人民新報 ・ 第1175号<統合268(2005年8月5日)
  
                  目次

● 九条の会・有明講演会が大成功  改憲阻止に向けて一層の拡大を

● さよなら郵政民営化! さよなら小泉内閣!

● 2005年東京ピースサイクル報告  全国ルート・東京コース  練馬ピースサイクル

● 大阪 7・29  郵政民営化法案を廃案へ! 集会とデモ

● 資 料  /  WORLD PEACE NOW「ロンドン無差別爆破事件への見解」

● 戦争に協力する教育に抗して  日の丸・君が代強制、処分と闘う東京の教職員

● 小泉・石原の靖国神社参拝を許すな!

● 映 画 評  /  「Little birds」  ( 監督 綿井健陽 )

● KODAMA  /  大阪・豊中市で九条の会結成 記念のつどい開催

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  猪瀬直樹、おまえもか!  政府税調の「専業主婦差別発言」




九条の会・有明講演会が大成功

    
改憲阻止に向けて一層の拡大を

 七月三〇日、有明コロシアムでひらかれた「九条の会・有明講演会」には九五〇〇人が参加し、九条改憲阻止の思いを一つにし全国へアピールした。集会は、九条の会の主催で、映画人九条の会、九条科学者の会、九条の会・医療者の会、九条の会・詩人の輪、宗教者九条の和、女性「九条の会」、スポーツ「九条の会」、俳人「九条の会」、マスコミ九条の会が協賛して開かれた。この憲法集会へのかつてない参加者の数は、自民党小泉内閣のピッチを上げる改憲攻撃にたいする多くの人びとの危機感のあらわれであるとともに、それと断固として闘おうという決意の表明であった。有明講演会の大成功は、九条改憲阻止の運動の前進に大きな展望を切り開くものであった。この成功を基礎に、いっそう多くの人びと、地域、階層、職域に九条の会をひろげ、さまざまな弾圧や妨害をはねのけて憲法をめぐる壮大な闘いをつくりあげていかなければならない。

 講演会の開始のだいぶ前から、会場の有明コロシアム周辺は多くの人びとで埋まっていた。近くの駅からは途切れることなく人の列がつづく。どの顔にもこの歴史的な講演会を成功させ、憲法闘争のもう一段の飛躍を実現しようという気持ちがあらわれていた。
 開会前の会場では、クラシックギターの第一人者・荘原清志さんがギター演奏。
 午後一時半、講演会ははじまった。司会は、九条の会事務局長の小森陽一さん(東京大学教授)、事務局員の渡辺治さん(一橋大学教授)。
 小森さんから九条の会の活動の報告。九条の会は昨年六月に発足したが、この一年間、主要都市での講演会がいずれも大成功したこと、そして「九条の会アピール」に自発的に応えて活動する各地域やさまざまな分野で「会」が続々と結成されているがすでにそれが三〇〇〇を大きく超えた。
 つづいて九条の会よびかけにんによる講演。
 三木睦子さん(三木武夫記念館館長)
 日本の将来のため、子や孫、ひ孫のために、平和で静かで芸術の光に満ちた国にしていかなければならない。だから憲法九条なんです。
 鶴見俊輔さん(哲学者)
 八三年、生きてきて思うことは、人間たいしたことはないということだ。私も耄碌(もうろく)しましたが、私の実行できるのは、平和を目指してもうろくすることだ。
 小田実さん(作家)
 中国の孫文はその死の直前に日本に立ち寄って、日本は物質力・軍事力による覇道の道を行くのか、それとも道義・文化による王道をめざすのかと問う講演を行った。九条は孫文の言う王道を実践してきたものだが、いまそれが捨てられようとしている。
 奥平康弘さん(憲法研究者)
 国会衆参両院の憲法調査会の最終報告が出されたが、それぞれページ数は多いが中身はスカスカだ。九条改悪の企図を打ち砕くことは、あしき社会になるのを阻止し、日本の内外において九条を積極的に生かすイニシアティブを握ることだ。
 大江健三郎さん(作家)
 アメリカの友人のスナイダーは「求めるなら援けは来る、しかし決して君の知らない仕方で」という詩を書いた。いまそのような時だ。しかし、みなさんには「援け」というよりは「変化」というほうがよりよいだろう。
 井上ひさしさん(劇作家)
 敗戦時の昭和二〇年、男の平均寿命は二三・七歳、女は三二・三歳だった。しかし、あの時代は正しかった、あの時代の戻れという人が増えている。しかし、一方で、自分の運命を国や企業に決めさせないという人も増えている。自分の運命を自分で決める人たちがもっともっと多くなれば奇跡を起こすことができる。
澤地久枝さん(作家)は先約の講演会のため欠席したがビデオをつうじてメッセージを寄せた。
 いやな風が吹き始めているが、考えよう、何かをしようという人が増えている。答えが急にでるわけではないが、私たちはあきらめず、行動をいっしょにやっていこう。


さよなら郵政民営化! さよなら小泉内閣!

