人民新報 ・ 第1189号<統合282(2006年1月1日)
  
                  目次

● 改憲阻止・反戦の闘いを前進させ、小泉政権を追いつめよう  ( 労働者社会主義同盟中央常任委員会 )

● 12・11  WORLD PEACE NOW  終わらせようイラク占領 すぐもどれ自衛隊

● 辺野古沖も湾岸案もダメ!

● 木津博允僧侶(日本山妙法寺)不当逮捕事件の報告会

● 06春闘勝利へ  全労協春闘討論集会

● 日本経団連の対春闘方針  今年も賃金抑制と労組の抱きこみ

● 東アジア首脳会議  破綻する小泉外交

● 詩 / 生まれた時のこと  ( 長谷川千賀子 )

● KODAMA  

● 複眼単眼  /  みずほ証券の誤発注と筑波の蝦蟇




改憲阻止・反戦の闘いを前進させ、小泉政権を追いつめよう

               
労働者社会主義同盟中央常任委員会


 ブッシュ大統領は、サダム・フセインが大量兵器を保有していたという情報は誤りであったことを認めた。以前には、フセイン政権と「テロリスト」との関係もなかったことを認めている。
 にもかかわらず、ブッシュ政権は、イラク戦争は正しかったと強弁し、アメリカ国内でも裁判所の手続きなくして多くの盗聴を行ったことへの世論の批判に「戦時中」ということで開き直っている。
 ブッシュ政権とりわけネオコン勢力は、戦前と開戦初期には、イラク戦争は短期に決着し、イラク民衆は米軍を解放軍として歓迎するなどと甘い幻想をふり巻いていた。アメリカに追随する各国の保守政権や右派マスコミ・言論はそれを信じ、ブッシュの呼びかけにこたえて、侵略戦争に加担し、その中でひと儲けを狙ったのであった。小泉はイギリスのブレアとともに、ブッシュの忠実な番犬としてふるまったのだった。
 だがいま、開戦の口実にしたものがことごとくデッテ上げだったことが明白になった。それだけではない。占領へのイラク民衆の反発、占領軍とカイライ軍・警察への攻撃の激化、米兵の戦傷者の増大、多国籍占領軍から離脱する国の続出、アメリカの国際社会からの孤立などは、ブッシュ政権を追いつめている。あいついだ巨大ハリケーン災害は、ブッシュ政権が、「テロとの戦争」に全力をあげ、民生施策がまったく手抜きになっていることを示した。
 こうして、アメリカ本国でも、ブッシュ政権に対する批判の運動が大きな盛り上がりを見せるようになった。侵略戦争で息子が戦死したシンディー・シーハンさんの闘いを包んで、全米にイラク戦争反対、イラクからの即時撤退の声が広がっている。ブッシュ批判は、草の根からの反戦運動にとどまらない。戦争を支持してきた政治家、マスメディアなどからも、ブッシュ批判が大きくなってきている。米国議会では撤退問題が論議されるようになった。ブッシュの侵略戦争を支える反民主主義・ファッショ的な「愛国者法」の延長にも反対する議員が増えている。ブッシュ政権は、この侵略戦争が「泥沼化」「ベトナム化」する中で連邦財政赤字をふくらませた。侵略の最前線に送られる陸軍や海兵隊では新兵募集もままならない状況にある。
 ところがブッシュ政権は、イラクやアフガニスタンだけでなく、イランやシリアにも攻撃をしかけようとしている。だが、いくらアメリカ帝国主義の野望が大きくてもその実力には限りがあるし、アメリカの横暴さに反対する運動や国家はますます増えている。年末には、アメリカが自分の「裏庭」だと思っている南アメリカのボリビアにもうひとつの反米・非米政権が成立した。この政権は他の反米・非米国家と連携しての動きを強めるだろう。
 国際経済関係でも、アメリカの支配、グローバリゼーション反対の動きが激しい。アメリカは、韓国・釜山でのAPECや中国・香港でのWTO会議でも、民衆の激しい抗議行動に直面し、会議内部では各国間の矛盾は解決できずに諸懸案は先送りされた。そうしたことの背景には、ヨーロッパ圏の拡大、そして急速に力をつけてきているアジアの台頭がある。
 二〇〇六年は、ブッシュのイラク戦争・占領の行き詰まりを軸に、政治、経済、軍事の各面にわたってアメリカの世界支配は大きな打撃を受けることになるだろう。われわれは全世界の民衆とともに、イラク反戦闘争を前進させ、アメリカを中心とする帝国主義支配体制に打撃を与えるために奮闘しよう。
 アメリカは、世界支配のための戦争体制づくりに、各国の保守・反動政権をさまざまに使おうとしている。それらの国の支配層も、アメリカとの関係によって自らの支配を保障してもらうとともに、アメリカの侵略戦争のなかで、権益を獲得しようとしているのである。
 ブッシュによる米軍再編(トランスフォーメーション)は、世界につながる米軍基地が置かれている属国的な地域をより有効につかうためのものだが、それをもっとも積極的に推進しようとしているのが、日本・小泉政権である。
 アメリカは、沖縄を橋頭堡とする在日米軍を再編して強化し、陸海空軍の前線指揮機能を日本に移転させようとしている。在日米軍を日本の自衛隊中枢機能と結合させ、そして米日の軍隊が世界中のどこでも共同作戦が行えるように狙っているのである。そのためには、日本国憲法第九条をどうしても変えなければならないと、アメリカは再三日本に要求してきている。二〇〇〇年一〇月のアーミテージ・レポートは、「日本による集団的自衛権の禁止は米日間同盟協力にとって束縛となっている。この禁止を取り払えば、より緊密で、より有効な安保同盟となる」とし、日米同盟を「アメリカとイギリスのような特別の関係」とするように言っていた。名前は「レポート」だが実際は対日命令であり、その後、この「押し付け改憲」命令に沿って自民党は九条改憲を強引に推し進めてきたのである。
 一一月に自民党は、九条での軍保有と今後の改憲を容易にする九六条の改悪を目玉にした「新憲法草案」を正式に決定した。民主党も前原代表になってからは九条改憲を求める勢力の動きが活発化した。そして、〇六年の通常国会には、改憲のための国民投票法案が上程される可能性が大きくなっている。同時に、憲法と表裏一体の教育基本法の改悪法案も国会にあげられる動きがあり、〇六年には本格的に憲法決戦状況に突入する。
 9・11総選挙は小泉与党に圧倒的な勝利をもたらした。その勢いに乗って、小泉自民党は、公明党、そして民主党を抱き込んで、一気に政治の反動化と改憲を行おうとしている。だが、ここにきて政治の流れに変化が見えてきている。人気取りのためにいいとこ取りばかりしてきた政府・自民党にとって、積み残しの課題が山積しており、大増税についても言わざるを得なくなってきた。医療・年金などの問題、人口絶対減の現実化、長期不況、失業と不安定雇用、社会の二極化、イラク戦争の現実などは、小泉「マジック」の夢を急速に醒ましつつある。そして、憲法九条については依然として国民の六〜七割が改悪反対であり、改憲の危機感は各地・各階層にさまざまなかたちの「九条の会」をつくりだしている。小泉もブッシュと同様にその支持基盤は弱まってきている。
 いま、われわれは大きな変化の時を迎えている。日本一国的に見ると、敵味方の力関係には厳しいものがある。しかし、敵は強大に見えるが、その中では、空洞化が進んでいる。世界各地での人びとの闘いがそれを証明している。
 日本でも、改憲阻止や基地再編強化反対、イラク反戦の闘いをはじめ、さまざまな運動が進み、敵の攻撃は人民の側の反撃のかずかずの契機を生んでいる。ブッシュに追随しアジアで孤立する小泉政治を追い詰め打倒していくために断固として闘おう。
 
