人民新報 ・ 第1182号<統合275(2005年10月15日)
  
                  目次

● 改憲のための国民投票法案阻止へ

● 郵政民営化法案に反対する

● 共謀罪を廃案へ

● 鉄建公団訴訟  東京地裁判決の意味

● 「憲法九条を世界へ」  大田九条の会を結成

● 中川・安倍らの政治圧力  NHK番組改竄裁判

● 普天間基地撤去 辺野古新基地阻止  沖合い案も陸上案も浅瀬案もダメだ

● 連合大会で会長選挙  憲法・運動方針をめぐる戦い

● 改憲のための国民投票法案の国会上程に反対する団体共同声明への賛同を

● パンフレット紹介  /  自民党・新憲法草案を読む〜改憲派のねらいと困難(「九条の会」発行)

● KODAMA  /  国会前 夏・秋

● せ ん り ゅ う  /  瑠 璃

● 複眼単眼  /  毎日新聞の世論調査と九条ネットワークの展望




改憲のための国民投票法案阻止へ

 憲法改悪にむけての動きが加速している。与党は特別国会のはじめに、「日本国憲法に関する調査特別委員会」を設置したが、ここで改憲のための「国民投票法案」が審議される。一〇月一二日に参院憲法調査会が開かれ、国民投票制度に関して各党が意見表明を行い、一三日には衆院憲法特別委員会で、国民投票制度に関する参考人質疑と自由討議を行がおこなわれる。
 また、自民党は改憲案を準備し、民主党も改憲案づくりの動きをはやめている。自民党の改憲案は、さまざまなものをちりばめていたが、九条に焦点はある。
 九条は第一項で「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とし、二項で「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」としているが、この第二項を削除・改変しようとしているのである。そして、「自衛軍」の保持を明記するというのだ。前原民主党新代表も同じ方向である。しかし、こうした中で、全国にぞくぞくと九条の会が結成されていることをはじめ、改憲阻止の運動も一段と広がりを見せいている。いまこそ、もっとも広範な改憲阻止の戦線構築が急がれている秋である。

国民投票法案反対で院内集会


 一〇月六日に、衆院第二議員会館で、5・3憲法集会実行委員会(憲法改悪阻止各界連絡会議、「憲法」を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、女性の憲法年連絡会、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会)主催による「憲法改悪・国民投票法案に反対する院内集会」が開かれ、一八〇人以上の人びとが参加した。
 5・3集会実行委員会の構成団体を代表して、キリスト者ネットの糸井玲子さんがあいさつ。
 憲法調査会の中山太郎会長は、憲法を国民とともに考えてきた、そして一番肝心な国際情勢では、タイミングよくイラク攻撃の一報が入った、と言った。私たちは改憲派と一緒に憲法を考えてきたわけでもないし、戦争がおこったことを喜ぶようなことは許せないことだ。
 五年間の憲法調査会では、与党などから一言も人間らしい言葉を聞いたことは無かった。調査特別委員会では、憲法改正のための国民投票法案が議題となる。法案そのものは来年の通常国会に出されるといわれるが、絶対に出させないように運動をしていかなければならない。
 つづいて、実行委員会の構成団体からの発言。
 女性の憲法年連絡会
 女性の憲法年連絡会は二〇〇一年に「二一世紀に輝け憲法」をスローガンに一年限りの運動として発足したが、憲法をめぐる危機的な状況からいまも続いている。
 シール、リーフレット、絵葉書、新聞広告などの活動で、憲法を守ることを行動で示していきたい。
 九条も二四条もけっして改悪を許してはならない。
 市民憲法調査会
 四月に衆参両院の憲法調査会の報告書が出されたが、まるで感想文集で、調査などしていないことがわかる内容のものだ。
調査予算について見ると参議院は一億六〇〇〇万円の予算だが、実際には七〇〇〇万円しか使っていない。
衆議院は予算三億円で使ったのは一億六〇〇〇万円程度だ。
みごとに調査されていないということがわかる数字だ。国民投票法案を出すというならもう一度、五年間の調査をやり直せと言いたい。
 市民連絡会
 総選挙で小泉圧勝だったが、これは小選挙区制のマジックで民意を反映したものではない。このようなことで改憲状況がつくられている。日本国憲法は私たち一人ひとりの宝物であり、世界の人のものでもある。世界の人が、誰でも、どこでも安心して生きられるように、九条を守り、世界に広げていこう。市民連絡会は、国民投票法案を阻止するための共同声明を呼びかけている。
 憲法改悪阻止各界連絡会議
 六五年前、大政翼賛会がつくられ、労組も自ら解体して合流した。労働運動にとって忌まわしい過去だ。このようなことを再びくりかえさないために、私たち全労連も闘っているが、連合のなかにも心ある労組が多い。憲法の闘いでは、単なる動員ではなく、国民一人ひとりの憲法意識の再構築が必要だ。
 連帯のあいさつは日本青年団協議会から
 日青協は戦前、侵略戦争に加担したが、それを反省し「青年よ、ふたたび銃を取るな」を合言葉に戦後の再出発があった。いま、アジア各地で軍事によらない国際貢献の活動をしている。私たちのやったアンケートでは青年の圧倒的多数は九条改憲に反対の結果が出ている。
 政党からは社民党から福島瑞穂党首(参議院議員)、近藤正道参議院議員、辻元清美衆議院議員が、共産党からは志位和夫委員長(衆議院議員)、笠井亮衆院議員、吉川春子参議院議員、仁比聡平参議院議員が参加し発言した。
 福島瑞穂社民党首(参議院議員)
 参院の質問では、集団的自衛権と憲法との関係についてはっきりさせていないではないか、と小泉首相に真っ向から憲法問題で問うた。社民党は、九条を変えたくない人はもちろん、とくに、九条を変えたいと思っている人と話をして、説得していきたいと思っている。そして、改憲のための国民投票法案を阻止するために全力をあげていきたい。国民投票法案をみれば、さまざまの意見表明を封殺するなど、国民主権のひとかけらもない。改憲派がどんなひどい憲法をつくろうとしているかがわかる。ここ三年ぐらいが辛抱のしどころだ。そうすれば違う時代が開けてくる。
 志位和夫共産党委員長(衆議院議員)
 小泉首相は、九条の一項はのこし、二項を変えて自衛軍を明記するだけだと言っているが、改憲の目的は、憲法の制約をとりはらって、アメリカとともに戦争をする国をつくることだ。国民投票法案には九条をかえるという邪悪な狙いがある。多数派を形成し、九条を守りぬくため、ともにがんばろう。
 日本山妙法寺、国公労連、日本YWCAからもアピールが行われた。


