそう競争と差別にさらされるようになった。教育予算のカットで現場教職員数が制限された。個性化では、人格なども評価対象となり、学校も特徴を強制されるなど、逆に画一化がすすんでいる。東京都教育委員会では、校長権限の飛躍的強化、職員会議の校長の諮問機関化、たて型人事権の強化などが行われている。定期異動は校長の気に入ったものが優先されている。新自由主義と小泉政権のアメリカの戦争政策支持が、教育基本法の改悪を求めている。こうした中での、東京の教職員による日の丸・君が代強制拒否の闘いはおおきな意義をもっている。そこでは反戦運動と教育の闘いが現場で結びついたものとなっている。全国からの全力をあげての支援・連帯を訴えたい。
 三宅晶子千葉大学教授は「(教育基本法)一〇条改悪と心の管理強化」と題して報告。
 いまの教育行政では、商品価値のある個性のみが評価されている。「心のノート」は、子ども心に九年間にもわたって、目的が達成されないのはあなたの自己責任だなどと吹き込むものだ。都教委は日の丸・君が代強制で、三〇〇人以上の教員を処分し、再発防止研修などの踏み絵で、転向・取り込みをはかっている。教育基本法の一〇条では、「教育は、不当な支配に服することなく」となっているが、それを「教育行政は、不当な支配に服することなく」へと書き換えられ、教育行政がなんでもできるようにしようとしている。同五条は、男女共学について定められているが、これを家族や共同体を尊重する立場から排除しようという動きも強まっている。
 高橋哲哉・東京大学教授は「運動の拡ひろがり、展望、方向性」と題して報告。
 私は、スコレ=自由の学校、教育基本法改悪=憲法改悪という二つのことについて話したい。教育基本法の「改正」は教育の破壊だ。新自由主義による競争の激化で、子どもも教職員もクタクタに疲れきっている。学校では特高警察のような監視が強まり、転向が強要されている。疲弊と消耗、不信と絶望、これが教育現場にある。しかし、学校(スクール)の語源は、ラテン語のスコラ、さらにさかのぼればギリシャ語のスコレだが、スコレは「余暇、ゆとり」ということだ。学校に必要なものは、精神的にも肉体的にも、ゆとり、余裕、時間だが、「ゆとり教育」はひとにぎりのエリートのためにその他を切り捨てるものになっている。教育基本法改悪は憲法改悪であるというのは、憲法の前文に憲法の基本理念を生かすものは教育にあると言っているからだ。教育基本法が変えられると憲法理念実現の手だてが失われることになるのだ。教育基本法には、子どもたちの自由とともに私たちの自由がかかっている。
 集会アピールが参加者全体で確認され、事務局から国会での教育基本法改悪論議に対応して来年五月またはそれ以前に大集会を開くことが提起された。当日、会場では一七二万円をこえるカンパが寄せられた。
 集会後のパレードでは、教育基本法改悪反対、憲法改悪反対、イラク戦争反対などを市民に訴えた。


きっと勝つ! たたかいは今

     
家族が語る国鉄闘争18年

 「私たちの人生を勝手に決めないでください」。国鉄闘争を自ら破壊しようとした国労本部に対して、闘争団家族は叫んだ。国鉄の分割・民営化から一八年、旧国鉄・鉄建公団に責任をとらせ闘争勝利に道を切り開く鉄建公団訴訟は最後の山場を迎えている。全動労争議団、千葉動労争議団も鉄建訴訟に合流する方向だ。一〇月二八日からは国土交通省前座り込みが行われ、一一月四日には、鉄建公団訴訟第三回個別立証が東京地裁で開かれた。

