人民新報 ・ 第1171号<統合264号>(2005年6月25日)
目次
● 横田基地の米軍・自衛隊共同使用反対!
● 九条の会 「有明講演会」についての記者会見
● 日韓条約から四〇年 東北アジアの平和と歴史認識を問う
● 団子になって闘い続ければ必ず勝てる! 6・10
東京総行動
● 郵政民営化法案を廃案へ! 郵政ユニオンなどが第二次国会闘争
● 都議選―石原都政に反撃を 福士敬子さん、大久保青志さん、本村久美子さんの当選を!
● 産経新聞の悲鳴が聞こえる
● 複眼単眼 / 女性専用車両の導入で考えたこと
横田基地の米軍・自衛隊共同使用反対!
六月一九日、立川自衛隊監視テント村、うちなんちゅのいかりとともに!三多摩市民の会、ピースサイクル三多摩などによる実行委員会の主催で「横田基地の米軍・自衛隊共同利用に反対し、横田からのイラク派兵即時中止を求める六・一九横田基地行動」が行われた。
屋内集会は福生市松林会館。
立教女学院短期大学の島川雅史さんが「ブッシュ政権の軍事戦略と米軍再編の動向」と題して講演した。
アメリカでは冷戦後、軍事革命(RMA)などという米政府の掛け声が激しくなった。ベトナム戦争では地上戦で米兵にも多くの死傷者がでたが、RMAでハイテク兵器を使って犠牲を少なく戦争に勝利できるというのものだった。ネオコンのウォルフォウイッツ前国防副長官などがその中心だ。冷戦の終結で軍需産業は不況産業になった。国防長官になったラムズフェルドは軍需産業の利益代弁者として政権入りしたが、高価な兵器を使う戦争を発動しようとしていた。二〇〇一年の9・11事件がなくととも、何かの理由をつけて戦争を起こしていただろう。いま軍産複合体はわが世の春だ。しかし、イラク戦争はいま泥沼化している。アメリカ軍は、最新兵器の投入で初期の大規模な戦闘には勝利したが、その後の「占領」では困難が増大している。陸上兵力が圧倒的に不足しているからだ。いまイラクではゲリラ戦、それも古典的な意味でのそれが戦われている。日本の政府やマスコミなどは、「自爆テロが続いている」といっている。しかし、英語でも意味は「自殺攻撃」ということだ。「テロ」ではなく、戦闘行為なのだ。それを、「テロ」と言い換えることによって、一部のテロリストの破壊行為だと解釈したいのだ。ネオコンはゲリラ戦が闘われていることを認めたくないのだ。なぜなら、ゲリラ戦は、毛沢東も言っていたように、それを支持する民衆の海の存在を前提することを意味するからだ。米軍はローテクのゲリラに勝てない、その状況がイラクで再現されている。ベトナム戦争の最大の教訓は、ゲリラには軍事力では勝てないということだったはずだ。それを忘れたアメリカはベトナムの轍(てつ)をふみつつあるのだ。ベトナム戦争のとき、マクナマラ国防長官は精緻な数字と費用対効果の理論で戦争に入った。ところが、周知のようにベトナム戦争は泥沼化し、米軍の死傷者は膨大な数にのぼり、アメリカ政府も戦争の見直しを余儀なくされた。そしてマクナマラは国防長官から世界銀行の総裁へ移った。一見すると名誉ある栄転のようだが、実際は失敗の責任を取らされたのだ。いままた、ネオコンの総帥でありイラク戦争をハイテクで短時間に勝利させると豪語したウォルフォウィッツも国防総省から世界銀行総裁へ「栄転」した。
「座間からの報告」は、「キャンプ座間への米陸軍第一軍団司令部の移駐を歓迎しない会」の金子豊貴男さん(相模原市会議員)から。
なぜ、「反対」とか「阻止」とかいう闘う名前でなく「歓迎しない会」か、という質問をよく受ける。それは、ラムズフェルド米国防長官の基地移転に関する四原則にある「歓迎されるところに米軍は行きたい。歓迎されないところには行きたくない」ということからきている。ここからのネーミシグだ。キャンプ座間とは、相模原市と座間市にまたがる在日米陸軍司令部であり、相模総合補給廠、秋月弾薬廠、横浜ノースドックなどがその下にある。あまりよく知られていないが在韓国連軍後方司令部もある。朝鮮半島情勢の繁迫化を演出しアジア太平洋地域の戦争指揮機能を強めるために、米軍再編成で米本国から陸軍第一軍団司令部(米ワシントン州フォートルイス)を移転させようとしている。「歓迎しない会」は、ラムズフェルド国防長官あての葉書作戦をやっている。これは当初一〇〇〇枚目標だったが、反応がよく一〇〇〇〇枚作戦にかえた(現在六五〇〇枚が売れている)。またポスター作成と掲示、街頭宣伝、今後は住民アンケート調査などを行う。今年の二月一九日には冷たい雨にもかかわらずキャンプ座間司令部を包囲する行動をおこなった。自治体の闘いの後押しも重要な活動だ。相模原市でも、市長を会長とする基地返還市民協という広範な市民組織ができたが、これには、市長も市議会も、労働組合、自治会連合会、PTA、市消防団、市農協など多くの団体が参加して、米軍、日本政府への要請をおこなったりしている。また横断幕の掲示、ポスターの作成と自治会掲示板などへの掲示、二〇万名目標署名運動(相模原市は六〇万人口。座間市は一二万人口で六万名署名が終了)などを行っている。今後、政府からはさまざまな飴と鞭の政策が出てくるだろう。たとえば懐柔策として厚木基地の艦載機部隊の岩国(山口県)移転案がマスコミを使った情報操作として流されている。「歓迎しない会」は、毎月の行動(集会やデモなど)を行い、日米首脳会談を照準に一〇月初旬に大きな山場の行動を設定している。
