人民新報 ・ 第1198号<統合291(2006年4月3日)
  
                  目次

● ここ数週間が勝負! 国民投票法案・教育基本法改悪案上程阻止へ

● 第11回市民憲法講座  /  9条改憲阻止の展望

● 劣化ウラン(DU)兵器の禁止にむけて  市民ネットワークが結成二周年の集い

● 「志賀原発2号機を運転してはならない」  金沢地裁が画期的な判決

● 教育基本法が危ない!  改悪法案を絶対に上程させないぞ

● 入管法改悪を許さないぞ!  超党派国会議員と市民の緊急院内集会

● US・VISITとはこんなもの

● 日本弁護士連合会 「外国人の出入国・在留管理を強化する新しい体制の構築に対する意見書」(概要)

● 陸海空港労組二〇団体の主催  憲法改悪反対労組連絡会の協賛で「憲法と私たちの安全を考える集い」

● 自衛隊はイラクで  何をやっている ?

● 米軍再編は安保の改定と同じだ

● Kodama  /  事実を変える教科書検定

             岡山県北での護憲の闘い

● 複眼単眼  /  合併で消えた町に残った齋藤隆夫反軍演説



ここ数週間が勝負! 国民投票法案・教育基本法改悪案上程阻止へ

 三月三〇日、衆院事務局が三〇項目あまりの「憲法改正国民投票法制に関する論点一覧表」を提示し、衆院憲法調査特別委員会(中山太郎委員長)は、理事懇談会を開催し、国民投票法案について論点整理を始めた。こうした協議が開かれたのは今回が初めてであり、与党は、改憲に向けた策動を強めている。

 論点一覧表では、<前提>として、憲法改正案と国民投票法案の議論を切り離して行うことの是非、<総論的事項>として、@国政選挙と同時実施するか、A憲法改正国民投票に限定すべきかどうか、とし<各論的事項>として、投票用紙への賛否の記載方法、投票年齢を一八歳まで引き下げることの是非、投票期日および憲法改正案の周知・広報−周知期間、マスコミ規制などがあげられている。
 改憲派は早期の国民投票法の成立を狙っている。情勢は急であり、ここ数週間の動きが決定的な意義をもつものとなる。この危険な事態に警鐘を乱打し、国民投票法案の上程阻止の運動を大きく展開していこう。

 三月三〇日、衆議院議員会館で、「憲法改悪のための国民投票法案を許さない、市民と国会議員の緊急院内集会」が開かれ、会場に入りきれないほどの一八〇名が参加した。
 主催は、憲法共同会議とフォーラム平和・人権・環境。憲法共同会議は、憲法を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、全国労働組合連絡協議会、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、平和をつくり出す宗教者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会で構成されている。
 主催者を代表して憲法共同会議の高田健さんがあいさつ。
 いま衆院憲法調査特別委員会の理事懇談会が国会近くの憲政記念館で開かれている。憲法を破壊する会議には憲政の名はふさわしくない。今日のつどいの意義は、ひとつには緊迫した情勢の只中で、市民と議員がともに国民投票法案を許さないということで集まったこと、第二には、平和フォーラムと共同で開かれていること、第三には住民投票で大勝利した岩国市の市議田村順玄さんが参加したことだ。全国各地の闘いで、三月中に最終報告をだすとしていた米軍再編の決定は四月以降にずれこんだ。闘えばかならず攻撃を阻止することが出来る。国民投票法案の上程を許さない運動を集中して展開していこう。
 同じく主催者の平和フォーラムの福山真劫事務局長があいさつ。
 改憲攻撃と米軍再編は一体のものだ。米軍再編は憲法九条を実質的に変えているものだ。しかし各地から反撃がおこり、拡大している。地方連合は反対運動を強め、連合中央も米軍再編は容認できないという立場を明らかにした。基地をかかえる自治体の保守の首長といえども反対だ。相模原市の小川市長は「戦車に轢かれても、命をかけて反対する」と言い、座間市長は「ミサイルを打ち込まれても基地強化を阻止する」と言った。こうした動きは従来の平和運動にはなかった広がりだ。再編最終報告に、労働組合、自治体の力をあわせて反対していこう。そして国会でも野党がもっと頑張れば、もういっぽ反撃の力を強めることが出来る。
 国会からは、社民党の辻元清美、日森文尋、又市征治、福島瑞穂、照屋寛徳、近藤正道、菅野哲雄、保坂展人、民主党の喜納昌吉、川内博史、近藤昭一、共産党の佐々木憲昭、無所属の糸数慶子の衆参議員が参加した。
 岩国市議の田村順玄さんは、岩国基地の現状、住民投票の闘い、そして住民の基地強化反対の意思を受け止めたこれからの運動について報告した。
 各地の住民投票は、まず住民投票条例づくりからはじまるが、岩国の場合は、二年前の三月議会で市長が提案してまったくの僅差で可決成立していた。条例にもとづいて市長が、この二月に、神奈川の厚木基地から米軍機移駐の是非を住民投票にかけるという決定があって、ただちに、運動に入ることが出来た。岩国基地は、米海兵隊が使っているが、その沖合いを埋め立てて新しい滑走路をつくるとして段々と拡張されてきている。その工事が約一〇年で二四〇〇億円にもなっている。米軍は三〇年も前から岩国基地を強化・拡張して有効利用しようとしてきた。今回の移駐の前から岩国基地は強化され、沖縄の嘉手納基地を上回る極東最大の基地機能をもたらされようとしていたのだった。現在、岩国には、米軍のF18ホーネットが五七機いる。それに厚木から空母艦載機がこれまた五七機も移駐してくると言うのだ。こうした事態に岩国市民は大きな反発を示した。住民投票では、まず五〇%を越え成立させなければならない。われわれの運動は、なにより市民に投票に行くように呼びかけるものだった。その結果、投票当日の午後四時過ぎには過半数を超えたことがわかった。そして五八・八%の投票率となり、有資格者八万四千人のうち四万三千人が移駐・基地強化に反対の票を入れた。画期的な成果だ。岩国では戦後六〇年間、米軍基地に反対する大きな動きはほとんどなかったが、この六〇年間、市民はしっかり学習していた、そしてわれわれの訴えをしっかりと受け止めてくれたのだった。今後、さまざまな巻き返しの動きがあり、市長も動揺するかも知れないが、岩国市民の圧倒的な反対の意思を今後の闘いにいかしていきたい。
 会場からは、沖縄一坪反戦地主会関東ブロック、自治労本部、全国基地問題ネットワーク、平和を創り出す宗教者ネット、全労協、神奈川県央共闘、座間市議の伊沢多喜男さん、許すな!憲法改悪・市民連絡会、キリスト者平和ネットからの発言があった。


