人民新報 ・ 第1173号<統合266(2005年7月15日)
  
                  目次

● 郵政民営化法案を参院で必ず否決しよう!

● 2005 ピースサイクル発進
 
      沖縄戦後60年、普天間基地撤去・辺野古新基地阻止・戦争への道を許さない!

● 辺野古沖新基地建設の白紙撤回を

● 糾されるべきは民営化・JR体質  院内で「ノーモア尼崎事故シンポ」

● 共謀罪新設法案の廃案を求める市民団体共同声明への賛同を

● 九条の会・有明1万人講演会を成功させよう!  予約はすでに8000人を突破

● 親米反中で連合  ネオコンと産経・古森

● KODAMA  /  保守二大政党制に対抗できる政治勢力を

● 複眼単眼  /  自民党改憲要綱の危険性を暴露し、広める作業の緊急性




郵政民営化法案を参院で必ず否決しよう!

参院段階での闘い開始

 郵政民営化阻止の闘いは参院の場に移った。衆院ではたった五票差でかろうじて可決したとはいえ、小泉政権はすでに「半壊」状況に陥っている。郵政問題だけではない。靖国問題、対アジア外交の破綻、国連常任理事国入り政策の行き詰まり、とくにイラク戦争の状況と自衛隊への攻撃など小泉は内憂外患に直面し窮地に立たされている。
 七月一一日、参院本会議は、郵政民営化関連法案を審議する特別委員会設置を自民、公明両党の賛成多数で議決し、趣旨説明と質疑を行って審議入りしたが、野党と自民党内の反対派は廃案にむけて闘う姿勢を強めている。
 地方の自民党支持層から衆院で民営化法案に反対せず賛成票を投じたり棄権をした自民党議員への批判が強まっている。
 「高知新聞」(七月一〇日)もその状況を伝えている。「(高知)県町村会と県町村議会議長会は九日、高知市内で県関係国会議員との意見交換会を開いた。三五町村から六二人が出席。過疎地の郵便局切り捨てに危機感を募らせる町村長らから、郵政民営化への不満や怒りが一気に噴き出した。矛先は衆院で関連法案に賛成票を投じた中谷元、山本有二の両氏と、棄権した福井照氏の自民勢に向けられ、集中砲火さながら。三位一体改革による地方交付税削減で、予算編成もままならない地方の実態に、「今度は郵便局まで奪うのか」との思いが充満した。……
 こうした状況は各地で続発している。自民党の野中広務元幹事長は、一〇日、九州での郵政民営化関連法案反対集会で「地域の信頼される核として郵便局、特定郵便局制度を死守していかねばならない。参院では良識が発揮されると思う」「苦しいときに耐えるのが政治家。衆院で法案に反対票を投じたのは勇気ある行動だ」「郵政公社の職員はみなし公務員ではなく国家公務員。突然の法改正によって民間人になるとすれば憲法違反となるのは明らかだ」と述べた(共同通信)。
 参院では衆院でより与野党の差は格段に小さい。与党の一八名が反対に回れば法案は否決される。すでに自民党参議院議員の一六名は民営化反対派の会合に顔を出したりしている。
 衆院段階での闘いを上回る闘いを組織し、廃案に追い込む可能性はきわめて高い。九条改憲阻止、イラクからの自衛隊撤退、辺野古新基地阻止、普天間基地撤去、米軍再編による基地機能強化反対などの課題と結合し、郵政民営化法案を廃案へ、そして小泉内閣打倒に向けて闘おう。

郵政民営化阻止総行動

 郵政労働者ユニオンと郵政民営化監視市民ネットなどで構成する郵政民営化阻止闘争本部は、全労協、東京全労協などの労働組合、市民団体と共に、七月四日から七日まで国会前座り込み・ミニ集会、ビラまき情宣活動、議員への要請行動、など第三次国会闘争を闘いぬいた。五日には衆院本会議での郵政民営化法案採決に抗議して、国会へ向けて抗議のシュプレヒコールをたたきつけた。