郵政民営化法案に反対する

 小泉内閣は、この特別国会で、郵政民営化法案を最優先課題として可決・成立させようとしている。郵政民営化は、公共サービス・地方切捨て、外資・大資本のための民営化である。小泉は、郵政につづいて、公務員にたいする攻撃、そして年金・医療・福祉の切捨て、大増税の攻撃をかけてくる。

 郵政民営化法案は、さる八月に参議院において、全国の郵便ネットワ―クを守れの声を背景にして否決された。だが小泉「劇場」選挙で、社民党、共産党は議席を維持したものの、民主党は大幅に議席を減らし、右への流れが加速した。松下政経塾出身の前原誠司を新代表に選んだ民主党は対案方式に後退し、野田聖子をはじめ郵政民営化反対で支持票を集め当選してきたにもかかわらず、自民党内での延命を目論んで賛成にまわる公約裏切り議員がでるなどして、一一日に民営化法案は衆議院を通過した。
 この日、東京株式市場の日経平均は三二八円上昇、今年最大の上げ幅となった。外国人投資家主導で実現したこの日の相場は、郵政民営化で、外資・大資本にとって儲けの多い局面が開かれることを意味している。
郵政民営化反対の闘いをやりぬくことは、郵政内の労働者の生活と権利を守る上でも、また今後の様々な形で吹き荒れる小泉構造改革に抗する運動の前途を考えるうえでもきわめて重要な意義をもつものである。

 一〇月六日午前一一時半、郵政労働者ユニオンと郵政民営化を監視する市民ネットワ―クは国会前座り込み闘争をおこなった。
 午後一時からは、全労協、東京全労協とともに、郵政民営化反対国会前集会が行われた。
 藤崎良三全労協議長があいさつ。
 小泉与党は国会の三分の二を超える議席を占め、先の国会で廃案になった多くの悪法を再提出し、成立させようとしている。郵政民営化での与党案も民主党案も、いずれも会社分割・民営化だ。こうしたものを認めるわけにはいかない。郵政民営化をはじめとする小泉構造改革攻撃に反対して闘いぬこう。

 郵政民営化を突破口にした小泉構造改革がもたらす日本社会の二極分化、荒廃の中で反撃の客観条件は形成される。それはブッシュのイラク戦争への加担、在日米軍の基地負担増、アジアからの孤立などの条件とあいまって、小泉政治の破綻の時をもたらすものとなるだろう。


共謀罪を廃案へ

 一〇月四日、政府は、共謀罪新設法案を閣議決定し、衆議院に送った。共謀罪は、「法律違反」について行おうと話し合い、「合意」しただけで、その準備さえ始めなくとも処罰されるというもので、対象となる法律違反は、殺人、誘拐などの重大犯罪のみでなく、万引きを含む窃盗罪、消費税法から道交法、水道法、公職選挙法まで実に広範で、六〇〇種類をこえる。市民生活のすみずみにまで関わり、不当な弾圧の拡大につかわれるものとなる。これまで、この法案は、市民の広がる不安の思いや市民運動・国会議員などの強い反対の闘いでに二度も廃案になっている。しかし、今回の特別国会では、一ヶ月程度の国会審議で成立させられようとしている。こうした横暴を決して許さず、完全廃案にむけて闘わなければならない。