 二〇〇六年、われわれは、戦争国家化に抗し、反戦・平和・憲法改悪阻止の共同の闘いに全力をあげて取り組もう。労働運動の前進をかちとり、そして社会主義勢力の再編・統合・再生を推し進めるために奮闘しよう。
 反動的で横暴な小泉政治を終わらせよう!


12・11

    
WORLD PEACE NOW  終わらせようイラク占領 すぐもどれ自衛隊

 一二月八日、小泉は臨時閣議を開き、イラクへの自衛隊派遣をもう一年間延長した。米軍主導の多国籍占領軍からあいついで離脱する国が増えているにもかかわらず日本政府は一二月一四日に期限が切れるイラク派兵自衛隊撤退をまたまた先に延ばしたのだ。このことは既に一一月に来日したブッシュに約束したことの再確認ではあるが、この時期にあえて派兵延長決定をおこなった小泉の罪は大きい。その一方で、今回の計画には、陸上自衛隊が活動するイラク南部サマワで治安維持活動を担うイギリス、オーストラリア軍などの活動状況を見極め「適切に対応する」と明記した。これは期限前の陸自撤退を示唆したものとマスコミは報道しているが、オーストラリア軍などが撤退しなければ自衛隊も撤退しないということで、他国に下駄をあずけた形だ。オーストラリア政府は日本自衛隊がいるから撤退できないと説明しているとも言われ、双方で国内世論を操作しているようだ。いまやなんの役割も果たしていない陸自と違って、航空自衛隊は米軍の武器・兵員の輸送などますます米占領軍を支える重要な任務を遂行するため「撤退」などではなく長期派兵となる。しかし、イラク戦争をめぐる情勢は、ブッシュ・ブレア・小泉にとって深刻さの度合いを加えている。
 全世界でイラク反戦の声をおおきくあげ、侵略戦争を決定的に破綻させよう。