「横田からの報告」は、塚本秀夫さん(横田基地飛行差し止め訴訟団)から。
私は都立高校教師だが、今年の春に「日の丸・君が代」処分をうけた。いま高校に「奉仕」が持ち込まれようとしているが、それは武力事態に対してのものも想定され、工業高校などでは横田基地のフェンス修理なども考えられる。いま、政府は横田基地周辺の「騒音が少なくなった」、だから「騒音地域指定を縮小する」などと言い出した。横田騒音訴訟は高裁で争われているが、来春に結審が延期されたが、それと関係があるかもしれない。しかし、事態は基地の縮小でなく、基地機能の強化にむかって進んでいる。米軍と自衛隊の軍軍共用、軍民共用が画策されているのだ。いま、横田、神奈川の厚木、沖縄の嘉手納、普天間などで騒音裁判をおこなっているが、われわれは、これを「同時多発裁判」と呼んでいる。横田基地の飛行ルートの直下にあたる瑞穂町では、前町長などが中心になって「横田基地軍民共用化に反対する住民の会」ができ、町全体で署名をあつめ政府や都知事に要請することになっている。
集会を終わって、横田基地に向けてのデモに出発。横田基地前に到着し、シュプレヒコールをあげ、在日米軍司令官、横田基地司令官あての申し入れ書(二面下段に掲載)を読みあげた。核とミサイル防衛にNOキャンペーン・新しい反安保実も抗議文を読みあげた。デモ終了後、福生公園で解散集会を開き、参加団体などからの発言があり、反基地などさまざまな闘いをつよめて行くことが確認された。
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6・19横田行動の申し入れ
在日米軍司令官ブルース・ライト中将、横田基地司令官スコット・グッドウィン大佐殿
年内に日米両政府は、米軍の再編計画の決着をつけようとしている。
米国政府が「不安定の弧」と呼ぶ、東アジアから中東までの地域のどこにでも、すばやく米軍を展開できる体制を作ろうというのが、再編計画の主眼である。なかでも、在日米軍基地は、「対テロ戦争」を実行する最前線基地として位置づけられている。
横田基地については、第五空軍司令部のグアム移転が撤回され、司令部は横田にとどまり、新たに府中にいる航空自衛隊の航空総隊司令部を移転させることが明らかになった。米軍と自衛隊との共同使用、軍軍共用が進められようとしている。
横田は、主に輸送任務を中心としたハブ基地として機能してきた。今、これに新たな任務が加えられようとしている。それがミサイル防衛(MD)システムを担う「統合共同作戦センター」の設置計画である。MDシステムの配備は、北朝鮮や中国との軍事的緊張をエスカレートさせるものでしかない。このシステムの下では、米軍の提供する情報への依存が強まり、米軍と自衛隊の連携がより密接になることが懸念される。これに加えて、石原・東京都知事と日本政府は、横田への民間機の乗り入れ、軍民共用化を提言している。
「飛行回数は減っている」と言いつつ、このままでは基地の縮小・返還ではなく、基地の強化と固定化、騒音被害の増大などが進むことは火を見るよりも明らかである。事実、滑走路直下の瑞穂町では住民が中心となって反対の意志を示している。
すでに、横田基地からイラク・アフガニスタンを含む中東地域への派兵は、延べ約一二〇〇人にものぼっている。私たちは、ますます「対テロ戦争」にのめり込もうとする米軍再編を断じて許すことはできない。そのための横田基地の機能強化にも断固反対する。
以下、米軍横田基地に申し入れる。
一)イラク・アフガニスタンに駐留する米軍をただちに撒退させること。
二)横田基地からの中東への派兵をやめること。
三)米軍の再編計画を撤回し、自衛隊との共同使用をやめること。
四)「統合共同作戦センター」の設置ならびにミサイル防衛システムの配備をやめること。
五)横田基地を撤去し、在日米軍を解散させること。 以上
二〇〇五年六月一九日
横田基地の米軍・自衛隊共同利用に反対し、横田からのイラク派兵即時中止を求める6・19横田行動実行委員会
九条の会
「有明講演会」についての記者会見
六月一七日、参議院議員会館で「九条の会・有明講演会」についての記者会見が行われた。