 十一月四日、東京・全水道会館ホールで、「きっと勝つ! たたかいは今、女たちにシフト 家族が語る国鉄闘争一八年」(主催 国鉄闘争会議・鉄建公団訴訟原告団、共催 納得がいく解決を!国鉄闘争女性応援団)が開かれた。
 はじめに、主催者を代表して二瓶久勝・国鉄闘争会議議長が発言。
 四党合意と国労本部の闘争団切り崩しに抗して、闘う闘争団、共闘会議、鉄建公団訴訟を組織してきた。いま大詰めを迎えている国鉄闘争に共闘会議は全力をあげる。それは、裁判闘争の支援であり、今年の大衆運動の総決算として一二月一日の日比谷大集会に全国から一万人を結集すること、原告団は強化されているがまだ参加していない闘争団に合流を呼びかけること、全動労などとも一〇四七名の統一戦線をつくりあげることだ。
 鉄建公団訴訟裁判報告は原告・博多闘争団の田島省三さん。田島さんは、地裁法廷でのやり取りを報告して、「秋暑し とくに地裁の 大法廷」という自作の俳句を披露した。
 連帯あいさつは前田ゆき子静岡市議(静岡ふれあいユニオン)から。
 「国鉄闘争とともに」と題して、「日の丸・君が代」不起立教員の根津公子さんが、この闘いの正しさは歴史が証明する、きっと勝つ、そうしていくことが次の世代へのプレゼントだと、闘争団を激励した。
 高校生のKEINAさんの「NO WAR! 反戦の歌」につづいて、闘争団家族による「きっと勝つ!トーク」。
 藤保美年子さん(音威子府闘争団家族)と田中広子さん(稚内闘争団家族)が思いを述べた。
 長期にわたる闘争での職・収入の問題、家族の問題などが語られ、その中で、国労本部の締め付けが闘争団員と家族に多大な苦しみを与えていること、そうした行為に対する怒りと、それゆえに鉄建公団訴訟に何としても勝利していかなければならないという決意が表明された。
 最後に闘争団・家族が壇上にあがり、参加者全員で、勝利にむけての頑張ろうで意思一致を確認した。


郵政労働者 第25回全国職場交流会

 郵政関連の労働者が集まり一〇月三〇日から三一日にかけて「第二五回全国職場交流会」が香川県・高松国民宿舎で開催され、全国から六〇名を超える人たちが、今の郵政民営化攻撃やJSPでの職場合理化問題などを話し合い、交流を深めあいました。
 会場になった高松国民宿舎は栗林公園のそばにあり、高松市内を見渡せ、源平合戦で有名な屋島が正面にあり、屋島での合戦は、一ノ谷からにげ出した平家軍は香川県の屋島(やしま)の陣に入った。源義経(みなもとのよしつね)は、部下の反対をおしきり、あらしの中を小数で四国に渡った。あらしの中、四国に渡ってこないだろうと油断していた平家軍の不意をついた。不意をつかれた平家軍は再び、海ににげ出した。このとき、源氏軍の那須与一(なすのよいち)が平家軍の船上の扇(おうぎ)を射落としたことは有名。との歴史ある土地柄で、集まった労働者は、闘いを模索をする交流をしてきました。
 郵政の今の職場状況は、小泉の「民営化」攻撃に象徴され、民営化なしの民営化状況におかれています。勤務時間は守らない、サービス残業当たり前、下請けや外注の業者にはコストダウンの押し付け等々、ひどい状況になっています。職員も査定制度の導入があり、また全国で一二〜三万人がいる有期雇用労働者(アルバイト)職員も「スキル」導入で賃金単価が一〇〇〜四〇〇円もダウンしている状況です。今の職場の現状は有期雇用労働者がいなければ区分や配達ができない状況であり、また強制配転によりベテラン職員がいない状況の中で、サービスが滞る状況です。また、合理化施策では、郵便内務労働者に人間性と生活・体を破壊する四連続深夜勤務を強行し、当局は「民営化」攻撃の中で危機を煽り、営業ノルマの強制や身だしなみの強制など、「マル生」以上の攻撃をしてきています。そのような中で、全国から闘いや裁判闘争の報告、職場の状況や新労組結成の決意などを報告を行い、闘いの方向性を確認しました。理論武装として労働大学講師の前田純一氏から「郵政民営への対抗」の講演があり、質疑を行いました。交流会には郵便産業労働組合高知支部やJPU(旧全逓)や郵政ユニオンの労働者が集まり、大いに勉強と交流を深めました。讃岐は昔から歴史ある地です、またうどんもおいしい地です、太く長い闘いを作り出していきましょう。(生瀬正夫)


全力をあげて9条改憲を阻止しよう!