 小泉内閣が自衛隊のイラク派兵基本計画をさらに一年延長したことに抗議し、自衛隊の即時撤退を求めて、一二月一一日、東京・上野水上音楽堂で「WORLD PEACE NOW 12・11 終わらせよう、イラク占領 タイムオーバー、すぐもどれ自衛隊」行動が行われた。
 開会あいさつは富山洋子さん。
 WORLD PEACE NOWはイラク開戦に反対し、イラクの人びと、そして世界の人びとと連携を広げながら運動を続けてきた。先ごろ自民党は新憲法草案を出したが、その狙いは、かつての悲惨な戦争の教訓をまったく無視して、アメリカとともに戦争をやる日本にしようとしていることだ。今日、韓国では米軍基地の拡張に反対する大きな闘いが取り組まれている。さらに大きな輪をつくりだして反戦の声をひろげていこう。
 神奈川平和運動センターからは金子豊貴男相模原市議(キャンプ座間への米第一軍団の移駐を歓迎しない会)。
 神奈川県には沖縄に次ぐ第二の米軍基地がある。キャンプ座間には米陸軍第一軍団司令部が移転されようとしている。そして同時に陸上自衛隊の中央即応部隊が来て日米の陸軍の機能が一体化される。横須賀には原子力空母を配備して米海軍機能を強化すると共に、海上自衛隊との共同がいっそう強められる。そして東京多摩の横田米空軍基地では日米の空軍の司令部が機能することになる。いまおこなわれている米軍再編は、米軍と自衛隊が一体となってアジア太平洋そして地球的な規模での戦争ができる体制をつくろうとするものだ。イラクの自衛隊派兵がもう一年延長されたが、これはそうした体制つくりにむけての動きにほかならない。米軍基地に反対する運動が各地で起こっているが、一一月一三日に行われたキャンプ座間包囲行動は、在日米軍の新聞「スターズ・アンド・ストライプス」も一面で報じた。神奈川では米軍基地強化に自治体あげて反対運動がおこっている。横須賀への原子力空母配備問題では平和運動団体はもとより市長も訪米して直接に反対意見を伝えている。相模原市では、戦中の日本軍、戦後の米軍基地と七〇年もにわたって基地の被害を受けてきた。もう我慢ができない。市民集会で、相模原の小川市長は、たとえ戦車にひき殺されても、基地反対を貫くと言った。隣の座間市の星野市長は、ミサイルを打ち込まれても反対だと決意を表明している。市、市議会、地域自治会協議会が一緒になって粘り強い反対運動をくりひろげているが、多くの皆さんと共にいっそう力強い運動として前進させていきたい。
 つづいて、NGO団体「PEACE ON」でイラクの人びとをサポートする活動をつづけている相澤恭行さん。
 二〇〇三年の一月一八日のWPNの行動以来参加しているが、いまイラクでのNGO活動はきわめて困難な状況に追い込まれている。それは自衛隊がイラクに派兵されたことによって、日本のNGOも武装勢力の攻撃対象とされるようになってしまったからだ。日本人だという理由だけですでに六人がイラクで殺された。これが、自衛隊の派兵ということの持つ意味なのだ。イラクの人は言っている。日本人に一番やってもらいたいことは、できるだけ早く自衛隊を撤退させてほしいということだ。そうしてアメリカを孤立させて欲しい、ということだ。
 ピースボートの川崎哲さん。
 今朝、韓国から帰ってきた。韓国では日本・韓国・オーストラリアなどの国から参加した人びとで、東アジアの平和を市民がどうつくっていくかについての会議に参加した。それらの国はみなアメリカの同盟国でイラクに派兵している。日本政府は自衛隊の撤退の時期をオーストラリアまかせにしているようだが、オーストラリアの人もその政府は軍の撤退は日本次第だと言っていると報告していた。自衛隊は一九九二年のカンボジアPKOではじめて海外派兵を法制化したが、その後もいつもずるずる派兵してきた。このままでは恒久的海外派兵軍の創設となってしまう。いまこそ独自の判断で撤退すべきだ。私たちの前には二つの選択がある。米軍と一体となって戦争するのか、それとも世界の市民とともに平和に生きるかだ。
 ピースコンサートでは、喜納昌吉さんが熱唱して寒さを吹きとばす。
集会を終わり、解雇争議中の全国一般東京労組ミューズ分会の歌と演奏に送られてパレードが出発した。


辺野古沖も湾岸案もダメ!

 日米両政府は在日米軍再編協議を来年三月までに決着させようとしている。
 一〇月二九日の日米安全保障協議委員会(2プラス2)では、普天間飛行場を辺野古沿岸に移設すること、嘉手納基地以南の米軍基地をキャンプ・シュワプやキャンプ・ハンセンを中心とする北部地域に集中移転することなどを合意した。そして、小泉政権は沖縄県民の強い反対運動を排除するため県知事が有する公有水面の使用権限を国に移す特別措置法をつくるとしている。
 絶対にこうした政府のやり方を許してはならない。中間報告の出た次の日の一〇月三〇日には、沖縄では、基地の県内移設に反対する県民会議主催の「日米両政府の横暴許すな 普天間基地の即時閉鎖・撤去、辺野古等基地の県内移設に反対する県民総決起大会」が開かれ、大会決議で、@再編協議にかかる日米合意案を撤回せよ、A普天間基地を即時閉鎖・撒去せよ、B辺野古新基地建設を断念せよ、Cあらゆる基地のたらい回しをやめよ、の四点を日米政府に要請した。
 米軍からの強い希望であった辺野古沖への新基地建設は、現地の文字通り命をかけた海上での闘いを最先頭に全国からの支援と各地の闘い(首都圏では〇四年六月からの防衛庁・防衛施設庁への毎週月曜行動など)によって一応の断念に追い込むことができた。しかし、辺野古沿岸案が出て、またそこが強い反対に会うと、再び沖案となる可能性は否定できない。沖縄県内でのたらいまわしの中間報告案への反対運動が盛り上がってきている。沖縄だけでなく、各地で米軍基地に反対する動きが拡大している。

 一二月一九日の月曜日、東京も厳しい寒波に教われる中で、防衛庁・防衛施設庁前抗議行動が行われた。シュプレヒコールをあげ、抗議文を手渡した。当日の抗議文は明治大学駿台文学会からのもの。

