人民新報 ・ 第1203号<統合296(2006年6月19日)
  
                  目次

● 三法案成立を阻止した力を強め小泉・自民党政治との対決へ

● 九条の会が全国交流集会で、《訴え》を発表

● 共謀罪新設法案を完全廃案に

● 「教育基本法の改悪をとめよう!全国集会  三〇〇〇人が「改悪阻止、廃案へ」の声

● 「防衛省」設置法案などの廃案を求める共同声明への団体賛同呼びかけ  /  憲法共同会議

● スプリング・ピースサイクルを迎えて  6月2日 国会ピースサイクル

● 米軍再編、国民投票法案、共謀罪の三つの運動が合流して  小泉暴走にSTOP集会

● イラクで行き詰まるアメリカ  あいつぐ米軍による住民虐殺、米軍将校が派遣命令拒否

● 有期雇用制度の見直しを 『公務非常勤の日』  岡山で第3回「公務非常勤問題を考える講演会」

● kodama  /  上海協力機構首脳会談はいかなる政策を出すのか

● 複眼単眼  /   「カネ儲けは悪いことですよ」  村上ファンドの末路と小泉政権





三法案成立を阻止した力を強め小泉・自民党政治との対決へ


 第一六四通常国会は終了し、政府・与党は、改憲手統き法(国民投票法案)、教育基本法改悪法案、共謀罪新設法案などいずれも成立させられず、次期の臨時国会へと先送りせざるをえなかったこれは、この間の反対運動の大きな成果である。

 振り返ってみれば、四月下旬の連休前には、すべての悪法が今国会で成立させられてしまうのではないかという非常に緊迫した雰囲気であり、一日いちにちが文字通り厳しい攻防の連続となった。しかし、共謀罪をはじめ政府・与党が成立を狙っているものの危険な本質が明らかになるにつれて、国会審議をめぐる情勢は変化をみせはじめた。
 こうした結果を生み出した力は、大衆的な集会・行動、国会前・首相官邸前・院内集会などの行動、そして国会対策、とくに民主党に対する執拗な工作の結果であった。
 三法案以外では、米軍再編に対する闘いが、沖縄をはじめ、山口県の岩国、神奈川県の横須賀・相模原・座間など各地で自治体をも巻き込んで前進した。また、アメリカのイラク侵略戦争・占領への反対と、ブッシュ政権に加担する小泉の自衛隊派兵政策への批判は強まった。

 今年の八月一五日には、小泉の靖国神社参拝の可能性がある。小泉訪米で米下院での演説が噂されていたが、それには下院外交委員長などアメリカ議会の中からも、靖国神社参拝をしないと言明しなければ演説はさせないという声が上がっていた。小泉は、それに対して、アメリカ議会での演説はしないと述べた。これは、靖国神社参拝強行の意思表明以外の何ものでもない。もし、小泉が靖国神社参拝を強行するなら、日本国内はもとより、韓国、中国などのアジアの国と民衆の反発はすさまじいものとなるだろう。
 イラク情勢は、ますます「ベトナム化」の状況を呈してきている。イタリアもついに撤兵を決めた。にもかかわらず、日本は航空自衛隊の活動の拡大などイラク侵略戦争への加担の度合いを深めている。自衛隊員のイラク民衆との関係が殺し殺されるものになるのではないかという危惧が現実のものになろうとしている。
 そして、小泉政治の下で、格差の拡大、少子高齢化という事態は一層深刻化した。昨年の総選挙で小泉与党を大勝利させた郵政民営化でも、民営化を前にして各地のサービス低下が明らかになってきた。そして、株価の傾向的な低落と経済情勢の深刻化が重なってきている。
 小泉政治の五年間は、日本を戦争の道にいっそう引き込み、田中―橋本派的な古い自民党を壊しただけでなく、日本社会を破壊した。

 ポスト小泉の後継内閣は、小泉の積み残した課題を担わせられる。しかし、日本資本主義のほころびも急速に露呈してきて、小泉「劇場政治」の手は使えない。
 臨時国会は、三法案をはじめ、防衛庁の省昇格法案、米軍再編を具体化させる法案など、通常国会を上回る激突の期間となる。
 三法案の成立を阻止した力を基礎に、これからの小泉・自民党政治反対の運動を前進させていこう。


九条の会が全国交流集会で、《訴え》を発表

 「九条の会」は、スタートして二周年となった六月一〇日に初の全国交流集会を開いた。会場の日本青年館には各地のさまざまな「九条の会」を代表して一五〇〇人をこえる人びとが参集した。
 交流会では、全国で「九条の会」アピールに賛同して全国の地域・分野別につくられた「会」が五一七四となったと報告があり、これからの活動の前進に向けた「訴え」が発表された。