九条の会事務局長の小森陽一さん(東大教授)が九条の会の活動と有明講演会について説明した。
この間、全国各地で呼びかけ人による講演集会を開いてきた。二〇〇四年には、東京、大阪、京都、仙台、札幌、那覇で、今年に入ってからは、横浜、広島、福岡で多くの人が参加し、それぞれが大盛況だった。いずれの集会でも参加者が会場の席を大幅に上回り、第二会場をつくったりしたが、それでも入れない人がでることもあった。
この四月に九条の会発足一年目の記者会見を開いたが、そこでは二年目の運動として、多くの都市で集会を行う、思想・信条の違った人とも力をあわせて九条改憲反対の運動の幅を広げていくこと、を発表したが、その出発点として、七月三〇日に東京・有明コロシアムで一〇〇〇〇人規模の集会をやることにした。これまでの集会では定員オーバーのことがあり、今回は事前に予約していただくことにした。返信用封筒を入れて申し込んでいただきたい。また今回は、九人の著名人が講演会への参加をよびかけている。有馬頼底(金閣寺・銀閣寺住職)、岡野加穂留(元明治大学学長)、岸田今日子(俳優)、佐高信(評論家)、品川正治(経済同友会終身幹事)、白柳誠一(カトリック枢機卿)、辻井喬(作家)、伏見康治(元学術会議会長)、湯川スミ(世界連邦全国婦人協議会会長)の方々だ。
日韓条約から四〇年
東北アジアの平和と歴史認識を問う
六月一八日、豊島区民センターで「日韓条約から四〇年―東北アジアの平和と歴史認識を問う集会」が開かれた。
はじめに、「朝鮮侵略一〇〇年、朝鮮解放・分断六〇年、日韓条約から四〇年を問う二〇〇五年運動」から渡辺健樹さんが基調報告を提起した。
今年の六月二二日は、朝鮮半島の南半分である韓国と国交が結ばれ、日韓条約が締結されてからちょうど四〇年を迎え、政府は、今年を「日韓友情年」と位置づけた。しかし、小泉首相の靖国参拝や島根県の「竹島の日」条例制定、また過去の日本の侵略・植民地支配を美化・正当化する教科書が検定を通過したことなどにより、韓国の人々の対日批判は大きな高まりを示している。敗戦後、日本では朝鮮侵略・植民地支配に対する反省も無く、まして南北分断を強いられた朝鮮半島の人々の苦痛に思いめぐらすこともなかった。今年は、朝鮮が日本の植民地支配から解放を勝ち取り、同時にもたらされた南北分断から六〇年目の年でもある。二〇〇〇年六月の南北首脳会談以来、朝鮮半島の南北の間では民族自主、和解・平和・統一への機運が大きく拡大し、昨年六月、南北共同宣言四周年を記念し、韓国・仁川で開かれた南北統一大会では、分断六〇年となる二〇〇五年を「統一元年にしよう」と決議したが、こうした朝鮮半島の南北間の和解と平和、統一をめざす動きに水を差しているのがアメリカと日本だ。北朝鮮のミサイルが日本を射程圏内に置いている、とマスコミでもよく取り上げられているが、日本を拠点とする米第七艦隊のトマホークミサイルが、常時ピョンヤンを射程圏内に置いていることはなぜ取り上げられないのか。しかも、第七艦隊の艦船はトマホークを実際にイラクやアフガンの人々の頭上に雨アラレのように打ちこんでいる。北朝鮮の人々がこれを重大な脅威と感じていることは明らかだ。私たちは、アジアの人々と連帯し、米国に先制攻撃戦略の放棄を迫り、北朝鮮核問題の平和解決と東北アジアの非核地帯化をめざしていこう。本日の集会には、駐韓米軍基地の拡張に反対して闘っておられる韓国・平澤市住民の方がゲストとして参加してくれている。私たちの闘いは、有機的に結びついた一つの闘いだ。さまざまな歴史的な節目の今年、日本と朝鮮半島の不正常な関係に終止符を打ち、東北アジアの平和をめざす持続的な運動をつくり出していこう。
歴史認識と教科書問題
つづいて高嶋伸欣・琉球大教授が「歴史認識と教科書問題」と題して講演した。新自由主義史観の人びとは、日本は明治維新をやって、欧米列強の植民地にならなかったが、他の国は抵抗勢力がばらばらで植民地にされたということを言っている。福沢諭吉が唱えていた脱亜入欧論の再版が横行している。だが、すでに「昭和」二〇年代の歴史学会では、日本が植民地化されなかったことでは、中国やインドの反植民地闘争が激しく燃え上がり、その力に直面させられた欧米列強は植民化政策の大転換を余儀なくされ、そのことの影響が大きいという判断が出ていたのだ。今、必要なのは「つくる会」教科書を採択させない運動をひろめ強めていくことだ。
「米軍再配置・基地強化との闘いの報告」では、沖縄・辺野古の闘いについて、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロックの木村辰彦事務局長が、またキャンプ座間への米陸軍第一軍団司令部移転反対運動については岩本香苗相模原市議が発言した。