第11回市民憲法講座

   
 9条改憲阻止の展望

 三月二五日、許すな!憲法改悪・市民連絡会の主催で「第一一回市民憲法講座 改憲のための国民投票法案の問題と、9条改憲阻止の展望」が開かれ、高田健さんが講演した。
 憲法の第九九条は、「憲法尊重擁護の義務」を定め、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」としている。しかし、尊重し擁護すべき人たちが憲法を変えようとしているのだ。
 そして、九六条で「憲法改正の手続」として、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」としている。それを改憲派は、「各議院の総議員の三分の二以上の賛成」を、各議院の総議員の過半数の賛成にし、今国会に改憲のための国民投票法案を上程・成立させようとしている。
 昨年一一月に自民党は結党五〇周年で、新憲法草案を決定した。その前には、天皇の元首化、愛国心など極めて反動的な草案があったが、新憲法草案は、九条での軍の保持と九六条の改憲手続きの二つを中心にしている。一部のマスコミなどではソフト化したと報じるところもあったが、そうではない。
 その二つに絞ったかたちで憲法を変えておけば、あとはどのようにも変えられるという狙いがある。これは、日本経団連の意向でもある。財界は、トヨタの奥田碩が経団連会長になる前は、カネは出したが、あまり露骨に政治に口出しはしてこなかった。しかし、奥田は、政治家に対する評価を行い、それに応じてカネをわたし、そして日本資本の海外の権益を守るための海外への軍事的な拡大を求めてきた。経団連の憲法提言の焦点は、九条と九六条だ。
 だが、この二つだけでは、露骨な政治的な狙いが見え見えとなってしまうので、改憲派は、ここで、第三章の「国民の権利及び義務」で環境権だとか知る権利だとかをつけくわえる手法を取ってくる。しかし、こうしたことは、憲法に書き込まなくても、法律を充実させることで十分に対処できるものばかりだ。ただ九条と九六条を変えるためのオブラートの役割を果たしているのだ。
 現在でも九条改憲に反対という意見が多数派だ。しかし、そういう人たちが、選挙では、改憲阻止を掲げる政党に投票していない。また、この多数派はきわめて不安定なものだ。何らかの危機が煽り立てられ、マスコミもそれに同調すれば、たちまち風向きはかわる。だから、今のような国会状況があるのだ。しかし、情勢の変化は、自民党から見てもどちらに転ぶかわからないというかれらなりの危機意識を抱えている。
 問題は私たちの戦略・戦術にかかっているし、私たちは覚悟を決めて運動していかなければならない。
 歴史を振り返ってみる必要がある。六〇年安保闘争には学ぶべきことが多い。あの大きな運動の盛り上がりの基礎には、中央から地域にまで安保共闘の組織があった。憲法闘争でも、とくに国民投票で勝利するためには、地域を小学校区を単位とするところまで反改憲勢力がきめこまかく組織化することであり、それがが出来るなら改憲投票は否決できる。また、安保闘争では、中国などアジア各国で、日本人民の反安保闘争を支持する巨大な集会・デモが行われた。九条改憲は、日本にかわるだけではない。世界中が影響を受ける問題であり、各国の人びとが注目し、すでに九条への支持はひろがっており、九条世界会議の提案もある。
 改憲派は、早期の改憲をめざし、とくに国民投票法案の制定を急いでいる。私たちは、なんとしても今国会への国民投票法案の上程を阻止し、時間をかせいで、九条改憲阻止勢力を大きく組織化していかなければならない。


