人民新報 ・ 第1199号<統合292(2006年4月17日)
  
                  目次

● 国民投票法案・教育基本法改悪法案の上程阻止へ

● 日比谷集会に四〇〇〇人が結集して、憲法・教育基本法改悪とめよう!

● 郵政民営化反対闘争はこれから  郵政民営化監視ネット総会・講演会

● 九条改憲との闘いを拡げよう  九条の会おおさか 発足一周年記念講演会

● 1047名の団結で鉄建公団訴訟を主軸に国鉄闘争の勝利を勝ち取ろう  国労本部は早急に鉄建訴訟への合流を決意せよ!

● 支持率が低下し内部対立が露呈したブッシュ政権

● Kodama  /  街頭で「働く人のよろず労働相談」を開催

             六ヶ所工場と核兵器

● 複眼単眼  /  民主党を襲った激震と小沢新執行部の行方




国民投票法案・教育基本法改悪法案の上程阻止へ

 小泉内閣は、今国会に、改憲のための手続き法である国民投票法案、戦争のための人づくりのための教育基本法改悪法案、そして自主的な民衆運動を圧殺しようという共謀罪新設法案など民主主義否定の悪法案を続々と上程しようとしている。
 国民投票法案では、四月一二日に、自民党憲法調査会が、「改憲手続きに関する法案骨子」を了承した。これは、昨年末の自・公の与党案を「修正」し、これを基本に民主党との協議をすすめ、抱き込み、今国会での成立をねらったものである。
 自民党の骨子案では、国民投票制度に加えて、国会での憲法改正案発議の手続きを整える国会法改正も含めたものとなっている。その中でメディア規制については、「新聞社、通信社、放送機関その他の報道機関」が自主的に、「虚偽報道を防ぐ学識経験者の機関の設置」などを設けるものとし、実際には、改憲協力をおこなわせようとしているのだ。この線で、公明党との調整は終わっている。そして、焦点の一つの投票年齢で原則二〇歳以上とする自民党案と一八歳以上の民主党案の対立など民主党とのいくつかの相違があり、これについては、自公与党と民主党との調整を行ない、そして、民主党の主張を少々取り入れる代わりに民主党の国民投票法案への賛成を引き出そうという狙いだ。
 教育基本法改悪でも、公明党は自民党に追随し、戦争支持の政党の本質を明らかにした。自公両党による「与党・教育基本法改正に関する検討会」は一二日に、これまで意見の一致をみなかった「愛国心」をめぐる表現について合意した。公明党は、国を「愛する」ではなく「大切にする」としてきたが、「わが国と郷土を愛する」とする大島理森座長案を了承したのである。
 こうして、政府・与党は、国民投票法案と教育基本法改悪案の国会上程にむけて、大きく動き出した。
小泉の反動政治の総仕上げとしてある今国会で目白押しの悪法の上程・成立を阻止するための闘いの前進と広がりが急務である。

 四月一三日の正午、憲法共同会議(憲法を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、全国労働組合連絡協議会、平和憲法21世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、平和をつくり出す宗教者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会で構成)の主催による「9条改憲手続き法(国民投票法案)に反対する国会前集会」が開かれ、緊急の行動呼びかけにもかかわらず約一〇〇名の市民、宗教者、労働組合員と社民党、共産党の国会議員が参加し、国民投票法案などの上程に反対して闘うアピールを行い、教育基本法改悪反対、共謀罪新設阻止の運動からの発言を受け、政府と自公与党に対する抗議のシュプレヒコールをあげた。


日比谷集会に四〇〇〇人が結集して、憲法・教育基本法改悪とめよう!   

 自民・公明の与党は教育基本法改悪にむけての歩みを速めている。教育基本法は憲法と表裏一体のものであり、平和主義、基本的人権など憲法原則実現にとって欠くことのできないものである。今国会では、小泉政権は、行政改革法案とともに、改憲にむけた国民投票法案と教育基本法改悪案の上程・成立を狙っている。

 三月三一日には、日比谷野外音楽堂で、四〇〇〇人が参加して、「教育基本法・憲法の改悪をとめよう!3・31全国集会」が開かれた。
 集会では小森陽一さん、高橋哲哉さん、三宅晶子さん、大内裕和さんの四人の呼びかけ人と神奈川、愛知、北海道、東京、岩手、福岡からの発言、共産党と社民党の国会議員からの発言がつづいた。
 呼びかけ人の小森陽一さんの発言。政府は九条改憲で戦争の出来る国にしようとしているが、教育基本法改悪はこれにピタッと結びついている。いま与党は教育基本法改悪を国会にも知らせないで密室の中ですすめている。これは彼らがよこしまなことをやっていることを自覚していることを物語っている。教育基本法を変えさせないために、われわれのそれぞれが地元選出の国会議員、とくに揺らいでいる民主党の議員、そして公明党、自民党の議員にまで働きかけを強めることが大事だ。
 高橋哲哉さんの発言。戦争中に日本の無差別爆撃で壊滅的な打撃を受けた中国・重慶は、ヒロシマ以前のヒロシマといわれる。この集会には、昨日、日本政府を相手取って裁判を起こした被害者遺族も参加している。愛国心教育は悲惨な結果をうみだす。
 三宅晶子さんの発言。教育基本法を変えるのは、子どものための改正ではなく、振り分けるための改正だ。子どもや高齢者、病人などにお金をかけず、生存権にも手をつけようというのだ。メディアによって「強い者に自己同一化」させられ、弱いものを排除していく風潮が煽られている。
 大内裕和さんの発言。教育基本法はかつてない危機にさらされている。小泉が戦争のできる国にするために教育を変えようとしているのだ。教育現場で、日の丸・君が代に反対して闘っている教職員は、戦争従事命令に抗する陸海空港湾労働者と同じく戦争と闘っている。
 集会は、アピール(別掲)を確認し、国会へ向けてデモをおこなった。