 一〇月四日、衆議院第二議員会館で、共謀罪に反対する市民の集い実行委員会の主催で「話し合うことが罪になる!!共謀罪の新設に反対する市民と議員の集い」が開かれ、一〇〇人を超える参加者があった。
 はじめに、最近訪米して帰国した山下幸夫弁護士が、アメリカでの共謀罪適用の実態を報告した。
 アメリカでは、刑法が適用されるとともに、共謀罪が加えられて、罪が重くされる。日本政府はアメリカ式の共謀罪を導入しようとしている。共謀罪を許すかどうかは、日本がどうなっていくのかを問うものだ。
 国会議員も参加して共謀罪法案阻止の決意を表明した。社民党からは福島瑞穂参議院議員、保坂展人衆議院議員、辻本清美衆議院議員、共産党からは井上哲士参議院議員、民主党から簗瀬進参議院議員、松岡徹参議院議員が参加した。
 福島瑞穂参議院議員(社民党)。
 小泉与党の圧勝で一番喜んでいるのは霞ヶ関の官僚だ。いままでたまっていた法案が滞貨一掃で成立させられるからだ。共謀罪もそうだ。この法案については、与党の議員にも慎重な人もいるし、法務省の中にも、この法案は筋が悪いと言っている人がいる。だが、なにより大事なのは「燎原の火」のように反対運動を全国で巻き起こしていくことだ。一人でも多くの人を反対派にするために説得を強めよう。
 井上哲士参議院議員(共産党)
 政府は、廃案になったものとそっくりなものを提案してきている。まさにゾンビのような法案だ。この間、NHKなどでも共謀罪がディベート番組でながされるようになっている。政府・与党は、なるべく知られないようにしたいのだから、これなどで、この法案の危険性がひろく知られてくるようになった。
 簗瀬進参議院議員(民主党)
 憲法「改正」も一気呵成の状況になりつつある。すべての人にとって一番大事なのは「内心の自由」だ。これがすべての出発点だ。民主党も法務部門は共謀罪阻止シフトを敷いて頑張っていきたい。
 日本弁護士連合会の中村順英副会長も発言。
 「安心と安全」を確保する、犯罪を無くすため、として、監視カメラが各地に設置され、日本は民主主義のない監視社会になってきている。日弁連は共謀罪の成立に反対して講演会など各種の取り組みをおこなっている。この間、共謀罪の問題がマスメディアでも報道されるようになってきたが、これは運動の成果だ。
 日本ペンクラブ言論表現委員の篠田博之さん(月刊『創』編集長)の発言。
 この問題についての作家・ジャーナリストの動きは遅れている。しかし、みんなが危機感を持っている。
 さいごに市民団体からの発言。「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NET Japan)、許すな!憲法改悪・市民連絡会、日本国民救援会、反住基ネット連絡会、日本消費者連盟、ネットワーク反監視プロジェクトなどからアピールがなされた。

 現在取り組まれている「話し合うことが罪になる共謀罪の新設に反対する市民団体共同声明」の賛同団体を増やし、危険な共謀罪法案の阻止に向けて運動を拡大・強化していこう。


鉄建公団訴訟  東京地裁判決の意味

 一〇月六日、中野区立勤労福祉会館で「国鉄民営化問題研究会(第六回)」が開かれ、鉄建公団弁護士団事務局長の萩尾健太弁護士が「9・15鉄建公団判決にいたる国鉄闘争の労働委員会・裁判闘争の歴史を検証する」と題して次のように報告した。
 九月一五日、東京地裁民事三六部(難波裁判長)は、一九八七年の国鉄分割民営化の際に差別されJRに採用されなかった国労闘争団員と遺族ら二九七名が国鉄清算事業団を承継した鉄道建設公団(現独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構)に対して解雇無効確認・賃金相当損害金・慰謝料・名誉回復措置を請求した「鉄建公団訴訟」で、原告団の請求を一定程度認める判決を言い渡したが、それは、裁判所として初めて採用差別の不当労働行為を認めたものだった。また、裁判所は、二〇〇三年一二月二二日の最高裁判決時が「時効消滅の起算点である」と認め、被告・鉄建公団らの時効の主張を退けた。そして差別されたこと自体による苦痛、原告らが正当な評価を受けるという期待権とJRに採用されるべき期待権の侵害を認めて期待権としては比較的高額な慰謝料一人五〇〇万円の支払を命じた。これは利息が付いて八八六万円に上る。このことにより、原告らは不当労働行為の被害者であったことが明らかとなり、原告らの一八年間の闘いが正しかったことを証明した。原告団はこの判決が名誉回復の一助になると確信している。JRに法的責任なしを前提とする「四党合意」では、自民党の担当者甘利明は、解決水準は「ゼロ+α」だと述べ、それは八〇万円だと噂されていた。それに比べれば、実に一一倍であり、「闘ってこそ勝ち取れる」との原告団の路線の正しさを明らかにした。政府は、「所属労働組合等による差別があってはならない」との橋本運輸大臣の答弁、同旨の参議院附帯決議に違反する事実があったことが認められた。政府は責任追及を免れない。
 先の総選挙で自民党が圧勝したもとで、郵政分割民営化、さらに政府系金融機関の民営化、国家公務員の大幅削減、地方自治体リストラと民営化・公務員への総攻撃がなされようとしている今日、民営化とリストラの原点である国鉄分割民営化に際して採用差別があったことを司法が初めて認定した意義は大きい。
 しかし、判決は採用差別を認めながらも、差別がなければ全員がJRに採用されたとの立証がなされていないとして、原告らが主張した挙証責任の転換や総合的因果関係の主張を無視し、賃金・年金相当損害金の請求を認めなかった。そのため、賠償額は低額にとどまった。
 さらに、不当労働行為を認めたにもかかわらず、解雇無効を認めず、恣意確認を否定した。
 原告らのJR不採用からの一八年間の苦難は口に出して言いあらわせるものではなく、この判決は到底一八年間の償いになるものではない。
 原告ら及びその家族は、就職差別、結婚差別などあらゆる差別、偏見と闘い、苦難の道を歩んできた。一八年の間に一〇四七名の仲間のうち三四名が亡くなり、この裁判を提訴してからも原告団の一名が判決を待たずに亡くなった。年長者にとって年金資格回復は必須である。家族も含めて味わされた「不適格者」の屈辱をはらすため名誉を回復し、鉄建公団に償って欲しい、そして国労の再建をねがっている。
 今回の判決は決してこの苦難の一八年間を償うに足りるものではないが、判決で不当労働行為の事実が認められたことにより、原告団の意気は軒昂である。被告は判決日の翌日に控訴し、原告らは九月二七日に控訴した。今後、闘いの場は控訴審に移るが、第一審のとき以上に団結を強め、判決の問題点を覆し、被告の鉄運輸機構、さらにはJR各社への職場復帰を要求していく。
 さる四月二五日の福知山線尼崎駅付近の事故は、まさに分割民営化がもたらせた必然的な事故である。
 なお、この判決の影響で未提訴の闘争団員からも提訴希望が出されている。


