人民新報 ・ 第1200号<統合293(2006年5月1日)
  
                  目次

● 沖縄で岩国で米軍再編NOの審判  国民投票法案、教育基本法改悪案、共謀罪法案の上程阻止

● 戦争と弾圧の共謀罪の上程を阻止しよう!

● 第11回市民憲法講座  新崎盛暉さんが講演  「沖縄の現在を考える〜米軍再編・基地強化の中で〜」

● ノーモア JR尼崎事故 命と安全を守れ!  4・22国際シンポジュウム 4・23JR尼崎駅前集会

● 春のグリーン・サイクル  おおさかミニピースサイクル

● 防衛庁・防衛施設庁へ抗議

● 石原都政・都教委の処分に反撃を

● 横浜事件・不当な「免訴」判決を許さず  横浜事件再審判決報告集会

    荻野富士夫・小樽商科大学教授の講演  「戦時下思想統制強化と横浜事件」(要旨)

● 第77回メーデーにあたって

    労働者は団結して憲法改悪阻止、反戦、生活防衛の闘いにたちあがろう!
                 
                          (労働者社会主義同盟中央常任委員会)

● 複眼単眼  /  海兵隊のグアム移転費負担にまつわる怪と醜




沖縄で岩国で米軍再編NOの審判

     
国民投票法案、教育基本法改悪案、共謀罪法案の上程阻止

 四月二三日に行われた各種選挙は、小泉政治が大きな反対に出会い、曲がり角に差し掛かっていることをしめした。
 アメリカの世界支配のための地球的な規模の米軍再編の一環としてある在日米軍再編は、自衛隊を米軍の一翼として展開させる日米軍事一体化であり、各地に負担を増加させている。
 今回の選挙では、在日米軍の再編が焦点となって闘われたところでは、いずれも小泉与党が敗北した。
 嘉手納基地をかかえる沖縄県沖縄市では大激戦の結果、民主党、共産党、社民党、社大党など五党が推薦する革新無所属の東門みつこさんが、自民党、公明党が推す候補を破り、当選した。
 住民投票において米空母艦載機部隊の移駐反対を圧倒的多数で可決した岩国市では周辺七町村が合併して、新しい岩国市の市長選が行われた。住民投票の結果の尊重を公約とした井原勝介前市長が、安倍晋三官房長官や麻生太郎外相が選挙応援に入るなど大いにテコ入れした、受け入れ賛成の候補者を破って当選した。
 沖縄市、岩国市の選挙の結果は、米軍再編反対、基地強化反対の市民の意思をはっきりと示したものである。政府は、こうした審判を尊重しなければならない。にもかかわらず、小泉政権は、米軍再編の「最終合意」を急ぎ、グアム基地予算としてアメリカが要求してきているものの五九%六〇億九〇〇〇万ドル(約七一〇〇億円)の日本負担に応じたのである。うした日本政府の姿勢にアメリカ側はさらに多額の「移転費用』を上乗せしてくることは間違いないだろう。
 また、衆院千葉七区補選では、小泉をはじめ閣僚、小泉チルドレン議員などを全面投入した自公候補が、民主党新人に敗北した。昨年九月総選挙での圧勝の風は失速した。民主党候補は「負け組ゼロへ」のスローガンを掲げ、それが支持を受けた。総選挙では自民党に流れた無党派層は今回は民主党に投票した。格差拡大など小泉政治の負の面がクローズアップされるようになって、それが争点になって、「小泉劇場」なるものの空虚さが暴露されたのである。
 そして、自民党は政調会長中川秀直の次男が立候補した広島県東広島市長選でも敗北したのであった。

 自民党は、この敗北に重大な打撃をうけ、巻き返しの体制を強化してくる。今国会における行政改革法案、医療法案、そして教育基本法改悪法案、改憲の手続きのための国民投票法案、共謀罪新設法案など悪法の上程、成立に全力をあげてくるだろう。これから連休あけ五〜六月の国会の情勢は非常に重大なものになる。
 小泉の自民党総裁任期は一応九月までとなっており、これが最後の国会となる。小泉政治の五年間は、日米同盟主軸というアメリカ・ブッシュ政権の世界的規模での戦争体制への加担、「戦争のできる国」づくりのための有事法制、自衛隊の派兵、そして教育基本法改悪、改憲の動きの加速、グローバリゼーションと新自由主義政策の下での一握りの金持ちと多くの貧困者への格差の急速な拡大などなどが続いてきた。その間、小泉「改革」によればすべてが解決するという幻想が振りまかれ、異常な小泉ブームが作り出され、各種選挙で、自民党は勝利してきたのだった。しかし、いま、アメリカでもブッシュ政権はイラク戦争をはじめさまざまな問題での批判が高まりの中で、支持率は急落し、秋の中間選挙では、与党共和党の敗北の可能性は高まっている。だが、ブッシュは、それをイランの「核疑惑」を口実にあらたな戦争拡大で乗り切ろうとする危険な動きを強めているが、小泉は、日米軍事一体化によってその危険な道をブッシュとともに進もうとしているのである。
 小泉政治に対する人びとの対応には明らかな転換がはじまった。小泉政治の本質が明らかになるにつれて、反小泉反自民の闘いは活性化してくる。その流れを強め、教育基本法改悪法案、国民投票法案、共謀罪法案の上程を阻止し、そして小泉政治のおわりを実現するために闘おう。


戦争と弾圧の共謀罪の上程を阻止しよう!