 小泉内閣が、その構造改革政策の本丸と位置付ける郵政民営化関連法案は衆院では五票という僅差で辛うじて通過した。参院では与野党の議席差は衆院よりもすくない。政府・自民党、とりわけ小泉は、参院で否決されたら衆院を解散するという脅しで、反対派議員を恫喝している。郵政民営化反対派では、亀井静香衆議院議員の「五〇〇%成立はありえない」と強気の発言などに象徴されるように、多数派工作が進められている。政府・与党は八月五日の参院採決を狙っているが、その日程ですすめられるかどうかわからない。いずれにせよ、自民党内部の賛成・反対両派のオルグ合戦は水面下で熾烈に続いている。
 ここに来て、小泉・郵政民営化が重大な困難にぶち当たるようになったのは、いくつかの世論調査の結果でもわかるように、小泉の進める郵政民営化が、弱者・地方を切捨て、大資本・外資のためのものだということが浸透し始めたからだ。さまざまな力を糾合し、政府・自民党内部の亀裂・矛盾を最大限に利用しながら、参院で郵政民営化法案を否決・廃案にするために闘いを一段と強めていかなければならない。

 郵政労働者ユニオンや郵政民営化監視市民ネットワ―クなどによる郵政民営化阻止闘争本部は、衆院段階での闘いに続いて、参院での闘いに取り組んでいる。衆院可決(七月五日)直後の七月七日には郵政民営化阻止集会(社会文化会館)と国会請願デモを多くの支援の労働者とともに成功させた。その集会では「郵政民営化関連六法案を否決し、小泉政権を退陣に追い込む決議」が採択され、「野党、自民党の良識ある議員諸氏と連帯し、総力をあげて郵政関連六法案を葬り去ろう。小泉内閣を退陣に追い込み、新自由主義の流れを断ち、改憲・戦争のできる国への変貌を阻止しよう」と確認した。国会の会期末は八月一三日、あと少しの時間しかない。さまざまな手法を駆使して、」郵政民営化法案を否決させ、小泉内閣を打倒するために闘い抜こう。

 七月二九日には、郵政民営化阻止闘争本部は、国会前座り込み、議員への要請などを闘い抜き、夕刻からは、」社会文化会館で「さよなら郵政民営化!さよなら小泉内閣!郵政民営化法案を廃案に!市民集会」(主催・郵政民営化を監視する市民ネットワ―ク)を開催した。
 主催者を代表して監視ネットワ―クの秋本陽子さんがあいさつ。
 郵政民営化が政局となり、政治の流動がうまれようとしている。これには郵政民営化問題の社会化があり、私たちの運動も、マスコミの歪曲報道、民営化推進報道に抗して、この問題についてひろく伝えてきた。郵政民営化など小泉内閣の構造改革政策は民主主義への挑戦である。そして、この闘いは、どのような社会であってはならないのか、どのような社会をめざすのかをめぐるものでもあるということである。政府・与党は採決を行おうとしているが、私たちは民営化に断固として反対していかなければならない。
 福島瑞穂社民党党首(参議院議員)
 国会はもうすぐ会期末だが、郵政民営化が大論点になってきて、小泉構造改革のメッキがはがれてきている。参院郵政特別委員会での採決を五日にもやろうとしているが、そうはならないでもっと遅れる公算は大きい。地域から郵便局がなくなってしまう、生活が壊されていく、こうした不安が、自民党の議員に反映している。自民党の派閥は瓦解・崩壊状況にある。大混乱だ。だから、今、もっとロビー外交をやる意味がある。郵政民営化のおかげで、今回での共謀罪の成立は難しくなった。さまざまの闘いが互いに影響を与え合っている。小泉政権を追いつめていこう。
 郵政民営化によって地域が崩壊する近未来を描いた電子紙芝居「星くず町の惨劇」が上映され、横須賀の原子力空母母港化問題を考える市民の会、ジャーナリストの安田浩一さん、日本消費者連盟の富山洋子さん、許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さん、ATTAC Japan、学校事務職員労働組合神奈川から発言があり、最後に、郵政労働者ユニオンの棣棠浄副委員長が、民営化法案阻止のために全力をあげて闘うと決意表明をおこなった。


2005年東京ピースサイクル報告  平和を創り出すために、何ができるのか !

