人民新報 ・ 第1169号<統合262(2005年6月5日)
  
                  目次

● キャンプ座間に第一軍団は来るな! 厚木爆音訴訟に勝利しよう!

● 有事法を発動させない 憲法9条改悪に反対する 5・27集会

● 最高裁「もんじゅ」判決に抗議する

● JR西日本事故を問う

● 「住基ネットは違憲」の判決(金沢地裁)

● 都教委の「日の丸・君が代」処分を許すな!  「君が代」不起立で停職一ヶ月

● 戦争の民営化

● せ ん り ゅ う  /  ゝ 史

● 複眼単眼  /  国 連 研 究 〜 石の上にも何年の研究者




キャンプ座間に第一軍団は来るな! 
厚木爆音訴訟に勝利しよう!

 米軍の世界的な戦略転換の重要な拠点として在日米軍が再編・強化されようとしている。沖縄県に次いで米軍基地が密集する神奈川県。とりわけ横須賀基地への原子力空母の配備、爆音の甚だしい厚木海軍航空基地、そしてキャンプ座間への米陸軍第一軍団司令部への移転などがある。今年の二月一九日には雪混じりの雨という悪天候の中、二六〇〇人でキャンプ座間司令部を人間の鎖で包囲した。地元の座間、相模原の市長も、市議会も声をそろえて歓迎しない声を強めている。座間市では、市長、市議会議長、連合自治会長名での第一軍団司令部移転に反対する署名が短期間のうちに全市民の半数近くも集まり、相模原市でも同じような署名活動が開始される。

 五月二八日、原子力空母の母港化に反対し基地のない神奈川をめざす県央共闘の主催で、「第一軍団は来るな! 第三次厚木爆音訴訟に勝利しよう! キャンプ座間と厚木基地を結ぶ 5・28市民行動」が行われた。
 正午過ぎに、キャンプ座間司令部真下の座間公園で出発集会が行われた。
 県央共闘副代表の岡本聖哉さんが、いま私たちの平和はきわめて危ういところにきている、座間に第一軍団を歓迎しない、厚木基地は要らない、日本に基地はいらないというという運動を強めていこうと述べた。
 連帯あいさつは、神奈川平和運動センターの藤田富雄さん。いま憲法が危ない。解釈改憲から明文改憲の動きになってきた。また教育基本法も変えられようとしている。しかしこうした動きにはアジア各国から大きな反対の声が上がってきている。今行われている在日米軍のトランスフォーメーションは日米の軍事同盟を強めるかたちで進められている。平和運動はこれに全力で闘っている。横須賀の原子力空母母港化反対では全国の皆さんと共に三〇万の署名を集めた。第一軍団移転問題でも地元自治体を含めて反対行動が行われている。しかし、まだ断念させたわけではない。私たちの運動が少しでも手を緩めるならむこうの攻勢がかかって来るということだ。
 つづいて「キャンプ座間への第一軍団の移駐を歓迎しない会」事務局長の金子ときおさん。第一軍団の移駐させないために今年二月のキャンプ座間包囲行動は大きな成功を収め、自治体も反対運動に動いている。こうした行動が様々な影響を生み出している。その中で米軍の側は第一軍団の名前を変えるなどのやり方でくるという話も出てきている。中身は変らないがそうした衣替えで移転してこようというわけだ。そういう誤魔化しで地元を納得させようとしている。しかし司令部を移転させ、そこでアジア全域の戦争を指導することには変りはない。座間市でも相模原市でもさまざまな方法で反対運動を広げていこうとしている。
 デモに出発。
 キャンプ座間正門前では、在日米陸軍司令官エルバート・N・パーキンズ少将へ申し入れ「私たちは米陸軍第一軍団の移転を受け入れることはできません」(歓迎しない会、県央共闘会議)を手渡した。
 「……貴方も承知していることとは思いますが、キャンプ座間の置かれる地元の自治体、座間市と相模原市は第一軍団の移転に絶対反対であるとの意思を再三にわたって表明しています。市内各所に横断幕や懸垂幕を、さらにポスターを張りだして、その意思を市民にアピールしています。また、座間市は六万余の市民署名を集め、その声を日本政府に屈けました。近々、相模原市も同様の署名を集めることになっています。両市の市議会も、『第一箪団歓迎せず』の決議を上げています。さらに、大和、海老名、綾瀬、厚木などの周辺各市や神奈川県もこぞって、同様の決議、要請を繰り返しています。市民も、首長も、議会も皆、第一軍団の移転を歓迎していないのです。……地元の自治体、議会、市民が移転に反対しているのに、それでも第一軍団はやって来るのでしょうか。どうか、本国政府や上級司令部に、第一軍団のキヤンプ座間への移転を取りやめるよう働きかけてください。」
 キャンプ座間への申し入れの後は、座間市役所前を通り、シュプレヒコールで市民にアピール。
 海老名市の東柏ヶ谷近隣公園に到着。ここで、厚木基地爆音防止期成同盟との合流集会。「県央共闘」代表で厚木爆同書記長の大波修二さんのあいさつ、第三次厚木爆音訴訟団々長の真屋求さんなどがアピール。隊列を組みなおして厚木基地にむけてのデモに出発。
 厚木基地正門前では、米海軍厚木基地司令官リード・A・エクストロム大佐に「違法爆音の解消を求める申し入れ」(厚木爆同、第三次厚木爆音訴訟団、県央共闘会議)。
 「……基地周辺の住民は四五年間も爆音によって苦しめられ、安穏な平和な生活を脅かされ続けています。特に一九七三年、貴国軍隊の空母が横須賀基地を母港にして以来、その艦載機がまき散らす爆音によって、その苦しみ、被害は一層酷いものになっています。止むに止まれず起こした三度の裁判で、それらの爆音が違法状態であると認定されたことを、貴官は知っていますか。それなのに、貴官らはFA18スーパーホーネットを新たに交替配備させ、今まで以上の爆音を周辺にまき散らしています。違法の上に違法を重ねていることに、貴官は心が痛くならないのでしょうか。改めて訴えます。速やかに空母艦載機訓練を中止、自国に撤収して下さい。基地周辺の住民に静かな空と平和な生活を返すよう、貴国政府に働きかけ下さい。米国市民との心からの友好親善を願って…」。