 抗議・要請文「辺野古崎への新基地建設を白紙撤回しろ」 
 …私たちは今回の辺野古崎への基地建設計画の白紙撤回はもちろん、沖縄から全ての基地を撤去することを求める。沖縄から基地を撤去することこそが、沖縄と「本土」との関係を築いていくための一歩である。以下のことを要求する。@辺野古崎への新基地建設計画を白紙撤回しろ、A日米協議に基づく米軍再編協議「中間案」を白紙撤回しろ、B沖縄から全ての基地を撤去しろ。

  明治大学駿台文学会


木津博允僧侶(日本山妙法寺)不当逮捕事件の報告会

 一一月一六日、平和を創りだす宗教者ネットの主催で「木津僧侶不当逮捕事件報告会」が開かれた。
 日本山妙法寺の木津博允上人(六九歳)は、一〇月二九日、沖縄での平和行脚の行動中に沖縄警察署によって不当に逮捕された。一九回目になる平和行脚のこの日は、嘉手納米空軍基地第二ゲート前で僧侶と支援者がビラまきをし、他の僧侶たちは歩道上で座り、太鼓をうち、「南無妙法蓮華経」の題目を唱えながら平和を祈念する行動を行っていた。これまでの行動には警察との衝突は一切なかった。
 沖縄警察署のパトカーがやってきて、ビラ配布の禁止と駐車していた妙法寺の車の移動するようにと言ってきた。これに応じてビラ配布の中止と車の移動を行ったが、木津さんはパトカーに近寄り、助手席のドアに屈んで「なぜ禁止するのか」と静かに問いかけた。警官は終始無言で答えず。そして突然パトカーを急発進させた。木津さんはその場に転倒し、そのパトカーは数メートル行って急停車し、木津さんが危険な発進に抗議した。すると別のパトカーが来て木津さんを不当に逮捕したのだった。
 木津さんは、二度にわたって勾留延長され二〇日間にもわたる不当な勾留がおこなわれた。
沖縄現地では、マスコミも大きくこの事件を取り上げ、宗教者を中心に多くの人びとが、連日、警察署、検察庁、裁判所、拘置所に抗議と木津さんへの激励の行動を展開した。

報告会で、木津さんは元気に当時の様子を語った。
不当逮捕の二〇日間は、声を出しての御題目も唱修行も許されませんでした。警察と一体となって検察も裁判所も、私の勾留を二度も延長し、権力を縦横に乱用しました。それは歯止めなき権力の暴走でした。私は、世に聞くデッテあげとはこのようにつくられるものだということを今回身をもって実体験しました。私は当初より、たとえ逮捕した警察官や誰人にたいしても一切の恨みもありませんし、二〇日間、礼をもって接してきました。今後戦争国家・日米政府権力の平和運動に対しての弾圧は強まっていくでしょうが、私たちが忍んで忍んで、どこまでも連帯を崩さずに、日米政府の権力の横暴を諌めていくならばかならず私たちは勝利できる。このことを証明したのがこの度の救援活動でした。実に多くの人からの支援がありました。釈放されてからも、見知らぬ人たちから、「よかったですね」「沖縄のためにありがとう」などの声をかけられました。
 私は獄中にあって、人々の救援活動を心の支えに「さらにみんなと共に平和祈念の運動に尽力するぞ」と心から思って、拘束生活を耐え忍ぶことができました。これからも皆さまと共に、非暴力の世界をつくるために努力し精進させていただく決意です。

 木津さんの発言につづいて、弁護士、キリスト者。仏教者が発言した。


06春闘勝利へ  全労協春闘討論集会

 〇六春闘がはじまった。日本経団連は、一二月一三日「〇六年版 経営労働政策委員会報告〜経営者よ 正しく 強かれ」を発表した。
 労組も全国組織、単産、単組もそれぞれ春闘体制構築に入った。

