人民新報 ・ 第1170号<統合263号>(2005年6月15日)
目次
● 憲法改悪のための国民投票法案反対 国会会期延長反対
● 国会ピースサイクル 大分から各地を通って東京まで 6月3日 総理府・外務省などへ要請
● 「昭和の日」成立に抗議する声明
● 郵政民営化を絶対に阻止しよう! 郵政労働者ユニオンが国会闘争に取り組み
● 「不当労働行為責任」と「時効論」をテーマに、
鉄建公団訴訟シンポジウム
● 君が代不起立停職処分 根津公子さんの闘い
● 小泉の靖国参拝に広がる批判 右派言論の一部にも「慎重」論
● 図 書 紹 介 / 立川反戦ビラ入れ事件
● 複眼単眼 / 衆院憲法調査会長 中山太郎の心配事
● 夏季カンパの訴え / 労働者社会主義同盟中央常任委員会
憲法改悪のための国民投票法案反対 国会会期延長反対
六月八日の午後、衆議院第二議員会館会議室で、「憲法改悪のための国民投票法案反対、市民と国会議員の院内集会」が開かれた。
主催は憲法改悪反対運動共同会議(略称・憲法共同会議)で、「憲法」を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、全国労働組合連絡協議会、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、平和を作り出す宗教者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会の八団体で構成されている。
主催者を代表して山口菊子さんが(女性ネット)があいさつ。
私たちと憲法との関係が議論されている。憲法があってこそ私のような女性がこのような会議に出て来て発言できるようになったと思っている。そうした憲法には変えなければならない問題点はない。それなのに政府・与党は改憲のための国民投票法案をこの国会に出そうとしている。私たちは改憲は要らないという私たちのような意見と違う国会議員にもっともっと働きかけていかなければならない。この集会のなかで話されたものを地域にもって帰って、憲法を絶対に変えさせないという声をひろげよう。
つづいては国会報告。
糸数慶子参議院議員(無所属)
私が選出された沖縄ほど憲法を望んでいるところはない。沖縄は地上戦を体験して大きな犠牲を出し、戦後はアメリカの統治下におかれた。私たちは、平和憲法の下にもどるという気持ちで復帰運動をやってきた。しかし、佐藤・ニクソンの密約によって「核も基地もない沖縄」という県民の願いは実現しなかった。沖縄一三〇万県民は普天間基地、辺野古ボーリング調査に反対しているが、日本政府は沖縄の声をアメリカに伝えていない。沖縄県民は沖縄戦を通じて、戦争につながるすべてのことに反対しなければならないということを学んできた。いまの憲法を変えるのではなく、充実させて世界に誇れるものとして世界にひろげていくことが大事だ。そのために国会の内外での闘いを進めていこう。
土井たか子衆議院議員(社民党)
衆参の憲法調査会の最終報告では、憲法は誰のためにあるのかということについてまことに不鮮明だ。近代国家の憲法は国民のためにある。それが基本であり原則だ。基本的人権を権力は奪うことはできない。しかし改憲派は国があって国民がある、もっとひどくなると国のために国民はあるとなっていく。また、国家とは議員一人ひとりだというのが自民党改憲派などに多い。まさに「朕は国家なり」という思想だ。私は戦争時代を経験したが、勝つためにはなんでもやるということだった。この国会を改憲のためのものとさせないために、もっともっと横のひろがりを実現して頑張ろう。
喜納昌吉参議院議員(民主党)
いま、日本の国連常任理事国入りは不発に終わろうとしている。グローバリゼーションにいかに対応していくかだが、平和憲法をもっと進化させて対応していくべきだ。国益を人類益に、愛国心を人類愛に進化させるべきだ。社民、共産、民主の協力で改憲を潰していこう。
山口富男衆議院議員(共産党)
政府・与党は、憲法調査会を衣替えして改憲案の起草も審査もできるようにすること、そして九条を打ち壊すための国民投票法案を成立させようとしている。そして、日本を海外で戦争のできる国にしようとしている。フランス、オランダでEU憲法の国民投票の視察に憲法調査会会長の中山太郎が行った。当初は民主党も一緒に行く予定だったが郵政民営化法案の審議欠席問題などでいかなかったが、そこでは政府提案が圧倒的な差をつけて否決され、与党の人びとも国民投票が簡単でないのを見て愕然としたという。ここにきていろいろ問題点が出てきている。メディア規制とか、国民投票では一括するのか逐条で提案するのかなど問題点が多くでてきている。
福島瑞穂参議院議員(社民党党首)
六月一九日が今国会の会期末だが、与党は大幅な延長を狙っている。まず会期の延長に反対していこう。国民投票法案は憲法九条を殺すものだ。夜中に包丁を研いでいるというのがいまの状況だ。客観的中立的な国民投票法ではまったくないのだ。モンゴルで社会主義インターのアジア・太平洋会議がひらかれたが、そこでは改憲に反対する日本社民党への支持と広島で社会主義インター平和委員会を開くことが確認された。いま必要なのは、自民党であれなに党であれ憲法を変えたいと思っている人を変えていくことだ。
「憲法改悪のための『国民投票法案』に反対する請願署名」を集会参加議員に手渡す。提出した署名は二万六千六百一九筆(総計三万六千百一筆)。
次に、「メディア規制の角度から見る国民投票法案」と題して毎日新聞記者の臺宏士さんが報告。
国民投票法では報道の自由という問題がおおきく関係している。虚偽報道、選挙結果に影響をおよぼす報道や公正を害する報道などが罰則付きで禁止される。しかし、その判断は誰がするのか。抽象的にはそうだそうだということになるが、実際にはその記事が公正なのかなどについて判断は難しいものだ。国際女性戦犯法廷のNHK・ETV番組への圧力の問題があったが、あの時も、安部晋三など自民党の政治家は「公平公正」と言った。NHKに対して「わかっているネ。公平公正にネ」と口当たりの言いことを述べているが、「公正」ということが実際にはになるとどういう効果をもたらすようになったかということだ。こうしたことは報道機関として決して受け入れられるものではない。いま、ビラ・チラシを撒いただけで捕まることがある。近ごろ戦前の政治的な大弾圧を描いた小林多喜二の「一九二八年三月一五日」を読み返したが、憲法を変えることとの関係で考えさせられることが多かった。