劣化ウラン(DU)兵器の禁止にむけて

   
 市民ネットワークが結成二周年の集い

三月二八日、神保町区民館(ひまわり館)で劣化ウラン(DU)兵器禁止市民ネットワーク結成二周年の集いが開かれた。
 ビデオ「アルモーメンホテルの子供たち〜がんと闘うイラクの家族」の上映に続いて、基調報告が行われた。
 二〇〇四年三月、四四団体と九一の個人の賛同で結成された市民ネットワークは、劣化ウラン兵器の禁止とイラクの子どもへの医療支援の活動を柱に、連続講座の開催、パネル展などを行い、同時に、イラクでの日本人「人質」の解放や自衛隊の撤退などの活動を行ってきた。昨年からは、劣化ウランの環境・人体への影響を過小評価する原子力文化振興財団(原文振)のプレスリリース「劣化ウラン弾による環境影響」追及の活動を行い、この取り組みの中で、原文振はそのウエッブサイトのプレスリリースを全部削除するようになった。
 いま、イラクでは二〇〇〇トン以上の劣化ウランが兵器として使われ、いまも増え続けている。イラクの子どもたちをはじめ多くの人びと、そして占領軍の兵士たちにも被害は広がっている。一日も早く、この兵器を禁止しなければならない。保有国・使用国に対して汚染防止・汚染除去を実施させ、犠牲者に対して早急な措置を施させることが必要である。
 そのための、今年の八月三〜六日にかけて広島でICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)の第三回国際大会が開かれるが、これを成功させることが重要な課題のひとつだ。毎年広島での原水禁大会に参加しているが、今年は、さらに参加体制を強化してICBUW国際大会に参加していきたい。東京においてもICBUWの大会に参加した海外ゲストを招いて大衆集会を開く予定だ。
 第二には、イラクの子どもたちへの医療支援の強化、第三には、劣化ウランは安全だという原文振に対する取り組み、第四に、これまで継続してきた様々な活動をさらに発展させていくことだ。
 つづいてICBUW広島国際大会の成功に向けての報告。
 ICBUW評議員の振津かつみさんが、ウラン兵器禁止の国際署名と劣化ウランで汚染されたバスラの疫学調査について報告した。
 ICBUWは二〇〇三年一〇月に欧米と日本の六カ国一七の草の根のグループがベルギーに集まって発足した。現在ではイラクなどをふくむ二〇を越える国の七〇余りの団体がメンバーや賛同者になっている。私たちは、ウラン兵器禁止を国際社会へ訴えているが、そのひとつとして国際署名に取り組んでいる。国際署名では、私たちは以下の要求に対する支持を呼びかけている。@ウラン兵器の使用を直ちにやめること、Aウラン兵器を使用した全ての地域を明らかにし、不発弾・汚染物を直ちに撤去し厳重に管理すること、B「劣化」・ウランによる被害者と被災地域の健康被審・環境汚染調査を行うこと、C「劣化」ウランによる被害者への医療支援と補償を行うこと、Dウラン兵器の開発、生産、蓄積、試射、売買をやめること、E「ウラン兵器禁止条約」を締結すること。二〇〇四年夏からスタートした国際署名はすでに二〇万近くなっている。
 ICBUWアジア太平洋地域コーディネータの嘉指信雄さんと、NO・DUヒロシマ・プロジェクト事務局長の森瀧春子さんが、広島国際大会の準備状況について報告した。
 市民エネルギー研究所、たんぽぽ舎、劣化ウラン研究会などネットワ―ク参加の各団体から発言があり、集会に参加した高遠菜緒子さんもイラクの子どもたちへの支援活動について報告した。


「志賀原発2号機を運転してはならない」

        
 金沢地裁が画期的な判決

 三月二四日、金沢地裁(井戸謙一裁判長)は、石川県志賀町の北陸電力志賀原発二号機をめぐる民事訴訟で、運転の差し止めを命じた。判決主文は、「被告(北陸電力)は、志賀原発二号機を運転してはならない」というものだ。そして、理由に、被告による志賀原発二号機の耐震設計には、@直下地震の想定が小規模に過ぎる、A考慮すべき、邑知潟(おうちがた)断層帯による地震を考慮していない、B原発敷地での地震動を想定する手法(いわゆる「大崎の方法」)に妥当性がないなどの問題点があるから、被告の想定を超えた地震動によって本件原発に事故が起こり、原告らが上記被ばくをする具体的可能性があることが認められる。これに対する被告の反証は成功しなかったから、上記の具体的危険があると認定すべきである、ということをあげている。
 電力会社の想定はM六・七程度だが、邑知潟ではM七・六程度の地震になる可能性がある。判決で言われている「大崎の方法」とは、原発の耐震設計に使われ、実質的に日本にあるすべての原子力発電所、再処理工場などの核燃料サイクル施設の耐震設計に用いられ、国も妥当な方法と認めている手法であるが、それが、今回、司法の場で否定されたのである。
 地震の規模を少なめに想定して、原発を運転すると言う北陸電力の目論みは、金沢地裁によって拒否されたのである。
 また、判決は、「本件原子炉の運転が差し止められても少なくとも短期的には被告の電力供給にとって特段の支障になるとは認め難く」ともしている。
 いま、地震列島である日本での原発問題を考え直すよい機会である。
 しかし、北陸電力は、「地裁判決はまさに不当で驚きであり、二号機の安全性は十分確保されている」として、同月二七日、地裁判決を不服として、名古屋高裁金沢支部に控訴した。この動きは許せない。
 北陸電力は判決に従い、志賀原発二号機の運転を停止させるべきであり、同じ問題を抱える同原発一号機も運転を中止しなければならない。それだけではない。地裁判決はその他の原発の耐震設計の問題性もあきらかにするものだ。志賀原発だけでなくすべての原発や核燃料サイクル施設も根本的に見直しが必要となっているのである。


教育基本法が危ない!