      
 「憲法改悪を許さない 11・3憲法集会」 (東京)

 一一月三日、東京・星陵会館で「憲法改悪を許さない11・3憲法集会」が開かれ、四〇〇人を越える参加者があった。

 はじめに、許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さんが開会のあいさつ。
 憲法改悪の動きが強まっている。今年のこの集会は、憲法を愛する女性ネット、憲法を生かす会、全国労働組合連絡協議会、ふぇみん婦人民主クラブ、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、平和をつくり出す宗教者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会で構成する「11・3集会実行委員会」と、前社民党党首の土井たか子さん、評論家の佐高信さん、辛淑玉さんなどによる「憲法行脚の会」が共同して開かれている。
 小泉首相は、憲法に真っ向から違反して、アメリカのイラク戦争に参加した。イラクへの自衛隊派兵をイラク特措法によるとしているが、サマワの自衛隊宿営地には連続して砲弾が撃ち込まれている。そこはすでに「非戦闘地域」ではない。しかし、小泉首相はイラク特措法にも反して、自衛隊の派兵を継続させているばかりか、今年の一二月の期限切れとなるのに、さらに延長させようとしている。まったくのアウトロー状況で立憲主義がなくなっていると言わざるをえない。 
 だが、最近の日本経済新聞のアンケートによると新しい動きが見て取れる。憲法九条を守れという二〇代の若者が多くなってきている。この間のイラク反戦運動でも若い人たちの大きな登場があった。ある人が言った言葉だが、私たちは微力だが無力ではない、微力は合流すれば大きな力になる、というのがある。改憲に反対する動きも活発になってきている。各地での九条の会のつどいはつねに会場にあふれる人が集まってきている。もっと多くの人と協力して憲法改悪反対のできるだけ広い運動を作っていこう。

 つづいて、水島朝穂早稲田大学教授が「改憲論と冷静に向き合うために」と題して講演。
 いまから一〇年前にここの会場でのシンポジウムで話したが、その日は読売改憲試案が出された日で、六時間にわたるものだった。当時の村山政権の下でアフリカ・ルアンダへのPKOで七・六二ミリ機関銃が使われるということだった。その砲弾を持ってきて見せながら、海外派兵と「機関銃一丁の意味」と題して話した。今日は、イラクに自衛隊が持って行っている対戦車ロケットのツカを持ってきた。一〇年でこれほど大きく変わったのだ。
 今日ここに集まったのはゆるぎない護憲派の確信的な人ばかりだろうが、今後の運動ではもっと、ゆるぎある護憲派やそうでない人びとにも届く運動が必要になっている。
 憲法についての民衆的な論議は、明治一〇年代に第一回目のうねりがあった。植木枝盛など自由民権運動の中から生まれたものだ。その次が敗戦直後の一九四五〜四六年当時の下からの憲法草案だ。それらの基調の一つは権力を信じないということだ。私自身は護憲派ではない。自分を護憲派にこり固ませてはいけない。将来、第一章天皇のなどについてはなんとかしていくべきだと思っている。一〇年前に読売改憲試案が出たが、こういうものにたいしても、しっかりと疑ってみることが大事なことだ。 
 革新自治体華やかなりし頃、京都の蜷川府政は「憲法を暮らしに生かそう」というスローガンを掲げた。しかし、これは違うのではないか。憲法は「みんなで守る大切なきまり」というものではなく、憲法99条にあるように「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」となっているように、かれらに守らせるものだ。立憲主義と言うものは、国家の暴走を抑止するものだ。それだけではない。民衆の多数派の意見であっても憲法に反するものは排除するというものだ。読売新聞の改憲試案は、99条を削除して国民に憲法擁護の義務を負わせようとしているが、これは逆転だ。
 憲法九条は、他国との戦争を禁じているだけではない。社会を平和的にする仕組みでもある。いま日本には、軍法会議などというものはないが、それは九条からきている。
 また憲法は抽象的に過ぎるという意見もあり、具体的にさまざまな条項を書き込もうという動きもある。しかし、憲法は何でもありのコンビニ的なものでなく、抽象的なものでいいし、それを法律などさまざまに具体化して行けばいいものだ。
 憲法は権力を抑えるためにある。立法、行政、司法の三権分立がそうだが、中央政府と地方の分権でも地方の力をつけることが大事だ。

