人民新報 ・ 第1184号<統合277号>(2005年11月5日)
目次
● ブッシュ・小泉の戦争政策のための在日米軍再編 全国各地で米軍基地にNO!の闘いを
● 自民党新憲法草案の危険な中身 憲法改悪阻止の闘いを前進させよう
● 米軍基地をなくそう! 10・21反戦反基地集会 10・22国際シンポジウム
● 岩国基地機能強化反対市民集会に参加して
● 共謀罪を完全廃案に!
● 皇室スキャンダルその後
● 「宗教者九条の和」が記者会見
● 労働契約法にかんする論議
● 日本原で収穫祭
● 動かしちゃならない ! 六ヶ所プルトニウム生産工場
● KODAMA
● 複眼単眼 / サマワの豪軍と自衛隊、そしてイラク反戦運動
ブッシュ・小泉の戦争政策のための在日米軍再編
全国各地で米軍基地にNO!の闘いを
日米同盟の世界的拡大へ
一〇月二九日、ワシントンで日米両国の外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)で在日米軍再編に関する「中間報告」が合意された。これは、日米軍事同盟を地球的な規模に拡大し、日本がいっそうの「対米貢献」をおこなうものにほかならない。
共同記者会見では、ラムズフェルド米国防長官は、イラクへの自衛隊派兵での日本の「貴重な貢献」を褒めたたえ、それに対して日本の大野功統防衛庁長官は、イラク特措法の延長に前向きの方向であると応じた。
来年三月には在日米軍再編に関する「最終報告」がだされることになっている。
普天間飛行場移転先にキャンプ・シュワブの沿岸を埋め立てて滑走路の建設、横須賀への原子力空母の配備、キャンプ座間への米陸軍第一軍団司令部の移転、岩国基地への夜間離着陸訓練場移転などがあるが、いずれもいっそうの基地負担を押し付けるものとなっている。当然にも全国各地で基地に対する怒りの声が大きく広がっている。
この米軍再編は、アメリカがみずからを唯一の超大国として世界覇権を確立するための単独行動主義、先制攻撃主義に基づくものである。小泉政権は、これに積極的に加担し、自衛隊をいっそう米軍と結びつけ、アメリカの世界各地での侵略戦争を支援するため、その障害となっている憲法九条の改悪を急いでいるのだ。米軍再編と九条改憲は表裏一体のものである。
沖縄の米軍基地反対闘争
全国で米軍基地にたいする怒りの声がひろがり、自治体をふくむ広範な反対運動が展開されている。
一〇月二七日には、辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会などによる防衛庁、防衛施設庁への緊急抗議行動が取り組まれた。沖縄からの電話メッセージで、沖縄平和運動センター事務局長の山城博治さんは、「東京と沖縄、全国を結んで、基地の強化を許さない、再び沖縄が戦争の防波堤となるようなことだけは許さない、このような決意で頑張っていきたい」と述べた。
抗議・申し入れでは、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック「辺野古岬への新基地建設計画を白紙撤回せよ」などが読み上げられた。
関東ブロックの上原成信さんは「日米合意に対する抗議」で次のように言っている。
<大野防衛庁長官は昨日、辺野古の新米軍基地建設について「双方、快く合意点に達した」と嬉しそうな顔で発表した。何が快くだ。防衛庁が米軍側を説得したとの猿芝居の演出だ。われわれはこんなことにだまされはしない。その合意案を断固として拒否する。辺野古に新たに基地は作らせない。この合意を前提にして進められる在日米軍再編計画は辺野古に基地がつくれないことで根底から崩壊する。>
一〇月三〇日、沖縄では、辺野古崎移転に抗議して、那覇市の与儀公園で県民総決起大会が開かれ五〇〇〇人が参加した。
県民会議共同代表の山内徳信さんがあいさつし、中間報告は基地機能を強化するもので、沖縄は恒久的に米軍の発進攻撃基地になってしまう、と述べた。
宜野湾市の伊波洋一市長も、辺野古崎の美しい姿を無残なコンクリートの塊に変えるな、と述べた。
ヘリ基地反対協議会共同代表の安次富浩さんは、なによりも実戦部隊を減らすことだと、一定の兵員縮小で沖縄県民を欺瞞しようとする中間報告を批判した。
沖縄県の稲嶺恵一知事も記者会見でのコメントで、「県の基本的考え方とも、まったく相いれないものであり、沖縄県としては絶対容認できるものではない」と言っている。
名護市の岸本建男市長も、同市にあるキャンプ・シュワブ沿岸部に新基地を建設する案にたいし、拒否する見解を表明した。
このように沖縄では、中間報告への県民ぐるみの反対の意思が表明されている。
各地で米軍基地反対!を
米軍基地への怒りは沖縄だけではない。沖縄につぐ基地県である神奈川でも米軍基地強化に反対する動きがはっきりしてきた。
米海軍は、二〇〇八年に現在の通常型空母キティホークに代わる原子力推進空母を米軍横須賀基地に配備すると発表した。反戦平和団体はもとより、横須賀市、神奈川県も受け入れに反対している。キャンプ座間への米陸軍第一軍団司令部の移転には、地元の相模原市、座間市では市民の大多数の反対署名を集めるなど拒否の姿勢を示している。
今後、さまざまな反対運動が取り組まれるが、米軍基地にノーの声をいっそう大きく、そして各地をつなぐ全国的な規模の米軍基地反対のうねりをつくりだしていこう。
自民党新憲法草案の危険な中身
憲法改悪阻止の闘いを前進させよう
一〇月二八日、自民党は新憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)の「新憲法草案」を党政策審議会・総務会で了承した。
この草案は、九条を「改正」することで、アメリカとの軍事同盟を強化することによって自己の権益を増大させようとする日本支配層の危険な政治方向のあらわれである。今回の草案の特徴は、天皇元首化・日本伝統の強調などの復古的トーンは後退させたものとなったが、これには民主党などとも改憲に向けた合意をとりやすくする意図があることをみなければならない。
この草案では現憲法の基本理念は根本的に変えられている。憲法の三原則は、平和主義、基本的人権の尊重、国民主権だが、いずれも抜本的な変容を受けているのである。
