人民新報 ・ 第1194号<統合287>(2006年2月25日)
目次
● 1047名の統一を軸に、国鉄闘争の勝利へ 闘争団、争議団、原告団2・16総決起集会
● 日米共同訓練反対 ! 2・11日本原集会
● けんり総行動実行委員会による2・16総行動が闘われる
● 女天研の皇室典範改「正」反対声明 連名賛同が813に
● 日弁連主催で市民と弁議士の集い 〜テロ対策と市民の権利〜
● 与党の共謀罪修正案に関する声明 ―私たちは共謀罪の廃案を求めます―
● 書評 砂場 徹 著 「私の『シベリア物語』―
抑留生活四年をふりかえる」
● パンフ紹介 日本弁護士連合会・憲法委員会「与党が検討中の憲法改正国民投票法案に異議あり!!」
● せ ん り ゅ う / ゝ 史
● 複眼単眼 / 人を差別して恥じない麻生太郎外相発言録
1047名の統一を軸に、国鉄闘争の勝利へ
今年、国鉄の分割・民営化攻撃での組合差別によるJR不採用通告から二〇年の大きな節目を迎える。大規模なリストラ・合理化の最先端と闘ってきた国鉄闘争は、全国の多くの労働者・労働組合、そして営利優先によって切り捨てられる地方線や安全を危惧する多くの市民によって支援され、闘う労働運動の中軸として存在してきた。闘いの途上で倒れた闘争団員の仲間も少なくない。国鉄労働組合自身も、政府・自民党のしかけた四党合意策動に引きずり込まれ、鉄建公団訴訟に立ち上がった闘う組合員を処分したり生活援助金の凍結など許せない対応をし、闘いは内部から大きな打撃を受けた。しかし、昨年九月一五日の東京地裁民事第三六部難波裁判長判決は流れを変えるものとなった。判決は、JRへの不採用を正当としながらも、二九七名の原告団の請求を一部ではあるが認めた内容であった。その判決を見て、鉄建公団訴訟に敵対してきた国労本部も徐々に対応を変化させてきた。
二月一六日、「採用差別事件の勝利解決をめざす!一〇四七名 闘争団、争議団、原告団 2・16総決起集会」が日本教育会館大ホールで開催された。第一会場は通路・階段まで人でいっぱい、二次会場もすぐに満杯となり、主催者によると、参加者一八五〇人で、会場に入れずに帰った人も含めると二五〇〇人が参加した。
オーブニングは、国労大井工場支部組合員で作るスペシャルブレンドのジャズ演奏。
佐久間誠(鉄建公団訴訟原告団事務局長)の開会あいさつにつづいて、鉄建公団訴訟主任弁護士の加藤晋介さんが「国鉄闘争の20年と解決への道」と題して基調講演を行った。
国鉄の分割・民営化は、膨大な国鉄赤字の解消を口実に行われた。しかし、その狙いは当時の中曽根康弘首相が述べているように、分割・民営化で国労をつぶすことだった。国労は総評の中心にあったから、国労をつぶして、総評を弱体化させ、総評からの支持が大きい力を持っていた社会党の影響力をそぐことを狙いとしたものだった。国鉄赤字は「働かない」労働者が作ったものだとキャンペーンが展開されたが、鉄道赤字の元凶は政府・自民党だった。彼らが、選挙の票欲しさに、赤字路線をどんどんつくり、財政投融資の利子がかさんで膨大な累積赤字がつくられたのだ。これには、七〇〜八〇年代の世界的な不況からの脱出策ということもあった。だがケインズ政策は上手く機能しなくなっており、労働者に一方的に犠牲をしわ寄せする政策が出てきた。国鉄の分割・民営化は護憲勢力解体戦略と日本的新自由主義攻撃がからみあったものとなった。
問題は、主体としての国労・労働者組織がどうであったかということだ。
組合側は、労働委員会ではすべて勝利してきた。しかし、九八年にJRに責任なしとする東京地裁5・28判決がでた。しかし、二〇〇二年には闘う闘争団員による鉄建公団訴訟が始められ、二〇〇三年一二月には、JRの不当労働行為責任を追及する中労委上告に係る訴訟について最高裁第一小法廷は、三対二という僅差で「JRには使用者として不当労働行為責任をおわない」という判断をだした。しかし、それでも「不当労働行為があったとすれば、それは旧国鉄、次いで清算事業団がその責任を負わざるを得ない」とした。清算事業団を引き継いだ鉄建公団に責任があり、鉄建公団訴訟は、国鉄が採用差別名簿を作成して、国労組合員である原告らをJRに差別不採用にした損害賠償請求も付け加えて、訴訟闘争は新しい段階に入った。
そして、昨年、鉄建公団訴9・15東京地裁判決が出た。解雇を認めた不当な判決だった。この判決をどう見るのか。難波裁判長は、希代の名判決だと思って書いたのだろう。政府側には「解雇は有効だ」とし、原告に対しては、期待権が侵害されたとして一人五〇〇万円の補償を行う。四党合意では、一人八〇万円だったのだからこれで労働者側も認めるだろうということだ。判決の意義と限界をはっきりさせなければならないが、そうじて、これは力関係を反映した極めて政治的判決だということだ。
しかし、この判決が書かれたのは9・11総選挙前のことで、小泉自民党が大勝して事情は変わった。敵側はすぐに控訴したが、高裁では、国会での与党の絶対多数ということで、彼らの側に有利は判決が出るだろうと見ているからだ。不当労働行為は一切なかった、これがかれらの控訴趣意書であり、むこうから殲滅(せんめつ)戦が仕掛けられてきていることを見なければならない。