全国ルート・東京コース

 東京ピースサイクルは、七月下旬に行われ、延べ四〇人が参加した。
ちょうど梅雨明けし、炎天下の中の取り組みとなった。

七月一八日
 一八日は、京成青砥駅で東部労組や地域の人たちと駅頭情宣を行った。
青砥駅のそばにある葛飾区教育委員会でほ、公立中学で来春から使われる教科書の採択が八月に採択されることを受けて、五名の委員だけで選定する問題点など訴え、優略戦争を美化する『新しい歴史教科書をつくる会』主導で編集された扶桑社版歴史・公民教科書を選ばないよう申し入れた。
 続いて、朝鮮学校の廃校問題が起こっている江東区枝川に到着。校長先生が私たちを受け入れてくださり、学校周辺のフィールドワークを行った。
 一昨年一二月、東京都は枝川にある朝鮮初級学校の土地明け渡しを求める裁判(公判は七回を経過)を起こし、裁判で都の主張が認められてしまえば、半世紀以上の歴史がある民族教育を続けることができなくなくなる。
 一九四一年、当時の東京市は理め立てたばかりの枝川地区に朝鮮人一〇〇〇名を強制移住させ、劣悪な環境の中で住民たちは、助け合って生活をしてきた。当時はタクシーも嫌がって枝川には、入らなかったそうだ。そして、父母、祖父母の言葉、文化を伝える民族教育の場として学校が作られ、美濃部都政下では過去の歴史を考慮し二〇年間(七二年〜九二年)の無償土地利用の契約で今日まで維持されてきた。
 九三年からは、土地の払い下げを前提に友好的に交渉が進められてきたが、石原都政になり手のひらを返すように九三年にさかのぼって土地使用料の四億円を請求してきたのだ。体育館やプール、冷暖房のない中で授業を受けている子どもたちから学校までも奪ってもよいのか。
 現況では韓国は対北太陽政策のもとで、国会議員が学校の移転のために全面的に協カすることを打ち上げ、韓国メディァは毎日のように、この問題を取り上げている。
弱者切り捨て、差別的な石原都政に大きな怒りを感じる。
 その後、私たちはビキニ水爆実験で被災した第五福竜丸展示館を見学した後、潮見教会まで走り、交流会を行った。

七月一九日
 翌一九日は潮見教会をスタート。同じく弱者切り捨ての小泉構造改革NOの立場から郵政民営化を監視する市民ネットワークと郵政労働者ユニオンが国会で座り込みやビラ配布、参議院議員への要講行動を行っているので参加し連帯した。
その後、大田区蒲田で、今年取り組んだ05オキナワピースサイクルの報告会を開催し交流をした。

七月二〇日
 二〇日は、神奈川県川崎市役所でピースサイクル神奈川ネットの出発式に参加。
イラク戦争二周年の三月二〇日から六月三日にかけて取り組まれたスブリングピースサイクルで大分ネットから託された平和への想いと汗がいっぱいつまったタスキと東京南部地域で運動している「ストップ派兵!改憲NO!南部共同行動」から要請された各ネットの取り組みチラシを書類ケース(ピース回覧板)に入れて、広島、長崎まで引き継いでほしいことを訴え、神奈川ネットに無事に引き継ぎを行った。
 そして、川崎市民から激励のビースメッセージを受けて、参加者全員で戦争のない社会を創っていくことを確認し、八月六日のヒロシマと九日のナガサキを目指して自転車を走らせた。 (05ピースサイクル参加者 原田)

練馬ピースサイクル

 七月十八日、東京ピースサイクルの一環として、練馬区から江東区夢の島までのピースサイクルが行われました。
今年は、戦後六十年被爆六十年ということもあり、あらためてビキニ環礁での水爆実験で被爆したマグロ漁船「第五福竜丸」展示館までのサイクリングコースを設定しました。
 ルートは、街づくりの勉強もかねて区内から荒川につながる石神井川沿いを走ることに。
荒川からは河川敷のサイクリングロード、そして江東区内では運河沿いの親水公園を経て夢の島に。

 九時過ぎに練馬区役所を出発。参加したのは練馬区職労の組合員を中心にのべ十三名(女性一名)、自転車十台。伴走車一台で一人は自転車と一緒にランニング。
 途中、東京家政大学構内にある旧弾薬庫だった建物を見学。
荒川河川敷の快適なサイクリングも、関東大震災で虐殺された朝鮮人の遺体が埋められていると思うと複雑です。
 予定時間より早く第五福竜丸展示館に到着。展示物と船を見ながら館長さんから当時の状況について詳しい説明をいただいた。
初めて訪れた仲間もあり、熱心に話しに耳をかたむけました。
 しかし、残念なことに、戦争を体験した世代が減ってきたこと、平和教育の弱体化してきたことなどから、年々訪れる人の数が減っています。それは、広島の原爆資料館も同じようです。
 練馬のピースサイクルの取組みでは、参加者人数が横這いで、年齢層も高くなってきていますが、毎年初参加という人がいます。練馬からは、広島の原水禁大会に子ども代表団を含め五十人以上が参加します。
今後も、地域の反核運動の一環として根付いていけばと思います。  (M)