 一二月一七日、全国労働組合連絡協議会(全労協)の春闘討論集会が開かれた。
 主催者を代表して、藤崎良三議長があいさつ。
 政府やマスコミは一定の景気回復が実現したといっているが、われわれ労働者にはまったく実感がない。小泉内閣の構造改革と企業のリストラ攻撃で、社会の二分化が急速に進んでいる。厚生労働省などの発表でも安定雇用は少なくなり、低賃金の非正規労働者がふえつづけていることがわかる。一方でいくつかの企業は空前の儲けをだしているが、その利潤は勝ち組企業、株主とひとにぎりの正社員にのみ分配されている。多くの国民は中流から下流に流されている。新自由主義と市場原理が吹き荒れているが、われわれは労働者の生活と雇用を守り人権と平和を守って闘わなければならない。憲法、教育基本法の改悪が目論まれているが、まさに今、二一世紀の日本が問われているのだ。〇六春闘では、賃上げのほかにも労働法制改悪、国鉄闘争・民間争議の勝利、公務員攻撃への反撃、改憲阻止などの闘いを勝利させていこう。
 半田滋さん(東京新聞・社会部)が「米軍再編と憲法改悪」と題して記念講演をおこなった。
 つづいて、中岡基明全労協事務局長が、「春闘方針案」を提起した。
 全労協の春闘方針を提起する。
 来春闘のメインスローガンは、@〇六春闘勝利、生活できる賃上げを勝ち取ろう、A非正規労働者の権利拡大、均等待遇を実現しよう、B国鉄闘争勝利闘争団の納得いく解決を、C自衛隊を直ちにイラクから撤兵させ、平和憲法を守る闘いを強めよう、だ。闘いの基調としては、小泉の「労働組合=既得権益保守勢力」キャンペーンによる生活権、労働基本権、団結権、交渉権、争議権の纂奪攻撃に対抗し、労働者(正規・非正規、官・民)の信頼を回復し、労働組合の真の復権を実現するために、次の七つの大きな柱をたてた。@中小―民問労働者の生活できる賃上げ獲得と公務員労働者攻撃に対する反撃を結びつけて闘う。公契約における生活できる賃金を求めて闘う。生活できる最低賃金を求めて闘う、A非正規労働者、移住労働者、女性労働者への差別を無くし、均等待遇を求めて闘う、Bリストラ・失業、労働法制の改悪、医療制度改悪など社会保障制度切り捨て、サラリーマン大増税に反対し、安心して働けるための雇用対策の強化と、最低賃金の大幅引き上げを求めて闘う、C国鉄闘争勝利では闘争団の納得いく解決、全ての争議勝利のために闘う、D憲法改悪に反対し、イラクからの自衛隊撤退、有事法制発動、国民投票法案を許さない闘いをつくりだす、E〇六春闘を地域の労組、市民団体と共同して作り出す、F新自由主義との闘いを国際連帯を強化して進める、ということだ。
 課題別の取り組みでは、賃金闘争では、生活できる賃金、格差是正を含む賃上げにむけて、全労協は、賃上げ要求基準を一万七千四百円を下回らないものとし、パート労働者の時給は、一〇〇円アップを基本として奮闘する。また最低賃金を月額一五万円、時問給千円を求めて闘いに全力で取り組む。
 小泉構造改革との闘い、反行革・反リストラの闘いでは、反失業、雇用確保の取り組み、高齢者の雇用促進の闘い、国と地方自治体による行政改草と対決する闘い、「労使委員会制度」「解雇の金銭解決方式」「労働時間規制適用除外拡大」の労働契約法制に反対し、「解雇制限法」制定させるために闘い、中小企業労働者の定年再雇用制度・退職金制度の拡充・法制化、非正規労働者・女性労働者への差別を無くし、均等待遇の実現、移住労働者の権利確立、郵政「民営化」反対・NTTリストラ再編と闘い、小泉「構造改草」(年金・医療・福祉切り捨て)と闘う。
その他に、イラク反戦・自衛隊の撤兵、憲法・教育基本法の改悪に反対し、新自由主義・グローバリゼーションとの闘い、WTOやFTAに反対して国際連帯活動を強化する活動をおこなう。
 労組への組織率は一八%台となった。いまこそ、労働組合を復権させ労働基本権を守るために、未組織労働者の組織化に全力をあげる。
 こうした要求を実現するために、職場で団結を強め、闘う態勢を強化したい。経営側と粘り強く交渉をすすめ、スト権の確立、ストライキの配置をして闘う。
 都道府県単位で春闘勝利決起集会を開催し、重点課題を柱にして全国キャンペーン運動を展開する。全国キャンペーンでは、各地の労働局にむけて、金銭解決方式等の労働契約法制反対、地域最低賃金の大幅引き上げ、産別最賃廃止反対、サービス残業の摘発、労働保険・社会保険の完全実施、雇用確保のための施策確定と労働組合の参画を要求する。自治体にたいしては、公契約における労働条件の確保の条例化、公共事業入札の要件遵守、非正規労働者の均等待遇実現に向けた条例化運動を求めていきたい。
 スケジュール的には、二月六日の〇六けんり春闘全国実行委員会発足総会・シンポジューム、二月一六日の国鉄闘争・全争議勝利総行動などを闘って、春闘の山場となる三月一七日に春闘勝利中央決起集会・デモをかまえ、その後の未解決・中小春闘に勝利する態勢を作っていきたい。

 中岡事務局長の提起を受けて、郵政労働者ユニオン、東京清掃労組、東水労、都労連、電通労組、全国一般全国協、全統一、東京労組、東部労組、女性委員会、石油労組連絡会、地方からは大阪全労協、京都総評、神奈川県共闘から決意表明が行われ、最後に前田裕晤副議長が閉会の言葉を述べ、団結がんばろうで、春闘に向けての出発を確認しあった。


日本経団連の対春闘方針  今年も賃金抑制と労組の抱きこみ

 一二月一三日、日本経済団体連合会は財界側の来春闘方針となる「二〇〇六年版 経営労働政策委員会報告」をだした。タイトルは「経営者よ 正しく 強かれ」となっている。
 奥田碩会長は儲かっているところは賃上げの回答を出すべきだと言い、それに乗ってマスコミは今回の報告を持ち上げている。だがはたしてそうか。以下、報告の「春季労使交渉・労使協議に臨む経営側のスタンス」の部分より。