「憲法九条を世界へ」  大田九条の会を結成

 憲法九条にとって危機的状況が一段と進んでいる。総選挙での小泉自民党の「大勝利」を受け、衆院での「憲法調査特別委員会」の設置や「国民投票法」の制定へ向け改憲への動きが加逮しているが、反対運動も各地で取り組まれている。
 一〇月六日、東京・大田区において「憲法九条を世界へ・大田九条の会結成集会」が、参加者約一三〇〇名で開催された。会場は、続々と集まってくる参加者で熱気あふれるものとなった。
 集会は、バンドの演奏、呼びかけ人挨拶に続いて、ジェームス三木さん(脚本家)の「憲法について」と題する講演、そして小森陽一さん(「九条の会」事務局長)をコーディネーターに、吉武輝子さん(作家・評論家)とジュームス三木さんの三人による鼎談「今、憲法を語り合う」とブログラムは進んだ。
 ジュームス三木さんは、講演、鼎談を通じて「戦争そのものは民主主義に反する。国益を通すのではなく、文化こそが唯一対立を生まない世界平和への道」「一〇〇年後の事を考えると心配だ。私たちは歴史の中継ランナーとして、子孫に戦争の無い国、戦争をしない国、憲法を変えない国を伝えていきたい」と相手に伝える言葉の大切さを訴えながら、脚本家としての裏話などもふくめユーモアを交えて語った。
 吉武輝子さんは、憲法二四条の制定に大きくかかわったベアテ・シロタ・ゴードンさんを題材にしたジェームス三木さんの作品「真珠の首飾り」を紹介しながら話を進めた。「二四条は男女平等とともに個人の尊厳を謳っている。私は私として生きている、個人としての誇りを持つことの大切さ、うれしさを持ち続けたい」「九条が前提としてなければ、個人の尊厳や人権も破壊されてしまう」「改憲派は二四条を『目の上のたんこぶ』だと考えているが、優雅で、美しく、楽しい運動を創っていこう」と述べた。
 小森陽一さんは、二人の話を受けて、歴史の語り部、歴史の中継ランナーとして、小泉やブッシュのような二者択一、イメージによる洗脳に対して「嫌」という言葉を獲得し、個人の尊厳をかけて嫌なものは嫌と言っていこうと語った。
 集会は合唱や大田区内の九条の会の紹介が行われ、最後に参加者の大きな拍手で「大田九条の会アピール」と結成宣言を確認して集会を終えた。
 「大田九条の会」は、井上ひさし氏をはじめ九人による「九条の会」アピールに応えて、大田の地で「憲法九条を守ろう」の一点で、立場の違いを越えて手をつなぎ合い、共同の運動を広げよう、大田区内の「憲法九条を守る」職場・地城のさまざまな「会」や「団体」をつなぐネットワークをめざそうという主旨で、結成の準備が進められこの日の結成集会が実現した。多くの仲間の結集で大田での改憲反対の運動はスタートした。厳しい状況下ではあるが、さらに運動の輪を広げていこうと確認しあった意義ある集会となった。  (東京南部通信員)


中川・安倍らの政治圧力  NHK番組改竄裁判

 一〇月三日、東京高裁一〇一号法廷で、自民党の中川昭一、安倍晋三らが圧力をかけてNHK番組「ETV2001」(女性国際戦犯法廷)を改変させた問題の裁判の第六回口頭弁論があり、同日夕刻には、渋谷・東京ウィメンズプラザで報告集会が開かれた。
 ジャーナリストの魚住昭さんが「明らかになった政治介入」と題して講演。
 飯田正剛弁護士と大沼和子弁護士が弁護団報告。
 今回、裁判長はじめ裁判官が入れ替わったが、これから、二人の証人調べを行うことになった。一人は自民党の政治家と会った松尾武元NHK放送局長で一二月五日に、もう一人は直接番組制作にかかわった長井暁チーフプロデューサーで、一二月二一日に、ともに一番大きな一〇一法廷で開かれる。
 番組はVAWW―NET側との話し合いの中でつくられたにもかかわらず、被告のNHK側は、「そもそも放送するとの約束をしておらず、信頼利益の侵害の故意を有することはありえない」と主張している。しかし、原告側はNHKが信頼を裏切ったことは不法行為にあたるとしているのであり、約束の有無は関係ない。信頼侵害行為が故意または過失によって行われれば不法行為は成立するのである。NHKは自主的な判断ではなく政治家の圧力に屈したからこそ番組の「趣旨」を変更する改変を行ったのであり、そこでは原告らの信頼を裏切ることを十分認識していたのであり、そのことは、NHKは故意に原告らの信頼(期待)利益を侵害したのである。


普天間基地撤去 辺野古新基地阻止

        
  沖合い案も陸上案も浅瀬案もダメだ

防衛庁・施設庁に抗議

 在日米軍再編の動きのなかで、一〇月一〇日、辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会による月曜日定例の防衛庁・防衛施設庁前抗議行動が行われた。
 辺野古からの電話メッセージで、平和市民連絡会の当山栄さんは、今日は公休日で何ら相手の動きはなかったが、われわれとしては、米軍基地の県内移設をやろうという日米政府の動きに対し力強く打ち返していきたい、一一月に万単位の県民大会を予定している、ともにがんばろうと、報告した。
 防衛庁前集会では、普天間基地を撤去せよ、辺野古新基地阻止のシュプレヒコールをあげた。平和憲法を守り、日米安保と軍事基地をなくす会・東京から防衛庁長官・防衛施設庁長官へ、「私たちは、あくまで沖縄からのすべての軍事基地の縮小・撤去を求めます。一切の軍事基地の新設を認めません。海兵隊をはじめ米軍の撤退を求めます。そして日本政府が、核も軍隊もないアジアの実現、武力によらない協力と共生のアジアをつくるために全力をあげることを強く求めます」との申入れを行った。