 共謀罪新設のための法案は、昨年の特別国会で国会に提出され、審議未了で今国会に継続審議となっていた。近代刑法では、犯罪意思が具体的な結果、損害として現れて初めて処罰の対象となるとされている。しかし、この法律は「合意」しただけで処罰する。そして、限りない拡大解釈によってあらゆる自主的な運動・個人を弾圧するために使われるようになるものだ。

 共謀罪新設法案は、今国会の法務委員会での最大の与野党対決法案である。
 四月一八日、衆議院法務委員会理事会で、自公与党理事は数にものを言わせて、共謀罪新設法案の審議入りを強引に決定し、二一日の委員会において、野党の反対を押し切り一方的に審議入りを決定し、同理事会において、今後の審議日程を野党の抗議を押し切って決定した。こうして連休前の委員会可決を強行しようとしているのである。
 自民党は、二三日投票の衆院千葉補欠選挙など各地での敗北に危機感を強め小泉反動政治の総仕上げに拍車をかけてきている。国民投票法案、教育基本法改悪法案とともに、日本を「戦争の出来る国」にするこの悪法案の上程を阻止し、廃案に追い込むための闘いは重大な局面に入った。

 四月二五日、文京区民センターで「治安維持法公布から八一年、いま共謀罪を問う 市民の集い」が開かれた。
 はじめに、共謀罪が成立してそのその一五年後はこうなるという近未来を想定したビデオ、<共謀罪ムービー『共謀罪、その後』第一話>が上映された。
 渡辺治一橋大学教授が「治安維持法と共謀罪」と題して講演した。
 共謀罪は、治安維持法(一九二五年成立、二八年と四一年に「改正」)、破壊活動防止法(一九五二年)につづく第三の弾圧法だ。これらはともに、組織的運動をターゲットにしている。治安維持法も激しい反対運動の中で成立したものだが、当初は、共産党だけに適用すると説明されていた。しかし、対象は、共産党から、そのシンパ、新興宗教教団、反戦的宗教団体、反戦的な個人や団体に拡大するという濫用が行われた。治安維持法は大いに猛威を振るった。政府にとっては成功、われわれにとっては失敗の経験だったと言えよう。しかし戦後の破防法は成立したが機能せず、今度は相手にとっての失敗、われわれの側の成功ということになった。
 共謀罪はアメリカを中心とする「反テロ」戦争体制確立の一環であり、軍事大国化、新自由主義改革、憲法改悪に反対する組織運動の取締りを狙っている。共謀罪は、住居侵入罪や国家公務員法などでの弾圧と一体となって効果的に活用されてるようになることが狙われている。
 つづいて、山下幸雄弁護士が、組織犯罪処罰法と共謀罪について報告した。共謀罪は、サミットで麻薬やマネーロンダリングなど国際的犯罪に対する対策が検討され、二〇〇〇年の国連総会で越境組織犯罪防止条約が採択され、日本政府も署名した。共謀罪はその条約に基づくものであるとされている。しかし、G8加盟国で条約を批准しているのはカナダとフランスだけで、アメリカ、イギリス、ドイツは批准もしていない。条約では、共謀罪の対象となる「重大犯罪」を懲役四年以上の犯罪と定義しているが、すでに共謀罪の成立を前提にさまざまの法律が変えられている。与党は法案成立を急いでいるが、仮に成立しても使えなくなるようにする運動が必要だ。

 共謀罪反対の取り組みでは、四月二六日には、昼には参議院議員会館で「『共謀罪』に反対する!超党派国会議員と市民の緊急院内集会」が民主党、社民党、共産党などの議員が参加して開かれ、夜には、日本弁護士連合会主催による「共謀罪に反対する大集会」が開かれた。


第11回市民憲法講座

 新崎盛暉さんが講演  
「沖縄の現在を考える〜米軍再編・基地強化の中で〜」

 四月二二日、文京区民センターで「第一一回市民憲法講座」が、「許すな!憲法改悪・市民連絡会」と「辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会」の共催で開かれた。
 沖縄大学教授の新崎盛暉さんが「沖縄の現在を考える〜米軍再編・基地強化の中で〜」と題して講演した。

 アメリカと日本の政府は、一九九六年、冷戦後の日米安保を見直す再定義宣言を行った。それから一〇年が経ち、ブッシュ、小泉によるいまの再編があるが、これは二〇〇二年一二月から協議が始まった。だが、日本政府はひた隠しにしてきた。そして、二〇〇三年には三月のイラク攻撃、六月の有事三法成立、七月にイラク特措法、一二月にはイラクへの自衛隊派兵基本計画が閣議決定された。二〇〇四年には米軍再編のための審議官級会談が始まり、九月の日米首脳会談となった。その間、辺野古ボーリング調査に反対する行動、沖縄国際大学へのヘリ墜落などに抗議する闘いが起こっている。そして昨年の九月、日米両政府による再編の中間報告がだされたが、そのタイトルが「日米同盟・未来のための変革と再編」となっている。いわゆる在日米軍再編は、世界的米軍再編の一環であり、日米の軍事的一体化を意図するものだ。世界的米軍再編は、アメリカの世界支配の野望の表現であると同時に弱点をもあらわしている。それは、アメリカ権力中枢が世界秩序を軍事力を活用して実現しようとしているが、アメリカ単独の力ではそれを維持できないことを示すものだ。この在日米軍再編協議は、安保再定義の次のステップだ。この間、日本全体の後方支援体制整備は進んだが、SACO合意による沖縄基地の再編は停滞している。イラク戦争など「反テロ」戦争が重点になるようになって沖縄基地の米軍事戦略上の相対的な価値は低下している。それを、中国や北朝鮮の脅威を強調することによって維持・強化しようとしているのである。もう一方で、沖縄の政治的利用価値は依然高く、普天間代替施設に固執している。では、なぜ、辺野古新基地なのか。アメリカにとっては、沖縄は戦争で獲得した既得権益であり、簡単には手放さない。日本にとっては、将来的な対中軍事拠点としての意味があるのだ。
 しかし、新基地には稲嶺恵一沖縄県知事も含めて全県的な反対の声が強い。名護市の島袋吉和市長は、沿岸にV字型滑走路の建設で政府と合意したが、沖縄タイムズの最近の世論調査を見てみるとこうしたものへの反発は大きい。あなたは小泉内閣を支持しますかという問いに、支持が三三・三%、支持しないが五三・一%となっている。名護市と防衛庁の合意による滑走路建設には、賛成一七・三%、反対七一・四%、県外移設しかないとする稲嶺知事に対しては支持七三・四%、支持しない一六・八%という回答だ。琉球新報の名護市とその周辺を対象とする調査では、市長の判断を支持しないが五九・〇%(名護市だけでは七六・七%)、新沿岸案に容認できないが七〇・八%(同八六・七%)というように圧倒的多数が新基地に反対の意思表示をしている。
 今年一月の名護市長選では、新基地反対派が統一候補をだせずに、島袋市長が実現したが、島袋氏も沿岸案には反対だと公約していた。明日投票の沖縄市長選では、統一が出来た。その結果を期待したい。