こうした状況でいかに闘い勝利していくのか。ひとつは9・15判決の出た訴訟だけでなく、全動労、動労千葉、そして次々と新たに訴訟に加わる仲間を増やし、一〇四七名全体が鉄建訴訟に取り組むことであり、もうひとつは、国労本隊が立って闘うことだ。今日、一〇四七名は一堂に会した。必要なのは闘う姿勢を見せることだ。闘う姿勢なくして政治解決はあり得ないということだ。
加藤弁護士の基調につづいて、「レールは警告する」「中曽根発言」のビデオが上映された。
決意表明は、全動労争議団・鉄道運輸機構訴訟原告団の梅木則秋団長代行、動労千葉争議団・鉄道運輸機構訴訟原告団の高石正博代表、国労闘争団全国連絡会議の神宮義秋議長、鉄建公団訴訟原告団の酒丼直昭団長がおこない、一〇四七名の統一した力で闘いを前進させようとの発言がつづき、会場からは熱烈な拍手がおこった。
集会アピール(別掲)が採択され、国労合唱団による歌、鉄道運輸機構訴訟原告団の川端一男代表の音頭で団結ガンバロー、最後に「がんばろう」の大合唱で集会を終えた。
二〇〇一年一月二七日に開かれた国労大会は、四党合意を決定し、一〇四七名の闘いは実質的に終焉させられようとしていた。しかし、〇二年一月に闘争団員の内の二九七名が、鉄建公団を相手に裁判闘争を起こした。〇三年一二月には、JRに法的責任はないが、「不当労働行為があったとすれば、その責任は国鉄清算事業団」にあるとした最高裁判決が出た。それ以降、鉄建公団(鉄道運輸機構)に対する闘いは広がりを見せてきた。〇四年一一月に国労闘争団第二次原告三六名が、同年一二月には全動労争議団五八名と動労千葉争議団九名が裁判闘争に合流した(三件とも係争中)。
ようやく国鉄労働者一〇四七名被解雇者の統一集会が実現した。集会場には国労本部の面々も多数姿を見せていた。しかし、この日の統一集会はまだはじめの一歩に過ぎず、過去の対立は完全に解消されたわけではない。四党合意・闘う闘争団員処分についての国労本部の責任は、佐藤執行部がこれまでの鉄建公団訴訟に対するあからさまな敵対を転換したことが評価されるとしても、すでにクリアーされたという段階にはない。しかし、鉄建公団訴訟を軸にして、一〇四七名の統一が回復に向かい、被解雇当事者の五団体で「一〇四七名連絡会」が結成された。この状況を生かして国鉄闘争の勝利に向けて大きな前進を勝ち取っていく時である。
闘争団、争議団、原告団2・16総決起集会アピール
日夜、吹き荒れるリストラ・首切り合理化に抗し、懸命に闘い抜いている働く仲間の皆さん!そして全国で長きにわたりご支援いただいている、すべての皆さん!
JRへの採用差別を受けた被解雇者一〇四七名は、自らの手による実行委員会を発足させ、多くの皆さんのご協力によって、2・16総決起集会は大成功の集会となりました。
一九年前の今日は、「紙切れ一枚」でJR不採用を言い渡された屈辱的な日であり、不当解雇撤回の闘いに立ち上った怒りの原点とも言うべき日です。あれから二〇回目の二月一六日を迎えました。
国鉄改革国会では、運輸大臣答弁や参議院付帯決議で「所属労働組合による差別・選別はあってはならない」、そして当時の中曽根総理大臣が「一人も路頭に迷わせない」とまで言い切って強行した「分割・民営化」は、白昼堂々と露骨なまでの所属労働組合による差別と不当労働行為が行われ、二〇〇名を越える自殺者を出す痛ましい事態を生みました。まさに取り返しのつかない犠牲を国鉄労働者に強いたのが、国鉄民営化の陰の真実です。
不採用になった私たちは、塀のない収容所と呼ばれた「清算事業団」に放り込まれ、再就職斡旋などとは程遠い労働者のプライドまでズタズタに切り裂く「自学・自習」の拷問でした。住み慣れた土地を離れJRの広域採用に応じ、新天地でも差別を受けながらも労働者として誇らしく闘っている仲間、心ならずも再就職を決断せざる得なかった仲間。そして闘いの途半ばで病に倒れ、解決の日を迎えることなくこの世を去った多くの仲間。国鉄の「分割・民営化」で苦しんだすべての仲間の思いは、この闘いに勝利することなしでは終えることはできません。
二〇〇三年一二月二二日、最高裁は「JRの法的責任なし」との不当判決を出す一方で「不当労働行為があった場合は、その責任は旧国鉄及び清算事業団が負う」と責任の所在を明確に示しました。そして、昨年九月一五日、鉄建公団訴訟判決で東京地裁民事三六部は、「国鉄によるJR採用候補者名簿作成時に国労差別があった」と、初めて司法の場で不当労働行為を認定しました。しかし、一方で「九〇年の清算事業団からの解雇は有効」とする、政治的な不当判決でもありました。
マスコミ各社は、「政治の責任で解決の時」と一斉に報道し、当該労組、被解雇者はもとより各労組・団体・支援者も「九・一五判決を機に解決を!」と機運が盛り上がっています。
すべての働く仲間の皆さん!