 七月七日には、「弱肉強食の小泉内閣『構造改革』を許すな! 郵政民営化阻止7・7総行動」が闘われた。
 午後六時半から社会文化会館で決起集会がひらかれた。
 主催者を代表して、郵政労働者ユニオンの内田正委員長が挨拶。
 本日は緊急集会であるにもかかわらず多数の参加をいただき、また、この間の国会行動をはじめとする郵政民営化阻止闘争への多くの方の参加に対してお礼を言いたい。七月五日に衆議院で郵政民営化関連六法案は可決されたが、たった五票差だった。こうなったことには、郵政民営化が国民の財産を奪い、公共サービスの破壊以外のなにものでもないということが広範な人びとにわかってきたことがある。参議院では与党の一八人が反対に回れば否決となる。いま、小泉内閣が本丸と位置付ける郵政民営化法案を廃案にできる状況がでてきている。郵政民営化をつぶして小泉を退陣に追い込んでいこう。参院での闘いは、決して予断を許さないが、廃案にするのは不可能ではない。私たち郵政労働者ユニオンは全力をあげて阻止する闘いを行う。
 つづいて全労協から藤崎良三議長が挨拶。
 小泉構造改革との闘いは、二一世紀の日本政治がどうなるかを決するものだ。郵政民営化阻止のために、郵政労働者ユニオンのみなさんは、雨の中でも闘いぬいた。心から敬意を表したい。衆院では僅差での可決だったが、財界は新自由主義を遂行するために法案の成立に全力をあげてきている。参院での闘いを強めていこう。
 国会報告は福島瑞穂社民党党首(参議院議員)。
 参院では必ず絶対に廃案にする。これから一ヶ月あまりが本当に大事なときだ。五票差になったということは小泉に求心力がなくなってきたあらわれだ。自民党政治のおわりのはじまりで、小泉政権はすでに末期症状を呈している。ここまできたのは、郵政民営化阻止の闘い、皆さんの国会前座り込みをはじめさまざまな運動が全国的に展開され、それらが与党内の反対派を力付け、小泉内閣を追い込んできたからだ。参院では与党から一八名が反対すれば法案は否決だ。郵政民営化は外国でも成功していない。民営から撤退している。今回の郵政民営化の狙いは、国民の財産三五〇兆円を誰が手にするかだが、郵政民営化準備室はアメリカ政府などとすでに一七回も面談している。国民との間にはほとんど説明責任も果たしていないのにだ。そして、アメリカ側から言われたことは全部法案に入っている。八月一三日が今国会の会期末だ。最後の最後までがんばっていこう。
 つづいて連帯決意表明。
国労東京地本中央支部の大谷一敏委員長
 国鉄は民営化の典型といわれてきたが、その結果が、四月に起こったJR西の尼崎大事故だ。しかも、国鉄時代の長期債務は解決されるどころか、逆に増えている。北海道、九州、四国は赤字続きで完全民営化できない。しかし、土地をはじめ国鉄財産など利権の分ん捕りなどでは「大成功」だ。郵政でも郵貯・簡保の資金が狙われている。郵政民営化では支配層の中に分岐が生まれている。国鉄の二の舞になって欲しくない。郵政民営化阻止にむけてともに闘っていこう。
電通労組の大内忠雄委員長
 電電公社が民営化されNTTとなってものすごい儲けが出ている。しかし、労働者にたいする締め付けとともに、公共サービスが切り捨てられている。病院や老人ホームから公衆電話が撤去されている。民営化は、公共財産の私有化、私物化だ。労働者の生活、公共サービス、そして社会を破壊するものだ。この七〜八月、郵政民営化阻止、国鉄・鉄建公団訴訟勝利、小泉内閣打倒に向けてともに闘おう。
東京清掃労組の押田五郎組織部長
 いま、自治体労働者は全国でいじめにあっている。小泉の進める構造改革はすべての国民に犠牲を強いるものだが、その国民の不満のガス抜きのターゲットとして公務員労働者が設定されている。とくに現業労働者は民間委託でいじめぬかれている。清掃も、二〇〇〇年四月に都清掃局から二三区に移管された。国鉄の分割・民営化は分割し小さくして、闘う労組をつぶす意図があった。その分割・民営化の帰結が尼崎大惨事だ。民営化阻止のためにともに闘おう。
 民間からは全国一般東京労組の宇賀神幸男さんが発言した。
 民営化は、JR、NTTを見てもわかるように、労働者の生活破壊とサービス低下だ。東京労組にも公共サービスの職場で、背面監視などの扱いをうけて闘っている少数派組合があるが、最近、都労委で勝利命令をかちとった。国鉄闘争では九月の鉄建公団裁判の勝利判決をかちとるために全力をあげている。民営化阻止のために郵政の仲間とともに闘っていきたい。
 市民団体からは、郵政民営化を監視する市民ネットの秋本陽子さん、許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さんが発言した。 
 集会は、「郵政民営化関連六法案を否決し、小泉政権を退陣に追込む決議」(別掲)を全員の拍手で確認し、団結がんばろうで、国会へむけて、デモ・請願に出発した。
 参議院議員面会所では、社民党の福島瑞穂党首(参議院議員)、渕上貞雄副党首(参議院議員)がデモ参加者を出迎えた。

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郵政民営化関連6法案を否決し、小泉政権を退陣に追込む決議


 七月五日、衆院本会議で郵政民営化関連六法案が一部修正のうえ、僅か五票差で可決された。まず、大方の予想に反する僅差とはいえこの可決に、満腔の怒りを表明する。
 今採択における自民党執行部の恫喝を跳ね除けた自民党反対派の健闘は、地方自治体の九割以上が反対ないし憤重審議の意見書等を採択し、直近の世論調査でも賛成は三〇%台にとどまっている状況を反映したものだろう。
 そもそも小泉政権が掲げる「構造改革」とは、社会保障制度、セーフティーネットを破壊し、地域社会に不司欠な公共サービスなどを弱肉強食の市揚原理にさらし、その過酷な競争こそ活力源とする政策であり、利するのは禿鷹ファンドをはじめとするアメリカ資本であり民間大企業など「強者」である。JR西日本の例を引くまでもなく、バッコするのは企業モラルが見る影もなく破壊される風土である。
 小泉政権が構造改革の本丸として掲げる郵政事業の民営化の攻防は、この国のあり方を問う<決戦場>でもある。決戦場は参議院へと移る。参議院での採決は、与党一八名の反対で否決が可能で、参議院での否決は十分可能である。
 私たちは、公共サービスの「商品化」に断固反対する。社会民主党をはじめとする野党、自民党の良識ある議員諸氏と連帯し、総力を挙げて、郵政関連六法案を葬り去ろう。
 小泉内閣を退陣に追い込み、新自由主義の流れを断ち、改憲・戦争のできる国への変貌を阻止しよう。

   以上、決議する。

二〇〇五年七月七日


2005 ピースサイクル発進
 
  沖縄戦後60年、普天間基地撤去・辺野古新基地阻止・戦争への道を許さない!