 今次交渉・協議にあたっては、@自社の支払能力による賃金決定を基本とする、A総額人件費をもとに判断する、B中長期的な見通しに立った経営判断により決定する、C短期的な業績は賞与・一時金に反映する、D企業内の幅広い課題について労使間で積極的に協議・話し合いを行う――という五つの観点が重要である。
 賃金決定においては、生産性の裏付けのない、横並びで賃金水準を底上げするベースアップはわが国の高コスト構造の原因となるだけでなく、企業の競争力を損ねる。個別企業の賃金決定は個別労使がそれぞれの経営事情を踏まえて行なうべきである。いかなる決定を行うかはあくまで個別労使の自由だが、結果的には、激しい国際競争と先行き不透明な経営環境が続くなか、国際的にトップレベルにある賃金水準をこれ以上引き上げることはできないとの判断に至る企業が大多数を占めるものと思われる。
 今次交渉・協議においては、定期昇給制度の見直しが引き続き重要な課題であり、だれもが自動的に昇給するという従来の運用ではなく、能力・役割・業績を中心とした制度への抜本的な改革を急ぐべきである。また、団塊世代の六〇歳定年が間近であり、退職金・年金制度、定年後の継続雇用やその処遇などについても、早急な対処が求められる。
 毎年の春季労使交渉・協議は、労使が定期的に情報を共有し、意見交換をはかる場としてその意義は大きい。今後の労使関係においては、賃金など労働条件一般について議論し、さらに広く経済・経営などについても認識の共有化をはかることが大切である。
 横並びの「春闘」はすでに終焉した。春季の労使討議の場として「春討」が継続・発展することを期待したい。


東アジア首脳会議  破綻する小泉外交

矛盾の激化する東アジア

 二一世紀に入ってさまざまな対立が表面化してきている。
 東アジアでは、〇五年後半に、APEC釜山会議、WTO香港会議があり、そこではグローバリゼーションに反対する人びとの反対運動が展開され、それにたいする激しい弾圧が相次いだ。
 そして、一方でグローバリゼーションを進める各国政府の間にもそれぞれの利害がぶつかり合う場面が多く見られた。
 一二月一四日、マレーシアのクアラルンプールで開かれた東アジア首脳会議でも、指導権をめぐる対立・抗争が水面下で繰り広げられた。
 首脳会議は、ASEAN一〇カ国と日本、中国、韓国、それにインド、オーストラリア、ニュージーランドの計一六カ国が参加しはじめて東アジアの首脳が一堂に会してのサミットとなった。
 会議は今後の東アジア共同体形成にむけての「クアラルンプール宣言」に調印して閉幕した。
 宣言は、「東アジア首脳会議がこの地域における共同体の形成に重要な役割を果たし得るとの見方を共有し」て、@関心と懸念を共有する広範な戦略的、政治的及び経済的諸問題について、東アジアにおける平和、安定及び経済的繁栄を促進することを目的とした対話を行うためのフォーラムとしての東アジア首脳会議の設置、A東アジア首脳会議の努力は、ASEAN共同体の実現と整合的に、かつ、これを強化すると共に、進化する地域枠組みの不可分の一部を形成、B東アジア首脳会議は、開放的、包含的、透明かつ外部志向のフォーラムである。東アジア首脳会議においては、グローバルな規範と普遍的に認識された価値の強化に努めると共に、ASEANが、東アジア首脳会議の他の参加国と連携しつつ、推進力となる、として以下の課題に「焦点を当てる」とした。
 それは、@政治及び安全保障上の問題についての戦略的対話の進展と協力の促進、A開発、金融の安定、エネルギー安全保障、経済統合及び成長、貧困撲滅並びに開発格差是正の促進、B相互信頼と連帯を醸成するための文化的理解の深化、人と人のふれあい及びわれわれの国民の生活と福祉を向上するためのさらなる協力の促進、及び、環境保護、感染症予防及び自然災害被害の軽減といった分野の促進。

首脳会議の持ち方

 そして、「東アジア首脳会議への参加は、ASEANが設定した参加基準に基づく」「定期的開催」「ASEAN議長国を務めるASEAN加盟国が主催し、議長を務め、年次ASEAN首脳会議と背中合わせで開催」「東アジア首脳会議の形態は、ASEAN及び他のすべての東アジア首脳会議参加国によって再検討される」。

首脳会議への小泉の思惑
 
 東アジア首脳会議について、日本政府は、東アジアでの中国の台頭を抑制することに重点を置いた。それが、開かれた東アジアにするとして、当初はアメリカの参加を主張し、その後はインドなどなるべく多くの国を参加させ、中国とのバランスをとるという手法であった。今回は、ASEAN+3(日本、中国、韓国)に加えて、三カ国が加わった。
 しかし、「クアラルンプール宣言」をよく読めばわかるように、東アジア首脳会議は、あくまでもASEAN主導で構想されている。「東アジア首脳会議への参加は、ASEANが設定した参加基準に基づく」という点と「ASEAN議長国を務めるASEAN加盟国が主催し、議長を務め、年次ASEAN首脳会議と背中合わせで開催」という点で、参加基準、主催の権限などは、ASEANにあると明記した。
 中国は、首脳会議の幅を広げすぎることには基本的に賛成しておらず、ASEAN+3を基礎としたかった。そうなれば、日本の影響力は最小限のものとなる。
 首脳会議では、各国は盛んに首脳外交を展開したが、小泉はみずからの靖国神社参拝問題が原因で中国(温家宝首相)、韓国(盧武鉉大統領)から会談を拒否されてしまった。
 日本外交の孤立が異様に目立つことになったが。これも小泉自らが招き寄せたものだった。東アジアでの日本は、経済的優位は相対的に失われつつあるが、政治・外交面でも袋小路状態からの脱出はまったく見えてこない。
 一二月一五日の日経新聞(朝刊)は、一面「東アジア共同体」の記事で、「ASEAN演出 舞台回る」「日本への期待薄く」と書き、社説「『東アジア共同体』構築へ重い課題」では、「気がかりな点は、日中韓に広がる相互不信だ。…特に日本と中国はまだ見えぬ『共同体』の形をめぐり、同床異夢を抱いているように見える。…中国の圧倒的な市場規模、成長性、迅速な自由貿易協定(FTA)戦略などの魅力でASEAN各国は中国の魅力に逆らい切れないでいる」として、中国の影響力の拡大に不安を隠しきれないでいる。そして日本の主導性を回復するために「米国から東アジアへの理解と協力を引き出すのも日本の重要な役割」だとアメリカを引き入れることを提言している。

