人民新報 ・ 第1168号<統合261号>(2005年5月25日)
目次
● 2万4千人で普天間基地を包囲 普天間基地を撤去せよ! 辺野古移設を断念せよ!
● 普天間包囲行動に連帯して東京での行動
● 被害者とともに日本の過去の清算を求める
● 郵政民営化反対を広島から
● 郵政労働者ユニオン中央本部 「郵政民営化法案の閣議決定、国会提出に断固抗議する」
● 「話し合うことが罪になる!」 共謀罪新設に反対しよう
● 安全優先を捨てたJR 国鉄分割民営化研究会が講演会
● JR西日本福知山線事故に関する声明 ( 鉄建公団訴訟原告団 国鉄闘争に勝利する共闘会議 )
● 「罪を憎んで人を憎まず」と「論語読みの論語知らず」
● KODAMA / 岡山県下の新市、4・29合併選挙市民派二名が勝つ !!
● せ ん り ゅ う / ゝ史
● 複眼単眼 / 改憲派が持ち上げる聖徳太子の「十七条憲法」は偽書?
2万4千人で普天間基地を包囲
普天間基地を撤去せよ! 辺野古移設を断念せよ!
五月一五日、午後二時一五分から三回にわたって米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)は、地元沖縄をはじめ全国から参加した二四〇〇〇人のヒューマン・チェーンによって包囲された。梅雨の晴れ間、基地の周囲十一・五キロは何重にもなった箇所を含めて人びとの手でつながり、色とりどりの旗やのぼり、プラカードが林立する中、「普天間基地の即時返還」「辺野古新基地建設反対」「下地島、伊江島、嘉手納など基地の県内移設反対」などのスローガンが叫ばれ、何度も何度もウエーブが走った。このヒューマン・チェーンには、ヘリ墜落現場に近くでマンションの自宅が多くのコンクリート破片に襲われた住民のお母さんと一歳の子どもの姿もあった。
沖縄の本土復帰から三三年、基地近くの沖縄国際大学に米軍ヘリが墜落してから九ヶ月、日米安保体制の下で、いまだに米軍基地問題が沖縄に集中され、解決していないことに対する怒りが表明された。これらの空気を反映して、この日の行動は普天間基地の包囲行動としては過去最大の参加者となった。
包囲行動の後、午後四時半から宜野湾市の海浜公園で開かれた県民大会には七五〇〇人の労働組合員、市民が参加し、共産党、社民党、民主党の党首クラスの代表や国会議員も参加し、挨拶した。
集会で宜野湾市の伊波洋一市長が「今回の基地包囲の成功は、市民、県民が普天間基地の返還を強く求めていることを内外に示した。この行動の成功を起点にして基地の縮小撤去、普天間基地の転換のための運動をいっそう大きく展開しよう」と呼びかけた。実行委員長の山内徳信・元県出納長は「この成功は歴史的な成功であり、普天間基地即時返還、新基地建設反対の声の表れだ」と強調した。
この日の行動には名護市の辺野古で新基地建設に反対して座り込んでいる市民を始め、一三日から雨の中を平和行進をしていた本土各県からの労働組合員や、東京を中心にしたイラク反戦の市民団体WORLD PEACE NOWの約五〇人のメンバーなども参加した。WPNのメンバーらは同ネットワークとしては初めての沖縄基地反対行動への参加であった。前日には辺野古の座り込みに参加した後、沖縄各界の人びととの交流集会を開いた。集会には高良鉄美・琉球大学教授、金城睦・沖縄憲法普及協会代表、真喜志好一さん、糸数慶子参議院議員などが参加し、報告した。一五日当日の午前中は、貸し切りバスをしたてて普天間基地や沖縄国際大学などの見学を行い、宜野湾市役所前で人間のくさり行動に合流した。
普天間基地撤去、基地の県内移設に反対する県民大会決議
危険極まりない普天間基地を即時に撤去させ、同時に、辺野古をはじめとする基地の県内移設に反対し、全県下から、そして全国から参集した人々の手によって普天間基地は包囲された。その数二万四千。地響きを立て沸き返るエネルギーの結集は、あらためて普天間基地の撒去と同基地の県内移設に反対する強固な県民意思を内外にアピールした。
今、米軍基地に対する県民の怒りは項点に達している。
昨年八月一三日に発生した、大型ヘリコプターCH53型機の沖縄国際大学への墜落炎上事故は、宜野湾市民の長年の懸念であり恐怖であり、そして宜野湾市当局や市民から基地の早期撤去が求められるなかで発生した。墜落事故は、あらためて、基地と隣り合わせの生活の恐怖を呼び覚ますとともに、その後、事故処理に際して米軍が示した、軍事優先、住民無視の横暴極まりない対応は市民の怒りを爆発させた。
また、普天間基地の代替基地建設地とされだ辺野古では、一年余にわたり、ポーリング調査の作業を阻まれてきた那覇防衛施設局が、ついに去る四月二六日から夜間作業を強行する暴挙に出てきた。しかも、県文化環境部から夜間作業の再考を促されるなかで。住民は、今、漆黒の闇の海上にボートを繰り出し必死の抵抗を続けている。
普天間基地の危険性は、軍事基地ゆえの必然の危険であり、県内のどこにもその代替地を求めることはできない。
それにもかかわらず、日米両政府は、県民の声に耳を傾けることを頑なに拒み、あくまで、基地の県内移設、たらい回しに固執している。辺野古でのボーリング調査作業を強行するかたわら、嘉手納基地、伊江島補助飛行場、下地島パイロット訓練場への統合・移設案を連日のように打上げ、その都度、新たな怒りと緊張を作り出している。