 つづいて運動体からの発言。
 若者たちのグループ「9LOVE」は、大勢で9の文字を描いたTシャツを着て渋谷のスクランブル交差点などでパフォーマンスを行っているが9には憲法九条などいろいろな意味を込めている、9のかたちをしたパンなどで、9的な世界を作りたいと思っている、と発言した。
 沖縄一坪反戦地主会関東ブロックは、沖縄辺野古海上基地建設反対の闘いを報告し、支援を訴えた。
 教育基本法改悪を止めよう!全国連絡会は、一一月六日に予定されている教育基本法改悪反対大集会への参加をアピールした。
 男女平等を憲法から消すな!STOP!憲法24条改悪キャンペーンは、石原都政下で、ジェンダー・フリーにたいする攻撃、読売改憲試案や自民党の憲法改正プロジェクトにおける家族の価値の強調など危険な動きに反対しようと、発言した。
 辛淑玉さんと朴慶南さんからのお話があり、全労協の池田清常任幹事が閉会のあいさつをおこなった。


11・3 輝け九条! 大阪のつどい

 日本国憲法公布五八年目の一一月三日、大阪・寝屋川市民会館で「一一・三輝け九条!大阪のつどい」が一〇〇〇名の参加の下で開催されました。
 当日はアメリカ大統領選挙など今後の世界を左右する時期の中で、つめかけた人々は子供連れや若者も多くまた、戦後を平和のためにたくましく闘ってこられ多人々などが熱心に講演にも耳を傾けていました。
 大阪では九月一八日に「九条の会」主催の講演会に四〇〇〇名もの人々が集まり、それに負けないぐらいの熱気の中で開催されました。   
 講演は東京大学教授で子どもと教科書全国ネット21代表委員をされている小森陽一氏から「今こそ活かそう憲法九条」との題で、この間ないがしろにされている憲法九条や、教育基本法関連する問題、世界の情勢やそれらに関連する事柄を丁寧に説明され約二時間ほどの講演をいただきました。
 講演では、国民主権の意味や派兵問題での日本とスペインの違い、「国権の発動」で戦争を禁止している憲法前文と九条があるのに超法規的な国権の発動であるイラク派兵は違法であること、この間の重要問題が閣議のみで処理の仕方、集団的自衛権をなぜアメリカが求めているのか、「悪の枢軸国」の意味、九〇年の「周辺事態法」制定から〇三年の「有事法制」に係わる流れと背景などについて具体的に解説がされた。とくに、二国間の軍事同盟問題はイスラエルやイギリスそしてカスピ海周辺の国々の例を出しながら説明がなされた。
 現在、アメリカ国務副長官のアーミテージらが日本に求めてきている憲法九条改悪は、東アジアにおけるアメリカの戦略であり、北朝鮮がターゲットでは無く中国・ロシアに対する覇権争いにある。そうした要求に対する日本政府の対応はというと、ハード面では自衛隊の存在と世界第二位の軍事予算を持つということであり、システム面ではアメリカ世界戦略の軍事システムとの一体化をめざす「国民保護法」と名づけられた国内での軍事優先施策の導入がある。最後にソフト面だ。戦争する心をつくる教育の問題が残されている。そのことが憲法九条にリンクをしている。それをはっきり示すのが、石原都知事の下での東京の教育現場での「愛国心」創りと人格破壊攻撃の現状だ。
 教育基本法制定時での「真理と平和を希求する」という言葉の意味をしっかりとつかんでこの憲法九条改悪問題を世間にいっぱい広めていく活動が非常に大切になっている。 (大阪通信員)