一九九〇年から始まったオキナワ・ピースサイクルは戦後六〇年の今年、一六年目を迎えた。今年のオキナワ・ピースサイクルは六月二二日から二八日までの行程で取り組まれ、全国から(東京、多摩、滋賀、大阪、広島)一二名プラス子ども一名が参加した。

六月二十二日(水)
 午前中、事務局のみの参加となったが、那覇防衛施設局への要請行動に参加した。主催は辺野古新基地建設を許さない市民共同行動。特に今年六月九日、辺野古沖で起きた米軍の水陸両用車の沈没による珊瑚礁の破壊と油汚染について、米軍は中和剤をまく程度でオイルフェンスの設置など何も対処しておらず、野ざらし状態が続いている。現在も燃料油が海上にたれ流されている。私たちは那覇防衛施設局に対し、現地の写真を見せて何とかするよう抗議した。防衛施設局は海上やぐらで座り込みしている私たちには強硬な態度で夜間作業も行ってくるのに、米軍には何も言えないという姿勢が浮き彫りになった。私たちは要請行動を終え、全国から参加する仲間と合流し、対馬丸記念館、第三二軍司令部壕、南風原文化センターを見学した。そして、夕方から宿泊先の糸満市で結団式を行った。記念講演では、建築家であり、「一坪反戦地主」の名付け親でもある真喜志好一さんに来ていただきお話しを伺った。米軍が一九六〇年代から辺野古沖を代替候補地としていたことを突き止めたこと、普天間基地は往宅地にあり世界で最も危険な基地であるが、老朽化もかなり進んでおり移設することで最新鋭の基地を手に入れたがっていること、米国で起こしたジュゴン訴訟などにについて話していただいた。終了後、今回参加するメンバーの自己紹介を中心に結団式を行い、明日から始まる実走の健闘を誓いあった。

六月二三日(木)
 沖縄では慰霊の日として各地で戦没者に祈りを捧げる。糸満市摩文仁の平和祈念公園では県主催で沖縄戦全戦没者追悼式が行われ、二年連続で小泉首相が参加した。沖縄戦から六〇年、現在も米軍基地を押しつけているにもかかわらず、どの面(つら)下げて参加しているのか。摩文仁を第二の靖国にしようとするつもりなのか、私たちは、轟の壕やひめゆり資料館などを見学した後、魂魄の塔で行われた六・二三国際反戦沖縄集会(今回で二二回目)に参加。若者の参加も多く、グァム、フィリピンや韓国などから反基地闘争報告があり、歌や踊りなどの国際色豊かな集会となった。

六月二四日(木)
 夜中からの激しい雷雨が実走時に小降りになった。私たちは沖縄戦初期に日米両軍の激戦場となった地、嘉敷高地を訪れた。普天間基地を一望し、改めて「住宅地の中の基地」を実感。頂上には、激戦の跡を残しているトーチカの残骸やそれに連結していた洞窟が残っている。説明を受けながら「京都の塔」「青丘之塔」を巡った。その後、昨年八月一三日に米海兵隊所属大型ヘリが墜落した沖縄国際大学を見学した。私たちが行った時は、撤去作業が行われていたが黒焦げした壁は残っていた。続いて宜野湾市に立ち寄り伊波洋一市長を表敬訪問。事故直後、日本の消防隊がいつ爆発するか分からない中、命がけで消火活動し、鎮火したら米軍は周辺道路を封鎖し宜野湾市長さえも立ち入りを拒否したこと、墜落の衝撃でヘリコプターの一部が周辺民家に飛び散り、民間人に死傷者がいない方が奇跡だと言われていた。今後も日本政府をはじめ米国国防省に対して普天間基地の無条件即時撤去を訴えていくと決意を述べた。今回も議会中にもかかわらず会っていただいた。その後、沖縄市の東海岸、中城湾に面する泡瀬干潟を見学。東部海浜開発計画のため、埋め立てられようとしている。多くの生物が今なお生き続けている自然豊かな干潟を埋め立ててよいのか。日本の公共事業はまず埋め立てありきでの環境アセスメントが行われる実態に怒りを感じる。続いて「道の駅かでな」を見学し、読谷村へ。この日の宿泊先である民宿『何我舎』で知花昌一さんを囲んでバーベキュー、泡盛もおいしく歌や三線の演奏などで大いに盛り上がった。

六月二五日(土)
 知花さんの説明でチビチリガマヘ。既に修学旅行生が見学していた、その後、金武町伊芸に立ち寄る予定だったが、受け入れ側で混乱を避けるために今回は見送ってほしいとのことだった。米軍キャンプ・ハンセンの都市型戦闘訓練施設で二七日にも実弾演習を行うことを米軍が日本政府に通達したことで緊迫した状況にあった。金武町民あげての抗議集会が連日行われている。民家から三〇〇メートルしか離れておらず、過去にも実弾があたったり多くの事件が起きている。寄れず残念だったが、戦闘訓練反対の街宣を行いながら名護市辺野古へと向かった。辺野古では米軍普天間飛行場代替施設建設に伴うボーリング調査(基地建設着工)に反対する座り込みが昨年の四月一九日より行われている。環境と生活、平和を破壊するボーリング調査を阻止するための闘いが展開されている。おじぃとおばぁが国からあらゆる差別・弾圧を受けながらもそれに耐え、基地建設を止めるために一九九六年のSACO合意から既に八年以上も闘い続けている。那覇防衛施設局との攻防の中、この「美ら海」に一本の杭も打たせない闘いが続き、緊張した状況が続いている。一時は夜間も含め二四時間体制で海上やぐらへの座り込みが行われた。現在、那覇防衛施設局は夜間作業は行っていないが、二つの業者を午前・午後と分けて作業時間を長くし、座り込んでいる人たちの消耗をねらった嫌がらせが続いている。私たちも座り込みに参加し、基地建設反対のために座り込みを続けている人たちに連帯し、この思いを全国に発信することを約束した。この日で自転車走行は終了し、翌二六日も現地闘争に参加した。