辺野古海上基地建設ボーリング調査を許さない!

   
防衛施設庁抗議行動で山内徳信さんがアピール

 五月三〇〜三一日、沖縄普天間基地包囲行動(五月一五日)を成功させた「普天間基地撤去・基地の県内移設に反対する県民大行動」代表団が、県民大会で採択された決議文を携えて、政府への要請行動を行った。

 五月三〇日、辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会による防衛庁・防衛施設庁への抗議行動が行われ、代表団の山内徳信さん(沖縄における基地の県内移設に反対する県民会議共同代表)がアピール。
 昨年の四月一九日から始まったボーリング調査は今日に至るまで、単管の足場は四つ立っているが、まだ一本たりとも杭を打ち込ませていない。それは、多様な闘いが全国で行われているということだと思っている。政治の世界では辺野古の計画はもはや破綻していると思うが、防衛庁や防衛施設庁は依然として夜間作業を中止しますということを明確にはまだ言っていない。従ってこれからもしばらく続くのかもしれないが、この闘いは確実に政府を追い込んでいる。正しいものは必ず勝つ。野蛮な戦争政策は必ず破綻する。それが歴史の教訓だ。

 午後七時半から、東京しごとセンターで「辺野古緊急報告会」が開かれた。
 報告者は代表団の安次富浩さん(ヘリ基地反対協議会代表委員)。安次富さんは、辺野古での闘いの経過を振り返り、次のように述べた。
 SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)の見直し、辺野古断念がアメリカからも小泉からも出てくるようになった。私たちの闘いには、大義と正義がある。大義とは、青い美しい海を軍事基地に変える無謀は許さない、ジュゴンを絶滅させてはならないということだ。このことを、全世界に発信している。この間もイギリスのテレビ局のBBCが取材にきた。環境保護団体からの支援も広がっている。アメリカは窮地に立っている。辺野古の闘いは勝利する。それは金字塔となり、沖縄の平和の闘いをいっそう前進させる。下地島の闘い、金武の闘いもおおきく盛り上がっている。私たちの闘いは、座間や岩国の闘いとひとつになっている。