ヒロシマから9条改憲反対を

 アメリカ大統領選挙の開票日と重なった一一月三日午後一時半から、広島県民文化センターホールを会場に、「九条でつくる世界の平和」一一・三憲法のつどいが、同実行委員会の主催で約三〇〇名が参加して開かれた。
 このつどいは、今年六月に九名の呼びかけで結成された「九条の会」のアピールに応えて、ヒロシマから「憲法を守るという一点で手をつなぐ運動の新たなスタートになれば」との思いで準備されてきたものであり、さらに広範な人々と共同して来年の三月に予定される九条の会アピールを支持する広島集会のプレ集会としての意味をも持っていた。
 Kネットの歌で始まった集会は、まず司会の石口弁護士の開会挨拶、一八名の集会呼びかけ人のうち一二名が登壇しそれぞれが自己紹介を行った。
 さらにそのうちの三名が集会に寄せる思いを述べた。先の参議院選挙に立候補し一〇万余票を獲得しながらも敗れた岡本修道大教授は、自らが主催する平和学の意義に触れながら、海外からの留学生は日本の技術や経済を学びに来る人が多いが、この集会に参加しているスリランカの留学生は「平和を学びに来たと言っている」と紹介した。
 被爆者で元広島平和記念資料館館長の高橋昭博さんは、被爆体験をふまえて「憲法九条の改悪には断固反対する」と声を大に訴えた。
児童文学者の三浦精子さんは「平和の大切さを教えている子供たちに戦争に行ってほしくない」と切々と心情を述べた。
 続いて、君島東彦立命館大学教授による「市民平和活動の時代」と題してのメイン講演に移った。君島さんはレジュメにそって次のように述べた。
 今の世界は一握りの「北側」の国が富を独占している。帝国のアメリカは戦後直後から「この不平等を維持し続けることができるような国際関係をつくること」をその対外戦略として一貫させている。しかし南からの反乱を武力で鎮圧し、北の持続的な平和・安全・豊かさを守ることはできない。根本原因に向き合い、地球社会を公正なものにする地道な努力を積み重ねる以外に安全は得られない。その方法を示している日本国憲法は決して一国平和主義などというものではなく、数十年いや百年後の世界史的意味を持っていること。したがって小手先の議論でなく前文と九条を結び付けて憲法の本質を把握することが重要で、直接的暴力とともに専制と隷属、圧迫と偏狭、恐怖と欠乏という構造的暴力の両方を克服するよう市民に義務を課していると受け止めよう。これは世界の趨勢となるとのゆるぎなき確信を持って、受身の反対や「しない」運動から平和をつくるさまざまなNGO活動、「する」平和主義である「市民平和活動に取り組もう」と講演を締めくくった。
 集会は後半に入って、遅れて駆けつけた呼びかけ人やスリランカの留学生、広島弁護士会会長などが発言し、最後に三末カトリック広島教区長の閉会挨拶、うたごえ合唱団の歌で終了した。
 幅広い参加者は、それぞれに新たな視点と方法で憲法を獲得し活かして行こう、改憲の動きを押し止めるために各自治体単位に草の根から九条の会のアピールに応える会を作ろう、などとアンケートに記入して持ち場に帰っていった。三月集会の成功を胸に……。(I)


