人民新報 ・ 第1191号<統合284(2006年1月25日)
  
                  目次

● 危険な法案が山盛りの第164回通常国会  国民投票法案、教育基本法改悪案の上程阻止!

● 小泉政治のおわりのはじまり

● 東部方面隊はイラクへいくな

● 在日米軍再編日米協議のめざすもの  世界的規模で日米共同作戦体制

● 新しい反安保行動実の主催による東京からの派兵を許すな! 防衛庁抗議行動

● 教育基本法の改悪を阻止しよう! 「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」が国会議員対象の署名開始

● 許すな!憲法改悪・市民連絡会が民主党枝野幸男憲法調査会長に質問状

● 06春闘の動き

● 郵政ユニオンの今年の課題 

● 郵政絶望工場

● 日中関係・靖国神社問題について中国の識者はどう言っているのか

● KODAMA  /  ホリエモンの夢ハジケる

● 複眼単眼  /  天皇制の危機の中で右翼と公然と結託した三笠宮寛仁




 危険な法案が山盛りの第164回通常国会

  
国民投票法案、教育基本法改悪案の上程阻止!

 一月二〇日、第一六四回通常国会がはじまった。この国会では、自民・公明の与党は、憲法改悪のための国民投票法案や憲法と表裏一体の教育基本法を改悪する法案をはじめもろもろの悪法を成立させようとしている。去年九月の総選挙で圧勝し、今年の九月には党総裁の座から降りる小泉はこの国会で、構造改革と憲法改悪に向けて反動政治の総仕上げをやろうとしているのである。
 通常国会にかけられる多くの悪法成立阻止のために闘うことは、きわめて重大な政治的な意義をもっている。小泉政治は、その構造改革の象徴であるホリエモンの手段を選ばぬ違法な金儲け手法が摘発され、証券市場が大混乱に陥り、外交面では対アジア、国連常任理事国問題での行き詰まり、そして在日米軍再編への自治体ぐるみの反対、自民党総裁後継者争いなどがからみあって、終わりの始まりの段階に入った。小泉与党は圧倒的な国会内の数の力でごり押しをしてくるが、九条改憲については依然として多くの人びとが反対であり、構造改革法案で被害を受ける人びとの反発はこれから大きくなる。国会内での社民党、共産党などの議員の闘い、そしてなにより、多くの人びと、市民団体、労組団体などが協力の環をひろげて院外の大衆運動をもりあげ、小泉政治と対決する力を作り出していくことが求められている。

 国会開会日の二〇日、「小泉内閣の改憲暴走を許すな!緊急院内集会 憲法改悪のための国民投票法案反対!」が、衆議院第二議員会館で開かれ、一七〇人が参加した。会場に入りきれない人が出るほどの大盛況のものとなった。主催は、「5・3憲法集会実行委員会」で、憲法改悪阻止各界連絡会議、「憲法」を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、女性の憲法年連絡会、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会が事務局団体である。
 司会の高田健さんは、5・3集会実行委ははじめは憲法記念日の日に共同して集会を開いてきたが、憲法にかかわる問題が緊迫化する中でさまざまな行動を起こすようになった、この国会は、改憲のための国民投票法案や教育基本法改悪をはじめ様々な悪法がたくさん出てきて、いっそう運動を強めていかなければならない、今日の集会をスタートに小泉政治に対決する闘いを強めていこうと述べた。
 集会には社民党、共産党をはじめ野党の国会議員も多数参加した。
社民党を代表して、福島瑞穂党首(参議院議員)が発言。
 今年は憲法勝負の年だ。悪法満載の国会が開会し一五〇日間の闘いが始まった。この国会では、なによりも、国民投票法案、教育基本法改悪案を上程させない闘いを中心に、小泉の化けの皮を剥がすことが必要だ。小泉は、小さな政府、小さな政府と言っているが、ではなぜ大きな軍隊を持とうとするのか、そして誰が負担するのか。非常に怒りを感じている。国会の審議ではとくに教育基本法について予断を許さない。与党は力を入れてやってくるだろう。昨年末に自民党の新憲法草案が決定したが、それは、日本を世界のどこでもアメリカとともに戦争できる国にするということだ。その自民党の新憲法草案を実現するための国民投票法案なのだ。いま、日米両政府によって米軍再編協議が行われているが、各地で反対の声があがっている。米軍と自衛隊の一体化が進められ、キャンプ座間は陸軍の、横須賀に海軍、横田が空軍の司令部にされようとしている。小泉が行っている改憲と米軍再編と対中対韓関係の悪化には共通したものがある。そしてそれにどうして勝つか。自衛隊の存在については意見が違っても九条を変えさせない、海外で米軍と一体になった戦争には反対だという人の声を大きくひとつにすることだ。
 共産党を代表して笠井亮衆議院議員(衆院憲法調査特別委員)の発言。
 今年は憲法ができて六〇年の年で、憲法がキーワードになっている。世界では、日本の憲法は戦争のない平和で繁栄した社会をつくったと日本国憲法に期待の目が集まっている。しかし、与党は憲法をかえて戦争の出来る国にしようとしている。昨年末に自民党、民主党、公明党は、国民投票法案法案を通常国会で通すことで合意したが、それは、自民党の新憲法草案のようなものを実現するためのものだ。しかし、自民党のなかにも憲法を変えてはならないという勢力がいる。現在は無所属ということになっているが河野洋平衆議院議長などがそうだ。国民の中でも、九条改憲に反対が依然として大多数だ。しかし、与党は、改憲派が少数でも改憲案が通るような国民投票法案をつくろうとしている。まさに暴走政治だ。いまこそ、党派の違いをこえて、改憲を許さないの一点でおおきなうねりをつくりだしていこう。
 沖縄選出で無所属の糸数慶子参議院議員が発言。
 沖縄は、戦争で県民の四人に一人という犠牲をしいられ、また戦後は米軍基地を押し付けられてきた。米軍再編で、日米政府は普天間基地の代替基地を辺野古沿岸につくろうとしている。これは絶対に許せない。日本政府のやっていることは、いつも沖縄県民にとって「地元の意思の無視」「頭ごなし」ということだ。ついこの間も、嘉手納基地所属のF15戦闘機が墜落事故を起こした。四八機が常駐しているが、米軍は事故後たった二日で訓練を再開した。沖縄一三四万県民は怒っている。保守の県知事もこれ以上の負担には反対だ。米軍再編基地強化と憲法の改悪は根は同じだ。悪法に反対する運動を強めていこう。
 連帯あいさつで、GPPAC(武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ)の川崎哲さんは、日本に求められているのはアジアの人びとと平和を作り出すことだと述べ、日本青年団協議会の田中潮さんは、青年は憲法や平和に無関心ではない、各地で動きが起こってきていることを報告した。
 さいごに、実行委員会参加団体からの発言が行われ、小泉政治の暴走を許さず闘いを強めていくことが確認された。