ノーモア JR尼崎事故 命と安全を守れ!

     
4・22国際シンポジュウム 4・23JR尼崎駅前集会

国際シンポジウム

 JR西日本福知山線尼崎大事故から一年。遺族の方々の心の問題も含め何ひとつ解決していない中で、一周年を迎えます。
 四月二二日には、事故現場の近くの尼崎総合文化センターで国際的に事故を問うシンポジウム(尼崎地区労の主催)が開催されました。
 会場には、主催者の予想をはるかにこえた多くの人々が参加し、中へ入りきれないほどでした。会場内にはマスコミのテレビクルーも多く詰めかけ、社会的な注目度の高さが感じられました。
 集会では、まずはじめに事故で亡くなられた人びとに哀悼をこめ黙祷を行いました。そして遺族会の藤崎光子さんから、これまでの経緯とJR西日本の不誠実な対応に怒る鋭い発言がありました。
 海外からの参加者は、イギリスからはRTM元執行委員のピータースケリー氏、フランスからはSUD―RALLのミッシエル・デマル氏、韓国からは韓国鉄道労組のチョ・サンス氏が参加して、各国の労働運動の現状や民営化の状況また安全をめぐる問題について報告や問題提起がなされました。民営化がもたらす危険は世界共通であり、また韓国からは地域住民を巻き込んだ公共性の追求の闘争について報告があり、大変お手本になる内容だと感じられました。
 日本を含めて各国の共通の課題は、「新自由主義に反対」していく運動がこれから必要だし、国際連帯をしなければ、グローバリズムの中での闘いに勝てないのだということを集会参加者一同が認識を統一する集会となりました。

JR尼崎駅前集会

 前日のシンポジウムに引き続き、二三日には事故現場近くの尼崎駅北広場で「尼崎集会・サイレント行進』が行われました。地元の尼崎地区労傘下の労働組合や尼崎市民をはじめ、近畿各地や首都圏からも多くの労働者や市民が集まり、集会と事故現場までのデモを行いました。
 集会には五〇〇人ほどが集まりました。集会では、一〇七名の犠牲者を出した事故に対しての怒りを私たちのこれからの取りくみにどう生かしていくかという方向が示され、「民営化」は、安全と乖離する施策であり、いまだに事故原因が何一つはっきりとしない中で、尼崎事故以降に起こった羽越線事故や伯備線事故に象徴される企業体質に警告を発したものとなりました。
 また、「アスベスト」問題のきっかけを作った「クボタ」も尼崎駅前にあり、事故現場周辺は「安全」と「稼ぐ」が両立しないことをはっきりと示す場所になっています。
 デモには、地域住民の方々も注目していました。事故現場となったマンションには現在誰も住んでいませんが、列車の一両目が突っ込んだ駐車場には鎮魂のお地蔵さんがまつられており、当日も遺族の方が長時間手を合わせている場面がとても心に残っています。献花場には沢山の花束や千羽鶴が手向けられていて、多くの人々が事故犠牲者に対しての哀悼を示していました。
 新自由主義に反対し、国際連帯を追求しながら、ますます広がる格差社会に対して反対していきましょう。(大阪・N)


春のグリーン・サイクル

  
 おおさかミニピースサイクル

 四月一六日、グリーンサイクルと銘打ったミニピースが行われました。
 開発が進む大阪北部にある箕面市止々呂美へのサイクリングは今回で三回目を数え、自然農業に取り組む方の話を聞く機会もあり大変有意義なものとなりました。公共事業の見直しでダム建設は中止となりましたが、あちらこちらで新しい工事が進められており、環境破壊が間違いなく進んでいる状況を見ることができました。
 また、菜種油から採った油で自動車を動かそうと取り組んでいるエコプロジェクトの菜の花も満開で、春を満喫することができ心も体もリフレッシュされました。
 憲法改悪へむけた国民投票法案の国会提出が危ぶまれる中、国会ピース、本番のピースサイクルを通じて世論をさらに喚起していかなければなりません。   ピースサイクルで反戦・反核・平和・人権・環境の課題を訴え、全国を駆け巡ろう!
(大阪通信員)