六月二七日(月)
 一昨年、反戦・反基地・平和の発信地として無人島の平島にポストが設置されたが、相次ぐ台風によって損壊したため、今回新たにじゅごんの形をしたポストを作成し取り付けた。座り込んでいる人たちにボストを披露し、平和の発信地として多くの人にピースメッセージを投函してくれるようお願いした。また、国会で郵政民営化法案が上程され郵便局が民営化された場合、利益のあがらない郵便局やポストが統廃合され撤去されることが予想されるので、あえてポストを設置するのだということを訴えた。そして長野ピースサイクルから託されたピースメッセージを読みあげ投函第一号とした。みんなに見送られ船にポストを積み込み、各やぐらを廻り設置する趣旨を訴えた。平島では太陽が照りつけ、設置するのに大変だったが、無事にじゅごんの形をし「保護区にしよう」「じゅごんの里一番地」と書かれたポストを設置した。平島を後にし、沈没した水陸両用車を見た。潮が引くとアンテナが見える。かなり大きい車両で確かに燃料油が漏れている。もう使えないからとといって、海に放置してよいのか。米軍の身勝手な対応に怒りを覚える。翌二八日、那覇防衛施設局に申し入れを行った。辺野古で感じた思いをぶつけた。そして、沖縄県庁を訪問。県知事宛に送られた長崎からのピースメッセージを届け、05オキナワ・ピースサイクルを終えた。
 今回参加して、金武町での都市型訓練と辺野古の状況がとても気になった。ぜひ沖縄に行く機会のある方は、一日でも何時間でも辺野古の座り込みに参加していただきたい。辺野占での非暴力の闘いにおいて、暴力の最たるものである戦争を行う基地を作らせないためにも…。(二〇〇五オキナワピースサイクル参加者)


辺野古沖新基地建設の白紙撤回を
 
 辺野古沖新基地建設のためのボーリング調査は阻止され続けている。時折、辺野古断念の観測気球も上げられたりするが、現地の状況は依然として緊迫したままだ。米軍再編(トランスフォーメーション)の日米協議の中間報告は当初七月にも公表されるといわれていたが、九月に延びた。防衛庁首脳は、七月八日、中間報告では普天間飛行場の移設先や移設に要する期間などを明記する方針を明らかにし、移設先については明言を避けたが、名護市辺野古沖は「断念していない」とも言う、外務当局は移設先を公表する時期は決まっていないとしている。

 沖縄ではまたも基地犯罪がおこった。七月三日、米空軍嘉手納基地所属の二等軍曹アルマンド・バルデス容疑者が小学五年の女児に上着を上げさせ胸に触ったとして、沖縄県警沖縄署は強制わいせつの疑いで逮捕した。同容疑者の携帯電話には女児の写真が残っており、調べに対し「服をまくり上げさせたが、触ってはいない」と供述しているという。携帯電話には女児二人のほか、別の少女数人の写真も記録されていた。アメリカ兵による少女への強制わいせつ事件で市民団体が嘉手納基地の前で緊急の集会を開らき抗議し、また県内の子供会の代表が嘉手納基地を訪れ事件に抗議した。

 七月一一日、辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会による恒例の毎週月曜日抗議集会が闘われた。辺野古からの電話メッセージでは平和市民連絡会の当山栄さんから、現地の闘いが報告された。シュプレヒコール、参加団体からの発言に続いて、小泉純一郎首相、大野功統防衛庁長官、山中昭栄防衛施設庁長官への抗議と申し入れが行われた。今回は、アジア共同行動と名護ヘリポート基地に反対する会。

* * * *

 「名護ヘリポート基地に反対する会の「米兵によるわいせつ事件に抗議し、辺野古の基地建設の白紙撤回を求める要請書」

 「またか」。そんな言葉が沖縄中を駆け巡ったはずです。
 今、その声は全国に広がっています。「許せない」。このニュースを聞いた講もが拳を握りしめたのではないでしょうか。心に煮えたぎる怒りは沸点に達しようとしています。
 ……(中略)……
 ロバート・ブラックマン四軍調整官は、口先ばかりで「遺憾の意」を伝えただけ。具体的防止策は全く示さなかったそうです。夏休みを前に、子どもが安心して外を出歩けない状況になっています。いつ米兵に襲われるかわからないからです。
 沖縄が強いられている、あまりにも過重な軍事的負担。人間性を見失わせる過酷な軍事訓練が、住民のすぐ真横で繰り広げられてしまうという極めて異常な状況が、必然的に事件を引き起こしているのではないでしょうか。だとすれば、住民が安心して暮らす…その当たり前のことを実現するために、全ての基地を撤去し、全ての米兵が沖縄を離れなければならないのではないでしょうか。そして何よりも、度重なる米軍被害は、それを放置し、過剰な米軍基地を存続させている日本政府にこそ、重大な責任があると考えます。
 私たちは、次のことを強く求めずにはいられません。
 一、被害者とその家族、沖縄の住民に対し、日本政府として誠意をもって謝罪すること
一、犯罪をおかした米兵の厳正なる処罰を求めること
 一、全ての米軍基地の撤去に向けた話し合いを、米政府と直ちに始めること
一、 辺野古におけるボーリング調査を中止し、基地建設計画を白紙撤回すること


糾されるべきは民営化・JR体質

     院内で「ノーモア尼崎事故シンポ」


 七月六日、衆議院議員会館会議室で国鉄民営化問題研究会の主催による「『ノーモア尼崎事故』 政治を問う院内緊急シンポジウム」が開かれた。

 はじめに、同研究会の呼びかけ人の一人である常松祐志元衆議院議員が、JR西・尼崎事故ではいろいろなことがいわれているが、JR方式そのものこそが問われなければならない、今後も研究会をつづけていきたい、と述べた。