平和主義は、第九条で規定されている「戦争放棄、軍備及び交戦権の否認」が否定され、自衛を名目に掲げた軍隊の保有によって「平和」を確保・実現するとされる。このことは同時に、国際協調主義とともに、アメリカ軍との共同作戦(集団的自衛権)となっていく。
人権については、公益・公共の秩序が強調され、「国民の責務」のなかで大幅に制限される。
そして、国民主権主義では、現在でも十分に保障されているわけではないが、それをもいっそう後退させられようとしている。
そうじて、憲法が、政府の権力制限するものから、国民統治のためのものにまったく転倒させられようとしているのである。
次のように、前文、戦争放棄、国民の権利及び義務、改正の分で重大な改悪が行われようとしている。
日本国憲法の「前文」には、「政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し」や「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」とある。これを変えて「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し」や「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に願い、他国とともにその実現のため、協力し合う」とされた。過去の侵略戦争の反省、「政府の行為による戦争」の防止が消され、他国(アメリカ)の世界政策にしたがって国際的な活動を行うとしているのである。
そのため、「第二章 戦争の放棄」は「安全保障」と変えられ、第九条二項の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」が消されて、「内閣総理大臣を最高指揮官とする自衛軍」が明記される。
第三章の「国民の権利及び義務」では、「公益及び公の秩序」が強調され、その範囲内でのみ「自由及び権利」を許されるとする。前文のところの変更とともに、ここでも、政府権限の行き過ぎに対する制約という近代的な立憲主義が、その反対の、政府による「国民」の権利の制限という形になっている。
また、憲法改正に関する第九六条では、簡単に何度でも憲法改正ができるように改憲要件を緩和している。
改憲の動きが一段とつよまった。改憲の手続きのための国民投票法案に反対する声を広げ、この極めて悪辣な自民党新憲法草案の内容を暴露して、九条を中心とする憲法改悪阻止の運動を大きく前進させていこう。
米軍基地をなくそう!
10・21反戦反基地集会 10・22国際シンポジウム
10・21反戦集会・デモ
十月二十一日、日比谷野外音楽堂で、「国際反戦反基地集会」(主催・同実行委員会、協力・WORLD PEACE NOW)が開催され、全国からの労働組合・平和運動団体など五〇〇〇人が集まった。
集会スローガンは「米軍基地をなくそう! 沖縄から 日本から アジアから」「イラク占領反対! 自衛隊は撤退を」「憲法改悪・教育基本法改悪を許さない」だった。
フォーラム平和・人権・環境の福山真劫事務局長が開会のあいさつ。今日の集会は、米軍のトランスフォーメーション反対、イラク戦争反対、憲法改悪反対の三つの課題であつまった。小泉与党の総選挙での勝利で、いまは大変厳しい状況にあるが、平和と民主主義のための<闘いはいまから、闘いはここから>という気持ちで進んでいこう。
WORLD PEACE NOWから栗原学さんが、10・21国際反戦デーの伝統を受け継ぎ、世界の人びととともにイラク戦争・占領に反対していこうと述べ、WPNの「スグ、モドレ自衛隊」連続行動への参加をアピールした。
政党あいさつは、民主党の那谷屋正義参院議員と社民党の福島瑞穂党首がおこなった。
つづいて集会に参加した海外ゲスト、グアムからはファナイ・カストロさん(グアムの先住民族であるチャモロ・ネイションの活動家)、オーストラリアのデニス・ドティーさん(オーストラリア反基地キャンペーン全国コーディネーター)、フィリピンのアガリン・サラ・ナガセさん(ミンダナオ人権活動家)、韓国のコ・ジソンさん(韓国緑色連合)、チャン・ドジョンさん(米軍基地拡張反対・ペンソン対策委員会)、ヤン・ギチャンさん(民主労総第六期「統一先鋒隊」執行委員長)が紹介された。
沖縄ヘリ基地反対協の安次富浩さんが辺野古の米軍新基地建設に反対する闘いへのカンパを要請し、東京と沖縄の平和運動センターによる闘争報告。
最後に、外国ゲストによるそれぞれの言葉でシュプレヒコールを行い、デモに出発した。
10・22国際反戦シンポ
一〇月二二日には午前一〇時から、社会文化会館ホールで「10・22国際反戦反基地シンポジウム」がひらかれた。
山本潤一平和フォーラム副代表の開会あいさつ、福山真劫平和フォーラム事務局長の基調報告、青森(三沢基地)、神奈川(キャンプ座間、山口(岩国基地)の各地区報告につづいて、海外報告。
昨日の10・21闘争に参加した海外ゲスト六人とフィリピンのローランド・G・シンブランさん(非核フィリピン連合)が発言した。
オーストラリアのデニス・ドティーさん(オーストラリア反基地キャンペーン)は「オーストラリアでの米軍基地に対する闘い」を以下のように報告した。
第二次大戦後、オーストラリアの政治指導者たちは、保守派も社会民主主義者も、侵略への恐怖とアメリカヘの感謝の気持ちを利用して、オーストラリアの動きをアメリカの外交政策目標に合致させた。このことは一九五一年のANZUS条約(オーストラリア・ニュージーランド・アメリカによる太平洋安全保障条約)締結で完成された。冷戦が進行する下で、オーストラリアは、アメリカの核兵器システムに統合されていった。通信、スパイ(情報収集)基地を設置させ、核攻撃能力を持つ艦船や航空機がオーストラリア領土内で活動することを認めた。一九八七年に「オーストラリア反基地キャンペーン連合」が結成された。オーストラリアの米軍基地を閉鎖していくための一貫してしっかりした努力をコーディネートし、持続させていくためだ。
アメリカは無敵ではなく、さまざまなところから「平和のスーパーパワー」に挑戦されている。最近の反戦運動の台頭は、世界にこれまでにない勢力をもたらしている。
10・21国際反戦反基地集会宣言
10・21国際反戦反基地集会に参加された仲間のみなさん!