大阪 7・29

  
 郵政民営化法案を廃案へ! 集会とデモ

 七月二九日、郵政民営化法案を廃案へ!七.二九大阪集会とデモが開催された。
 この取組みは、郵政ユニオン近畿地本、おおさかユニオンネットワーク、大阪全労協の三者の共催で行なわれた。
 会場となったエルおおさか(大阪市・北区)には一五〇人を超える、労働者・市民が集まり、「郵政民営化阻止」の熱気に溢れた集会となった。
 松岡幹雄郵政ユニオン書記長から、この間の法案をめぐる国会情勢と我々の闘い、民営化法案を廃案に追い込むための最後の闘いなどが提起された。
 大阪全労協・山下副議長は「郵政ユニオンの提案する『パブリックな郵政事業』に民営化阻止の闘いとその後の展望がある」と連帯の挨拶。
 おおさかユニオンネット・加来代表は「アメリカ資本が国民の財産である郵貯・簡保の三四〇兆円を新たな儲け口として狙っている」と民営化の狙いを指摘した。
 その後、集会参加者は提灯やのぼり、プラカードなど趣向を凝らして大阪の街をデモ行進。
 大阪キタの繁華街を「郵政民営化反対!」「郵便局の全国ネットワークを維持しろ」とシュプレヒコールを繰り返した。


資 料

 
WORLD PEACE NOW

     ロンドン無差別爆破事件への見解 
  〜 戦争も暴力もない世界を〜

 WORLD PEACE NOW実行委員会はロンドン無差別爆破事件についての見解を発表した。資料として掲載する。
 WPNは、九月一一日にピースパレードを計画している。ひきつづくイラク戦争のなかで自衛隊はアメリカ占領軍の一翼をになっている。「戦争も暴力もない世界」をめざして反戦運動をいっそう拡大していこう(編集部)。


 七月七日朝、ロンドンの地下鉄とバスの四カ所で無差別爆破事件が発生し、五〇名以上の死者と七〇〇名以上の負傷者が出ました。また、七月二一日にもロンドンの四カ所で再び爆破事件が起こりました。私たちは、この残虐な暴力に強く抗議し、犠牲となった人びとに哀悼の意を表します。

 この爆破事件の背景は、米国によるアフガニスタンやイラクへの無法な攻撃と占領、罪のない多数の住民の殺傷に率先して参加してきた英国ブレア政権への「報復」であるとの有力な見解があります。しかし、たとえそうだとしても、一般の市民を無差別に殺傷する行為は断じて許されません。それは結果として、無法な攻撃でアフガニスタンやイラクの一般市民を殺傷している米英の政府・軍隊の行為と同じことになるからです。また、英国内でもイラク戦争に反対する人びとは多く、〇三年二月一五日の一〇〇万人デモをはじめ、いまなおイラク占領反対の強い世論と運動が存在しています。このような一般市民をも標的にすることは、イラク占領をやめさせるのに不可欠な英国と世界の市民の声をそぐことにしかならないからです。

 この無差別テロを口実として、G8サミットは「対テロ戦争」を正当化し、イスラム系市民を含む市民社会への監視と拘束、言論統制など、人権無視の「テロ対策」強化を打ち出しました。ロンドンの地下鉄では、無関係の市民さえ「テロ容疑者」として警官に射殺されましたが、警視総監は「この方針は必要」と言明しています。ブレア首相は爆破事件を利用し、自らへの批判を封じようとしています。しかし、ブッシュ大統領、ブレア首相、小泉首相などアフガニスタン・イラク戦争を推進し加担してきた大国の首脳たちには、「テロ」を非難する資格はありません。彼らの中東政策と武力による支配の路線こそ、中東の人びとの苦しみをさらに大きくし、抵抗闘争の継続と新たな「テロ」を生み出す源泉となっているからです。

 私たちはあらためて強調します。G8が主張する「対テロ戦争」や「テロ対策」は問題の真の解決にはなりません。それは世界中の人びとにいっそうの流血と苦痛と抑圧をもたらすだけです。イラク、アフガニスタンの「多国籍」占領軍をただちに撤退させ、パレスチナ問題の公正で永続的な解決に取り組み、グローバリズムと新自由主義によって深刻化している貧富の格差や地球環境の破壊をなくしていく−これらこそ、世界の人びとの願いであり、人間らしい平和な「もう一つの世界」をつくる道なのです。

 私たちはあらためて求めます。
 イラク、アフガニスタンから、すべての外国軍はただちに撤退すること。小泉内閣は自衛隊をイラク、インド洋からただちに撤退させること。あらゆる戦争と暴力のない世界をつくるため、みんなで力を合わせ、行動を起こすこと、を。

