人民新報 ・ 第1201号<統合294(2006年5月15日)
  
                  目次

● 小泉反動政治と対決し、教基法改悪法案 国民投票法案 共謀罪法案をつぶせ

● 生かそう9条のちから  5・3憲法集会が成功

● 第77回日比谷メーデー  団結して、生活と権利、平和と民主主義のために闘おう

● 連合・全労連の中央メーデー祭典ひらく  「自由と生存のためのメーデー」へ弾圧

● イラク第一〇次派兵に反対し防衛庁抗議行動  自衛隊はイラクへ行くな! すぐ帰れ! 殺すな! 殺されるな!

● 「昭和」と天皇制の歴史的責任を問う

● ピースサイクルおかやま県北  プルサーマルで伊方原発に申し入れ

● 日本外交の「失われた5年」と上海協力機構

● Kodama  /  4・28処分から二七年

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  一枚の地図が教えてくれること、想うこと



小泉反動政治と対決し、教基法改悪法案 国民投票法案 共謀罪法案をつぶせ

 いま、小泉政治の総仕上げとして、さまざまな反動攻撃がかけられてきている。小泉政治との闘いを強め、教育基本法改悪案、九条改憲のための国民投票法案、市民運動や労働運動の圧殺を狙う共謀罪新設法案をはじめ反動法案阻止のために全力をあげよう。
 教育基本法では、四月二八日、改悪法案を閣議決定した。文部科学省は五月八日に小坂憲次文科相を本部長とする教育基本法改正推進本部が初会合を開き、一一日には法案が国会に上程される。
 国民投票法案については、衆院憲法調査特別委員会で自公与党と民主党の理事が、共同提案を目指して調整を進めてきた。だが、投票年齢や投票方式などについて意見の違いが克服できず、また自民党の別働隊であった民主党の前原誠司前代表にかわった小沢代表が与党との共同提案を拒否する考えを示していることによって流動的な事態となった。民主党の協力を得るための「妥協」をつづけるのか、それとも与党だけで法案を提出するのか、与党内でも意見は分かれている。
 情勢が緊迫しているのは共謀罪新設法案である。この法案では、自公両党は与党案を再修正した案をまとめ、民主党に示した。民主党法務部門会議は、与党の提示について一定の評価をしたものの、民主党修正案とは隔たりがあるとして受け入れない方向で一致した。しかし、衆院法務委員会での強行採決の危険性は高く、ここ数日中にも委員会採決の可能性が高まっている。共謀罪については、ここに来て、マスコミでも報道されるようになった。その危険性が、ようやく広く知られるようになりつつあるのだ。また、九日の法務委員会の参考人質疑では、連合の高橋均事務局次長などが与党修正案に反対の立場で意見を述べた。共謀罪は、労働組合運動の自由を奪うもので、連合にも法案に反対する方向がでてきた。日本弁護士連合会も法案反対のキャンペーンを強めている。

 今まさに、闘いは正念場を迎えている。国会周辺では、さまざまな運動・個人が小泉の反動政治に反対の声をあげている。
 小泉は昨年の総選挙での与党圧勝という数の力を背景に、一気に懸案の法案を成立させようとした。しかし、小泉政治は、自民党の利益ばら撒き構造が財政赤字をもたらし、構造改革によって旧い構造を断ち切ると言って、支持をあつめた。小泉が財政を基盤とする利益のばら撒きにかえて、ばら撒いたのは、空虚なワンフレーズの言説による一時の夢であった。小泉政治の「強さ」は、世論の支持にあるが、その効果は限界に近づきつつある。その上、すでにポスト小泉の総裁に誰がなるのか、その政策は現在の小泉政治といかに違うのかなどがマスコミの主題となるようになって、小泉政治のおわりが顕在化してきたのである。

 憲法改悪、愛国心を強調し国家と企業そして戦争のための喜んで死ぬことの出来る人づくり、国家支配層への一切の批判を封じ治安弾圧体制。いま争われている三つの法案は一体のものであり、民主主義を否定するものだという理解が急速に広がりつつある。そして、竹中経済政策によって切り捨てられ、犠牲を押し付けられている人びとの不満の声が吹き出し始めている。
 いまこそ、多くの人びとの小泉政治に反対する力を大きく合流させる時であり、三悪法案をつぶすために全力をあげていこう。


生かそう9条のちから

    
5・3憲法集会が成功

 政府・自民党による改憲策動が強められる中で五月三日の憲法記念日を迎えた。改憲とりわけ九条を変え、米軍の世界戦略に自衛隊を組み込み、日本を戦争の出来る国にするために小泉はその残り少ない任期を最大限に使おうとしている。教育基本法改悪案につづいて九条破壊のための国民投票法案も上程されようとしている情勢の中で、大きく力を結集して九条改憲阻止の最大限に幅広い反対運動を展開していこう。