日本の総点検・総改修を

 基調の報告は、おなじく研究会呼びかけ人の立山学さん。
 民営化を推進した加藤寛は「日経新聞」の「私の履歴書」(五月二〇日)で「尼崎事故に国鉄末期の弊」として「『安全より利益追求を優先するようになった。事故の遠因は民営化にある』と論じる人がいる。見当違いも甚だしい。競合する阪急や阪神が同じように利益のため安全を犠牲にしているというのか。JR西の問題点は職場に一体感がない国鉄末期の弊が消えぬ企業風土にある」といっている。
 尼崎事故で娘さんを亡くした奥村恒夫さんという技術者の方が新聞への投書で次のように書いている(「毎日」五月二六日)。「JR西日本は運転手の過失で処理しようとするでしょうが、正直言って殺人事件としか思えません。JRという会社の構造が生んだ殺人行為です。…国は、これを機会に日本を総点検すべきです。…今、手を着けなければ、同じような事故が必ず起こります。ぜひ今すぐ日本の大改修に着手してください。…悲劇は繰り返されます」。まったく、その通りだ。
 JRだけではない。日本航空、三菱自動車、食品などなど、みんな儲け優先のために事故が続出しているのだ。問題は鉄道だけではない。日本の構造そのものが劣化してきているのであり、奥村さんが言うように「総点検」が必要で、そうしなければまた大惨事が起こってしまうだろう。鉄道についてみれば、諸外国ではすでに民営化の見直しが進められている。たとえばイギリスだ。イギリスでは一九九四年に鉄道が民営化された。その後、サイスウォール列車衝突事故(死者七名)、ラドグローブ列車衝突事故(死者三二名)、ハットフィールド列車脱線事故(死者四名)などがおこり、民営化見直し・再国有化の動きがある。民間会社レールトラックが倒産し、非営利のネットワークレールが設立され国有化された。また、こうした方向を英運輸省白書「鉄道の将来」が打ち出しているし、これまで外注だった保線の内部化が行われた。日本では一九八七年に国鉄が分割・民営化され、東京東中野事故(死者二名)、信楽高原鉄道事故(死者四二名)があり、新幹線のトンネルコンクリート崩落事故や首都圏での連続事故がおこり、そしてついに尼崎事故がおこってしまった。JR西は経営方針の一部手直しを行っている。それは、過密ダイヤや「日勤教育」の見直し、ATS―Pの全面導入、地震対策強化などだ。しかし、問題はJR体質そのものだ。私たちの今後の課題は、「ノーモア尼崎」の国民運動を起こしていくことだ。事故は、民営化事故であり、政府の責任が追及されなければならない。民営化政策を転換することを基本に事故再発防止対策が取られなければならない。そして、職場の安全のためにも労務政策の根本的転換が必要だ。解雇された一〇四七名の問題の解決、安全を優先させたために不当な解雇を受けたものの処分の取消だ。首都圏の通勤・通学の安全総点検、そして、「安全な鉄道」「安全な日本」の再生を要求していこう。これは改憲阻止の課題と表裏一体だ。いま、鉄道も郵政も教育も民営化がだめにしていることが明らかになってきた。だが小泉には危機のキの字もない。これは大変なことだ。

尼崎事故を風化させない

 集会には、民主党の金田誠一衆議院議員、共産党の穀田恵二衆議院議員、社民党の渕上貞雄参議院議員、土井たか子参議院議員が参加して発言した。それそれの議員は、尼崎事故を決して風化させず、国会内外の闘いを結んで、民営化とJR体質を追及し続けていこうと述べた。
 下山房雄・元下関市立大学学長が鉄道職場の調査報告を、国労近畿地本の葭岡庄吾書記長、国労東京闘争団の佐久間忠夫さんが現場からの報告を行った。


共謀罪新設法案の廃案を求める市民団体共同声明への賛同を

 日本消費者連盟、盗聴法に反対する市民連絡会などこの間の共謀法反対運動を担ってきた団体がよびかけて「共謀罪新設法案の廃案を求める市民団体共同声明」の賛同団体を募っている。「賛同のお願い」によると、共同声明運動は、国会で共謀罪の廃案か成立が決まるまで継続し、七月二六日に国会内で院内集会・記者会見を行い、市民団体共同声明を呼びかけ団体・賛同団体一覧とともに広く公表する。八月一一日には、「共謀罪新設法案の廃案を求める市民の集い」(渋谷区勤労福祉会館)が開かれ、そこで多くの賛同団体から発言を受ける。
 共謀法反対運動が大きく広がり、力をあわせて危険な共謀法案をつぶすために、多くの市民団体の共同宣言への賛同が期待される(編集部)


 私たちは、以下の理由から、現在国会で審議されている共謀罪の新設に反対し、この法案を廃案にすることを強く求めます。
 共謀罪は話し合うことが罪に問われるという、内心の自由、言論・表現の自由を侵害する違憲の法案です。
 新設されようとしている共謀罪は、法律で四年以上の刑が科せられる犯罪行為について話し合い、「合意」しただけで、実際に犯罪に着手しなくとも、二年から五年以下の刑を科すことができるというものです。
 日本の法律で四年以上の刑が科せられる犯罪は、約五六〇種類にものぼります。その対象範囲は、殺人罪から傷害罪、万引きをふくむ窃盗罪、消費税法から相続税法、道交法から水道法、著作権法、公職選挙法まで実に広範です。市民生活のすみずみにまでかかわる法律が共謀罪の対象になっています。これでは、うっかり冗談もいえなくなってしまいます。

共謀罪の新設は個人の犯罪の実行を処罰する刑法の原則を踏みにじるものです。
 人は、日常生活の中で法律に触れる行為を考えたり話しあったりすることがよくあるものです。しかし、話しあい、確認することと、実際に行動することは全く別のことです。
 日本の刑法は犯罪が実際に行われ、被害が生じたときにその犯罪行為を処罰することを原則としています。ごく例外的に予備、陰謀を処罰していますが、予備(準備)では、内乱罪、外患罪、放火罪、殺人罪、強盗罪などの重大な犯罪に限られています。予備より更に前の段階である陰謀罪(共謀罪)の対象は内乱罪、外患罪などにしぼられています。実際に二〇〇三年の犯罪統計を見ても、陰謀(共謀)は〇件です。共謀罪の新設が認められたら、日本の刑法体系は根本からくつがえされることになります。