有事法を発動させない

   
憲法9条改悪に反対する5・27集会

 「平和を作り出す宗教者ネット」「平和を実現するキリスト者ネット」「戦争反対、有事をつくるな!市民緊急行動」「陸・海・空・港湾労組二〇団体」のよびかけによる集会実行委員会による「有事法を発動させない!憲法9条改悪に反対する5・27集会」が、日比谷野外音楽堂で開かれ、労働者・市民など二四〇〇人が参加した。
 「平和をつくりだす宗教者ネット」の石川勇吉さんが開会あいさつ。父は僧侶だったが、大政翼賛会の役員などもし青年たちを戦場におくったが、その大半の人は帰ってこなかった。そして戦後は懺悔と追悼・法要の日々だった。憲法こそは戦争を否定し、戦争の悲劇をなくすものだ。宗教者も「九条の会・和」を発足させた。法隆寺や清水寺などのトップの人も参加している。いまこそ憲法九条を生かし広げて行かなければならない。
 九条の会の小森陽一事務局長(東京大学教授)。
 いま九条の会は全国にすごい勢いで広がっている。すでに一九〇〇をこえるさまざまな会が活動している。憲法は国連憲章と密接に関係するがそれ以上のものといえる。例えば国連憲章の第二条に「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土又は政治的独立に対するものも、また国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」とある。一方憲法九条では「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とある。「慎まなければならない」と「永久にこれを放棄する」だ。日本国民はアジアの二〇〇〇万人の犠牲のあとにこの憲法を得たのだ。アメリカは世界を戦争に巻き込んでいる。イラクの中距離ミサイルはアメリカには届かないがイギリスにはとどく。イギリスへのフセインの攻撃がさし迫っているという「デマ」情報で米英はイラク侵攻をはじめた。北朝鮮のノドン・テポドンミサイルもアメリカにはとどかない。だから日本への脅威が迫っているという口実で東アジアで戦争をはじめようとしているのだ。改憲派は「押しつけ憲法」だから変える必要があると言う。しかし、今、アメリカからの「押しつけ改憲」が激しい。こうした危険な状況に九条の会は身体をはって闘っていきたい。
 社民党の福島瑞穂党首・参議院議員と共産党の小池晃政策委員長・参院議員があいさつ。
 各界からのあいさつでは、マスコミ九条の会、日本民主法律家協会、日本民間放送労働組合連合会、戦争反対・有事をつくるな!市民緊急行動の代表やカトリックの司祭が、それぞれ九条改悪と闘う活動の報告を行った。
 つづいて実行委員会参加の労働組合が登壇し、多数の組合旗を背に全日本海員組合の藤沢洋二副組合長が、憲法九条改悪反対のためにさまざまな違いを越えてともに闘おうと述べた。
 集会宣言を採択して集会を終え、デモ行進に出発し、有事法制の発動反対、憲法九条改悪反対、日本を戦争する国にするな、いのちと安全を守ろうなどのシュプレヒコールで市民にアピールした。


最高裁「もんじゅ」判決に抗議する

 五月三〇日、最高裁第一小法廷(泉徳治裁判長)は福井県敦賀市核燃料サイクル開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」にたいして地元住民が国に設置許可の無効確認を求めた行政訴訟で、設置許可を無効とした二審の名古屋高裁金沢支部判決を破棄し、住民側の訴えを棄却した。「もんじゅ」裁判闘争は一九八五年に住民側が提訴したもので、最高裁判決は二〇年にわたって闘い続けてきた原告住民の思いを踏みにじる不当判決である。
 一九九五年には「もんじゅ」はナトリウム漏れ・火災事故を発生させている(その時以来、運転停止中)。二〇〇〇年三月に福井地裁は住民側敗訴判決を出したが、〇三年一月には名古屋高裁金沢支部は住民側勝訴の判決を出した。
 最高裁判決によって「もんじゅ」は改造工事を経て運転が再開されようとしているが、一〇年以上も稼働を停止したままの原子炉を再起動させればどんな大事故がおこるか予想もできない。そもそも高速増殖炉は、「先進国」フランスを含めて安全性の問題が解決できず、また経済的にも問題があるとして、世界中で停止・撤退が相次いでいるのだ。政府、財界、電力業界の利益のため、そして日本の核武装化のための高速増殖炉開発を続けることは、危険と無駄をまさに「増殖」させるものだ。不当判決に抗議し、「もんじゅ」廃炉、高速増殖炉開発放棄のための闘いを強めていかなければならない。