 五月三日、日比谷公会堂で、「憲法改悪のための国民投票法はいらない」、「とめよう『戦争をする国』づくり 生かそう9条のちから」を掲げて、「二〇〇六年 5・3憲法集会」が開かれ、四〇〇〇人が参加した。主催の実行委員会は、憲法改悪阻止各界連絡会議、女性の憲法年連絡会、「憲法」を愛する女性ネット、平和憲法21世紀の会、憲法を生かす会、平和を実現するキリスト者ネット、市民憲法調査会、許すな!憲法改悪・市民連絡会で構成されている。
 はじめに、実行委員会を代表して、許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さんが開会のあいさつ。
 小泉内閣は、生活破壊、教育基本法改悪、国民投票法案、共謀罪新設、防衛庁の省昇格、在日米軍再編、日米安保再々定義、新々ガイドライン、派兵恒久法など、日本をアメリカとともに戦争の出来る国にしようとする政策を推し進めている。しかし、こうした小泉の狙いには憲法とりわけ九条が障害となっている。九条の価値は、単に日本国内だけでなく、東北アジアと全世界において確認されるべきものだ。最近の読売新聞の世論調査でも、九条を変えるべきだとしているのは三〇%台で、九条改憲反対は圧倒的に多い。こうした声をまとめるのが私たちの任務だ。この仕事は非常に大きなもので、私たちはこれまでの五月憲法集会の一日共闘を超えて、小泉内閣とくに国民投票法案を阻止する大きな運動つくっていく必要がある。今日の集会は、韓国の市民運動、共産党や社民党、さまざまな人が政治的な立場を超えての発言で開かれるが、運動をさらに大きくひろげて、改憲派の野望を打ち破っていこう。
 つづいて各界からの発言。
 「日本国憲法について思うこと」と題して『映画日本本国憲法』をつくった映画監督のジャン・ユンカーマンさん。
 私は中東でインタビューしたが、その地域の人たちは日本にがっかりしている。日本人は、ヒロシマ、ナガサキを経験して戦争のムダ、残酷さを経験し、二度と戦争はしないと世界に誓ったことを知っている。憲法九条は世界でも有名であり、日本国民の財産であると同時に、世界の財産でもある。それを変えようとしているからがっかりしているのだ。しかし、さまざまな運動が各地で闘われて国境を越えて平和な世界をつくる希望がうまれている。私は、そういう時代が来るのは時間の問題だと思っている。
 「教育基本法について」は、教育基本法「改正」反対市民連絡会の東本久子さん。
 大日本帝国憲法と教育勅語は一体のものだった。国のため、天皇のために死ぬことを喜ばなければならなかった。平和憲法と教育基本法も一体であり、教育基本法は準憲法とも言われている。憲法にのっとらない教育基本法「改正」は憲法違反だ。東京都では日の丸・君が代の強制で四〇〇名もの教職員が処分されている。戦争へ行かせるための愛国心・教育基本法改悪に反対する地べたから巻き起こるような運動を作り出していこう。
 「基地間顕について」は、新横田基地公害訴訟団の大野芳一さん。
 東京高裁は、横田基地の夜間早朝訓練差し止め裁判で、訓練を行うのはアメリカだとして、判断を示さず、免罪する判決をだした。これは憲法三二条の憲法を受ける権利を否定するものだ。米軍再編の中で横田基地は強化され、日米の司令部が一体化され、攻撃の対象となり危険性はいっそう増している。
 「グローバル9条キャンペーン」について、日本国際法律家協会の笹本潤さんが発言した。
 先ごろフランスの弁護士と話した時、かれは日本の憲法を外国の市民も支持し、そして非武装の世界を実現したい、と言った。アフリカのNGOは、九条か変えられれば、軍事費が増え、そしてアフリカへの援助が減少すると言っていた。そのほかの国ぐにでも武力によらない平和の実現のため、九条の意義はますます大きくなっていると言う声が広がっている。
 コスタリカで、ブッシュのイラク戦争を支持した政府の方針を憲法違反だと訴えて、コスタリカの戦争支持をやめさせたロベルト君も「憲法九条スゴイ!」と日本語であいさつし会場から大きな拍手を受けた。
 環境問題評論家で立正大学名誉教授の富山和子さんがスピーチ。
 環境破壊の最大のものは戦争だ。例えば、戦争末期には石油の替わりに、松のヤニなどを使うため木々は根こそぎにされた。それを戦争が終わって山村の人たちは緑に変えた。それは、もう戦争はないという希望に燃えていたからだ。土地や水などは労働の産物だ。平和な社会・生活の土台にはみな九条がある。外から見ても、九条は新しい日本の顔になった。日本は生まれかわり、信用を取り戻すことが出来た。朝鮮、ベトナム、湾岸の戦争でも殺し殺されることはなかったが、目先の小さな利益のために大事なものが壊されようとしている。
 韓国NGO『平和ネットワーク』政策室長の李俊揆(イ・ジュンキュ)さんもスピーチ。
 私たちは、韓国の市民社会、市民運動に日本の憲法改正問題について関心をもつように知らせている。日本の平和憲法の理念について知らせ、拡げていくことは韓日関係を考えていくうえで非常に重要だ。九条は日本、東アジア、世界のために再評価される必要がある。私たちみんなが、平和の実現という夢をみれば、それが実現するようになる。
 志位和夫・日本共産党委員長、福島みずほ・社会民主党党首は、改憲に反対する大きなうねりをともに作り出していこうと述べた。
 集会アピールを拍手で確認し、銀座パレードに出発した。

5・3憲法集会アピール

 日本国憲法は、悲惨な戦争と専制政治への反省から、人々の平和と民主主義への願いをこめて出来上がったものです。その中心である「戦争の放棄・戦力不保持」を定めた9条によって、日本は戦争で一人の人間も殺すことなく、一人の戦死者も出さずに今日を迎えています。
 しかしながら、今日、武力攻撃事態法などの戦争準備法の整備が着々と進められ、全国の自治体では国民保護計画策定の手続きが進められています。9条を変え、日本を「戦争する国」にするための動きはきわめて速く、重大な局面を迎えています。昨年秋には自民党の「新憲法草案」が示され、憲法を改悪するための「国民投粟法案」が連休明けにも国会に上程されようとしています。さらに、与党の自民党・公明党によって憲法改悪のための一連の流れである「教育基本法」改定案も開会中の国会に提出されようとしています。
 しかし、各種の世論調査に共通して表れているように、9条を変えることには圧倒的多数の人びとが反対しています。「二度と戦争はゴメンだ」という思いは若い世代の人びとにも引き継がれ、広く日本社会に定着しています。また、憲法9条をまもる私たちの運動には、アジアをはじめ世界の人々からの熱い期待が寄せられています。
 五九回目の憲法記念日の今日、この憲法集会に集った私たちは、全国各地で同じ思いで集会を開いている多くの人々と心を合わせ、憲法改悪のための国民投粟法の成立を全力で阻止し、9条を生かし、平和をまもるために、さらに力強く運動を進めていくことを決意します。