共謀罪は市民団体をはじめとする全ての団体の取締法です。
 政府・法務省は、共謀罪は組織的犯罪行為を対象とするもので、市民団体や労働団体を対象とするものではないといっていますが、これは言い訳に他なりません。共謀罪の対象とする団体は、「共同の目的を有する多人数の継続的結合体であって、その目的又は意志を実現する行為の全部又は一部が組織(指揮系統に基づき、あらかじめ定められた任務の分担にしたがって構成員が一体として行動する結合体)により反復して行われるもの」であるとされています。この団体の定義から明らかなように、共謀罪は全ての市民団体、労働団体などを対象としています。しかも、密告者の刑を減免するとしています。密告を奨励し、スパイを潜入させる、おとりを使うなどして狙った団体を潰すことは容易です。
 新設される共謀罪は、対象団体の無限定性、対象犯罪の多さ、実行行為以前の言論などを対象とし、対象を無限定に拡げてえん罪をつくった治安維持法を上回る悪法です。

共謀罪は、監視社会への道を押し進めます。
 共謀罪の対象は、話し合うことの内容です。その内容が長期四年以上の刑に当たれば処罰されます。犯罪が生じていないのに共謀を立証するためには、室内盗聴をはじめ盗聴法の適用が拡大されることは必至です。既に盗聴法の適用範囲の拡大が検討されています。
 共謀罪の設置に伴って、警察官の耳と眼が市民生活の隅々までいきとどく監視社会への道が進行し、市民相互の信頼が失われます。人は自由に考え、議論することもできなくなってしまうのではないかと私たちは危惧しています。共謀罪の新設は自由と人権と民主主義の死への道です。

 私たちは、話し合うことを処罰する共謀罪の制定に絶対反対であり、同罪の廃案を強く求めます。

【呼びかけ団体】
 共謀罪に反対する市民の集い実行委員会、盗聴法に反対する市民連絡会、盗聴法(組織的犯罪対策立法)に反対する神奈川市民の会、日本キリスト教団神奈川教区国家秘密法反対特別委員会、日本消費者連盟、ネットワーク反監視プロジェクト
【集約先及び事務局】
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九条の会・有明1万人講演会を成功させよう!

          
予約はすでに8000人を突破

 自民党は七月七日、九条を焦点に「新憲法起草委員会・要綱第一次案」を発表した。「自衛のために自衛軍を保持する。自衛軍は、国際の平和と安定に寄与することができる」としている。いよいよ九条をめぐる憲法決戦状況に入った。
 こうした中で、九条の会・有明講演会への期待はますます大きなものになってきている。有明講演会の定員は一万人だが、九条の会ニュース第45号(7・8)によると「参加申込八〇〇〇人を突破」とあり、講演会を約一ヶ月前にして、残りの予約席が二〇〇〇を切ったことが報じられている。
 前号に続いて、ニュースに掲載されているいくつかの声を紹介したい。
 「この会を朝日新聞により知りました。友人もさっそく申込みをして参加券を手にしたとのことです。私は、この国の進路に国民の幸福や哲学が遠くならないよう祈るものです。次の次の世代が生まれてきて良かったと思える国であってほしいと思います。世界の理想となるべき日本国憲法九条を守っていきたいと切望いたします。九条の会を立ち上げてくださった方々に敬服いたします。一人一人の国民の意識が高められますようこの会の盛会を祈念いたします」「私は学生です。戦争をする国にはしたくないです。九条の会の思いに賛同しました。講演会に参加させて下さい」「東京に下宿している息子二人を誘って講演会に参加したいと思っています。私は姫路で、教職員九条の会を立ち上げようとしています。『教え子を再び戦場へおくらない』という誓いが教育の原点であったはずです」「初夏の候、と書きたくなる北海道からです。有明講演会にどうしても行ってみたいと思うあまり、申込みをしています。私の住む登別には一九五四年以来、陸上自衛隊の駐屯地があり、千歳・恵庭の部隊を支援する体制にあります。…カンボジアPKOに行った者の中に定時制の隊員の生徒が候補になりそうになりました。『有事』は本当に地域にごろごろしているのです」。「もし憲法9条がなかったら、おそらく、イラクで戦闘行為に参加し、イラク人を殺し、日本人も殺されていたでしょう。私は、日本が戦争で人を殺し、殺される国になることに絶対に反対する」。