アジアと向き合う日本へ

 アジアでの日本の孤立は日本自身の責任だ。侵略戦争と植民地支配を真剣に反省し、補償をおこなってはじめてアジアと真に真正面から向き合うことができる。それを小泉はまったく否認し靖国神社の参拝を続けた。問われるべきはまず日本の姿勢なのである。こうした政治を改めない日本はいっそう孤立していくしかない。


生まれた時のこと

   
長谷川千賀子

 はじめて

 はじめて
 この世界に生まれてきて

 空気を受けとった
 水を受けとった

 あたたかいミルクと
 いっぱいのおひさまの光を
 受けとった

 小さな赤ちゃんは
 まだ何も仕事はできないけれど
 とても堂々としている
 だっこすると
 ふわふわでミルクのにおいがする

 はじめて

 はじめてこの世界に生まれてきて
 世界の何もかも 受けとった
 光も水も音もやさしさも

 おなかのなかにいる時よりも
 ずっとかすかに聞こえる
 おかあさんの心臓の音

 そんな音を聞いて
 すやすやとねむった

 何もかも受けとったので
 小さな赤ちゃんはこんなに
 大きくなった

 何があっても
 あらそったり戦っては いけない

 無防備だった赤ちゃんが
 生きて生命の芽を育ててきたように
 何もかも受けとめてほしい
 もしあらそったり戦ったりすれば
 何も育たない

 どうか いつも赤ちゃんのように
 刃(やいば)をもたないで

 ことばのつるぎや腕力で
 戦わないで

 ● 彫刻家の長谷川千賀子さんの詩を掲載させていただきました。長谷川さんの反戦平和・憲法改悪反対の思いをしっかりとうけとめて運動を前進させて行きたいと決意を新たにしています。(編集部)


KODAMA

反対しなかった労働者

 今年の「レイバーフェスタ」でケン・ローチ監督作品の「ナビゲーター ある鉄道員の物語」(二〇〇一年イギリス)が上映された。非常に衝撃的な内容だった。
 イギリス国鉄の民営化の中で保線労働者が下請けにされる。生きていくために違法な作業も行う。最後には、そうした作業中に仲間が列車にぶつかって死ぬ。しかし、違法作業がわかれば、仕事がなくなるので、スグには救急車も呼ばず、自動車にはねられたことにするために、道路まで運ぶ。その過程で仲間は死ぬ。その後も、遺族にも真実は伝えない。
 本紙の一一月二五日号に、映画評論家の木下昌明さんの「民営化によって<民>(たみ)はどうなるのか〜ケン・ローチ監督『ナビゲーター・ある鉄道員の物語』」が紹介されていた。
 木下さんは、「日本では労働組合がJR民営化に反対してたたかい、敗れたのですが、英国はそれをしなかったのです。そうなると労働者はどうなるのか―。かれらは追いつめられてダメになっていくのですが、その状況をかれらは理解できない。その救いのなさを面白おかしく情けなくとらえてみせます」と書いていたがまったくそのとおりだ。「実は、脚本家のロブ・ドーバーは、民営化に賛成した組合活動家で、その苦い体験をもとにしているからです」とも記していた。
 労働者はダメになる。そして、なにが起こっているのか理解できない。こうしたことはすごく怖いことだと思った。
 映画でも何人かはなにかの労組に入っているようなのだが、たしかに労組としての活動はまったく見えてこない。イギリスの労組が、国鉄民営化に反対しなかったにしても、労組としての何らかの態度表明なり、ごく一部であるにしろ反対運動はあったのではないだろうか。
 脚本家のロブ・ドーバーとケン・ローチ監督は、労組活動がなく反対運動がない労働者の悲劇(最初は喜劇のような労働者の生活と職場の模様が描かれていたが)を訴えようとしたのだろうが、見終わって、生活費のために仲間を見殺しにした労働者たちの姿に本当に絶望的な感じがした。かれらは、一生その傷を背負っていくのだろう。
 また、日本と同様に、赤字線の廃止などもあるのだろうから、そうしたところの反応はどうだったのだろうか。
 かつてのイギリス炭砿労働者のストライキやケン・ローチも描いた港湾労働者の闘いとは、ずいぶん違った労組・労働者の対応で、イギリスの労働組合運動をとりまく困難な状況が浮かんでくる。
 「ナビゲーター ある鉄道員の物語」が提起したことを、イギリスの闘う労働者たちがいかに論議しているのか知りたいところだ。そして、脚本家のロブ・ドーバーが「苦しい体験」を生かし「もうひとつの労働者のありかた」の可能性を書くことも期待したい。(H)