ここに至って県民世論は劇的に変化した。県内紙が昨年九月に実施した辺野古移設に関する世論調査によれば、移設反対派が八一%を占め、また、具体的な移設先に関する設問では、米国領が七一%、辺野古移設については、わずかに六%にすぎなかったと報じている。また、ヘリ墜落事故での米軍の対応に九四%が納得できないと答え、日米地位協定についても八四%が改定すべきと回答したと報じている。
この調査結果は、県民が、ヘリ墜落事故とその後の米軍の対応、また屈辱的なまでの不平等性を露にした日米地位協定に対して怒り、かかる事態においてもなお、基地の県内移設にこだわり続ける日米両政府に対し強い憤りを表明したと見るほかはない。
政府は、この明確にされた県民意思に応え、今こそ、普天間代替基地の建設を断念し、同基地の無条件返還を果たすべきである。そして、その他の米軍基地の整理縮小を、目に見える形で推進するとともに、基地返還に伴う様々な課題を政府の責任で実施すべきである。そのことが、戦後六〇年、巨大な米軍基地の重圧と犠牲を強いられつづけている県民に対する政府の責務である。
私たちは、戦後六〇年、復帰から三三年目を数える大きな節目の日に取り組んだ、普天間基地包囲行動の成功を踏まえ、日米両政府に対し以下のことを要求する。
一、普天間基地を即時閉鎖・撤去せよ
二、辺野古移設を断念し、嘉手納基地、伊江島補助飛行場、下地島パイロット訓練場等への統合・移設計画を撤回せよ
三、日米地位協定を抜本的に改定せよ
四、駐留軍従業員の雇用保障・雇用対策を図れ
五、市民本位の跡地利用推進、地権者補償、環境浄化など返還対策を国の責任で実施せよ
以上決議する
二〇〇五年五月一五日
普天間基地撤去・基地の県内移設に反対する県民大会
普天間包囲行動に連帯して東京での行動
五月一五日、沖縄での闘いに呼応して、「普天間包囲行動に連帯する5・15東京行動」(主催、辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会)が展開された。
午後一時、防衛施設庁前に集合し抗議行動。午後二時からは有楽町マリオン前での情宣とカンパ活動を行った。
沖縄「返還」から三三年。沖縄民衆は「基地のない平和な沖縄」を願っていたが、沖縄は日米安保体制という戦争機構に組み込まれ、いまなお在日米軍の七五%が集中している。沖縄の人びとは、これまでもさまざまな基地被害のなかで生活してきた。昨年八月の普天間基地の大型ヘリの墜落事故はそれを象徴するものだ。米軍でさえ「世界一危険な基地」と言う普天間でのヘリ活動は再開されようとし、その上、日本政府は、宜野湾市辺野古沖に新たな米軍基地を建設しようとしているのだ。
沖縄の人びとの基地への怒りは大きくなりつづけている。普天間にも辺野古にも沖縄の人びとはNO!の回答をしている。住民投票で圧倒的な反対の数が出ているのであり、日米両政府は、早急に、普天間基地の閉鎖・撤去、辺野古沖新基地を断念しなければならない。
普天間基地大包囲行動の勝利をうけて、一段と米軍基地撤去、安保粉砕の闘いを強めて行こう。
被害者とともに日本の過去の清算を求める
五月二〇日〜二一日に、東京で「《戦後60年》」・被害者とともに日本の過去の清算を求める国際集会」が開催され、韓国、中国、台湾、フィリピン、オランダ、米国から戦争被害者や国会議員や日本の市民運動からなど約二〇〇人が参加した。
二〇日には、議員フォーラムが憲政記念館で開かれ、韓国・台湾・フィリピン・日本の国会議員・立法委員による意見交換が行われた。
午後六時半からは、各国代表報告による全体集会が、YMCAアジア青少年センターで開かれた。
開会あいさつは「戦後六〇年」国際集会実行委員長の土屋公献弁護士(元日弁連会長)。
戦後六〇年、ここで日本は過去の清算をしなければならない。そうしてこそ、アジアの平和、日本のアジアでの地位の安定が可能となる。ところがいま憲法が危うくなってきている。日本は永久に平和国家とならなければならない。そのためには過去のはっきりした清算がなされなくてはならない。
つづいて主な参加者紹介され、各国からの被害者・NGO代表による報告となった。
韓国の梁美康(ヤン・ミガン)さん(国際連帯協議会韓国委員会運営委員長、「アジア平和と歴史教育連帯」共同代表)は、「解放六〇周年を迎える対日過去史運動の現状と課題」と題した報告を行った。
日韓間の歴史的な事件が濃縮された二〇〇五年を迎えている。日本と韓国の市民団体の姿勢は並々ならぬものがあるが、依然として日帝の植民地被害者の問題にかかる解決策が提示されない状況の中にある。被害者たちの生存率はますます低くなっていき、これといった成果も収めることができないままに、六〇年という年月だけが過ぎ去ってしまった。しかし韓国政府の対日過去史政策が以前に比べて変化しているという点は、とても希望がある。日韓協定の文書の一部公開、三一節の盧武鉉大統領談話における賠償問題への言及、八月二三日の対日新ドクトリンなどがそれだ。さらに、二〇〇四年から二〇〇五年にかけて日帝強制動員真相究明委員会、親日真相究明委員全が設置された。このことは、遅れたとはいえ相究明活動が始まったということは大変に意味のあるものだ。