私共、被解雇者一〇四七名は、今日までお力添えをいただいた、労組、団体、学者、文化人、弁護士、支援者すべての皆さんの思いを受け止め、今集会を機に「被解雇者一〇四七名連絡会」を旗揚げし、鉄道運輸機構や関係省庁等への申し入れをはじめ、大衆闘争、裁判闘争を強化し共同行動を積み上げ、勝利解決に向けて全国の仲間と全力で闘い抜きます。
二〇〇六年二月一六日
JR採用差別事件の勝利解決をめざす!一〇四七名闘争団、争議団、原告団2・16総決起集会
日米共同訓練反対 ! 2・11日本原集会
今年の2・11日本原闘争は、昨年一一月日米合同演習が日本原で行われることが発表されたことを受け、ここしばらくなかったような状況が生まれた。多くの団体も動いて、その調整の結果として、日本原共闘会議・平和フォーラム・連合岡山の三者が2・11集会の以前から、共同訓練反対の署名運動に取り組むなど、例年とは違う広がりをもった形で進められた。
集会も三者共闘で開催された。主催者あいさつを連合岡山・平和フォーラム中国ブロック、日本原共闘会議の代表がそれぞれ行った。
来賓として連合山口の中野威副事務局長があいさつ。
昨年の秋、日米政府は、関係自治体の頭越しに在日米軍基地再編に合意し、米海軍厚木基地の空母艦載機部隊を岩国基地へ移転することを明らかにした。このことにより、空母艦載機の夜間離発着訓練(NLP)は、硫黄島主体で行われているが、今後は岩国沖合に建設中の新滑走路に変更される可能性が高い。なにもかもが米国と米軍の思いのままにやられている。こうした中で地元での危機感が強まっている。三月一九日には大きな反対集会を開催する予定で、多くの仲間の結集をお願いしたい。
つづいて現地農民の藤秀之さん。
今年は例年の集会比べて五倍近い結集が実現できたことに感謝したい。とうとう心配していた日米合同演習が日本原でやられることになってしまった。軍隊は国民を守るものではない。われわれ農民や一般市民の平和的生存権を脅かすものでしかない。憲法改悪問題もふくめて多くの人びと・団体の力をあわせて頑張ろう。
最後に、集会決議を採択し、約一時間の集会を終った。
集会の後には、一三〇〇名を上回るデモ隊が日本原駐屯地まで三キロ強を行進した。
これまでは「平和憲法の会・岡山」を中心とする有志五〇〜六〇名のデモでしたから、久々のデモ隊列の長さに喜ぶと同時に、気持ちは複雑でした。なぜなら八九年の連合結成までは、これを越える結集があたり前だったのですから。
例年参加組は、「今日の参加者が、職場・地域・家庭で、日米合同演習や日本原のことを語ってくれて、次の日本原闘争へつながって欲しい」という気持ちを強くしたに違いないと思います。
なお、二月一九日には共闘会議主催で日米合同演習阻止行動が行われます。(岡山・T)
* * * *
日本原演習場における日米共同訓練の中止を求める決議
米軍の世界的再編が進められる中、昨年一〇月に日米両政府は関係自治体の頭越しに在日米軍基地再編に合意し、中国地方では海軍厚木基地に配備されている空母艦載機部隊を岩国基地へ移転することを明らかにした。
一方、米軍再編のもう一つの柱である在日米軍と自衛隊の協力強化は、横田基地とキャンプ座間で双方の司令部機能を統合するなど、在日米軍と自衛隊の一体化が加速強化されている。
こうした動きの中で突然、在日米軍の再編(トランスフォーメーション)決定を通告された形の関係自治体の知事・市長は一斉に反発を強め、特に「渉外主要都道府県知事連絡協議会」(会長。松沢神奈川県知事、ほか一三都道府県知事)は一一月一一日、政府に対して「関係県への説明がなく、日米地位協定の見直しが含まれていない」と、申入れを行った。
岡山県内においても、これまで滋賀県「あいば野」演習場で実施されていた日米共同訓練(米子市の第一三師団第八普通科連隊の約三五〇人、米軍はテキサス州の海兵隊第四師団約二五〇人が参加の予定)の一部を二月一九日〜三月三日に岡山県内の日本原演習場で実施することが発表された。
日本原演習場における日米共同訓練は、初めてのことであり在日米軍再編にともない恒常化の恐れも出てきている。
拒否することの出来ない中での日米共同訓練。四五年間も改正されない不条理な日米地位協定。米英同盟にも匹敵する日米の一体化。いま、日本は平和をめぐって戦後六〇年、かつてないほど、大きな岐路に立たされている。
「平和が危ない」 私たちは、県民の不安や危惧を解消し、安全な生活を確保する立場から、「米軍再編による基地機能の強化」、そして「日米の一体化」に反対し、世界の恒久平和に向けた平和運動を職場や地域でさらに強力に進めていく。
以上、決議する。
二〇〇六年二月一一日
2・11日米共同訓練反対日本原集会
けんり総行動実行委員会による2・16総行動が闘われる