防衛庁・防衛施設庁へ抗議

 四月一七日、辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会による定例の毎週月曜日の防衛庁・防衛施設庁前抗議行動が行われた。
 野古からの電話メッセージは、海上ヘリ基地建設反対・平和と名護市政民主化を求める協議会(ヘリ基地反対協)の大西照雄さんが、今度の名護市長と政府の合意は、拡大、巨大沿岸案であり、琉球新報の世論調査では県民の圧倒的な人々がこの合意について受け入れられない、とくに名護では、八割以上が反対であり、今度の島袋市長の合意は受け入れられていないという調査結果が出ている、これから島袋市長の手法に対して市内での宣伝を強めていき、また政府や賛成派による稲嶺県知事包囲が行われていますから、これに対する闘いも展開をしていかなくてはならない、と報告した。
 自衛隊東部方面隊をイラクへ行かすな実行委員会、名護ヘリポート基地に反対する会などからアピールを受けた。
 当日の防衛庁・施設庁への要請担当は、新しい反安保行動をつくる実行委員会第]期で、@「辺野古沿岸案」を白紙撤回せよ、A普天間基地の使用を即時中止させよ、B沖縄に新たな基地を建設することは絶対に止めよ、C「日米同盟:未来のための変革と再編」の日米合意を白紙撤回し、基地の大幅縮小、負担の大幅軽減のための再協議を米国政府に申し入れよ、D日米安保条約を即時に破棄し、外交により世界平和を獲得する努力をせよ、などと申し入れた。


石原都政・都教委の処分に反撃を

 東京都教育委員会は、卒業式での「君が代」斉唱時の不起立・不伴奏などを理由に三月三一日、処分発令を強行した。義務制、障害児学校、高校で停職三ヶ月一名、停職一ヶ月一名、減給一〇分の一・一ヶ月一〇名、戒告二一名の計三三名の処分で、二〇〇三年の10・23通達以来、これまで三五〇名近くの大量処分がだされた。
 また同日には、教員に不適格として分限免職(解雇)処分も発令された。
 石原都政と都教委は、教職員・生徒に「日の丸・君が代」を強制し、学校を戦争と企業のためにただおとなしく働く人づくりの場にしようとしている。「日の丸・君が代」強制と教育基本法の改悪の急速な動きは、憲法改悪と表裏一体のものである。こうした教育破壊の暴挙を断じて許してはならない。

 四月二二日、石原・中村都教委の暴走を止めよう!都教委包囲首都圏ネットワークの主催で「06年卒業式・入学式 総括と展望を語る集会」が開かれた。
 集会では、「日の丸・君が代、被処分者の会」事務局長の近藤徹さんからの報告。
 都教委の大量処分をに断固とした反撃を行っていきたい。処分は10・23通達によるものだが、今年の三月一三日には、生徒にも立て・歌えという通達が出された。生徒の内心にまで土足で踏み込み、愛国心の強要を行ってきた。日の丸・君が代強制は新たな段階に入ってきた。日の丸・君が代処分は、それに反対する被処分者を職場から根絶やしにする攻撃だが、今年の卒業式では新たに加わる仲間も増え職場からの反撃の力が前進し、また、地域から要請などさまざまな運動が広がっている。これから処分についての人事委員会での公開審理、予防訴訟裁判などに取り組んでいく。私たちは孤立していない。
 つづいて、停職三ヶ月処分を受けた、根津公子さんが発言。卒業式で日の丸・君が代を強制されたとき、中国人を殺せと命令された日本兵のような気持ちになります。わたしは今回も拒否して処分を受けましたが、門前で不当性を訴えています。子どもたちにたいする授業だと思っています。生徒や親たち、先生方にも、なぜ根津はああしたことをやるかということを考えて欲しい、私の経験を有効に使ってもらいたいと思います。
 停職一ヶ月の河原井純子さん。今年は子どもたちにも日の丸・君が代が強制される通達がでました。また男らしく、女らしくということが強調されるようになっています。教育では自分の判断でイエス・ノーを言えるようにするのが本来の目的であるはずです。
 分限免職(解雇)処分の増田郁子さん。解雇の理由は、研修センターで抗議文を読み上げたことなどを教育公務員に不適当としていますが、都議会内の右翼的勢力と連携しての平和教育に対するファッショ的な弾圧です。「侵略戦争などしていない」「戦争はアジアの民族独立を助ける正当なものだった」などと発言している都議たちと連携している都教委のやりかたは絶対に許せません。
 校門でビラまきをした人びと、その監視勝稼動を行った弁護士などからも報告の発言があった。
 首都圏ネットからの今後の活動では、これからも日の丸・君が代強制に反対し、教育基本法改悪反対では日教組や全教の取り組みとも連携し、七月に大集会、八月三〇日には都教委包囲のデモも行う、などが提起された。


横浜事件・不当な「免訴」判決を許さず

         
横浜事件再審判決報告集会

 横浜事件は、戦時下におけるデッチあげ大弾圧事件である。誤審の完全除去と誤判による被害者の権利および名誉回復を求める第三次再審請求が闘われ、ついに二〇〇三年四月、横浜地裁は再審開始を決定した。検察官は即時抗告したが、東京高裁は〇五年三月、自白が拷問ないし拷問の影響下になされたもので「自白の信憑性には顕著な疑いがある」「無罪を言い渡すべき新たに発見した明確な証拠がある」として即時抗告を却下した。
 しかし、今年の二月九日に横浜地裁は「免訴」という司法の責任をまったく放棄する卑劣な判決をだした。これは、「本件判決は、実質的に見て、検察と一体となって横浜事件の隠蔽を図ったものといえ、特高警察と検察の言うがままに違法な確定判決を言い渡した横浜地裁の行為への反省の姿勢は微塵も見られない不当な判決であるといわざるを得ない」(再審請求人・弁護団声明)ものであり、請求人・弁護団はただちに東京高裁に控訴の手続きをとった。