二〇〇五年七月二六日

 WORLD PEACE NOW 実行委員会


戦争に協力する教育に抗して

      
 日の丸・君が代強制、処分と闘う東京の教職員

 小泉政権の下、教育基本法と憲法の精神を抹殺して、アメリカと組んで戦争のできる国家作りが進すめられている。その中で、教育には「愛国心」を高揚させ、「国」のために死ぬことを厭わないイデオロギーが注入されようとしている。
過去の侵略戦争を美化する「つくる会」教科書が各地で学校に持ち込まれようとしているが、東京の石原都知事と都教育委員会は先頭を切っている。
 東京都教育委員会の二〇〇三年一〇月二三日付通達は東京の学校での「日の丸・君が代」強制の嵐となって襲いかかってきているが、「日の丸・君が代」強制の狙いは、教育の自主・自立・自由を奪い、学校を戦争への協力・実践の場とすることだ。そしてこの通達に従わなかつたとして処分された教職員は延べ三〇〇名を超えるまでになった。
 七月下旬、都の闘う教職員と支援者は、都教委の攻撃への反撃の闘いを連続的に展開した。

 七月二一日は都教委による被処分者に対する再発防止研修の日。
 当日は全水道会館での被処分者支援・再発防止研修抗議決起集会につづいて、研修会場の総合技術センター前での抗議行動をおこない、日の丸・君が代の強制、不当処分、研修に反対するゼッケンやTシャツの被処分者を拍手と激励のシュプレヒコールで送り出した。研修は昨年と同じ形式的なものに終始したが、被処分者たちは質問と抗議の声をあげて都教委を追及し続けた。都教委側は一切の質問に答えず、「講義」なるものが終了すると逃げるように教室を出て行ってしまった。そのあと、再び全水道会館で報告・抗議集会が開かれた。

 七月二十三日には、星陵会館で「東京『日の丸・君が代』強制反対裁判をすすめる会」の結成総会が開かれた。「すすめる会」は、石原都政、都教委一〇・二三通達と「日の丸・君が代」の強制に反対して裁判闘争等をすすめる三つの会(「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会、「日の丸・君が代」不当解雇撤回を求める被解雇者の会、「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟をすすめる会)による、国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟(予防訴訟)、東京都人事委貴会審査請求事件(「不起立」等に対する処分の取消請求事件)、雇用関係確認請求求事件(解雇裁判)などを支え、それらの闘いと緊密に連携・共同して、ひろく市民が参加する全国的な運動にしていくためのものだ。そして「上記の裁判などの勝利、一〇・二三通達の廃止を実現することを通じて、公立学校に自由と自治をとりもどすことをめざします」としている。集会では、共同代表の一人である槙枝元文・元日教組委員長があいさつし、弁護団を代表して加藤文也弁護士、三つの会からの発言などがあり、共同代表であり東大名誉教授の大田堯さんが記念講演を行った。

 二七日は、「石原・横山・中村都教委の暴走をとめよう!都教委包囲首都圏ネットワ―ク」によって、「『日の丸・君が代』強制・処分を撤回せよ!」「七・二一再発防止研修の強行に抗議する!」「『つくる会』教科書を採択させるな!」「石原都知事、横山副知事は辞任せよ!」をスローガンに都教委包囲デモが闘われた。
 午後三時半、新宿・柏木公園で前段集会。
 首都圏ネットの見城赴樹さんが主催者あいさつ。 昨日、都教委は一部の学校での「つくる会」教科書を採択したが、われわれはこれに強く反対する。昨年も都教委包囲デモをやったが今年もやることができた。さらにいっそう強固な闘いをつくっていこう。
 教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会の大内裕和(松山大学助教授)。
 石原都政はファシズムを暴走させている。われわれの力でとめるしかない。ともにがんばろう。
 集会・デモには韓国からも参加。東アジア平和のため日韓共同日本列島巡礼を行っている「ハルモニとともにする市民会」「平和統一大邱(テグ)市民会」。
 歴史をきちんと記憶することがなにより必要だ。そのため教育は非常に重要だ。さきの戦争では多くの人が被害を受けた、そのことを忘れてはならない。
 教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会の三宅晶子千葉大学教授。
 今、本当に大変な時代がきている。戦死者が子どもたちの中からつくられようとしている。子どもたちの命が危ない。
 集会を終わって約三〇〇人がデモに出発し、新宿駅、都庁周辺で人びとにアピール。都庁・都教委前にはすでに一〇〇名ほどが、都教委員会の木村孟委員長と中村正彦教育長への申し入れ(別掲)をおこなって、デモ隊を迎えて合流、一緒に新宿公園までのデモを行った。
 包囲行動のあと、千駄ヶ谷区民会館で講演集会が行われた。