小泉政治のおわりのはじまり

 小泉の自民党総裁任期は九月までとなった。その後継者争いは水面下ではすでに激しいものとなって進行している。だが、小泉の任期の終わりが見えてきただけでなく、自民党に対する世論の支持はこれまでのようなものとは変って来ている。

 一月一八日、自民党は定期党大会を開き、二〇〇六年運動方針と大会アピールを採択した。日本経団連の奥田碩会長も来賓として参加しあいさつした。
 大会では、小泉が「さらに改革を加速させることが、今年の自民党の大きな責務」と述べた。
 運動方針では、靖国神社参拝について「国の礎となられた方々に対して謹んで哀悼の誠をささげる」とし、憲法問題では党新憲法草案を「わが国の平和と繁栄の道しるべ」と位置付け、その「実現にまい進する」としている。そして、実現させるべき政策として、改憲のための国民投票法、教育基本法改定、防衛庁の「省」昇格法などをあげている。それに、多くの人びとに「痛み」をおしつける法案が並んでいる。
 また、大会アピールでは、消費税増税の方向を鮮明にした。
 いっぽうで、九月のポスト小泉の総裁選挙について「国民が参加意識を実感できるよう、開かれた形で活発な政策論争を展開しなければならない」としている。これは、小泉の持論だが、それに沿って、国民参加型の総裁選を言ってきたのが武部勤幹事長だ。これは、自民党総裁選に人びとの関心を集めて、自民党支配の手段にしようとするものだが、実質的な首相公選を目指すものとも言え、党内には反対意見も多い。
 小泉は自分の自民党総裁任期を延長しないと言っている。小泉は残された期間において新自由主義的構造改革、日米軍事同盟のいっそうの強化、アジアでの小覇権の確立と維持の政策の総仕上げをしようとしている。そして、自民党への圧倒的な支持を次期の自民党にも持続させようとしている。
 しかし、今年に入ってから、自民党を取り巻く情勢は昨年とは様変わりの様相を呈してきているのだ。
 一月二〇日に通常国会がはじまり、とんでもない法案が目白押しのようにならんでいる。だが、衆院で圧倒的な数を誇る自民党ではあるが、これまでの積み残しの懸案である増税問題、米軍再編、アジア外交、憲法・教育基本法などのほかにも、耐震偽装事件で元閣僚の大物議員の名前がでたり、ライブドア・堀江貴文社長がらみの「腐れ縁」や彼を出馬させた総選挙での内閣や党執行部の責任問題への追及などが噴出し、多方面で守勢に回らざるを得なくなっている。
 小泉のマジックは見抜かれ始めた。ようやく巡ってきた好機ともいえる情勢である。今年の闘いで、憲法改悪阻止を軸に、小泉政治と対決する運動の大きな前進を勝ち取ろう。


東部方面隊はイラクへいくな

 いよいよ首都圏の陸上自衛隊からイラク派兵が行われる。東京練馬区の北町に司令部を置く陸上自衛隊第一師団をはじめ東部方面隊から数百名もの隊員がイラクに送られる。

 イラクでは、昨年一二月に「新憲法」に基づく国民議会選挙が行われた。米ブッシュ大統領は、これでイラクの新政権が発足し、安定に向かうと豪語し自画自賛した。しかし、総選挙以後のイラク情勢は、ブッシュの期待するものとは相当程度に隔たるものになっている。アメリカ占領軍とカイライ政権の軍・警察にたいする攻撃と宗派対立による流血の事態は減るどころではなく逆に大幅に増加しているのだ。まさにアメリカのイラク政策は現地で行き詰まると同時に、米本国においてもブッシュのイラク政策に対する批判の声は一段と高まってきている。イタリアもイラクからの撤退にむけての動きを開始したが、多国籍占領軍からの離脱が続いている。イラク民衆からの敵意を集めてアメリカ軍は「掃討戦」を繰り返し、イラク民衆の虐殺を拡大している。
 この時に小泉はあえて自衛隊をイラクにむけて派兵し続けようとているのである。
 そして、陸上自衛隊が宿営するサマワでは、占領軍の一員として自衛隊に対する抗議・襲撃の動きが出てきている。
 今回の東部方面隊の派兵は重大な意味を持つ。第一師団は首都防衛の「政経中枢師団」といわれてきた。東部方面隊の派兵によって、陸上自衛隊はアメリカ「反テロ」世界戦争の一翼を担う部隊としても機能させられようとしている。陸上自衛隊増強の中軸として、海外派兵専門の部隊を含む中央即応集団がつくられるが、今回の派兵はその重要なステップだ。米軍再編で、現在はアメリカ・ワシントン州にある米陸軍第一軍団司令部を神奈川県のキャンプ座間に移設させる計画だが、そこに陸上自衛隊の中央即応集団の司令部が併設され、日米軍事一体化で、「不安定の孤」に出動する体制がつくられようとしているのである。すでに、その中央即応集団の施設が朝霞基地につくられ、それがやがて座間に移転するといわれている。まさに、今回の東部方面隊のイラク派兵は日米共同派兵の本格化・恒常化にむけての前段という意味を持つものとなっているのである。