在日米軍再編協議

 辺野古沖新基地建設にむけたボーリング調査は、現地のオジ―、オバーを中心にし全国から支援が駆けつけた粘り強い反対運動で阻止しつづけている。那覇防衛施設局は、台風の接近を口実に調査のための単管やぐらを撤去した。そして、日本政府は、九月末の日米審議官級協議でも、環境への配慮などから米軍キャンプ・シュワブ(沖縄県名護市)施設内の「陸上案」をアメリカ側に提示した。これに対し、米側はキャンプ・シュワブの基地機能に障害が出るとして拒否した。普天間基地・辺野古新基地建設をめぐっては日米間には大きな意見の相違があり、一〇月六日には、一〇月後半に予定されていたラムズフェルド米国防長官の来日が見送られることが決まった。日本政府関係者は、その理由として米軍普天間飛行場の移転先など在日米軍再編協議の進展が見込めないことをあげた。
 日米両政府の当初の予定では、ラムズフェルド長官の来日時に米軍再編協議の中間報告をとりまとめ、一一月中旬だといわれるブッシュ大統領来日時の日米首脳会談で、その成果を確認するとしていた。
 政府は、一〇月九日に、こうしたアメリカ側の意向に応じて、「辺野古(名護市)浅瀬案」の受け入れに向けて動き出した。辺野古浅瀬案は、建設予定地を米軍キャンプ・シュワブ寄りの浅瀬とし、全長約一五〇〇メートル(滑走路約一三〇〇メートル)としている。これは、地元経済界などでつくる沖縄県防衛協会北部支部が今年六月に作成したものだ。これを、アメリカは、地元自身が提示した計画だと評価し、この方向での新基地建設を提案してきた。地元の経済界や保守政界は、受け入れの対応をとろうとしている。沖縄県議会与野党七会派は、普天間飛行場の早期返還と目に見える形の負担軽減を求めることで一致したが、自民党は、県外移転が日米協議の対象になっていないとし、岸本建男名護市長は浅瀬案を容認するとしている。革新野党や公明党県民会議などの会派はキャンプ・シュワブの陸上案と縮小案(浅瀬案)について反対し、「県外移転」を強調している。

沖縄へさらなる連帯を

 浅瀬案も、埋め立てによる自然破壊ジュゴンの生息に悪影響をあたえ、サンゴ礁の生態系破壊などは現計画と同じだ。辺野古沖計画を挫折させた沖縄の闘いは、辺野古浅瀬案に対しても闘う方針である。
 日経新聞一〇月九日の社説は、この問題をとりあげている。「浅瀬案にせよ、辺野古沖案にせよ、心配されるのは『海の三里塚闘争』と呼ばれるような過激な妨害活動であり、反対派を説得する作業は本来政治家の仕事となる。……海であれ陸であれ、いったん決定されれば、違法な妨害活動を放置はできない。警察、海上保安庁による適切な対応が必要になる。その判断は首相の責任になる」。沖縄の闘いは、日米政府を追い込んでいる。「警察、海上保安庁による適切な対応」とは暴力的な圧殺行動にほかならない。日経社説の主張するような事態を許さないためにも、沖縄現地の闘いを包む全国的な反対運動を拡大していこう。政府は辺野古沖新基地建設は断念し、浅瀬案で調整しようとしているが、普天間基地撤去、辺野古新基地建設阻止の闘いをさらに推し進めよう。


連合大会で会長選挙

    
憲法・運動方針をめぐる戦い

 一〇月六日、二日間の日程で開かれていた連合第九回定期大会が終わった。笹森清会長(電力総連出身)が退任し久々の選挙となった。新会長には高木剛・UIゼンセン同盟会長は三百二十三票で当選したが、対抗して立候補した鴨桃代・全国ユニオン会長が予想を大きく上回る百七票を獲得することになった(なお、古賀伸明・電機連合委員長が新事務局長となった)。会長選挙での鴨さんの得票は、連合の運動方針をめぐる対立を反映したものでもあった。

 運動方針をめぐる討論では、まさに小泉政権下で加速する新自由主義的な構造改革による労働者攻撃にどう対応するかが議論になったが、同時に憲法をめぐる対立もはげしいものとなった。
 連合大会では、「国の基本政策に関する連合の見解」案の取り扱いについてがひとつの焦点だった。だが、意見の相違が大きく、結局、採決されずに継続審議とすることになった。
 連合には憲法をめぐってはさまざまな意見の違いがある。連合傘下の組合が総じて右傾化し、「外敵」による自衛権の行使を前提に「安全保障基本法」のようなものの制定を指向する組合指導部が多い。とはいっても、旧同盟、旧総評などのながれの違いも依然としてあり、今回の「見解案」でも、「安全保障基本法」は必要だが、九条「改正」すべしという意見と九条の改正はあえて行わない、という両論併記となっていた。この見解案に対して、連合構成組織から一四産別が意見を提出した。
 九条改憲の立場を突出させているのは新会長の出身産別であるUIゼンセン同盟であり、先月の定期大会でそれを明記する中間報告を出している。新事務局長の電機連合や前会長の電力総連などもほぼ同様の見解を打ち出している。一方、自治労は九条堅持をするが連合としては「さまざまな考え・立場の勤労者を組織する大衆団体」であるとして「拙速な結論」を出すことに反対視を表明している。日教組は、連合が九条「改正」に賛成することには反対だとしている。私鉄総連、全国一般なども再検討を求めている。
 委員長が連合会長選に出馬した全国ユニオンは、見解案で併記された二つの方法とも「憲法九条二項にある『戦力の不保持』は事実上、消え去る」として、「いずれも反対」の態度を表明している。
 会長選は事実上憲法九条改悪を認めるのか否かの戦いでもあった。労働戦線の右翼的再編の中で誕生した連合だが、その大会でも、改憲反対(そして中小未組織労働者の組織化による労働運動の活性化など)を主張する候補者が多くの代議員の支持を獲得したことの意義は大きい。連合の運動にも、憲法問題をめぐって大きな亀裂を持ち込み、九条改憲阻止の陣営を拡大していくことが急務である。