 * * * *

「もんじゅ」最高裁判決についての声明

 本日、最高裁は名古屋高裁金沢支部の判決を破棄し、我々の控訴を棄却し、もんじゅの変更前の設置許可を有効とする判決を下した。
 しかし、もんじゅ設置許可はナトリウム漏えい事故時の対策についてナトリウム溶融塩型腐食という重大事象を考慮に入れず、また蒸気発生器の伝熱管破損事故時の対策について高温ラプチャ現象発生の可能性について安全審査を欠落し、また炉心崩壊事故時については現実に発生しうる事故としての安全審査を欠落させたものである。
 ことは、万が一にも重大事故を起こしてはならないプルトニウムを燃料とする原子炉の安全性に関わる問題である。伊方最高裁判決の枠組みにしたがって判断すれば、安全審査の過程に看過しがたい重大な過誤欠落があったことは明らかであり、許可の違法性を認め無効を言い渡した名古屋高裁金沢支部判決は正当なものであった。
 ところが、この判決は、基本設計の安全性に関わるかどうかについても行政の合理的な判断に委ねられているとし、行政の判断の尊重を口実にして極端な行政追随を行うものであり、司法のあるべき姿とは大きくかけ離れた不当なものであって、我々は強く抗議する。このような判断の下では、原子力訴訟そのものが成り立たなくなってしまうであろう。
 もんじゅはプルトニウムを燃料とする、未だ研究開発段階の高速増殖炉である。世界的に見れば、高速増殖炉の「夢」は敗れ去り、アメリカ・ドイツ・イギリス・フランス等では開発は終わりを告げている。我が国においても、高裁判決の指摘した危険性に加えて、開発目的も失われ、実証炉など今後の開発の目処は全く立っていない。
 我々は、このような不当判決に屈することなく、今後も、もんじゅを廃炉にすべく、なお一層の努力を尽くす所存である。今後とも、全国の皆様のかわらぬご支援をお願いする次第である。

二〇〇五年五月三〇日

「もんじゅ」訴訟原告団

「もんじゅ」訴訟弁護団

原発に反対する福井県民会議

もんじゅ訴訟を支援する会


JR西日本事故を問う

 五月二七日、中野ゼロで、「5・27《JR西日本事故を問う》緊急集会」が開かれた。
 ジャーナリストで国鉄分割民営化問題で常に鋭い批判を行ってきた立山学さんの講演が集会のメイン。立山さんは、今回のJR西の事故・大惨事は「国鉄分割民営化」事故だとしてお話した。
 分割民営化は市場原理を優先させることだ。だが、それでは安全は保てない。儲けようとして過密ダイヤになる。無理に無理を重ねている。これで事故が起こらなかったら不思議だ。それにJRになってから事故から学ぶということがなくなった。JR西日本の井手正敬元会長は国鉄分割民営化をやった中心人物の一人だが、今回の事故をふくめて三回にわたる大事故の責任者だ。その井手は「郵政民営化に関する有識者会議」において、国鉄の分割民営化の手本は電力九分割だと言っている。それは電力の闘う労組を潰した。炭鉱でも国鉄でもそうだ。労働者、労働組合の力を奪った結果はともに大きな事故が起こっている。市場原理を抑制をするのは労組、世論で、そうした力で事故を起こさない会社にしていく以外にない。公共交通は営利第一の会社では駄目だ。やはり公社化が必要だ。
 立山さんの講演につづいて、JR東日本の駅員、元運転士の報告。それらの報告見えてくるのはJR東日本の職場の厳しくそして危険な状況だった。まず、労働強化がものすごい、国鉄時代の労働協約がなくなって会社側が一方的に勤務を指定してくる。乗務員は過密な仕事をさせられている。保線などは下請けに出されている。駅のホームに駅員がいない。国鉄時代にあった、安全は輸送業務の最大の使命だとか、疑わしいときは、もっとも安全と認められる方法をとって良いなどということが否定されて、安全優先が強調されなくなった。なにより大事なのは現場の労働者がものを言える雰囲気だ。現場をいちばんよく知っている労働者の声を聞かない会社はかならず大事故を起こす。
 最後に参加者からの質問や発言があった。


「住基ネットは違憲」の判決(金沢地裁)