 「九条の会」からの訴え

 @「九条の会」アピールに賛同し、思想・信条・政治的立場などの違いを超えた、本当に広範な人々が参加する「会」をつくり、過半数世論を結集しましょう。
 A大小無数の学習会を開き、日本国憲法九条のすぐれた意義と改憲案の危険な内容を学び、多くの人びとの中に広げましょう。
「九条の会」としては全国数カ所で「九条の会セミナー」を開催します。
 Bポスター、署名、意見広告等によるアピール、マスコミ等への手紙・電話・メール運動、地元政治家や影響力をもつ人々への協力要請など、九条改憲反対のひとりひとりの意思をさまざまな形で表明しながら、「会」の仲間を増やしましょう。
 C《九条守れ》の世論を大きく広げるため、「会」を全国の市区町村・丁目・学区、職場・学園に網の目のように、相互のネットワークを強めて情報や経験を交流し、協力しあいましょう。その成果を来年の第二回全国交流集会にもちよりましょう。

二〇〇六年六月一〇日


共謀罪新設法案を完全廃案に

 共謀罪新設に反対する運動は急速に広がった。話し合っただけで犯罪とされる共謀罪なるものは、現代の治安維持法とも言うべき弾圧立法ある。その上、国会審議の過程で与党委員の、目配せ、まばたきも共謀に該当するという答弁まで飛び出し、この法律の恣意性、危険性についてスポーツ新聞をふくめてマスコミが大きく報道するようになった。追い詰められた政府・与党は野党民主党案の丸呑みなどという奇策で成立を急いだが、世論の動向を察知した民主党はこれを拒否した。政府・与党側は、共謀罪法案も継続審議としようとしているが、今回の国会でも反対意見が広範にあるということが明らかにされたのであり、継続審議ではなく、完全廃案とすべきである。しかし、自民党は、こうした法案は、国際的には日本だけが出来ていないとか、主に暴力団を対象とするものでぜひ必要だなどというデマで反対運動の沈静化、分断を図ろうとしている。
 臨時国会では自民党は法案成立ねらって全力をあげてくることは必至だ。共謀罪に反対する声をいっそう広範なものにしていかなければならないし、民主党に廃案の姿勢で対処するように要求するとともに、与党の中にも法案反対の議員をふやしていかなければならない。

 六月六日、文京シビック小ホールで、シンポジウム「おかしいぞ!警察・検察・裁判所」第四弾が開かれ、多くの人が参加した。集会では、立川反戦ビラ事件、国家公務員法弾圧事件、板橋高校事件、関西生コン弾圧事件などからの報告があり、つづいて、安田好弘(弁護士)、保坂展人(社民党衆議院議員)、石坂啓(漫画家)、佐高信(評論家)、大谷昭宏(ジャーナリスト)、二木啓孝(日刊『現代』編集長)のみなさんによるパネルディスカッションが行われた。 


「教育基本法の改悪をとめよう!全国集会

    
三〇〇〇人が「改悪阻止、廃案へ」の声

 六月二日、日比谷野外音楽堂で、教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会による「教育基本法の改悪をとめよう!6・2全国集会&国会デモ」が行われた。通常国会で教育基本法改悪案が強行採決されるかもしれないという緊迫した状況で開かれた集会には、市民、教育労働者など全国各地から三〇〇〇名が参加した。

 呼びかけ人の高橋哲哉さんの発言。
 教育基本法は、戦争の反省から国家のための教育から市民のための教育に大きな転換を行ったが、いままた、それが逆転させられようとしている。いまこそ、「私の愛を法律で縛るな」「私の愛に国は口を出すな」と声をあげよう。
 各地からの報告では、弁護士の坪井節子さんと埼玉県教職員組合の浅井勉さんが発言した。

 呼びかけ人の三宅晶子さんの発言。
 教育基本法の改悪では、二〇以上の徳目が並べられているが、これまでのものから削除されたものに男女平等の理念がある。そして、住民の郷土への愛が強調されているが、これは軍事優先の国家に従えとということだ。子どもにもそして大人にも必要なのは「従う心」などではない。
 都立高校教員の川村佐和さんは、「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の闘いについて報告した。
 国会からは、共産党の穀田恵二衆議院議員、社民党の福島瑞穂党首(参議院議員)があいさつした。