二月一六日、氷雨をついて「二〇〇六けんり総行動実行委員会」による東京総行動が闘われた。今年も、「働く権利、働く者の権利、人間としての権利」をかかげ、「ぶっつぶせ!格差拡大=小泉構造改革」、「労組無用の『労使委員会制度』NO!」、「国際連帯で、多国籍企業の専横を規制!」、「労働条件と公共性の切捨て民営化、阻止!」などのスローガンも並んだ。
大企業労組が、労働者の生活と権利のために闘わない状況で、東京総行動は、こうした日本労働運動の現状に抗し、それを打ち破り、労働者の利益のために「争議団の自主性と平等、自立と連帯を基礎」として、持続的かつ大衆的に闘われつづけている。
一二ヵ所一五団体で行われた総行動の朝一番のスタートはみずほ銀行本店で、ここでは、全国一般東京労組ミューズ分会の不当労働行為、全国一般東京労組NTT関連合同分会の解雇に対する抗議・申入れを行った。
以下の行動は、昭和シェル石油(全石油昭和シェル労組 賃金差別・不当配転・転籍)、フジテレビ(反リストラ産経労 解雇)、国土交通省(鉄建公団訴訟原告団、鉄道運輸機構訴訟原告団、国労闘争団全国連絡会議 一〇四七名解雇)、朝日新聞本社(全国一般東京なんぶヘラルド朝日労組 三名解雇)、郵政公社(郵政4・28ネット 免職処分)、千代田学園(全国一般千代田学園労組 学園再建)、日立造船(全造船機械日本鋼管分会 アスベスト被害)、丸の内ビル(全国一般ミューズ分会 争議解決申入れ)、トヨタ本社(フィリピントヨタ労組を支援する会、全造船機械関東地協 解雇)、東京都庁(全国一般文京七中分会 解雇、千代田学園労組 学園再建)、住友重機(全造船追浜・浦賀分会 アスベスト被害)を闘い、夜の「一〇四七名 闘争団・争議団・原告団2・16総決起集会」に合流した。
郵政4・28ネットは、総行動で、「民営化前の郵便局解体計画を許さない」というアピールを行った。
郵政民営化法案の成立以降、郵便局では来年一〇月の民営会社発足に向けた準備作業が急ピッチで始まっています。国民にはほとんど明らかにされていませんが、国会での政府答弁や付帯決議を全く無視した住民サービス切り捨ての郵便局の解体計画が進行しようとしているのです。
その計画は、「集配拠点の再編」という配達・集荷を行っている郵便局(普通局・特定局)の全国的な統廃合(一〇〇〇局が窓口だけの郵便局に)、そして「貯金・保険外務員集約化」という無配達化される特定郵便局で貯金、保険の業務を行っていた外務員を「外務営業拠点局」に集約化するというものです。
これにより、今まで保険・貯金の集金や満期金の支払い、年金相談、お年寄り宅への声かけなどで各家を回り、いろんな悩みも聞いていた外務員の多くが地域から消えるとともに、夜間窓口、再配達、集荷サービスなども多くの局で無くなることが予想されます。公社はこの統廃合を八月から段階的に実施するとしていますが、これは先の国会で決めた「郵便局の現行サービス水準の維持」「雇用確保」という付帯決議に抵触し、民営化前にできるだけサービスダウンとリストラをしてしまおうということに他なりません。
私たちは現場にかけられた民営化前の大リストラに反対するとともに、公社に対し、高裁判決(二〇〇四年六月)に従い4・28処分免職者を直ちに郵便局職場に戻すよう、二〇〇六年もみなさまとともに訴え続けます。
女天研の皇室典範改「正」反対声明 連名賛同が813に
女性と天皇制研究会(女天研)は、昨年末から、声明【天皇制安泰のための法改「正」に反対します】への連名賛同を呼びかけを行っている(声明文は本紙一二月一五日号にも掲載)。
二月一五日の集約では、個人七四八、団体六五(計八一三)となった。この八一三の連名で、小泉純一郎首相、柴田雅人皇室典範改正準備室室長、河野洋平衆議院議長、扇千景参議院議長をはじめ政府・議会関係者各人と報道機関関係に広く発信した。
女天連は、天皇制を巡る今日の状況について「秋篠宮妃の妊娠に男系・男子継承の可能性を見出し、国会上程が揺らいでいるようですが、そのような解決を私たちは望んでいません。どのような天皇制もいらないのです。この声明を準備した二〇〇五年一二月から事態は大きくかわりつつありますが、私たちは天皇制を存続させるためのどのような努力も拒否するという意味で、この声明を発信し続けます。いまこそ天皇制の是非について論議するべき時であるにもかかわらず、実際は一人の皇族女性の妊娠を契機に逆戻りの論議のみが展開されています。このような天皇制社会に辟易する人たちがたくさんいることを、知ってください」として、声明への賛同募集の第三次集約を三月二〇日とし「最終的には四桁を越す賛同者連名で、受け取る側を唸らせてやりたいと思います。みなさま、一緒に『天皇制いらない』の声を上げましょう」とアピールしている。
女性と天皇制研究会 jotenken@yahoo.co.jp
FAX03(3368)3110
東京都新宿区上落合三―一五―三〇一 落合ボックス