教育基本法・憲法の改悪をとめよう!3・31全国集会アピール

 育基本法の改悪が行われようとするなか、本日、私たちは組織・団体の枠を超えて全国から集まりました。
 「教育の憲法」とも呼ばれる教育基本法は、天皇制国家主義教育を支えた教育勅語を否定し、個人の尊厳と平和主義を基本理念としています。しかし政府・与党による教育基本法の改悪は、「伝統文化」や「愛国心」といった国家主義を教育現場に強制し、「教育の機会均等」を解体することで、子ども一人ひとりが平等に学ぷ権利を奪い、新自由主義によって生み出される「格差社会」を固定化するものです。これが教育現場や子どもたちのためのものでないことは、「教育は、不当な支配に服することなく」を「教育行政は、不当な支配に服することなく」へと一八〇度転換する教育基本法第十条の改悪に、最もよくあらわれています。
 教育基本法改悪の先取りを示す典型的な例の一つが、東京都の教育行政です。東京都教育委員会は二〇〇六年三月一三日に、「入学式、卒業式等における国旗掲揚及ぴ国歌斉唱の指導について」という「通達」を出しました。この「三・一三通達」は、子どもに「立て・歌え」と教職員が指導することを事実上強制するものです。「三・一三通達」は、教職員に「日の丸・君が代」を強制した二〇〇三年の「一〇・二三通達」よりも、強制の範囲を子どもたちへの指導と子どもたち自身にまでさらに拡大しています。これは「個人の尊重」や「思想及び良心の自由」を定めた教育基本法・憲法に違反すると同時に、子どもの「内心の自由」や「意見表明権」を否定する点で、「子どもの権利条約」をも無視した暴挙であるといえます。
 侵略戦争のシシボルであった「日の丸・君が代」の強制は、自衛軍の保持を明記した自民党の「新憲法草案」と軌を一にしています。現在進められつつある在日米軍の再編は、日米安保の拡大強化、自衛隊と米軍の一体化を促進し、アジア太平洋地域を中心に日米共同の軍事行動を可能とするものです。在日米軍の再編は、周辺事態法から有事法制へと準備されてきた「戦争する国家」づくりをさらに推し進め、憲法九条の改悪はそれを完成させることに他なりません。
 しかし、こうした「戦争する国家」を目指す動きに対して、多くの労働者・市民が立ち上がっています。三月五日には在日米軍再編の日米合意に抗議し、普天間飛行場のキャンプ・シュワブ沿岸部への移設に反対する県民総決起集会が宜野湾市で開かれ、三万五〇〇〇人が集まりました。また三月一二日には山口県岩国市で、米海軍厚木基地の空母艦載機受け入れの是非を問う住民投票が行われ、有効投票の八九%という圧倒的多数の反対で成立しました。在日米軍の再編・強化に対してNO!が突きつけられているのです。
 そして今年の卒業式においても「日の丸・君が代」強制に対して、多数の教職員が不起立・不伴奏を貫くなどの抵抗を行ない、保護者・生徒を含めた強制反対運動が全国各地で様々に展開されています。子どもの権利を守り、人間の尊厳と労働者の権利を新たに獲得しようとする現場教職員と市民のこの粘り強い闘いは、教育基本法・憲法の改悪阻止と深く結びつくものです。私たちはこの闘いに心から連帯します。
 今日、私たちは初めての国会デモを行います。二〇〇六年三月、与党は今年の通常国会に教育基本法「改正」法案を上程することを「合意」したという報道がなされました。教育基本法改悪法案が国会に上程される危険性がいよいよ高まっています。今こそ、教育基本法の改悪に反対する私たちの意思を国会に直接届けるべき時です。
 二〇〇三年に行われた「教育基本法改悪反対!一二・二三全国集会」以降、新たな連帯を生み出しながら広がっていった私たちの運動は、中教審答申が出された二〇〇三年三月二〇日以来今日まで、三年以上もの間、教育基本法改悪法案の国会上程を阻んできました。教育基本法が公布・施行されてから五九年目の今日の集会を新たな出発点として、私たちはこれまで積み重ねてきた運動と連帯の輪をさらに押し広げ、在日米軍の再編・強化反対や「日の丸・君が代」強制反対などの反戦平和運動と広く連携することによって、再び「戦争する国家」づくりを目指す教育基本法・憲法の改悪を全力で阻止することを、ここに宣言します。

二〇〇六年三月三一日

 教育基本法・憲法の改悪をとめよう!三・三一全国集会参加者一同


郵政民営化反対闘争はこれから

    
郵政民営化監視ネット総会・講演会

 昨年九月一一日の総選挙での小泉与党圧勝で、一度は否決された郵政民営化法案が成立した。しかし、郵政民営化選挙と言われながら実際には有権者の投票においては民営賛成は多数ではなかった。来年一〇月の郵政民営化にむけての動きが加速される中で、反対派が批判していたような公共サービスの低下が明らかになってきている。すでに郵便振込手数料の値上げが行われた。そして、全国的に集配局再編が打ち出さられて、集配局の激減で被害を受ける地方では、これに反対する住民署名や議会決議、陳情などの運動が広がっている。そして、郵政職場の労働者は猛烈な合理化攻撃にさらされている。アメリカと大企業の利益のために、多くの人々が切り捨てられるという郵政民営化の本質が露呈してきた。郵政民営化に対する闘いはこれからが本番である。

 四月九日、東京・飯田橋のSKホールで「郵政民営化を監視する市民ネットワーク」第二回総会&講演集会が開かれた。
 第一部の総会では、スライドを使った活動報告と06年度活動方針が提起された。活動方針では、「市民ネットワークは、法案廃案にむけて運動に取り組んできた成果を基礎に、公共サービスを守る取り組みを引き続き進めると共に全国各地の様々な運動と連携しネットワークを広げていきます」として、@郵政民営化による公共サービスの切り捨てを市民・利用者の立場から監視し告発していく、A民営化ではなく「もうひとつの郵政改革」を提言し、追求する、B郵政公共サービスの切り捨てに抗する様々な団体・個人のネットワークを広げる、そして具体的には、「郵便ウオッチニュース」の発行、市民監視ネットサイトの充実、講演会(学習会)等の開催、国際的な交流と調査、郵政現場労働者との交流、郵政サービスのあり方を考える市民・団体との連携を進める、国会議員への要請の行動などをあげている。

