人民新報 ・ 第1185号<統合278(2005年11月15日)
  
                  目次

● 11・3憲法集会  STOP!改憲暴走

● 加藤周一さんの講演で広島憲法のつどい

● 憲法九条を守り、いかす吹田の会

● 米軍再編反対・地位協定見直しを!

● 沖縄の反基地闘争に連帯しよう  沖縄県警は木津上人(日本山妙法寺)をすぐ釈放せよ

● 「宗教者九条の和」が平和巡礼&シンポジウム

● 11・6  戦争アカン 基地いらん関西のつどい

● 「日本は人種差別問題に取り組むべきだ」  国連第3委員会で報告・論議

● KODAMA  /  このごろのブッシュ政権




11・3憲法集会

     STOP!改憲暴走


日韓共同の11・3憲法集会

 一一月三日、東京四谷の聖イグナチオ教会ヨセフホールで、「東京〜ソウル 日韓市民同日行動 韓国から第9条にエール! STOP!改憲暴走 11・3憲法集会」が開かれ、四五〇人が参加した。
 この集会を主催した11・3憲法集会実行委員会には、平和を実現するキリスト者ネット、憲法を愛する女性ネット、憲法を生かす会、高校生反戦行動ネットワーク、GPPAC Japan、平和を創りだす宗教者ネット、全国労働組合連絡協議会、VAWW―NET Japan、ピースボート、ふぇみん婦人民主クラブ、平和憲法21世紀の会、明大駿台文学会、許すな!憲法改悪・市民連絡会が参加し、週刊「金曜日」が協賛した。

九条改憲反対は多数派

 はじめに実行委員会を代表して高田健さんがあいさつ。
 いま憲法が重大事態になってきている。政権党である自民党の新憲法草案が発表されたが、これは一一月二二日に正式に決定される。平和憲法を踏みにじり九条改憲の先取りとしてのイラクへの自衛隊派兵はこの一二月に期限切れになるが、小泉内閣はそれを延長させようとしている。例年、一一月三日には、憲法集会を開いてきたが、今年は、年配の人とともに高校生、大学生、ピースボートなど多くの若者が参加している。近頃行われた世論調査でも、憲法九条を守れという声が六二%、とくに二〇歳代では七〇%の人が変えるなという答だった。しかし、若者が選挙では小泉与党に投票する状況がある。憲法を守ろうとする政党に票が集中しないという永田町と世間のあいだにねじれがある。この集会は、日韓共同開催となっている。アジア、世界の人びととともに九条を破壊させない運動をつくっていきたい。改憲の流れに抗し、それを打ち破っていくうねりをつくりだそう。今日を九条を絶対に変えさせないという出発点の日としよう。

横須賀原子力空母母港化

 スピーチは三人。
 はじめに、弁護土で原子力空母の横須賀母港間題を考える市民の会の呉東正彦さんが「米軍再編と日本」と題して報告。
 いま進められている在日米軍再編はなにをめざすものなのか。沖縄普天間の飛行場をキャンプ・シュワブ沿岸に新滑走路をつくって移転する、沖縄の米軍空軍の訓練を九州で行う、厚木の離着陸訓練を岩国に移す、横田基地を米軍と自衛隊の共同使用にする。キャンプ座間に米陸軍第一軍団司令部をもってくる、横須賀には原子力空母を配備する、などだが、これは米軍基地を拡充し、自衛隊との共同作戦を行うためで、朝鮮・中国を狙うものだ。自衛隊基地を米軍に使わせ、同時に民間空港、港湾の使用、米軍基地の警備なども行われる。自衛隊は海外に派遣され、米軍のかわりに戦うことがもとめられ、そのために改憲がある。横須賀では、市、市議会も原子力空母の配備に反対している。神奈川県も反対だ。配備計画に反対する署名は三四万五〇〇〇筆もあつまった。反対の声を大きくしていく闘いをすすめ、また港湾使用許可などは自治体の権限となっているが、こうしたこともおおいに活用することが必要だ。基地強化反対の闘いと並行して憲法九条をまもるという運動が必要だ。神奈川弁護士会は、憲法問題での講演する「出前」をなっている。厚木基地を監視していたメンバーが不当に逮捕されたが、「表現の自由」をまもっていく取り組みをつよめていくことが大事だ。

韓国からみた日本国憲法

 韓国・平和ネットワーク政策室長の李俊揆(イ・ジュンキュ)さんは「韓国からみた日本国憲法」をテーマに発言。
 日本国憲法はたんに日本の問題ではなく、東アジア全体の問題だ。九条改憲は、アメリカが強要したもので、日本国民の願いではない。戦後六〇年も守られてきたのがその証拠だ。憲法には、再び戦争をしないという約束がある。日本は、アジアと世界で、平和国家として国際貢献していくという約束だった。しかし、自衛隊をつくり、それを軍隊にした。いったい、誰の望みなのか。小泉さん、前原さんに聞きたい。ブッシュはイラク侵略戦争をおこし、日本は自衛隊を派兵した。アメリカ世界帝国のための戦争に、小泉首相は集団的自衛権で米軍と共同し、軍事大国を目指している。いま、東北アジアは岐路にたっている。共存と平和の東アジアなのか、それとも、中国・北朝鮮の「脅威」を口実に軍事同盟・米軍再編による緊張激化なのかの選択だ。フランスとドイツは過去を清算して友好的になった。韓国も日本ともっと友好的になりたいと思っているが、首相の靖国神社参拝、侵略を美化する歴史・公民教科書など日本の右傾化がすすんでいる。このことにアジアの人びとは注目している。恒久的な平和主義、戦争放棄の九条の精神から東アジア共通のビジョンをつくりだすために、いっしょにがんばっていこう。