   
 改悪法案を絶対に上程させないぞ

 教育基本法改悪にむけた動きが急である。
 与党は〇六年度予算案が成立したことをうけて、自民、公明両党は今国会への教育基本法「改正」案の提出と成立をめざすことで合意した。政府・自民党としては、後半国会の目玉に、行革推進法案と並んで、教育基本法改悪を位置付けようとしている。これには政局の焦点が小泉後継問題となり政権の求心力が失われることを避けるためという小泉の思惑も大きく作用している。

 この間、与党協議の場である「教育基本法改正検討会」は週一回の早いピッチで議論を進めている。「国を愛する心」などの問題をめぐって、自民、公明の間に意見の相違があるが、「国を大切にする心」として少々表現を和らげることで歩み寄りを求めるなどの案も浮上してきている。
 いずれにしろ、教育基本法改悪法案は、改憲のための国民投票法案とならんで、今国会への上程の危険性が増してきた。国会、とりわけ衆議院では与党が議席の三分の二を占める状況にあり、全国各地から国会議員への働きかけを強め、国会周辺での大衆的な抗議の声をあげていくことなどさまざまな闘いを展開することが求められている。

 三月三〇日、衆院第二議員会館で「教育基本法・憲法の改悪をとめよう!院内集会」が開かれた。
 はじめに、教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会の呼びかけ人の三人が発言。

 大内裕和さん(松山大学)。
 教育基本法が改悪されようとしている。これには、二つの柱がある。ひとつは国家主義である。教育基本法の第一条(教育の目的)は「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」とあるが、「平和的な国家及び社会の形成者」「正義を愛し、個人の価値をたつとび」を削除し「伝統文化を尊重し、郷土と国を愛し(大切にし)」をくわえる。もうひとつは、新自由主義で教育上の平等の否定だ。第三条(教育の機会均等)は「すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与えられなければならないものであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によって、教育上差別されない」とあるが、「すべて」「ひとしく」を削除する。ライブドア事件が起こって構造改革に批判が高まっているが、安倍晋三官房長官は「(こうした事件の)原因は教育にあり、教育基本法が問題だ」と言っている。しかし、武部勤幹事長などはホリエモンを「弟」とか「息子」と呼んだのではなかったか。しかし、自民党は粗雑な理由を並べて、教育基本法を変えようとしているのだ。

 小森陽一さん(東京大学)。
 二〇〇三年三月二〇日に、中央教育審議会の最終答申が出た。この日は、アメリカ・イギリスなどが、イラクに先制攻撃を開始した日だ。そして今日までの三年間は、アメリカ・ブッシュに従って、イギリスと同じく、戦争を行ってきた。もっと戦争をするために、教育基本法と憲法に手をつけるというのだ。自民党の新憲法草案は、九条二項を変えて、軍隊保有を公然化させ、有事関連法で戦争体制をつくり、教育を変えて一人ひとりの心の自由を奪おうとするものだ。
 政府・与党は、教育基本法を変えようとしてきたが、私たちの運動は、中教審答申から三年のもの間、法案の国会上程を阻止しつづけてきた。
 与党の中の矛盾もある。自民党の中では、安倍のように、もっと右よりのものにしようとする勢力もある。しかも、与党の協議は密室の中で続けられている。教育基本法法案の上程させないために、これまでとは質も量も異なった運動が行われなければならない。

三宅晶子さん(千葉大学)
 新自由主義・市場原理主義を教育に場に導入しようと言うのが教育基本法改悪の狙いだ。このことで学校・教育に格差を持ち込み、教育の機会均等を破壊しようとしている。例えば、学力テストの結果が発表されると、「下」の方の学校の地域の地価が下がる。学校格差が地域格差を生み、階層格差を拡大させている。こうした中で、自分を肯定する感情を持つことが出来ず、将来を諦める子どもが増えている。また、株式会社営の学校もできるが、これは金持ちのためのものだ。そこに税金がつぎ込まれる。いま、人材として早期の選別が強められている。もうひとつ教育基本法一〇条の問題が大事だ。一〇条(教育行政)は「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである」とあるが、その「教育」を「教育行政」に変えるというのだ。これは、文部科学省や教育委員会がなんでも出来るようにするということにほかならない。

 三人につづいて、様々な発言。
 京都、愛媛、大阪、東京などから、各地での取り組みや日の丸・君が代強日処分に対する闘いなどが報告された。
 国会からは、共産党の石井郁子衆議院議員、社民党の辻元清美衆議院議員が参加した。


入管法改悪を許さないぞ!

         
超党派国会議員と市民の緊急院内集会

 政府・自民党は、今国会で「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」を成立させようとしている。現在、衆議院法務委員会において審議されているが、その内容は、外国人のみならず、プライバシー侵害や監視社会の強化など多くの人びとにとって極めて危険なものである。