二〇〇六年五月三日


第77回日比谷メーデー

  
 団結して、生活と権利、平和と民主主義のために闘おう

 五月一日、日比谷野外音楽堂とその周辺で全労協などによる実行委員会主催の第七七回日比谷メーデーが開かれ、一万五千人の労働者が参加した。今年の日比谷メーデーは、「働く者の団結で生活と権利、平和と民主主義を守ろう」をメイン・スローガンに、「リストラ・合理化反対、労災職業病・過労死絶滅、職場に労働基本権を確立し、すべての争議に勝利しよう」、「イラクへの自衛隊派兵に反対し即時撤退を求めよう。あらゆる戦争反対、改憲のための『国民投票法案』の上程をはじめとする改憲攻撃や共謀罪の新設策動を阻止し、憲法擁護・第9条を活かす闘いを推進しよう」などを掲げて、闘われた。

 主催者を代表して国労東京地本の阿部力委員長があいさつ。
 福知山線事故、ライブドア、耐震偽装などは小泉政権が進めてきた民営化・規制緩和路線の破綻を明らかにした。労働者の力を結集して、小泉政策に反対し、戦争国家づくり・憲法改悪阻止、JR一〇四七名の解雇撤回などの闘いを進めていこう。
 都労連の増渕静雄委員長は、労働者の団結した力で、労働者にかけられてきている攻撃に反撃していこう、統一メーデーを実現しようと述べた。
 社会民主党の福島瑞穂党首は、政府与党は、今国会に教育基本法改悪案、国民投票法案、共謀罪新設法案など悪法を次々に上程しようとしているが、出来る限り多くの人びとの力を合わせて絶対に阻止しなければならない、ともに闘おうとあいさつした。
 日比谷メーデーには、韓国民主労総、大阪中ノ島メーデー、中央メーデー実行委員会などからメッセージが寄せられた。
 つづいて三人から決意表明が行われた。
 フォルム・コンドルユニオンの中程モニカさん。
 今日は労働者の権利・団結のための日だ。労働者は八時間労働制を要求して立ち上がり、世界の労働者はその伝統を守って闘い続けている。私は移住労働者だが、移住労働者は日本の労働者とともに日本の産業・社会を支えている。しかし、日本の企業は、リストラやサービス残業などで労働条件をさらに切り下げてきている。私たち労働者は、声をあげ、権利を主張して闘おう。
 均等待遇アクション21の柚木康子さん。
 均等法の「改正」が参議院で可決し、衆議院に来ている。私たちは、仕事と生活の両立をもとめ、間接差別の限定列挙とコース別雇用管理に反対してきた。しかし、私たちの要求は実現せず、法案は非常に問題が多いものとなっている。働く女性の半分が非正規雇用となっている状況で、間接差別の撤廃を求めて闘いを強めていかなければならない。
 国鉄闘争団全国連絡会議の小野浩二さん。
 二〇年に及ぶ闘争の中で、既に多くの仲間が亡くなった。しかし、この苦しい闘いでは、国鉄に組合差別があり、一〇四七名問題の解決の責任は、国鉄を継承した鉄道運輸機構にあるという主張の正しさが明らかになった。一〇四七名は今年の二月一六日、四月四日の集会で勝利のための前提である団結を回復した。政府。鉄道運輸機構は一日も早く交渉の場に出てくるべきだ。
 集会アピール(別掲)を確認し、藤崎良三全労協議長の音頭で団結がんばろうを行い、土橋、鍛冶橋の二つのコースに分かれてデモ行進を行った。