平澤(ピョンテク)―駐韓米軍基地拡張反対闘争
「ノレの会」の歌につづいて、韓国からのゲストのシン・ジョンウォンさん(米軍基地拡張に反対するペンソン住民対策委組織局長)、チョン・テファさん(デチュ里老人会会長)が登壇して、会場のからの大きな拍手をうけた。
韓国・ピョンテクでは、米韓両政府の合意で、ペンソン米陸軍基地とソタン米空軍基地のそれぞれの周辺に大幅に基地拡張が行われ、住民は土地と家を奪われようとしている。現在政府による土地買収の調査が行われている。
チョン・テファさん。私は七一歳だ。三代農業でここに暮らしている。一九〇五年、日本が韓国を侵略したときには、すぐそばで日本軍の基地を作らせないための闘いがあった。解放の時は七歳だったが、すぐに分断された。それから朝鮮戦争がおこり、言葉につくせない悲惨なことがつづき、焦土とされた。ふたたび米軍がやってきて、基地をつくるから「お前らは、出て行け」といった。(地図を示しながら)今回の基地拡張は大規模なものだ。ここの名産の米は味もよく有名だ。ここが基地にされるのが大変悔しい。そうした気持ちで警察の妨害を撥ね退けながら反対運動をやっている。
シン・ジョンウォンさん。韓国では、数十年にわたって基地被害が続いている。毎年七〇〇件にものぼる。二〇〇二年には女子中学生が米軍車両にひき殺される事件が起こり、韓国の人びとの怒りに火をつけることになり、大きな反米の運動が繰り広げられた。基地の拡張の規模は一五〇万坪に近く、基地の周辺での生活はやっていけない。ピョンテクでも今年、保安隊の中尉の問題が起こった。賄賂を貰ったり、強姦などの犯罪だ。現在、逮捕・拘束されているが、韓国の警察は捜査できないでいる。それに住民を悩ましているのがものすごい飛行機の気の爆音だ。アメリカは韓国を守るために来ているというが、信じられない。かれらは、北朝鮮や台頭する中国を威圧するために来ているのだ。在韓米軍は、ステルス飛行機やパトリオットミサイルを配備するなど強化されている。これは軍事的緊張をあおるだけだ。基地の拡張でたたき出される人は約一〇〇〇人にもなる。私たちは、いのちを守るため、平和を守るために闘っている。座り込みなどの闘いはすでに三〇〇日を迎える。土地は私たちのいのちだ。最後まで守っていく。平和といのちを守る私たちの闘争に連帯し、ともに闘ってください。
最後にVAWW―NETジャパンの西野瑠美子さん、脱WTO草の根キャンペーンの大野和興さん、韓統連の朴南仁さんがアピールをおこなった。そして発言者全員が登壇して、シュプレヒコールをおこない、連帯して闘うこと確認した。
団子になって闘い続ければ必ず勝てる! 6・10 東京総行動
六月二〇日、二〇〇五年けんり総行動実行委員会による東京総行動が闘われた。
時代に応える争議団運動
けんり総行動実行委員会は東京総行動を次のように位置づけている。
けんり総行動は、一九七二年六月二〇日にスタートした東京総行動の精神を継承した争議団運動として闘いつづけられている。
東京総行動はベトナム反戦闘争の高揚を背景に、社会的課題と結合して共同して数々の争議を勝利させてきた。
「背景資本」概念の導入、「整理解雇四要件」の定着などもその成果としてあった。
新しい作風として、各争議団の平等性と自立と連帯、大労組などの思惑やご都合に左右されない争議団の主体性尊重、誰もが参加も脱退も可能な自由な形態などをも創りだしてきた。そして、争議の「四つの基本(@争議団・争議組合の団結の強化、A職場からの闘いの強化、B産業別・地域の仲間との団結と共闘の強化、C裁判闘争の強化)」と「三つの必要条件(@要求を具体的、明確にすること、A状況分析を明確にすること、B闘う相手を明確にすること)」を創り出した。
けんり総行動は、これらの貴重な財産を引き継ぎ、今の時代と切り結ぶ武器として発展させていきたい。
各所で抗議・要請行動
6・10の総行動は、最高裁(反リストラ産経労、郵政4・28ネット、全国一般東京労組エタニットパイプ分会)、昭和シェル石油(全石油昭和シェル労組)、フジTV(反リストラ産経労)、NTT(東京労組NTT関連分会)、朝日新聞(東京南部ヘラルド朝日労組)、トヨタ(フィリピントヨタ労組を支援する会)、日逓(郵政労働者ユニオン日逓)、由倉工業(由倉工業労組)、郵政公社(郵政4・28ネット)、東京都庁(東京労組文京七中分会)、光輪モータース(全統一光輪モータース分会)のコースで闘われた。
そのあと、鉄建公団訴訟団、全動労鉄道運輸機構訴訟原告団、鉄道運輸機構訴訟原告団の三者による主催で鉄建公団本社への行動が取り組まれた。
社前行動では、当該労組からの報告、連帯の発言、交渉団への激励などが行われ、力を合わせてそれぞれの争議を勝利させることを確認した。
郵政民営化法案を廃案へ!