 呼びかけ人の小森陽一さんの発言。
 いま自民党の麻生太郎外相などは、平気で教育勅語、国体などという言葉を使っている。こうした状況に対決していかなければならない。

 ふたたび各地からの報告。東京大学学生の石田精一郎さんと大分県教職員組合の池田年宏さんが発言。池田さんは、九州から出発したスプリング・ピースサイクル=国会ピースサイクルについても報告した。
 呼びかけ人の大内裕和さんが、校門前と国会前をつなげることが重要だとする行動提起をおこなった。
 具体的な行動提起をここでは行いたい。一点目は教育基本法改悪の中身を知り、それを多くの人々に広く訴えることだ。二点目は国会闘争で、国会議員・政党に対して主権者として声を届け、また国会に直接声を届けることが重要だ。三点目は国会闘争と各地域、各職場の闘いを結びつけていくことで、構造改革と軍事大国化に反対する各地域、労働現場での闘いと国会闘争とを結びつける必要がある。「日の丸・君が代」強制処分で根津公子さんは停職となり、校門前での座り込みを続けているが、これと国会前での座り込みのつながりを一層強くしていくことだ。私たちが目指すのはあくまで廃案以外にはない。

 集会は、アピールを採択し、国会へのデモを行い、議員面会所前では社民党、共産党の国会議員とともに教育基本法改悪阻止のシュプレヒコールをあげた。

6・2全国集会アピール

 二〇〇六年四月二八日、政府・与党によって教育基本法「改正」法案が国会に提出され、国会審議が始まりました。教育基本法改悪の危機が急速に高まるなか、本日、私たちは組織・団体の枠を超えて全国から集まりました。 
 政府・与党が提出した教育基本法「改正」法案には以下のような問題点があります。@「愛国心」の法定化。A教育行政による中央集権的支配の完成。B家庭・地域・生涯学習等、市民生活のあらゆる場面への介入。C教育の機会均等の空文化。D平和憲法とのつながりの切断。これらによって現行教育基本法の基本理念は否定され、教育のあり方は根底から変えられてしまうことになります。民主党は、政府・与党の教育基本法「改正」法案への対案として、二〇〇六年五月二三日に「日本国教育基本法案」を国会に提出しました。「日本を愛する心」を前文に明記し、「教育は、不当な支配に服することなく」を削除するなど、この案も教育基本法の基本理念を否定する点で大きな問題があります。
 「学校現場の困難」や「教育現場の病理」についての報道が盛んに行われていますが、それは、政府・与党が行おうとしている教育基本法の改悪によっては解決しません。今の学校現場にとって最も必要なことは、教職員と子どもに「愛国心」や「公共の精神」を上から押しつけることではなく、教育基本法第一〇条にある「諸条件の整備」によってもたらされる真の意味での「自由と平等」と「ゆとり」であり、子どもの意見表明権・参加権、少数者の権利の実現です。
教育問題の解決にはつながらない教育基本法改悪の本当の狙いとは何でしょうか。自民、公明の与党は六月二六日、憲法改悪のための国民投票制度と国会法の一部改定を含む「改憲手続き法案」を国会に提出しました。同じ国会で教育基本法「改正」法案と「改憲手続き法案」が出されたことは、構造改革と軍事大国化の総仕上げとして、政府・与党が憲法改悪を目指していることを明確に示しています。
 五月三〇日、在日米軍再編に関する日米合意の「迅速な実施」に向けた政府方針が閣議決定されました。在日米軍の再編・強化は、アジア太平洋地域を中心に日米の共同軍事行動を可能とするものであり、その先には憲法九条の改悪が狙われていることは間違いありません。教育基本法改悪によって書き込まれようとしている「我が国と郷土を愛する」態度とは、在日米軍の再編・強化に協力し、自民党の新憲法草案に明記された「自衛軍」を支え担う意識のことです。教育基本法と憲法の改悪とはその点でまさに一体の動きであるといえます。
 今日、私たちは二度目の国会デモを行います。その目的は、教育基本法「改正」法案を密室協議によって作成し、特別委員会の設置により短期間での強行成立を謀ろうする政府・与党・文科省に対して、主権者として抗議し、法案を成立させないという意志を直接国会に届けることにあります。
 私たちはこれまで積み重ねてきた運動と連帯の輪をさらに押し広げ、「日の丸・君が代」強制反対、在日米軍の再編・強化反対などの反戦平和運動、さらに憲法九条改悪に反対する運動と広く連携することによって、再び「戦争する国家」づくりを目指す教育基本法の改悪を全力で阻止することを、ここに宣言します。