市民団体からは、フォーラム平和・人権・環境の福山真劫事務局長とGPPAC・Japan(武力紛争予防のためのグローバル・パートナーシップ)の松村真澄さんが報告を行い、平和憲法21世紀の会の吉原節夫さんが閉会のことばを述べた。
改憲のための国民投票法案については、与党と自民党との調整をはじめ、さまざまな問題点あきらかになったとして、六月八日、中山太郎・衆院憲法調査会長と保岡興治・自民党憲法調査会長が、国会内での記者会見で与党の方針として先送りすると述べたが、油断はならない。憲法調査会を常設の「憲法委員会」へ衣替させ、国民投票法案を早期に成立させる策動に反対するいっそう広範な戦線の形成をいそがなければならない。
国会ピースサイクル 大分から各地を通って東京まで
6月3日 総理府・外務省などへ要請
六月三日、国会ピースサイクルが東京で開催された。
大分を出発したメッセージは各地のピースサイクルネットへ手渡され六月三日東京に到着した。この日の行動は、@東京都庁A防衛庁B外務省C総理府D夜の講演会と盛り沢山の一日だった。
朝九時に神田神保町に集合した参加メンバーはここから自転車で都庁へ向け出発した。途中今話題になっている靖国神社の横を通り過ぎ市ケ谷の防衛庁前で辺野古すわりこみ抗議の仲間を激励して都庁に到着した。ここで待合わせをしていた神奈川の「日の丸・君が代」強制と闘っている仲間たちとともに都庁へ。
都教育委員会にたいして「日の丸・君が代」の強制に反対する申入れと質問書による抗議行動を行った。四月二六日、福岡地裁で減給処分の取消し命令の判決が下されているにもかかわらず、入学式で不起立等で一〇名を処分した(卒業式では五三名の処分)。これに対し@君が代斉唱時の不起立とピアノ伴奏の拒否教職員への懲罰処分を撤回すること、A日の丸・君が代という国家権力の象徴の強制を直ちに中止すること、B侵略戦争をごまかす「つくる会」教科書はアジア各国から大きな批判が沸き起こっている、アジアの人々の納得のいく歴史教育を行うこと、などを申入れ、質問書には二週間後までに回答するように求めた。
午後からは防衛庁に移動。門前で文章を読み上げる申入れ行動を行った。@辺野古海上基地建設を直ちに白紙撤回すること、A辺野古沖のボーリング「作業」を中止せよ、B米軍基地の縮小・撤去、B米軍による事件事故で日本の捜査権、逮捕権を無条件で主張すること、などを訴えた。
国会前に到着。ここでは郵政民営化に反対する郵政ユニオンの仲間たちが座り込みや抗議行動をおこなっていて、これに合流した。
午後三時からは外務省に八名の制約つきながら岡崎トミ子議員らと申入れ行動に向かった。ここでは主に従軍「慰安婦」被害者への謝罪と個人補償に関する要請(別掲)をおこなった。外務省の見解は「戦争賠償はサンフランシスコ条約で解決ずみ。個人補償はしない。しかし、『アジア女性基金』で民間寄付と政府補助金で道義的責任を果たしている」などといった木で鼻を括る態度に終始した。政府は過去の戦争に対する「お詫び」を口先ではしているが、従軍「慰安婦」裁判では政府はその実態を認めてない。「アジア女性基金」もここ数年で解散しようとしている。問題解決を長引かせ高齢になっている彼女らの死を待っているに等しい態度である。外務省では一時間のやり取りがあった。この後、四時一五分より総理府に一五名で要請行動を行った。各地からよせられた反戦平和や憲法九条改悪反対などが書かれたメッセージは八〇点約三〇〇名の署名が小泉首相あてに届けられた。メッセージの形は短冊、寄せ書き、横断幕、巻紙形式、蒲鉾板などそれぞれ工夫されていた。
夕食を挟んで六時三〇分から、神保町近くの公民館において国会ピース行動の報告と西谷文和さんのイラク現地報告が行われた(西谷さんは三月の大阪スタート集会でも講演した)。西谷さんは次のように述べた。
イラクで日本人斉藤昭彦さんが殺された。かれの仕事である民間(警備)軍事会社の問題がクローズアップされてきている。イラク戦争ではブッシュ政権丸ごと「戦争屋」といえる。カーライル(金融会社)は父ブッシュが、べクテル(ゼネコン会社)はシュルツ元国務長官、ハリバートン(石油会社)ではチェイニー副大統領が役員になっている。こうした会社はみな戦争によって儲けている。そうした会社が民間軍事会社を下請け経営している。ネオコングループはアメリカの戦費で戦争を民営化し、戦争を支えるシステムを作っている。斉藤さんが雇われていたハートセキュリティー社も五〇ある「戦争請負会社」の一社であった。傭兵の戦死者は砂漠に埋められており、米兵の戦死者には数えられていない。また、劣化ウラン弾の被曝により子どもの多くに被害が及んでいる。サマワに駐留する自衛隊の経費は莫大なものにのぼる。その金をNGOやボランティアなど民間で使えばもっと有効に活用されるだろう。日本には長いものには巻かれろという諺があるが、むこうでは「軋(きし)む車輪になろう」という。抵抗の声を上げていこう。
イラクでの戦争は終わってはいない。サマワはすでに非戦闘地域でないことは明白である。自衛隊はすぐにイラクから日本に帰るべきである。 (A)
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戦後六〇周年を迎えて、従軍「慰安婦」被害者への謝罪と個人補償に関する要請
ピースサイクル全国ネットワーク
内闇総理大臣 小泉純一郎様
外務大臣 町村信孝様
私たちは二〇年間、自転車で全国の人々と連なり、平和、人権、環境保護を訴えて来ました平和団体です。この間、韓国、中国の南京・東北、べトナム、フィリピン、タイ、マレーシア、シンガポールなどアジア各地にも自転車を走らせ、現地の人々と共に旧日本軍の侵略の爪痕を見学し、戦争被害者との交流を深めてきました。韓国、フィリピン、中国、インドネシア、台湾をはじめ、勇気を持って名乗り、立ちあがった従軍「慰安婦」被害者たちの裁判支援等にも関わり、戦争責任と戦後補償についても追及してきたところです。