 第二部では、法政大学法学部教授の杉田敦さんが「公共性の回復のために」と題して講演した。
 いまでは、郵政民営化に関心を持っている人はそれほどいない。総選挙むけだけにつくりだされた争点だった。しかし、あそこまで浸透したのは、公務員攻撃にあった。郵政の場合は、税金ではなく、郵政事業の収入から賃金が払われているが、それで、公務員だということで、自民党はターゲットにした。背景には企業的な組織がよくて、そうでないものはダメだという新自由主義のイデオロギーがある。こうした中で、「公共性」というものが失われつつある。公共性には二つある。ひとつは、公共財、インフラ建設などの人びとの生存に関係する「生活の公共性」だ。これにはお金がかかる。もうひとつは、公共的な議論の場を保障するという「表現の公共性」だ。いま、この二つとも失われつつあるが、とくに財政危機を口実にさまざまな住民サービスがカットされている。しかし、財政危機も、高所得者に課税すれば事態は改善されるが、金持ちや大企業はますます税金を払わなくてもよいようになってきている。公共性にかわって「セキュリティ」が出てきている。防衛、治安から保険に至るまで不安に対処するこということだ。それを企業的な組織でやろうとしている。しかし、これは逆に社会の危険性を増大させることになる。いま、もう一度、公共性についてかんがえていくべき時期である。

 つづいて、パネルディスカツション「郵便局の現場から」
 はじめに、全体状況を俯瞰して、池田実さん(郵政ジャーナリスト)
 郵政民営化にむけての準備企画会社・日本郵政株式会社に三井住友銀行の西川善文が就任した。二月に八人の執行役員を選任したが、そのうちの二人は西川の出身銀行系だ。郵便の各事業会社を統括するのが持株会社だがその権限は非常に大きい。そして、日本郵政は郵便事業というより物流会社になろうとしている。また、カード事業、M&Aなどもやろうとしている。しかし、ビジネスモデルとしては不透明な部分が多い。
 郵便事業の現場からは、松岡幹雄さん(豊中郵便局・郵政労働者ユニオン)
 郵便事業の財政状況は改善しているが、それはコストをおさえることによって実現した。民営化して、料金などは認可制から届出制になる、小包を郵便扱いでなくし貨物とする、そして本来業務に支障がなければどんな仕事に手を出してもよい、ということで、めざす方向は、国内はもとより、国際的な物流業になるということだ。郵便の仕事と物流の仕事は九対一程度だが、これを六対四くらいまでにする。国内で郵便会社が集荷し、それを夜間に航空会社のANAがアジア各地に運び、そこからはオランダの世界的な物流会社が配達するという。こうしたなかで郵便の仕事はきつくなっている。郵便局の仕事には非常勤の若いひとも敬遠して、募集しても集まらなくなっている。
 貯金事業の現場からは鈴木英夫さん(浜松郵便局・郵政労働者ユニオン)
 貯金では、窓口での郵便振りかえが料金が三〇年ぶりに上がった。ATM利用では据え置きだ。ATMなどに不慣れな人たちの切り捨てだ。これは、あまねく公平に、公共の福祉の増進のためという精神に反する。窓口での人減らしもあり、ATMへ誘導する料金設定となっている。収益性の低いものはなくすということだ。
 もうひとつは投資信託を主力商品・戦略商品として販売する尻叩きだ。これは、アメリカからの要請であるとともに、莫大な手数料収入が狙われている。郵便局を、金持ちに優先にすることがすすんでいる。
 保険事業の現場からは、森博道さん(小石川郵便局・郵政産業労働組合)
 保険の職場には、夢も希望も未来もない。非常に大きな募集ノルマが設定されるが、ほとんど達成できない。東京に場合は、最近のものでは、八一局中三局が達成しただけで、平均は六八・五%という結果が出ている。五〜六年前から職場を辞める人が多い。そして、募集の低迷には、労働者を違う局へとばす人事交流の影響が大きい。ノルマ、ノルマに追いまくられるなかでみんな痛めつけられている。
 最後にネットワーク事務局からのまとめ。
 郵政民営化問題は終わったのではなく、様々な問題が出て来るこれからが本番だ。新自由主義・グローバリゼーションのなかで苦しんでいる労働者、市民とともに、民営化監視の活動を強めていこう。


九条改憲との闘いを拡げよう

 
 九条の会おおさか 発足一周年記念講演会

 四月一日、グランキューブ大阪(大阪国際会議場イベントホール)で、九条の会おおさか発足一周年記念講演が開かれました。
 午後二時の開会なのですが、一時過ぎぐらいから続々と人が集まりはじめました。主催者の発表で二〇〇〇名の参加がありました。二時間半の講演会は、リレートークあり、歌、金管楽器演奏、風刺コントありの盛り沢山で、あっという間に時間が経ってしまったという感じがしました。