郵政ユニオンなどが第二次国会闘争
政府・与党は郵政民営化関連法案などを成立させるため国会の会期を五五日という大幅な延長を強行し、会期は八月一三日までとなった。自民・公明の与党執行部は、七月三日の都議選投票日あとの衆院通過をめざしている。いよいよ、郵政民営化闘争は重大な山場にさしかかった。小泉政権は、その最大の政策課題としての郵政民営化法案成立のために、全力をあげ、自民党内反対派の切り崩し、修正協議での抱きこみに必死である。
しかし、ここに来て郵政民営化問題にかんする世論の動向は大きく変化しつつある。共同通信社が六月一八、一九の両日に実施した全国電話世論調査によると、郵政民営化関連法案について、「この国会で成立させるべきだ」が二一・七%だったのに対して、「民営化を進める必要はない」「この国会にこだわらず議論を尽くすべきだ」が七二・一%となった。すなわち延長国会での成立に否定的な回答が成立させるべきだとしたものを大きく上回ったのである。同調査での、小泉内閣を支持する人の回答を見ても、「今国会で早く成立させるべきだ」が三五・五%だったのに、「今国会にこだわらず議論を尽くすべきだ」が四四・八%、「民営化を進める必要はない」が一五・〇%と計五九・八%もが否定的なものだった。ここに自民党内の「抵抗派」の力の背景を見ることができる。
小泉が頼りとする「世論の支持」が郵政民営化の内実がわかって来るにつれて、民営化反対へと流れを変えてきたといえるだろう。
六月一四から一六日、郵政労働者ユニオンや「郵政民営化を監視する市民ネットワーク」などで構成する「郵政民営化法案阻止闘争本部」は、郵政民営化法案の廃案にむけての第二次集中国会行動を展開した。六月上旬の第一波行動に続いて、国会前座り込み、情宣、議員要請行動などが取り組まれた。
郵政労働者ユニオンなどの国会前座り込み闘争の期間中は、あいにくの梅雨空でときおり激しい雨となったが、座り込み行動は貫徹された。座り込み集会では、郵政労働者ユニオンの全国各地からの参加者、社民党や民主党の国会議員や全労協藤崎良三議長をはじめ労働組合、市民団体などからの挨拶があった。
最終日の一六日には参議院議員会館内で「郵政民営化阻止 6・16院内集会」が開かれ、郵政労働者ユニオン、支援労組、市民団体など五〇人ほどが参加した。福島瑞穂社民党党首(参議院議員)、山本喜代宏衆議院議員(社民党)が参加して発言した。
福島党首は、郵政民営化準備室はこれまでアメリカ政府と一七回、保険協会とは七回の話し合いをもったというが、国民にはほとんど説明をしていない、外資ハゲタカファンドに国民の財産を差し出すような郵政民営化に絶対に反対していこう、と述べた。
また民主党の大出彰議員、社民党の東門美津子議員、糸数慶子議員(無所属)の秘書も出席した。参加した市民からは、郵政民営化反対闘争への激励と運動の進め方について意見などが述べられた。集会ではこの間全国で取り組まれた郵政民営化反対署名が山本議員に手渡された。
郵政労働者ユニオンの松岡幹雄書記長は、まとめの発言で、郵政労働者ユニオン二〇〇七年プロジェクト会議の「誰のため、何のための郵政民営化か?」の「市民・利用者のための郵政改革、私たちの提案」の要旨を紹介し、「官」でも「民」でもない「公」の場が必要だと強調した。
午後六時半からは国会前で「郵政民営化阻止決起集会」がひらかれた。この場には、福島瑞穂社民党党首と民主党の金田誠一衆議院議員が参加した。金田議員は、郵政民営化阻止のためには中国での「国共合作」のように様々な勢力が力をあわせなければならず、国民の利益を踏みにじる小泉を追いつめていこう、と述べた。全労協藤崎議長は、郵政事業で必要なのはユニバーサルサービスだ、民営化すれば儲からないところはかならず縮小される、郵政で働く労働者も酷い目にあわされる、労働者・国民にとってなんの利益もない郵政民営化法案を廃案にもちこむ可能性は十分ある、と述べた。電通労組の大内忠雄委員長は、民営化がいかなる事態をもたらすかはJR西の福知山線大事故ではっきりしている、この六〜七月の闘いをもりあげ小泉内閣打倒のために全力をあげよう、郵政、NTTなど旧公労協の底力を出してともに闘っていこう、と述べた。鉄建公団訴訟原告団からは、民営化は利潤優先・安全無視だ、労組の力が弱くなってから起きた三井三池の大炭塵爆発事故の悲惨さがそれを示している、絶対に負けられない闘争だ、ともに闘おう、と述べた。
最後に郵政労働者ユニオン内田正委員長が、多くの国民が民営化はおかしいと思っている、そうした声を大きな運動にしていけば、絶対に廃案に持っていける、国会会期が延長されても第三次以降の行動に取り組み、郵政民営化反対闘争を進めていこう、と述べた。
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誰のため、何のための郵政民営化か?
−市民・利用者のための郵政改革、私たちの提案−
郵政労働者ユニオン二〇〇七年プロジェクト会議
( … 前略 … )
■ 国の間接的経営である公社形態を維持し、その経営体制を市民・利用者、従業員代表参加で抜本的にあらため事業運営を行う。
○現在の理事会をそのまま残すとしても総裁が理事を任命するあり方を見直すべきである。実際に理事には市民利用者、従業員代表の参加はなく、郵政官僚や民間企業元経営者などで占められている。これを国会の議を経て選出された理事(市民・利用者代表と従業員代表に一定枠を設ける)を総裁が任命する仕組みへとあらため、名実ともに市民・利用者もまじえた最高決議機関とする。○公社の外部から事業計画と執行、決算について監視を行うオンブズマン制度を確立する。市民・利用者の立場から郵政の運営に対して監視、苦情、陳情、救済する公的な機関を設置する。○地方の支社、郵便局段階でも事業運営と監視に従業員、市民・利用者が参画する「委員会」を設置する。