改憲のための国民投票法案の国会上程に反対する団体共同声明への賛同を

 総選挙での自民党「圧勝」、前原民主党の発足によって、憲法改悪にむかう動きが加速している。改憲派は、改憲のための手続き法案(「憲法改正国民投票法」案)を早期に成立させようとする策動を強め、来年の通常国会に上程するとしている。この「憲法改正国民投票法」案を阻止するための闘いはきわめて重要だ。
 「許すな!憲法改悪・市民連絡会」は、共同声明=「憲法改悪のための手続き法案(「憲法改正国民投票法」案)の国会上程に反対します」への賛同を全国の有志諸団体に呼びかけている。多くの団体賛同をあつめ、改憲阻止のためのできるかぎり大きな統一を実現することが求められている。(編集部)


団体共同声明への賛同のお願い

「許すな!憲法改悪・市民連絡会」は、全国の有志諸団体のみなさんに以下の緊急共同声明への連署をお願い致します。賛同は団体(諸団体の上部団体や支部など、それぞれ結構です)にかぎらせて頂きます。個人については別に署名運動を提起しております。なお、この声明の主旨を考慮し、おそれ入りますが政党と政党の支部の賛同はご遠慮下さいますようお願いします。声明は来年の通常国会冒頭に発表し、民主党をはじめ各政党に届けたいと思います。転送、転載などのご協力で、ひとつでも多くの団体が連署してくださるよう、ご協力を御願い致します。

締切は二〇〇六年一月の国会開会日の前日までとします。
連署の意思表明は団体名、連絡先、FAX、メールアドレスなどを書いたものを、FAX、郵便、メールなどで下記までお送りください。

許すな!憲法改悪・市民連絡会
東京都千代田区三崎町二−二一ー六ー三〇一
TEL〇三−三二二一−四六六八 FAX〇三−三二二一−二五五八
kenpou@vc-net.ne.jp

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団体共同声明=憲法改悪のための手続き法案(「憲法改正国民投票法」案)の国会上程に反対します


小泉首相と自民党などは郵政民営化をかかげて争った総選挙で与党が圧勝したことから、憲法第九条を変えて「自衛軍」の保持を明記し、そのことで集団的自衛権の行使をできる憲法にしようとしています。

 そのため国会に憲法特別委員会を設置し、憲法改悪のための手続き法案(憲法改正国民投票法案)についての議論を始め、二〇〇六年の通常国会への法案提出をめざしています。

 現在、自公両党と野党民主党の間で法案の協議に入っていると伝えられています。

 法案としては、すでに改憲議連(憲法調査推進議員連盟)によって二〇〇一年秋に作られた「憲法改正国民投票法案」を基礎に二〇〇四年末に自公与党が作成した「日本国憲法改正国民投票法案骨子」(案)があります。これに対して民主党も二〇〇五年春に「憲法改正国民投票法制に係る主な論点」を発表し、自公案に批判的な立場を表明しました。

 自公案はいつでも都合よく憲法改悪ができるようにするための危険な法案です。その主な問題点を要約して指摘すると、与党の「法案骨子」は、@複数条項の改憲案の場合、逐条で投票するか、一括で投票するかを明らかにしていない(その実、自民党は一括投票を狙っている)、A国民投票の有権者資格を「公選法通り」とすることで、一八歳(または一五歳)以上の若者や、定住外国人などの投票権を排除している、B成立のための「過半数規定」を有効投票の過半数として、考えられるかぎり狭めているし、投票率の最低限を示す成立規定もない、C国民投票運動の期日は三〇日以上九〇日以内と極めて短い、D国民投票運動について多岐にわたる制限や刑罰規定があり、公務員、教員、外国人などを運動から排除し、また報道の大幅な規制条項を設けている、等々です。

 今回の総選挙では、小選挙区制という民意を正確に反映しないいびつな選挙制度の下で、自民党の小選挙区全候補は四七.八%しか得票していないにもかかわらず、六一.七%の議席を占めました。この小選挙区制と同様に自民党は、今度は改憲のための国民投票で、少ない支持でも憲法改悪ができるような手続き法案を作ろうとしているのです。それだけに「手続き法案」といえども国民投票の結果を左右することになる重大な法案であり、絶対に軽視できないものです。

 すでに中山太郎憲法特別委員会長は「自公民三党の合意を得て、来年の通常国会での国民投票法案の提出をめざす」と語っています。そのため自民党も民主党執行部の立場に配慮して、与党案にあるメディア規制条項の削除をほのめかしており、それらの駆け引きがおこなわれつつあります。しかし、メディア規制の重大性もさることながら、その他の問題も極めて重大です。自民党のこの程度の譲歩で法案が作成されてしまったら、悔いを千載に残すことになります。