 呼び掛け人でもある直木孝次郎さん(大阪市立大学名誉教授)が主催者を代表して挨拶し、会が始まりました。
 この講演会で、私の印象に残っているのは、リレートークや講演された人には少し気が引けるのですが、歌や楽器演奏、風刺コントの方が印象に残っています。
 ゲストでリレートー.クに参加された日下部吉彦さん(音楽評論家、「音楽・九条の会」)は次のように発言しました。音楽家は扱いにくい、社会音痴が当たり前と思っている人や音楽では何もできないという人もいるが、音楽ほど有力な武器はありません。これからも、いい音楽を広め音楽で平和や憲法を訴えていきたい。
 本当に心に響く音楽は良い。ザ・ファンクのオリジナル曲で、広島の体験を風化させてはいけないとの思いでつくられた曲「ひろしま」だったと思うが、ザ・ファンクの澄んだ声とあいまって凄く印象に残っています。
 音楽・九条の会の金管楽器演奏『イマジン』も良かった。
 風刺コントでは、他言無用プロジェクトさんによる、さる高貴なお方の園遊会での様子がコント風に演じられ、これには「笑えた笑えた」という感じでした。
 呼び掛け人でもある大谷昭宏さん(ジャーナリスト)が講演したのに続いて、元毎日新聞大阪本社編集局長で「マスコミ九条の会・大阪」の古野善政さんはリレートークでの発言で、次のように述べました。
 今のマスコミに対しては何もいわないという批判が寄せられています。しかし、この集会に参加された方の中でも見た人も大勢いると思いますが、先日、サンデープロジェクトという番組では、東京・立川で起きた単なるビラ入れで不当に逮捕され、長期拘留、起訴された事件が取り上げられています。自衛官の官舎にイラク派兵をどう思うかというビラを配布しただけで逮捕されたこの問題を、今日の講師の大谷さんも出演していましたが、三〇分枠を取って報道しました。こういうこともあります。
 共謀罪新設法案が国会に上程されようと目論まれています。これが国会で決まってしまうと、盗聴法や個人情報保護法などこれまでに決まってしまった法律と合わせると、戦前の治安維持法よりももっと強力な法律になってしまいます。行為があった時に始めて罰する、これが近代刑法の原則です。しかし、共謀罪では、三人以上で集まったり、連絡したりで、なにかをやろうと考えたりや話したことが、それだけで罰せられるようになります。
 自民党や右よりの人が言っている「愛国心」とは、国家的ストーカーということです。君は私を愛せよ、愛さないと大変なことになるよと言っている様なものです。日本は非常に危機的な状況にあります。憲法の前文と条文、そして全体の流れは、人間がどう平和に生きていくのか、そこでどういう一生を送るのかについて書かれています。家族を犠牲にしなければならない仕事をしなければならないということは一つもありません。日本が憲法九条を守るということは、戦争を引き起こしたという過ちを二度と繰り返さないという気持ちを世界に示すことなのです。
 
 先にも書きましたが、講演会の二時間半はあっと言う間に過ぎてしまったような気がします。一〇年先二〇年先、どういう日本社会を残すかは、今の大人たちの責任です。
 余談ですが、ビラ配布事件で逮捕された理由は家宅侵入罪です。家宅侵入罪は、戦中期に、出征や動員で男手が取られている家に夜這いにくるのを防ぐ為につくられたそうです。それなら夜這い禁止法にでもすれば良いものを、権力は、これはいつか別のものにも使えるかもと考えて家宅侵入罪にした様です。ヤッちゃんの抗争から市民を守ろうという口実でつくられたはずの凶器準備集合罪も今ではデモの規制や大衆運動の抑圧のために使われています。道交法もしかりというところでしょう。
 権力は、法律はつくってしまえばどうにでも運用できると考えるものです。権力は、法律を最初はソフトさを装ってつくろうとしますが、そんな時ほど注意していかないといけないと思いました。同じ過ちをおかそうとする人たちは、他国から攻めてきたらどうするんだ、などと言いますが、武器を持たなくても抵抗し闘う手段・方法は幾らでもあると思います。その一つが、私は憲法九条だと思います。九条を盾にして徹底的な話し合いしかないと思います。暴力の連鎖・復讐の連鎖は、現在のイラク戦争の現状を見ればよくわかります。武力や恐怖で人を支配することはできないことをいい加減に理解すべき時です。
 そうでなければ、燻(くすぶ)り続けて、いつか爆発するだけです。私は、これからも九条を守る闘いや、九条の精神を広める運動をやっていこうと思っています。  (大阪・六車)


1047名の団結で鉄建公団訴訟を主軸に国鉄闘争の勝利を勝ち取ろう

            
 国労本部は早急に鉄建訴訟への合流を決意せよ!