 一月一五日には、「練馬から自衛隊はイラクに行くな! 1・15集会」が開かれ、一四〇人を越す人びとが参加した。
 徳丸第二公園での集会後、北町駐屯地に向けてデモを行い、第一師団正門前で抗議のシュプレヒコールをあげ、防衛庁長官と第一師団師団長に「練馬駐屯地からのイラク派兵に反対する申入書」を手渡した。
 来る二月一二日には、平和団体、労働組合などの実行委員会の主催(協賛WORLD PEACE NOW)で「自衛隊をイラクへ送るな!もどせ!練馬集会」が、都立城北公園陸上競技場で開かれる。陸自東部方面隊のイラク第九次派兵に大きな反対の声をあげよう。

練馬駐屯地からのイラク派兵に反対する申入書

防衛庁長官殿

陸上自衛隊第一師団師団長殿


 政府は昨年一二月八日、イラク特措法にもとづく自衛隊のイラク派兵を一年延長することを閣議決定しました。
 防衛庁は、〇六年一月にイラクに派兵する部隊を東部方面隊としてその準備を進め、一月に東部方面隊より選抜一〇〇名、二月には第一師団(練馬区)、五月には第一二旅団(相馬原)から五〇〇人を派兵するといわれています。
 現在イラクでは、アメリカ軍を中心とした多国籍軍の駐留に反対する動きが止まるところを知りません。ファルージャなどでアメリカ軍が行なった掃討戦は、多くの民衆を殺戮するもので、いっそう反発をかきたてています。昨年一〇月には憲法草案を承認するための国民投票が行なわれましたが、その草案自体、アメリカの意向で強行にまとめられたものです。そして新憲法に基づき一二月に国会選挙が行なわれましたが、さらにイラク情勢が混迷の度を深める恐れおあります。さらにイギリス軍人を拘束したイラクの治安機関に対して、イギリスが攻撃を行い、イギリス軍とイラク民衆が衝突するといった事態も起きています。  
 自衛隊に対しても、多国籍軍の一部であるとして反発が強まっており、迫撃弾による攻撃がおきているほか、自衛隊車両にデモ隊が投石をする事態が発生しています。米軍などの後方支援を行っているのですから反発されるのは当然です。しかも、目玉として掲げた給水活動は昨年二月に終わっているにもかかわらず、宿営地という名の基地を要塞化している自衛隊に対して、米軍のための恒久的基地を建設しているのだといった憶測も飛び交っているといいます。また、米軍が使用した劣化ウラン弾の被曝よってイラク民衆に多くの犠牲が出ている中、派兵継続はそうした危険にも自衛隊員をさらすことになります。
 アメリカでもブッシュ批判の声が高まり、サマワの自衛隊を守ることになっているイギリス軍も、〇六年五月には撤退するという動きも出てきています。
 なすべきは派兵の継続ではなく、派兵そのものを中止し、今派兵されている部隊も、即刻撤退させることです。ましてや、さらなる東部方面隊の派兵など許されるべきではありません。私たちは東部方面隊の中枢である練馬駐屯地や朝霞駐屯地などが所在するこの地の部隊がイラクに向かうことを許してはならないと考え、東部方面隊―第一師団のイラク派兵に反対する申し入れを行なうものです。
 以下、申し入れます。
 一、自衛隊をイラクから即時撤退させること。
 一、イラク派兵の基本計画を継続しないこと。
 一、 第一師団などの東部方面隊のイラク派兵準備を取り止め、派兵しないこと。