自民党改憲草案の問題点

 法学館伊藤塾塾長の伊藤真さんは「自民党改憲草案の何が問題か」と題して講演。
 人間は戦争のない暴力のない世界をめざすべきだ。しかし、自民党の新憲法草案は自衛軍の創設をいっている。これまでの歴史は軍隊は国民を守らないということを示してきた。そして、靖国神社の問題がある。死、戦死は悲しいものだが、それを栄光に変える施設が靖国神社だ。こうしたことのための新憲法草案だ。もともと、憲法とは国家権力を制限し、人権を保障するもので、これが立憲主義といわれるものだ。一番大事なのは、個人の尊重・個人の尊厳だ。「人はみな同じ」で、人として尊重される。「人はみなちがう」ということで、個として尊重されなければならない。人権とは、人として正しいことをいうということだ。人権は、人類の普遍的原理ではなかった。人権とは、主張であり、闘いとるべきものなのだ。そして憲法の平和主義だが、平和主義の憲法というなら珍しくない。日本国憲法は、自衛戦争をふくめて、一切の戦争を放棄したものだ。軍事力によっては国民の生命と財産は守れない、再軍備はかえって攻撃の口実を与え、国民を危険にさらすという考えに基づいて、暴力の連鎖を断ち切るために軍備をしないという、あえていえば、非常識は承知のうえでの人類の壮大な実験という意味がある。

防衛庁へ抗議パレード

 つづいて、高校生反戦行動ネットワ―ク、明大の学生、GPPAC、日本山妙法寺からの発言があり、日韓市民共同声明(二面に掲載)と防衛庁への要請文が拍手で採択された。
 集会を終えて防衛庁へむけてパレード。防衛庁前では、額賀福志郎長官あて「イラクに派兵されている自衛隊の即時撤退をもとめます」を手渡した。
 要請文は次のように言っている。「…無辜の民を殺害し、イラクの人ぴとの人権と尊厳を破壌しているのは、アメリカを中心とする多国籍軍です。その中には、むろん自衛隊も含まれます。イラクの大多勤の人ぴとは、『テロリストの掃討』を名目にした殺戮と占領の継続に強く反対しているのです。だからこそアメリカでも反戦運動が再び大きく盛り上がり、スペインやオランダに続いて、アメリカの忠実な同盟国だったイギリスやオーストラリアも撤兵を準備しているのです。まず占領を中止して、軍隊を撤退させることこそ、イラクの人ぴとにとっての平和を実現する道だと、どうして考えられないのでしょうか。日本の最近の世諭調査でも七割の人ぴとが自衛隊の撤退を求めています。韓国でも、派兵した部隊の期限延長に対し、与党を含む多くの国会議員や市民から反対の声が上がっています。私たちは、平和を創り出すために、自衛隊をアメリカの世界的な戦争に組み込むための在日米軍再編、とりわけ沖縄への基地押し付けや、米陸軍第一軍団司令部の座間移転などに反対するとともに、イラクとインド洋に派遺されている自衛隊の即時撤退を強く求めます」。

11月3日(日本国憲法公布の日) 日韓市民団体共同声明文

 本日一一月三日、日本国憲法は公布五九周年を迎えた。この五九年間、日本国憲法はたえまない試練を受けてきた。解釈改憲という政治手法の下で憲法九条を無力化しようとする試みが続けられてきた。最近では、自民党を中心とする改憲勢力が、自衛隊を軍隊として認め海外での武力行使を許容しようと憲法九条改定への動きを加速させている。

 先の九月一一日衆議院選挙で圧勝した自民党は、立党五〇周年にあたり憲法改定草案を発表した。また、衆議院選挙で敗北した民主党も新代表を中心に積極的に改憲に向かっており、日本の国会における憲法改定の動きが本格化している。

 そうした中で本日、ソウルと東京に集まった日韓両国の市民団体は、現在日本の憲法改定の動きが、戦争の放棄と戦力保有の禁止を規定している憲法九条を無力化し廃止するための試みだとの憂慮を表明する。そして、憲法九条の廃止と無力化に断固として反対する。

 第一に、日本の憲法九条は、過去に対する反省と和解を基にしたアジア民衆との約束である。日本の憲法九条は、無謀にも侵略戦争を起こしアジア民衆に莫大な被害を与えた軍国主義についての責任追及であると共に、帝国主義と軍国主義の暗い過去を清算して日本が再び戦争をする国にならないという、アジア民衆との和解のための約束である。それゆえに、憲法九条を改悪することはアジア民衆との約束を破ることであり、和解の歴史の流れに逆らう行為である。