                    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 
申 入 書
 
      東京都教育委員会委員長 木村孟殿

      教育長 中村正彦殿


 二〇〇三年の一〇・二三通達以降、東京都教育奏員会(都教委)は「日の丸・君が代」を学校現場に強制してきた。卒業式・入学式は特別活動であり教育活動の一環である。都教委による強制は明らかに教育基本法一〇条に定める教育に対する「不当な支配」である。都教委は、「不当な支配」を実行するために、学校現場に教育庁職員を派遣し、教職員の監視・不起立者の現認など法律違反の行為を公然と行ってきたのである。
 都教委は、生徒・保護者を含め全員が「国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する」という状況を作り出した上で、儀式的行事を教育行政の管轄下に置き、これを突破口にして教育内容への全面的介入に乗り出そうとしている。それは、教育を時の政治権力の支配下に置き、そのプロパガンダの手段とするものである。それは「つくる会」教科書導入の策動と本質を同じくするものである。
 一方的な政治宣伝満載の「つくる会」教科書を、七月二八日の定例教育委員会で、中高一貫校や聾・養護学校に強制的に「採択」した。我々は都教委のこの暴挙を糾弾する。
 〇三年の周年行事以降、東京の教育の現状に危機感を抱いた良心的教職員の不起立などの最小限の意思表示に対して、都教委ほ「職務命令違反」を理由として戒告などの不当処分を行った。加えて処分の累積加重を行い、〇五年には「停職」処分をも行っている。このような苛酷な処分の乱発は思想弾圧とさえ言えるものであり、民主主義とはとうてい相容れないものである。さらに、被処分者に対しては「再発防止研修」と称する人権無視の<思想転向>の強要すら行っている。
 憲法・教育基本法違反を確信犯的に行っている都教委は、戦争のできる国づくりをめざす一部右派勢力の動きとタイアップして暴走を続けている。〇五隼には、義務制の学校に過去の侵略戦争を美化する「つくる会」教科書を大量に導入しようとして横山前教育長以下奔走してきた。
 我々は、東京都教育委員会がこのような暴走をただちに中止し、これまでの行いを反省し、憲法・教育基本法にもとづく本来の教育行政に立ち返ることを強く要請し、以下の諸点を申し入れる。
 一、一〇・二三通達を撤回し、卒業式・入学式等の実施に関して学校現場への不当な介入をただちに中止すること。
 二、生徒への内心の自由説明を妨げる〇四年三・一一通知を撤回し、教育指導の内容に対する不当な介入をただちに中止すること。
 三、「職務命令違反」を理由とする教職員に対する不当処分をただちに撤回すること。
 四、卒業式・入学式等の監視のための教育庁職員の派遣を中止すること。
 五、被処分者に対する「再発防止研修」をただちに中止すること。
 六、業績評価のCD評価を撤回させること。
 七、週案提出強制、指導主事派遣など教育内容への日常的な介入を中止すること。
 八、白鴎中高一貫校などの扶桑社版「つくる会」社会科教科書の採用を撤回すること。
 九、都立中高一貫校などへの扶桑社版「つくる会」社会科教科書の採択を行わないこと。
 一〇、区市町村教育委員会の教科書採択への直接・間接の介入を行わないこと。
 一一、小中学校の教科書の選定・採択に現場の教職員の意向を反映させる制度的保障を復活すること。
 一二、長距離通勤、校長による恣意的異動など教職員への不当人事異動を撤回すること。不当な異動を可能にしている現行異動要綱を撤回すること。

二〇〇五年七月二九日

都教委包囲首都圏ネットワーク


小泉・石原の靖国神社参拝を許すな!

 八月一五日に、靖国神社内は、軍国主義鼓吹の異様な空間となる。
 日本内外とりわけアジア諸国からの強烈な抗議の声があがっているにも関わらず、小泉首相をはじめ閣僚、与野党国会議員、石原都知事などが、侵略戦争を美化し、再び「英霊」をつくるために、靖国神社を参拝しようとしている。
小泉の靖国神社参拝問題は、近隣アジア諸国との間に深刻な摩擦をひきおこし、日本の孤立化をもたらしている。
 それだけではない。靖国神社は日本人民を侵略戦争に動員するうえで大きな役割をはたしつづけてきた。

 靖国神社はこれからも、日本が戦争に参加する場合には、かつてと同様の役割をはたすことに疑問の余地は無い。
 小泉は再び悲惨な戦死者がでないように参拝しているというが、アメリカの戦争に自衛隊を参戦させ、再び「英霊」を作ろうとしているのは、ほかでもない小泉などの右翼政治家たちなのだ。
 小泉は批判が起こると「植民地支配と侵略」への反省の言葉を繰り返し、国会でも戦後六〇年決議がなされたりしている。しかし、実際には、四月のアジア・アフリカ首脳会議で小泉が、アジア・アフリカ諸国首脳を前に「植民地支配と侵略」を反省する演説を行った、なんとその当日に、与野党の国会議員が大挙して靖国神社を集団参拝するデモンストレーションを敢行したのだった。
 これが、小泉政権下の日本なのだ。言葉は過去の侵略行為とこれからの戦争準備を覆い隠すものにすぎないことが満天下に示され、大きな国際批判が起った。
 小泉は、靖国神社参拝をやめるとは言わず、閣僚の侵略戦争美化やA級戦犯を有罪として処罰した東京裁判判決などをも否定する閣僚の言動をそのままにした。小泉自身は、参拝は当然、問題は何時行くかだけだと開き直っている。
 しかし、この間のアジア諸国からの首相の靖国神社参拝への批判・糾弾は、日本国内に大きな衝撃を与えた。海外のマスコミは、靖国神社なるものがいかなるものであり、それがいまなお戦争を美化し続け、植民地支配を正当化し、天皇・国ために死ぬことを賛美し、その反動的なイデオロギーを発信するセンターとなっていることを報じ始めた。アジア諸国だけではない。ヨーロッパ、そしてアメリカでもそうだ。しかし、日本のマスコミは、動きがほとんど無い。
 いま、多くの世論調査で、首相の靖国神社参拝に反対が賛成を上回った。参拝反対の主な理由としては、近隣諸国との関係があげられている。この認識は一歩前進だ。だが、なぜ中国や韓国・朝鮮が靖国神社に反対するのか。その原因は侵略戦争と植民地支配にある。そのことが十分理解されなければならない。だが、そのため最も大事な教育の歪曲が強められている。戦争は過去のことではない。戦争のために死ぬ「英霊」は過去のことではない。いままた、こうした状況が生まれようとしているのだ。
 アジアの広範な人びとともに、小泉首相、閣僚、国会議員、石原都知事などの靖国神社参拝に反対して闘いぬこう。