二〇〇六年一月一五日

 自衛隊・東部方面隊をイラクに行かせるな!実行委員会


在日米軍再編日米協議のめざすもの  世界的規模で日米共同作戦体制

 一月一七日、米国防総省で額賀福志郎防衛庁長官とラムズフェルド国防長官による日米防衛首脳会談が開かれ、新しい日米安保共同宣言の発表をめざすことなどが話し合われた。
 そこでは、三月に予定されている在日米軍再編に関する最終報告取りまとめに合わせて、今日の情勢に対応した新たな日米安保共同宣言を発表するための協議を開始することで一致した。新宣言は、昨年の米軍再編協議中間報告で、世界規模で日米同盟を強化することが打ち出されたが、額賀が「新たな次元に発展する日米同盟の将来の姿を示す政治的メッセージが必要」として提案したものだ。額賀の意図は、現在、日本各地で自治体ぐるみで反対運動がまきおこっている基地再編の具体化促進のため、日米政府による大枠をつくったうえで、強引に決着させようということだ。 
 もうひとつは、日本政府として、日米同盟の範囲をいっそう拡大することを宣言するためである。九六年に日米安保共同宣言がだされたが、それは日米同盟を日本防衛からアジア太平洋地域の安定維持に拡大したものだったが、今回の新宣言では、九六年のものをもこえて世界的な規模に、まさに、いつでも、どこでも、米軍とともに戦争をする体制をつくることを世界に宣言するものとなるのである。
 これに対し、ラムズフェルドは「日本の役割、任務が拡大するのは有益だ」と理解を示したと報じられた。だが、形は、日本側が言い出したことになっているが、アメリカの計画に日本政府が積極的に応じているのである。
 具体化案では、日本国内の強い反対の声も顧慮しながら、額賀が、米国に「一定の譲歩」を要請したとされているが、ラムズフェルド長官は、再編では「スピードとタイミングが重要」と早期の決着を求めた。
 会談の冒頭、ラムズフェルド長官は、神奈川県横須賀市で起きた米兵による女性害事件について、遺憾の意と遺族への弔意を表した。しかし、在日米軍、米兵による犯罪や重大事故が続いている。 
 一月一七日、米空軍嘉手納基地所属のF15戦闘機が提供訓練空域で訓練中、伊計島の東約七五キロの海上に墜落した。
 F15戦闘機の墜落は、一九九四年四月(嘉手納基地を離陸直後に嘉手納弾薬庫地区内に)、九五年一〇月(喜屋武岬の南約九〇キロの海上)、二〇〇二年八月(訓練中に公海上)と頻繁に起こっている。


新しい反安保行動実の主催による

   東京からの派兵を許すな! 防衛庁抗議行動


 一月二一日、東京ではじめての雪の中で、自衛隊の第九次イラク派兵(東部方面隊<東京・練馬>)に反対する行動が行われた。
 新しい反安保行動をつくる実行委員会第]期の主催による「東京からの派兵を許すな! 1・21防衛庁抗議行動」は市ヶ谷の外濠公園で集会を開き、防衛庁にたいして抗議のデモを行った。
 防衛庁正門で、小泉純一郎首相と額賀福志郎防衛庁長官への申入れ・要請書を手渡し、自衛隊の即時撤退を求めるシュプレヒコールをあげた。
 申し入れ・要請を行ったのは、新しい反安保行動実行委をはじめ、自衛隊・東部方面隊をイラクに行かせるな実行委員会、NO!AWACSの会(浜松)、有事法制反対ピースアクション(名古屋)、関西共同行動、ピースリンク広島・呉・岩国など。
 新しい反安保実の申入れは、@陸上自衛隊の東部方面隊の派兵を中止せよ、Aイラクに派兵されている航空自衛隊を含めたすべての自衛隊を即時撤退させよ、Bこれまで行ったイラクでの自衛隊の活動をすべて明らかにせよ、と要求した。


教育基本法の改悪を阻止しよう!

 「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」が国会議員対象の署名開始

 自民党は、公明との教育基本法「改正」案について「愛国心」の一点を除けば一致しつつあるとして、これを通常国会で決着をつける方針を固めている。
 教育基本法改悪については、〇三年五月に、自民、公明は「与党教育基本法改正に関する協議会」を設置して一致点を探ってきた。この協議会の下に改正作業を具体的に進める与党検討会がある。一月一三日、自民党はその検討会の顧問に保利耕輔元文相(衆議院議員・無所属)に就任依頼を決めた。保利は郵政民営化法案に反対して自民党を離党した者だが、それに参加を求めるのは、保利の公明党とのパイプを重視し、一気に教育基本法改悪をなしとげようとする自民党の決意を示すものだ。
 憲法と表裏一体の教育基本法の改悪をめぐる情勢は重大な局面を迎えている。
 こうした攻撃に抗して「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」が衆参両院議員対象の署名を始めた。

 <「国を愛する心」を強制する教育基本法の改悪に反対する国会議員署名 ―国家優先ではなく、子ども優先の教育を―>
 「教育基本法改正」に関し、中教審で「国を愛する心」を教育の理念の中で明記することが答申され、その答申をふまえ、いま与党協議が行われています。「国を愛する」ための教育が、「個人の尊厳」を制限し、戦前そうであったように、「統治機構(政府や軍隊)」としての「国家」を愛し、その犠牲になることを厭わない「国民の育成」ということを目的として行われるならば、戦後の日本国憲法に基づく教育や社会の原理・原則を根本から否定することになります。
 教育基本法は、民主的で文化的な国家の建設や世界の平和をめざすとした憲法の理想を実現するために、その「実現は教育の力にまつ」として制定されたものであり、子どもたちが社会を担う自立した市民として育つことを願ったものです。その「改正」等に関する検討は、国民的な広範な議論を前提に十分な時間をかけて行われるべきものであると同時に、教育を子ども優先ではなく国家優先の方向に向かわせることを排除して行われなければなりません。
 政府において、教育基本法の国家主義的な改悪が行われることのないよう下記の要請事項に賛同し、署名いたします。

    記
 1、「愛国心教育」の明文化をはじめとする、教育基本法の国家主義的改悪は行わないこと。
 2、教育基本法に関する検討は、広範な国民的な議論を前提に、慎重に時間をかけるべきで、性急な結論を出さないこと。
   年 月  日
 内閣総理大臣 小泉純一郎 様
 衆(参)議院議員  印