 四月四日、日比谷野外音楽堂で、「国鉄労働者一〇四七名の総団結で不当解雇撤回!日比谷JR採用差別事件の勝利解決をめざす!全国集会」が開かれ、鉄建公団訴訟を闘う三つの原告団、国労闘争団全国連絡会議などを中心に四六〇〇名が結集して成功した。
 この集会は、昨年の鉄建公団訴訟東京地裁9・15判決を契機にした国鉄闘争内部の対立が流動化しはじめた中で闘いを大きく合流させることを目的に、鎌田慧さん(ルポライター)、佐高誠さん(評論家)、立山学さん(ジャーナリスト)や大学教授など学者・文化人三六名が呼びかけ人となって準備されてきたものだ。
 呼びかけ人を代表して中山和久さん(早稲田大学名誉教授)があいさつ。
 JR不採用事件では労働委員会の命令は労働者の意見を支持するものだった。しかし、裁断所、とくに最高裁の判決はまったく労働法の精神を理解していないものだった。二〇年もの長きにわたって不当労働行為が救済されないでいることは大問題だ。大勢の人が集まった今日の集会で関係者の団結を実現できた。この力を生かしていこう。
 つづいて、呼びかけ人の小森陽一さん(「九条の会」事務局長)、大内裕和さん(教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会の呼びかけ人)が発言した。
 国労中央本部の佐藤勝雄委員長があいさつ。
 昨年の9・15判決について国労として議論してきた。闘いの前進のためには、全組合員、闘争団、家族がひとつになっていないという深刻な組織の状況を克服しなければならない。すでに三〇名をこえる闘争団員が亡くなっている。将来への生活の不安もある。一日も早い解決が望まれるところだ。ILO理事会でも、すべての当事者の話し合いを勧告している。今後は政府に対して解決を迫る世論喚起の大衆行動を強めていかなければならない。新聞広告、全国キャラバン、そして六月には総決起集会を予定している。統一交渉団をつくり、解決のために全力をあげるときである。
 佐藤委員長に紹介されて、国鉄闘争支援中央共闘会議の中里忠仁議長は、中央共闘は国労と一心同体であり、ともに解決に向けて闘う、と述べた。
 しかし佐藤委員長からは、国労本部の鉄建公団訴訟への合流については一言もふれられず、会場からは「本部は決断せよ」などのヤジもとんだ。
 「一〇四七名の不当解雇撤回!国鉄闘争に勝利する共闘会議の二瓶久勝議長。
 共闘会議に結集する二〇万人を代表してあいさつする。国鉄闘争はすでに二〇年、いまが正念場だ。昨年の9・15判決を契機に、今年の2・16集会で当事者の団結が回復し、一〇四七連絡会が結成された。本日、われわれ支援者も団結し闘争勝利の道を切り開いていきたい。しかし、いくつかの点についてはきちんと申し上げておきたい。第一には、9・15判決についてだ。判決内容は、きわめて不十分なものだが、不当労働行為を認め、金利も含めれば一人八六六万円をひきだした。これは、鉄建公団訴訟に立ち上がった原告団と弁護団、支援の四年間の闘いの成果であること。第二には、相手側は、全面対決の姿勢で臨んできており、地裁を上回る闘争の展開が求められているということだ。国交省は交渉のテーブルにのらないといっている。一〇四七連絡会を支え、支援の輪をもっともっと大きくしていこう。
 第三には、一〇四七名のうちでまだ裁判をおこしていない人には、すぐさま裁判にたちあがってほしいということだ。裁判闘争にたちあがってこそ、一〇四七名がはじめて団結したと言えるのだ。僭越ながら、ここで国労本部にきちんと要請したい。この二〇年間、闘争団は本当に苦しい思いをしてきた。いまこそ、全面解決に向けて全力をあげるときだ。
 一〇四七連絡会の各代表からの決意表明
 神宮義秋さん(国労闘争団全国連絡会議議長)
 これまでさまざまな紆余曲折があったが、現在、一〇四七名の大同団結の気運が生まれてきている。これは大変嬉しいことだ。ILOは日本政府に六度目の勧告を出した。われわれは、日本政府にこの勧告を完全に履行させなければならない。闘争団ではすでに多くの仲間が亡くなったし、団員の現在の平均年齢は五二歳になった。まさにILOのいう「緊急を要する事態」となっているのである。早期の解決に向けて一日も早く交渉の場をつくらなければならない。
 高石正博さん(動労干葉鉄運機構訴訟原告団代表)
 動労千葉は、この二〇年間、単独で闘ってきたが、昨年の7・15集会を機に、一〇四七名全体が団結する方向が出て、9・15判決を経て、今年の2・16集会でそれが実現し、一〇四七連絡会が結成された。
 森哲雄さん(全動労争議団事務局次長)
 9・15判決を勝ち取った訴訟と同様の裁判を全動労も東京地裁で闘っている。一〇四七連絡会での団結を強め、解雇撤回、職場確保、未払い賃金、年金回復など当事者の切実な要求を実現するために闘って行こう。様々な意見の違い、過去の経緯などをのりこえて、多くの仲間と連帯して運動をすすめていこう。
 酒井直昭さん(鉄建公団訴訟原告団団長)
 ようやく団結が回復され一〇四七連絡会ができた。しかし、これはガラス細工のようなものであり、これを壊さずしっかりしたものにしていく責任がわれわれにはある。小異を残して大同につくことが大事だ。しかし、もう一歩闘いを進めて勝利を実現しなければならない。「話し合い」「政治折衝」だけでは事態は動かない。鉄建公団訴訟を見ていた闘争団員も一日も早く裁判に参加し、同じ武器で相手に立ち向かっていこう。
 集会アピールを参加者の拍手で確認し、呼びかけ人の山口孝さん(明治大学名誉教授)は集会集約で、集会を成功させた力でさらに政府をおいつめ、勝利・解決にむけて運動を強めようと述べた。なお、当日会場カンパには約八八万円が寄せられた。

 国鉄闘争に向けての団結回復の一歩がしるされた。おもえば、JRに責任なしとする九八年五月の5・28判決に、国労本部は驚愕し、四党合意に走った。この闘争放棄の逃亡路線は、国鉄闘争そのものを完全消滅させようとするものであったが、闘う闘争団、良心的な国労組合員、そして支援の労働者・市民は、闘う路線を堅持した。闘う闘争団は鉄建公団訴訟に決起し、そこが国鉄闘争の主軸となった。それに対する国労本部の対応は、権利停止処分と生活援助金の凍結という労働組合にあるまじき裏切りと弾圧の処分だった。闘う闘争団は、政府・JRという主敵とともに、国労本部の主流となった右派グループとも対峙せざるを得ないという困難な状況にたたされた。しかし、鉄建公団訴訟とそれを支援する体制と運動で、9・15判決がでた。不当労働行為を認めさせ、四党合意での「解決」をはるかにうわまわるものを引き出したこの判決で国労本部は、いまのままでは自分たちが完全に孤立すると考え、方針を転換しはじめたのだった。一〇四七連絡会が結成され、4・4集会で国労本部もふくめた体制が出来たとはいえ、国労本部は佐藤委員長の発言にもあるように、闘争の基軸である鉄建公団訴訟への合流についてはいまだ決断していない。さる一月の中央委員会では提起されず、夏の全国大会で決める決断が出来るのか疑問である。鉄建公団訴訟に合流もせず、「団結は回復された、これからはまた本部が国労闘争についてすべて決める」という態度が続くなら、当事者を中心に多くの人が願った団結の回復なるものの意味はまったく空虚なものになる。いまこそ、国労本部は、訴訟への取り組みを決断し、統一した戦線で、闘争勝利にむけて前進すべきなのである。