映 画 評

      
 「Little birds」

             監督 綿井健陽  102分
  
 そこから少し先へいくと、応急員のマークをつけた、まだいかにも子供っぽい面長の少年兵が、なにかぶよぶよしたものを引きずりながら、横むきになってもがいていた。歯をくいしばって振っている顔は、すでに死相をうかせて土色だった。見ると、腹わたをひきずっているのだった。腹わたは血につかって彼の足もとにもつれた縄のようにひろがっていた。うす桃色の、妙に水っぽいてらてらした色だった。少年兵は途方にくれながら、わなわなふるえる両手でそれをかきよせ、もう一度それをさけた下腹の中へ一生懸命押しこめようとしていたのだ。そうすれば、またもと通りになると思ってでもいるように……。
 もうずいぶん前に読んだ渡辺清著「戦艦武蔵の最期」(朝日選書一九八二年)の一節である。沈没しつつある艦上で「お母あーさん、お母あーさん……」と叫び続ける一五〜六歳の少年兵達の姿と共にいまだに忘れられない。「途方にくれながら」・・・一瞬の鉄の嵐に身を切り裂かれた時、人はそうするしかないのだろう。絶望感に襲われ死の恐怖にさいなまれる余裕すらないままに。
 アメリカによる侵攻下、イラクの多くの民衆が同じように無惨な死を死に、深い傷を負った。この映画は侵攻以来一年半にわたって記録した一二〇時間余りの映像をもとに製作された作品である。恐らく編集過程で採用されなかった映像の中には、渡辺の記録した光景に類する凄惨なものがあっただろう。監督は敢えてそうした映像を最小限にとどめたのではないだろうか、死者や負傷者を二重に冒?しないために、そう私は推測する。
 イラク侵攻をめぐってはおびただしい映像が流された。監督自身、現地から精力的に生々しい状況を伝えた。どれもインパクトのある貴重なものであった。映画の中で何箇所も、テレビニュースで見た覚えのある映像があった。だが、テレビニュースは断片的であり、一過性のものであり、アラカルト的である。映画の中で、派遣された自衛隊の隊内食の試食風景にカメラマンが群がり、はしゃいで隊員に何度もポーズを求めるシーンがあった。こうした愚劣な、しかし意図的な映像の中に同列に埋め込まされてしまわざるをえない。私には、監督が一篇の映画作品として記録を編集することにした理由が切実に分るように思う。
 映画は、実に静謐である。三人の子どもを空爆で奪われた父親の嘆きと怒りを、坦々と追う。標題は三人の子の仮の墓標に記された言葉から取られている。クラスター爆弾で目に破片を受けた少女の、手術そしてその後の姿をいたわるようにそっと写し続ける。やはりクラスター爆弾で片腕を失った少年の母親の嘆きは、何より、弟が不自由な身体になった兄を馬鹿にする態度をとりはじめたことだ。ここには扇情的なものは何もない。「戦争」がごく当たり前の人々の生活に何をもたらしたかを、淡々と描き出している。
 私がとりわけ感銘を受けたのは、侵攻してきたアメリカ軍兵士に対し、一人、手書きのプラカードを手に、「なぜ、子どもを殺したのか」と迫る「人間の盾」の女性だった。彼女はこの時、心情的には、世界の、日本の私たちの思いを代弁していた。しかし、現場には彼女一人だった。侵略の軍隊に対し、一人果敢に(本人にはそんな意識もなかっただろう)問い詰める女性。私は、彼女の姿に勇気づけられた。戦争の大義について追及され、こそこそ逃げ出さざるを得ない米軍兵士に対し、彼女はなんという大きな存在感と威厳とを示していたことか。彼女をずっと追い続けるキャメラに、監督の意志がはっきり示されていたと思う。(佐山 新) 