許すな!憲法改悪・市民連絡会が

   
 民主党枝野幸男憲法調査会長に質問状

一月一七日、許すな!憲法改悪・市民連絡会は、民主党枝野幸男憲法調査会長の事務所を訪ね、「憲法改正国民投票法」に関する質問状を渡した。
 昨年一〇月、民主党憲法調査会は「憲法提言」を発表し、「いまや『憲法の空洞化』が叫ばれるほどになっている。いま最も必要なことは、この傾向に歯止めをかけて、憲法を鍛え直し、『法の支配』を取り戻すことである」として党としての改憲の方向を明らかにした。
 市民連絡会の質問状は、「憲法改正国民投票法案」について枝野議員の考えについて尋ね、<「憲法改正国民投票法」は、憲法改正を求める人びとにとってだけ必要なもので、現憲法を守り生かすべきだと考えている人びとにとっては必要ない>もので、いま議論されている「憲法改正(等)国民投票法案」の具体的内容(@投票権者の資格年齢について、A国民投票までの期間について、B国民投票公報の作成について、C内閣の関与について、D投票用紙及びその様式について、E投票の方式について、F過半数の「分母」問題について、Gテレビ広告について、H運動規制について、I定住外国人の意見表明権などについて、J訴訟提起について)、同月三一日までの回答を求めている。


06春闘の動き

 〇六春闘がはじまった。今春闘は、一部企業の空前の大利潤確保という情勢で闘われる。企業の連結経常利益は三期連続最高を更新する中で、日本経団連の奥田碩会長(トヨタ会長)の「儲かった企業は賃上げに応じるべきだ」など発言もあって、連合傘下の労組もひさびさに積極的な賃闘体制を組んだ。

 連合の高木剛会長は、利益の「分配構造が資本に偏っている」状況の是正を求めるとともに、今春闘に対する経団連の指針(「経営労働政策委員会報告」)を「高く評価」した。
 大手では鉄鋼などの基幹産業労連が三〇〇〇円(二年分、労連の賃金闘争は二年に一回)、電機労連二〇〇〇円など、ゼンセンUI二五〇〇円、機械・金属のJAM二〇〇〇円、また派遣労働者などが加入する全国コミュニティー・ユニオン連合会は時給一二〇〇円と正社員との格差是正を要求している。
 しかし、最高に儲かっているトヨタの経営者は、原油相場の上昇などの懸念があり、国際競争力の維持のためには、労組の要求には簡単には応じられないという態度である。
 連合は二月三日の06春季闘争宣言集会を皮切りに三月の一五〜一八日に大手先行組合集中回答ゾーン、二〇〜三〇日に中小組合集中回答ゾーン、四月三〜八日に中小地場第一次解決促進ゾーン、一七〜二二日に中小地場第二次解決促進ゾーンを設定している。

 06春闘は、小泉政権の「構造改革」と企業リストラ・格差拡大の中で闘われる。労働者は生活と権利を守り、戦争体制つくりと憲法改悪に対決して、団結をかためて職場・地域から闘いをつくりあげていこう。
 けんり春闘は二月六日に発足集会をひらき、反転攻勢の06春闘をスタートさせる。


郵政ユニオンの今年の課題  内田正委員長の年頭あいさつ
 
 昨年夏、小泉構造改革の本丸である郵政民営化法案を一度は阻止することが出来た。しかし小泉は総選挙にでて、欺瞞的なキャンペーンで「圧勝」した。しかし、これは小選挙区制のマジックによるところが大きく、純粋に投票の色分けをするなら、民営化反対派は少数ではなかった。
 小泉は郵政民営化法を成立させたが、昨年民営化反対派が掲げた問題点はいささかも解決されていない。そして、今年に入って、耐震偽装、ライブドア・ショックなど小泉流の民営化路線、新自由主義的構造改革の本質が露呈し、ほころびが随所に出てきた。郵政民営化についてもそのまやかしを暴露し、公共サービスを守り、同時に郵政労働者の生活と権利を防衛する闘いの前進が求められている。

 郵政労働者ユニオンの機関紙「郵政ユニオン」の一月一日号で、内田正中央執行委員長は年頭のあいさつ「これからが本当の闘い 何も解決していない民営化問題」で次のように述べている。
 <…郵政民営化関連法案成立という、残念な結果となりました。しかし、むしろこれからが本当の闘いであると思います。民営化法案そのものが抱えた問題点は何一つ解決していないのも現実です。私たちが掲げた、郵政事業を市民・利用者の手に取り戻すための闘いを、地域・利用者とともに各地に再び創り出すことが重要だと思います。……今年は昨年にも増して、変化の激しい一年になろうかと思います。幸いにも、あれほどまでに目まぐるしかった昨年の中でも、九州地本を筆頭にしてユニオン組織の拡大状況が続いており、各地本での継続的な組織拡大の機運が高まりつつあります。郵政職場で働く仲間のほとんどが、職場とその将来に大きな不安を抱えている今ほど、郵政ユニオンの真価と力量が問われているということを確信して、新しい年のスタートを切りたいと思います。>

 小泉の自民党総裁任期は九月までだ。小泉は自分の内閣の人気取りのために、構造改革の真の姿、負の側面について、すべて先送りしてきた。増税がその最たるものだ。だが、小泉が首相任期中には増税の論議はしないと言ってきたのに、政府・自民党の中から、増税論が飛び出してきている。多くの人びとを騙した郵政民営化についても同様だ。自民党に投票した人もふくめて広範な人びとがひどい目にあうことが見え始めた。
 郵政民営化の具体化に抗する闘いははじまっている。