 第二に、日本国憲法の平和条項は、これまで日本と東アジア諸国間の最低限の信頼関係を維持する基盤であった。にもかかわらず日本国憲法九条を改悪することは、日米同盟に便乗した日本の軍事大国化や歴史教科書の歪曲、総理および政治家たちの靖国神社参拝など、大日本帝国の侵略の歴史を美化する過去回帰的な右傾化と同じ線上にある。こうした動きに対して、韓国を含めアジア諸国は恐れを感じている。日本国憲法九条の改悪は、アジア諸国間の信頼関係を崩壊させ、東北アジアの軍備競争を加速する不信の悪循環を生むであろう。

 第三に、日本国憲法の平和条項は、日米同盟、韓米同盟の軍事的な一体化によって起こる東アジアの緊張を克服して、軍備縮小と軍事力に依存しない新しい平和秩序を創出するうえで極めて大切なものであり、人権と民主主義に基づく東アジア平和共同体の基盤になるべきものである。その意味で、恒久的な平和主義の原則をもとに戦争の放棄と戦力保有の禁止を明示した日本国平和憲法は、貴重な財産として評価されるべきであり、その理念は東アジアや全世界に広げなければならないものである。

 強大な権力をもった自民党と改憲勢力は、憲法九条を守り実践する平和の国日本こそがアジア民衆の願う姿なのであって、それこそが日本の本当の国際貢献であることを認識すべきである。憲法九条改悪は、アジア民衆と平和を愛する大多数の日本国民を裏切る行為であり、武力によらずに平和をつくる努力が世界中で積み重ねられている現在、歴史の時計の針を後戻りさせる行為であるということを深く肝に銘じるべきである。

 日本国民とアジア民衆は、人類の歴史と日本の歴史の中での自衛と国益という名目で起こされた侵略戦争の歴史を、今も生々しく覚えている。私たちは、さまざまな美辞を動員して進められている平和憲法改悪の動きを監視し、断固として対処する。

 本日ソウルと東京で、憲法改悪を阻止し、平和憲法の原則を生かすために集まった両国の市民団体は、日本の憲法九条を守り東アジアの平和を作るための連帯を今後とも持続していくものである。

                  以 上


加藤周一さんの講演で広島憲法のつどい

 一一月三日午後一時半から四時まで、会場の広島市中国新聞社ホールを埋め尽くす約七〇〇名もの人々が参加して、広島「憲法のつどい」が開かれた。
 この集会は、今年の「三・一二 九条の会広島講演会」を主催した構成団体が再び集って開いたもので、九条の会呼びかけ人の加藤周一さんが基調講演を行った。

 司会は石口俊一弁護士がおこない、この集いの開催に至る経過を次のように述べた。
 「〇一年ころから憲法問題の講演会に毎年取り組んできたが、五・三だけでなく一一・三も取り組みをと言うことで開催した。今回は、無理をお願いして加藤周一さんに講演して頂くこととなった」。

 主催者を代表して開会の挨拶にたった元広島市長でマスコミ九条の会代表の平岡敬さんは、「大勢の参加があり憲法問題への関心の高さをヒシヒシと感じる。戦前のマスコミは国家権力に追従し、大本営発表をそのまま伝え戦争を賛美するという大きな過ちを犯した。戦後のマスコミはそうした反省に立って再出発したはずだが、敏感ではないし憲法問題でも一枚岩ではない。周辺事態法から今日のイラク派兵まで自由とか人権に触れるものをキチンと伝えていない。憲法は権力の暴走を止めるため、その手足を縛る役割を持っているが、今日の改憲の流れではまったく逆の状況が起こっている。ヒロシマの惨事を胸に刻みながらマスコミがどのように報道していくのか、不戦の思想を広げて行きたい。地域・職域で心強い動きが始まっている。このつどいを手を携え九条を守り戦争に反対して行く場にしたい」と決意を述べた。

 続いて、加藤さんが「いまこそ憲法!戦後六〇年に語る」と題して一時間にわたって講演した。
 加藤さんは、一、今なぜ九条か、なぜ憲法か?二、私たちに何ができるか、何をすべきか?の二点にしぼって話をされた。
 戦後、平和憲法(有事においても武器を持たない使わない)と安保条約(米軍と自衛隊の協力で軍事力によって有事に対応する)という二つの矛盾する大きな流れがあって、その延長上で憲法改正が出てきている。これまで憲法と矛盾しないようにしてきたが、それも限度がある。また、日本の政府はドイツの政府とは違い、東条内閣の大臣が戦後の政府に入ったことにも見られるように、権力、政治的指導者に持続性があった。これは集団志向型の日本文化の特質から来るもので、指導者への責任を問えていない。東京裁判でA級戦犯になった一四名を、A級戦犯として納得していないところが日本人の中にはある。この人たちは、いつかは憲法九条を変えなくてはいけないと思っている。改憲の根拠になっている「憲法は押し付けられたもの」、「安全保障のため、国際協力のため」に軍備を もたなくてはならないという主張については、その理屈がまったく合理的ではない、ということを具体的に話された。
 今、私たちに何ができるか、何をすべきかについては、地域の特殊性、職域、何が専門かなどによって違う。専門的な知恵を持っている人は、わかるようなことばを使って話し、一般の人、市民はそれらを使って周りに広げていく必要がある。政府の政策を批判的に見ていくことが大切だが、その批判する力であった労組、議会、メディア、裁判所、大学などの力が弱まっている。批判しなければ、民主主義は終わる。批判をしているのは市民運動だが、小さな団体で、バラバラで、まとまっておらず、横の連絡もない。横の連絡をとり、まとまることでいろんなことができる。九条の会の例や、吉田松陰の話、自分の体験も出しながら、一対一、人間対人間、個人対個人で、説得すること、顔対顔の話し合いが大切であり、中心になる人を増やし、支持者も増やしていくこと、また、理屈ではない感情の問題も大事にしなくてはいけないことが話され、最後に「いつでもどこでも意志表示していってください」と締めくくられた。