書評

  
勝利の確信は確かな実践の土台の上に ……
       
 高田 健 「護憲は改憲に勝つ」  技術と人間 2004年10月31日刊 2200円

                              佐山 新

一〇年前のある日


 一一・三憲法集会で、講師の水島朝穂さんが「一〇年前の今日、読売新聞社が社としての改憲試案を発表した・・・」と語るのを聴いていて、そうか、あれからもう一〇年もたったのかと少しく懐旧の念にかられた。
 思い出す、都内のとある公民館の畳敷きの部屋で、読売改憲試案を検討するささやかな学習会が開かれた。私はレポーターを担当して四苦八苦していた。事前に『THIS IS 読売』一九九四年一二月号「憲法を考える時が来た」を読み込み、素人考えながら「ここがおかしい」と思われる点(それは山ほどあった)について指摘していった。
 中でも重要と思われたのは、同誌に寄稿していた北岡伸一立教大学教授の文章に触発された論点であった。北岡自身は読売試案を評価する立場だったが、中でこういう一節を書いていた。「すなわち、憲法は何よりも為政者の守るべきルールを定めたものであり、為政者の最大の責務は、国民の安全を守ることである」(p一四三)と。前後の文脈は、だから「非核の原則を憲法に書き込むことは」「国民の安全を守るための手段を制約する」ことになるのでなじまないというとんでもないものである。にもかかわらず、件の一節は私に目から鱗のインパクトを与えたのだった。
 読売改憲試案は九九条の天皇以下公務員の「憲法尊重擁護の義務」を削除し、かわりに「前文」の最後に「この憲法は、日本国の最高法規であり、国民はこれを遵守しなければならない」の一文を置いていた。水島さんが力を込めて指摘するようにまさに近代立憲主義の転倒がなされようとしているのだった。北岡の文章で初めてこのことに気付かされたというのは、私自身の無知をさらすことに他ならないが、その学習会での私自身の最大の収穫になったのは事実だ。それまでに、日本における「法治主義」の理念の転倒―権力を縛るのでなく、民衆の遵法精神へと換骨奪胎されてしまう―について考えることがあったのが、北岡の一文に触発される素地となっていただろう。

二年間の蓄積の重さ

 刊行されたばかりの本書を一一・三集会の会場で買い求めることができた。前著『改憲・護憲 何が問題か―徹底検証・憲法調査会』は、国会憲法調査会の実態を余すところなく暴露していて、まさに反改憲市民運動の斥候のような著者の奮闘ぶりが印象的だった。
 出版記念会の場であったか、某紙の記者が、「記者クラブで調査会の様子をモニターで見てると、傍聴席に必ず高田さんの姿がある。これではならじと自分も駆けつける・・・」と述懐していた通りだ。
 本書の後半は『週刊金曜日』連載の「今週の憲法調査会」がまとめられていて(二〇〇二年一一月八日号〜二〇〇四年六月一八日号分)、前著に引き続き貴重な歴史的証言となっている。相変わらずの議員の出席率の低さ、与党議員の好き勝手な思いつき的言いたい放題という「学級崩壊状況」は相変わらず、その中での多くの参考人の真剣な主張、ごく少数派となった社民・共産両党議員の必死の頑張り・・・。しかし、本書の何より特筆すべき性格は、前著以来二年間の間の運動の蓄積に裏打ちされ、確信に満ちたある意味で大胆な運動論の提起にあると言ってよいだろう。
 「まえがき」で著者は書いている、「この二年、筆者にとって大きな変化を感じるものが二つあった。
 その一つが『WORLD PEACE NOW』のイラク反戦運動の高揚と、運動への若者たちの再登場である。
 そしてもう一つが、本年六月十日―(略)―『九条の会』の誕生である―(略)―日本の市民運動の様相が大きく変わってきた。多くの人々がここに可能性を見いだし、希望を持ち始めている。」と。書名の『護憲は改憲に勝つ』は、著者が運動の渦中に身を投じ、身をもって実践してきた上で遂に獲得した確信なのだ。