郵政絶望工場

 昨年の一一月から私の局では、作業用のイスがすべて撤廃された。私たち配達部門の職員は内務職員が地域ごとに区分した郵便を始業時間後に抜き取り、担当の区域の細かいエリアごとに区分する。その後に配達道順に組み立てていくのが一連の作業動作であり、区分は立ち作業だったが、組み立てはイスに座って作業していた。ところがその組み立て作業も立たされてしまったのである。
 昨年八月にトヨタ方式第一号のK局から、局長、一・二集配営業課長が転任してきた。その後ですぐに郵便・集配営業課から数人をJPS(日本郵政公社システム)の担当にして、郵政版トヨタ方式を考えさせた。その結果が立ち作業であり、これはK局が最初に行い、多くの問題点が指摘されたのもかかわらず、その方式をさらに推進するために、私の局でも率先して導入。それに加えて、床にテープを貼って、空ファイバーの置き場所、通路、作業をやる場所等々を設定し、少しでも違うやり方をすると、係が飛んでくるのである。担当は常時見回ってチェックしているのである。
 立ち作業により、今まで作業スペースともいえる郵便を置いたり、組み立てたり、事故郵便物処理をする場所がなくなった。代わりに台車に載せているファイバーの上にベニヤ板を載せてそこですべてを行わせるという。お粗末な作業台である。
何ともムリ、ムダ、ムラな作業であろう。足も痛い、腰も痛くなる。組み立てパートさんの作業も、以前は低いテーブルとイスで行っていたのが、足の高いテーブルにして、私たちと同様に立ち作業での道順組み立てとなった。かなりツライとの声があがっている。
 当局の言い分は、立ったり座ったりの動作が身体に悪いのだと言う。何をか言わんやである。また今まで以上に早く出発できるとも言う。しかし実態は逆で、組み立てが遅くなり、それに伴って昼休みの帰局が今まで以上に遅くなる人が増えている。昼休みをまともに取っていないのである。
交通事故も前年より件数が増え、誤配の申告件数も増大、超過勤務時間もいっこうに減らないで、むしろ増えているくらいだ。
 今度の年末年始繁忙期の短期非常勤も集まりが悪く、また誤組み立ての影響で誤配、不着件数も多くなった。超勤時間数も前期より増加している。
 JPSが始まって二ヶ月余り、以前はイスもあり、オフィスのようであったフロアが、まるで工場のようになってしまった。今後も民営化を控えて、ますます「ムリ、ムダ、ムラをなくす」と称して、次から次へと施策が矢継ぎ早やにだされてくるだろう。それに伴って人員削減、労働強化、営業圧力、人事評価による賃金格差の拡大等々、労働者にはいっそう厳しい状況が迫ってくる。
 今年から民営化にむけて雇用再契約再契約とも言える新会社への職員の帰属決定が始まる。〇六年九月を帰属基準日として、原則として基準日に従事している事業・業務を引き継ぐ会社に帰属することを決定していくのである。旧国鉄の時と違って清算事業団行きといった形はないが、それでもこの時点で多くの人が退職するのではないかと予想される。
 私のまわりでも郵便局に絶望する人、退職金が有利なうちにと考える、など様々ではあるが、迷っている人が多い。(郵政労働者N)


日中関係・靖国神社問題について

  
中国の識者はどう言っているのか

 一月二十日、通常国会が召集された。麻生太郎外相は外交演説で、小泉の靖国神社参拝によってかつてなく冷却している日中関係について「過去の問題にこだわりすぎることなく、冷静に大局を見すえ、成熟した友人として関係を築くことを呼びかけたい」と述べた。
 小泉は靖国神社参拝を批判する中国や韓国はじめアジアの国ぐにの対応を「なぜ反対するのか、わからない」と言い、右派言論も、それらの国ぐには国内矛盾を排外主義的に「反日」にむけているなどと報じている。アジア諸国からどのような日本批判がよせられているのか。それをまず直視すべきだろう。
 中国側は靖国神社問題をどうとらえ、いかに日中関係を改善しようとしているのか。ごく最近の中国側の論調から見てみよう。

 「人民日報」のウエッブサイト「人民網日本語版」は日中関係の問題について、頻繁に、さまざまな立場からの文章を掲載している。

 昨年一二月二九日の「評論:中日関係、氷の下に希望あり」(上海復旦大学日本研究センター 樊勇明主任)。
 「二〇〇五年の中日関係は負の情報が多く、危機が強く感じられた。しかし中日関係は旺盛な生命力を内包しており、堅い氷の下には希望が潜んでいる。今、まさに新たな突破口が模索されている」として、「小泉純一郎首相が靖国参拝を再三にわたって繰り返し、中日関係が前向きに発展する際の『しこり』となっていることは、周知の事実だ。だが、治りにくい病気があることと、活力が無いことはイコールなのか?答えは、ノーだ。中日関係は依然として前向きに発展している。理由は明らかだ。中日関係が全体的な国際情勢から遊離し、単独で展開することはできない。国際情勢が多極化する中で、中日両国が『協力すれば双方の利益に、争えば双方の害に』なることは言うまでもない。良好ならざる中日関係は、すでに東アジア協力の発展にも影響している。今回の東アジアサミットで、多くの国が、中日関係について繰り返し憂慮を示したことは、偶然ではない。日本の指導者たちにも賢明な人物は多く、中日両国の友好関係を発展させようと主張する人物も少なくない。これら賢明な人々は、小泉首相の一挙一動に絶えず批判の声を上げ、小泉首相が個人の信仰を国益より上位に置いていると非難している。さらに注目を集めるのは、『中国脅威論』を吹聴した国務大臣を、公の場で厳しく批判したのが、自民党の『重臣』であるのみならず、小泉首相と共に政権を築いた盟友でもあることだ。」「親近感こそ減っているが、相互に補完しあう経済の基盤は不変だ。」「親しみを感じる割合が減ったのとは対照的に、両国間の人の交流はこの一年、非常に大きく発展した。中国から日本を訪れただけでも六五万人に達した。『政冷経涼』の兆しとは逆に、二〇〇五年の中日貿易額は二〇〇〇億ドルを越え、史上最高となった。中日貿易は、すでに日米貿易を凌駕している。」「国際情勢の多極化や東アジアの協力進展、そして経済面での補完の必要性が、中日関係発展への内的な原動力になっている。一大決心のときが訪れた。今こそ大胆な措置を打ち出し、中日関係の困難を早期打開すべきだ」。