「防衛省」設置法案などの廃案を求める共同声明への団体賛同呼びかけ

                                  
  憲法共同会議

 政府と自民・公明与党は、防衛庁の防衛省への昇格を決め、会期末 間近の国会に「防衛省」設置法案と自衛隊法改定案などを提出した。自民党とそれと運命共同体を形成する公明党は、日米軍事一体化と九条改憲そして防衛省設置法などによって。戦争の出来る国つくりにむけて歩みを速めている。
 憲法共同会議は、「『防衛省』設置法案と自衛隊法改悪案に抗議し、廃案を求める共同声明」への団体賛同を募っている。


「『防衛省』設置法案と自衛隊法改悪案に抗議し、廃案を求める共同声明」への団体賛同のお願い

 以下の団体共同声明に、ぜひご賛同下さい。なお賛同は団体・グループに限らせていただきます。第一次締切は七月末日とします。この呼びかけの転送・転載にご協力下さい。

二〇〇六年六月一二日

 憲法共同会議(許すな!憲法改悪・市民連絡会 気付)
 電話03(3221)4668 FAX03(3221)2558
kenpou@annie.ne.jp

 * * * * 

 「防衛省」設置法案と自衛隊法改悪案に抗議し、廃案を求める共同声明

 小泉内閣は通常国会の会期切れ直前の六月九日、「防衛省」設置法案とそれに関連して自衛隊法改定案などを提出しました。これらの法案は、防衛施設庁主導の談合発覚で二月に見送ったはずのものですが、事件が未解決のまま提出したのは、問題になる法案は秋の臨時国会で成立させ、来夏の参院選に「重荷」を持ち越したくないという与党の思惑もあります。このような法案提出のやり方は「アンフェア」というべきですが、それ以上に重大な法案であり、私たちは強く抗議し、廃案を求めます。

 「防衛省」設置法案は、単に庁を「省」に、長官を「大臣」昇格させたり、在日米軍の基地・施設も扱う防衛施設庁を吸収・統合するだけではありません。これに便乗する形で、これまで自衛隊の「本来任務」ではなかった周辺事態での活動や海外派兵を自衛隊の本務に格上げすることが主な内容となっています。現行の自衛隊法では、自衛隊の任務は「侵略からの防衛」(第三条)とされ、国際緊急援助隊への協力、国連PKOなど「国際平和協力業務」、周辺事態における船舶検査や後方支援などの活動は一〇〇条の「雑則」各号に追加されてきました。しかし今回の自衛隊法改定案では、三条に周辺事態での「我が国の平和と安全に資する活動」と「国連を中心とした国際平和のための取組への寄与、国際社会の平和と安全の維持に資する活動」を加え、一〇〇条活動は「三条活動」すなわち自衛隊の「本務」にするというものです。そうなると、自衛隊の組織・装備・活動・訓練などは、海外派兵のための本格的なものになっていくでしょう。

 米軍再編問題で日米両政府は、自衛隊を米軍と一体化させ、「国際の平和と安全」を掲げて地球上どこででも軍事行動ができる体制を作るという戦略で合意しました。昨年一〇月に自民党が発表した「新憲法草案」には、「自衛軍の保持」と「国際社会の平和と安全を確保するために協調して行われる活動」が盛り込まれています。「防衛省」設置法案と自衛隊法改悪案は、そのような新「日米同盟」と憲法九条の改悪を先取りするものです。
 私たちは、これら新「日米同盟」と憲法改悪の先取り法案である「防衛省」設置法案と自衛隊法改悪案を許さず、廃案を求めます。  