戦後六〇周年にあたる今年、中国、韓国をはじめ、近隣アジア諸国から膨大な人びとが日本政府に対する批判と抗議を爆発させています。
戦後六〇年たってもA級戦犯を合祀する靖国神社へ首相や閣僚たちが参拝しています。また、侵略戦争を賛美するかのような「歴史教科書」の採択、「君が代」「日の丸」の強制、従軍「慰安婦」、強制連行・強制労働被害者の放置など、自己反省に立つ「歴史認識」を退ける政策を公然と推し進めています。
それゆえに、近隣アジア諸国の人々の怒りに遭遇し、「反日ヂモ」の爆発となっています。日本国政府の狐立・衝突は、政府・外務省が自らの歴史を誠実に振りかえらない、「歴史的な償いを行動で示さない」ための結末に他なりません。小泉政権が誕生してからの四年間は、「反省とお詫び」を裏切る行動ばかりでした。今こそ、植民地支配と侵略戦争を「反省」し「お詫び」を言葉だけでなく、行動で示す時だと思います。
憲法と教育基本法にある「平和主義」「交戦権の否定」「武力の放棄」は、植民地支配と侵略戦争の「反省とお詫び」の反映であったと思います。
私たちピースサイクル全国ネットワークは、今こそ憲法九条の精神をアジアへ、世界へ、未来へ、との想いから、以下の従軍「慰安婦」被害者に対する緊急の要請をおこないます。
一、すべての従軍「慰安婦」被害者に対し、戦争犯罪による法的責任を認め、公式の謝罪と国家補償を、被害者女性たちが生きている間に実施すること。
二、口先で被害女性に「お詫び」を述べつつ、法廷では被害事実を認めてこなかった欺瞞を正すこと。
三、法的責任は認めず、道義的責任だけを果たしたという「アジア女性基金」は完全な失敗であったζとを認めること。
四、内閣府に従軍「慰安婦」被害への謝罪・補償問題対策室を設置して、誠実に問題解決にあたり、建設的友好的な国際関係を築くこと。
五、国連人権委員会、社会権規約委員会、国際労働機関(ILO)など国際機関の度重なる勧告を直ちに受け入れ、高齢となった被害女性たちが納得する、必要な施策を実施すること。
六、司法における判決がいう付言「立法的行政的解決を図ることは十分可能」に従い、行政府として積極的に問題解決にあたること。
七、世界とアジアのリーダーたる政府として国連常任理事国入りの立場を期待する前に、従軍「慰安婦」被害女性への謝罪と補償問題を解決すること。
八、戦史や各省にある全資料を公開し、戦争被害の全体像を明らかにすること。また、再発止のため戦争犯罪者は裁くこと。学校教科書では歴史事実を明確に表現すること。
九、六回にわたり参議院に提出された「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」について、この法案の成立のため、国会に対し十分な協力を行うこと。
二〇〇五年六月三日
「昭和の日」成立に抗議する声明
「昭和の日」が可決された(五月一三日)ことに対し、さまざまな市民団体で構成される反「昭和の日」プロジェクトは、抗議と廃止を求める声明をだした。
反「昭和の日」プロジェクト
http://anti-emperor.hn.org/showa/
「昭和の日」成立に抗議し、その廃止を求める
昭和天皇の誕生日である四月二九日を「みどりの日」から「昭和の日」に、五月四日の「国民の休日」を「みどりの日」にそれぞれ変更する改「正」祝日法が、五月一三日、賛成多数で可決、二〇〇七年から施行されることになった。
この「昭和の日」制定に私たちは抗議する。
日本政府はこの半世紀の間に、天皇神話に基づいた紀元節復活を意味する「建国記念の日」を制定し、天皇の在位期間を一つの時代として命名する「元号法」、戦争と天皇賛美のシンボルである「日の丸・君が代」を「国旗・国歌」とする「国旗及び国歌に関する法律」、そして今回の「昭和の日」を制定した。日本が天皇制の国であることを日常的に認識させ、天皇制を押しつけるための装置を、政府は一つひとつ積み上げてきているのだ。
この「昭和の日」は、廃案となった過去二回の法案と同じ「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす」がその意義であるという。
私たちは、この法案が国会に上程されるたびに少なくない数の個人や団体と共同で反対の声をあげてきた。「激動の日々」と称される侵略戦争と植民地支配の時代の最高責任者であった「昭和天皇」はもちろん、「復興」の象徴すなわち、戦争責任をまったくとらずに延命し、アメリカの意向に沿った戦後国家(日米安保体制)づくりや今日の戦争国家日本への道を準備した象徴天皇制下の「昭和天皇」をも、賛美しその誕生日を祝う気などはないと。
昭和天皇裕仁が、六〇年前に敗戦を迎えたあの侵略戦争とアジアへの植民地および占領支配の最高責任者であったことは歴史的事実である。そして戦後、その戦争責任をとらないまま、「象徴天皇」として延命し、朝鮮戦争やベトナム戦争に便乗して、多くの人々の死と生活破壊の上になされた「復興」の象徴となったのだ。
いま日本政府がなすべきことは、「昭和」を記念することではまったくなく、アジア諸国に対する近代日本の侵略の歴史と真摯に向き合い、隠していた歴史の真相をあますことなく明らかにし、その事実の重さを深く認識し、戦争被害者に謝罪と補償を行うことであり、その最高責任者、すなわち天皇に責任をとらせ、天皇制という制度を廃止することである。私たちのこういった主張はまったく無視され、「昭和の日」は賛成多数で成立した。それどころか事態は「昭和天皇記念館」がつくられるところまで来ている。
私たちはこれからも繰り返し抗議し、主張する。侵略戦争と植民地支配、「高度成長」という名の経済侵略を全面展開した天皇裕仁の年号「昭和」を冠した祝日はまっぴらである。アジアの人々と連帯し、共に生きる努力とは対極にある、この「昭和の日」の廃止を求める。
二〇〇五年五月
郵政民営化を絶対に阻止しよう!