一〇四七名の解雇撤回・国鉄闘争勝利をめざす4・4集会アピール

 全国各地から参加された皆さん!「国鉄労働者一〇四七名の不当解雇撤回!国鉄闘争に勝利する四四全国集会」は、被解雇者はもとより共に闘う仲間も相互の強い連帯に勇気づけられ勝利への確信になったと信ずる。われわれは、苦節二〇年の闘いを通して念願の「大同団結」を実現した被解雇者一〇四七名を今後もしっかりと支え、今日の情勢下で展開されている国民各階層の生活防衛、平和、人権、民主主義めための広範な運動と連帯して勝利解決を手にするまで闘い抜くことを改めてここに宣言する。
 一九八七年二月一六日。被解雇者一〇四七名にとって、生涯忘れることのできないJRへの不採用通知が届けられた日である。二〇年目を迎えた二〇〇六年二月一六日。東京・日本教育会館において、「JR採用差別事件の勝利解決をめざす!一〇四七名闘争団・争議団・原告団二・一六総決起集会」が開催された。この集会で、「被解雇者一〇四七名連絡会」(略称・一〇四七連絡会)が結成されたことは画期的なことであった。直ちに「一〇四七連絡会」としての、関係省庁・鉄道運輸機構への申し入れ行動など新たな闘いが始まっている。
 四・四全国集会は、「一〇四七連絡会」、当該労働組合組織、各種の支援共闘組織.弁護団による闘争体制の確立、学者、ジャーナリスト、文化人、その他心ある支援者団体・個人による広大な共同に向けての大きな一歩となった。この「大同団結」の流れは、誰も押しとどめることはできない。
 こうした契機となったのは、昨年九月一五日の国鉄労働組合の組合員二九七名が鉄道建設公団に解雇無効・地位確認を求めた訴訟に対する東京地裁判決である。それは、結論において解雇を法的に有効とした極めて政治的な折衷判洪であり、到底容認できるものではない。しかし、「国鉄によるJR採用名簿作成で国労差別があった」と、司法機関として初めて憲法、労働法制が禁ずる「不当労働行為」を認定した点において、解決に向けた運動にとって重要な意義をもつものであった。
 被解雇者一〇四七名とその家族はこの二〇年、JR不採用・解雇という言われなき汚名と生活苦を強いられ、多大な犠性を背負って不屈に闘い続けてきているが、この間、すでに三九名もの被解雇者が無念の生涯を閉じている。国鉄の「分割・民営化」が国策として強行されたものである以上、この状態を長期にわたり放置してきた政府の責任は、法的にも、人道的にも極めて重大であり、直ちに責任のある解決に動き出すことを要求するものである。
 国民の圧倒的多数のなか仁「格差社会」の実態が自覚され、また政・財・官ぐるみの不正、腐敗の露見に対する批判、怒りが今日高まっている。小泉内閣の「構造改革」の名による国民生活水準の切り下げに反対する闘い、公共交通機関の安全性を確保する闘い、春闘における低額回答への反発、公務員労働者の大量リストラ計画への反撃と労働基本権全面回復要求の闘い、新労働契約法制反対闘争など労働運動が活性化しつつある。
 他方、平和、人権、民主主義への攻撃に対しては、在日米軍再編計圃に対する基地を抱えた自治体や住民の反対運動の高揚、憲法第九条を中心とする多様な憲法擁護運動の進展、教育基本法改悪、君が代・日の丸強制と処分反対運動の広がりなど、国民各階層の社会的運動が全国各地で活発に展開されている。
 われわれは、こうした情勢を的確に受け止め、これらの運動と連帯、共同して、国鉄労働者一〇四七名解雇撤回闘争をこれまで以上に広く、深く、大きく発展させていくことが求められている。
 われわれは、闘争勝利の大原則である被解雇者の「大同団結」が実現し、共同行動が開始されたことを改めて心から歓迎するとともに、被解雇者を抱える当該労働組合組織を始め、長期にわたるこの闘いに、これまで物心両面の連帯、支援を寄せられたすべての皆さんに、引き続き「大同団結」体制とその運動の強化、展開、さらに勝利解決へ向けて、相互の結束を促進し、闘争全体の力量を早急に高める支援、連帯の活動を訴える。
 国鉄労働者一〇四七名解雇撤回闘争の今日の到達点を勝利解決へ向けて大きく前進させるためには、@鉄建公団訴訟の控訴審闘争、鉄道運輸機構に対する三つの裁判闘争への公正な判決を求める署名運動、裁判傍聴等の支援活動、AILO勧告の早急な実施を含めて、政府を解決交渉のテーブルに着かせるための大衆行動、B各級議会への請願運動、新たな世論喚起のために解雇の不当性を暴露する宣伝活動などの強化が求められている。
 こうした活動の一体化した強化なくして、政府責任による解決を勝ち取ることは不可能であり、広く国民の皆さんに一人でも多く、この闘いの輪に加わっていただくことを強く訴えるものである。

二〇〇六年四月四日


支持率が低下し内部対立が露呈したブッシュ政権

 ブッシュ大統領の支持率が急落している。三〇%台で低迷しているが、最近の状況ではもっと下がる可能性がある。ハリケーン・カトリーナ対応、移民問題、貿易赤字などさまざまあるが、イラク戦争に関したことが主なものだ。
 四月七日にAP通信が発表した世論調査では、ブッシュ政権の支持率が三六%と過去最低となった。イラク政策では三五%、対テロ政策で四〇%とそれぞれ最低記録を更新した。
 支持率低迷の背景に、共和党支持層がブッシュ離れを起こし、一年前と比べて一二ポイントも減少したことがあるといわれる。
 米誌「タイム」の最近、「いま、下院選があったとすれば」という世論調査結果によると、「民主党に投票する」が五〇%、「共和党」が四一%という結果が出た。現在は上下両院で共和党が多数派を占めているが、秋の中間選挙では大きな変化が生まれそうである。