第77回日比谷メーデー・アピール

 本日、私たちは第77回日比谷メーデーを開催しました。
 メーデーは、全世界の労働者が生活と権利をかけて闘ってきた「統一行動日」であり、歴史と伝統のある「働く者の祭典」です。
 06春闘は、企業が史上最高の純益を上げる中、反転攻勢の春闘として、社会構造の二極化、低賃金構造と不安定雇用、生活の安全と安心の破壊に対する闘いとして職場・地域を貫いて闘ってきました。しかし、大手民間組合による五年ぶりの賃上げも低額回答、経営側は個別対応で横並びべースアップを否定しました。
 小泉政権は、改革の総仕上げとして「小さくて効率的な政府づくり」を推し進めています。公務員労働者の賃金・労働条件の切り下げ、公務公共サービスを資本の食い物とするパブリック政策の崩壊は、自己責任・自助努力政策として労働者民衆を襲い、格差社会、労働現場の重層化に拍車をかけています。また、少子化対策に外国人労働者を選別して利用する考え方を示しており、外国人労働者の権利確立が問われています。
 労働分野の規制緩和は、低賃金・不安定雇用労働者を増加させ、生活不安、将来不安に労働者民衆は直面しています。正規労働者も、慢性的な長時間労働に伴う肉体的・精神的健康破壊によって、メンタルヘルス障害の多発となっています。
 資本による効率一辺倒の攻撃は、人間たる労働者をコストを高める弊害と見なしており、人間を排除する社会がまかり通ろうとしています。労働現場から労働者がないがしろにされたとき、人間の絆は断ちきられ、恐るべき「非人間社会」を招きます。JRの悲惨な事故、耐震偽装建築、BSE問題等、人間が生きていくうえでの安全・安心の崩壊は、競争社会と人間を顧みない効率化がもたらした小さな政府路線に対する警告です。
 また、小泉政権は、日米軍事同盟の再編強化、教育基本法の改悪、憲法改悪、共謀罪の新設等、戦争とファシズムへの道を想起させる政治の反動化に大きく踏み込んでいます。
 私たちは、未組織労働者・非正規雇用労働者の低賃金と労働条件全体の改善を高々と掲げ、労働者の生活と権利を守る闘い、平和と民主主義を確立する闘いに、すべての労働者の総団結のもと、決起するものです。
 全世界で深刻な問題となっている地球温暖化や自然環境の破壊、飢餓問題や社会的不平等の拡大等を促進させているのは、市場原理主義優先の規制緩和・新自由主義グローバリゼーションであり、自己責任、自助努力を強制する企業利益優先の社会です。
 この企業利益優先のグローバリゼーションを推進するWTO、FTAに対し、世界的な反対運動が広まっています。
 私たちは、公平・公正な社会を求め、共生と共存、平和と民主主義を掲げ、すべての労働者民衆、そして戦争に反対する全世界の人々と手をつなぎ、ともに闘っていかなければなりません。
 私たちは、メーデーを「闘いの広場」として位置付け、統一メーデーの実現を求めてきました。厳しく、困難な時代だからこそ、労働者の幅広い結集と一層の団結と闘いが求められていることを改めて確認し、第77回日比谷メーデーの成功を宣言します。

二〇〇六年五月一日

第77回日比谷メーデー実行委員会


連合・全労連の中央メーデー祭典ひらく

     
「自由と生存のためのメーデー」へ弾圧

 連合のメーデー中央大会(主催者発表で約四万三七〇〇人が参加)は、四月二十九日に東京・代々木公園で開かれた。今年もデモ行進は無く、さまざまなNGOなどの出店が出ていた。 
 高木剛連合会長は「格差社会がもたらす負の側面からの脱却」を訴え、高額所得者や金融資産への優遇措置を温存したままもっぱら給与所得者を狙い撃ちする形で歳入を増やそうとする政策には賛同できないとして対決姿勢を強調するあいさつ。
 小沢一郎民主党代表は、政権交代の必要を強調し、福島瑞穂社民党党首は、格差拡大、平和と人権を脅かす政治を変えよう、と述べた。
 大会で採択された「連合&NGO・NPO共同メッセージ」では、「働く者の雇用と権利を守り、労働条件の向上と安心・安全な市民社会の実現」を目指すとし、メーデー宣言では「本中央大会を機に、NGO・NPOとの連携と、働く者の連帯で『平和・人権・労働・環境・共生』に取り組むとともに、労働を中心とする福祉型社会と自由で平和な世界を作ることを宣言」した。
 午後からは、「メーデー パート・契約労働者の集い〜本音でトーク『つくろう!格差のない社会』」が開かれ、中野麻美弁護士、田賀克枝・コープさっぽろ労働組合(サービス・流通連合)副委員長・パート部会長、鴨桃代・全国ユニオン会長、高木連合会長が発言した。
 個人の収入格差が拡大し、その要因の五割強が、パート・派遣労働など非正規雇用の増加にあり、非正規労働者の雇用保障の強化を訴える発言が続いた。

 全労連などの実行委員会による第七十七回中央メーデー式典(主催者発表で四万一千人が参加)は、五月一日に代々木公園で開かれ、憲法・教育基本法の改悪を許さず、庶民増税と消費税の引き上げに反対しようなどのメーデー宣言を採択し、三コースに分かれてデモ行進した。

 四月三〇日、原宿・渋谷で「自由と生存のためのメーデー06」がおこなわれたが、デモ行進で三人の参加者が警察の不当な弾圧によって逮捕された。警察は、デモの申請時点では認めていたサウンドカーの使用に不当な言いがかりをつけ、DJを含む二人を逮捕した。そして、参加者が掲げていたアドバルーンを奪い、それを取り戻そうとした一人を逮捕した。
 この弾圧に対して多くの批判の声があげられ、WORLD PEACE NOWは、「表現の自由、デモの権利の破壊を許さない」との声明を出した。


イラク第一〇次派兵に反対し防衛庁抗議行動

   
 自衛隊はイラクへ行くな! すぐ帰れ! 殺すな! 殺されるな!

 五月七日、第一〇次イラク派兵として陸上自衛隊東部方面隊の第一二旅団(司令部・群馬県榛東村)を主軸とする約五〇〇人のうち第一陣約一四〇人が、関西空港から民間機でイラク南部サマワに向けて出発した。派遣期間は約三カ月間になる見通しだ。
 日本政府は当初五月からの撤退を予定したが、イラクの情勢は、いよいよ反米抵抗の激化と内戦状態で「泥沼」化し、アメリカ・ブッシュ政権は、陸上自衛隊の早期撤退を許さず、一〇次派兵となった。今度も政府は、早ければ六月から撤退準備に入り、七月末に完了する方向で調整していると言われるが、撤退の条件は反米抵抗運動の圧殺とイラク新「政府」の発足であるが、その可能性は小さい。また、航空自衛隊はイラクでの米軍作戦支援の活動を拡大している。 一方、三二〇〇名とアメリカ、イギリスにつづく派兵数の韓国は一〇〇〇名の削減の検討に入り、総選挙で親米政権が下野したイタリア、地方選で大敗北したイギリス・ブレア政権もイラク政策の見直しを迫られている。