日弁連主催で市民と弁議士の集い 〜テロ対策と市民の権利〜
二月一七日、弁護士会館講堂クレオで、日本弁護士連合会主催の「共謀罪新設とゲートキーパー立法に反対する市民と弁議士の集い〜テロ対策と市民の権利〜」が開かれた。
はじめに司会の海渡雄一弁護士(日弁連ゲートキーパー問題対策本部副本部長)が集会の趣旨について報告した。
共謀罪新設法案を今国会で通過させるために与党側が、野党側に一定の「譲歩」の修正をしめしたが、それは「修正]とそれと引き換えに野党の反対を分断させようとしている危険なものだ。
いま、弁護士を警察の門番(ゲートキーパー)にさせようとするゲートキーパー制度(弁護士による依頼者通報制度)が導入されようとしているが、これに日弁連は反対だ、多くの市民とともに反対運動を強力に推し進めていきたい。
中村順英日弁連副会長(共謀罪等立法対策ワーキンググループ座長)の開会あいさつにつづいて、ゲートキーパー問題について、川端和治ゲートキーパー問題対策本部本部長代行が説明した。
共謀罪の通常顧会での審議見通しについては、山下幸夫弁護士(共謀罪立法対策ワーキンググループ委員)が報告。
共謀罪新設法案は昨年の郵政民営化法案否決による国会解散で廃案となったが、総選挙の後の特別国会で三度目の上程となった。そして、衆院法務委員会で精力的な審議が行われ、いつ採決されてもおかしくないと言う状況にあって、今年の通常国会に継続審議となった。これ以上、のびのびになったら完全に廃案となるしかないとして、与党も必死だ。それで、二月になって与党は民主党に対して修正案を提示して、取り込もうとしている。民主党が与野党協議に乗ってくればその少々手直ししたもので可決させるが、もしものってこなければ与党単独で強行採決ということになるだろう。いくつかの与野党対決法案もあるが、早く衆院法務委員会を通過させたいと言うのが与党の狙いだ。とにかく、この、国会が勝負だと言える。
つづいて、国会議員、各団体からの意見表明。
平岡秀夫衆議院議員(民主党)、仁比聡平衆議院議員(共産党)、近藤正道参議院議員(社民党)、福島瑞穂参議院議員(社民党党首)、ジャーナリストの斉藤貴男さん、映画監督・ドキュメンタリー作家の森達也さん、村岡啓一一橋大学教授が発言した。
斉藤貴男さんは、小泉政治がなにをもたらしているかについて語った。
共謀罪法案などの動きは、そこいらじゅうに警察のイヌを張り巡らせることだ。テロや犯罪で危機を煽って不安に陥れる手口が使われている。各地で防犯組織がつくられているが、名古屋地区では、女性だけの防犯組織がつくられ、その開会式のパレードでは「よぉ、銃後の守り」というヤジが飛んだ。東京では地下鉄霞ヶ関駅に、監視カメラと顔認識システムが導入される。テロや犯罪を無くしたいのならその原因を無くすべきだが、小泉はそうではなく、「テロ・犯罪いらっしゃい」という政治をやっている。いま、日本は外にアメリカの一部としての「衛星プチ帝国」になろうとしている。これは私の造語だが、アメリカの衛星国ではあるが、そのもとで小さくても帝国になりたいということだ。座間には、地球の半分をカバーする司令部が移されようとし、その下で自衛隊が強化されている。沖縄、南西アジア、そして「不安定の弧」で米軍を支える。一方、国内では格差の拡大だ。小泉は「格差はない」発言から、「成功者を妬んではいけない」と説教までしている。だが、構造改革の目的は格差の拡大なのだ。竹中平蔵総務相は五年前に、「構造改革ってそうだったの会議」と言う本をだし、ベストセラーになった。そこで、なぜ、失業するのかの答は「その人が役に立たないから」というものだった。累進課税制度にも成功者から貧乏人がカネを奪うものだとして反対している。すべて自己責任だという。しかし。孤児院で育った人と、お爺さんが総理大臣、お父さんが外務大臣、叔父さんも総理大臣だったという人が競争するにしても、一方は一〇〇b手前、他方はゴールの一歩前というのでは競争にもならないのだ。
<ゲートキーパー制度とは>(日弁連の「早わかり〜ゲートキーパー制度の問題点」より抜粋)
ゲートキーパー制度とは、弁護士を違法な金融取引を防止するための門番にしようとする制度です。弁護士は自らの依頼者の行う金融取引などの諸活動に違法であるとの疑いがあれば、これを警察に通報することを法律上義務づけられ、この義務に反した場合には、刑事罰などの制裁を受けることが予定されています。
この制度は、FATF(OECD加盟国等で構成されている政府間機関)がテロ資金・マネーロンダリング対策として二〇〇三年六月の「四〇の勧告」の改訂の中で提唱した制度です。勧告は弁護士などの法律専門家に対し、テロ資金・マネーロンダリシグ資金に関連するなど何らかの違法性があるとの疑いのある取引・活動を敗府の金融情報機関(FIU・日本の場合は警察庁)に通報する義務を課すものです。