 休憩を挟み、講演の後の質問では、@「北朝鮮の脅威論について」は、相手の身になって考えることだ。怖いからああいう対応をしている。利益と損害の比較・攻撃能力があるかないかの、二つの問題で考えるべきで、日本を攻撃しても北朝鮮に何の利益もないし能力もない。よほど追い込まれない限り、北の方からの軍事的攻撃は考えられない。北が来るより台風が来たらどうするか、に備えることの方がはるかに現実的だ。集団志向や「土下座」は日本も同じことではないか。A「ヒロシマの役割とは」について、広島の外から見たら何が求められているのか分かる。核問題で広島が何を発信するか、広い視野で見て核兵器を全廃するための訴えをしていくことが大事。合理的説明ができない核差別(保有・非保有、保有国内で不平等がある)批判を世界の人が注目している。核抑止力競争はスパイラルに拡大する。どうしたら止められるか、ゼロオプションしかない。アメリカが言わないことを広島から発言していくことを期待する。B「高齢でなお頑張れるのは」との質問には、自らをヒロシマに置き換え、国際的環境の中に日本を置いて見ると、ヒロシマは世界でよく知られている。まだ発信できる今のうちに発信してもらいたい。核廃絶、九条、努力が無駄だと思わず、戦って敗れるのと何もしないで負けるのは違う。ヒロシマがなおどのような声明を出すのかに意味がある。と応えた。

 最後に、三末篤實カトリック広島教区長が閉会の挨拶で「講演をそれぞれの立場で吟味し、絶対平和主義を根底に憲法を前向きにとらえ、手を携えてこれからの運動につなげていこう」と述べた。

 総選挙で圧勝した自民党の新憲法案発表に続き、民主党も改憲「対案」を急いでいる。恐るべき国会翼賛体制に抗して、ここヒロシマからも九条改憲阻止と核廃絶を結び付けて、確実に運動は拡がっている。


憲法九条を守り、いかす吹田の会

 現在の政治情勢の右傾化の中で、全国各地で「憲法九条を守ろう」と多くの人々が立ち上がっている。
 一一月三日、大阪・吹田市において「憲法九条を守り、いかす吹田の会・結成集会」が吹田市民会館大ホールに約一三〇名が集まり開催されました。
 司会は元府議会議員の床島氏が行い、平和を歌う「ピースウォーカーズ」の皆さんによる<うちら自慢の憲法九条>の歌などで会場を盛り上げてもらい、記念講演として辻元清美衆議院員(社民党)から憲法調査会でのやり取りなど、熱のこもった話を聞きました。
 辻元氏は一〇月に自民党が出した「自民党新憲法草案」について具体的な事案を出しながら矛盾点や現在論議している「憲法調査特別委員会」でのやり取りなどについて丁寧に説明を行い一時間半くらいの講演時間も足りないぐらいに話されました。
 毎週木曜日に委員会は開催され、改憲賛成派四八名に対し反対派は二名だけだが、国民の多くは改憲反対であり、多くの支援が国会の中での頑張りの基だとして、「こんなこと言ってくれ」「あんな事があるのでは」など、どしどしと意見を出してください、という発言には地域に密着した活動を行っている辻元さんのバイタリテイを感じさせられました。
 今後の取り組みの提起として、国民投票法案の上程・審議に向けての学習会や署名活動、地域での教育の反動化に反対する行動や憲法記念日における「憲法まつり」の構想、吹田市の「非核平和都市宣言」にふさわしい市政の実現など、具体的活動な活動提起がなされ、地域での情報発信も考えていこうと提起しながら結成集会を終えました。
 集会が終わっても会への賛同や、また辻元さんの本の販売など大いに盛り上がりました。
 今は、大きなせめぎ合いのときです。地域で一人一人が考えて行動する中で、「戦争できる国家」つくりに反対していきましょう。


米軍再編反対・地位協定見直しを!