 三月二七日、参議院議員会館で「入管法改正は大問題だ!超党派国会議員と市民の緊急院内集会」が開かれた。
 はじめに、日本弁護士連合会人権救済調査室の難波満弁護士が「入管法改正案の概要と日弁連の意見について」報告した。
入管法改正案は、@すべての外国人(特別永住者・一六歳未満等を除く)の上陸審査時に指紋や顔写真などの個人識別情報の提供を義務化する規定の新設、A上記の制度によって取得されたすべての外国人の指紋や顔写真などの個人識別情報をデータベースとして保管し、外国人の在留管理や犯罪の捜査などのために利用、B法務大臣が関係省庁の意見を聴いた上でテロリストと認定した者を退去強制する規定を新設する。退去強制させられるのは、「公衆等脅迫目的の犯罪行為・予備行為・実行を容易にする行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」として法務大臣が認定する者だ。
 入管法改正案に対して昨年末に日弁連として意見書をだした。その主な問題点は、@すべての外国人の上陸審査時に指紋や顔写真などの個人識別情報の提供を義務化する規定、Aすべての外国人の指紋や顔写真などの個人識別情報をデータベースとして保管し、外国人の在留の管理や犯罪の捜査などのために利用する制度、B法務大臣が関係省庁の意見を聴いた上でテロリストと認定した者を退去強制する規定などだ。
 国会からは、社民党の保坂展人衆議院議員(法務委員)、日森文尋衆議院議員、福島瑞穂参議院議員、民主党の神本美恵子参議院議員、喜納昌吉参議院議員、共産党の井上哲士参議院議員が参加し発言した。
 海渡雄一弁護士はアメリカの「US・VISIT」について説明した。
 つづいて、反差別国際行動(IMADR)、アムネスティ・インターナショナル日本、移住労働者と連帯する全国ネットワーク、自由人権協会からのアピールがあった。

US・VISITとはこんなもの


 「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」のモデルになっているのが、アメリカの国土安全保障省(DHS)によるUS・VISIT(米国訪問者・移民現況表示技術プログラム)だ。
 米国土安全保障省報道官室のUS・VISITに関するファクトシートは次のように書いている。 

US・VISITの目標
 @米国国民と訪問者の安全向上A合法的な旅行・通商の迅速化B完ぺきな出入国システムの確保C米国訪問者のプライバシー保護

仕組み:入国
 ……米国の税関・国境警備職員が、ビザやパスポート等の渡航文書を審査し、訪問者の米国滞在に関する質問をする。インクを使用しない新型指紋スキャナーは、使用が容易である。訪問者は、左右の人差し指を順にガラス板に置くことを求められる。これにより、二つの指紋が電子的に記録される。訪問者は、カメラに向かうよう求められ、写真撮影が行われる。写真撮影は、指紋採取と並行して行われる。……

仕組み:出国
 ……国際線出国手続きフロアーに自動のセルフサービス・キオスクが設置され、訪問者は、そこで渡航文書の読み取りおよびインクを使用しない装置で指紋採取が再び求められる。キオスクには係員がおり、手助けをする。出国確認が訪問者の渡航記録に加えられ、今後の米国への訪問に備え、順守の証明と訪問者の現況記録となる。


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日本弁護士連合会

  「外国人の出入国・在留管理を強化する新しい体制の構築に対する意見書」(概要)



 現在、政府・自由民主党は、テロや外国人犯罪の未然防止、不法滞在者の減少を目的として、外国人の出入国・在留管理を強化する新しい体制の構築が検討され、新たな入国管理体制を構築しようとしている。これに対し、日弁連は、プライバシー権や自己情報コントロール権、外国人に対する差別的取扱いの禁止等の観点から、昨年末の理事会で意見書をとりまとめ、内閣総理大臣・法務大臣・外務大臣・厚生労働大臣・警察庁長官などに提出した。(編集部)
 
 意見の概要は下記のとおり。

 出入国時に指紋情報・顔情報といった生体情報の提供を義務づけることについては、採否を含めて慎重に検討すべきであり、仮に導入するとしても、指紋情報の提供の義務化は採用すべきではない。
 また、すでに入国審査を経て在留資格を取得している外国人が再入国する場合は、その対象から除外するべきである。
 取得した生体情報を保管し、外国人の在留管理や犯罪捜査などに利用することについては、反対する。仮に生体情報の提供を義務づけるとしても、出入国審査における照合が完了した時点で、ただちに消去するべきである。
 IC在留カード(仮称)を発行して、その取得・携帯を義務化すること、勤務先・学校等に外国人の受入れに関する報告義務を課すこと、外国人の情報を集中的・一元的に管理して情報の総合管理機能を充実・強化することについては、反対する。
 旅館業者による外国人宿泊客の本人確認については、その目的・要件を法律で明確に定めるべきである。ただし、旅券の写しを旅館業者に保管させたり、取得した情報の警察等への提供を義務づけることなどはすべきではない。
 関係省庁の協議により認定されたテロリストの上陸拒否・退去強制を行う制度の導入にあたっては、テロリストの定義を明確かつ厳格なものとしなければならず、また、十分に適正な手続が保障されるべきである。


陸海空港労組二〇団体の主催

  
憲法改悪反対労組連絡会の協賛で「憲法と私たちの安全を考える集い」

 三月二五日、千代田公会堂で、陸海空港労組二〇団体の主催、憲法改悪反対労組連絡会の協賛で「憲法と私たちの安全を考える集い」が開かれた。
 日本が戦争できる国となり、アメリカと共同軍事行動をとるようになれば、国民の「いのちと安全」が脅かされ、さらに、現憲法で規定している各種の権利および国民生活が、大幅に制約される。