政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は、二〇〇五年一一月一七日、このFATF勧告を受けて、その実施のための措置として、現在金融庁に置かれている金融情報機関(FIU)を警察庁に移管すること、法律案の作成は警察庁が行い、二〇〇七年の通常国会に提出することなどを決定しました。
この決定に基づき、政府は、二〇〇七年の通常国会には、弁護士に対してテロ資金・マネーロンダリング資金に関連するなど何らかの違法性があるとの疑いのある取引・活動について警察庁に報告することを義務づける制度を盛り込んだ法案を提出するとされています。
この制度は、弁護士が依頼者から聞いた相談内容を警察に通報するものです。これまで、依頼者が弁護士に話した内容については固く秘密が守られ、弁護士は依頼者の秘密をあくまで守り抜く存在であると信じられてきました。
ところが、この制度ができれば、依願者が弁護士に話したことや依瀬者の行動が依頼者の知らないうちに警察に通報され、そのことがきっかけとなってその依頼者の銀行口座が凍結されて預金を下ろせなくなってしまい、事業が倒産に追い込まれるなどという事態が生ずるようになります。
また、違法性のはっきりしない「疑い」のレベルで通報が義務づけられますので、真実は依頼者の違法でない活動についても通報がなされる場合があることは否定できません。
このような事態の発生は依頼者だけでなく市民全体の弁護士・弁護士会に対する信頼を決定的に損なうことになることでしょう。その結果、依頼者が弁護土に真実を話すことを躊躇するようになるでしょう。すると、弁護士は十分な情報を得ることができず、依頼者が法律を遵守して行動するように適切に援助することもできなくなり、結果的に依頼者による違法行為を招くことにもなります。
この制度の導入によって、違法な金融活動が摘発される例がないとはいえませんが、それにもまして、依頼者が適法に行動するために適切な法的アドバィスを受けることできなくなることのマイナスは決定的に重要です。
また、弁護士と警察は刑事事件の弁護活動を巡っては鋭く対抗する関係にあります。警察庁への報告義務が制度化されれば、弁護士が警察と対抗して刑事弁護活動を行う上での制度的独立を危うくし、弁護士・弁護士会の警察権力からの独立を傷つけてしまう可能性があります。
このように、依頼者の違法の疑いのある諸活動について警察庁に対して報告を講務づける制度は、弁護士・弁護士会の存立基盤である国家権力からの独立性を危うくし、弁護士・弁護士会に対する国民の信頼を損ね、市民の法的サービスヘのアクセスを妨げ、弁護士制度と司法制度の根幹を揺るがすものです。
日弁連は、このようなゲートキーパー立法が制定され、これが弁護士に適用されることに強く反対しています。
与党の共謀罪修正案に関する声明 ―私たちは共謀罪の廃案を求めます―
報道によると、二月一四日、与党は修正案を民主党に対して提示したとされています。その内容は明らかになっていませんが、与党修正案は、継続審議となっている共謀罪新設法案の二点を修正するというものとのことです。
一点は、対象団体を「その共同の目的がこれらの罪を実行することにある団体」に限定するとし、これがマスコミ報道で「組織的犯罪集団に限定」されたとする根拠になっています。「これらの罪」とは、法務省が明らかにしている六〇〇をこえる対象犯罪のことです。もう一点は、共謀罪には「犯罪の合意」だけではなく、「犯罪の実行に資する行為が行われた場合」という要件の付加です。この与党修正案は、新聞報道でされているように「組織的犯罪集団」などに限定されるものではありません。以下で詳しく述べるように、修正案は共謀罪の危険な本質を隠蔽するにすぎず、私たちは改めて共謀罪は廃案しかないことを強く訴えます。
(1)対象団体に関する「修正」への批判
対象団体を「その共同の目的がこれらの罪を実行することにある団体」に限定するということは、「組織的犯罪集団に限定」したものとはなりません。社会のどこに「共同の目的」を犯罪を実行することにあるなどと謳っている団体があるでしょうか。危険な団体かどうかの認定は、捜査当局の恣意的判断によることが特別国会の衆議院法務委員会の質疑で明らかになっています。しかも共謀罪の対象犯罪は市民生活にも関わる六〇〇を越えるものです。市民団体や労働団体・株式会社等が「組織的犯罪集団」にされる危険性は払拭されません。
(2)「共謀」認定に関する「修正」への批判