 四月一五日に、文京区民センターで、横浜事件の再審を実現しよう!全国ネットワークの主催で「横浜事件再審判決報告集会」が開かれた。
 集会では、治安維持法研究で有名な荻野富士夫・小樽商科大学教授が「戦時下思想統制強化と横浜事件」 と題して講演した。
 第三次再審請求弁護団主任弁護人の環直彌弁護士は判決の不当性について次のように述べた。
 横浜事件では過酷な拷問によって虚偽の自白を強制され、これらの自白を唯一の証拠として有罪の判決をされたものであることが証明され、無罪であることが明らかとなった。ところが、「免訴』で裁判は形式的に打ち切られた。これは検察のいいなりになっている裁判所の姿をしめすものだ。われわれ、こうした不当判決には到底承服できず、控訴して闘いつづける。

 4・15横浜事件判決報告集会での荻野富士夫・小樽商科大学教授の講演


                「戦時下思想統制強化と横浜事件」(要旨)


 二月九日、横浜地方裁判所は、横浜事件第三次再審請求事件にかかる治安維持法違反被告事件について、不当にも「免訴」の判決を言い渡しましたが、これは、旧刑事訴訟法第三六三条の免訴事由をあげています。第一に「犯罪後ノ法令ニ因リ刑ノ廃止アリタルトキ」。治安維持法廃止は一〇月一五日でしたが、これは一○月四日のGHQの「人権指令」によるもので、日本政府は渋々実施しましたが、治安維持法の敗戦後の存続に固執していました。第二が「大赦アリタルトキ」(一○月一七日)でした。日本政府は九月初旬の「恩赦」検討時点で「治安維持法違反ノ罪」は「大赦」ではなく「特別恩赦」とするとしていましたが、「人権指令」の余波で「大赦」の適用に変更しました。「大赦」では「刑の言渡しを受けた者のその刑が将来にわたって無効となる」のですが、「特赦」では「刑の言渡しの事実は残る」ことになります。そして当時の法務大臣岩田宙造は司法関係者への訓令で、該当者に「聖旨」を伝え、「断ジテ再ビ刑辟ニ触レルガ如キコトナク永ク忠良ノ臣民タルニ遺憾ナカラシムベシ」などと言っています。
 今日は、横浜事件のなかでの中心的事件であり、木村亨さんなどが弾圧をうけた出版界について述べたいと思います。
 横浜事件は、一九四二年九月に米国共産党の川田寿、定子夫妻の検挙からはじまり、ソ連事情調査会事件につながり、そして細川嘉六氏の雑誌『改造』論文事件が、泊での一枚の記念写真から一九四三年五月に共産党再建準備会事件がデッチあげられます。そこでは、細川氏や木村亨さんたちが検挙され、政治経済研究会(昭和塾)<四三年九月>や中央公論社<四四年一月>や改造社<四四年一月>、満鉄調査部<四四年三月>、日本出版社創立準備会、朝日新聞社、日本評論社、岩波書店などに拡大されていきました。
 大東文化大学東洋研究所編の『昭和社会経済史料集』の第二五巻に、「『中央公論』、『改造』両社解散ノ経緯」という史料があります。これは、海軍省軍務局関係史料で、雑誌社編集者と海軍調査課、調査課嘱託らの非公式懇談会である太平洋研究会のもののようです。これは、両社が情報局による「解散勧告」をうけた当日の一九四四年七月一○日に開催されています。解散命令を強要された『中央公論』松下編集局長と『改造』の佐度氏の経過報告が書かれています。聞取りのミスなどによるのでしょうが、かなりの事実関係の誤りにもかかわらず、いくつかの重要な事実を提供しています。ひとつは、横浜事件が、「神奈川事件」という呼称で出ている。中央公論社が近藤壌太郎神奈川県知事へ「面会陳情」をおこなった時に、近藤知事は「特高課長ヨリ『中央公論』ハ左翼ノ巣窟ナリ。今後モ引続キ検挙ノ予定」と言いました。特高次長は「本件ハ司法権ノ命令ニシテ、政治的意味ナキ事」を力説しましたが、真意はその逆であったことは明らかです。
 史料では、「解散勧告」の背景・意図について次のような観測をしています。
 「司法省ト内務省ノ一部ニテ両社ヲ潰ストイフ原則的諒解事項ノ下ニ極メテ計画的ニ行ハレタルモノナル事」「各出版業会等ノ策動」「背後ノ根本ニ一部Aノアル事」「多方面ニ亘ル相当重大ナル広ガリ」「甚夕弱イ者イジメノ感」、「ソノ根本的思想的バツクガ究極ノ原因」とあります。「各出版業会」とは、『中央公論』『改造』などをつぶし、それに取って代わろうという出版社で、『読書人』を出していた東京堂や右派物で売れ行きを伸ばしていた歐文社(戦後は受験雑誌で有名な旺文社)などの画策ということであり、「A」とは陸軍のことです。そうした勢力が動いていることについて「根本的思想的バツクガ究極ノ原因」という表現になっているのでしょう。
 つぎに、戦時下思想統制の強化と横浜事件の関係について述べます。『特高月報』の四四年八月分は「他に類例のなき大なる事件にして……特筆すべき事項」だとして、「@国家機密の外国への漏洩を未然に防止し得たること、A中央公論社改造社内の永年に亘る不逞行動を究明剔抉して遂に之を廃業に立至らしめ、戦時下国民の思想指導上偉大な貢献を為し得たること」と自画自賛の評価をしています。
 横浜事件は、「米国共産党事件」から「ソ連事情調査会事件」までは、神奈川県特高課の独自行動でした。しかし、「泊での写真」発見の以後、「党再建準備会事件」、「政治経済研究会事件」となると、内務省警保局・司法省刑事局の指揮統制下で神奈川県特高課の活動が活発化してきます。一九四三年一月の警保局保安課「最近の左翼事件に鑑み注意を要する事項」(閣議での治安状況の説明資料)は、「政治経済研究会」に焦点をあて、また「機密文書の取扱ひ」に注意を喚起するとともに、「夫々自己の勤務する……改造社中央公論社……等を共産主義運動に利用しつつありたること」に注目せよとしています。だが、この時点では、中央公論社などの解散についてはまだ射程外でした。しかし、四四年一月二九日に、両社の関係者の一斉検挙がおこなわれます。そして、七月一〇日の解散強要となっていきます。朝日新聞社・日本評論社・岩波書店などへも波及しますが、当局の思惑通りには進展しませんでした。