私たちは、米軍基地を撤去するために、日比谷公園野外音楽堂に集まりました。
全国各地から反戦・反基地・平和運動に取り組む仲間が結集しました。
フィリピン・オーストラリア・グァム・韓国からも、仲間たちが駆けつけてくれました。
私たちは、米軍基地に反対する日本とアジア太平洋地域の連携を改めて確認しました。
日米政府は、在日米軍基地の再編・強化を進めようとしています。
しかし、みなさん。私たちは基地の再編・強化を、断じて許してはなりません。
戦闘機の爆音に悩まされる、三沢・横田・厚木・岩国・嘉手納の基地周辺の人びと
原子力空母の母港化に反対する横須賀の人びと
キャンプ座間への米陸軍第一軍団の移転に反対する相模原の人びと
普天間基地撤去・辺野古新基地反対・都市型戦闘訓練施設反対を闘う沖縄の人びと
「米軍基地はいらない!」という私たちの思いを一つにして、小泉内閣にぶつけましょう。
イラクでは一〇月一五日に、憲法制定の国民投票が行われました。しかし米国が主導する民主化のプロセスとは裏腹に、米占領軍と占領抵抗勢力との間の戦闘は、激しさをましています。〇三年三月の侵攻以来、確認されただけで三万人、実際には一〇万人近いイラクの人びとが戦争の犠牲になりました。米軍の死者は一〇月現在で一九〇〇人です。
自爆テロを報じる欧米や日本のメディアは、イラク侵攻の理由が何であったのかも忘れています。しかし米軍によるイラク侵攻と占領は、国際法を踏みにじる行為であり、一方的な大量虐殺であり、直ちに止めさせなければなりません。
小泉首相は、自衛隊のイラク派兵をさらに一年延長しようとしています。いまや全土が戦地となったイラクで、自衛隊は何をしているのでしょうか。英国やオーストラリアですら撤退を表明するなかで、なぜ自衛隊は最後まで米軍と行動を共にするのでしょうか。自衛隊の主な任務は、日本の援助で進む施設建設の監督であり、日本が寄付した医療機器の取り扱い説明です。自衛隊が直接人助けをしているわけではありません。
派兵期限切れとなる一二月一四日に向けて、派兵延長反対、自衛隊即時撤退の闘いを進めましょう。
九月一一日に行われた選挙では小泉与党が圧勝しました。いまや自公両党が、衆議院の三分の二の議席を制しています。憲法改悪・教育基本法改悪・社会保障制度の破壊……。
小泉内閣による攻撃は、ますます激しくなるでしょう。
いま日本の平和勢力は、困難な時期を迎えています。しかし、私たちは孤立しているわけではありません。全国各地に仲間がいます。世界中に仲間がいます。
鉢巻を締め、こぶしを握り、戦争反対、小泉内閣打倒の闘いに立ち上がりましょう。
米国の世界支配反対! 米軍再編反対!
イラク戦争反対! 自衛隊はイラクから撤退を! 憲法改悪反対!
教育基本法改悪反対!
アジア太平洋の仲間と共に、世界の仲間と共に、戦争勢力を倒すために闘おう!