                         以  上


スプリング・ピースサイクルを迎えて

                  6月2日 国会ピースサイクル

 六月二日、三回目を迎えたスプリング・ピースサイクルを迎えて、国会ピースサイクルが、取り組まれた。スプリング・ピースサイクルは三月二〇日に九州大分を出発し、各地をリレーし、平和へのメッセージを繋げながら、この日、首都圏ネット(埼玉・神奈川・千葉・東京・三多摩)に引き継がれた。大分、長野、愛知からも仲間が駆けつけて合流した。
 この日の国会ピースサイクルは、自転車組の八人を中心に、徒歩や地下鉄での移動者を加え延べ二〇数人が参加して行われ、靖国神社、防衛庁、東京都教育委員会、内閣府などへビースサイクル全国ネットワークとして申し入れ行動をおこなった。
 靖国神社では、遊就館と社内の見学をした後で、社務所前に集合して神社への申し入れをおこなった。ピースサイクル参加者のうち三名が代表として社務所の中へ入り、戦犯や遺族が祀られることを拒否している韓国、中国・台湾籍の「英霊」の合祀を直ちに止めることなどを要求して申し入れ書を手渡した。その間、他のメンバーは玄関先で待機した。
 防衛庁では、在日米軍再編計画閣議決定および辺野古岬の米軍基地建設計画の撤回を求める申し入れ書を門前で説み上げ担当者に手渡した。
 東京都敬育委貝会では、教育基本法改悪の先取りである入学式、卒業式における「日の丸・君が代」の強制に抗議し、それを拒否した教職員に対する処分撒回を求め、また子どもたちの心の中にまで踏み込み、「愛国心」を強制することに強く抗議した。対応した担当者は、ピースサイクルのメンバーからの都教委としての見解の求める質問に対して、まったく誠意のない態度に終始し、参加者の大きな怒りを呼び起こした。都教委への申入れでは福士敬子都議員の協力を得た。
 つづいて内閣府に向かった(内閣府への紹介者は岡崎トミ子参議院議員)。憲法・教育基本法の改悪反対、アジア諸国への植民地支配と侵略戦争の真摯な反省の上に立ちアジア外交の全両的な見直しをはかること、そして、在日米軍再編による地球規模の侵略戦争への参加、共謀罪、国民投票法案について、それぞれに反対する申し入れを小泉首相にあてておこなった。
 その後、国会議員面会所での共謀罪反対の集会、夜から日比谷公園で行われた教育基本法反対の集会に参加した。このように、国会ビースサイクルの一日行動は、国会へ平和へのメッセージを届けるという当初の目的を果たし終了した。(東京通信員)


米軍再編、国民投票法案、共謀罪の三つの運動が合流して

                     
 小泉暴走にSTOP集会

六月はじめ、与党は、六月一八日に迫った通常国会の会期末を前に共謀罪新設法案について、民主党案の丸呑みもありうるなどどいう姑息な手段でなんとしても成立させようとする動きをみせ、また在日米軍再編・日米軍事一体化のための閣議決定、そして憲法改悪のための国民投票法案や教育基本法改悪案などをつぎつぎに国会に出してくるという緊迫した情勢にあった。

 六月一日、日比谷野外音楽堂で、二〇〇〇人が参加して「小泉暴走にSTOP! 共謀罪・憲法改悪国民投票法案・米軍再編に反対しよう 6・1集会」が開かれた。主催の実行委員会は、フォーラム平和・人権・環境、憲法共同会議、共謀罪の新設に反対する市民と表現者の集い実行委員会などで、それぞれ米軍再編、国民投票法案、共謀罪に反対する運動を中心的に担ってきた団体で、三つの課題を合流させ、暴走する小泉政治に対決する集会となった。 
 集会では、三つの課題について問題提起が行われた。平和フォーラムの福山真劫さんが米軍再編について、憲法共同会議の高田健さんが九条改憲のための国民投票法案について、市民と表現者の集い実行委員会の富山洋子さんが共謀罪について、それぞれ反対運動の報告をおこなった。
 国会からの情勢報告は、民主党の川内博史衆議院議員、無所属の糸数慶子参議院議員、社民党の福島瑞穂参議院議員がおこなった。
 沖縄からは山城博治平和運動センター事務局長が特別報告。米軍再編は沖縄の基地負担軽減になっていない。今年一一月の沖縄県知事選に勝利して、米軍基地に対する沖縄の心を示したい。
 最後にアピールを採択して、銀座デモに出発した。

集会アピール

 小泉首相の九月の任期切れを前に、第一六四通常国会は政府与党による在庫一掃セールのような盛りだくさんの悪法強行の様相を示しています。
 …この危険な小泉内閣の暴走にSTOPをかけるため、これまでそれぞれの分野から悪法に反対する運動を進めてきた私たちは、いまこそ大きく共同して院外の運動の拡大を図る必要があると考え、この集会に結集しました。  私たちは本日の集会の成功を機に、さらに小泉内閣を追いつめ、戦争のできる国づくりのための諸悪法を葬り去るよう奮闘したいと思います。

 小泉内閣の暴走にSTOPを!
 共謀罪反対!
 憲法改悪国民投票法案反対!
 米軍再編を許すな!