郵政労働者ユニオンが国会闘争に取り組み
郵政ユニオンが国会闘争
小泉内閣がその最大の政策課題であると位置づける郵政民営化六法案の論議が行われている。郵政民営化は、新自由主義の規制緩和・構造改革で、ひとにぎりの外資・金融資本を肥え太らせ、郵政事業で働く労働者の生活と権利を奪い、広範な利用者へのサービスを低下させるものだ。四月二〇日に郵政特別委員会が発足したが、民主党、社民党の欠席などで論議は遅れた。一定の妥協が成立し審議は行われるようになったが、郵政民営化は影響するところが多きく、自民党内を含めて反対がひろがっている。国会の外でもさまざまな反対行動が取り組まれている(国会の会期末は六月一九日だが、政府・与党は大幅な会期延長を狙っている)。
郵政労働者ユニオンは、「郵政民営化を監視する市民ネットワーク」を始め労働組合・共闘団体・市民団体に呼びかけて「郵政民営化法案阻止闘争本部」を結成・設置し、六月の国会行動を決定した。
六月二日午前一一時からは、国会議員会館前で座り込みに入った。その後、郵政民営化特別委員会のメンバーをはじめ国会議員に対して、公共サービスの堅持のために郵政民営化法案を廃案にするよう要請する行動を行った。
郵政労働者の総決起集会
同日、夕刻にはラパスホール(東京労働会館)で、「6・2 民営化反対! 郵政労働者総決起集会」が、郵政産業労働組合と郵政労働者ユニオンの共同主催で開かれ、双方の組合員など一〇〇名を越える参加者があった。二つの労組がこうした形で集会をもつのは画期的なことであり、郵政民営化反対の闘いの前進に大きな意義をもつものとなるだろう。
集会はJR西日本の事故の犠牲者に対する黙祷で始まり、つづいて郵政ユニオンの内田正委員長が開会あいさつを行った。
郵政民営化反対の闘いのなかで大きな手ごたえを感じている。全国で反対する声が上がってきている。自民党の中でさえそうだ。そうした声を本日の集会はしっかりと受けとめて法案を廃案に追い込む闘いを強めていこう。郵政民営化反対運動は「三位一体改革」など構造改革攻撃との闘いとつながっている。多くの人びとと協力して反対闘争を進め民営化法案を絶対につぶそう。
郵産労廣岡書記長が講演
つづいて郵産労の廣岡元穂書記長が「郵政民営化法案と闘いの展望」と題して講演した。
政府は六億円もかけて民営化推進キャンペーンを行っているが国民に浸透していない。小泉自身も民営化の論拠をさまざまに変えてきている。民営化の論拠が破綻しているということだ。そもそも、法案そのものが、中央省庁等改革基本法第三三条一項六号の「民営化等の見直しは行わない」と真っ向から矛盾しているし、法案の骨格にかかわる重要な事項の多くを政省令に委任するというしろものだ。郵政民営化法第一条(目的)は「民間にゆだねることが可能なものはできるかぎりこれにゆだねる」と言い、第二条(基本理念)では「多様で良質なサービスの提供を通じた国民の利便性の向上」としているが、民営化では良質なサービスも国民の利便性の向上もできない。その反対だ。JR西の大事故・大惨事がそのことを示している。郵政民営化反対の闘いは、大企業中心の経済建設を国民経済中心の経済再建へ変えるものであり、弱者切り捨ての政治を許さず国民本位の政治に転換させるための闘いであり、日本国憲法を守り発展させ戦争国家への道を阻止する闘いである。すでに世界の主な流れは民営化ではない。規制緩和・民営化から再び国営事業の復活へという政策の転換がどこでもおこなわれるようになっている。民営化のモデルとして言われてきたニュージーランドでは、郵便貯金制度が復活しているし、ドイツでも郵便事業の完全自由化は見送りとなり、ドイツポストがポストバンクを買収・再統合している。日本に民営化を押しつけてきているアメリカでさえ「ユニバーサル維持は国営でしかできない」として公社の経営形態を維持することになっている。小泉は、こうした世界の動きとまったく逆行している。一周遅れ・時代おくれの改革論者なのだ。今後の民営化反対の闘いでは、共同した力で徹底した宣伝・要請・国会前座り込み・署名行動などを強力に進めていかなければならない。
講演の後は、職場からの報告で、トヨタ生産方式を導入させたJPSの総本山である越谷郵便局の労働者、ゆうメイト、日本橋郵便局の労働者などが発言した。
最後に郵産労の山崎清委員長が閉会のあいさつを行い、郵政民営化反対の闘いをともに進めていこうと述べた。
郵政ユニオンは、六月三日も国会前座り込み行動を行った。夏の全国ピースサイクルの前段の取り組みでもある「国会ピースサイクル」の仲間が政府への申し入れのために国会前に到着し、座り込みに合流し、相互にアピールを交換した。
「不当労働行為責任」と「時効論」をテーマに、
鉄建公団訴訟シンポジウム
鉄建公団訴訟には第二次、全動労争議団、動労千葉争議団など次々と加わって、一段と強力な態勢がつくられつつある。判決日は九月一五日。一〇四七名救済の判決をかちとるためにさまざまな取り組みが展開されている。
六月九日には、「6・9 鉄建公団訴訟シンポジウム 不当労働行為責任を問い、時効論を斬る!」が、市谷のエデュカス東京で開かれた。