 五月三〇日、金沢地裁(井戸謙一裁判長)は、石川県の住人二八人が住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)はプライバシーの侵害だとして国などに対して損害賠償を求めた裁判で、原告らの個人情報を住基ネットから削除することなどを命じた(原告側が求めていた一人あたり二二万円の損害賠償請求は棄却)。判決は石川県と地方自治情報センターに対して次のように命じている。石川県と地方自治情報センターは「原告らに関する情報を、住基ネットの磁気ディスクから削除」、石川県は「住民基本台帳法に掲げる国の機関および法人に、原告らの氏名、住所、生年月日、性別などの本人確認情報を提供してはならない」「地方自治情報センターに原告らに関する情報処理事務を委任してはならない」「同センターに原告らに関する情報を通知してはならない」、地方自治情報センターは「センターは石川県から受託した情報処理事務を行なってはならない」というものだ。判決は「住基ネットからの離脱を求めている原告らの情報を住基ネット上で利用することは、プライバシーの保護を保障した憲法一三条に違反する」(憲法一三条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする)とし、本人の同意がない場合には違憲だとした。判決は、プライバシー権のなかに「自己情報コントロール権」を含むとしている。
 住基ネットについては石川県を含む全国一三地裁で裁判闘争が闘われているが、三〇日に原告団・弁護団・支援する会が東京都内で記者会見を行った。全国弁護団の山本博団長は、今回の金沢地裁判決が「憲法が保障するプライバシー権には自己情報コントロール権が含まれ、離脱を求める原告について、住基ネットは憲法違反」としたことについて「住基ネットの問題点を真っ向から説明してくれた。今後の各地の裁判や住基ネットを運用する全国の自治体に大きな影響がある」とし、「住基ネットの違法性を明快に断定したもので、意義は大きい」と評価した。
 この判決に対して、総務省自治行政局市町村課は、判決では「住基ネットについての理解が得られず、石川県などの主張が認められなかったことは極めて遺憾」とし、控訴などについては「しかるべき対応」を行うとしている。今回の金沢地裁の判決は、個人の情報を国家が掌握し戦争体制づくりの一環でもある住基ネットに反対する運動、自治体には追い風となる。当然にも国家の側はこの判決を覆すためにさまざまな手段を弄してくることは間違いない。住基ネットに反対する運動をさらにおおきく展開していかなければならない。
(●名古屋地裁は五月三一日、住民離脱を認めず違憲性も否定する不当判決を出した)。


都教委の「日の丸・君が代」処分を許すな!

     
    「君が代」不起立で停職一ヶ月

 五月二七日、東京都教育委員会は今年の入学式での「日の丸・君が代」問題の不当な懲戒処分を強行した。「君が代」斉唱時に起立しなかったということで、立川市立中学の教員根津公子さんを停職一カ月としたほか、都立高校教員三人が減給一〇分一(一カ月)、高校教員五人が戒告、「君が代」のピアノ伴奏を拒否した都立高校教員一人が戒告という処分を加えられた。
 都教委はこの春の卒業・入学式での「国旗掲揚・国歌斉唱の実施状況」を発表したが、それによると「君が代」斉唱で起立しなかった教職員は、卒業式で五三人、入学式で九人の計六二名、「君が代」斉唱の伴奏を拒否した教職員は入学式で一人となっている。

 一九九九年に日の丸・君が代「国旗・国歌」法制化がなされ、二〇〇三年には東京都教育委員会の「10・23通達」が出された。「日の丸・君が代」処分はこの「10・23通達」に基づくものとされている。これは二〇〇三年一〇月二三日「東京都教育委員会教育長 横山洋吉」の名で出された「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について(通達)」であり、「東京都教育委員会は、児童・生徒に国旗及び国歌に対して一層正しい認識をもたせ、それらを尊重する態度を育てるために、学習指導要領に基づき入学式及び卒業式を適正に実施するよう各学校を指導してきた。これにより、平成一二年度卒業式から、すべての都立高等学校及び都立盲・ろう・養護学校で国旗掲揚及び国歌斉唱が実施されているが、その実施態様には様々な課題がある。このため、各学校は、国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について、より一層の改善・充実を図る必要がある。ついては、下記により、各学校が入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱を適正に実施するよう通達する」として、@学習指導要領に基づき、入学式、卒業式等を適正に実施すること、A入学式、卒業式等の実施に当たっては、別紙「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」のとおり行うものとすること、B国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり、教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合は、服務上の責任を問われることを、教職員に周知すること、を指示している。そして、別紙「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」では、「国旗の掲揚について」で、「国旗は、式典会場の舞台壇上正面に掲揚する」など細かく指定し、「国歌の斉唱について」でも、@式次第には、「国歌斉唱」と記載する、A国歌斉唱に当たっては、式典の司会者が、「国歌斉唱」と発声し、起立を促す、B式典会場において、教職員は、会場の指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する、C国歌斉唱は、ピアノ伴奏等により行う、としている。
 これは都知事石原慎太郎と教育長横山洋吉による民主主義に反する反動的愛国主義教育を実現させるために、それに抵抗する労働者を圧殺しようとするものにほかならない。こうした都教委による「日の丸・君が代」強制は、憲法で保障された思想・信条の自由を侵害するものだ。まさに戦争の出来る体制づくりの東京都版である。残念なことに、教職員組合は組織として「日の丸・君が代」攻撃に反撃する姿勢を保つことが出来ず、「教え子を再び戦場に送るな」の精神は一部の先進的な教職員の闘いにとどまっている現状にある。しかし、この闘いは、陸海空港湾労組二〇団体の有事法制の具体化を許さない、戦争非協力の闘いと同様の意義を持つものであり、大きな支援の輪で支えぬく体制をつくらなければならない。