 一月一七日の清華大学国際問題研究所の劉江永教授による「中日関係の氷は融けるか? カギは日本の行動」。
 劉教授は、「二〇〇六年に入り、氷河期の中日関係が改善できるか否に、人々の関心が集まっている」「中国は起こり得る事態を冷静に見通し、原則を堅持すると同時に、日本の人々に着目し、中日友好という基本方針を引き続き堅持する必要がある。中日関係が困難な時期であればこそ、より長期的な視点で話し合い、青少年交流を始めとする民間交流を通して、相互の理解と友好感情を深める必要がある。東中国海の係争海域の共同開発問題においては、平等かつ実務的な協議を通して、長期協力に有益な展望を求め、日本が一方的かつ極端な行動によって紛糾を招くのを、防ぐべきである。」「最近、日本の経済界や世論には、日本の将来の指導者によって中日関係が改善されることへの期待が高まりつつある。中日両国の政府とも、中日関係を極めて重要と捉え、改善すべきと認識している」として次の三点をあげている。@日本の指導者が中日間の三つ政治文書(共同声明、平和友好条約、共同宣言)の精神を実際の行動によって順守し、国交正常化以来の両国政府間の共通認識と暗黙の了解を順守すること。A歴史問題と台湾問題においては、中国の指導者と相互信頼関係を構築すべきだ。つまり信用を守らなければならない。B中国の人民の感情を傷つけることをしない。例えば靖国神社には参拝しない。つまり、かき乱してはならない、である。そして「今後、誰が日本の政権に就こうと、上記の三つを実行できれば、中国との関係を適切に構築できるだろう」としている。

 一八日の中国外交学院の呉建民院長の「世々代々の中日友好は両国人民の根本利益に合致」。
 これは、呉院長が名古屋で開かれた中日新聞社主催の国際シンポジウム「日中関係の再構築−東アジアの明日を考える」に出席し、基調演説で述べたものだ。「一九七二年の中日国交正常化以来、両国関係は政治や経済、貿易などの分野で大きな進展を得てきた。これは双方の共同努力の結果だ。しかし近年、日本の小泉純一郎首相が第二次世界大戦のA級戦犯一四人を祀る靖国神社への参拝を続けたことにより、両国の政治関係は国交正常化以来、最も困難な時期に陥った。」「中韓が靖国参拝に反対するのは、反日ではなく、反ファシズムという世界各国の人々に共通する価値観を守るものであり、根本から言えば日本の人々、世界の人々の根本的な利益に合致するものだ。」「中日関係が現在、どのような困難に直面していようとも、中日両国の国民が共に努力することで困難は克服できる。歴史の潮流に逆らった、正義に反する行為は長続きしないだろう」。

 以上の三人の中国側識者の日中関係に関する観点では、日中関係の発展は両国にとってともに利益になることで現在の日中関係は改善しなければならない、だが、侵略戦争とファシズムを美化し正当化する日本政府首脳の靖国神社参拝は決して認められないということだ。小泉はアジア諸国民をごまかしながら、靖国神社参拝強行をつづけ、国内で戦争イデオロギーを鼓吹しようとしたが、その目論見は失敗している。アジアからの孤立と九条改憲には国内でも大きな批判の声が広がっている。それは支配層の中にも大きくひろがりはじめているのである。