米軍再編への政府方針

 小泉内閣は一一月一一日の閣議で、「日米安保体制を基調とする両国の協力関係は安保面における国際的取り組みを効果的に進める上でも重要だ」として在日米軍再編についての「中間報告」(一〇月二九日)に盛り込まれたものの具体化にむけて「的確、迅速な実施のため、総合的な観点から必要な措置を講じることを検討する」という政府基本方針を決定した。
 米軍普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部移設案、キャンプ座間に米陸軍第一軍団司令部と陸上自衛隊中央即応集団司令部を設置する案などの内容には、基地被害が増大する地元住民、そして財政措置、移転費用の負担、法制面の整備などでこれまた負担を増加させる地元自治体も批判・反対の声をあげている。

渉外知事会も政府へ要望


 在日米軍基地をかかえる都道県でつくる「渉外知事会」(会長・松沢成文神奈川県知事)は一一月一〇日、東京で臨時総会を開いて、政府への緊急要望事項を決定した。
 臨時総会では、松沢会長の「地元軽視は決して良い結果を生まない」という発言をはじめ、「中間報告」の決定まで地元への説明がまったくなかったことに対して批判する声がつづいた。そして、来年三月に予定されている「最終報告」に向けて、「関係地方公共団体の意向を踏まえた米側との交渉」「適時、適切な情報提供」を政府に要望するとしている。

地位協定見直しを

 渉外知事会のもうひとつの問題は、日米地位協定の見直しだ。地位協定は、日米安保条約に基づき、在日米軍人・軍属の日本での法的地位を定めたものだが、一九六〇年の締結後、一度も改正されていない。在日米軍、米軍人がさまざまな被害・犯罪を起こしているにもかかわらず、地位協定で米軍基地、米軍人は治外法権的に保護されている。たとえば、昨年におこった沖縄国際大への米軍ヘリ墜落事故でも、米軍が現場を封鎖し沖縄県警は事故機の検証すらできなかった。この事件、またその他もろもろの基地被害、米軍犯罪をきっかけに、見直し論が各地で激しくなっている。渉外知事会は、「二、三年以内…できるだけ短い期限」内での日米地位協定見直しを「最終報告」に盛り込むよう要望することとした。知事会はこれまでも地位協定改定を求めてきたが、こうした形で早期の見直しを要望するのは初めてのことだ。
 この要望は、一一日に、松沢会長や稲嶺恵一沖縄県知事らが麻生太郎外相や額賀福志郎防衛庁長官と面会、要請事項を直接手渡した。

米軍が一番嫌がること

 「渉外知事会」を前に松沢神奈川県知事は一一月八日の記者会見で、「渉外知事会」の会長として、国に日米地位協定の見直しを改めて要請する方針につぎのように語っている。
 日米地位協定は、米軍人が基地外で犯罪を起しても日本側は起訴前に身柄を拘束して取り調べをできない、基地内に産業汚染物質があっても日本の環境法令が適用されない、などの問題点がある。米軍が二〇〇八年に横須賀に配備しようとしている原子力艦船については、その寄港に際し、安全性をチェックする仕組みを協定の中にしっかり組み込みたい。

 しかし、地位協定の見直しの要望についての日本政府の対応はそうした声にまったく耳を傾けないものだ。松沢知事によれば、七日の要請では額賀福志郎防衛庁長官、麻生太郎外相ともに「米軍が一番嫌がっていることだ」と改定に消極的だったという。

 米軍再編に対する批判・不満の声は全国にひろがっている。各地で米軍基地に反対し、自衛隊強化・日米共同作戦強化に反対する闘いをすすめていこう。


沖縄の反基地闘争に連帯しよう

  
 沖縄県警は木津上人(日本山妙法寺)をすぐ釈放せよ

防衛庁への抗議行動

 一一月七日、恒例の防衛庁・防衛施設庁前抗議行動が行われた。
 集会参加者は、一〇月二九日に発表された日米安保協議による米軍再編「中間報告」に対する怒りの声をあげた。辺野古沖のかわりにキャンプシュワブに全長一八〇〇メートル滑走路をつくるという案は、新たな基地増設にほかならない。国は、この埋め立てを進めるため県知事から公有水面の使用権限を国にとりあげる特別措置法案を準備しているといわれている。命がけの海上行動を中心にした反対行動によって辺野古沖新基地建設は阻止されているし、「普天間即時閉鎖」「辺野古新基地建設反対」、「基地負担のへらない県内移設はゆるさない」の声を無視しての沖縄米軍機能強化に反対する闘いは、県知事も反対の意見を言わざるを得ない状況にある。
 集会では、キャンプ座間への米陸軍第一軍団司令部移駐と陸上自衛隊に新設される「対テロ」専門の「中央即応集団司令部」の移駐に反対する行動への参加の要請が行われた。
 日本山妙法寺からは、沖縄で平和の活動をおこなっていた木津博允上人の不当逮捕についての報告と沖縄県警察、検察への抗議行動参加へのアピールがなされた。