 処分発令の二七日には、「日の丸・君が代」処分に反撃する行動が展開された。午後二時には、「国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟(予防訴訟)」第四次原告団(四三名)は東京地方裁判所民事部に対して予防訴訟提訴した(一〜三次と合わせて総数四〇三名)。内容は、「『君が代』斉唱時に起立、斉唱、伴奏の義務が存在しないこと、したがって『君が代』斉唱時に起立、斉唱、伴奏しないことをもって処分が行われてはならないことを、裁判所が確認すること。都教委の行為によって私たちに生じた精神的、肉体的、杜会的被害を、都が償うよう、裁判所が命ずること」を求めるものだ。提訴の前には弁護士会館に集合して地裁までのミニデモを行った。
 そして、四時過ぎには水道橋の「総合技術センター」前へ。そこに都教委が処分発令のため、該当者に対する呼び出しを行っているからだ。呼出された該当者へ支援のシュプレヒコールが送られる。根津公子さんに停職一カ月。根津さんは、「総合技術センター」前で、「日の丸・君が代」と不当処分に対して闘っていくと力強く決意表明をおこなった。
 その後、都庁の記者クラブでプレスリリース。「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会、「日の丸・君が代」不当解雇撤回を求める被解雇者の会、「日の丸・君が代」強制反対・予防訴訟をすすめる会、根津公子さんが抗議声明を発表した。

入学式の「日の丸・君が代」不当処分に抗議する声明(要旨)

 ……また、昨日の都教委では、六三名にも及ぶ新たな被処分者に対する「服務事故再発防止研修」の骨子も決定しました。昨年八月の「再発防止研修」強行に際し、私たち「被処分者の会」は東京地裁に「執行停止」の申立を行い、旧内容の研修を繰り返せば違憲・違法の可能性が生じるものといわなけれぱならない」との地裁決定を得ています。さらに今年四月二六日、福岡地裁は「減給処分は裁量権逸脱」「校長を拘束する市教委の指導は教育基本法一〇条の不当な支配にあたる」とし、国歌斉唱不起立を事由とする減給処分を取消す判決を出しました。このような司法判断が出ている中で、都教委が減給処分も含めた被処分者たちに「再発防止研修」を強行するならば、その違憲・違法性はますます高まると警告せざるを得ません。よって五月二三日、被処分者の会弁護団は、「再発防止研修」の中止を文書と口頭で都教委に申し入れました。にもかかわらず「再発防止研修」の実施を決定したことは全く許し難いことです。今、教育をないがしろにする都教委の暴走に生徒・保護者・市民の批判が高まっています。「これ以上先生をいじめないで」というある都立高校の卒業生の発言は人々の思いを代表しています。教員としての「譲れない思い」を貫いた私たちの行動は、「強制」と「処分」に屈しない教育現場の「良心」を示すものです。
 私たちは、都教委による教育破壌の暴挙に警鐘を鳴らし続け、生徒・保護者・市民と手を携えて、自由で民主的な教育を守り抜く決意を新たにしています。私たちは、憲法・教育基本法改悪の先取りとしてのr日の丸・君が代」強制は、この国をr戦争をする国」にし、「教え子を再び戦争に送る」道であるとの思いを多くの人びとと共有しつつ、不当処分撤回まで断固として闘い抜くものです。