 はじめに主催者を代表して、大野則行・航空安全推進連絡会議議長があいさつ。
 評論家の佐高信さんは「憲法をめぐる特権と人権」と題して講演。
 いまの日本ではMHKの問題だ。Mは村上ファンド、Hはホリエモン、Kは木村剛だ。なかでもきな臭いのはKで、木村は竹中平蔵の弟分だ。今年の一月一日に朝日新聞が、日本振興銀行の会長の木村が自分の妻が社長のペーパー・カンパニーに一億八千万円を低利で貸したと報じた。小泉・竹中の構造改革を書けなかった朝日もさすがに書かざるを得なくなり、木村の逮捕も近いのかなと思っていた。ところが逮捕は、Hで、これはK隠しという気がする。K逮捕なら、それは竹中に直結する。Hでは選挙がらみで、武部勤自民党幹事長が「弟」とか「息子」とか言ったという話に矮小化されている。
 二〇〇一年に、東京証券取引所が株式会社になった。ニューヨークのそれは株式会社ではない。日本では安全・公正より利益が上に位置付けられている。大規模な誤発注などが起こっているが、問題は制度だ。取引所が信号機としての役割を果たしていないことが見過ごされている。小泉・竹中の民営化の下でルールそのものがだめにされているのだ。JRの大事故も民営化が原因になっている。
 坂本修弁護士は「自民党改憲案とはなにか」について報告した。
 自民党の改憲案のたたき台は天皇元首化など復古的なものだったが、昨年一一月に決定した新憲法草案は、それに比べるとずいぶんソフトなものになっていると言われているが、それは違う。逆に、本質がわかりにくくなっているのだ。そして、その中心は、アメリカの先制核戦争をともに戦う体制づくりにつながるものだ。
 連帯の挨拶で発言したフォーラム人権・平和・環境の福山真劫事務局長は、共同の取り組みをひろげていこうの述べた。
 最後に、全建総連、新聞労連、全気象、国労から闘う決意が表明された。


自衛隊はイラクで  何をやっている ?

 防衛庁のホームページを見ていたら「第八次復興支援群」の活動が写真入で紹介されていた。@サルジューン小学校(マジッド)補修現場指導、ベイザ診療所(ワルカ)補修現場指導<補修が必要な箇所を確認、地元エンジニアと調整を行う隊員>、二次救急救命処置教育(サマーワ宿営地)<イラク人医師の実習を指導する隊員、隊員による救急救命処置の講義>、ヒドル診療所補修現場指導<補修が必要な箇所の点検、地元業者に対する補修指導>などだ。 みなヘルメットに迷彩色服姿の自衛隊員がイラク人を「指導」しているという説明がついている(医療だけは白衣で)。いずれも、武装した自衛隊員が似つかわしくない場所だ。
 なぜ自衛隊がいるのか。
 「イラク人道復興支援活動特集」のところの、「なぜ、日本はイラクの復興を支援するのでしょうか」で、「イラクの人々の願いに応え、その幸せを実現するためです。イラクでは、一日も早い生活基盤の復興が望まれています」として、「復旧整備が必要な学校八〇%、病院の稼働率三〇%、安全な水の供給率四〇%」をあげているが、原因の大部分は、アメリカのイラク攻撃とその後の内戦状況にもとづくものだ。これが第一の理由とされるものだが、自衛隊はそうした任務に似つかわしくないし、武器などの費用、危険手当などは自衛隊だからこそかかるのである。だからこの理由はいわばタテマエだ。
 二番目に「国民生活を支える石油資源の約九割を中東地域に依存している日本にとって、この地域の安定は重要」がくる。米英の側に立ってイラク侵略戦争に加担したことは、日本をアラブ・イスラムの人びとと敵対した位置におくものとなった。同時に、「反テロ」戦争のよる世界的な不安定化と先行き不安によって原油価格上昇はとどまる所を知らない状況にある。だから、これも、理由にはならない。そして三番目に「唯一の同盟国である米国との信頼関係の強化にもつながります」とでてくる。アメリカとの信頼関係の強化、日本の支配層が、アメリカの世界覇権に協力し、その傘の下で、権益の確保と影響力の拡大を担うということだ。
 陸上自衛隊は先に見たようなことをやっているが、航空自衛隊の動きは陰に隠れて見えないようにされているが、米軍の軍事行動そのものの一翼を担っている。
 イラクでは、アメリカの思惑通りに進んでいない。そして、ブッシュからの陸自撤退延期の要求はますます強まってきている。