ビデオドキュメント「JR西日本尼崎事故」(ビデオプレス)が上映され、主催者あいさつを国鉄闘争共闘会議の二瓶久勝議長が行った。鉄建訴訟を起こしてから三年以上が経過した。いろいろ苦労があったが、とくに国労本部の妨害はひどいものだった。しかし、多くの人びとの協力で一定の地平をつくることができた。そのもっとも大きな成果は一〇四七名の統一をつくりだし、四〇〇名ほどの訴訟になったことだ。われわれは、和解を求めるのではなく、七月八月と大きな集会をはじめさまざまな運動をくりひろげていく。鉄建訴訟は国鉄闘争のみならず、労働運動全体に影響するのであり、決して負けられない闘いだ。
つづいてシンポジウム。今回は、「不当労働行為性」と「時効論」がテーマ。
西谷敏・大阪市立大学大学院法科研究科教授。国鉄の分割・民営化の目的は、国労や総評の労働運動の解体だった。専売や電電の民営化の時にはJTやNTTが「承継」法人であった。ところが、国鉄の場合だけ、国鉄とJRは違うものとされ、国鉄が不当労働行為をやってもJRは責任をとらないという極めて複雑な手が使われた。しかし、各地の地方労働委員会、そして中央労働委員会では、労働者の側の主張が通った。それが一九九八年の東京地裁五・二八判決でくつがえった。そして、高裁、最高裁と敗訴した。しかし二〇〇三年の最高裁判決では五人の裁判官が三対二に意見が分かれた。二人は労働委員会の決定のとおりJRに責任ありとしたのだ。そして、多数意見でも不当労働行為があるとすれば責任は国鉄(鉄建公団)にあるとしている。闘いでは、労働基本権である団結権の重要性、国鉄の分割・民営化の本質が国労解体にありそれが効率優先・安全軽視になっていること、そして最高裁でも少数意見があるということを訴えていかなければならない。労組の闘い、世論の力で大きく運動をもりあげて、裁判官に影響を与えることが重要だ。
清水建夫弁護士(鉄建公団訴訟原告弁護団常任弁護士)。分割・民営化の狙いが国労解体にあったことは、当時首相だった中曽根や「国鉄改革」の中心にいていまJR東海会長の葛西などが自分で暴露している。ありとあらゆる国家的な不当労働行為が白昼公然と行われたのだった。裁判所がこうしたことを正面から受けとめることが出来るかどうかが、問われている。裁判所は七〇年代とくに七三年頃からがらっと変わり、国民の権利を守る判決を出さなくなった。これは、裁判所の中で思想差別が行われた結果である。鉄建訴訟は司法を問う闘いでもあるのだ。
加藤晋介弁護士(鉄建公団訴訟原告弁護団主任弁護士)。国鉄には民間と違って雇用保険がなかった。それは、国鉄職員には雇用保障があり失業給付は必要ないとしていたからだ。すなわち、首切りはないという前提があった。にもかかわらず、首をきり、それも、その前提に選別という不当労働行為があったのだ。
松本克美・立命館大学法科大学院教授。時効の問題は、不利益が生じたことを知ってから三年以内に提訴しないと時効となる。これは民法七四二条にある。JR側の主張は、一九八七年の分割・民営化から既に一二年も経っているから駄目だということだ。しかし、時効制度が何のためにあるかと言えば、一つはあまり年月が経ってしまうと立証が困難になるということだ。しかし、継続して不当な行為が行われている場合はいつを起算点にするかが問題になっている。じん肺訴訟では、潜在的な被害が積み重なって障害となるので、まだ自覚されない段階のものまで時効になるというのではあまりにも酷だというので、被害がわかったときが起算点とされた。鉄建訴訟の場合は個人の尊厳が踏みにじられる不法行為が続いており、最後的に損害が決まり全体像がわかった時点だといえる。国鉄とJRを別のものだとする国鉄改革法が事態をわかりにくくしているが、国がわざとそれをわかりにくくして労働者の闘いを困難にさせている。それは労働者の権利行為を妨害した国の権利濫用であるわけで、それが顕在化した時を起算点とすべきだ。
君が代不起立停職処分 根津公子さんの闘い
「日の丸・君が代」不起立で、東京都教育委員会から停職一ヶ月の不当処分を受けた根津公子さんは元気に闘っている。ネットで根津さんの報告が流れている。「停職『出勤』報告3」(六月一一日付け)には次のような報告が載っている。「転載歓迎」とあるので一部を掲載する。(編集部)
「皆様 根津公子です。昨日(六月一〇日)で二週間が経ちました。帽子も日傘も使っているのにしっかり日焼けし、夏のバカンスが終わったような色をしています。生徒にまで、「歳なんだから、気をつけてよ」と言われていますが、元気ですので、ご心配なく。こんな時、頑強な体でよかった!と感謝します。……昨日は雨模様。「先生、雨大丈夫?」と気遣い声をかけてくれる生徒の優しさに励まされました。九日は立川市役所入り口でハンドマイクを持って訴えをし、友人に手伝ってもらってチラシを撒きました。外でマイクを持ったのは、私には初体験のこと。不安でしたが、立川市庁舎、とりわけ市教育委員会で働く人たちに聞いてほしいという強い思いから、話すことは次から次に出てきました。「応援します」「頑張ってください」と声をかけてくださる職員の方が何人もいました。