二〇〇五年五月二七日

 「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会 共同代表 清川久基、星野直之

 「日の丸・君が代」不当解雇撤回を求める被解雇者の会 代表 平松辰雄

 「日の丸・君が代」強制反対・予防訴訟をすすめる会 共同代表 永井栄俊、宮村博


                    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「君が代」処分に抗議する

  東京都教育委員会御中

  立川市立立川第二中学校教諭 根津公子

       
 本日二〇〇五年五月二七日、東京都教育委員会(以下、都教委)は入学式における「君が代」斉唱時に起立しなかったとして私を停職一月処分に処した。この暴挙に強く抗議する。
 一九八九年、当時の文部省が学習指導要領に「日の丸・君が代」を持ち込んで以降その強制を年々強め、都教委は二〇〇三年、いわゆる10・23通達を出し、反対意見を処分で脅し封じ、徹底した「君が代」服従を教員に、そして教員を通して子どもたちに強いてきた。
 教育は「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成」を期し、「学問の自由を尊重して」行うべきものであって、教育行政が「不当な介入に服してはならない」と教育基本法は謳っている。教育として「日の丸・君が代」を取り扱うならば、学校・教員はこれらについて子どもたちが考え判断できるよう資料を提示し、学習する機会を作るとともに、その上で子どもたちが自らの意思で行為を選択することを保障しなければならない。それが軍国主義教育の反省から生れた、教育基本法の示す教育行為である。
 然るに、都教委が強行する、子どもたちに一つの価値観を押し付ける「君が代斉唱」行為は非教育・反教育行為であり、教育基本法に違反する行為である。それは調教と呼ぶべきものである。
 そのような理不尽なことに、私は従えない。職務命令を濫発されても従わない。それは、教育基本法を順守し、軍国主義、国家主義教育に加担しないと誓った私の教員としての職責であり、選択である。私は、私の生き方を子どもたちに示すことで教育に責任を持つ。だから、都教委が叩いても私は立ち上がる。意を同じくする人たちとともに闘う。
 都教委の役人の方々よ、世界に目を向けよ。圧政に命を堵して闘っている人々がいることをあなた方は知っているだろうか。圧力をかければ、誰もが服従するのではないことを学ぶとよい。
 都教委の「君が代」処分に抗議するとともに、併せて、闘いつづけることを宣言する。
 
        以上

二〇〇五年五月二七日


戦争の民営化

 五月二九日、文京区民センターで、「戦争の民営化とは何か? 〜 『対テロ戦争』背後に蠢く戦争ビジネス(戦争請負会社)の実態」(主催:グループ 武器をつくるな! 売るな!)が開かれた。

 講師は本山美彦さん(京都大学教員、国際経済学)。
 イラクで殺されたと言われる斉藤昭彦さんは、イギリスのハート・セキュリティーという民間軍事会社(PMC<プライベート・ミリタリー・カンパニーズ>)の社員だった。PMCには戦争での役割で三種類にわけられる。第一に、ネパールのグルカが代表的なものだが「安全」を守るというもの。第二に新しい武器を試すということ。アメリカ・ブッシュ政権の副大統領チェイニーが社長をやっていたハリバートン社などで、正規の軍隊では扱えない専門的な技術を持ったものだ。第三に極めて戦闘能力の高い専門集団だ。特殊部隊ではイギリスのSAS(イギリス陸軍特殊空挺部隊)が最精鋭で、アメリカのSEALS(アメリカ海軍陸海空作戦隊)やDELTA(現在はアメリカ特殊作戦司令部に編入)なども強いが、この三っつが三大供給源となっている。殺戮を経験してきた連中は普通の社会には帰れず、こうした闇の世界に生きるのだ。斉藤さんのいたハート・セキュリティー社も一九九七年にイギリスの貴族が設立したものだ。
 冷戦が終わって傭兵ビジネスによって大きく儲ける時代がきた。イラク戦争ではアメリカ軍が十数万、次いでイギリスが一万五千位だ。イラクにいるPMCの「社員」は二万人におよびアメリカに次ぐ「兵力」だ。二〇〇四年三月にはイラク・ファルージャで米軍による大虐殺が起こったが、その口実はアメリカ「民間人」四人が殺されたことだ。だが、この「民間人」はアメリカ「ブラックウォーター・セキュリティー・コンサルティング」の社員で、四人のうち三人がSEALSの出身者だった。ブラックウォーター社は、アメリカ暫定占領当局の防衛および関連業務を請け負っていた。戦闘行為でも警備員をはるかに上回る能力を見せる。そうしたPMCは莫大な契約金を手にいれる。
 表の権力と裏の権力が手を握っている。かつてアメリカのアイゼンハワー大統領は産軍複合体の危険を叫んだが、今日ではもっと巨大なものができている。市民が軍を統制するなどというシビリアン・コントロールなどというのは昔から嘘だ。それらの勢力が政府を支配し、戦争を永続させる。戦争は儲かるからだ。
 戦争の資金はどうするか。それはアヘンだ。かつて日本軍も中国でアヘンで闇の資金をつくった。アフガニスタンでもタリバン政権が打倒されて、いまのような状況になると、アフガニスタンは世界一のアヘン生産国になった。日本でもシベリア帰りの連中のなかでおかしな動きがあるし、自衛隊出身者がアフガン地雷の撤去などの事業を行い民間に手を伸ばしてきている。こうした新しい事態と危険な動きに対抗して行くために新しい発想が必要になっている。