五月八日、防衛庁正門前で、新しい反安保行動をつくる実行委員会第]期の主催による「自衛隊のイラク第一〇次派兵に反対し、即時撤退を求める5・8防衛庁抗議行動〜自衛隊はイラクへ行くな! すぐ帰れ! 殺すな!殺されるな!〜」が行われた。この行動は、辺野古への海上基地建設・ボーリング調査を許さない実行委員会による毎週月曜日の防衛庁・防衛施設庁前抗議行動に引き続いて開かれた。
防衛庁前集会では、自衛隊のイラク派兵反対、イラクからの即時撤退のシュプレヒコールをあげ各団体が申入れを行った。申入れを行った団体は、「新しい反安保行動をつくる実行委員会・第]期」、「自衛隊・東部方面隊をイラクヘ行かせるな!実行委員会」、静岡の「人権平和浜松NO!AWACSの会、イラク派兵違憲訴訟静岡原告団浜松、冨士を撃つな!実行委員会」、愛知の「有事法制反対ピースアクション」、「しないさせない戦争協力・関西ネットワーク、関西共同行動、泉州沖に空港を作らせない住民連絡会、良心的軍事費拒否の会・関西グループ、靖国参拝違憲アジア訴訟原告団・有志」、「ピースリンク広島・呉・岩国」。

自衛隊の新しい反安保行動をつくる実行委員会・第]期の申入書


日本政府は、四月二八日、陸上自衛隊第一〇次復興支援群のイラク南部サマーワヘの派兵を命令した。五月から新たに派兵されるのは、東部方面隊第一二旅団を中心とする約五〇〇名の部隊である。このうち第一派の約一四〇名が昨日五月七日イラクに出発している。この命令に先立つ二一日には、「テロ対策特別措置法」の基本計画を更に本年一一月まで延長し、海上自衛隊のインド洋・アラビヤ海周辺海域での他国軍艦に対する洋上補給活動を継続させる閣議決定も行った。〇四年一月のイラク派兵開始にあたっては、政府中枢の防衛をその任務とする東部方面隊を派兵対象としないとしてきた防衛庁は、現在、その第一師団を第九次隊としてイラクに投入しており、今回の第一二旅団の派兵で、陸上自衛隊は、全ての師団がイラク占領軍の一翼を担うことになる。
この間、政府内部では、現在派兵されている第九次隊で陸自のイラク派兵を終了させることを検討した模様だが、イラク国内では、国民議会が四月二二日にジャワド・マリキ氏を首相に任命したものの、依然として「正式政府」発足の先行きは不透明なままであり、その国内状況は、内戦状態にあると伝えられるなど、自衛隊の撤退を政府が決断できずにいる。
これは、日本政府がアメリカのイラク攻撃の正当性を支持し、「人道復興支援」なる美名のもと、憲法をも無視して「対テロ戦争」の「有志遵合」に参加したことによるものであり、その責任は重大である。もとより、このイラク戦争が国際法に反するものであり、その攻撃の根拠とされた大量破壊兵器がイラクには存在しなかったことをアメリカですらすでに認めていることからしても、政府は、イラク派兵の誤りを認め、すでに撤兵を開始しておかなければならないものであった。
不当な軍事侵略がイラク民衆を大量に殺戮し、それが抵抗を呼び起こし、〇三年三月の開戦以来の米兵罪者数もすでに二四〇〇人を超えている。陸自が駐留するイラク南部は、比較的平穏とされているが、四月二七日には、ナーシリヤで道路脇に仕掛けられた爆弾が爆発、イタリア兵三名、ルーマニア兵一名が死亡している。これまで、陸自は政府開発援助(ODA)資金を使い、ムサンナ州民を雇用することで、その安全をかろうじて確保してきた。しかるに激化するイラク国内の宗派対立は、部族間対立と相まって、これまでの<安全神話>は打ち砕かれつつある。
他方、政府は、五月一日、日米安全保障協議委員会(2プラス2)で在日米軍再編について最終合意し、「共同発表文」と「ロードマップ(行程表)」を公表した。合意は、キャンプ座間や横田墓地に日米司令部を併存させる一方、全国で基地の共同使用を推進することにより、米軍の世界戦略を日本政府が共有し、軍事行動の日米一体化を実現しようとするものである。「共同発表文」にあるとおり、日米の「同盟関係における協力は新たな段階に入る」ものに他ならず、断じて容認できるものではない。自衛隊のインド洋・アラビア海、イラクヘの派兵そのものが、この<再編>の実質的な先取りである以上我々は、今回の第一〇次イラク派兵に反対し、陸・海・空自衛隊の戦地からの即時撤退を要求する。
以下、申し入れる。
一、陸上自衛隊のイラクヘの第一〇次派兵を中止せよ。
一、イラクに派兵されている陸上・航空自衛隊の全部隊を即時撤退させよ。
一、「テロ対策特別措置法」の基本計画延長を中止し、インド洋アラビア海周辺海域から陸上自衛隊艦船を即時撤退させよ。
一、 日米安全保障協議委員会での合意を撒回し、在日米軍基地の米国本土への全面撤退を実現せよ。