岩国基地機能強化反対市民集会に参加して
岩国基地の機能強化に反対して、一〇月二三日の日曜日一三時半より、岩国市元町第三公園で、「10・23岩国基地機能強化反対市民集会」が実行委員会(連合中国ブロック・平和フォーラム中国ブロック・連合山口・山口県平和フォーラム)主催で開催され、終了後、参加者約三〇〇〇名は岩国基地までデモ行進を行った。
一〇月一四日の地元新聞報道によると、米軍再編で米海軍厚木基地(神奈川県)に配備されている空母艦載機部隊を、米海兵隊岩国基地(岩国市)に移転することで日米が合意したという。岩国基地では現在国が二四〇〇億円もの国民の税金を投入して、基地沖合を埋め立て、ここに新たに滑走路をつくる計画で、二〇〇八年度の完成を目指して基地拡張工事が着々と進められている。すでに、この埋立地の大型船舶用岸壁は既に完成しており、空母の接岸が可能である。沖合移設事業が完成する二〇〇八年には空母キティーホークの艦載機約七〇機のうち,F18戦闘攻撃機など大半の航空機が岩国基地に移転してくる予定だ。さらにこれらの航空機の夜間離着陸訓練(NLP)用に、「第三の滑走路」建設が岩国商工会から要請されているとも言われている。こうしていま岩国は一大軍事基地に変貌させられようとしている。
年間一万回余も行われる離着陸訓練で、周辺地域はすさまじい騒音と事故の被害にさらされてきた。住民の「被害軽減のため沖合いに移してほしい」との切実な要望を逆手に取り、トランスフォーメーションのもとで日米両政府は基地の拡張と強化で応えたのだ。
集会のなかでは、こうした基地の拡大・機能強化の現状が報告され、これに反対して岩国市自治会連合会、女性ネット21、岩国法人会女性部などがいち早く署名行動を展開し、岩国市長を経由し防衛庁への要請を行なった。山口・広島両県の岩国周辺自治体も、住民の安全と財産を守るため様々な反対行動を展開していることなどが報告された。また、自治体だけでなく広島県西部住民の会など市民サイドの反対運動も広がってきた。集会には、三市二町の反対期成同盟を代表して大竹市市長より「広島湾の安全・安心を守っていこう」との熱いメッセージが寄せられた。
今回の集会は,これまでほとんど岩国基地に反対する集会などに取り組んでこなかった連合が、中国地方五県に呼びかけて開催したという点では大いに評価されるものではあるが、住民の会や平和を願う市民団体の参加はあったものの、まだまだ人数が限られていた。とりわけ地元岩国市民の参加が強く求められている。今後の米軍岩国基地の拡大・強化、さらに広島湾周辺に点在する米軍・自衛隊の基地群との連携強化などを考えると、もっともっと多くの人にこの危険な実情を知らせ、反対の声を大きくしていかなければ、かつての軍都「廣島」に戻ってしまうとの思いを強くした。
デモの後で沖合い移設の説明を聞いているとき、岩国基地から飛び立ったF18ホーネットの爆音を聞いて、平和都市広島にこの爆音を響かせてはいけない、と痛感した。(広島からの参加者)
共謀罪を完全廃案に!
市民と議員のつどい
共謀罪の新設は特別国会では不成立となった。しかし、政府・与党は諦めず来年の通常国会での成立を狙っている。
国会終盤の一〇月二七日、衆院第二議員会館で、共謀罪に反対する市民と議員の院内集会が開かれ八〇名が参加した。
国会議員では、松岡徹参議院議員(民主党)、井上哲士参議院議員(共産党)、福島瑞穂参議院議員、保坂展人衆議院議員(社民党)が、それぞれ完全廃案に追い込むために闘いをつづけていこうと発言した。
許すな!憲法改悪・市民連絡会、移住労働者と連帯する全国ネットワーク、「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NET Japan)、反差別国際運動日本委員会、日本国民救援会の各団体から闘いへのアピールがあった。
いま、共謀罪に反対する運動はおおきくひろがってきている。この力を強めて、共謀罪を廃案に追い込んでいこう。
新聞労連が特別決議
一〇月一三日、日本新聞労働組合連合第一一四回中央委員会は「言論・表現の自由を守り、憲法改悪を許さない特別決議」を採択した。
「……有事法制の国民保護法に基づくメディアの指定公共機関への取り込みなど、『言論・表現の自由』『知る権利』は危機的状況だ。国家が戦争をしようとするとき、自由な言論、自由にモノを言う市民はじゃまでしかない。新聞をつくり、社会に送り出す立場のわたしたちは、今進んでいる危険な動きを看過できない。わたしたちは憲法改悪を許さず、憲法が保障する『言論・表現の自由』『知る権利』をはじめ市民の諸権利を守ることを決議する。」
皇室スキャンダルその後
いま、日本は戦争をする国づくりへ向かって平和主義・民主主義という憲法の原則を破壊し、天皇制を強化する国家改造を行おうとしている。反天皇制連絡会は、昨年九月「雅子の挫折・皇太子の不満―皇室スキャンダルを問う」集会で、雅子の人格発言などであらわになった天皇夫妻・秋篠宮夫妻と皇太子夫妻の対立を軸とする「皇室スキャンダル」が「皇室外交」のさらなる正当化・「皇室祭祀」の公的復権・「女性天皇制」へという改憲による、新たな象徴天皇制づくりのためのキャンペーンという政治的性格を持ち始めていることを暴露した。「女性天皇制」へ向けた「皇室典範に関する有識者会議」は女性、女系天皇を認める方向で開かれてきたが、こうした動きは自民党新憲法草案発表と連動している。