 二〇〇六年六月一日


イラクで行き詰まるアメリカ

   
 あいつぐ米軍による住民虐殺、米軍将校が派遣命令拒否

 イラク戦争をめぐっての日本のマスコミは、米軍によるザルカウィ容疑者の殺害やブッシュのイラク電撃(コソコソ)訪問のみを特出して報じている。これらは、イラクにおける抵抗闘争に大きな打撃になるとかいうものだ。
 しかし、ブッシュでさえ、イラクにおける「テロ」はさほど減少しないないだろうという発言を行っている。同時にブッシュは、イラクの「泥沼」からはやく抜け出すためにさまざまな対応をし始めた。六月一二〜一三日、ワシントン郊外の大統領山荘キャンプデービッドで、チェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官、ライス国務長官などの主要閣僚のほか、テレビ電話を通じイラクの多国籍軍ケーシー司令官も参加して「イラク戦略会議」を開く。ブッシュは、ザルカウィ容疑者殺害を「戦いの大きな転機」と位置付け、これを最大限にアピールすることによって、イラクの「治安」情勢の改善と現在一三万人規模の駐留米軍の削減に向け、イラク新「政府」と協力し、イラク軍・警察の強化に全力を挙げようとしている。そこで、ブッシュのイラク訪問になるわけだが、それは、マリキ「首相」に面会の五分前に訪問の事実を伝えるという全くの隠密行動で、いかにイラク治安が危ういものであるかを逆に証明するものになってしまった。
 ブッシュ政権のイラク政策は、昨年一一月イラク西部ハディーサで起きたアメリカ海兵隊による幼児をふくむ民間人二四人の虐殺をはじめ各地での米軍によるあいつぐ虐殺事件とそれを軍が隠蔽してきたことが暴露されていっそう苦しいものとなってきている。
 ハディーサ事件について、六月七日に海兵隊司令官のヘイギー大将は国防総省で記者会見したが、そこで虐殺疑惑に関与したのは少数で、イラク駐留米軍のほとんどは「素晴らしい仕事をしている」と言いつつも、「重大な疑惑であり深い懸念を持っている」と述べた。
 しかし、米国の雑誌「ニューズウィーク」はハディーサ事件を特集し、その中で、「ベトナム戦争時のソンミ村虐殺事件以来、最悪の虐殺と判明する可能性がある」と報じた。ソンミ村虐殺とは、一九六八年、米軍が当時の南ベトナム・ソンミ村で女性や子供を含む五〇〇人をこえる無抵抗の村民を虐殺した事件で、この事件が明らかになるに連れて、米軍によるベトナム戦争の汚い本質が暴露され、ベトナム反戦、米軍の即時撤退の世論が米国内と全世界でひろがり、アメリカはまず道義の面で戦争に敗北したのだった。
 現在、米軍によるイラクでの民間人殺害疑惑はつぎつぎに拡大している。三月の中部イシャキ事件(一〇人前後が死亡)、四月の西部ハマンディヤ事件(一人が死亡)についても米軍当局が刑事捜査や調査に入っている。
 ラムズフェルド国防長官は、「わが軍の九九・九%はお手本になる行動を取っている。一方で、紛争中には起きてはならないことが起きる」などと述べて開き直っているが、イラクにおける米軍をはじめ多国籍軍がいかなる役割を果たしているのかがあらためて問われなければならない。
 アブグレイブ収容所での拷問・虐待、ファルージャ攻略戦での大量虐殺につづいて米軍による虐殺行為が頻発している。
 ベトナムの米軍、アフガニスタンでの旧ソ連軍、そしてかつての中国の日本皇軍も同じような虐殺事件を起こしていた。それらの戦争の性格が侵略戦争であり、侵略軍将兵にとっては現地住民はみな敵に見える。歓迎されていない、敵意をもたれている、ことを侵略軍将兵は感じるのだ。それが、こうした事件の背景にある。いかに美辞麗句による「大義」を吹き込まれようと、侵略軍将兵は現地住民と敵対関係に立つということから、自らが従軍しているものが侵略戦争、不正義の戦争であることに気付き始める。
 米軍による虐殺事件と同様、日本ではほとんど報じられないが、イラク戦争拒否の米軍兵士がでた。報道によると、日系人のアメリカ陸軍中尉のアーレン・ワタダ氏は、六月末のイラク派遣命令に対し「イラク戦争の継続、戦争にかけられる国費、無法と思われる諸行為などに同意できないため、戦争参加を拒否する」として公然と派遣を拒否する態度表明を行った。ワタダ氏は裁判にかけられるが、こうしたイラク戦争拒否のワタダ氏に対する全米での支援活動が広がっている。
 自衛隊の即時撤退、イラク占領反対の運動を強めていこう。


有期雇用制度の見直しを 『公務非常勤の日』

              
  岡山で第3回「公務非常勤問題を考える講演会」

 五月一四日、岡山国際交流センターで、岡山ではなじみになりつつある「公務非常勤問題を考える講演会」(同実行委員会主催)の三回目を開催しました。岡山中央郵便局の非常勤職員池田幸司さんの雇い止め裁判の「解雇権濫用の法理」を認めた勝利判決を機に、その闘いをともに進めた仲間が中心になってこの催しを続けてきました。
 今回も、前回、前々回同様、有期雇用の非常勤職員の人たちで司会をしていただき、会場には一一〇人余り(非常勤職員は四〇名)の参加で、回を重ねるごとに、若干であるが参加者増の傾向にあります。