革命運動の歴史の革命的批判


 『WORLD PEACE NOW』の運動スタイル(著者は「運動の文化革命」と評価する)は、私自身の周辺でも少なからぬ論議を呼んだ。
 特に長く熱心に市民運動を続けている人々の中には、時として違和感・反発の声も聞かれた。
 しかしその多くは、断片的な事実をとらえての反応であって、それは本書で紹介されている具体的な運動の経過をたどってみれば氷解するものだと私は思う。運動の坩堝の中に共にあれば、議論し、相互諒解に達するのは容易なことに思える。ただ、彼(彼女)が運動の圏外に身を置き、冷ややかな傍観者の(もしかしたら妨害者の)視線で評論する立場に身を擬すれば、まず、相互諒解は不可能である。著者が「反戦の闘いに内在するか、それとも外部から嘲笑するか」で行っている辺見庸批判はその意味で重要だと思う。
 批判の対象となっている『世界』三月号の辺見論文は私も読んだ。
 あまりのひどさに、こんな代物を巻頭に据えた編集部の意図を測りかね、憤懣やるかたない思いに駆られた。薄汚い悪臭紛々としたぼろ雑巾で顔を撫でられたように不愉快だった。その後『技術と人間』に掲載された著者のこの批判を読んで、私の怒りの由来が余すところなく解明されていることに心底共感した。そればかりでなく、著者が問題を更に一歩進め、「七〇年闘争と内ゲバ主義の克服の課題」を主題とし、「私は辺見と同時代を別の『世界』で生きてきたが、内ゲバ主義を批判することによって、この歴史の清算の責任の一端を引き受けるつもりだ」と断言している姿勢に、強く打たれた。
 何より、市民運動の中心に位置する人物がこの問題をこのように正面から取り上げることが異例でもあり、それこそ著者の身辺の安全すら危惧されるからである。実際には様々な運動のあちこちでひっそりとささやかれていることなのであるが。
 私が敬愛してやまない中野重治はかつて「日本の革命運動の歴史の革命的批判」という意味のことを言った。
 説明抜きの言いようになるが、私は著者の主張・姿勢はこれに深く通い合うものであると考える。「憲法問題をめぐるせめぎ合いはいよいよ天王山にさしかかりつつある」(前書き)つまりは日本の民衆の行く末が決定的に左右される崖っぷちに、今私たちは立たされている。
 私たちの運動が大きく脱皮を迫られている、そこで決して避けては通れない問題の一つを、著者は真剣に提起しているのである。閉塞状況の打開に向け、懸命に努力する人々皆が共に直面し解決しなければならない課題として。
 一一月六日、日比谷野外音楽堂を五五〇〇人が埋めた「教育基本法の改悪をとめよう!全国集会」に参加した。
 三時間立ちづくめの集会と長いデモ行進で疲れたが、日教組、全教、少数派独立組合が四人の呼びかけ人を媒介に対等につくり上げている集会に新鮮な息吹を感じた。これも著者の確信につながるものであろう。
 (本書の注文は市民連絡会。FAX03ー3221ー2558へ)


KODAMA

   
大衆運動と新しい「武器」

 「レイバーフェスタ2004」〜「労働」を観よう・聴こう・話そう〜が、一二月四日(土)に開催される(<午後の部>中野勤労福祉会館、<夜の部>なかのゼロ小ホール)。
 映像や音楽などを通じて、身近な「労働」「生活」を見つめ直す、はたらく人々のお祭りの「レイバーフェスタ」は、二〇〇二年始まり、今年で三回目になるが、大阪などにもひろがっていっている。
 前の二回に参加したが、現場の労働者たち自身でつくる「三分ビデオ」などには、それぞれの争議や現場での闘いを、聞いたり読んだりして理解しているのとは格段に違う迫力がある。総行動などの社前行動で争議団の代表の短い報告を聞く機会があるが、映像で見てしまうと当該の労働者の顔と意見が鮮明に心に残り、闘争への連帯感がグーンと高まるのは言うまでもない。
 この間のイラク反戦運動も、出来の良いビデオがあるおかげで、新しい段階の闘いの様子が全国各地で感動をもって受け入れられるようになっているのは素晴らしいことだ。国鉄闘争のビデオ「人らしく生きよう」やフジ・産経グループと闘っている反リストラ産経労の松沢弘さんのビデオなどは、映像が闘いを知らせ、社会的に支援を広げ、勝利の陣形をつくる鋭い闘争の武器となっていることを立証するものだ。
 韓国やアメリカなどの運動は、日本よりそうした手段をもっと有効に使っているそうだが、日本でも良い手本は直ちに学ぶべきで、レイバーフェスタのはたしている役割は大きい。労働者だけでなく多くの人が参加して、刺激をうけ、それを契機に見る側の人から発信する人にかわっていけば、労働運動をはじめさまざまなところでもっと積極的な変化が起こって来るに違いない。
レイバーフェスタ実行委員会の連絡先は、〇三(三五三〇)八五九〇。
(MD)