妙法寺木津上人不当逮捕

 一〇月二九日午前十一時ごろ、平和行脚中の日本山妙法寺の木津博充上人(六九才)が沖縄署に「公務執行妨害」のデッチあげで逮捕された。木津さんは、沖縄市にある米空軍嘉手納基地第二ゲート前で、「二〇〇五沖縄平和祈念行脚」の一環として基地撤去を求めて座り込みやビラの配布を行っていたが、警察車両の通行を妨げたとして公務執行妨害容疑で不当な逮捕をされたのである。
 沖縄・平和市民連絡会の共同代表の平良夏芽牧師は「今回の逮捕は偶然でも人ごとでもない。平和の訴えへの重大な弾圧だ」と批判し、「名護署の警備課長は、何かあるたびに近づいてきて、『何かあったら、あんたを逮捕するから。そうしたら<平良牧師、ついに逮捕>って新聞に載るよ』と嬉しそうに言い放っていきます。名護市役所で抗議する仲間にも、名指しで『お前、逮捕するぞ』と脅してきます。もちろん、そのような脅しで、私たちが潰れたりすることはありません。各地で起きている数々の『不法逮捕』が、戦争体制の準備なのだと思います。最初は、世論が納得する人から着手し、次に仲間が少ない人が狙われ、そして、先頭に立っている人が襲われるのだと思います。『正しい人に会いたかったら獄中に行け』ということにならないように頑張りましょう」とアピールしている。
 沖縄のマスコミもこの不当逮捕のニュースを流している。

 しかし、一一月一〇日には、さらに一八日までの勾留再延長となった。

 沖縄警察署、那覇地検沖縄支部、那覇地裁沖縄支部に抗議し、即時釈放を要求していこう。

抗議の電話や電報を!!
 抗議先:
 沖縄警察署署長 仲宗根孝沖縄市胡屋二―四―三 098(932)0110
 那覇地方検察局沖縄支部長 江口昌英 沖縄市知花六―七―五  098(939)1112
 那覇地方裁判所沖縄支部長 沖縄市知花六―七―七  098(939)0011


「宗教者九条の和」が平和巡礼&シンポジウム

 一一月五日、「輝かせたい憲法九条」をかかげて「宗教者九条の和」による第一回平和巡礼とシンポジウムが開かれた。
 午後一時に四ッ谷駅からの平和巡礼が出発し、平和憲法・九条を守ろうとアピールした。
 巡礼をおわってイグナチオ教会ヨセフホールでシンポジウム。
 はじめにベリス・メルセス宣教修道女会の弘田しずえさんが開会あいさつ。
 いま、九条が変えられたり、自衛隊がイラクに派兵されたり、沖縄・辺野古に新基地が作られたりしようとしている。宗教者は、ただ祈っているだけではいけない。一五年戦争の歴史を思い出すことが必要だ。行動のときだ。
 基調講演は、大正大学元学長・天台宗慈照院住職の村中祐生さん。
 日米政府の在日米軍再編で自衛隊の役割がますます大きいものになっている。そして小泉首相の靖国神社参拝は近隣諸国との関係を悪化させている。このような時代に宗教者に何ができるかが問われている。仏教者は如来使たれといわれている。お釈迦さまの使いということだ。そして、因果、原因を問うことが大事だとされている。争は相手を認めず、それを壊すために武器を持つことからおこる。憲法九条を守ることは宗教者の努めだ。それぞれの教派、お寺で平和の話を広げていくということだ。
つづいて日本キリスト教協議会総幹事の山本俊正さん、日蓮宗現代宗教研究所元所長で本念寺住職の石川浩徳さん、立正佼成会中央学術研究所所員の小林延行さん、カトリック長崎教区大司教の高見三明さんが発言した。


11・6  戦争アカン 基地いらん関西のつどい

 一一月六日、大阪城野外音楽堂において「11・6戦争アカン 基地いらん関西のつどい」が開催されました。
 当日は朝から雨が降り続く中でもありましたが、会場には関西各地から九〇〇名が集まって、雨を吹っ飛ばす勢いで集会とデモを繰り広げました。
 オープニングは「南の風人まーちゃん」バンドとエイサーで盛り上がり、集会では沖縄・辺野古の闘いの報告や韓国からのピヨンテク米軍基地拡張反対闘争の報告がありました。
 元レバノン大使の天木直人さんは憲法九条と平和外交の大切さについて短い時間でしたが熱弁をふるわれ、小泉首相のファッショ的なやり方を痛烈に批判をされていました。
 辺野古の闘いでは、沖縄には基地は要らない、これからも行動を継続して、オバー・オジーといっしょに闘いぬきますとの固い決意表明がありました。
 会場で沖縄と韓国の闘いにカンパを募ったところ二〇万円以上もがあつまりました。
 集会の最後に、集会アピールを採択し、大阪城から京橋まで約二時間ウオークを行い、市民にアピール。
 ウオークに入る頃には、すでに雨もやみ先頭にはエイサーバンドが出て多くの市民の注目を集めていました。
 憲法の改悪や日米同盟の強化など、反動政治にとことん反対していきましょう。