「昭和」と天皇制の歴史的責任を問う

 四月二九日、渋谷区立勤労福祉会館で「『昭和』と天皇制の歴史的責任を問う4・29集会」が開かれた。

 講師の女性史研究家の鈴木裕子さんは、戦前のフェミニストたちが天皇制批判を行わず、戦後も戦時下での天皇翼賛の過去に沈黙にしてきたことの意味について報告した。

 大阪女子大学教員の酒井隆史さんは、ネオ・リベラリズムの中での天皇制について講演した。
 いま、小泉はネオ・リベラリズムと新保守主義の接合で構造改革を行ってきているとされているが、ネオ・リベラリズムと新保守主義は互いに異質なもので摩擦が起こっている。ネオ・リベラリズムの下で、ラテン・アメリカで大きな変化が起こっている。フランスでの暴動などもそうだ。ネオ・リベラリズムは統制能力を欠如させ、国家政策にはなりえない面をもっている。そもそもネオ・リベラリズムには、国家論がない。一言で言えば、それは人間を資本とみなし、教育でも何でも資本・投資という観点から見る。旧リベラリズムでは、除外する部分もあったが、ネオ・リベラリズムでは全面化している。だから、これが新保守主義と結びつくのだが、うまい調整様式は実現できていない。そこで新しい権力のテクニックが必要となる。ここにどう天皇制を位置付けていくのかが問題となってくる。ディズニーランドはおとぎの国のユートピアと言う面とすべてが事前に決定されていて、同時に監視が行き届いているという反ユートピアという面を併せ持っている。そして情動に働きかけてダイレクトにコントロールする機能がある。身体は自由だが、精神は常に働きかけられているということになっている。イデオロギーの終焉が言われているが、イデオロギーは象徴的一貫性・整合性をもたなければならない。しかし、小泉のワン・フレーズ政治には、一貫性などはまるでないが、よくわからないけれど溜飲を下げるような効果がある。これは権力の新しいあり方かも知れない。ブッシュもそうだ。ブッシュにとって、読書する、よく考えるなどは批判の対象で、弱腰ということになる。また、テレビの機能を最大限に利用している。それで、恐怖・不安を煽っていく。経験的な事実から情動的事実への重点の移行だ。

 集会には京都「天皇制を問う」講座実行委員会などからのメッセージが紹介され、沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック、日韓民衆連帯全国ネットワークなどからのアピールがあった。集会宣言を採択し、渋谷デモを行った。

「昭和」と天皇制の歴史的責任を問う4・29集会宣言


 今日は敗戦から六一回目の四月二九日である。私たちは、ヒロヒト天皇の誕生日として国民の祝日とされ、ヒロヒト天皇の死後は「みどりの日」とされたこの日、一貫して天皇制の戦争責任・戦後責任を問う行動を持続してきた。そしてこの「みどりの日」は、来年から昭和天皇を讃える「昭和の日」に変えられることに「改正祝日法」によって決められている(「みどりの日」は五月四日に移動する)。
 私たちは、環境問題に心をくだく「みどりの天皇制」あるいは「平和天皇の昭和」という政治的イメージ操作を拒否する。
 最大の環境破壊でもあった、三百万人以上の日本人の死者、アジアで二千万人を超える外国人の死者を生み出した、あの日本の侵略戦争(アジア・太平洋戦争)の最高責任者ヒロヒト天皇の戦争責任を忘れるわけにはいかない。そして、その最高責任者(制度)の責任を問わずに六〇年間もすごしてしまった戦後責任を自分たち自身の問題として考えないわけにはいかないのだ。
 天皇家に男の子ができないことからはじまった小泉政権の、「女性・女系天皇」容認へ向けて「皇室典範」をかえようという動きは、今、神道(伝統)主義右翼の激しい反発をつくりだした。「万世一系」天皇家イデオロギーの大切さを無視する動きをつくりだした小泉らを<不敬>だという主張が飛び交っているのだ。そして、紀子の懐妊は、男子出産の可能性を示し、小泉政権の動きをストップさせ、神道(伝統)主義右翼が大ハシャギする状況をつくりだしている。
 「皇室典範改正」による「女性・女系天皇」容認路線(男尊女卑に「平等」のベールをかける政策)と、男系主義維持路線(むきだしの男尊女卑イデオロギー)の対立。私たちは、このどちらか一方に加担する意思など、まったく持ちあわせていない。どのように天皇制をうまく延命させるのかといった土俵の上での対立を前に、私たちはその土俵自体を否定する方向を選択する。
 戦争責任・戦後責任を取るということは、私たちが天皇制をなくすこと、すなわち「皇室典範」を廃止することによってのみ可能なのだ。
 敗戦後六一回目の「この日」に、決して忘れてはいけない私たちのこの原則を、あらためて確認する。
 私たちは「昭和の日」も「みどりの日」も祝わない! そして、「男系」であれ「女系」であれ、天皇制はいらない!


ピースサイクルおかやま県北

  
 プルサーマルで伊方原発に申し入れ

 四月二二日、ピースサイクルおかやま県北ルート実行委員会の一五名は、四国の愛媛県伊方町の四国電力株式会社・伊方原発にプルサーマル計画の事前了解の取消などを求める申し入れを行った。


 伊方原発の余剰プルトニウム消化のためのプルサーマル計画の実施にむけて、四国電力は国に原子炉設置変更許可を提出し、伊方町長、愛媛県知事に事前了解願いを出している。
 危険なプルトニウムを使うプルサーマル計画からの撤退は世界的な趨勢である。また、地震列島日本の原発が大事故・大惨事をおこす可能性についてもひろく認識されるようになってきている。今年三月の志賀原発(北陸電力)訴訟での金沢地裁判決は地震国日本の原発の耐震基準の見直しと危険性を認める画期的なものだった。