複眼単眼

    震災など天災と政治の無責任


 新潟中越地震が続いている。かの地には間もなく厳しい冬がくる。被災された皆さんに衷心からお見舞いを申し上げる。
 この国はいったい、どうなっているのだろう。今年は台風などの豪雨が多くの人びとを襲い、今度は震度7に及ぶ強烈な震災に見舞われた。
 山が崩れ、川が崩れ、田畑が崩れ、家が、道路が崩れ、町や村が崩れた。何万もの人びとが寒さの中で、今なお家に戻れないで、テントや車の中、あるいは避難所で生活をしている。
 そして、こうした災害はマイノリティや社会的弱者にはより厳しく襲いかかることは、阪神淡路大震災でも経験済みのことだ。
 案の定、お年寄りがつぎつぎと倒れている。例えば、ニューカマーの在日外国人たちは日本語での災害報道があまり理解できないままに、不安の日々を過ごしている。
 被災地の映像や新聞報道を見ながら、国ができる被災地支援の何と小さいことかと腹が立つ。金融機関の救済に力を入れる政府が、こうした被災地にはほんのわずかの資金しか投入しない。
 多くの人びとが寒さで震えているというのに、あまりにもおざなりではないか。この国の政府とは本当に冷たいものだ。
 先のイラクでの香田君の事件でも、人命軽視で、「自衛隊は撤退しない」と最初から交渉を拒否し、香田君の命を見捨ててしまった。香田君がとらわれている最中、首相は福田家の結婚式に出ていた。
 そのことを問われると、「じゃあ、何もしないで家にいろというのか」と居直った。小泉という人物、彼はわかっていないのだ。
 被災した新潟にもすぐ行こうとはしなかった。現場を見ないで本当の政策がわかるはずはない。政権の延命のためのパフォーマンスしか頭にないのではないか。
 実は三宅島の被災民に対しても、国も東京都も冷たい。なぜもっと大規模な支援ができないのか。
 最初の地震の夜、震源地の近くに住む友人に電話した。幸い回線はつながったが呼び出し音だけで電話に出てこない。不安になった。
 結局、数日後に電話が通じ、一家皆が外出していたので電話にでられなかったが、無事だったということだった。それどころか、最近自分で建てた家屋だが、全く無事だったということだ。棚の荷物もほとんど墜ちて来なかったという。阪神大震災の印象が強く、その家をつくるときに耐震構造ということを特別に真剣に考え、建てたのだという。かあちゃんはそれを少し誇らしげに話してくれた。
 もう一人の友人は農家を買って移り住んだのだが、家はかなりやられ、数日後に戻ったという。しかし、彼も自分の家の後かたづけもそこそこに村の人たちの救援のために飛び回っているようだ。
 現地ではいま多くのボランテイァが懸命の支援を行っている。冷淡な政治をカバーしている。
 蛇足をひとつ。官邸前の香田君の救援運動の中で「自衛隊はイラクから引き揚げて新潟に」というプラカードを見た。
 気持ちはわかるがやはり同意できないスローガンだった。(T)