日本軍「慰安婦」問題における最大の障害は、いわゆる「国民基金」だ。日本軍「慰安婦」制度は日本政府と軍隊がともに運営していたものである。このことに対する貴任は、日本政府が果たさなければならないものである。にもかかわらず一九九五年七月、村山連立政権は敗戦五〇周年に際し、「女性のためのアジア平和国民基金」を設立し、民間基金によってこの問題を解決しようとした。日本政府は国連など国際社会の場において、国民基金で法的賠償の責任を果たしているかのように宣伝してきた。国民基金側はこれまでの間に五億六千余万円の募金が集まったと発表している。一九九六年八月には、フィリピンの被害者五名に対し、橋本首相の謝罪の手紙を添えて初めて国民基金の慰労金を渡した。一九九七年一月には、韓国のおぱあさん七名に対し秘密裡に国民基金を支給し、その後で、これをマスコミに公開した。このことは韓国政府と市民たちの強い抗議をまきおこした。今年の一月には、国民基金側は記者会見で、インドネシアで推進中の高齢者社会福祉事業が終わる二〇〇七年三月末に国民基金を解散する、二〇〇二牟九月までの事業を通してフィリピンと韓国、台湾の慰安婦被害者の総計二八五名に対し、一人当り二〇〇万円の補償金を支給したと発表した。今現在も、韓国の被害者たちを対象にして国民基金を受給する行動が巧妙な手段で密かに進められている。国民基金は被害者の間に分裂を引き起こした。また間に入って手数料を横取りするというプローカーたちによる被害事例もはなはだしいものになっている。
日本の歴史歪曲問題について。今年四月五日、右翼教科書「新しい歴史教科書」が日本の文部科学省による検定を通過した。今回の「新しい歴史教科書」の近現代史関連の記述は、韓国と中国の強力な批判によって、日本の文部科学省はある程度の誠意を見せるということから修正要求をしたという可能性は高い。だからと言って、扶桑社版教科書の歴史叙述が「改善」されたことを意味しない。韓国政府の提起した歴史歪曲に対する修正要求は今回も受け入れられなかったからだ。問題は、つくる会の教科書が他の教科書に与える弊害だ。一九八〇年代、韓国と中国の強い抗議を受けて日本政府は「近隣諸国条項」をつくり、教科書の中で近隣周辺国に配慮するという指針を作った。それ以降、日本の教科書の内容は、かなり良くなった。一九九七年には日本の中学校教科書すべてに日本軍「慰安婦」について記載されるまでになった。日本は帝国主義植民地支配の事実を忠実に記述した。しかし、それが逆転させられている。韓国は日本の歴史歪曲と独島問題が必ずしも短期間に解決する問題だとは考えていない。繰り返し継続的に起るこうした問題を解決するためには、民間団体と政府が、力を合わせて解決のための努力をともに展開していかなければならない。二〇〇五年、私たちは岐路に立っている。私たちは日本帝国主義植民地支配の被害問題をその根本部分に再び立ちかえって点検するように要請されている。日韓協定の改定問題、真相究明活動から日本の歴史歪曲に至るまで、さまざまな対日過去史問題を解決することのできる機会をつくり連帯するという要請を受けている。これは右傾化する日本社会に向かって闘う平和勢力間の連帯である。私たちは日本と韓国という国家主義を超え、人権と歴史的な正義という良心をもって、東アジアの平和のために働く歴史の監視人にならなければならない。それこそが、政府主導による見せかけだけの友好の虚像を破ることになり、日本帝国主義の被害者たちの苦痛から目をそらすことのない問題解決の糸口を見付けるきっかけになるはずだ。
韓国からは梁さんの他に、韓国原爆被害者協会、韓国原爆二世患友会、日鉄訴訟原告、韓国シベリア朔風会からの報告があった。
台湾からは、廖英智・台北市婦女救援社会福利事業基金会理事長と二人の戦時性暴力被害者が発言した。
中国からは、劉宝辰・河北大学教授、シベリア抑留訴訟元原告、731細菌戦被害国家賠償訴訟原告団長の王選さんが発言。
フィリピンからは、アジア女性人権評議会のネリア・サンチョさんと二人の戦時性暴力被害者が発言した。
オランダからは、対日道義補償請求財団理事のアドリアセン・スミットさんが、アメリカからは、バリー・フィッシャー弁護士とワシントンとロスアンゼルスの活動家が発言した。
韓国の真相究明活動については、張完翼(ジャン・ワンイク)弁護士(日帝下強制動員被害真相究明委員会民間委員)が特別報告を行った。
二一日には、社会文化会館で、分科会・グループ討論(@「慰安婦」、A真相究明・虐殺・細菌戦・遺骨、B強制労働・戦争捕虜・抑留・BC級戦犯・被爆者、C教科書・歴史歪曲・右傾化)、分科会報告とまとめのための全体集会が開かれた。
郵政民営化反対を広島から
福知山線事故の本質が問われている最中の五月一四日、広島平和公園内にあるメモリアルホールで、郵政民営化反対広島集会が約一五〇名の参加で開かれた。
この集会は、自民党内の反対すら押し切り四月二七日に臨時閣議で無理やり決定された郵政民営化法案に反対し、廃案に追い込むため地方都市である広島から当該の労働者が声を上げる趣旨で、郵政ユニオン中国地本と郵産労中国地本の呼びかけで結成された実行委員会の主催で開催されたものであり、中国地方はもとより四国・九州からも参加があった。