「日本は人種差別問題に取り組むべきだ」  国連第3委員会で報告・論議

国連総会第三委員会

 一一月七日、現代の人種主義や差別、排斥問題を担当する国連総会第三委員会で国連人権委員会のドゥドゥ・ディエン特別報告者(セネガル)が報告を行い、日本国内では、アイヌ民族など少数民族や在日韓国・朝鮮人、華僑、それにアジアや中東、アフリカ、欧州からの移住者に対する差別があり、同和問題が存在すると指摘し、包括的な人種差別禁止法の制定や教育が必要だと述べた。来春の国連人権委には具体的な対日勧告を盛り込んだ報告書が提出される。
 ディエン報告は、日本は憲法で人種や信条などによる差別を禁じているが、それでは不十分で、人種、外国人差別に特化した法律制定を求めている。
 ディエン氏は今年に訪日調査を行って、さまざまな差別の存在を確認し、それが上記の報告となったが、その中で「外国人差別的な東京都知事の発言に日本政府がどういう立場を取っているのか説明を求めたい」と言っている。 
 論議では、報告に対して、日本の国連代表部公使の高瀬寧は「何らかの形の差別が存在しない国はほとんどない」、日本は教育分野で差別解消に向けた取り組みを行っていると開き直った。
 一方、中国や韓国などの国の代表は、日本における人種差別の存在を指摘するとともに、石原都知事などの人種差別主義的な発言があると批判した。

差別・排外主義の石原発言

 その石原発言とは、二〇〇〇年四月に陸上自衛隊第一師団の記念行事の中で述べられたもので差別と排外主義のとんでもないものだった(別掲資料参照)。そして、その年の東京都防災行事「ビッグレスキュー」は、雑誌『Voice』一九九九年八月号での石原の言葉「陸海空の『三軍』を使った…合同大救済演習をやってもらいたい」という構想どおりのものとなって現実化した。差別・排外主義をあおり、それを軍国主義化・ファッショ化に結びつけようとする手口である。

多文化社会の日本を

 アメリカとの関係をつよめ、政治・軍事大国にのしあがり、国連常任理事国入りさえも狙う日本政府は、国連の場で、差別主義の国であることを批判される立場に追い込まれた。
 日本社会に根強くのこり、また拡大再生産されている差別構造は、日本が過去の侵略戦争を真摯に反省し、その償い・補償をサボっているだけでなく、過去の侵略戦争を美化し、ふたたび、侵略戦争の道に踏み出していることと表裏一体の関係にある。
 ディエン報告は、人種差別を生む歴史的文化的背景について、歴史をどのように見るのか、そしていかなる歴史の教科書を編纂するかをめぐって韓国・朝鮮、中国など隣国と繰り返し争いが起きていること、石原東京都知事のような一部の政治家が排外主義的かつ人種差別的な言動を繰り返していること、日本には人種主義や差別・排外主義的な行動に対する全国的な法規が無いことをあげ、日本政府は政治と経済の両側面から、その社会と社会生活の仕組みを改革し、そうすることによって国際社会の流れに合わせ、多元的文化の社会を築くべきだ、としている。まったく、そのとおりである。

 注・「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」は、一九六五年に採択され、日本は一九九五年に加入した。
 その第四条では、以下の項目をあげている。
 (a)人種的優越又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布、人種差別の扇動、いかなる人種若しくは皮膚の色若しくは種族的出身を異にする人の集団に対するものであるかを問わずすべての暴力行為又はその行為の扇動及び人種主義に基づく活動に対する資金援助を含むいかなる援助の提供も、法律で処罰すべき犯罪であることを宣言すること。
 (b)人種差別を助長し及び扇動する団体及び組織的宣伝活動その他のすべての宣伝活動を違法であるとして禁止するものとし、このような団体又は活動への参加が法律で処罰すべき犯罪であることを認めること。
 (c)国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと。

石原知事の「三国人」発言

 石原慎太郎東京都知事は、二〇〇〇年四月九日、陸上自衛隊第一師団(「政経中枢師団」として東京都練馬駐屯地に司令部。東京・神奈川・埼玉・静岡・山梨・千葉・茨城の全国約三分の一の人口を含む七つの都県を防衛・警備及び災害派遣担当地域とする)の創設記念行事でつぎのような発言をおこなった。

 「……白人にとってみると、日本人だけが有色人種の中で唯一見事な近代国家を作ったということそのものが、意に沿わない事実だったのでありましょう。ゆえに、このへんを非常に危険視したアメリカは、あのいびつな憲法に象徴されるようにこの日本の解体を図って、残念ながらその結果が今日露呈されていることをだれも否めないと思います。
 そういう中で皆さん、ある意味で社会の中に途絶された形で、場合によっては白眼視されながら日々精励され、この国家をいったん緩急の時には守る、国民の生命を守る、財産を守るために精励していらっしゃる。これは当たり前のことであると同時に、実は日本の社会にとって稀有(けう)なことであると、残念ながら思わざるをえない。どうか一つこういった状況に決して屈することのないように、いったん緩急の時に崇高な目的を達成されるために精進を続けて頂きたいということを、改めてこの機会に国民、都民を代表して熱願する次第でございます。
 先程、師団長の言葉にありましたが、この九月三日に陸海空の三軍を使ってのこの東京を防衛する、災害を防止する、災害を救急する大演習をやって頂きます。今日の東京をみますと、不法入国した多くの三国人、外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返している。もはや東京の犯罪の形は過去と違ってきた。こういう状況で、すごく大きな災害が起きた時には大きな大きな騒じょう事件すらですね想定される、そういう現状であります。こういうことに対処するためには我々警察の力をもっても限りがある。だからこそ、そういう時に皆さんに出動願って、災害の救急だけではなしに、やはり治安の維持もひとつ皆さんの大きな目的として遂行して頂きたいということを期待しております。