 この間、さまざまなメディアによって行われてきた各種の世論調査でも示されているように、多くの人びとがいま九条の改憲を望んでいないことは明らかです。この点で永田町と世論の間には大きな乖離があり、憲法「改正」について、主権者市民の間の合意はいまだまったく作られていません。このような中で国会の憲法特別委員会が、拙速に憲法「改正」国民投票法案を審議しようとしていることは民意から大きく遊離したもので、不当としかいいようがありません。

 私たちは二一世紀をブッシュ米国大統領がいうような「新しい戦争の時代」にしたくはありませんし、日本政府がこれに協力することを絶対に許しません。二一世紀を日本国憲法が掲げる平和と人権、民主の理念が全世界で花開く時代にしたいと願っています。私たちはあきらめることなく、この理想の実現に向かって全世界の人びととともに歩み続けたいと願っています。いまこそ、とりわけ第九条を堅持し、世界と日本の平和のために生かすことが必要です。

 この憲法の理念をねじ曲げ、ゆがめ、破壊するための「憲法改悪のための手続き法」(憲法改正国民投票法案)は要りません。

 以上、各団体の連名をもって声明します。

二〇〇六年一月
    (以下連名)


パンフレット紹介

  
 自民党・新憲法草案を読む〜改憲派のねらいと困難

                       
 「九条の会」発行

 十一月二二日の自民党創立五〇周年記念大会で、同党の新憲法草案を発表し、改憲の動きにドライブをかけようとする動きが進んでいる。
 すでに四月四日に自民党新憲法起草委員会の試案要綱がだされ、七月七日に新憲法第一次素案、八月一日に新憲法草案第一次案が発表された。その後も、一〇月七日には前文原案がマスコミで流されるなど、改憲の雰囲気作りがすすめられているし、大会で発表される草案は実質的には一〇月二二日に公表される手はずになっている。
 一方、民主党の新代表に選出された前原誠司氏は憲法第九条二項の削除と自衛権の明記を主張するなど、自民党の改憲への動きに対応する構えだ。国会では衆議院に憲法特別委員会が設置され、参議院の憲法調査会の再開と合わせて、すでに国民投票法案についての議論が始まった。
 総選挙を経て、永田町はあたかも改憲翼賛国会の様相を示し始めた。野党に配慮して、独自の主張は抑制気味だった自民党の中でも、同党の改憲草案で「国防軍」と明記すべきだとか、「家庭の保護の責務」を明記すべきだとの意見が出始め、前文では「独立をまもる自衛権」「天皇は国民統合の象徴」「国を愛する」などの主張が盛り込まれる流れになってきた。
 こうした改憲の流れに対して、国会の外では「九条の会」が健闘している。昨年六月に結成されて以来、全国では三〇〇〇を超える「九条の会」が結成され、参加している層も急速に広がっている。思想信条や政治的な立場のちがいを超えて結集した「九条の会」運動は、従来の運動になかった新鮮さを持ち、期待を集めている。
 「九条の会」は全国各地で講演会などを開催しながら、事務局主催の学習会を開くなどして、それらをパンフレット化し、憲法問題の学習なども進めている。
 そうした一環で、このほど「九条の会」事務局は「自民党・新憲法草案を読む〜改憲派のねらいと困難」というパンフレットを発行した。
 このパンフレットは自民党の改憲第一次素案がでた翌々日の七月九日に開催された「九条の会」学習会で、同事務局の渡辺治一橋大教授が講演したものを基にして、その後、八月一日に自民党が発表した第一次案をも視野に入れ、渡辺氏が大幅に手を入れたもの。
 パンフレットとはいうものの、A6版七五頁という大部で、自民党案に対する全面的な批判を試みた力作である。
 内容は目次を紹介すると、はじめに/自民党改憲案の公表と総選挙、一/なぜ自民党はつぎつぎに改憲草案を打ち出したのか、二/現代改憲の二つの狙いと改憲案の特徴、三/「議論の整理」から「新憲法案」まで、四/自民党新憲法案を読む、五/改憲策動の困難と今後、小括/改憲策動といかに闘うか、で構成され、最後に自民党の新憲法第一次案の主要部分が添付されている。
 渡辺氏の憲法論の特徴は、戦争のできる国づくりのための改憲の狙いを全面的に解明しつつ、あわせてそれと小泉構造改革との関連を立証するところにあり、また運動論として改憲派の困難の側面を指摘し、改憲反対の闘いの可能性を明らかにしようと試みるところにある。
 渡辺氏は本書で「朝日新聞でもNHKでも、国民のほぼ半数の人たちが改憲に反対しているんです。九条改憲に反対している。六〇〇〇万人投票した人の中で考えると、おそらく九条の改憲に反対している人は三〇〇〇万人近くいるはずなんです。ということは、(社共に投票した七〇〇万人を除けば)二三〇〇万人の人たちは、九条改憲に反対の気持ちを持ちながら、改憲を主張したり、容認している自民党とか民主党とかに投票していると考えられます。この人たちと私たちが一緒に手を組まなければ九条改憲は阻止することができないし、一緒に手を組むことはできるということを、私は強調したい。そのためには自民党や民主党を支持している広範な人びとと一緒になって、九条改憲反対の一点で、共同の取り組みを押し進めていくことを考えていかねばならない」という。まったく同感である。
 渡辺氏が強調する九条改憲反対の統一戦線論は当面する私たちの課題を明確に描いていると思われる。一読に値するパンフレットである。   発行・九条の会  五〇〇円  申し込みは FAX〇三(三二二一)五〇七六
(T)