 県北ルート実行委員会は四国電力伊方発電所の柿本一高所長宛ての要請書で、@金沢地裁の志賀原発運転差し止め訴訟判決の指摘する、原発の耐震性に対する新しい知見の評価まで、プルサーマル計画の原子炉設置変更許可を取り下げ、知事及び伊方町長に提出している事前了解願いを取り下げること、A伊方発電所すべての原発に対し、中央構造線による地震について、これまでの安全審査の想定を超える新しい知見による評価が済むまで運用を休止すること――を求めた。
 申し入れの後、おかやま県北ピースサイクルは、伊方原発反対八西連絡協議会と交流し、伊方原発反対運動の歴史やプルサーマル計画などについてお話を伺った。(岡山通信員・I)


日本外交の「失われた5年」と上海協力機構

 経済同友会は、五月九日に、今後の日中関係への提言をまとめた。それは首脳級の交流の早期再開が必要であり、そのために首相の靖国神社参拝について自粛を求めるものだ。主要経済団体の一つが、はっきりと自粛提言を行ったのは、懸案の中国新幹線網に日本の技術を売り込むことをはじめ対中ビジネスへの悪影響を懸念してのことだ。それに対して、小泉は「商売と政治は別」と突っぱね、八月一五日の靖国参拝についても「適切に判断する」と強行の姿勢を改めていない。
 小泉は、連休中、エチオピア、ガーナなどを訪問し、日本支配層の念願の国連常任理事国入りの支持を取り付けようとした。小泉はこの訪問を、アフリカにおける中国の影響力との対抗と位置付けたが、サウジ国王の中国訪問、胡錦濤中国主席のナイジェリアなどアフリカ諸国訪問と石油探査・開発契約などに比べればとるにたりない成果しかあげていない。
 国連常任理事国入り問題での挫折、中国、韓国・朝鮮など近隣アジア諸国との関係悪化、とりわけ対中関係の緊張については、ブッシュまでも「心配」して、圧力をかけてくるまでに至っている。
 九〇年代は、日本経済の「失われた一〇年」と言われたが、その後の小泉政治の五年は、外交の「失われた五年」と言えるだろう。
 日本政治が、マスコミの先導によって、小泉劇場に振り回され、視野が一国主義的になるなかで、町村、麻生などの外交は、対米一辺倒、それもアメリカの真の対アジア政策を見誤った政策で、日本を取り巻く国際環境は非常に厳しいものになってきている。麻生外相が、テレビのインタビューで国際問題を勉強しているとして示したものは、右翼的な評論家による安易な煽動的な新書の類でしかなかった。やっぱりそうだったか、という感慨を持ってみた人も多いだろう。小泉をはじめ、親の地盤を引き継いだ二世三世議員閣僚らの一つの特徴なのかもしれない。

 ブッシュはイラク戦争を初めとする政策によって、米国内でも人気は、最低記録を更新し続けている。イラクでの失敗をイランの核開発を口実にあらたな戦争策動によって乗り切ろうとしているが、イラク戦争のときとは事情が激変した。アフガニスタン、イラク、イランと時が経つにつれてアメリカの力はがた落ちとなってきている。とくに、イラン問題で、中国、ロシアの制裁慎重論が力を増している。最近、上海協力機構(略称・SCO 中国名・上海合作組織)について触れる報道が増えているが、この機構は今後の世界情勢を見ていくうえで不可欠のものだ。
 SCOは、二〇〇一年六月に、中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタンによる多国間協力組織として、上海で設立された。それ以前の動きとしては、一九九六年、ウズベキスタンを除く五カ国首脳会議(上海5)で、加盟国が共同して、「国際テロ」、民族分離運動への対処やエネルギー問題など経済や文化等幅広い分野での協力強化を図ってきた。その後、モンゴル、インド、パキスタン、アフガニスタン、イランがSCO加盟の意向を表明し、オブザーバー出席の地位を、モンゴル(〇四年)、インド・パキスタン・イラン(〇五年)が得て、今年の六月に上海で開かれる創設五周年記念総会で正式メンバーとなることになっている。アフガニスタンは加盟を拒否されているが、それはカルザイ政権がアメリカの傀儡であるためであると言われている。
 イランがSCOの正式のメンバーとなれば、その加盟国に対する制裁・戦争行為は、当然に中ロが対応してくる。
 SCOは、昨年夏、中央アジアに駐留している米軍に対し、撤退期限を明示するよう要求した。
 この四月二六日、北京でSCOの国防相会議が開かれ、中国の曹剛川国防部長(中央軍事委員会副主席、国務委員)は、「当地域は現在、テロリズム、分離主義、過激主義、大量破壊兵器の拡散、国際犯罪、環境悪化、感染症の拡大など新たな脅威と試練に直面している。機構はこれらの脅威と試練に各国が共同で対処し、世界と地域の安全を保障する有効なシステムとなるべきだ」と強調した。
 そして、ロシアからの提案により全加盟国が参加して、来年にボルガ・ウラル軍管区内の演習場で合同軍事演習を行うと決定し、イランも演習に参加することになる。
 SCOは、アメリカと対抗することを目的にしたものではないが、確実に、国際政治の一つの極としての役割を発揮している。 アメリカが無謀にも始めたイラク戦場の「泥沼」に足を取られている間に、そして日本がブッシュの忠実なポチとして金を出し、汗を流し、そして血までも捧げようとしている間に、世界の地殻は大きく変動している。小泉劇場のマジックに目を眩まされてきた日本人は、やがて、小泉政治が、日本を「ぶち壊し」てきたという事実に驚愕をもって気付くことになるのだろう。