 出版界への弾圧の波及の背景には戦局の悪化があり、一段の戦時下思想統制の必要がありました。四三年九月二一日の閣議決定「現情勢下ニ於ケル国政運営要綱」では、「今次聖戦ニ対スル思想ヲ確立シ、民心ノ作興ヲ期シ国内言論ノ指導ヲ強化スルト共ニ諸般ノ取締ヲ強化シ、苟モ国論分裂ノ虞アル者ニ対シテハ徹底的ノ措置ヲ講ズ」としました。それをうけて司法省の具体策である「国政運営要綱ニ基ク措置案」で「国論分裂ノ虞アル言論事犯ニ付法規ノ一層適切ナル運用ヲ図リ以テ検察ノ徹底ヲ期シ殊ニ反戦厭戦等ノ目的ニ出ヅルモノニ対シテハ十分ノ努力ヲ傾注シテ之ガ絶滅ヲ図ルモノトス」と具体化し、文部省の「国内態勢強化方策措置」では「戦時国民思想指導強化方策」で「此ノ際教育界学界等思想ノ枢軸部ヲ中心トシテ広ク国民各層ニ対シ積極且適切ナル思想指導ヲ強力ニ推進スルニ非レバ啻ニ国民思想ノ昏迷、戦意ノ弛緩、道義ノ頽廃等ヲ招来スルノミナラズ反ツテ敵思想謀略ノ乗ズル処トナリ巧妙ナル仮装ノ下ニ於ケル自由主義共産主義思想ノ跳梁、国論ノ分裂ヲ来シ治安ヲ紊ルガ如キ矯激ナル思想行動ノ跋扈等ニ憂慮スベキ事態ノ発生モ保シ難シ」という状況になっていました。四三年一二月一○日の閣議決定「戦時国民思想確立ニ関スル基本方策要綱」では、「六 思想取締」で「(一)共産主義運動、諜報活動、反軍思想、非合法直接行動等ノ防圧ヲ強化スルコト」として、「(ニ)左ノ諸思想ハ厳ニ視察ヲ加へ早キニ及ンデ徹底的ナル予防取締ヲ為スコト」では、「(イ)講和招来ヲ希求スルガ如キ思想其ノ他終戦思想。(ロ)同盟国トノ緊密ヲ疎隔スルガ如キ思想、(ハ)戦時計画経済ヲ否定シ民心ヲ惑乱スルガ如キ思想、(ニ)動機ノ如何ヲ問ハズ国政変乱ヲ目的トスル直接行動ヲ是認スルガ如キ思想、(ホ)其ノ他国民ノ戦争意思乃至戦力ヲ分裂弱化ニ導クガ如キ思想」を禁圧する方針を出しています。
 四三年一二月一〇日の閣議決定「戦時国民思想確立ニ関スル文教措置要綱」では「国民思想ヲ混乱セシメ戦力増強ヲ阻害スル慮アル学者ノ思想・学説ヲ究明是正シ及国民ノ思想、生活ヲ紊ル社会事象ニ付思想的究明ヲ行フ為文部省ニ所要ノ機関ヲ設クル等ノ措置ヲ構ズ」としています。
 こした中で、当局は細川氏とその関係に焦点を絞っていきます。
 四四年二月の衆議院秘密会で池田克司法省刑事局長は、「細川嘉六を中心として共産党の組織の再建準備運動が行われて居た」と発言しています。そして、四四年五月二○日には「改造社・中央公論社内左翼グループ並に細川を中心とする党再建準備会」に関係したとして、小野康人・相川博・木村亨さんたちが起訴されています。
 話は少し前後しますが、このころ雑誌の統制の面では、それまでの陸軍報道部は後景に退いて、情報局が全面に出てきます。黒田秀俊さんの『昭和言論史への証言』には「中央公論・改造両社の解体はふつうには、情報局第二部久井忠雄出版課長、同金井元彦検閲課長・内務省警保局今井久保安課長らの手によっててくわだてられ、情報局の部長会議にはかったうえで、村田次長、天羽総裁を経て閣議に上程されたものと考えられ」とあります。
 四三年一一月四日閣議決定「出版事業整備要綱」(情報局)では「出版事業ニ於ケル人的、物的総力ヲ挙ゲテ戦意ノ昂揚、戦力ノ増強並ビニ対外宣伝ノ強化ニ遺憾ナキヲ期スル」「出版部門毎ニ適正ナル規模並ニ適正ナル事業体数又ハ誌数ヲ定メ之ヲ目標トシテ合同又ハ買収ニ依ル統合」として、四四年一月に総合誌は「公論」「現代」「中央公論」に統合されました。また黒田『昭和言論史への証言』には「中央公論は、公論、現代という軍国主義的御用雑誌といっしょにではあったが、とにかく総合雑誌としてのこることになった。ただし、そのためには婦人公論の廃刊という大きな犠牲を払わなければならなかった」「企薬整備にともなう雑誌の整理統合にさいして、総合雑誌が三誌にかぎられることにきまると、中央公論・改造を蹴おとそうとするうごきは眼にみえて活発になった。野村重臣氏のごときは、『読書人』(特集「総合雑誌批判」昭和十九年二月)に『出版事業整備と総合雑誌批判』と題する一文を寄せ、中央公論と改造は自由主義的伝統にたつものであるから、このさい廃刊さるべきであると主張し」とあります。
 そして、四四年六月ごろの情報局「雑誌緊急重点指導要領(案)」では「該三原則(@敵愾心の徹底的昂揚、A生産の飛躍的増強、B明朗闊達ナル戦時生活ノ確立)ヲシテ決戦即応ノ重点指導ニ按配スルノ要今日ヨリ急ナルハナシ」として、総合雑誌三誌の論調を一元化しようという動きが強まりました。そして中央公論への七月一〇日の実質的解散命令となるのです。黒田さんの前掲書によれば、翌日の七月一一日に安藤紀三郎内相は「戦争遂行のじゃまになる反戦、厭戦思想の拠点になるからだ」と言っています。
 『特高月報』四四年八月分の「神奈川県に於ける左翼事件の取調状況」では、改造社について「昭和三年頃には編輯部並に出版部の中枢は共産主義者を以て固めらるるに至り、茲に改造の所謂左翼伝統の基礎は確立せられ、以来山本社長の社会主義的編輯経営方針に育成せられ、同志より同志への継承により今日まで発展し来たり」とし、中央公論社については「昭和五牟頃より小森田一記・畑中繁雄等の共産主義分子が逐次入社し、昭和十二年頃には十数名の共産主義者が秘かに緊密なる連携を保ちつつ、『中央公論』其の他の雑誌出版物を通じて共産主義思想の宣伝啓蒙に努め来りし」としている。
 このように横浜事件は、戦争の遂行のために、その「じゃま」となるとされたものを、さまざまな不当な「理由」をつけてデッチ上げる流れのなかでおこされたものであったことは明白です。