 最初に、実行委員でもある下市このみさん(岡山市議)が開会のあいさつ。
 岡山中央局ゆうメイト解雇裁判のときから、公務非常勤は同じ仕事をしても、賃金や処遇など色々なことが正職員と差別されている。そのことを皆さんに知ってもらいたいと思い、講演会を続けて開催している。
 司会からは、講演会に寄せられた、国立情報学研究所非常勤裁判の原告Mさん、衆議院議員の津村啓介さんからのメッセージを紹介されました。
 岡山生まれ、岡山弁の女性漫才師『さっちゃん☆ともちゃん』には「私は公務非常勤」と題して、漫才をしていただきました。ちなみに、さっちゃんは、現役の公務非常勤職員です。

 講演は野本夏生弁護士。野本弁護士は、日本労働弁護団官公労部会で活躍されていますが、「立ち上がる公務非常勤」と題して、国立情報学研究所非常勤職員の雇い止め裁判の弁護団の一人として、その勝利判決の報告を交えながら、講演をしていただきました。
 野本弁護士は冒頭、「講演会のお話をいただいたときは判決前で、原告も含めて国情研弁護団は、予想も裏切るような判決が出て、ここで勝利判決の報告ができると思わなかった」と話され講演が始まりました。国立情報学研究所非常勤裁判では、「非常勤職員といっても」「任用を打ち切られた職員にとって明日からの生活があり」「永年勤めた職員の任用を打ち切るのなら、適正な手続きと相応の礼が当然」とする原告の地位確認を認めた勝利判決がでた。
 公務非常勤問題の根底には、「公務員は雇用ではなく、任用である。雇用契約を結ぶのではなく、一定の基準に達した者に勤務関係が生まれる。任用は、当局側の完全なる自由裁量である」とする雇う側の意識にある。同時に「働く者は採用時に、任用であることを自覚または認識できないままに働かせられている」こと、特に「国公法では、地公法以上に有期雇用職員の存在を前提にしていない。人事院規則の中に非常勤の給与法もなく、労働基本法は制限されたうえ、不合理極まりない身分である」ことが問題だ。国立情報学研究所非常勤裁判で勝ち取った地裁の判決が過去の判例に背いた例外的な判決であったということでおわらせてはならない。高裁でも逆転を許さずに闘っていきたい。
 公務非常勤裁判は、岡山判決が転機となっているが、他のゆうメイト裁判ではまだこれにならう判決が出ていない。しかし、地位確認は認められないが、わずかではあるが国家賠償請求は認められている判決もでている。たしかに流れが変わってきている。裁判闘争では、同種の事件で闘っている人たちの英知を結集しなければならない。また、各地の裁判で活かされるよう情報の共有化も必要だ。

 この後質疑では、「非常勤職員の本務化闘争もしてはいかがか」といった意見などが出され、野本弁護士の講演を終了しました。苦しい闘いだが展望はたしかにあるという勇気の出る話でした。
 その後、各地からの発言・報告として、大阪のゆうメイト不当解雇撤回裁判の松本さんから報告と今後の支援お願いがあり、また、中学校教員の佐原さんからは、教職員現場の非常勤職員が置かれている現状報告がありました。
 ゆうメイトの一人からの「自分の置かれている立場に負けることなく、非常勤職員でやっていける誇りを持って頑張っていく」との挨拶で閉会しました。

 講演会の回数を重ねてきているが、まだまだこの問題が浸透されてないし、結果が伴っていないように思われます。郵政に限っていえば、民営化ということで公務職場でなくなりますが、社会格差をなくすためにも今後もこの問題に取り組んでいきたいと思っています。(岡山・S)