集会はまず、実行委員会から集会開催に至る趣旨と経過報告が開会の挨拶として行われ、続いて二人の講師から講演が行われた。
神戸大教授の二宮厚美さんは、「郵政民営化の危ないねらい」と題して、その背景をなす小泉構造改革の経過と意図を暴き、郵政民営化がもたらす三点の害悪について次のように述べた。第一に、国民の金融資産の草刈場と化し投機のエジキとされる。第二に、国民の通信権の破壊と郵便・通信の営利事業化によって儲からないところは義務づけ、負担のみ押し付けられる。いっそうの効率化に駆り立てるものだ。第三に、生活・労働の全般的市場原理化で最後のツケは労働者に押し付けられる。JR事故に端的に現れているように公共サービスの否定は、賃金・労働条件の悪化はもとより要の安全すら軽視されていく。枝葉でなく事の本質を見抜こう、と述べた。
弁護士の森博行さんは、「郵政民営化法関連六法案について」と題して、混沌とした法案の推移を見通しながらその概要と問題点について解説した。
巷には「郵政事業は四分社」と言われているが実態は六分割であり、複雑な会社構成と今後の推移になる、そして郵貯・簡保がユニバーサルサービスの義務付けをはずされ、民営化完成の一七年以降の扱いはなお不明である、その中で郵政三事業が大きく変貌させられていく、とりわけ職員の雇用と労働条件が極めて劣悪化させられていくこと、などを指摘しながら、他方で、逆手にとっての反撃の可能性が広がる点についても示唆に富むお話であった。
各局で奮闘している郵政労働者や民営化に関心を寄せる共闘関係、そして利用者サイドから参加した人々は、もっと掘り下げた話を聞くために多くの質問と意見を出したかったようだが、時間の関係から最後に集会アピールを採択して第一部は終了した。
あわただしく後片付けをして、参加者は元安橋に集合し、土曜でにぎわう本通り筋を真っ赤な郵便ポストと「海援隊」を先頭にデモ行進して、郵政民営化反対を訴えた。
その後夕刻から翌日正午まで「郵政労働者中四国交流会」が開かれ、民営化反対闘争を軸に様々な職場での闘いについて、熱心な交流と討議が行われた。
地方からも反撃の口火が切られた。小泉と族議員の利権争いに惑わされることなく、民営化に真っ向から反対し、公共サービスの確立と公務労働の社会的規範を確立させていくために、真の郵政改革の実現に向けた今後の奮闘が期待されている。
郵政労働者ユニオン中央本部の抗議声明
郵政民営化法案の閣議決定、国会提出に断固抗議する
一.政府は、四月二七日郵政民営化法案を閣議決定し国会へ提出した。全国都道府県議会や全国市町村議会決議、さらには各種世論調査結果にもあるように郵政民営化法案を今国会で通過させることに反対、ないしは慎重にという声が多数の市民・利用者の声である。しかし、それらの声は全く無視され、小泉首相の独裁者的手法によって強行的に進められた今回の閣議決定と国会提出に郵政労働者ユニオンは強く抗議する。
二.そもそも、郵政民営化を何のために行うのか全く不明である。当初政府は、「官の肥大化をふせぐため」という理由を掲げていたが現在では「郵政公社がジリ貧する」と一八〇度違った議論を持ち上げてきている。これは、「先に民営化ありき」の結論があって理由をあとからこじつけているからこうなるのである。
今回、閣議決定された法案内容を見ても、(1)郵便局の設置義務の明確化
(2)一体的経営の確保B郵貯・簡保のユニバーサルサービスの確保などを焦点にして修正が行われている。これでは、わざわざ何のために郵政公社を分割・民営化せねばならないのか全く民営化の根拠を失っている。
三.しかし、いくら修正が施されても見過ごすことができない点がある。(1)過疎地の一定数以外の郵便局は統廃合の対象であることが否定されていないこと、(2)「基金による赤字補填」構想は、いくら上積みされてもいわば、「焼け石に水」であり、リスク遮断どころかリスクの一体化システムとなっていること、(3)一体的経営の特効薬として出されている株の持ち合いも郵便新会社や窓口会社に株を買い戻す余裕はないこと、(4)完全民営化以降の貯金・保険の金融サービスの維持が維持される保証も無いことなどである。
四.このような郵政民営化法案が国会で成立すればだれでも、いつでも利用できる郵便局の利便性がそこなわれ、廉価で安心をともなった郵便サービスが解体の危機に至り、貯金や簡保といった公的な庶民の零細な貯蓄、決済、社会保障制度が解体されてしまう。巨大な民間金融機関の新たな誕生という最悪の結果をまねくことになる。
五.私たち、郵政労働者ユニオンはこれまでの郵政民営化反対運動を職場や全国各地で展開してきた。今後は、国会での法案審議という局面にはいるがさらに市民・利用者との結びつきを強め、法案廃案へ全力で闘い抜くものである。郵政民営化法案の国会提出に新ためて抗議するとともに郵政民営化を阻止するために郵政労働者ユニオンは組織の総力を挙げて取り組むことを明らかにする。
二〇〇五年四月二七日
郵政労働者ユニオン中央本部
「話し合うことが罪になる!」 共謀罪新設に反対しよう
五月一九日、衆議院第二議員会館で、「話し合うことが罪になる!