きっと、教育委員会の職員の方の中にも、都教委に追随した市教委の教育行政をおかしい!と感じている方はかなりいらっしゃるんでしょうね。「都教委がやっていることは個人的には問題を感じている」。これは、近隣の市教委の役職にある人が市民との話し合いの場で漏らしたということばですが、役職にあるなしに関わらず、このようなことばを教育行政に携わる人から聞くことが最近はかなりあります。教員たちも、職員会議では発言しないけれど、個人的には問題を感じていることはわかります。数年前あるいは一〇年前まで教員は、職員会議で激しく議論してきたのですから。ことは酷くなる一方なのですから、教育行政、教育現場にいて疑問を感じている人たちは黙っていないで、一言でも発言してほしい。学校が上意下達で支配されて一番の被害者が子どもたちであることは、歴史が証明していることです。外堀が滅茶苦茶に崩されて、教室だけで子どもたちを守ることはできないのですから。……
小泉の靖国参拝に広がる批判
右派言論の一部にも「慎重」論
「罪を憎んで人を憎まず」
小泉首相は靖国神社参拝に対するアジア諸国からの批判に対して、「他国が干渉することではない」、「(A級戦犯に対しても)罪を憎んで人を憎まずだ。これは孔子の言葉だ」と開き直った。
これは五月一六日の衆議院予算委員会でのことだったが、この「罪を憎んで人を憎まず」発言がさまざまな波紋を広げている。孔鮒(孔子九世)の『孔叢子』(くぞうし)のなかにある「古の訟を聴く者は、其(そ)の意を悪(にく)みて、其の人を悪まず」がもともとのものだという。
しかし、孔子の言葉を集めた『論語』でさえも、多くの後代のもの(すなわち捏造されたもの)が含まれていることはすでに常識の部類にはいる。『孔子家語』(岩波文庫)というものがある。これも孔子の言葉を集めたものとされ、中国では宋代までは『論語』とともによく読まれていたし、あの朱子も多くここから引用しているが、いまでは偽書とされている。ことほど左様に古典の引用には気をつけなければならない。だから、「罪を憎んで人を憎まず」を小泉のように簡単に「孔子の言葉だ」するわけにはいかない。
五月三一日の朝日新聞「私の視点」欄で、中国文学者の一海知義神戸大学名誉教授が、小泉首相は演説などでしばしば中国古典からの引用をするが、おおむね「断章取義」的なもので、それはもともとの趣旨とは無関係に、または趣旨に反して、自分に都合のよい部分だけを抜き出して引用することで、それは「中国の古典文化に対する敬意」が欠けていることのあらわれだと書いていた。
小泉のやり方に対する痛烈な一撃だ。
白川静さんの怒り
もうひとつ面白い記事を見た。九条の会の呼びかけ人でもある哲学者の梅原猛さんの書いたものだ。
「東京新聞」の五月三〇日の夕刊の「思うままに」という欄で、梅原さんは、漢字研究で高名な白川静さんの文化勲章受章の祝賀パーティーでのことを述べている。
「最後に、めったに現代政治のことを語らず、人の悪口をいわない白川氏の口から人の悪口が漏れた。それは靖国参拝をやめようとしない小泉首相への批判である。『罪を憎んで人を憎まず』という孔子の言葉を引用して靖国参拝をやめようとしない小泉氏に白川氏はよほど腹の虫がおさまらなかったのであろう。首相の靖国参拝はあの戦争でひどい目にあった中国人の心を深く傷つけるものであるが、その行為を孔子の言葉を用いて弁解するなどとは言語道断であり、日中の友好関係に致命的な打撃を与えるものと氏は思ったのであろう。私は、思わずこの大碩学の口から出た小泉首相批判をもっともであると思う。たとえば麻原彰晃は二十七人を殺したとされる。その麻原を小泉首相は憎まず、麻原が死ねばその墓に参ろうと思うのであろうか。あの無謀な戦争で何百万という日本人を含む東アジア人を殺した東条英機は考えようによっては麻原以上の悪人である。そのような人が祀られる神社に二度と戦争をしないと誓って参拝するのはまったくナンセンスで、とても国際的に通用する話ではない。」
白川静、梅原猛のおふたりの小泉への冷ややかな眼差しと批判の鋭さに感心させられる。
小泉発言は「言語同断」であり、小泉の行為は「あの無謀な戦争で何百万という日本人を含む東アジア人を殺した東条英機」など戦犯を祭る神社に参拝し、それに対する批判があると「孔子の言葉」で反撃したつもりになっている。まさに「首相の靖国参拝はあの戦争でひどい目にあった中国人の心を深く傷つけるものであるが、その行為を孔子の言葉を用いて弁解するなどとは言語道断であり、日中の友好関係に致命的な打撃を与えるもの」である。
内外から包囲される小泉
小泉の靖国神社参拝発言以降、日中関係はいっそう緊張した状況になり、北朝鮮の核開発を巡る六者協議や日本が狙う国連常任理事国入りにも影響が出てきている。
財界主流派はもとより、政府・与党内部からも「国益」の観点から、首相の参拝見直しを求める動きが強まってきている。歴代首相、衆議院議長、公明党からの参拝見直し論で包囲された小泉はきわめて厳しい立場に追い込まれているが、安倍晋三幹事長代理など自民党右派、産経新聞など右翼・軍国主義勢力は小泉に参拝続行の圧力を加えている。町村信孝外務大臣にいたっては与党内の参拝見直しを求める人びとを外国勢力の手先のごとく扱っている。