Kodama

  
 4・28処分から二七年

 一九七九年四月二八日、当時の全逓による反マル生越年闘争への報復である4・28処分が出された。郵政4・28処分から二七周年目の四月二八日、全一日抗議行動が闘われた。
 郵政4・28を共に闘う全国ネットワーク(4・28ネット)は、赤羽局・八王子局など各局情宣申入れ行動をはじめ、郵政公社に抗議し、JPU(旧全逓)本部に謝罪を要求し、交渉申入れを行った。夕方からは、東京しごとセンターで反処分二七周年総決起集会が開かれた。
 郵政4・28処分では、東京高裁は、一昨年二〇〇四年六月三〇日に、「原告七人全員の免職処分の取り消し・無効=地位確認」との判決を下したが、郵政公社は最高裁へ上告した。
 全国ネットは、裁判闘争を闘うとともに、日本郵政公社の生田正治総裁に、@二五年間にも及び、不法不当に、免職者・家族等へ苦しみと人権否定を強いたことを謝罪すること、A判決に従い、直ちに、原告七人全員の処分撤回を表明すること、B即刻、原職復帰・原職就労を実現すること、C今日までの未払い賃金を支払うこと、D年金の遡及回復を即刻行うこと、E健康保険証を即時発行すること、Fその他いっさいの権利・権限を回復すること、Gマル生差別を自己批判し、不当な最高裁への上訴を取り下げること、を要求している。
 反処分の闘いでは、途中で、全逓本部が裏切り、全逓の指令に基づいて職場闘争を果敢に闘いぬいた被処分者は、労組からも切り捨てられた。国労本部も全逓の後を追うのを完全に諦めたのかどうか、悲劇は繰り返して欲しくない。 (M)


せ ん り ゅ う

 ブッシュへ直訴ああ日本州

 ジャパン州ああUSA軍事拠点

 PSE 米国牛にも付けたいね

 耐震偽装軍備偽装偽装だらけ

 生きいそぎいや勝ち急ぎだったよね

              ゝ 史

二〇〇六年四月

○ 言葉のあやは面白い。言い回しを工夫すると同じことなのに意味がちがってくる。反省の弁「…生きいそぎ…」だったのですか、そうですかぁ……。自分の人生を飾る言葉を一人ひとりなにがしかもっていると思う。しかし、それを国家がみんなに押しつけるとは、「国を愛せ」とは、いやはやおぞましき言葉のあや。


複眼単眼

  
 一枚の地図が教えてくれること、想うこと

 東京の桜が散って久しいのに、五月初旬の今、桜前線は津軽海峡をまだ渡っていない。特に弘前の桜はその美しさで有名だ。津軽海峡を挟んだ地域でもいま桜は梅とともに咲いている。南国の人には理解しがたいかも知れないが、本当に梅と桜が同時期に咲くのだ。酒が入った時の筆者の故郷自慢で、「三春の町は梅・桃・桜がみんな一緒に咲くんだ」などとつい口にして、「また言っている」と思わされた仲間も少なくないかも知れない。
 先日の旅で訪れた盛岡の街の石割桜はまだ蕾(つぼみ)も開いておらず、残念だった。北国の街の中で巨大な岩石を割って根をはって咲く桜の老木の姿を想うと、なんともすさまじく、ぜひ見ておきたかった。
 帰路の新幹線で椅子に備え付けの「トランヴェール」という雑誌を手に取った。四月号は「海から見える能登の旅」の特集だったが、その中の見開きに掲載された一枚の地図に目を惹かれた。「『環日本海諸国図』/富山中心正距方位図」というものだ。
 一般に見る日本地図の上下というか南北をひっくり返した地図なのだ。そして「日本海」が真ん中にあり、それを囲んでロシアのサハリンやハバロフスク地方、朝鮮半島、中国の山東省、福建省、そして台湾の一部まで載っている。
 一般の地図を見ていると日本列島は孤立した極東の島国と見えてしまうが(あるいは太平洋を挟んで日米はお隣同士と読むか)、この地図で見ると全く違う感覚になる。この雑誌の記事で、先ごろ亡くなった歴史学者・網野善彦が、海を人と人を隔てる「国境」と見るのではなく、人と人を結びつける重要な交通路と見ることを提唱していたことを紹介しているが、大事な視点と思う。
 たしかにこの地図を見ているとそういう視点の転換が起きてくる。国際問題になっていることだが、この中海を私たちが「日本海」と一方的に呼ぶこともたしかに日本の傲慢に思えるのだ。従来、「日本海」側を「裏日本」などと呼んできた太平洋側の傲慢さもまたわかる。この地図では日本とロシアの東部、朝鮮半島、中国東部は全くのお隣同士なのだ。
 この地域は、縄文や弥生の古代以来、この中海を通じて互いに交易を重ねていた。中世に十三湊(とさみなと)を介して南宋と通交していた津軽の安東氏の話はアトランティック伝説やポンベイの悲劇にも似て興味を惹かれるし、かの徐福伝説が秋田県などにもあるというのもおもしろい。八世紀、大和朝廷が東北の蝦夷を侵略するときに築いた多賀城の遺跡から出た碑には「京を去ること一千五百里……靺鞨国(まっかつのくに)の界を去ること三千里」とある。この靺鞨国はロシア東部、中国東北部にあった渤海国だという。すでにこうした視点があった。
 地図一枚でものの見方が変わるのは、かつて山川暁夫が北極圏を中心にした世界地図で国際情勢の見方を教えてくれたことに通じる。ソ連と米国、カナダはお隣同士だという地勢図の感覚だ。
 さてそれにしても小泉内閣の五年間でこの国はこの「中海」を挟んだ全ての国々から嫌われ者になってしまった。頼みの米国にしてからが、小泉の靖国参拝を快く思っているはずがない。これら全ての国々が靖国には酷い目に遭わされているのだから。 (T)