親米反中で連合  ネオコンと産経・古森

 右派メディア産経新聞の本質がいよいよ露骨になってきている。靖国神社参拝をめぐる問題では、財界の意を受ける読売・ナベツネとに「裏切られた」産経は、国内では民間極右派や安部晋三らの与党内タカ派グループの動きに呼応してきたが、アメリカとの関係でも右派・ネオコンの代弁者としての貌をあらわにしている。
 七月一〇日の産経新聞は「日本は憲法改正し軍事面で『普通の国』に 米誌、論文を掲載 中国の覇権志向、抑止」が掲載された(産経は朝刊のみ、夕刊はない)。どんなものかと見れば、【ワシントン=古森義久】とある。
古森義久とは、産経新聞ワシントン駐在・編集特別委員だ。元は毎日新聞記者で北京に駐在し、当時も現在も中国に反対する言動をつづけている。国連に対しても批判的なことで有名だ。親米保守の代表的な言論人で、西部邁や小林よしのりなどの「反米」右翼とは一線を画し、どこまでもアメリカべったりを貫いている。アメリカでもネオコンに近い。古森らは、アメリカ・ネオコンの力をかりて、ブッシュのイラク戦争支持、改憲、反中国を進めようというのだ。
 古森は次のように「報道」している。
 「米国保守主流派を代表し、ブッシュ政権にも近い政治雑誌が、日本を米国の真に信頼できる同盟国とするためにはブッシュ政権は日本が憲法を改正し、消極的平和主義を捨てて、軍事面で『普通の国』となるよう要請すべきだとする巻頭論文を掲載した。同論文は日本が軍事的により積極的となれば、中国の覇権への野望を抑え、東アジアの安定に寄与するとし、日本の核武装にも米国は反対すべきではないと述べる一方、中国には日本の首相の靖国神社参拝に反対する資格はないとも言明している」。 
 その政治雑誌とは、「ナショナル・レビュー」誌で、その最新号(七月四日)に掲載された同誌編集主幹リッチ・ロウリーが「日本の縛を解け」と題する巻頭論文を掲ている。その副題は「新しく自信に満ち、物事に関与する日本は米国と世界に有益」とか「米国は日本が消極的平和主義を捨て、中国への平衡力となることが必要」というもので、古森なら泣いて喜びそうなものだ。
 ロウリーは、戦後日本は米国の押しつけによる憲法第九条で消極的平和主義を国策としてきた、だが、それは「もう無意味な時代錯誤となった」とし、日本が憲法改正で軍事面での「普通の国」となり、地域的な軍事役割を果たすことが日米同盟の自然な発展だと主張している。
押し付け憲法はだめだが、押し付け改憲は良いという論法だ。
 「日本が戦後の憲法で普通の軍隊の保持や集団的自衛権の行使を禁じたために、自国領土の受動的な防衛以外には軍事活動はなにもできず、自国民の海外での保護も同盟国の防衛も支援できず、憲法九条が完全な日米同盟の障害」になってきたが、こうした「消極的平和主義」は「日本国内での若手政治家の台頭や北朝鮮のミサイル発射と日本人拉致の自認、さらには中国の軍拡と横暴な対日態度、米国ブッシュ政権の誘導などにより崩壊が加速された」と評価している。論文は、日本の軍事的強化を求めているが、それによっておこることは、@日本が軍事面で普通の国になると、侵略性を発揮するというのは現実的ではなく、日米両国は価値観を共有し、米国の貴重なパートナーとなる、A米国は東アジアでの同盟国としてフィリピンを失い、韓国も失いつつあるため、日本との同盟関係を強固にすることが必要となった、B軍事的に強力な日本は将来、北朝鮮の軍事施設への照準爆撃を可能とし、中国の覇権志向の野望を抑えるのに適切な抑止要素となるべきだ、C日本は最近の米国との「共通戦略目標」で台湾の安全保障への関与をうたったが、日本が台湾の防衛にかかわれば、中国の台湾攻撃がより難しくなる、などだという。日本が対米同盟の枠内にとどまる限り、軍事行動を海外にひろげることも問題はないし、「もし北朝鮮が核兵器保有を確実にした場合、中国、ロシア、パキスタンも核保有なのだから、そこで日本が加わっても問題はないはずだ」と日本の核武装をも奨励している。
 アメリカが日本をアジア・世界支配の一員ととして位置付け使いこなすための政策だが、日本をこうした危険な役回りにさせるためのイデオローグの一人が古森なのだ。
ちなみにネオコンの論客が結集するのは「ナショナル・レビュー」誌(と「ウィークリー・スタンダード」誌(ビル・クリストル主幹)。
 ネオコンの発動したイラク戦争は泥沼状況になった。まさにアメリカは、「ベトナムの悪夢」の再来以外のなにものでもない状況に直面させられている。9・11事件を「好機」として、アフガニスタン、イラクに戦争を仕掛け、イラン、北朝鮮にも脅しをかけて、アメリカ一極支配を強固なものにしようとしたブッシュ政権は、いまきわめて厳しい局面に立たされている。イラクではアメリカ兵士の死者は一七〇〇名を超えた。イラクから撤退する国が相次ぎ、アメリカ国内でも陸軍、海兵隊の新兵募集は目標をはるかに下回り、ブッシュの支持率は半数を割った。イタリアにつづき、盟友イギリス・ブレア政権でさえもイラクからの撤退の準備に入った。
 強気の発言は続けても、イラン、北朝鮮への先制攻撃などの余力はない。
 イラク戦争前に比べてアメリカは孤立した。アメリカの犠牲を少しでも減らすために犬馬の労をとるのは馬鹿げているからだ。しかし、とネオコンは考えた。日本は別だ。北朝鮮や中国の「脅威」をちらつかせれば、核武装の餌を与えれば、アメリカのためにもっと金を出し、力を出し、血までも流してくれるかもしれない。それを、超大国アメリカに褒められ、評価されたと喜んで吹聴するやつがいる、と。
 産経新聞は、靖国参拝問題を煽ることで、日本をアジアから孤立させるのに「積極的な」役割を果たしたが、この古森「報道」は、日本をいっそう危険な段階に引きずり込もうとする策動なのである。
 もうひとつ、古森のアジア観を見ておく。中曽根康弘が会長を務める東アジア共同体評議会のHPのコラムには、古森の<「東アジア共同体」構想という妖怪がアジアを徘徊(はいかい)している>(二〇〇四年一二月)というのがのっている。
 古森は、「東アジア共同体」構想について「やや陳腐な形容かもしれないが、マルクスの『共産党宣言』の表現がつい連想されてしまう。いまや日本の外交課題として浮上したようにみえる東アジア共同体という言葉はその実態を知ろうとすればするほど、奇々怪々な側面が影を広げる。実態がどうにもつかめない。だから妖怪などという形容が頭に浮かぶのである。ワシントンで最近、東アジア共同体なる構想についていやでも真剣に考えさせられる機会があった。一一月中旬に開かれた米国民間のアジア研究機関主催のセミナーでこの構想に米側の学者らから鋭い批判が浴びせられたからだ。『東アジア共同体というのが当面、貿易や投資など経済面での地域統合を目指すのならば、なぜアジア太平洋経済協力会議(APEC)ではいけないのか。背後に米国やオーストラリアをアジアから排除する意図があるからではないのか』(ジョージワシントン大のハリー・ハーディング教授)」『いまの構想では米国、オーストラリア、ニュージーランド、台湾を排除し、排他的方向に動いており、このままだとその<共同体>は中国のパワーに圧倒されてしまう恐れが強く、米国としては座視できない』(外交評議会のエドワード・リンカーン上級研究員)」……」という具合にアメリカからの主張が並べられ、「核兵器を保有する中国との共同体は日本にとって軍事大国へ吸収されるに等しい。日本を守る最大手段となってきた日米同盟はどうなるのか。そして尖閣諸島の領有権での日中両国の衝突、靖国問題に象徴される両国間の価値観や世界観の天と地ほどの断層、その背後にある中国側の国民にしみついた反日の思考と感情はどうするのか。この種の疑問は共同体構想をまじめに考えれば考えるほど数が増えていくようなのだ」と疑問・反対ということで締めくくっている。(MD)