kodama

  上海協力機構首脳会談はいかなる政策を出すのか

 六月一五日から、中国・ロシア・カザフスタン・キルギス・タジキスタン・ウズベキスタンの六か国による多国間協力組織である上海協力機構(SCO)首脳会議・総会が開催される。
 今回は結成五周年の記念総会でもあり、全加盟国の元首、準加盟国であるイラン・パキスタン・モンゴルの大統領、インドの石油天然ガス相、アフガニスタン大統領、CIS(独立国家共同体)執行委員会議長、ASEAN(東南アジア諸国連合)事務次長が「議長国の賓客」として出席し、国連も祝賀のメッセージを寄せるという。首脳会談では、同機構の発展、地域・国際問題について意見を交換し、共同声明など重要文書を調印・発表する。
 昨年七月のSCO首脳会議(カザフスタンで開催)では、中央アジアにある米軍基地の事実上の撤退を要求し、八月には中ロが台湾有事を想定したといわれる初の本格的な軍事演習を実施するなどの「実績」があるが、今年の会議では「核開発」問題でアメリカとの対決状況にあるイランのアハマディネジャド大統領の出席で、イラン核問題が焦点の一つになる。中国の胡錦濤国家主席とアフマディネジャド大統領の首脳会談も予定されている。そこで、イラン核問題でどんな話になるか欧米は気がきではない様子だ。もちろん、SCOが明確な反米姿勢を示すことはないだろうが、アメリカ「一極支配」を牽制する力を蓄えてきていることはわかる。日本マスコミではあまりとりあげられないが、SCO首脳会談でいかなる政策が出てくるか注視すべきだろう。(M)


複眼単眼

  
  「カネ儲けは悪いことですよ」  村上ファンドの末路と小泉政権

 「僕が悪い。証券取引法という証券市場の憲法というような法律を犯したわけですから」
 この人からこんな言葉を聞くとは思っていなかった。村上世彰にとっては「憲法」って、いったい何なのだろうか。権力者に遵守義務がある最高法規という認識だけはあるわけだ。しかし、それにしても、村上の政財界のお友達連中は憲法など守る気もない奴ばかりなのだが。
 村上は子どもの時から資本主義の思想漬けで育ってきた人物だ。頭のてっぺんからつま先まで資本主義の臭いがする。村上は一九九九年に通産省を退官し、のちの村上ファンドとなる「エムアンドエイコンサルティング」を設立して生き馬の目を抜く「乗っ取り屋」と「相場師」「総会屋」の世界に飛び込んだ。
 「M&Aの手法を使いながら企業のシステムを変えて行きたい気持ちを押さえきれなくなった」のだ。それがこの五年の小泉政権の「新自由主義改革」の規制緩和政策のもとで水を得た魚のように解き放たれた。「乗っ取り屋」「相場師」「総会屋」などというのは、資本主義の世界の裏稼業のように見られがちな仕事だが、その実、弱肉強食の資本主義の本質を見事に表現している世界でもある。ただ、それはあまりにもあけすけで、身も蓋もない商売だから、きれい事を装う財界は裏稼業扱いをしてきただけのことだ。実際のところ、財界のトップの連中も一皮むけば同類であり、これとさまざまな糸でつながっていることはいうまでもない。村上ファンドとオリックス、オリックスと大手金融、米国をはじめ国際資本などとの濃密な関係はそれを物語っている。
 小泉新自由主義改革はこの裏稼業の連中を表の世界に引っ張り出し、光を当て、「勝ち組」にした。すでに転落したがライブドア、そしてこの村上ファンド、さらには楽天、ソフトバンクなどなど後続部隊はあとを絶たない。
 「金儲けは悪いことですか。法律を破らなければ(金儲けしてよいという考えは変わらないか?)って、ルールの中で金儲けちゃ何が悪いんですか。僕はルールを犯してしまったかも知れない。でもルールの中で一生懸命株取引して儲ける。何が悪いんだろう」
 「皆さんが僕のことすごく嫌いになったのは、むちゃくちゃ儲けたからですよ。二〇〇〇億円くらい、儲けたんではないでしょうか」
 「儲けたいから活動している。夢は特に何もない。楽しく生きることができればそれでいい」
 この連中の金儲けの戦車が走ったあとにどれだけの零細投資家たちの骸が累々と投げ出されているか、どれだけの労働者が路頭に迷い、死地に追いやられているか。それを見ていながら「金儲けがなぜ悪い」とうそぶく。「負けた奴が悪いんだ」「自己責任だ」といっているように。
 村上はいま思っている。
 「僕はちょっと運が悪かっただけさ。一方通行の標識を見落として車を突っ込んで違反切符を切られただけさ。なにが悪いんだろ。今度は小説家か慈善事業でおカネを儲けようか。どうせ夢なんてないんだ。あとは野となれ山となれ。誰かが言っていたけど、我が亡き後に洪水よ、来たれ、だもんね」  
 それにしても、今般、検察がLDと村上を摘発したことでどんなに多くの民衆が溜飲を下げた事だろうか。しかし、しかしだ、御同輩。そのあとにひたひたと「茶色の朝」の足音が迫ってきていることを見逃してはならないだろうよ。(T)