「犯罪の実行に資する行為が行われた場合」の「資する行為」とは、準備行為をさすのか、顕示行為をさすのかはっきりしません。何をもってそれとするのか非常に曖昧です。これも捜査当局の恣意的判断によることになるのは必至です。日本の刑法では殺人罪に準備行為を処罰する予備罪がありますが、それは殺人のために包丁を買うとか下見をするとかの具体的な行為があたるとされています。顕示行為はこの準備行為よりさらに緩やかな行為です。共謀罪に準備行為や顕示行為の要件を加えたとしても、それらは犯罪の実行着手以前の行為であり、共謀罪は言論・思想を処罰するものという批判からのがれることはできません。
共謀罪は、思想・言論・表現・結社などの自由を侵害する違憲の法律であり、犯罪が実行され被害が生じて初めて処罰するとするこれまでの刑法の原則を根本から覆すものである、と私たちは批判してきました。与党修正案は、そうした私たちの危惧に全く応えておらず、修正によってその危険性が減ずるものでないことは明らかです。私たちは、野党が修正協議に応じることなく、断固として反対されることを切に願っています。また、マスコミは政府の世論操作の罠にかかる誤りをおかさぬよう、事の本質をしっかり見抜いて報道してください。話し合うことが罪になる共謀罪は廃案しかありません。
市民の自由で自立的な活動を阻害し、平和と民主主義を脅かす共謀罪の新設に、私たちは絶対に反対です。 以上
二〇〇六年二月二〇日
盗聴法(組織的犯罪対策法)に反対する市民連絡会
連絡先(日本消費者連盟、JCA―NET広報室、ネットワーク反監視プロジェクト)
書 評
かけがえのない記録 ……
砂場 徹 著 「私の『シベリア物語』― 抑留生活四年をふりかえる」
2006年1月 技術と人間刊
○ はじめに
「引きあげてきた数百万人、また引きあげるべき百万人という人びとが、どういう人びとであるかということをわれわれは考えなければならない。―略―大部分の人びとは、第一に、天皇制の野蛮と帝国主義的侵略戦争の害悪とを、犠牲をはらって知った人びとである。(拍手)第二に、彼らは諸民族、わけても民主主義諸国家の生活、社会、政治を苦労して知ってきた人びとである。すなわちこの人びとは、日本の民主主義革命を仕上げ、侵略戦争の復活を防ぐために、特に貴重な資格ある人びととわれわれは考えるのであります。」(中野重治「在外同胞引揚に関する感謝とその引揚促進に関する決議案賛成」演説。一九四七年八月一五日、第一回国会でのもの。一九七八年刊 中野重治全集第二三巻所収)
本書は八十歳の著者が二十台前半四年間のシベリア抑留生活を回顧して著したものである。何が著者の背を押して、今、半世紀以上前の記憶を手繰り、一冊の本にまとめるという難儀な作業に向かわせたのか。日本政府がアメリカのイラク侵略に加担し、国会では憲法九条改悪を目論む勢力が圧倒的に多数という現状を憂え、著者の苦しい体験を通じた「反戦の気持ちを知ってもらいたい」ため、そしてもう一つ「最近、なぜかシベリアが懐かしいのだ」(まえがき)過酷な抑留生活を送った土地が懐かしい?首を傾げる言葉だが、本書を読み進める中から筆者の思いの在り処を探ってみたい。
○ 出征、「徹、死んだらあかんで」
著者は一九四五年四月に二〇歳で召集された。入営直前には大阪大空襲の惨状を目の当たりにし、敗戦を予感しているが、「天皇陛下の御為に、一身を捧げる」覚悟をしている軍国青年の一人であった。入営を前にした壮行会での出来事。「私はそっとその場を離れ、二階の自分の部屋で、最後だろうと思いながら好きなレコード聞いていた。そのとき、普段でも二階にあがってくることなどめったになかった父が上がってきた。どちらも酔っぱらってでたらめなダンスになった。父のそのような振る舞いは初めてだった。私は驚きながら、ふらふらともつれ合っていた。そのとき、不意に父が耳元で『徹、死んだらあかんで』と言った。聞き違いかと思ったがそうではなかった。私は思わずキッとなって、「なに言うてんねんお父さん、そんなん『非国民』やないか」と怒ったー略ー私は涙をながす父をはじめてみた。」
私は、この稀有な情景を書きとめてくれたことだけでも、本書の意義があると思う。
○ 「かわいらしい兵隊さん」
陸軍航空技術兵として入隊した砂場青年は、満州に送られることになる。小柄な体に古着のだぶだぶの軍服と地下足袋姿で行進する砂場青年に、見送りの中から「まあー、かわいらしい兵隊さん」という女性の嘆声が聞こえる。「せめて『勇ましい兵隊さん』とか『かっこいい兵隊さん』といって欲しかった」と青年は思う。微笑ましいような光景ではあるが、一路敗戦へとなだれ込もうとしている軍国主義日本と、未だ愛すべき稚気を残しながら青春をそこに投じようとする若者との間の裂け目が露呈している。
○ 陰惨な軍隊生活、敗戦、抑留
満州の佳木斯(ジャムス)にある野戦航空修理廠に配属された砂場青年を待ち受けていたのは、無法・理不尽な内務班生活であった。連日の古参兵による恣意的な暴力、員数をそろえるための泥棒の横行、上官に取り入るためのゴマすり・・・。「自分の頭で考えることをやめさせ、人間の尊厳を破壊し尽くすことによって、絶対服従の軍人精神をたたき込んだのだ。関東軍は決して強い軍隊ではなかったのである」