共謀罪新設に反対する市民と国会議員の集い
内心・言論・表現の自由が危ない!!」(主催・共謀罪に反対する市民の集い実行委員会)が開かれた。
はじめに、主催者が今日の集会の意義について述べた。
共謀罪はあらゆる人のコニュニケーションを阻害する法律であり、この法案は三会期持ち越しになり今回が四会期目だ。法務省は今国会で通さないとヤバイと見ている。いま法務委員会には他に重要な案件はない。審議入りは秒読み段階だ。共謀罪の修正の動きもあるが修正ではなく廃案にしなければならない。
つづいて海渡雄一弁護士。
日弁連は共謀罪に反対している。今回の法律は共謀罪だけでなく、刑法全体の改悪が進められようとしている。共謀罪の他にもいろいろある。証人買収罪もそのひとつだ。弁護側の証人に、たとえば車代をだすとする。そうするとそれが証人買収罪にされる。虚偽証言の依頼、証拠の隠滅などとされる。検察側から見れば、弁護側の証言はみな虚偽と見られるからだ。サイバー犯罪条約との関係もある。コンピューター・ネットワークを利用した犯罪捜査で、捜査機関が通信履歴を保全させることになる。警察などはこれを濫用して憲法で保障されている国民の通信の秘密が犯されるようになる。また、マネー・ロンダリング犯罪の拡大がある。犯罪収益であることを承知して寄付などを受けとるとそれが犯罪となるが、その範囲は恣意的に広がる。いま、市民団体、労働団体などがすべて立ち上がって反対の運動を強めていかなければならない。
日本消費者連盟やJCA・NET、ネットワーク反監視プロジェクトなどによる「盗聴法に反対する市民連絡会」は五月一二日に「声明 共謀罪は廃案しかありません」を発表したが、その内容が紹介された。
実際の犯罪行為を伴わない、話し合うことが罪になる共謀罪は、思想の自由、言論・表現の自由を侵害する悪法以外のなにものでもない。違憲の悪法といわれ、それ故に一度も団体適用をすることができなかった破防法以上に問題のある法律だ。私たちは、話し合うことを罪とする言論規制法、市民活動規制法=共謀罪は廃案しかありえない、と考えている。政府・法務省は、共謀罪に反対する声の高まりのなかで、修正協議に野党を引き込むことで、共謀罪の成立をはかろうとしている。こうした政府・法務省の修正協議に応じ、共謀罪の危険性を「制限」しようとする動きもあるが、共謀罪に関して修正はありえない、廃案しかないということを強く訴える。
パロディストのマッドアマノさん。
アメリカへ行ってきたが、あちらでは「愛国者法」が吹き荒れている。あれは日本の共謀罪と同じようなものだ。たとえば、ある青年が部屋にブッシュをおちょくるポスターを貼っていた。すると警察が突入してきた。またチェイニー副大統領が泊まっていたホテルの写真を撮った人が警察にしょっぴかれるというようなことがおこっている。
当日、自公与党による郵政民営化を進める特別委員会の設置をめぐって、その対応の会議が開催されるなど野党議員は多忙で、国会議員の報告は、社民党の福島瑞穂党首(参議院議員)、民主党の辻恵衆議院議員だけだった(これについて海渡弁護士は、郵政民営化問題での紛糾は与党による国会会期のやりくりを難しくし、共謀罪廃案の運動にとっては有利だと解説した)。
福島参議院議員は、共謀罪は、これまでの刑法が行為に対してのものであり、内心でどのようなことを考えていようと処罰の対象にはならなかった、それが人の心と頭の中に警察が入ってこようとしている、これが一番危機的なことだ、それと「団体の活動」にかぎるとしているが、何の制約にもならない。その人となんらかのつながり、たとえば署名をしただけ、話をしただけで芋づる式に被害が広がっていく、みんなの問題だ、声を大にして反対して行こう、と述べた。
許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さん、前新聞労連委員長の明珍美紀さん、国民救援会の鈴木猛さん、反住基ネットの白石孝さんが発言した。
安全優先を捨てたJR
国鉄分割民営化研究会が講演会
五月一八日、新宿農協会館で、国鉄分割民営化研究会主催のJR福知山線事故問題についての講演会が開かれた。
国鉄分割民営化研究会は、ジャーナリストの立山学さんを中心に、国鉄分割民営化によって生まれたJRは安全性を無視し、かならず大事故を起こすだろうと警告しつづけてきた。
講演会では立山さんは、JR尼崎電車脱線事故は国鉄民営化災害であり、事故の再発防止には民営化路線の見直しが必要だとして次のように述べた。
この事故は単に事故そのものやJR西日本だけに注目するのではなく、根本的なことを考えなければならない。巨悪を眠らせてはならないのだ。そうでないと首都圏でも新幹線でもかならず大事故が起こる。ジャーナリズムも事故現場の「棺桶取材」だけでは駄目で、事故を起こさせないための取材が必要だ。今度の事故の前に、余部鉄橋事故、信楽高原鉄道事故が起こっている。JRも悪いが、どれだけJRを追及できたか、われわれも問われている。安全こそ鉄道の最大の問題だ。今度の事故を起こしたJR日本西の井手正敬やJR東海の葛西敬之とともに、分割民営化の「国鉄改革三人組」と言われたJR東日本会長の松田昌士は二〇〇二年に自著『なせばなる民営化・JR東日本』(生産性出版)で次のように言っている。