米軍再編は安保の改定と同じだ

 三月二五日、文京区民センターで、新しい反安保行動をつくる実行委員会第10期(反安保実])の主催で「米軍再編と新安保宣言を問う 3・25集会」が開かれた。

 武藤一羊さん(ピープルズ・プラン研究所)は「新日米安保同盟を問う」と題して次のように述べた。

 国会では民主党のガセネタ・メール問題で、小泉内閣の抱える四点セットがあるにもかかわらず、与党の法案が次々と成立させられている。その四点セットにも米軍再編は含まれていないが、この重大な問題が論議となっていないことは非常に危機的なことだ。
 昨年一〇月、日米安全保障協議委員会、いわゆる2+2で、いわゆる「米軍再編」の「中間報告」=「日米同盟 未来のための変革と再編」が合意された。
 この再編で日米同盟が質的に変化する。本来なら、条約そのものの改定がなくてはならないものだ。もともとの日米安保条約は、米ソ対立という冷戦構造が前提としてあり、日本を対ソ最前線に位置付けるという役割を果たしてきた。しかし、冷戦構造が崩壊して、アメリカにとって安保をどうしていくのかが課題となった。「敵がいない」という状況で、なぜ軍事同盟が必要なのかという声が高まってきていた。日本でも社共だけでなく、自民党が、安保をどう変えるのかを考えるべきだった。
 しかし、一九九五〜九六年にかけて、アメリカの巻き返しがはじまった。それは、新しい敵は「不安定性」だとするもので、麻薬、テロリストなどがあげられていた。アメリカは、冷戦後、その権威の力を掘り崩すすべての勢力を絶対に阻止するという戦略をつくりあげてきた。これはクリントン時代にスタートした。しかし、この考えでは、どういう戦力をつくいくかということがはっきりしない。米ソ対立の時代には、ソ連が一の力をもっていれば、アメリカは一・二で十分に対処できた。ところが、今回のそれには、「不安定性」に対処するのだから、戦力増強の限度というものがない。脅威に、あらかじめ準備しておくのだから、すべての範囲にわたっての増強になる。
 今世紀に入って、ブッシュ政権が誕生し、9・11事件を契機に、このプロセスが加速する。ブッシュは、9・11事件について、「犯罪」ではなく「戦争」だと規定し、初めは「報復戦争」、ついで「反テロ戦争」だとして、戦争の規模をエスカレートした。アフガニスタンに対する戦争には、NATOも加わった。アメリカ一国が主導し、大国が結集する方式だった。その後、大量破壊兵器を保有したサダム・フセインが、アメリカと世界にとって脅威となったとして先制攻撃に出た。これはデッチアゲの理由で、石油の支配が目的だった。これには、反対が多く、フランスやロシアが脱落したが、アメリカはイギリスなどの有志連合で戦争をやった。こうして、世界はメチャクチャになり、どう収拾していいのかわからない状況にある。
 「中間報告」は、こういうアメリカと日本が一体化するということなのだ。冷戦が戦われていた時とは違う事態だ。「世界の中の安保同盟」が言われているが、ここに運命を預けることがいいことなのか、真剣に問われなければならない。
 これまで、アメリカは、日本に対してもっとアメリカとともに戦える体制づくりを求めてきた。日本は、アメリカにすり寄り、アメリカの力で日本の地位を高めようとしてきた。しかし、平和憲法の規定で、自衛隊は軍隊ではない、交戦権はない、ということになっている。アメリカの言い分は、早く憲法を変えて、軍隊の保有を公然化し、戦闘任務を担え、ということだ。なぜなら、こうしないと、イラクの状況でわかるとおり、アメリカが持たないからだ。
 アメリカは、米本土と海外の基地機能をネットワーク化させ、急速に部隊を世界に展開させるようにしている。どこからか。第一には米本土だが、日本を米本土に準じるものとしている。沖縄を含む日本はナンバー・ワンの適地なのだ。日本は米軍にシームレス(切れ目のない)で支持を与えなければならい。いったん米軍に協力したら、日米間の協議も一切なくなるということになる。完全な日米の軍事一体化で、自衛隊は米軍の指揮下に入ることだ。
 小泉の対米関係は、これまでの内閣と異なっている。歴代内閣は、憲法なども口実に使いながら、対米かけひきをやってきた。小泉は、これを、あえて捨てた。そうすることによって、アメリカに恩を売る、そして国連常任理事国入りへの支援をうけようという面がある。
 だが、事実はアメリカにとって厳しいものになってきている。四年間の軍事政策の総括を行う「QDR」というのがあるが、今回のものは、アフガニスタンでもイラクでも、すべて上手くいっているとしている。現実は反対だ。フセイン時代より悪くなっているのは誰が見てもわかる。だが、楽観しか書くことが出来ないのだ。そして、国連ではなく同盟国が大事だとして、オーストラリアとか日本の国名をあげた。これは「助けて欲しい」「助けてくれなければ失敗する」ということを意味する。だから、日本にすごい圧力をかけてきているのだ。


Kodama

事実を変える教科書検定

 さきごろ文部科学省が、来春から使用される高校教科書の検定結果を発表した。特徴のひとつは、領土問題だ。産経新聞によると「竹島と尖閣諸島は、前回検定より記述が増え、地理歴史、公民では世界史、倫理を除くほとんどの教科書が記述。四十カ所ある記述のうち、半数を超える二十六カ所に日本固有の領土であることを明確にするよう求めるなどの検定意見が付いた」。これには、韓国・中国から強烈な抗議が届いた。
 「イラク戦争」についてもひどい「検定」をやっている。アメリカの「先制攻撃」とした記述や自衛隊の多国籍軍参加に関する記述にはすべて検定意見がついたが、その理由として、文科省は「『先制攻撃』は国際法上禁止されている侵略攻撃という意味だ」とし、小泉が国会で述べた「先制攻撃や予防攻撃には当たらない」とした国会答弁を根拠に挙げた。
 しかし、ブッシュの主導によるイラク開戦は、アメリカの安保戦略の先制攻撃論に基づくものでないとしたら何なのだ。国連安保理の決議すら待てずに、安保理常任理事国のフランス、ロシア、中国なども賛成せず、全世界的な反戦行動の盛り上がりも無視して、短期で勝利できるとした無謀な開戦が、いまや、イラク民衆の抵抗によってアメリカは「ベトナム」と同じ「泥沼」状況に引きずり込まれた。アメリカ国内を含む各地での反戦闘争は激しくなっている。そして、ブッシュの支持率の急速な低下だ。
 そして、「フセインの大量破壊兵器保有」というアメリカからのガセネタ情報を口実に参戦に踏み切った小泉が「先制攻撃や予防攻撃には当たらない」などと言ってもそれは理由にはならない。
 文科省の検定は、事実を事実として認めないもの、偽メールならぬ「ガセ教科書」作りというべきだろう。(D)