■ 二四七〇〇の郵便局ネットワークを高齢化社会や地域コミュニティーの再生のための生活拠点と位置づけ活用する。民営(=私営)ではなく、非営利の公営であるからこそNPOや自治体とも提携し、協力関係を広げることができる。その中から新たな公共サービスを創り出す。
○NPOや地方自治体と連携・協力し、高齢者生活支援、介護支援などに活用する。○NPOや地方自治体と協力し、地域のコミュニティーの中核となり情報提供拠点とする。○高齢者や障害者に優しい郵便局舎へ作り替える。(公衆トイレの設置、スロープ、手すりの設置)○市町村合併の進展に対応して郵便局を利用しての地域行政サービスを展開する。○風水震災害に対する地域の防災機能、ライフライン機能を更に充実する。
■ 郵便事業をユニバーサルサービスとして維持し、公共性を高める
○国際物流部門への進出は行わない。郵便事業は、郵便・小包に専念する。○現在の信書便法を見直し、万国郵便条約、EU諸国の独占基準等も参考に郵便の独占を確立する。○第三種、第四種郵便制度を維持し、社会政策・福祉的サービスの現行水準を保ち、さらに、NPOなど非営利市民活動団体差し出し郵便物への低額料金制度を導入する。
■ 郵貯・簡保のユニバーサルサービスを維持し、資金運用方法をあらためる。
○郵貯・簡保は、庶民の貯蓄、決済、生活保障手段として事業展開は特化し、銀行や生保との棲み分け、共存をはかる。○政府保証を維持し、限度額については、庶民の貯蓄、簡易な保険制度の本旨から適正規模を検討する。○郵貯・簡保資金の運用については、現在の国債偏重ともいえる運用を見直していく。○郵貯・簡保資金の地方自治体への環流を拡大するために、中央集権的な大循環構造から地方のお金は地方で運用する少循環システムを確立する。○地域の中小・零細企業へ資金が供給される仕組みを検討する。
■ 特定郵便局長制度を廃止する
○任用制を廃止し、一般の管理職の任用基準を適用する。○私有局舎制を廃止する。○無転勤六五歳定年制など特権を廃止する。○集配特定局は、集配普通局とする。無集配特定局は、受け持ち集配普通局の出張所(出先窓口)とし、管理者はおかない。
■ 郵政ファミリー企業のあり方を改革する。
○郵便輸送部門などは、公社の輸送部門として一体化する。○ポスタル・サービスセンターなど天下り企業は整理していく。○官僚や管理職の関連企業への天下りを全面禁止する。
■ 公共サービスを担う労働者の雇用と権利、労働条件を確立する。○ILO条約など国際労働基準を郵政職場に適用する。○委託契約労働者にも公的契約に関する国際労働基準を適用する。○ゆうメイトなどの非正規雇用労働者にパート労働法を適用する。○役員や職員の構成、賃金実態や労働条件を公開し、透明性ある運営を行う。○公社役員の人数と報酬、職員の最高、最低、平均及び中位置など給与実態などを公開する。
都議選―石原都政に反撃を
福士敬子さん、大久保青志さん、本村久美子さんの当選を!
都議会議員選挙は、六月二四日に告示され、七月三日が投票日だ。石原慎太郎都知事二期目の都議選となる。
石原都政は、防災訓練を利用しての軍事演習、教育現場への日の丸・君が代強制とそれに反対する教職員への不当な処分、「つくる会」教科書の採択、「ババァ発言」に見られる差別的な言動、「三国人」発言など度重なる排外主義的言辞を弄するなど許しがたい行いをつづけてきた。そして小泉とともに靖国神社参拝を継続して行うなど、日本の反動化を促進する一つの渦をつくり、それを拡大してきた。
石原は、先にあげた政策以外には、大衆受けするようなパフォーマンス的政策で人気を取ろうとしてきた。たとえば、「金融機関への外形標準課税」や「自動車の排気ガス規制」などだ。しかし、外形標準課税問題では裁判で都側が敗訴し、その結果として都財政に多大の負担を負わせることになった。
にもかかわらず、石原都政に対する批判は強いものとはいえなかった。都議会野党の反撃は弱く、またマスメディアもそうだった。残念なことに、石原の「高人気」の前に反対の声はなかなか大きなものとならなかったといえる。
しかし石原都政は自ら墓穴を掘って揺らぎはじめた。百条委員会は浜渦武生副知事による不祥事を告発し辞職勧告した。もともと浜渦らは内田茂都議会議長(自民党)らの追い落としをはかり、その策謀が暴露してしまったのだ。背景にはITがらみの利権問題がある。当然にも、石原都知事の責任が問われた。浜渦は石原の側近中の側近で、ほとんど都庁に出勤してこない石原にかわって都政を恣意的に操縦してきたことは以前から有名だったが、さすがに今回はうまくいかなかったということになる。
浜渦と石原の付き合いは長い。浜渦は、関西大学時代に右翼の学生として活動し、その過程で石原と知り合い、参議院議員となった石原の公設秘書となり、自民党タカ派議員グループ「青嵐会」を裏で支え、石原都知事の根回しで副知事に就任した。石原都政の腐敗・陰謀・ファッショ的支配の象徴が浜渦だったのだ。
いま、石原都政は、内部の腐敗・軋轢が暴露され、動揺がはじまっているが、民主党も腐敗構造の中にいるし、自民党以上の右派議員もいる。
都議選は、石原都政に反撃を与えるまたとない機会としてある。いまこそ、石原都政を真正面から批判し、都議会に反改憲派の議員を送り込まなければならない。
杉並の福士敬子さん(自治市民93・現)、世田谷の大久保青志さん(社民党・元)、板橋の本村久美子さん(市民派共同候補・新)の当選をかちとろう!