「国鉄が分割民営化する時に、反対する人たちから一番強くいわれたのは『公共性を求められる国鉄だからこそ安全が保たれたのであって、民間会社になれば、経済性を優先して安全性が失われるに違いない』ということだった。しかし、これは、全く逆なのである。万が一事故を起して、お客様が死傷することになれば、想像も出来ない大きな損失が生じる。したがって民間会杜というのは、絶対に、事故を起こさないように必死で努力する。……(JR東日本)の安全に対する投資の効果は着実に実を結んで、国鉄の分割民営化当時、反対論者が声高に言っていたことが全く当たっていなかったことを、わが社の実績が示している」。私も、国鉄民営化に「声高に反対」したが、その理由は、効率化・リストラ優先の民営化方式は深刻な鉄道事故が起こると危惧したからだ。民間会社は、事故をおこせば、大損失になるから、必死で安全に努力するというが、実際には、儲け優先・人減らしの効率化に走った。本州のJRは黒字になっているが、鉄道事業で一番大事な安全性は空洞化した。JR東日本も、事故が連続しておこっており、国土交通省は異例の立ち入り検査をし、「工事の実施方法に関する業務改善命令」などがでている。JRはどこでも、そんな状況だ。
欧米のマスコミは、今回の事故で、「日本鉄道は世界一安全」という神話は過去のものとたったと報じている。
分割民営化でも絶対に事故は起こさない、機械で守れると言った奴がいた。それが井手だった。
かつての国鉄には「安全綱領」というものがあった。それは、@安全は、輸送業務の最大の使命である、A安全の確保は、規定の遵守及び執務の厳正から始まり、普段の修練によって築き上げられる、B確認の励行と連絡の徹底は、安全の確保に最も大切である、C安全の確保のためには、職責を越えて一致協力しなければならない、D疑わしいときは、手落ちなく考えて、もっとも安全と認められるみちを採らなければならない、とあった。JRの「安全綱領」は、@安全の確保は輸送の生命である、A規定の遵守は安全の基礎である、B執務の巌正は安全の要件である、だ。
まず国鉄の「使命」とJRの「生命」の違いだ。国鉄には、安全を確保するという使命感があった。そして、国鉄安全綱領の五項目だ。危険と思われるときには、現場の判断で「もっとも安全と認められるみちを採らなければならない」ということだ。JRでは、利益優先、ダイヤ優先で、安全は二の次になっている。それを、今回の事故ははっきりさせた。鉄道の安全のためには、それを実行する労働者、労働組合が存在しなければならないのだ。
二〇〇七年は、国鉄民営化二〇周年だ。中曽根が約束した@長期債務処理A整備新幹線建設排除B労使関係正常化C生活の足の保障D安全な鉄道経営の確立は、すべて達成できなかった。尼崎事故は国鉄民営化路線の総破綻を表している。鉄道だけでなく航空などすべての交通が危機だ。いま、命を守る数千万人の統一戦線をつくり出す必要がある。
立山さんの講演に続いて、鉄建公団訴訟弁護団の大口昭彦弁護士が発言。国労東京闘争団の佐久間忠夫さん、建交労全動労争議団の渡部謙三さんが発言した(二人はともに元運転士)。
JR西日本福知山線事故に関する声明
四月二五日に起きた痛ましい、あってはならないJR西日本福知山線事故、犠牲になられた皆さんのご冥福を心からお祈り申し上げます。
あわせて被害にあわれた皆様には、一日も早い回復とお見舞いを申し上げます。
マスコミ報道や世論が、事故発生時より沈静化してきた感がありますが、この事故の背景には、やはり国鉄の分割民営化が大きな影を落としていることは、否定出来ない事実であることが明らかになりました。
事故責任は、国と国土交通省そしてJR会社にあります。
事故防止のために大きな問題となっている、速度制御型ATSは、相次いだ事故の反省の上に運輸省(当時)通達として、大手私鉄には一九六七年から、設置が義務づけられていました。
しかしこの通達は、一九八七年の国鉄分割民営化の際、JR会社への適用を避けるため廃止され、JR会社は旧国鉄型ATSのまま今日まで運行されてきました。
又、国土交通省はミスをした運転士に対して行われる「日勤教育」についても「懲罰的なものは含めるべきではない」とJR西日本に対して、昨年から是正を指導していました。
事故の背景にあるこの二つの事実は、国とJR会社つまり国土交通省と旧国鉄官僚の、癒着ともいえる構造を思わせます。
国はJR会社の為に、安全基準を大幅に緩和させ、JR会社は国の指導に従わない。
経営形態がJR会社に生まれ変わっても、変わらないのは旧国鉄官僚と言われる経営陣の姿勢です。
彼らは、人の命によってあがなわれた役員報酬の上に胡座をかき、現場管理者を御しながら、社員に対しては「命令と服従」という恐怖統治を強いているのです。
一九八七年の、国鉄分割民営化は、二〇〇名に及ぶ自殺者を出し、七六〇〇〇名の国鉄労働者が職場を追われる結果となりました。
一九九〇年四月、二度目の解雇を受けた一〇四七名は、今も復職を求めて闘っています。
全国一七の労働委員会で、「JRに採用されたものとして扱え」との命令は、二〇〇三年一二月最高裁で取り消しが最終決定されるまで、履行されることはありませんでした。
その履行を指導すべき政府・国土交通省はなんらの対策も取りませんでした。
JR各社は、二〇〇一年まで「JR会社法」(略称)によって、代表取締役等の選定について、国土交通大臣の認可を受けなければなりませんでした。
労働委員会命令を守らず、今日の歪んだ経営姿勢と労働政策を執り続けてきた、JR西日本会社経営陣の再任等をそのまま認可してきたのは、国土交通省です。