せ ん り ゅ う

  ゴミためで長者番付みてるやつ

  社長さんみんなダンゴが大好きで

  頭だけ下げるは「御馳走さま」に見え

  改革は郵政よりも参拝を

  米軍へ思いやり庶民にソッポ

                 ゝ 史

二〇〇五年五月


複眼単眼

  
国 連 研 究 〜 石の上にも何年の研究者

 おりにふれ、さまざまなところで出会う「専門家」という人びとの悪い癖で「木を見て森を見ず」のところが、なんとなく鼻持ちならないという気がしばしばしていたのだが、この日はその専門家に脱帽した。
 ある市民運動の憲法講座で国連研究者の河辺一郎さんの講演を聴いたときのことだ。彼が一〇年以上前から国連のことにしがみつくようにして真面目に研究していたことを知っている筆者としては、その若さもあって好感を持ち、敬意も払ってきた。その河辺さんの話を久しぶりに聴いた。
 国連問題は今日の日本政府の常任理事国入りの画策と合わせて、時事問題としても脚光を浴びている。このところは河辺さんも忙しいのではないだろうか。
この日、冒頭に彼は与党の政治家らが「日本は国連の通常予算の二〇%を分担している」と誇らしげに言うがこれは嘘だとして一連の数字を示すことから始めた。
 日本の年度別(上段)国連分担金の完済月(下段)の一覧だ。

 一九八八   四月
 一九八九   九月
 一九九〇   八月
 一九九一   九月
 一九九二   六月
 一九九三   四月
 一九九四   七月
 一九九五   五月
 一九九六   五月
 一九九七   四月
 一九九八   九月
 一九九九  一〇月
 二〇〇〇   九月
 二〇〇一   八月
 二〇〇二   五月
 二〇〇三  〇四年  三月

 という数字だ。
 滞納大国の米国をのぞく欧州各国はたいてい請求の翌月、すなわち二月に払っているという。〇三年に至っては一四ヶ月の未納であった。米日で四割以上も半年以上も滞納したら、国連事務局の財布は空っぽでたいへんな騒ぎだろうと河辺さんは言った。九五年頃、少し早くなったのは国会で野党議員に質問で追及されたからだという。これも間もなくもとに戻ってしまった。
 滞納の遅れの理由を政府は「為替レートで最も有利なときに払っている」と答えたとも聴いた。いやはや、こんな数字は少なくとも私は知らなかった。
 「日本は二割も払っている。それなのに常任理事国に入れないとはけしからん」という流行の議論の危うさを、この日の河辺さんは実証してくれた。
 この財布の苦しさから出たのが、先般、コフィ・アナンが来日した際に、日本の常任理事国入りを支持することを示唆した発言だという。日本政府は「してやったり」とほくそ笑んだことだろう。
 この日の河辺さんの講演はこうした彼ならではの話が多く含まれていた。「石の上にも三年」などというと叱られるかもしれないが、昨今の何ごとにも飽きっぽい風潮を見ていると、たゆまずに努力してきた研究者としての河辺さんのありかたが輝いて見えたのだ。 (T)