 こうしたなかで。いくつかの注目すべき動きがブッシュ政権にでている。
 第一には、大統領が国家機密を漏らしたという疑惑だ。この問題では、民主党のみならず、身内の共和党内部からも政権批判の火の手が上がっている。
 いわゆる「CIA(中央情報局)工作員名漏洩事件」だが、二〇〇三年夏、ジョセフ・ウィルソン元駐ガボン大使夫人のバレリー・プラムさんが、CIA工作員だったと名指しで報道されたことが発端だ。しかしCIA工作員の身元は重大な国家機密であり、捜査が開始された。ウィルソン大使は、「フセイン政権の脅威を誇張するため、事実を曲げた」とブッシュ政権を批判していたが、夫人がCIA工作員という報道はその直後に出て、ホワイトハウス高官が中傷キャンペーンとして情報漏洩したという疑惑が浮上した。調査の過程で、リークしたのは大統領次席補佐官カール・ローブだったことが判明した。また、その後、チェイニー副大統領がリビー首席補佐官に情報を漏らしたことも分かった。そして、今日の事態は、ブッシュ大統領自身がその張本人だというところまで明らかになってきているのである。
 ブッシュは、二〇〇三年三月のイラク開戦の年の夏には、アメリカ国内でも、フセインの大量破壊兵器保有で危機が迫っていたという開戦の大義に疑問を見せ始めた世論に直面した。リークは、これに対抗する世論誘導操作であった。ブッシュ政権は、国家機密の漏洩ではなく、機密指定の解除をしただけだと強弁しているが、ブッシュ政権に対する世論の目は一段と厳しいものとなっていることは確実だ。
 第二には、ラムズフェルド国防長官とライス国務長官の対立の表面化である。国防総省と国務省の対立が背景にある。ライスは、三月のイギリス訪問の時に、イラク戦争での「多くの戦術的な誤り」を認めた。このことに、ラムズフェルドが猛反発したのだ。ラムズフェルドは、「敵はこちらが何をするかを見て、それに対応する。こちらもそれに伴って、戦術を絶えず変えなければならない。もしこれを戦術的誤りと言う者がいれば、戦争とは何かについての理解が不足していると思う」とインタビューで答えている。
 三つ目も、ラムズフェルドに関したものだが、イラク戦争を巡って、米国防長官に辞任要求が起こっている。将官たちも相次いで批判をはじめた。最近では、ポール・イートン元少将とアンソニー・ジニ元中央軍司令官という二人の退役将軍からもでてきた。ラムズフェルドの戦争計画には重大なミスがあったとするものだ。米兵の戦死者は増加し、戦費は予想していたものより大幅に上回っている。そして、イラクは内戦状態に突入し、米軍の撤退は一段と困難になってきている。政権内のライスのラムズフェルド批判が戦術的なものであったとすれば、これは戦略批判と言える。そもそも、イラク開戦に際して米陸軍は、対イラク戦争は簡単には終わらない、戦闘・占領には五〇万人が必要だ、と考えていた。それを主張した当時の陸軍参謀長シンセキ大将は事実上の更迭処分を受けたのだったが、ラムズフェルドやネオコン一派は、米軍がフセインを打倒すればイラク民衆は大歓迎する、戦争は短期で勝利するなどいう「空想」をもって戦争に突入し、米軍は進むに進めず、撤退も出来ずという現在の状況を生み出したのであった。
 第四に、アメリカ国会での論議を見てみる。
 四月上旬の米上院歳出委員会は二〇〇六会計年度追加予算について公聴会を開いた。追加予算は、イラク戦費など総額九一〇億ドル(約一〇兆六〇〇〇億円)になる。
 追加予算のうちでイラクとアフガニスタンの戦費は六五三億ドルで、七〇%を越える。内訳は三四七億ドルが米軍の作戦行動に、五九億ドルがイラク、アフガンの治安部隊訓練に、一九億ドルが米軍部隊の防護に、一〇四億ドルが装備の修理・交換に使われるとなっている。
 議員の質問に、アビザイド中央軍司令官が「これまでよりも宗派間の緊張が高まっていることは疑いなく、われわれにとっても大きな懸念だ」として、事実上の内戦状況突入を認める発言をおこなったのが注目される。
 内戦への対処については、ラムズフェルドは「計画は内戦を防止するものであり、内戦が起きてしまったら、イラク治安部隊に対処させる」と答弁したが、イラク人カイライ政権と傭兵による安定工作(戦争のイラク化)に可能性が無いのは、ますます明らかになっているのに、それしか方針が提起できないところにブッシュ政権の苦境が見える。議会では、民主党の政権批判のトーンが上昇中で、イラク駐留米軍削減のスケジュールの検討なども要求したが、ラムズフェルドは拒否した。
 最後に共和党マケイン上院議員の意見だ。前のところで見たように米国の上下両院では野党民主党からイラク戦争に関して政権への批判が高まっているが、与党共和党からもさまざまな動きが出てきている。共和党の有力者で次期大統領選に出馬すると見られているマケインは、イラク戦争で政権が「戦略的な誤り」を犯した批判した。それは、開戦まもなくバグダッドが陥落したが、それに安心して大規模兵力を投入しなかったことが現在の事態を生んだと言うのだ。軍部の一部の主張と同じだが、共和党の超大物の発言のもつ意味は大きい。

 まさにブッシュ政権は、内外で厳しい状況に直面させられているのである。このままで進めば政権の弱体化は必至だが、この窮状から脱するたまにブッシュは思い切った無謀な冒険に出るかもしれない。アフガニスタン・イラクにつづいて、イラン攻撃による戦火の拡大による延命が図られるかもしれないという報道もある。
 警戒心をいっそう高めて、全世界の人々と連帯を強めて反戦運動を強めていくときである。