この間のアジアからの批判によって靖国神社参拝に象徴される、日本の過去清算にかかわる問題をいかに処理するのかが重大な政治争点として浮き上がってきた。
ふりかえって見れば、今回のいわゆる「反日」デモの発端においては、アメリカ在住の韓国・中国系の人びとの日本の国連常任理事国入り反対のネット署名運動の呼びかけが大きな力をもった。それは、日本の国連常任理事国入りは、イラク戦争への加担、日米軍事同盟の再編・強化、その台湾海峡への対象拡大、侵略美化の歴史教科書の検定合格、そして憲法九条改悪による戦後日本の「終焉」と戦争の出来る国家への飛躍などの事態を、過去清算を拒否している日本が再びアジア支配を狙う段階に入ったとする的確な判断にもとづく呼びかけであった。日本政府がそうであって欲しいと思っている「誤解」「愛国主義教育の結果」などというものではない。いわゆる「反日」デモの鉾先ははっきりと軍国主義化する日本に向けられていたのであった。このことを認識せずに、事態をごまかそうとすればするほど日本政府は窮地においつめられるのである。
アジアからの日本批判は極めて大きな効果があった。日本を近隣アジア諸国がどう見ているのか。過去清算もしないで、アメリカ・ブッシュ政権の戦略を支えることによっていままたアジアに君臨することを夢見る小泉政権の姿が浮かび上がってきた。日本政府は靖国などの問題の対応いかんでは、もっと激しいアジアからの批判を浴びることになる。すでに読売新聞や日本遺族会までもが「慎重」論に傾いている。しかし小泉は誤った道から戻ろうとしない。もし、そうしたなら、過去の植民地支配と侵略戦争の根本的な総括・清算と、現在の改憲・軍事大国化という路線の問題に重大な見直しを迫られることになることを恐れるからだ。小泉政権を追い詰め打倒しよう。(MD)
図 書 紹 介
立川反戦ビラ入れ事件
立川・反戦ビラ弾圧救援会編著 明石書店 1800円 B5判 262頁
二〇〇四年二月二七日、東京都立川市にある自衛隊官舎に反戦ビラを配布した市民グループのメンバー三名が逮捕された。のちに「立川反戦ビラ入れ事件」と呼ばれ、広く知られるようになったこの事件は、同年一二月一六日、東京地裁八王子支部で一審無罪判決が勝ち取られた。
多くの人々の控訴断念要求を無視して、東京地検は控訴した。しかし、検察側の控訴理由を示す控訴趣意書は、なぜか当初の提出予定日の四月八日にはだされず、ようやく五月三〇日に提出された。弁護団は今、これへの反論を準備中で、これをもっていよいよ東京高裁での控訴審が始まることになる。
東京では先の八王子地裁での無罪判決の一週間後、あからさまに警察がこれに挑戦するように、葛飾区内でマンションに共産党の「区議会だより」というビラを配布していた僧侶が現行犯逮捕された。
昨年は東京でこの二件以外にも、三月に国家公務員の男性が休日にビラを配布したかどで逮捕・起訴される事件があったし、一二月には都立板橋高校の元教員が、卒業式が始まる前に「日の丸・君が代」問題を掲載した週刊誌の記事のコピーを保護者に配布した件で、起訴された。
ただ自衛隊官舎に「イラク戦争反対」のビラを配っただけで逮捕され、七五日も勾留され、起訴されるという事件が、異常から日常に変わりつつあるこの社会。権力によって相次いで繰り返される、市民運動に対する言論弾圧事件は何を意味するのか。私たちは今、真剣にこの意味を問い、反撃のたたかいを強めなければならない。
さきごろ出版された「立川・反戦ビラ弾圧救援会」の編になる本書はこの問題を健闘するうえで格好の報告・資料集といえるだろう。
内容は<序章>テント村とはなにか/<第1章>無罪判決までの二九四日/<第2章>反戦ビラ入れ弾圧とは何だったのか/<第3章>法学者がみた反戦ビラ入れ弾圧事件/<資料編>からなっている。
複眼単眼
衆院憲法調査会長 中山太郎の心配事
四月に憲法調査会の最終報告書をだして、一仕事終えたかの感がある中山太郎会長は、次は「国会法」を変えて憲法調査会を継承・格上げし、常任委員会的な「憲法委員会」を国会に設置し、ここで「憲法改正国民投票法案」の審議に入り、改憲への道筋をつけたいところだ。
しかし、彼の描いていたこの構想に影がさしてきた。
中山はこの一六二通常国会で国会法の改定をなしとげ、あわよくば国民投票法も成立させたいと考えていたが、どうも雲行きがおかしい。国会法の改定による憲法委員会の設置、いわゆるポスト調査会問題は、中山の根回しで憲法調査会内の自公民各党の合意ができていた。
法改定の成立は目前のように見えていた。ところが小泉首相の強引な「郵政改革」問題で、自民党内ももめているし、民主党も強硬に反対している。国会法の改定どころではなくなってきた。加えて、国会における委員会の設置は自分たちの領分だとばかりに、国会の組織・運営についての権限を持つ衆院議院運営委員会(川崎二郎委員長)の連中が憲法調査会の先走りに文句をつけてきたのだ。