第77回メーデーにあたって

   
労働者は団結して憲法改悪阻止、反戦、生活防衛の闘いにたちあがろう!

                        
労働者社会主義同盟中央常任委員会

 小泉政権の五年間は、日本の状況をいっそう悲惨なものにしています。
 小泉は、アメリカ帝国主義ブッシュ政権を積極的に支持してイラク侵略戦争に参戦しましたが、ブッシュが開戦の口実にした大量破壊兵器の存在はデマであることが確認されました。すでにブッシュのイラク「早期民主化」構想は完全に破綻しています。これまでにアメリカと多国籍占領軍、イラクのカイライ政権・軍・警察は数十万にも上る民衆を虐殺しました。いまイラクをはじめ中東諸国人民の反米・反占領の戦いを前して、米兵の戦死戦傷者は増え続け、国家財政赤字も急速に膨らんでいます。こうした状況で「嘘つき大統領」ブッシュは米国内でも急激に支持を低落させています。とくに軍事産業を背景に戦争を拡大させている国防長官ラムズフェルドに辞任をせまる声は、米支配階級の中からも噴出してきています。今年の秋には中間選挙を控え、いまのままでは共和党の敗北は必至です。ブッシュ政権は頻繁な人事異動を行って目新しさをだそうと努めていますが、ラムズフェルドの解任はブッシュ政権のイラク戦争、「反テロ」戦争の失敗を自認することになり、それは極めて難しい選択になります。そして、多国籍占領軍からの脱落が続いています。イタリアでも親米保守のベルルスコーニ政権が選挙で敗北し、イタリア軍のイラクからの撤退の時期ははやまることになりました。アメリカは、唯一の超大国になりあがったことに慢心し、自分に従わないすべての国・勢力を叩き潰そうとしていますが、このことは、戦争が利益になる軍需産業や「復興」にかかわる企業その他の大資本のためのものであり、ブッシュ政権は、ブッシュ自身をはじめ、チェイニー副大統領、ラムズフェルドなどがそれらの代弁者になっているのです。
 しかし、アメリカは行き詰まっています。長期的にはアメリカ衰退しつつあります。それをブッシュ政権があえて無謀なことをやったためにその衰退のテンポを速めたのです。苦境にたつブッシュは、イラク戦争での「泥沼化」をイランなどへの戦争の拡大によって支持率の拡大を狙いいっそうの冒険に出て来るかもしれません。だが、アメリカはもはや一国で拡大する侵略戦争体制を支えることは出来ません。そこから同盟国「重視」が強調されているのですが、イラクから撤退する国が増える中で、一部の忠実な親米派に期待が集中されてきています。
 日本の小泉政権は、世界の多くの国々が選んでいる道とは逆に、アメリカ・ブッシュ政権の戦争体制に自らを積極的に縛りつけようとしているのです。
 小泉政権は、イラクに自衛隊を派兵し、イラクの人びと虐殺し支配する体制の一翼を担いつづけています。五月にもイラクからの撤退が開始できるという日本政府の当初の目算は不可能となり、アメリカにしたがって長期の派兵ということになりました。反戦運動が主張してきた自衛隊がイラクの人を殺し、自衛隊員が死傷するという場を小泉政権みずからが作りだしました。この責任は重大です。
在日米軍再編は米軍の世界的な戦争体制の重要な砦・出撃拠点として日本をいっそう有効に活用しようとするものですが、人的、物的、財政的な被害と負担は一段と重くのしかかってきています。小泉政権は、日本各地の多くの人びと、そしてアジアの国々の反対の声を無視して、アメリカと日本の一部の大企業・軍閥の利益のために、自衛隊を米軍の一翼として機能させる日米軍事同盟強化を推進しています。これが小泉らが憲法九条を公然と踏みにじって、再び戦争のできる国家づくりを強行してる根拠です。自民党の新憲法試案では露骨に軍隊の保有、海外派兵が主張されていますが、これは日本財界の意思でもあります。
 自民党と公明党は、教育基本法改悪法案と改憲のための国民投票法案を今国会に上程しようとしています。連休明けの五〜六月は国会を巡って、改憲阻止に向けた断固たる闘いが展開されなければなりません。
 小泉政権は、アジアでの外交的孤立を深めています。小泉は、東条英機などA級戦犯を祀り、侵略戦争を美化し、軍国主義復活の聖地・発信基地となっている靖国神社への参拝をつづけるなど犯罪的な行為によってアジア諸国・人民の怒りをまきおこしています。日本支配層の悲願であった国連常任理事国入り問題でも、G4を構成してきたブラジル、ドイツ、インドなどとも決裂して頓挫し、日本の政治大国への野望は完全に破綻しました。
 小泉政権は、日本を改憲と危険な戦争の道へ進ませ、同時にアジアとの敵対関係を強めています。
 メーデーのこの日を契機に、労働者は団結し、国内と世界の多くの人びととの連帯をひろげて日本の軍国主義化・憲法改悪阻止の闘いを断固としておしすすめて行く決意をかためましょう。
 小泉内閣は、社会的階級的な格差をすさまじい勢いで拡大しています。グローバリゼーションと新自由主義政策の下で、ひとにぎりの大企業家が巨大な富を独り占めにしています。ホリエモンはその典型でした。しかし、彼以上の悪人が政界・官界とむすびついて「濡れ手で粟」の悪事を続けています。竹中平蔵総務相など小泉政権の内部・周辺にはそうした腐った連中がうようよしています。一方で、失業者や不安定雇用労働者が増大しています。日本資本主義は、企業での労働者の抱え込みや旧来の自民党政治でのさまざまな補助金などのばら撒きで、労働者・勤労大衆を体制に統合し、それが社会を「安定」させてきたといわれてきました。それがいま小泉政治によって大きく崩されているのです。保守支配層は自らの支持基盤をも破壊しているのです。小泉の「自民党をぶっ壊す」というのは一面で実現しました。しかし、このことはそうせざるを得ないほど日本資本主義が実は行き詰まっていることのあらわれです。
 いまこそ、労働者は立ちあがるべきときです。労働組合の闘いが求められている時機なのです。
 たしかに労働者・労働組合は苦しい状況にあります。しかし、ブッシュ政権は、すでに危険水域に入りつつあります。小泉政治もそのおわりが始まりました。四月二三日の沖縄市、岩国市の首長選、また衆院千葉補選などの結果がその兆しです。
 労働者のみなさん! 労働組合運動、改憲阻止・反戦闘争の前進を勝ち取り、そしてその実現を保障する社会主義勢力の再編・統合を具体化し、大きな飛躍を勝ち取りましょう。
 全世界のプロレタリアは団結しよう!全世界のプロレタリアと被抑圧人民、被抑圧民族は団結して、共同の敵に反対しよう!