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<「天皇制度」崩壊の秋>


 皇位継承の危機が近づいている。文藝春秋社の右派言論雑誌『諸君』一月号は、特集「女系天皇と国家の品格を問う」で、所功(京都産業大学教授)、長谷川三千子(埼玉大学教授)、八木秀次(高崎経済大学助教授)の右派三人組による<「天皇制度」崩壊の秋(とき)>という鼎談が載っている。
 皇室典範に関する有識者会議の答申が長子優先、女性天皇や女系天皇を容認し、それに沿って、通常国会にも皇室典範改正案が提出されるといわれているが、それを巡ってのものだ。八木は男系維持で、「国体維持のためにはいかなる反発があっても原理は変更してはならない」としているが、さすがに側室制度復活には歯切れは悪いが、大傍系継承で旧宮家の復活を主張する。所は、側室も旧宮家復活も国民世論がそれを許さないとして、とにかく皇位継承が大事だとして、女帝・女系容認はやむをえないとする。長谷川は八木よりだ。
 「なんとしても皇統を絶やしてはならないという思い」でのそれぞれの発言だが、男系、女系いずれにしろ、現在は鼎談のタイトルの「秋」の入り口にあることは事実だ。(M・G)


複眼単眼

   
みずほ証券の誤発注と筑波の蝦蟇

 この度、兜町を震撼させたみずほ証券による総合人材サービス業ジェイコム(マザーズ市場)の株式の大量誤発注(売り注文)事件は、現代金融資本主義の病理を赤裸々にえぐり出して見せた前代未聞の事件であった。六一万円で一株を売り出そうとして、一円で六一万株を誤発注したのだ。発行済み株式の一四五〇〇株の実に四二倍もの売り注文をしたという事件だ。この事件でみずほ証券は〇五年三月期の純利益二八〇億円が瞬時にして吹き飛んだ。パソコンのマウスをクリックした瞬間に、この二五歳、年収八〇〇〇万円といわれるエリート社員は奈落に落ちてしまった。
 一方、十二月十五日に関東財務局に提出された株式の「大量保有報告書」で明らかになったことだが、これを買い占めた連中の中に六本木在住の二四歳の個人投資家(会社役員)がいた。報告書によるとこの人物は三七〇一株を取得し、瞬時に取得価格と決済価格の差額約五億六〇〇〇万円の荒稼ぎをしたという。つづいて千葉県市川市の男性(二七歳)が少なくとも一七〇〇株を売買し二〇億三五〇〇万円以上の利益を得たことも明らかになった。同報告書で明らかにされたのはほかに海外の投資会社三社だ。英領ケイマン諸島のエボリューション・マスター・ファンド・リミテッド社、米国のタイドマン・ジャパン・レウピー社、アイルランドのサスケハナ・アイルランド・リミテッド社で、それぞれ一〇〇〇〜六〇〇〇株を取得していたという。
 実は個人投資家も「大量保有」ではなくとも荒稼ぎをした連中は相当数いるようだ。とくにネットに棲息しているディトレーダーといわれる連中は、この事件に千載一遇のチャンスとばかりに飛びついた。
 事件発生の八日午前九時二七分の一分後の二八分にはネットに「ジェィコム寄ったぁぁああああああああああ」という誤発注に気がついたメールが書き込まれ、それからわずか二〇分くらいの間に、膨大な数のメールがこれらのトレーダーの間で飛び交った。
 「何かキタコレw」「うひょー」「ワロタ」「ジェイコムえぐ過ぎ…」「うそだろ」「だれ売っているの」「Jコム、歴史を作った」「六〇万株もあんのかよ〜」「株式数超えてる」「ジェイコム全力で買った!!」「くそ、一分足りなかった」「一株買えばよかった」「三株買えた」「手が震えてる」「一株だけどゴチでした」「二ゲット」「俺も買ってみた」「祭りに一枚参加した」「大ボーナスや」「S高で売って六億」等々、大騒ぎだ。
 これらの個人投資家にとってはこの日はお祭りのチキンレースだったのだ。
 勿論、騒いだのは個人投資家だけではない。同業者の証券会社がこのあぶく銭をつかんだ。
 この日、ジェイコム株の五%以上の株式を獲得した会社は、UBS証券グループ、モルガン・スタンレー、日興コーディアルグループ、リーマンブラザーズ証券、クレディ・スイス・ファースト・ボストン・グループ、野村證券で獲得した利益は一六〇億円だ。なかでもスイスのUBSは一二〇億円稼いだという。まさにみずほ証券のミスにつけ込んで、生き馬の目を抜くを地でいった訳だ。
 政府も大あわてした。与謝野金融・経済担当相は「誤発注を認識しながら、その間隙をぬって自己売買で株式を取得するのは美しい話ではない。証券会社の経営者も行動の美学を持つべきだ」と干渉を開始した。
 株売買の決済を保証する日本証券クリアリング機構が株券の代わりに九一万二〇〇〇円で現金決済することで収拾をはかり、金融庁がにらみをきかせた結果、日本証券業協会の要請を受けた形で各社は全額返上に踏み切ると言われているが、これは強制力がないから全てが応じるかどうかは不透明だし、個人投資家は対象にされていない。
 この生き馬の目をぬく証券市場の論理に対して「美しい」とか「道義」「モラル」という論理が説教されるのは滑稽この上ない。与謝野の言もそうであるが、ナベツネがライブドアに怒り、奥田碩が楽天を叱責する、あるいは村上ファンド叩き然りである。
 たしか「筑波の四六の蝦蟇(ガマ)」は自らが映った鏡をみてその醜さに脂汗を流すという言い伝えがあったが…。 (T)


2006年   小泉政治を終わらせるために ともに 闘おう