KODAMA

   
 国会前 夏・秋

 九月三〇日、障害者「自立支援」法案が閣議決定され特別国会に提出され、五日に参議院で審議がはじまった。これは、福祉や医療サービスを利用するさいに原則一割負担を障害者・障害児に求める法案で、先の国会の解散で審議未了のまま廃案となったものだが、それとまったく同じ内容で法の施行日を一部遅らせた(当初二〇〇六年一月一日としていた法の施行の一部を、同四月一日と変更した)だけのもので再提出された。参議院で否決となった郵政法案とまったく同じ「ゾンビ」法案だ。
 この暑い夏、郵政労働者ユニオン・郵政民営化監視市民ネットワークなどは国会前で座り込みなどの闘いに取り組んだが、隣にはいつも、障害者「自立」支援法案を阻止するために全国から集まった大勢の障害者と支援者の姿があり、おたがいにがんばろうという連帯の空気が流れていた。小泉「圧勝」後の特別国会でも、郵政民営化反対の闘いも「自立」支援法案阻止の闘いも再開され、またその他の闘いもあり、急速に冷え込んできた秋の国会前ではさまざまな取り組みが展開され、それぞれに心強いものがある。
 「自立支援」法案では、これまでの支援費制度(所得に応じた低い自己負担で福祉を利用できる)をやめて、障害が重くなるほど高い自己負担を課す「応益負担」として、当面一割負担を導入するとしている。政府与党は負担の上限が設けるからそれほどの負担にはならないなどと答弁している。だが、「応益負担」とは、障害が重い人ほど負担も重くなるということで、その結果、受診抑制をまねくことは必至であり、小泉の構造改革・小さな政府論による障害者切捨てそのものである。
 現在、日本の財政赤字は天文学的な数字となっているが,小泉は公務員を減らすことがその解決であるかのように、大衆的な「マジック」を行っている。官から民へで小さな政府をつくる。それが、郵政民営化であり、障害者への負担増であり、大増税だ。労働者、市民にその犠牲をしわ寄せして、「財政健全化」だという。その一方で、軍事・警察などには大盤振る舞いだ。小泉の新自由主義的な構造改革攻撃は、多くの人びとの怒りを呼び起こしている。大きな連帯で反撃の力を作り出していこう。 (H)


 せ ん り ゅ う

  戦争に東西南北NEWSの眼

  前線の兵士もあなたと同じ人ですが

  武力問う命の値の薄さゆえ

  戦争は殺し殺して憎悪だけ

  非戦論鍋はぐつぐつ煮つまれり

  憎しみを握り散らしてさらとなる

  ひとつむき二つむいても女でいたい

  人が好き泣いたり笑ったりする人が好き

            瑠 璃

 ○ 9・11のあとブッシュ大統領はテロを撲滅するための戦争をはじめたが、テロはなくなるどころか増えている。
 女川柳家、画家でもある瑠璃さんの想いの一端です。 (ゝ史)


複眼単眼

 
  毎日新聞の世論調査と九条ネットワークの展望

 「毎日新聞」が九月二日から四日にかけて行った全国世論調査の結果を発表した。
 面接調査で、四五五〇人に実施して、二四一八人から回答を得たもの。
 それによると九条改憲に反対した人が六二%で、「変えるべきだ」という意見は三〇%、実に二倍以上の差が出ている。女性は六八%が反対で、男性は五七%。二〇代の反対は七〇%もあった。三〇代、五〇代、七〇代で反対が六〇%を超え、賛成は四〇代の三六%が最高だ。
 さらにいえば、ひとつ不思議な数字がある。九条改憲賛成派の中で、「一項だけかえよ」というのが十三%ある。二項の戦力不保持、交戦権否定はそのままというのだから、これは九条の不戦非武装厳守を明確にするという意見以外に考えられない。
 要するに七・五四%の人は九条をよりいっそう厳格にするための改憲なのだ。そうすると、九条の精神の堅持派は約七〇%だったことになる。
 憲法改正に賛成は、五八%、反対は三四%、男性は賛成が六二%、女性は五四%。反対は男性が三三%、女性が三六%。三〇、四〇代で改憲賛成は六〇%を超えた。
 これは一般に他のメディアの憲法に関する世論調査の結果と変わっているわけではないが、九月十一日の衆院選挙の約一週間前の調査だから特におもしろいと思う次第だ。自民党の大勝ち、民主に改憲派の前原代表が登場したことと、こうした世論調査の結果について、その差異を考えてみる必要がある。
 護憲派の社民党と共産党をあわせて得票率は比例区で十三%だ。しかし九条改憲に賛成する人は自公民に投票した人びとのうちで半数に満たないということだ。
 反対に、九条改憲に反対する人が自公民に投票した人びとのなかで半数以上いるということだ。
 筆者の持論ではあるが、九条改憲に反対する統一戦線の成功の可能性、条件として、このことがある。九条改憲反対派は社民党、共産党だけではない。それどころか、この両党を支持しない人びとこそ、九条改憲反対の多数派なのだ。
 従来の護憲派がこの問題を正しく理解し、セクト主義ではなく、その従来の運動の限界から脱皮することができるかどうか、成否のカギはここにある。
 今、全国で急速に拡大しつつある「九条の会」の意義とは本来、そうしたものだろう。だからこそ「九条の会」は大きな可能性を持っているのではないか。文字通り、思想信条立場のちがいを超えて、九条改憲阻止の一点で、広範なネットワークをつくり出すことができるかどうか、議会唯一主義がなかなか展望を切り開けないでいる中で、この九条ネットワーク論は大きな可能性をもっている。
 九条をめぐるこうした本格的な組織戦で、改憲反対派が勝利をおさめるなら、政治的な大再編期が到来するだろう。この事業に挑戦する意思が問われている。   (T)