二〇〇六年五月一日


複眼単眼

   
海兵隊のグアム移転費負担にまつわる怪と醜

 三月二三日の額賀防衛庁長官とラムズフェルド国防長官の階段で日本側が約束させられた六〇億九〇〇〇万ドルの在沖縄米海兵隊グアム移転費は一ドル一一六円換算で七〇六四億円にのぼる。総額一〇二億七〇〇〇万ドルの五九%にあたるということだ。
 なぜかくも大金を日本側が巨額の税金まで投入して負担しなければならないのかという根本的な問題がある。移転費等というのは米国が負担すべきものだ。とりあえず議論のためにそれはさておきということにして話を進めてみる。
 だいたい五九%という数字がうさんくさい。当初喧伝された一〇〇万ドルからいえば六〇・九%になるが、今回、総額が一〇二億なにがしに変化したので六〇%を割った形だ。誰でも印象としては六〇%と五〇%台では大違いだから、世論操作として、総額を少し水増しすることで日本側の負担を五〇%台に押さえたのではないかと疑いたくなるのだ。
 問題はこの総額が全て米国側による見積もりであることだ。
 騙されてはいけない。移転先のグアム側の見積もりが三月二八日付けのグアム紙「パシフィック・ディリー・ニュース」によると、海兵隊七〇〇〇人以上、家族と合わせて一七〇〇〇人以上、そのためのインフラ整備費用総額は、昨年の「グァム経済会議」でグアムの当局者が「今後、一〇〜一五年で一〇億ドル」と明らかにしたと言っているのだ。
 なんということだ。これがホントとしたら、まさにぼったくりではないか。
 額賀防衛庁長官はなんの根拠もない移転費総額をのまされてきた。額賀は口を開けば沖縄の負担軽減のためなどと言うが、沖縄のためではなく、米国のためであることは明らかだ。
 海兵隊は米国の再配置戦略の必要で移転するのであって、沖縄の住民のために移転するのではないのだ。沖縄をダシにして米国にこのような膨大な献金をするということは絶対に許せない。
 それでなくとも、日本は在日米軍のために「思いやり予算」等と称して、多額の税金を支払い続けている。一九七九年以来、その総額は二兆円を超えているのだ。どこまで米国のためにお金を投入すればいいというのか。その資金で米国は戦争をやっているようなものだ。私たちの税金が米国の戦争に使われているとしたら、私たちは被害者であるだけでなく、加害者でもある。黙っているわけにはいかないのだ。 (T)