産経新聞の悲鳴が聞こえる
右派メディアの分岐
小泉の靖国神社参拝に象徴される日本の右傾・軍国主義化に対するアジアからの批判は日増しに強まっている。
小泉政権は、植民地支配と侵略戦争の過去を清算せず、アメリカの世界支配戦略に積極的に加担して、憲法九条の改悪と国連常任理事国入りによる政治・軍事大国化を目指している。
しかし、この動きは、東アジア地域に緊張を増大させるものとなっている。
産経新聞は、最右派のメディアとして、偏狭な民族主義と排外主義を煽って、日本を軍国主義化させる尖兵としての役割を果たしてきた。アジアからの批判に対してもこれを非難し、首相の靖国参拝続行を主張している。
だが、この間のアジアからの対日批判の激化は、一国主義的なメディア操作によって視野を狭められてきた多くの人びとに、世界における日本の位置がどこにあるのかということについての覚醒をもたらす効果をもった。さまざまな論議が起こる中で、靖国神社が軍国主義精神継承・鼓吹の拠点としてあり、そこへの首相の参拝がいかなる意味をもつのかについてもひろく論じられる状況が出てきた。
読売新聞は、産経と同様のスタンスで、政治・社会の反動化を牽引する役割を担っているが、アジアからの批判、日本の孤立という状況に立ち至って、小泉の靖国神社参拝について、産経とは違った主張をはじめた。このことは産経にはよほどショックを与えたようだ。
本紙の読者には産経新聞の購読者は少ないと思われ、目にしていない方もいると思われるので、いくつかの記念すべき文章を引用して紹介しておきたい。
読売に「裏切られた」産経
産経の二〇〇五年六月七日【主張 靖国神社問題 国立追悼施設に反対する】は次のように述べている。「靖国神社に代わる無宗教の国立追悼施設を建設すべきだとする主張が、一部マスコミや政治家の間で再燃している。水鳥の羽音に驚きあわてるかのような騒ぎだが、中国などに迎合した議論といわざるを得ない。……最近、朝日新聞だけでなく、保守主義を基調とする読売新聞までが『国立追悼施設の建立を急げ』とする社説(四日付)を掲げた。<靖国神社が、神道の教義上『分祀』は不可能と言うのであれば、『問題解決』には、やはり、無宗教の国立追悼施設を建立するしかない>とあったが、いささか飛躍した論理ではないか。靖国神社に合祀されているいわゆる『A級戦犯』を分祀すべきだとする意見は、中国などの政治的狙いに沿うものでしかない。靖国神社にまつられている霊を取り除き、別の社に移し替えるという意味の『分祀』は、神道ではあり得ない。そのことを理解しているのであれば、まず外国に理解を得る外交努力を求めるべきだ。中国副首相の突然の帰国を批判した先月二十五日付社説『最低限の国際マナーに反する』で、首相の靖国参拝について『他国の干渉によって決めることではない』とした読売の論調は、どこへ行ってしまったのだろうか。……』 !!
産経の「戦犯」指名
つぎに産経の二〇〇五年六月一〇日付けの、千野恭子・論説委員長による「靖国参拝問題 政治家よ国を危うくするなかれ」。
「日本人は過去を忘れがちな民族であると、ともすれば言われてきた。小泉純一郎首相の靖国参拝をめぐって、いま歴代首相から野党議員に至るまで日本の政治家たちが繰り広げている言動を前にすると、残念ながら当たっていると思えてもくる。……元首相たちは現首相の決断と孤独とに、一体どこまで思いを致したのだろう。……だが世界はいま、日中の緊張・対立にアジア二大国の覇権の帰趨を重ね合わせ、大いなる関心をもって注視しているのだ。政治家たちの言動は、国際政治の力学にあまりに無頓着であると思う。中国艦船の領海侵犯や日本近海での活動活発化、東シナ海の地下資源をめぐる確執をはじめ、日中間には戦略的利害の対立が次第に鮮明になってきた。このような時に小泉首相の筋を通そうとする姿勢を有力政治家がよってたかってつぶそうとする。何という光景だろう。……」。この文章で中国の圧力に屈したと千野氏に名をあげられているのは次の政治家(登場順)だ。まさに産経による「A級戦犯」指名のようだ。河野洋平衆議院議長、宮沢喜一、村山富一、橋本龍太郎、中曽根康弘らの元首相、岡田克也・民主党代表、古賀誠・元幹事長(日本遺族会会長)、中川秀直国対委員長、野田毅元自治相、神崎武法・公明党代表、冬柴鉄三・同幹事長……。
そして千野氏は続ける。「来日した米国のアーミテージ前国務副長官は民放の番組で『他国から参拝するなと指図されるようなことがあれば逆に参拝すべきだ』と答えたという。至言である。」
ここでは、日本の過去の責任を問う「外国」からの批判を毅然として拒否する千野氏は、アーミテージの発言に対しては一転して「至言」だとすりよる。まぁ、これが産経らしさではあるのだが。
ナベツネも参拝反対
ついでに、読売のナベツネの文章も引用しておく。月刊『文藝春秋』〇五年七月号は「大論争アンケート 小泉総理『靖国参拝』是か非か」を特集し八一名が応じている。そのなかに、渡辺恒雄(読売新聞グループ本社会長・主筆)が「取りやめるべき」として、次のように書いている。