いわく「調査会が法案を審査した先例はない。国民投票法案以外も審査できる通常の憲法委員会とすべきだ」と、憲法改正案も検討できるような憲法常任委員会の設置を主張している。この見解は読売新聞なども主張しているものだが、これを押し通すと公明党も民主党も呑めなくなる。中山にしてみると「せっかく根回しをして合意を取り付けてきたのに、ぶち壊す気なのか」と言いたいところだ。実際、公明・民主は「妥協の余地はない」と反発している。
すでに六月八日、自公民三党は国民投票法案の今国会提出断念を発表した。目下、中山氏らはポスト調査会設置だけでも今国会で成立させたいとやっきになっている。
そのうえで、九月にも与野党合同の海外調査団を派遣し、国民投票の実態調査を行った上で、秋の臨時国会に国民投票法案を提出したいと考えている。
ところが中山にはさらに悩ましい問題が浮上してきた。
中山は自民党憲法調査会の保岡興冶会長とともに、先月末からフランスとオランダを訪れ、欧州憲法批准の国民投票を見学してきたのだ。この訪欧には民主党も誘ったのだが、国会情勢を理由に袖にされた。中山らはこれを通じて日本の国民投票法案づくりに弾みをつけようとしたのである。
ところが彼らがそこで目にしたのはフランス政府の敗北宣言だった。一緒にテレビで開票結果を見守ったパリ十五区の区長は「(国民投票は)民主主義のよい例だが、予期せぬ結果をもたらすこともある。問題提起の仕方も非常に複雑だった」と全四百四十八条の憲法案を一括して国民に問うたことにも無理があったと語ったという。
保岡は「直接民主制のすさまじさを見せつけられた」と語り、中山は「われわれが経験したことのない民主主義の形。はっきり言って怖い。(議会の多数を占めていると)思いこんでしまったら、シラクの二の舞になる」と語り、「憲法改正では焦点を絞り、どういう国をつくるかイメージしやすくすることが重要だ」と述べたという。
私たちはこの間、くりかえし、もし改憲派が憲法問題を国民投票に持ち込むなら、その場で闘い、うち破る決意と展望と、そのための具体的な方策を語り、準備をしつつある。
フランスとオランダを見つつ、あらためて私たちも勝利を実現する決意を固めようではないか。 (T)
夏季カンパの訴え
労働者社会主義同盟中央常任委員会
いま、小泉政権は、アジアからの強烈な抗議を受けています。小泉は、侵略戦争を美化し戦死者を賛美し、いままた戦争の出来る国家として再び戦死者をつくり、それを祀ろうとしている靖国神社への参拝をやめようとしていません。「つくる会」教科書の検定合格、島根県議会の「竹島の日」制定、閣僚や石原都知事による反動的暴言など、戦争肯定、排外主義がまきちらされる危険な事態がつづいています。しかし、アジアからの抗議は日本の人びとを覚醒させ、日本とアジアの関係、過去の清算の問題などを考えることに前向きの人が増えました。小泉政権は、アメリカが強行した侵略戦争に積極的に加担して自衛隊をイラクに派兵し、米軍のトランスフォーメーションにあわせて日米軍事同盟を飛躍的に強めようとしています。だが、小泉政権は各地での米軍基地反対の運動に直面しています。その最大の闘いは沖縄であり、辺野古沖新基地建設ボーリング調査阻止・普天間基地撤去の闘いは大きく前進して日米政府を追い詰めています。憲法改悪をめぐる闘いでは、九条の会が各地各層につくられ、九条改憲阻止に向けての運動の輪が大きく広がりました。政府・与党は、国会に改憲のための委員会をつくり、また改憲のための国民投票法案を成立させようとしていますが、反対運動の高まりや政府・与党内の意見の相違、また法案そのものに内在する矛盾などがあきらかになり、政府・与党の思惑通りにはなっていません。国会では小泉が最大の課題と称する郵政民営化法案での激論がつづき、国会会期の大幅延長がおこなわれようとしています。延長された会期のなかでは、さまざまな悪法が成立させられようとしています。憲法関連法案をはじめ、共謀法など治安立法、そして郵政民営化法案などの悪法を阻止するために大きく団結しましょう。
イラクでは、アメリカ軍を中心とする占領軍といわゆる「イラク政府」は、イラク民衆の抵抗の高まりの中で占領・支配の困難さを増大させています。一方でイラクから撤退する国が増えています。サマワ自衛隊は復興民生支援を言いながら米軍占領体制を支えるために居座っています。自衛隊をただちにイラクから撤退させましょう。
小泉政権の戦争体制づくりと規制緩和・構造改革による広範な労働者・民衆の生活圧迫は表裏一体のものです。現在、小泉政権への不満・反撃が大きくなってきています。民衆の団結した力で小泉政権を打ち倒しましょう。
私たちは、これからも、全国の労働者・市民のみなさんとの協力関係をいっそう強化し、辺野古基地建設阻止・普天間基地撤去をはじめとする米軍基地反対の闘い、イラクからの自衛隊の撤退、労働者・勤労民衆の生活の防衛、郵政民営化法案を廃案へ、そして九条改憲阻止闘争のもっとも広範な統一をかちとるために全力をあげる決意です。私たちは、反戦闘争、労働運動を前進させるとともに、社会主義勢力の再編・再生を具体化するためにいちだんと奮闘したいと思っています。
読者のみなさん!
運動の勝利的な前進のために夏季カンパをお願いするものです。
ともに闘い、ともに前進しましょう。
二〇〇五年夏