一〇月二九日、文京区民センターで、「改憲でどうなる 天皇家のヒトビト 『皇室スキャンダル』その後」(主催・反天皇制運動連絡会)が開かれた。
はじめに反天皇制運動連絡会の桜井大子さんが「『皇室典範に関する有識者会議』と女性天皇容認論」をテーマに報告。皇室典範に関する有識者会議は、〇四年一二月二七日に、小泉の私的諮問機関として設置され、一〇月二五日まで一四回開かれている。そのうち「識者」八人を招いたヒアリングが二回あった。論議は準備された資料に基づくもので、完全にコントロールされているものだ。有識者会議の吉川弘之座長が「国民の代表という意識で議論した。改めて国民の意見を聞くことは考えていない」(一〇月五日の記者会見)と言っている。有識者会議では、皇位継承の資格とその順位、天皇制維持の重要性のみが語られ、男女平等論、憲法論議、天皇制という制度などについては論議されていない。少なくとも聞こえてはこない。皇位継承の危機のためには、まず女帝容認論しかない、ということだ。有識者会議は、小泉の私的機関であるのに、それが国民の声としてだされてきている。政府・与党内には、女帝論に反対する主張もあるが、それを第三者的スタンスを装って小泉の考える方向で言論で抑えようとしている。また、有識者会議は、天皇主義右翼、天皇制に反対の声とはイデオロギー的距離をとって、天皇制論議が「国民的」に進められてきたかのようなアリバイつくりのためでもある。また、会議の議論が一ヶ月に一回、発表されてきたが、これでマスメディアが中立的な装いでの「女帝論議」を登場させ、また天皇タブーが薄くなったかのような錯覚をつくりだしてきた。こうして「国民的論議」が「女帝」をつくり出したかのような構図がつくりだされてきた。同時に、世襲制度や家制度を社会全体に刷り込む役割を果たしてきた。こうした動きは自民党がめざす改憲とつながっている。それは、天皇制を下敷きにした国家づくりというということだ。有識者会議は「象徴天皇制は日本の最も基本的な制度で、安定的な皇位の継承は国家の基本にかかわる」としている。天皇を中心にした国柄・伝統・文化を押し付けて国民性の醸成するとういうことで、こうした天皇制的装置が機能しさえすれば、男でも女でもよいという考えだ。祭祀問題でも、宮中祭祀を女でもこなせるようにした歴史もある。こうした状況で、これからの反天皇制運動はかなり政治的な言動と「極端な大衆性」をむすびつけて行く必要があり、戦争をするための改憲と天皇制維持の関係をわかりやすくうちだしていかなければならない。そして反天皇制派は少数派なのだから少しの違いでは排除しあわないという関係をつくっていきたい。
千田有紀さん(ジェンダー研究・大学教員)は女性週刊誌での皇室記事を例に、皇室報道をうけとる人びとの反応について発言した。皇室の人びとのスキャンダルとくに女性皇族のそれにはある意味で女のすべてのオプションがあるように見える。「雅子妃おかわいそう。皇室外交やらせてあげたらいいのに」というようなことで天皇制の是認・新しい肯定がうまれる。また皇族の人がかわいそうだから「解放」してあげたい、または元首化したほうがいいなどの意見となる。こうしたことには徹底的に茶化してバカにして、ずらしていけばいい。しかし、それだけにおわってしまうと何がのこるのか。今回の総選挙の結果を見るとそれだけでいいのかという気にもなる。
ピープルズ・プラン研究所の青山薫さんは、英国での王室の役割、それと日本天皇制関係について発言した。イギリスでの王の役割には三つある。ひとつは、国家の長・国民統合の象徴だ。これは、一八世紀以来の二大政党制による恒常的な政情不安定を乗り切るという機能を持つ。第二には、カナダ、オーストラリア、シンガポールなど世界五〇余カ国が加盟するコモンウェルスの長、そして英国国教会の長だ。そして、日本の象徴天皇などよりは強い政治権力をもっている。議会での立法を拒否できるなどの権能をもつ。王位継承では男子優先だが直系に男子がいない場合には女子の長子が継承する。イギリス以外はほぼ男女平等だ。そしてヨーロッパの王室は血縁で結ばれている。血統は国境を越える汎ヨーロッパ婚であり、万世一系はありえない。日本の皇室は、西洋王室モデルを輸入し、イギリスその他との交流がある。小泉改革のネオ・リベラリズムにはある種ジェンダー・フリー的なところと親和性がある。だがこれで血統に関する意識が変ることはないだろうし、汎アジア婚につながることはないだろう。
反天皇制運動連絡会の天野恵一さんは、天皇制をめぐる今日的状況について発言。皇室スキャンダルと改憲の動きは深く関連している。つい最近、自民党の新憲法草案がでた。ひとつの特徴は、「前文」で中曽根色の強かった伝統的な表現が消えて、象徴天皇制が強く出されたことだ。これは、他のところでもある。この草案に中曽根は激怒した。郵政民営化で中曽根の息子が反対票を投じたのに対する意趣返しという面もあるが、小泉は伝統派とは違うネオリベラリズムの方向をだしてきたのだ。それと、今回の改憲では、九六条を変えて、改憲をしやすいものにしてある。天皇制維持派にも伝統派と、民主や平和を装う派があり、対立も大きくなるだろう。
「宗教者九条の和」が記者会見
「九条の会」アピールを支持して、今年の四月、京都で、「宗教者九条の和」がつくられ、現在、一二七五名の賛同があつまっている。