KODAMA

    
大阪・豊中市で九条の会結成 記念のつどい開催

 七月一七日、大阪府豊中市で「九条の会・豊中」結成記念市民のつどいが開催された。
 弁護士や学者、ジャーナリストや医師など豊中市在住の各界で活躍されている方々一九人が呼びかけ人になり、結成された「九条の会・豊中」。
 当日のつどいには会場となったアクア文化ホール(大阪府・豊中市)に定員の五〇〇人をはるかに上回る七〇〇人以上が詰めかけた。
「戦争は絶対ダメ」「九条改憲はゆるさない」と熱気に満ちた集会となった。
 記念講演は、同会の呼びかけ人でもあるジャーナリストの大谷昭宏さん。「日本は戦後六〇年、戦争で他国の人も日本人も傷つけていない、九条があるからだ。これを誇り、世界に広めていくことこそが大切」と講演。そして「阪神大震災やJR福知山線の事故など、関西で大惨事が多い。天災は防ぎようがないが、人災は防ぐことができる、その際たるものが戦争だ。絶対に戦争はしてはならない」と力説された。
 同じく呼びかけ人の一人であるシャンソン歌手の杉山ヤスコさんがミニコンサートを開き、すばらしい歌声で参加者を魅了した。
 豊中市で活動している様々な「九条の会」もアピールし、改憲阻止にむけて取り組みを強めていこう、と確認された。
 豊中市で改憲を許さない闘いの大きな一歩として「九条の会・豊中」が結成された。(R)


せ ん り ゅ う

  いただいた退職金とアスベスト

  公報は特価チラシと共にくる

  監視され番号付の市民です

  集まれば共謀罪としたいのか

  共謀罪作って悪政進軍へ

  少子化で海外へ行く企業たち

  われわれも海外へ出る力もて

  九条を唄う心の大集会

                ゝ 史

  二〇〇五年七月

 ○ 景気がいいのは海外へ展開する大企業で、リストラ時代の労働者はますます苦しい。新聞を取っている家が少なくなった。我が都営団地でも半分以下だ。都の公報や区の公報は新聞の折り込みで配られるから、半数の団地住民は見ていないことになる。貧乏人は政治の外に置かれ取締りの対象となっているみたいだ。月収一〇万円強のA君には毎月国民年金一四〇〇〇円、国保一〇〇〇〇、住民税年一〇〇〇〇円ほどの納付書が来ていると言う。……どうする? どうすることもない政治家。


複眼単眼

   
 猪瀬直樹、おまえもか!  政府税調の「専業主婦差別発言」

 「働く女の人は(人生に)前向きで、子どもを産みたい。働かないで、家でごろごろしている主婦が子どもを産まないんです」「今、パラサイトワイフというのができてきた。変な生命力のない人たちがたくさんお金を持ってぶらぶらしているんです」
 この発言の主は猪瀬直樹だった。 
 猪瀬はいつのまにやら自ら権力者の一部を構成する人間だとの「自覚」を強めているようだ。こんな低級な人物が政府税制調査会の委員をしたり、道路関係四公団民営化推進委員会委員をやったりして、小泉純一郎の「構造改革」のお先棒を担いでいるのだ。
 さる五月二七日の政府税調の基礎問題小委員会議事録が暴露された。会議は非公開だが、発言者の名を伏せてワイドショーなどで取り上げられ、民主党の議員も国会の質問で取り上げた。
 猪瀬は二五日、民放TVでこの発言が自分の発言だと認めた上で、委員の中に「女の人は家にいて、外に働きに行く必要はないというような発言をする人がいた」ので、「(自分は子育てや介護なども含めて)働いている主婦に対して思い入れがある」ので、「(そうでない人たちには)税制で優遇する必要はないだろうという話しだ」と説明した。
 しかし、猪瀬はこうした発言をした別の委員の名は明らかにしなかった。「女の人は家にいろ」式の発言をする者もとんでもない人物だが、会議では猪瀬の意見に追従して「働いている女性の法がちゃんとご飯を作るというデータもあるんです。専業主婦で時間がいっぱいある人こそ、コンビニで買ってきて発泡スチロールで食べさせちゃうというのが多いんです」と発言した委員もいたと報道されている。
 猪瀬の弁解もまったく弁解になっていない。こんな思想、感覚の持ち主で構成される政府税調委員っていったい何なんだ!
 かつて石原慎太郎都知事が「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババア」「女性が生殖能力を失っても生きているってのは、無駄で罪です」と言ったババア発言は有名だが、これに対しては一三一人の女性たちが提訴した。
 東京地裁は原告の請求を棄却したが、この人びとはいま「石原知事は発言の責任をとれ」と国際署名運動を提起し闘い続けている。
 あとからあとからこんな発言が飛び出す日本社会だからこそ、この闘いの意義が大きいのだと思う。 (T)