「靖国『神社』に昇殿し、記帳し、宮司のおはらいを受ける『公式参拝』は、すぐれて政治的行為だ。小泉首相が純粋に宗教的、精神的な行為だというなら、深夜か早朝に人知れず参拝すればよい。A級戦犯の七人は、戦死ではなく、刑死である。私は、東京裁判の判快が絶対的的正義だとは思わぬが、太平洋戦争の何百万という内外の犠牲者を出した責任、あの凶暴な陸軍の行動基準を推進した責任(陸軍二等兵だった私は、今でも許せないと思っている)、憲兵、特高警察による暴力的思想統制の立案、実行責任等については、日本国民自身による歴史検証を経たうえで罪刑の普遍的妥当性を判断すべきだ(このあと、『申国の反日暴動』にたいして日本政府は厳しく抗議し、損害賠償を求め、国の威信を保て、とつづく)。
靖国問題をめぐって、右派メディアにも分岐が生まれた。読売などは、これまでの路線を改めたわけではないが、小泉の余りにも稚拙な対アジア外交が「国益」に反する事態を招来させたことに危機感を昂じさせている財界主流などの意向を受けての論調の「修正」がおこなわれたようだが、一方の産経はより激しく排外主義を煽り、そのことによって利益をあげようとする方向を突き進んでいる。
世論の変化
靖国参拝をめぐる最近の世論調査を見ておこう。毎日新聞の六月一八、一九両日の全国世論調査(電話)によると、首相が今後も靖国神社参拝を続けることについては、「反対」五〇%、「賛成」四一%となっている。昨年一二月の調査では、参拝を「続けるべきだ」四六%、「やめるべきだ」四一%だった。今年四月調査では「続けるべきだ」四二%、「やめるべきだ」四五%だった。
着実に反対意見が増えてきている。アジアからの批判に真剣に対応しようとする傾向が明らかになってきている。
小泉は、参拝を世論が支持していると強弁して参拝を継続してきたが、これで、内外から強まる参拝見直しの声に応えなければならなくなった。
ますます孤立する小泉政権をいっそうおいつめ打倒しよう。(MD)
複眼単眼
女性専用車両の導入で考えたこと
しばらく前のことだが、所要で大阪に行った時にうかつにも女性専用車両に乗ってしまった経験がある。何気なく乗って次の駅で降りた。降りる時にホームに大きく「女性専用車両」と書いてあるのを見て仰天した。知らないままに乗って、特段注意もされなかったので、全く気づかなかったのだ。顔から火が出るような思いがした。
さて、この度、東京でも一部の電車に女性専用車が導入された。これにはさまざまな意見があるだろうけれど、筆者もどうにも腑に落ちないことがある。
確かに電車に乗るときの女性たちの被害はよく理解できる。痴漢の被害は本当にいやなものだろう。これは放っておいていいものではない。何とかしなければならないことだ。一時期、駅などで「痴漢は犯罪です」というポスターをよく見かけた。結構、人目をひいた広告だったと思うが、あまり効果がなかったのか、最近では見かけない。まったく、痴漢は犯罪である。しかし、女性専用車両を作り、女性たちを列車の先頭車両(または最後部車両)に集めることがいいのだろうか。もちろん、一部の男性が女性専用車両導入を「男をすべて痴漢扱いにするもので、逆差別だ」などとして抗議の運動を起こしていることなどはお門違いであり、ことを何も理解していない困った人々で、問題外のことだ。
確かに専用車はそれに乗った女性は被害を防御できるに違いない。実際に被害にさらされ、耐えがたい状態に置かれている女性たちにとって、それは緊急避難という意義もあるだろう。しかし、何らかの理由で専用車に乗れなかった女性たちだってたくさんいるはずだ。その女性たちはいままでどおり危険にさらされる。その場合、専用車に乗らなかったほうが悪い、不注意だなどということは言えないことだ。
こうして考えてくると、なぜ被害に遭う危険のある女性たち、被害者が隔離されなくてはならないのか、それで問題は解決するのかという疑問がでてくる。問題は女性たちにあるのではなく、痴漢をする男性たちと、それを見逃している男性社会にあるのだ。ここを変えていかないことには問題の解決にならない。「痴漢」を隔離(痴漢の危険性のある男性専用列車?)できればよいのかも知れないが、その方法は思いつかない。鉄道会社も、そして社会も、女性専用車両を作ったことでことたれりとしてはいけない。セクシャル・ハラスメントの問題は社会の様々な領域で後を絶たず、問題は続発している。道は遠くても、この社会の男性たちが、人権についてしっかりと理解し、社会のなかでそれが尊重される状態を作り出すことこそ問題の根本的な解決の道だ。
それにしても痴漢に反対し、見逃さないための「リボン運動」的なものは誰かがやっているだろうか。これだって、問題解決への第一歩になると思うのだが。
人権が尊重される社会を作ることは私たち全体の共通の目標でなければならない。その実現のためには粘り強い持続的な努力が必要だ。日本国憲法の三原則である非武装平和主義、主権在民、基本的人権の尊重は相互に関連し、ひとつだけでは成り立ちがたいものだ。人権が十分に尊重される社会を作ること、これが社会全体の目標として、あらためて鮮明にされる必要があろう。
痴漢の被害をなくしていくことは、第一に加害者自体の問題ではあるが、周辺の、社会の問題でもあり、それを生み出す社会の問題である。痴漢の現場を見て見逃してしまうことのないように、またそれを制する行動の危険性を周辺全体の協力で極力小さくするような努力が必要だろう。痴漢をなくすという課題は、そうした女性差別が容認されているこの社会のありかたそのものに迫らざるをえないだろう。(T)