岡山県北での護憲の闘い

 この間のいくつかの取り組みについて述べます。
 一九八九年の労働戦線の再編で連合が結成されて以降、政治的な運動が遠のいていた状況がありました。しかし、昨今の小泉内閣による政治反動攻撃が強まる中で、岡山県北でも高梁地域から「政治と向き合い、風をおこそう」という気運が高まってきました。
 昨年の七月三日には、ピースサイクルの呼びかけで、社民党の辻元清美さんの講演会を開き、二五〇名の参加者がありました。これを機に、「護憲」の運動を地域に創ろうと大勢の人の意見が一致し、準備会を発足させました。当面は賛同者の拡大を重一点にしながら学習をすることにしています。
 二月六日には、社会党の衆議院議員だった水田稔さんを講師として招いて憲法学習会を開催し、水田さんは、「憲法改正を巡る動きと対応」と題して、「私は戦争の体験者であり戦争の悲惨さを語り継ぐことによって憲法の尊さを訴えていく」と前置きして次のようなお話をされました。
 私は二〇歳から先の人生を考えたことはありませんでした。しかし、実際は考えることができなかったのです。神風特攻隊員を命じられ、仲間が明日には帰らぬ人になるのを送り出したときのあの気持ち、明日の日を考えながら自分の手を眺めると自分の手が異様に思えてきたことを今でも忘れることは出来ません。陸軍の特攻基地のあった鹿児島の「知覧」の博物館には、寄せ書きが残されていますが、そこには私のも残っています。博物館には特攻隊員として笑って出撃する場面が展示してありますが、それを見て、小泉は「感激した」などと言いました。死ななければならなかった人の気持ちもわからない小泉の態度には、憤りを覚えます。
 水田さんは、戦争体験を生々しく語られ、今が総じて昭和初期のような状況になりつつあると警鐘を鳴らしました。そして、憲法改正を巡る動きでは、小泉たちが、九条二項を変え、軍隊保有を明記し戦争のできる国にするということは、既に明らかです。問題は国会で与党が改憲の発議に必要な三分の二以上を持っているということであり、国会の情勢は非常に厳しい。しかし、たとえ国民投票をやられても反改憲勢力が勝てる運動が求められている、幅広い草の根運動をぜひ創ろう、と訴えました。
 この日は、昼から突然の大雪で中止の声も出ましたが、困難な天候を跳ねのけて熱心な人たちがあつまりました。多くの賛同を呼びかけて、動き出した九条改憲を阻止していく運動を強めていきたいと思っています。(岡山通信員)


複眼単眼

  
合併で消えた町に残った齋藤隆夫反軍演説

 「平成の大合併」などといわれる市町村合併がすごい勢いで進んでいる。日頃、使っているパソコンの住所録の検索などもとても不便で困っている。この大合併だの、あるいは一部国会議員などが大騒ぎしている道州制などについてはきちんと論じる必要があるのだが。
 そうした合併の一環で今年の一月、北関東に下野市(しもつけし)というのが生まれた。栃木県の河内郡南河内町と下都賀郡国分寺町、同郡石橋町が合併して誕生した市だ。ここでは間もなく市議会議員選挙がはじまるようだ。
 ここにまつわることで少し興味の惹かれる話を聞いたので紹介したい。
 合併する前の国分寺町に七期二八年も町長をやった若林という人がいる。聞くところでは自民党員だそうだ。この若林という人は町を北関東屈指の桜の名所に仕立て上げたように、かなりのアイディア町長だったらしい。全国を歩いて桜の苗木を集め、桜山を作り上げた。
 しかしもっと驚くことにはこの若林元町長は町内の宇都宮線小金井駅東口から六〇〇メートルの東小学校のあたりに約一〇〇〇メートルの遊歩道を造り、「哲学の道」と名付けている。これは勿論、京都の「哲学の道」のパクリだ。ここに「古今東西の名言名句」を掲示したのだ。
 「哲学の道」には休憩用のあづま屋が三つあるが、その一つ、「夕顔亭」にかかげられている言葉は、かつての日中戦争当時、帝国議会での齋藤隆夫代議士の反軍演説と言われるものなのだ。齋藤はこの地の出ではない。にもかかわらず、かの反軍演説に感動した若林町長が齋藤演説の議事録から削除された部分を、町民に読んでもらいたいとかかげたのだ。
 若林は「戦争を批判する者を国賊とまでののしった時代の中で、痛烈に放たれた戦争批判の齋藤演説こそ、声を出して叫びたい、弁論の最高峰とあがめている」と言い、「小泉内閣の改憲、軍備増強、産軍癒着ムードの中にあって、反戦平和をとなえる心優しい友が、方をすぼめて、声を上げられないでいるのを見て……も一度皆さんに読んで頂いて元気を出してもら」いたいとまで言っている。

 昨今の自民党を見ると、こうした気骨のある人物はほとんどいなくなったが、地方には若林のような人物がいるものだなあと思った。
 齋藤演説の議事録から抹消された部分は以下のようなものだ。

 唯徒(ただいたづら)に、聖戦の美名に隠れて、国民的犠牲を閑却し、曰く国際正義、曰く道義外交、曰く共存共栄、曰く世界の平和。斯(か)くの如き雲を掴(つかむ)むような文字を並べ立て、そうして、千載一遇の機会を逸し、国家百年の大計を誤るようなことがありましたならば、現在の政治家は死してもその罪を滅ぼすことはできない」

 あらためて噛みしめる価値のある演説だ。この町の幾人かでもこれを読んでくれたらすばらしいことだ。 (T)