Kodama

街頭で「働く人のよろず労働相談」を開催

 四月八日の土曜日、静岡市の繁華街にある青葉公園で、「リストラ NO! 働く人のよろず労働相談」が、午前一一時から午後三時まで行なわれました。
 主催は、静岡県共闘と静岡県地域ユニオンネット(静岡ふれあいユニオンなど県内地域ユニオンの四団体で結成)で、昨年に引き続いて二年目の取り組みです。
 二〇人以上の参加者は、マイクを握ってアピールする人、ビラまきをする人、設営したテントで労働相談を受ける人と、活発に動き回りました。市民へのアピールは、「残業しても超勤手当が出ない」「経営者から明日から来なくていいと言われた」「有給休暇がない」などの問題があれば、この場で相談に乗ることを訴えました。
 途中、松谷県会議員や佐野静岡市会議員も駆けつけてくれて、アピールやビラまきに参加してくれました。結果、労働相談は五件あり昨年の一件と比べても大きな成果がありました。今後も、非正規労働者や未組織の仲間にかけられている問題を解決していくために、継続して活動していくことが重要だと感じた行動でした。 (静岡・読者)

六ヶ所工場と核兵器

青森県六ヶ所村の日本原燃の使用済み核燃料再処理工場で最終試運転(アクティブ試験)が三月三一日に始まった。原燃は、試運転は来年八月まで一年五ヶ月間で、四〇〇トンを超える使用済み核燃料からプルトニウムとウランを抽出して機器の性能確認などを行なうとしている。この「ムダ」で、「不経済」で、「危険」な再処理工場が稼動したこの日は、茨城JCOの事故とともに危険な核の歴史に記念される日となろう。
 プルトニウムの毒性についてはいまさら言うまでもないことだが、核兵器の材料を日本が持つことになることの意味は重要だ。日本政府は六ヶ所再処理工場で作られるものはウランとプルトニウムが五〇%ずつ混ぜられた「混合酸化物」であり核兵器に使えないと言って来た。だが、「混合酸化物」も、一ヶ月以内に核弾頭のプルトニウム材料に加工することが可能である。六ヶ所再処理工場で「混合酸化物」をつくっておけば、「いざ」という時には核兵器を短期間で作ることが出来るようになるのである。アメリカからも核拡散の危険が高いという指摘もある。北朝鮮やイランの核兵器保有が問題とされているが、それらの国とは比較にならないほどの強大な核兵器大国に日本はいつでも転換できる物質的な条件をもっているし、その方向を進んでいる。戦争の出来る国家作りを推進している自民党内閣は、「非核三原則」を否定し、これまでも核兵器を永久に持たないと宣言することをさまざまな口実で回避してきたが、今後は戦争をやるからには核兵器を持ったほうが有利だという論調を強めてくるだろう。
 六ヶ所アクティブ試験でもさまざまな放射性廃棄物が放出される。原燃は、高い煙突から遠距離に吹きとばす方式をとっているので、地元には「人や環境に影響のない範囲」の影響しかないと説明している。だが、四月一二日には、再処理工場内にある前処理建屋の小部屋内で、プルトニウムなどの放射性物質を含む水約四〇リットルが漏れ出したと報じられた。 (H)


複眼単眼

    
民主党を襲った激震と小沢新執行部の行方

 一六四国会初めの「四点」セット追及の勢いもどこへやら、民主党は「堀江偽メール」事件で、あっという間に前原執行部の崩壊に至った。そして小沢一郎と菅直人の代表選挙は小沢の圧勝。すると総辞職したはずの民主党執行部が鳩山幹事長を含めて全面復活し、結局、変わったのは代表の交代と新設の代表代行職に菅が就任しただけ。「大山鳴動ネズミ一匹」とまでは言わないが、なにやら肩すかしの感があるのは否めまい。
 前原辞任と同時に真っ先に小沢待望論を言い、党内に小沢代表実現の流れを作った横路派は、新執行部でも主要ポストを占めないままに終わった。これはどういうことだろうか。この執行部体制は国会終了時までだとか、九月の代表選挙までだとか、国会雀が囁いていることから、いずれにしても小沢新執行部は暫定執行部的な不安定なものであることは間違いないだろう。民主党の波乱はなおもつづくと見ておいた方がいい。
 いわゆる民主党内護憲派の旧社民党系派閥、横路派が小沢と組んだのは意外に思う人もいるが、実は不思議はない。この数年、小沢一郎と横路孝弘は何度も会談をやっており、そのうちの何度か(二〇〇一年十二月、二〇〇四年三月)は「安全保障政策」に関して「横路―小沢 合意文書」というものを作っているのだ。今回の「共闘」はこの合意をベースにしている。
 二〇〇一年の合意文書では「自衛隊は憲法九条の理念にもとづき専守防衛に徹する」とし、日米安保体制容認、および国際平和協力では自衛隊とは別の国連待機部隊の創設などを確認している。
 二〇〇四年の文書では、政府自民党の無原則な自衛隊の派遣に歯止めをかけるなどとして、「自衛隊は憲法九条に基づき専守防衛に徹し、国権の発動による武力行使はしないことを永遠の国是とする」とし、同時に「国連待機部隊(仮称)」創設を確認している。これは小沢の持論に横路の九条擁護専守防衛論をプラスしたものだ。
 小沢と横路はこうした合意を作っていたのに、前原前代表の言説は極めて危ないと横路派が考え、チャンス到来とばかりに小沢擁立を画策したと言えるのだ。
 横路派は党内では少数で、影響力は小さくなっていた。比較的路線が共通する「リベラルの会」も先の総選挙以来、勢力が激減した。そうしたなかで横路派が起死回生のために行ったこの危険な賭けが功を奏するのかどうかはもう少し事態を見極めなくてはならないだろう。
 小沢はこの合意文書の政策を貫こうとするなら、まずイラク派遣自衛隊をはじめアフガン戦線など、海外の自衛隊の即時撤退を要求して、小泉自民党と闘わなくてはならない。
 また九条を変えないのであれば、この国会で問題になっている九条改憲のための国民投票法案に歯止めをかけなくてはならないだろう。少なくとも前執行部のように、ニュートラルな法案ならやむをえないというような論理でずるずると引きずられていくのは転換しなくてはならないだろう。
 新執行部がこれらにどう対応するのか、もはや待ったなしである。(T)