「宗教者九条の和」は「願い」として五点をあげている。@憲法第九条を「輝かせたい」と願う人々とその意義を語りあい思いを他に伝えたい、A憲法第九条が世界の文明構築に普遍的な意義を明示し指針を示していると了解したい、B世界が国際化を進める中で互いの国の平和が道義的軌範の核となることを信じたい、C私どもは宗教者として平和を願う人々と真に平和のあり方を考え共に祈誓したい、D宗教者は目らの所信に遵って平和の世界を具現するために調和と抑制を説示したい。
一〇月二七日に、参院議員会館で「宗教者九条の和」の記者会見が行われた。これは、「宗教者九条の和」による一一月五日に開かれる「第一回平和巡礼とシンポジウムin東京」につてのもの。
村中祐生さん(大正大学元学長・天台宗慈照院住職)は、宗教者にとっては、武器を持たない、闘うことのない文化ということが基本だ、と述べた。
石川浩徳さん(日蓮宗現代宗教研究所元所長・本念寺住職)が、経験した戦争の悲惨さから戦後僧籍に入って平和活動をつづけてきたと述べた。
山本俊正さん(日本キリスト教協議会総幹事・牧師)は、アジアのキリスト者から「日本は変な方向にいっている」とよく言われるが、九条をひろげ躍動させていくことが必要だ、述べた。
大倉一美さん(カトリック東京教区司祭)は、憲法九条を生かす、輝かせていきたい、と述べた。
石川勇吉さん(真宗大谷派報恩寺住職)は、仏教者の「九条の和」への参加がまだ少ない、大谷派では改憲反対決議などがあがっている、と述べた。
九条の会事務局の高田健さんは九条の会と「宗教者九条の和」との連携した活動について説明した。
労働契約法にかんする論議
労働政策審議会の労働条件分科会で「労働契約法」の制定に向けての審議が始まった。
連合を含めて多くの労働組合からは、労働基準法を充実改正するとともに、労働契約法制については、横行するリストラに歯止めをかけるために、解雇制限法や解雇規正法などの提起もなされてきた。それは、本来「労使対等」であるべき労働者と雇用主との関係が非対称的なものとなっており、それを改善させようとするものであった。しかし、いま、論議となっている労働契約に関する法律は、労働者の願いに逆行するものであり、リストラと非正規雇用労働者を増やし、いつでも解雇できる不安定雇用を法制化する方向で行われている。
九月一五日には、厚生労働省内の私的研究機関である「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」の「報告」がだされた。そこでは、労使委員会での実質的対等性や就業規則の拘束性の強化、解雇における使用者申立の金銭解決制度などが提起されているが、問題が実に多い。労働政策審議会の労働条件分科会では、この報告書の線で、論議がすすめられるようだが、とんでもない大問題だ。私的な研究の結果にすぎないものを、審議の「叩き台」として取扱うべきものではない。
日本労働弁護団は、九月三〇日に労働審議会労働条件分科会に対して「労働契約法の審議にあたっての意見」を出し、次のように申し入れている。「民事法たる労働契約法は強行規定でなければならず(私的自治を排除する)、かつ、契約の展開全般にわたって『対等の立場』での交渉・協議等をできる限り可能とするシステムを有するものでなければならない」「労使対等な立場を実現する視点に立つならば、過半数代表、労使委員会、さらに労働者(従業員)代表制度等と労働契約全般についての係わり方が、現行制度の持つ問題点をふまえたうえで、抜本的に論議されねばならない」「審議においては、契約法上の全ての問題について検討されたい」。
日本原で収穫祭
「お父さん、どこへ行っていたの」…「日本原にさつま芋堀りに」…「え、まだあれやってるの、私が小さかった頃、行ったことあるやつでしょう」。
久しぶりに帰って来ていた二二歳になる長女との会話です。
わたしたちが、日本原自衛隊が演習を行なう那岐山麓の場内にある耕作地で自主耕作(基地反対運動の中心の内藤秀之氏の所有地)に取り組みだしたのが、一九八九年からです。
場内耕作は、日本原演習場の全面使用を目論む自衛隊にとって、大変都合の悪いものです。しかし、現地農民の方がたの高齢化が進み、耕作地が高地にあり耕作が厳しい状況となっているため、「場内耕作を」との要請がなされ、それに応えて、基地撤廃に向けた行動として取り組んできているものです。
当初から収穫祭は開催していますが、はじめはタマネギ、落花生を作付けしました。しかし、タマネギ、落花生の生育には頻繁な草取りなど大変な手間が必要で、残念ながら一年目の収穫祭ではその姿を見ることはできませんでした。
二年日から現在まで、さつま芋にしています。収穫は天気都合ではありますが、参加者にとっては満足がいくものです。
九三年までは、夏には合宿、秋には収穫祭と日本原に随分通い、私服警官の監視もあったり、また草取り中に軍事訓練の銃声が間近に聞こえたりしました。九八年には猪が襲来して、さつま芋は全滅となり、トタンで塀を作るなど色々なことがありました。このように毎年、春の苗植え、夏の草刈り、秋の収穫祭などが行なわれ、今日にいたっています。
今年は行事が重なり、一〇名程の参加でした。
内藤さんからは、「現在では西地区・東地区ともども実射訓練が頻繁に行なわれるようになっている。訓練が行なわれている地形も、イラクに似せてか平坦に造成している。武器もイラクに持っていくものと同様のもので訓練している。実射時にはただちに抗議行動という取組みは近年厳しくなったが、例年の2・11行動とこの収穫祭は続けていく。昨日は、教員組合の人たち(同じ畑でさつま芋を植えている)が四〇名程来て収穫を行なった」との現況報告がありました。