KODAMA

  
ホリエモンの夢ハジケる

 突然おこったライブドアに対する東京地検特捜部の強制捜査は、その日が、耐震偽装のヒューザー・小嶋進社長の国会証人喚問の日に当たることから、地検そしてその後ろにある勢力の思惑がどこにあるのかなどさまざまな観測が流されている。そして、地検捜査の本来の目的と今後の展開がどうなっていくのかきわめて興味深いものがある。
 ライブドア・ショックは、株価の急激な低下をもたらし、売り逃げをはかる投資家の続出で東京証券取引所が一時ストップするような事態までになった。日本だけではない。ニューヨークをはじめ世界の株式市場も重大な影響を受けることになった。ライブドア本体の株価はその後も下がり続け上場廃止の懸念がひろがりパニックの様相を呈している。
 こうした中で、捜査の起こる直前まで、ホリエモン(ライブドア堀江貴文社長)を持ち上げていたマスコミは手のひらを返すように、批判と暴露の番組を放映している。マスコミのように簡単に手のひら返しの戦法が使えないのは自民党だ。昨年の9・11総選挙で、郵政民営化反対の中心人物である亀井静香にホリエモンを「刺客」として送り込んだ自民党は、押し寄せる質問に対して困惑する。自らを小泉の「偉大なるイエスマン」と呼ぶ武部勤幹事長は、ホリエモンを自民党が「公認しなかった」ことだけをもって「無関係」を装おうとしているが、選挙応援時の発言、とくにホリエモンを「弟」のようだと声を張り上げていたことは連日のテレビ画面に流されている。竹中平蔵金融財政担当相もホリエモンこそが小泉構造改革の先頭を切るものと讃えていたのである。小泉も大同小異だったことは言うまでもない。
 それがここに来て、突然のホリエモン・バッシングとなったのには、このままでは、ホリエモンの「違法でなければ何をやってもいい」という市場倫理をさえ無視する行動が、日本経済それ自体を秩序なき混乱に陥しいれる可能性を危惧した勢力の意思が動いているのであろう。支配層の中の政治・経済のヘゲモニー争いとも連動していると思われる。
 最近、ホリエモンと敗戦直後の混乱期に起こった山崎晃嗣の光クラブ事件との共通性を取り上げるコメントが増えている。東大在学時からの起業、特異な金融手法、画期的な宣伝行動などなどがあげられているが、それはそれとして面白い指摘だ。ホリエモンの体型とか宮内亮治取締役の目つきから、また最近放映されたライブドアの忘年会の映像などから、いったんはじめたらどうにも歯止めきかなくなるオウム真理教的な雰囲気を感じる。
 それにしても、短期間にここまで昇りつめた「勝ち組」の象徴ホリエモンの没落のなんと急激なものか。まさにクリックひとつで「天国」と「地獄」を経験したホリエモンはどうなるのか。生き残れるのか。この経験を生かして、資本主義の問題性について語るようになるのか。国際的な投機屋ジョージ・ソロスのようになるのだろうか。もっとも両者とも、心を入れ替えるというわけにはいかないだろうが、ホリエモンが「稀有な」経験を語る本でも書けば、それなりに有用なものになるだろう。
 鈴木宗男とグルになっていろいろやってきた元外務省の佐藤優が国家の影の面・カラクリを暴露したように。
 忘年会でホリエモンは「ゆめ」なる歌を唄っていた。「(時価総額)世界一の会社」をつくるという「ゆめ」だ。資本主義に「巣食って」金を儲け他人の労働の成果を独り占めしようとした夢は、資本主義に足を「スクワレル」ことによってハジケとんだ。
 それにしても、東証の問題ひとつとってみても日本の構造の脆弱性・あやうさを感じないわけにはいかない。そして小泉の新自由主義による構造改革路線は、この傾向をいっそう進めたとしか言いようがない。ホリエモンと同様に小泉も壊し屋だ。小泉は自民党を壊し、日本社会の深部に大きなヒビを入れてしまったのかも知れない。 (M)


複眼単眼

  
天皇制の危機の中で右翼と公然と結託した三笠宮寛仁

 佐藤純弥監督の「男たちの大和 YAMATO」が東映系で上映されている。今回は本欄でこの映画評をしようというのではない。
 映画の中で戦艦大和がなぜ水上特攻をしなければならなかったかに触れられていることが印象に残った。
 一九四五年三月二八日、昭和天皇裕仁は「海軍ニモウ艦ハナイカ、海上部隊ハナイノカ」、軍令部総長及川古志郎が「戦況を帷幄上奏した際、飛行機をもって特攻作戦を展開する旨奏上した」とき、及川にこのように問いただしたのだ。この報告を受けた連合艦隊司令長官は「畏レ多キ御言葉ヲ拝シ、恐懼ニ堪ヘズ、臣副武以下全将殲死奮戦誓ッテ聖慮ヲ安ンジ奉リ……」との緊急電報を大和などの所属部隊に発したという。戦艦大和と乗員三三〇〇名の決死の「水上特攻」がここに決まった。昭和天皇が近衛の「終戦の上奏」をも制して、沖縄を戦場とし、東京大空襲、大阪大空襲、広島・長崎の原爆の被爆などを招き、多大な犠牲を積み重ねたことは、わが同盟の議長であった山川暁夫がくり返し指摘していたことだ。間もなく、その山川が亡くなってまる六年目の二月一二日が来る。山川が語り続けた裕仁天皇の戦争責任追及の闘いはいまなお有効だ。
 折しも一六四通常国会の開会に際しての小泉首相の施政方針演説は、皇室典範の改正に触れて、「皇位が将来にわたり安定的に継承されるよう、有識者会議の報告に沿って、皇室典範の改正案を提案する」と述べた。支配層は天皇制を何としても延命させ、それを改憲と「戦争のできる国」づくりのために活用していくことを狙っている。こうした動きを許してはならない。
 とりわけ、この機に乗じて三笠宮寛仁など三笠宮家が、極右勢力と結託して皇室典範改定問題に干渉し、政治的発言を繰り返していることも容認してはならないと思う。寛仁は昨年、自分が会長を務める民間福祉団体の機関誌で女系天皇問題に異論を発表し、今年に入っても月刊「文藝春秋」で発言したが、とうとう右翼「日本会議」の機関誌「日本の息吹」一二月号にインタビューで登場し、「皇室典範問題は歴史の一大事である〜女系天皇導入を憂慮する私の真意」などと題して発言したのだ。そして裕仁天皇の弟である崇仁とその妻の百合子も同意見であるなどと紹介している。いわば「三笠宮家の叛乱」「三笠宮家の陰謀」なのだ。
 寛仁は「私がこういうインタビューに応じたり、かなり積極的に発言しているのは国家の未曾有の大事件と思うので、あえて火中の栗を拾いに行っているような嫌いがあります」などと言っている。まさに確信犯である。
 右翼と公然と結託した寛仁のこれらの発言は、自らの「皇室の存続」の危機感を背景にしているとはいえ極めて異常であり、昨今の政治的社会的風潮の中でこうしたことが許されるという判断があるに違いない。だからこそ、これは見逃してはならない極めて危険なことなのだ。 (T)