垣内剛氏は、〇三年四月社長に就任しましたが、彼の就任は信楽事故の犠牲者・遺族が一〇年余争った裁判の敗訴を認め、遺族に謝罪するところからスタートしました。
前任者の南谷昌二郎現会長は、信楽事故の責任を一貫して否定してきました。
先だって信楽事故現場で行われた追悼式典で、南谷会長は「また大きな事故を起こしたことをおわびし、再発防止をお誓いする気持ちでお祈りした」と語っています。
国と国土交通省そしてJR会社は、言葉だけでなく一日も早く安全第一の輸送を確立すべきです
国鉄の分割民営化当時、政治が成立させた国鉄改革法によって、不当労働行為が行われ、明らかな労組法違反であるにも関わらず、それを是正するどころか司法までが追認する社会は最早異常としか言いようがありません。
分割民営化当時、人命が軽視されたのは利潤追求の新会社に、国鉄が生まれ変わる為だったのです。
いまこの重大事故を前にして、依然として人の命が軽視され続けていることに心から怒りを覚えます。
二度とこのよう大事故を起こさない為にも、見直されるべきは分割民営化の誤りと、鉄道事業の徹底した安全体制の確立です。
そして、安全は鉄道事業のみならず航空、海運事業にも及び、人が生存する上で不可欠な食料・衣料・住居までが事故によって脅かされることを、国民の一人として告発し、この重大事故を一過性の問題にすることなく警鐘を鳴らし続けます。
そして、一〇四七名の不当解雇撤回の闘いを更に強化していきたいと考えています。
そのことが、犠牲になられた一〇七名の皆さんと、負傷された皆さんに報いることになると肝に銘じ声明とします。
二〇〇五年五月一七日
鉄建公団訴訟原告団 団長 酒井直昭
国鉄闘争に勝利する共闘会議 議長 二瓶久勝
「罪を憎んで人を憎まず」と「論語読みの論語知らず」
五月一六日の衆院予算委員会で、小泉純一郎首相は靖国参拝にたいする中国、韓国からの批判が強まっていることについて、「他の国が干渉すべきでない」「いつ行くかは適切に判断する」と述べた。先の大戦でアジア諸国民衆に甚大な被害を与えたA級戦犯の合祀についても「罪を憎んで人を憎まずだ」とした。
小泉はさきのアジア・アフリカ首脳会議で演説した時、「村山談話」に沿った形での日本の過去の侵略に対する「おわびの気持ち」を表したが、その言葉は今回の発言によって、大方の予想通り、否定された。「村山談話」は一九九五年九月一五日、当時の村山富市首相が、日本の侵略行為がアジア諸国に多大の損害と苦痛を与えたことを認めて誠実な反省を表し、また日本の若い世代に真実の歴史を教え再び過去の過ちを犯さないようにすると表明した。しかし、村山談話は政界の右派政治家を拘束するものではなかったし、歴史教育を正すものともならなかった。麻生太郎、安部晋三、中川昭一ら自民党の右派だけでなく、民主党の西村真吾、また石原慎太郎東京都知事などは靖国神社を参拝するだけではなく、侵略を美化する発言を繰り返した。小泉も四年連続して靖国神社を参拝した。そして、今年、文部科学省は「つくる会」教科書(扶桑社版)を検定合格させた。そのほかにも、島根県議会の「竹島(独島)」領有決議などの覇権主義的な動きが強まっている。自衛隊のイラク派兵、米軍のトランスフォーメーションにあわせた日米軍事同盟の強化と台湾海峡への拡大、憲法改悪の策動がある。そして日本の支配層は政治軍事大国にのし上がるために国連常任理事国入りを画策している。ドイツ政府はヒトラー時代の侵略蛮行を反省し、ことあるごとに謝罪の言葉を述べている。これとは対象的に、日本政府は過去の侵略戦争・植民地支配・非人道的行為を押し隠し、やむを得ない場合は、詭弁で乗り切ってきた。しかし、この間の「反日デモ」と中国・韓国政府の厳しい対応は、小泉政権を袋小路に追い込んだ。もはや単なる言葉でのその場しのぎは許されない。
今後、中国では七月七日の盧溝橋事件記念日、九月三日「抗日戦争勝利記念日」、一〇月一日の国慶節、十二月一三日の南京事件発生日などが続く。韓国との関係では六月下旬の盧武鉉大統領との会談、一一月には釜山でアジア太平洋経済協力会議(APEC)。日本では郵政民営化問題、その他内閣改造・党役員人事、また解散・総選挙も想定される。これらの政治日帝を考えると靖国参拝は容易ではない。
しかし、右派勢力を政治基盤とする小泉は、靖国神社参拝の断念を表明することは難しい。そのあらわれが、予算委員会での発言だ。対アジア外交だけでなく郵政民営化の問題をふくめて小泉の立場は苦しいものとなってきているが、イライラ感を強める小泉の発言はいっそう荒いものとなってきている。
小泉は、A級戦犯合祀問題で「『罪を憎んで人を憎まず』というのは孔子の言葉だ」と批判に反論した。
出典は「孔叢子−刑論」(著者は孔子の九世の孫で秦代の孔鮒)だという。だが、小泉のこの使い方は間違っている。加害者が、被害者にむかっていう言葉ではない。被害者が万感の恨みを抑えて発するものであろう。言う者、聞く者が正反対なのだ。
しかも表面的に受け取れば小泉発言は、東条英機ら侵略戦争を起こしたA級戦犯の「罪」を憎んでいると言うことになる。だが、小泉は「罪」そのものを憎んでいるかどうか。どうみても、憎んでいるようには思えない。また例の詭弁だ。
小泉のこうした発言こそが「論語読みの論語知らず」ということだ。ともあれ、小泉は自業自得で窮地に立った。
アジアの声に耳を傾け、過去を真摯に反省し、近隣諸国と共生していく時である。
KODAMA
岡山県下の新市、4・29合併選挙市民派二名が勝つ !!