参加者は焼肉・焼きそばを囲みながら、夏合宿をしていたこの団結小屋(内藤さんの生活地の集会所で、私たちの合宿・集会・集合の拠点となっています。昔の小学校をそのまま移転したものということが今回わかりました)に想いをはせながら、今後も頑張るぞと決意を新たにして散会しました。
自然豊かなこの那岐山麓から軍隊がいなくなるまで……。(岡山・K)
動かしちゃならない ! 六ヶ所プルトニウム生産工場
一〇月一九日、青森県の三村申吾知事は、東京電力と日本原子力発電が計画している使用済み核燃料の中間貯蔵施設について、同県むつ市での立地受け入れを正式に表明した。 また、同月二六日には、原子力発電の使用済み核燃料の再処理に伴って生じる高レベル放射性廃棄物の最終処分場の誘致を、滋賀県余呉町が検討していると報じられた。
六ヶ所村に建設中の再処理工場では、早けれぱ今年の年末から使用済み核燃料を使った本格的な稼働実験(アクティブ試験)が、行われようとしている。原発の事故、そして会社の事故隠しで、原子力施設の危険性はひろく認識されてきているが、とりわけプルトニウムは原爆の材料となる。
一一月一九 日(土)には、日比谷野外音楽堂で「止めよう再処理!二〇〇五共同行動」の全国集会が開かれる。全国実行委員会は、原水爆禁止日本国民会議、原子力資料情報室、グリーンピース・ジャパン、止めよう再処理!青森県実行委員会で構成され、各地で署名活動やさまざまな運動をおこないながら、全国集会に結集する。
この活動のために、共同行動は、パンフ『ついに放射能放出がはじまる―動かしちゃならない!六ヶ所プルトニウム生産工場』を発行した。パンフの目次は、原爆の材料プルトニウム生産中止を!、使用済み燃料プールで再び漏えい事故が発生、六ヶ所再処理工場のおもな工程と危険性、ウラン試験とアクティブ試験、イギリス・ソープ再処理工場―大規模漏えい事故で施設閉鎖か?、核燃料はリサイクルできない、原子力は温暖化対策にはならない、再処理工場は核兵器材料生産工場、虚妄の核燃料サイクル政策。
パンフの中の「再処理工場は核兵器材料生産工場」は、「六ヶ所再処理工場は、設計上、年問八トンのプルトニウムを取り出す能力があります、長崎型原爆は、製造時のロスをふくめて八キログラムで一発がつくれるとされていますから、一〇〇〇発分ということになります。そこで一〇〇〇分の一たりとも核兵器に転用されることのないよう、IAEA(国際原子力機関)では厳しい管理を行ないます。とはいえIAEAにも、こんなに大量のプルトニウムを扱う工場の保障措置(核兵器に転用されていないことを検認する措置)の経験は、まったくありません。イギリスやフランスの再処理工場は、核兵器国の施設のため、IAEAの保障措置は行なわれていないのです。このためIAEAでは、当事者の日本原燃や日本政府もふくめて国際的な検討を行ない、さまざまな対応策を組み合わせることで核兵器に転用されていないことを検認できるとしました。それでも、どうしても計算上は行方不明になってしまうプルトニウムの量が、日本原燃の甘い評価ですら年間に二〇〜三〇キログラムになるといいます。仮にそれが数発の核兵器に転用されても、IAEAの査察で検知できないのです。…また、日本で再処理ができるなら、他の国の再処理が許されない道理はないことになります。六ヶ所再処理工場を動かすことは、他の国にも再処理という核兵器への抜け道をひろげていく役割を果たすのです」といっている。
いまこそ、核燃料サイクル・ノーの声を大きくあげよう。
パンフ『ついに放射能放出がはじまる−動かしちゃならない!六ヶ所プルトニウム生産工場』(一〇〇円)
注文は、止めよう再処理二〇〇五共同行動(原水爆禁止日本国民会議)03(5289)8224
KODAMA
安全の確保とは
読売新聞の「論点」(一〇月二四日)で佐藤謙(元防衛事務次官)は、国際社会の平和と安定がなければ、我が国の安全が確保できない、と言って海上自衛隊のインド洋における燃料補給活動やイラク・サマワの自衛隊など海外での軍事的国際協力の重要性を説き、しかも武器使用に関して、相手が「国又は国に準じる組織」でなければ現憲法下でも可能である、主張している。
国際社会の平和と安定を求めるところは、私もふくめて、誰しもが願うところである。この誰しもが願望するところを前提において、我が国の軍事活動を求めるという発言には驚きと怒りを感じる。
国際社会の平和と安定のためには一切の軍事活動を廃止することが最も早道なのであり、その方向にこそ日本が先導すべきところであると私は考えている。佐藤氏の論では、我が国の権益の保持・拡張のために、そして発展途上国も貧窮人民を黙らせるために、日本の軍事力が重要な役割をになうべきだとして、また米英軍事グローバル化におくれを取っては恥であり、国際的な階級支配の完璧性が平和と安定なのだと思っているようである。
自衛隊が国際軍事協力するための一般法制定などしないでほしい。国際社会の平和と安定という言い方はよそう。世界の平和を求めるという発想をもちたい。繰り返し言うが、世界の平和のためには一切の軍事活動を廃止することが最も早道なのである。(安藤裕三)
二〇〇五年一〇月二四日
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部落問題全国交流会に参加して
去る、一〇月二二・二三日、京都・大谷婦人会館で、第二二回部落問題全国交流会が開催された。テーマは『人間と差別をめぐって―部落の今を考える―同対審答申四〇年』。