KODAMA

       
保守二大政党制に対抗できる政治勢力を

 七月三日に開票の東京都議選では自民党の後退と民主党の躍進が目立ち、共産党も議席は減らしたが奮闘した。そして、世田谷の大久保さんは残念だったが、杉並の福士敬子さんが三選を果たした。なによりも嬉しいことだ。
ファッショ的な石原都政は、軍事的な災害訓練、日の丸・君が代強制、教職員処分で暴れまわってきたが、浜渦副知事問題などで弱体化していたが、都議会は、共産党と福士さんを除けば総与党体制だった。
 マスコミは、国政なみの激戦を煽ったが低投票率は変らなかった。また、都政にも「二大政党」構造ができつつあるといっているが、自民・民主の二大政党制はまさにブルジョア二大政党制であり、アメリカと同じように支配層の二つの勢力が政権をたらい回しにするだけだ。基本的な利益は同じで、労働者の利益はいささかも代表されない。
 都政でも、国政でも、二大政党制、総与党化体制を打ち破るあらたな政治潮流の登場が求められている。 (H)


複眼単眼

  
自民党改憲要綱の危険性を暴露し、広める作業の緊急性

 今度、自民党の新憲法起草委員会(森喜朗委員長)が発表した「憲法改正草案要綱・第一次素案」は、「ナショナリズムと新自由主義の結合の産物としての反革命綱領だ」とも言えるし、「国家主義反動の地金がでてきた新国家主義改革綱領だ」と言ってもよいようなとんでもない代物だ。彼らはこうした方向の憲法を実現することで、当面する「戦争のできる国づくり」を実現しつつ、より長期的にはこの行き詰まった日本社会の構造を革命(反革命)して行こうとしている。その意味で、現行憲法のもとでそれを解釈改憲という政治手法でしのいできた「戦後六〇年」、日米安保体制のもとで対米従属の道を選択しつつ、経済的成長をはかるという、伝統的保守本流の政治が破産した中での自民党の生き残りをかけた改憲案の提起ともいうことができよう。それにしては素案とはいえあまりに雑ぱくなものではあるが。
 起草委員会事務局次長として、この要綱の取りまとめ作業にあたった元政治学者の舛添要一参議院議員は、今回の要綱のめざすものを以下のようにあけすけに語った。
「改正が急がれる最優先項目は9条2項だ。自衛隊の海外での活動を憲法解釈で拡大することは限界に来ている。要綱は、九六条の国会の改正発議要件を緩和することもうち出した。まず9条2項と九六条の改正を実現すれば、(憲法改正の)風穴をあけることができる」と。
 米国の要請など東アジアをはじめとする国際情勢から緊急の課題になっている九条改憲を実現することと合わせ、九六条を変えて改憲をしやすくしておけば、その後は順次、いかようにでも改憲していけるというのだ。まさに「風穴」をあけようとしているのだ。とりあえず、改憲には国会の三分の二が必要なのだから、民主党の支持なしには不可能で、そのためにはあまり多くの条項の改憲を言ったり、「自民党らしい」要求をしても改憲は実現しない。民主党がギリギリ呑めるところまでハードルを下げて、あわせて九六条を変えておく。そうすれば残ったものは後から容易に改憲できるというのだ。こんな人をくったような解説をする舛添も酷い人物だ。元政治学者などというが、こうした言辞はかつて誰かがいったことがある「曲学阿世の徒」そのものではないか。
 それでも今回の要綱は自民党らしさを多く残している。「前文」に天皇制の評価を入れ、それを軸に「日本の国土、歴史、文化、伝統」を記述させようとしていることなどは重大な反動だ。
 またここに国家目標として「国際協調を旨とし、積極的に諸国民の幸福に貢献すること。地球上いずこにおいても圧政や人権侵害を排除するための不断の努力を怠らないこと」を明記するとしていることなどは驚くべきことだ。このことと9条2項を改変し、自衛軍を保持するとする条項が結合すれば、ブッシュの先制攻撃正当化の論理と瓜二つだ。
 これは中曽根康弘元首相が中心になってまとめた「前文小委員会」の提起を変更できないまま盛り込んだこととはいえ、自民党全体がこうした方向をめざしているのは疑いない。これは「天皇元首規定」を引っ込めたことと問題のありかは同様で、九六条との関連での「政治的配慮」(舛添)の問題に過ぎない。
 今回の自民党改憲要綱を徹底的に暴露し、自民党のめざす改憲の危険性を明らかにすることは我々の急務だ。 (T)