耐え切れずに脱走する兵士がでる。捜索に駆り出された砂場青年は、上官から「絶対に満人街に入るな、一人で入ったらでてこれんぞ」と言われる。青年は徐々に侵略者としての日本軍の存在に気づき始める。
ソ連参戦と共に部隊は逃走する。見捨てられたとも知らない「大日本国防婦人会」の女性たちの「兵隊さん、がんばって!」の声に送られて。シベリア生活にも劣らない苦しい逃避行の途中、三人の子どもをつれて彷徨する若い母親とすれ違う。青年にできたのは乾パンの袋を子どもの手に握らせてやることだけだった。
やがて部隊は武装解除され、ソ連軍の捕虜となった。帰国の期待もつかの間、はるかシベリアに送られる、抑留生活の始まりである。 (つづく)
(佐山新)
パンフ紹介
日本弁護士連合会・憲法委員会
「与党が検討中の憲法改正国民投票法案に異議あり!!」
政府・与党は、この通常国会へ憲法改悪のための国民投票法案を上程しようとしている。さまざまな団体・運動・個人が、反対の声をあげている。
日弁連の憲法委員会による「与党が検討中の憲法改正国民投票法案に異議あり!!」は一〇ページほどのパンフだが、だれにも理解できるように、ケンちゃんとノリちゃん二人の子どもの対話で国民投票法案の危険な本質が明らかにされていく。
問い合わせは、日本弁護士連合会(日弁連)へ
03(3580)9841(代)
せ ん り ゅ う
びんぼうは自己責だと政府言い
リストラの小さな会社大きな儲け
ゴーンへ 億円ささえた俺はリストラさ
お人好し黙りこくって組合員
負け組だ警備でやっと食いつなぎ
雇用とは人買いのこと
ゝ 史
二〇〇六年二月
○ 日産自動車を立て直したゴーンの年俸
億円のために何万人もがリストラされた。これが小泉流の小さな政府大きな儲けの改革なのだろうか。リストラ組の行く先が巨大資本の財産を守る警備員とは皮肉なことだ。
複眼単眼
人を差別して恥じない麻生太郎外相発言録
吉田茂を母方の祖父とする麻生太郎外相は、ことさらにべらんめぇ調でしゃべることで、自らのボンボンさぶりを覆い隠している。この人物は「歯に衣を着せない物言い」だなどということで、一部からは評価を得ているが、何のことはない、言葉や歴史についての理解が浅薄、政治家としての資質に欠けるということにすぎないのではないか。多少とも真面目に考えるなら、こんな発言は飛び出してこないだろうというようなことが、それこそポンポンと出てくるのだから、たまったものではない。
本欄は小泉内閣の閣僚で先の町村外相の妄言を批判したことがあったが、麻生現外相からみると町田はまだまともに見えるほどだ。この外相の首のすげ替えは問題にすらならないのだから、小泉首相の感覚もまたウルトラであることが証明されている。小泉内閣の下で、日本の外交は戦後最大の孤立を招いている。「歴史はくり返す」などという俗論に同調するつもりはないが、そういってもおかしくないほどの状況ではないか。
【天皇陛下万歳と】
「英霊は天皇陛下のために万歳と言ったのであり、首相万歳と言った人はゼロだ。天皇陛下が参拝なさるのが一番だ」「(天皇が)公人か私人かという論議のため参拝できなくなったが、解決の答えはいくつかあるはず」「(首相の参拝について)中国が言えば言うほど行かざるを得ない……これはたばこを吸うなと言うと吸いたくなるのと同じだ」(〇六年一月二八日)。
【台湾の植民地化に功あり】
「これは台湾の偉い方から教えてもらった話で、年配者は全員知っていた。われわれの先輩はやっぱりちゃんとしたことをやっとるなと正直その時思った」「最初にやったのは義務教育。(台湾の家族が)子どもを学校に出したら一日の日当を払う大英断を下した。台湾はものすごく教育水準が上がって識字率などが向上したおかげで今極めて教育水準が高い国であるがゆえに、今の時代に追いつけている」(〇六年二月四日)
【創氏改名は強制ではない】
「創氏改名は朝鮮人が望んだ、日本はハングル普及に貢献した」(〇三年五月三一日)
【中国の脅威】
「隣国で一〇億の民、原爆を持って、軍事費が毎年二桁ののび連続一七年。その内容も極めて不透明だ。かなり脅威になりつつある」(〇五年一二月二二日)
こういう麻生のものいいは差別感覚に満ちている。ホームレスへの差別発言も有名な話だが、以下の部落差別発言を知っている人も多いかも知れない。
【部落出身者は総理にできない】
「(野中広務のような)あんな部落出身者を日本の総理にはできないわな」(〇一年三月一二日)(『野中広務
差別と権力』魚住昭「講談社」より)。
一般に人を差別する者は自分はその対極にあるという意識が濃厚な者だ。麻生は無意識のうちに自分の曾祖父は明治の元勲・大久保利通だ、祖父は吉田だと言いたいのであろう。一体、それが何だというのか。 (T)