 どうか、この来る九月三日、おそらく敗戦後日本で初めての大きな作業を使っての、市民のための、都民のための、国民のための大きな演習が繰り広げられますが、そこでやはり、国家の軍隊、国家にとっての軍隊の意義というものを、価値というものを皆さんは何としても中核の第一師団として、国民に都民にしっかりと示して頂きたいということをここで改めてお願いし、期待して、本日の祝辞と皆さんに対するお礼と期待の言葉にさせていただきます。頑張って下さい。」


KODAMA

 
 このごろのブッシュ政権

 報道を見ていると、最近のブッシュ政権には一時の勢いがまったく感じられないようだ。かなりの困難に直面しているといっていいだろう。
 米メディアの世論調査によると、ブッシュ政権の支持率は最低記録を更新中だ。
 最も近い問題としては、米中央情報局(CIA)工作員身元漏えい事件で、チェイニー副大統領の首席補佐官リビーが起訴されたことだ。今後、副大統領をふくめてホワイトハウス高官が証言を求められるのは確実といわれ、裁判の長期化は避けられない情勢となった。
 そもそも、この問題は、イラク戦争開戦直前に、イラク・フセイン政権がニジェールからウランを購入したとする情報が発端となっている。これをブッシュ政権は、フセイン政権の大量破壊兵器開発の証拠だとして開戦に踏み切ったのだが、これをCIAは疑わしいとし、ウィルソン元大使をニジェールに派遣したが、ウィルソンも同様の主張をした。その後、「ウィルソン夫人はCIAの工作員だ」と何者かがマスコミにリークした。
 それが、リビーらだとされて今回の裁判が起こった。イラク開戦に躊躇するCIAに対するネオコン派の攻撃だと見られる。この暴露によってよってCIAは大きな打撃をうけることになった。イラク・フセイン政権打倒の口実をもうけて開戦を急ぐネオコン・軍部好戦派・軍需産業などは、CIAのスパイ網を破壊するというアメリカ帝国の「国益」までおかしたのである。ちなみに、リビーは、ウォルフォウィッツ前国防副長官(現・世界銀行総裁)の直弟子のネオコンの中心人物だ。
 「愛国者」を装うネオコン派のこうした行動は右派を含めて全米に衝撃を与えた。ブッシュ政権の重要な支持基盤はキリスト教保守派だが、このような政権の「道徳的腐敗」に動揺している。
 先のハリケーン・カトリーナに対する対応の不手際は、反テロ戦争を優先した結果、災害対策がまったくおざなりになっていたことをしめしたが、今回の事件も、戦争最優先のためには、どんなことでもやるというブッシュ政権の本質を明らかにしたものだろう。
 そして、何よりもイラク戦争そのものの現状だ。
 二〇〇三年三月の開戦、五月にはブッシュの「勝利宣言」、年末のフセイン拘束……。しかし、イラクでの抵抗運動は激しさを加え、イラク国内では宗派・民族対立の噴出、そして、米兵の死者の増加、アブグレイブ収容所での拷問・虐待問題、多国籍占領軍からの離脱国の続出、アメリカ国内での反戦運動の高揚その他もろもろの事件は、ブッシュのイラク戦争政策の破綻が広がっていることを物語っている。そして、米軍はイラク民衆を虐殺し続けている。
 しかし、ブッシュは政策を改めようとしない。やたらに「神」を連発するブッシュは、熱心なキリスト教徒だというが、キリスト教にもいろいろあるというものだ。ブッシュを取り巻く宗教右派・原理主義勢力は、実はとんでもない連中で、世界の最終戦争たるハルマゲドンがおこれば、自分たちだけが救済されるという夢を見続けるオカルトチックな「信仰」をもっているという。かつてのレーガン政権の時には、米ソ核戦争が起これば、それによって、やっと、黙示録的な世界の終わりが来て、キリストの再臨が実現する。だから、核戦争を恐れることはない、いやむしろ、はやくそうしたことがおこったほうが、よいのだという主張があった。その後の民主党政権ではそうした主張はホワイトハウスからは排除されたが、ブッシュ共和党政権でふたたび政権に強力な影響力をもつようになったのだ。ブッシュ政権は、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官らの軍需産業派が、イスラエル・シオニストの対米出先機関であるネオコンと組み、それを、広範な宗教右派が支持票を入れるという構造になっている。
 アル中だったのが「神」に救われたというのが、ブッシュが宗教右派の支持を集めるアピールだが、政権ではチェイニー、ラムズフェルドがブッシュを操っているというのが本当のところだろう。
 アメリカの大統領選挙では、赤(共和党支持)と青(民主党支持)が地図上でもはっきり分かれていたが、赤の多くは、内陸部だった。そこでは、進化論も否定するような考えが横行している。ブッシュ政権の支持基盤にはイスラム原理主義と良く似たものがある。原理主義と原理主義の対決では問題はいっこうに解決しないのである。 
 しかし、いま、アメリカの世論も、ブッシュ政権の「実績」を見せられて、自分たちのこれまでの考えを反省し始めているのかもしれない。
 ちなみに、このところの各種選挙では共和党は敗北をつづけている。(H)