「平成の大合併」は合併特例法の期限(二〇〇五年三月末)を過ぎ、岡山県内の七一市町村は三四市町村になりました。
四月には、編入合併による議員の増員選挙や新設合併による首長選挙・市議会議員選挙が県内各地で行われました。
さて、山陽町、赤坂町、熊山町、吉井町は、新設合併で三月七日に赤磐市になりました。
この間、山陽町では、「住民投票を進める会」が六〇〇〇人以上の署名を集め、合併の是非を問う住民投票条例制定を要求しましたが、議会で否決され、住民投票は実現しませんでした。
定数二六の赤磐市議選に三六人が立侯補し、その中には住民投票を担った新人三人(うち女性一人)も含まれていました。赤磐市は有権者の五六%が旧山陽町に集中しているということもありましたが、結果は二人が当選を果たしました。
今回の合併選挙では、女性議員数は減少しており、市民派や女性にとってはなかなか厳しい選挙となりました。
その中で、市民派新人議員を二人も生んだ赤磐市民のパワーは、やはり住民投票条例制定に動いたことが生み出したものでしょう。
住民投票が成功しなくても、住民のパワーは確実に上昇します。
地域のことに関心を持つ人を増やすことが、地域を住みやすくすることにっながり、「小さな自治」を育てる土壌となっていきます。
私たちは自信を持って、地域に働きかけていきましょう。(S)
せ ん り ゅ う
起草委はみな臣民のような顔
ヒトラーと全く違う小泉君
名医いて遺産なくなるころに死に
ゝ史
憲法を剣法とよむ自民党
派兵して九条を窮状と書き
愚
二〇〇五年五月
○ ベルリンにホロコースト記念碑ができた。5月10日、ティールゼ議長は除幕式で「……ドイツ史上最大の罪を告白……」と語った。そういえば、ヒトラーの墓はどうなっているのだろうか。
日本の小泉首相が国民を代表する内閣総理大臣の肩書をもって東条英機ら戦犯の霊に参拝しつづけ、多方面からの非難を白眼視して平然としているのには異常な鬼を感ぜざるを得ない。現憲法成立当時の国会議事録をみると「九条」が罪への反省の最高の祈念塔と自覚されていたことがわかる。いま小泉政権はこの「九条」を廃棄しようとしている。なんと破廉恥なことか。
複眼単眼
改憲派が持ち上げる聖徳太子の「十七条憲法」は偽書?
自民党内の改憲派は「日本の歴史、伝統、文化、その象徴としての誇るべき天皇制の尊重」「現行憲法は無国籍憲法だ」「日本には聖徳太子の十七条憲法と、明治天皇がお作りになられた(!)五カ条の御誓文がある」などと、恥知らずなことを言うようになっている。
これらの人びとが聖徳太子の「十七条の憲法」で特に好んで引用するのは「第一条(一に曰く)以和為貴(和を以て尊しとす)」だ。これを与野党の一部議員たちは「この和の精神こそ日本文化のすぐれた精神を表している」などと言う。
だからいたずらに「国家と国民の対立を言うのではなく、相互の協調をはかることこそが日本文化なのだ」というのである。
「和の精神」こそは、皇国史観における思想教育のからくりの種本のようなものだ。聖徳太子は国家の下への国民の統合、国家の下での異質なものの統合、階級対立の否定と融和などを説く際に使われる。実に聖徳太子は国家権力にとっては便利な人物なのだ。
歴史研究に多少でも興味を持つと、遠からずぶつかる問題は史料の偽書、贋作などの問題だ。
たとえば東北人の筆者などは、一時期胸躍らせるようにして興味を持ったものに「東日流三郡誌(つがるさんぐんし)」論争というのがあった。
まだ日本列島に統一政権が成立していなかった奈良や平安の時代、東北地方は大和の政権による「征夷」という名の軍事侵略が繰り返された。
歴史の本には坂上田村麻呂の「奥州征伐」などと書かれ、抵抗する者はまつろわぬ民であり、あるいは鬼とされた。
東北地方に住む者として、大和から見て書かれた歴史に反発し、侵略への抵抗闘争に関心を持ち、また当時の奥州の独自の高い文化の存在に興味を持った。佐治芳彦氏の「謎の東日三流郡誌」などは懸命に読んだ。中世に繁栄した津軽の十三湊(とさみなと)と荒吐(あらはばき)一族の興隆と滅亡など古代東北史の壮大な物語は、アトランティス大陸の滅亡の悲話のようで、東北人の筆者を惹きつけた。
しかし、「東日流三郡誌」はのちに地元青森などの古文書研究会らによって、発見者が書いた偽書との鑑定結果が公表された。
大和の権力と戦った安東氏の伝説や、あたらしくはNHKの大河ドラマの奥州藤原氏と源義経に関する伝説など、事実も少なくないが、相当に脚色された面も多い。
しかし、東北人はこうした説には騙されやすい側面がある。
例の石器のねつ造問題もそうだ。
差別と偏見にさらされてきた東北人としては、旧石器時代が大昔の東北・北海道にあったというだけで、スカッとするのだ。
しかし、聖徳太子の手によるとされる「十七条憲法」が偽書だったとしたらどうだろうか。
あるいは聖徳太子のもうひとつの書物「三経議疏(さんきょうぎしょ)」が実は彼の手になるものではないとしたらどうなるだろうか。
改憲派が高く持ち上げる聖徳太子の和の精神、日本のすばらしい歴史・伝統・文化という議論は崩れ去るのだ。
いまでは偽書の「東日流三郡誌」などの助けを借りなくとも、アテルイをはじめ大和の侵略に抗して戦った東北の民衆の歴史は存在することが証明できる。
大山誠一という人の「聖徳太子と日本人」が角川文庫から出た。大山さんの史観には異論もあろうが、おもしろい。
彼にいわせれば「厩戸王という一人の王族がいて、斑鳩の宮(奈良県)に住み、斑鳩寺(法隆寺)を建立したことは事実だが、……憲法十七条を制定し、『三経議疏』を著したというのは事実ではなく、偉大な聖徳太子に関する史料は、すべてのちの時代につくられたものである」というのだ。
一読をすすめる。(T)