話題提供者として、石元清英さん(関西大学)、中西仁さん(京都学園大学)が講演を行った。それぞれ表やグラフを上げ具体的に答申失効後の部落の違いを示した。部落の流出入の違いや学力の向上の違いを話された。
部落の流出入の違いでは、答申失効後公営住宅の家賃が上がり住みにくくなると部落から出ていく。
しかし、遠くではなく部落の周辺に住む。遠くであれぱもっと安価な土地もあるはずだが、そうはせずに部落の周辺に居住する。司会の住田一郎さんによれば、住吉では部落から半径三〇〇メートル以内にきっちり入っているとのことだった。
学力向上の状況を見でもあまり上がっていない。一九九三年当時に中西さんが勤務していた中学では次のようなことが行われていた。
学力保障のために、センター学習(月〜木、一九〜二一時)をはじめ、進学促進ホール、、補習(定期テスト前・高校進学対策)、サマースクール(夏休み)、全市林間学習(夏休み三泊四日・高校進学対策)、問題集指導があり、その他にもいろいろな取り組みがなされていた。
@郊外学習
・大学見学会・登山(夏休み三泊四日・北アルプスなど)・スキー(冬休み三泊四日・長野県など)・科学センター学習(夏休み)
A集会指導
・部落問題学習(人権学習事前事後・社会学習事前事後・施策・部落史…)
B保護者
・家庭訪問(定期、生活、学習、校外学習、人権学習)・保護者会
C就学援助
・就学援助(準・要)・特別就学奨励金・奨学金。
これだけの事をやっていたが、現在は、全て一般施策に移行し、実態として残っているのはセンター学習(一般開放)ぐらいだそうです。
これだけの事をしても学力向上にはつながらなかったのは何故なのか。私などは、勉強が余りすきでも得意でもなかったこともあるかもしれないが、誤解を恐れず言えば、できない子がいても良いのではないかと思う。こんな私でも世の中に通用している。そんな事より、やり過ぎ・詰め込み過ぎがかえって子供たちのやる気をなくしてしまっている様にも見える。勿論、当時の先生方が一生懸命なのは解るのだが。
答申失効後三年を経過したが、そこから見えてくる事がぼちぼち現れ始めている。運動体も、部落解放運動や部落に当時の子供たちが何人残っているのか真剣に考える必要がある。そう言う私もどうして良いのか解らないが、でも考えてみよう。(大阪・E)
複眼単眼
サマワの豪軍と自衛隊、そしてイラク反戦運動
機会があってオーストラリアの反戦運動の活動家と話をした。
「サマワの自衛隊を護衛するために同国の軍隊がイラクに派兵されている。もし自衛隊がイラクから撤退するならオーストラリア軍も自動的に撤退することになる。日本の反戦運動に頑張ってほしい。そのために共同して取り組めることはなにかあるか」と訊ねられた。
自衛隊のイラク派兵はイラクの人びとに迷惑をかけていることと合わせ、オーストラリアの人々にも、直接、このように迷惑をかけているのだ。頭の中では理解していたつもりだったが、この人と話をして、よりいっそう実感できた。
本日のサンデープロジエクト(TV)で社民党の辻元議員が強調していたが「イラクにいる自衛隊は、いまは水道事業でなく、学校や道路の修復にあたっている。このサマワの自衛隊の活動に特別手当を一日あたり一〇〇〇万円払っている。学校は約六〇〇万円でできるではないか」と指摘していた。もはや、明らかではあるが、自衛隊のイラク派兵は人道復興支援などの目的ではない。辻元議員の指摘するとおりなのだ。
なぜ、他国軍に守ってもらってまで、自衛隊がイラクにいるのか。それは自衛隊が米軍主導の多国籍軍に一翼としてイラクに「存在すること」こそが必要なのだ。そのことが米軍によるイラク占領支配という実態を隠蔽し、イラク戦争を「正当化」しようとする米国の要求なのだ。
二〇〇三年、全世界の反対の声を無視して、米軍がイラクを攻撃した。以来三年半、米軍兵士の戦死者は二〇〇〇人を超えた。負傷者は一万五千余名といわれる。米国以外の多国籍軍の戦死者は二七二人、イラク軍・警察の死者は三四〇〇余人、イラク市民の死者は二万六千とも、一〇万とも言われている。米国の国家財政へのしわ寄せも厳しく、月平均で五六億ドルに達して、ベトナム戦争時を超えたという。
こうした中で、ブッシュ大統領への米国市民の不信は強まっている。米国の反戦運動は再燃する様相を示している。
ひるがえって、日本でのイラク反戦の闘いはいまだ再度の高揚期をつくり出し得ていない。先日もこのことを嘆く人に出会った。たしかにそうではあるが、運動の現状をただ嘆いていたり、運動から召還したりして問題が解決するわけではない。一部の人びとは運動が高揚すれば「自然発生的な運動」などとあれこれ言いながら、参加してくる。しかし、運動の後退期には傍観者か評論家に戻ってしまう。
しかし、こうした態度はなんとも無責任ではないか。私たちの前にある課題は、いかにして民衆の運動を力強く起こしながら、政府に自衛隊撤退をせまることができるか、いかにしてそれを実現するかだ。運動の高揚期に方針をだすのはある意味で容易であって、重要な問題はそうでない時期に、運動の高揚を準備し、実現の道を切り開くかだ。このことが鋭く問われているのだと思う。
幸い、この時期、憲法九条の改悪に反対する運動が全国各地で力強くわき起こっている。確信の持てる状況が出現しつつある。イラク反戦の課題での運動もこうした流れとリンクしながら、再度の高揚をつくり出していかねばならないのではないか。(T)