人民新報 ・ 第1211号<統合304(2006年10月16日)
  
                  目次

● 臨時国会  安倍新政権の反動諸法案を阻止しよう!

● 教育基本法の改悪をとめよう!  院内で市民、教職員、議員が集会

● 労働法制の改悪阻止の共同行動を  労働時間法制が壊される!

● イラク・レバノン戦争と国連・自衛隊を問う

● 9・30東海村臨界ヒバク事故7周年東京圏行動  槌田敦さんが日本の核武装化について講演

● 北朝鮮の核実験宣言と日本の核武装

● せ ん り ゅ う  ( ゝ 史 )

● 複眼単眼  /  安倍晋三が引き継がなかった二つのDNA




臨時国会 

     安倍新政権の反動諸法案を阻止しよう!


与党の優先五法案

 一〇月五日に与党(自民、公明)の幹事長、政調会長、国対委員長が開かれ、今臨時国会では、教育基本法改悪法案、テロ対策特別措置法改正案、防衛庁の省昇格法案、改憲のための国民投票法案、北海道道州制特区推進法案の五つを重要法案として優先的に成立を目指すことを決めた。
 政府は一〇月一〇日、安倍内閣の最重要課題と位置づける教育改革の具体策を検討する「教育再生会議」の設置を閣議決定し、まず、教員免許の更新制度や学校の外部評価制度の導入、全国一斉学力テストの完全実施、教職員給与の見直し、大学の九月入学や入学前の半年間のボランティア義務づけ、教育バウチャー(利用券)制度などの導入などを議論し、来春に中間報告、来年中に最終報告をまとめるとした。安倍は、その「美しい日本」を実現するためには、「次代を背負って立つ子どもや若者の育成が不可欠だ」と強調しているが、新自由主義的かつ国家主義的な教育制度を実現しようとしているのである。そのために最大の障害となっているのが、憲法であり教育基本法なのである。
 テロ対策特別措置法改正案は、アフガニスタン占領軍への給油活動を延長させるものだ。だが、アフガニスタンでは、傀儡カルザイ政権は腐敗し弱体化し、米英など占領軍に対する攻撃が強まっている。イラクだけでなくアフガニスタンでもすでに対テロ戦争は失敗しているのだ。年末にはイラク特措法の期限が切れまた延長するだろうが、自衛隊を米軍の一部として展開させる小泉・安倍政策は、アメリカの戦争戦略に対する世界の人びとの敵意を日本にも向けさせ、その崩壊の債務もしょうこむことになるのである。

共謀罪新設法案は


 与党の重要五法案には、「共謀罪」新設を柱とする「刑法等の一部改正」案はあげられていない。
 では共謀罪新設法案はどうなるのか。一部マスコミは今臨時国会での「見送り」と報じ、ここから、共謀罪法案については、しばらく安心だという空気も流れている。通常国会では、院内外の連日の闘い、マスコミもようやくこの問題を取り上げるようになって、法案の危険性が明らかになるにつれて反対の声は広がり、与党もそれを考慮せざるをえなくなる状況が生まれた。これは反対運動の大きな成果であった。また政府が法案の理由としてあげていた条約の批准のためには共謀罪新設は不可欠という説明が誤りであり、アメリカなども条約批准と法改正を切り離していたことなどが暴露され、与党の強行採決ができにくくなっている状況も生まれた。しかし、こうしたことで与党が凶暴罪法案成立を諦めたとはいえない。まず、与党の重要法案から外れたとはいっても、正式に断念したという表明はない。しかも一二月五日まで国会会期が十分にある。
 なにより、来年が参院選をはじめ各種選挙の年であるということだ。臨時国会で成立させられず、来年の通常国会に評判の悪い法案がかかっているということは、自民党にとってきわめて不利であり、公明党にとっては致命的な打撃になる。だから、悪法であればあるほど、批判が大きければ大きいほど、与党はこの臨時国会で成立させなければならないという事情にある。この国会で不成立になった法案はたとえ継続審議となったとしても、通常国会での成立はいっそう困難になるのである。与党としては、五つの重要法案をまず通したい。そして、共謀罪法案もということであろう。断じて油断してはならないのである。

統一した力で闘おう

 臨時国会がはじまり、さまざまな運動が院内集会、国会前集会、首相官邸抗議をはじめ闘いをスタートさせた。共謀罪反対での闘いが典型だがこれまでそれぞれに運動を行ってきたグループが共同して闘う陣形を形成し始めている。
 国会に出されている悪法は、日本が超大国アメリカの覇権戦略に積極的に加担し参戦して、アジアでの勢力圏をうちたてようとして国家改造を強行しようとするものだ。また、労働時間法制を完全に骨抜きにする労働法制改悪法案が厚労省で審議され、来年の通常国会には提出されるといわれる。労働者の権利をいちだんと奪い、社会的格差を拡大するものだ。
 今国会で、政府与党は北朝鮮の核実験を口実に攻勢をかけてくるだろうが、戦争と反動、格差拡大をもたらす安倍内閣と対決しよう。可能な限り大きく統一した力を結集して闘おう。


教育基本法の改悪をとめよう!  院内で市民、教職員、議員が集会

安倍は、教育基本法を改悪して、具体的な計画も含めて教育内容を決めることができる完全な上意下達の支配を作り出そうとしている。
 教育基本法改悪を最優先課題とする安倍内閣と断固として対決する運動を早急につくりあげなければならない。
 一〇月三日には、「教育基本法の改悪をとめよう! 院内集会」が開かれた。集会は、会場を埋め尽くす参加者の熱気で包まれ成功した。

 呼びかけ人の三宅晶子さんが発言。
 この前の通常国会では、教育基本法改悪法案は通させなかった。通常国会ではいつも大勢の人が詰めかけ、それも教育基本法の問題だけではなくて、共謀罪などさまざまな課題で闘っている人たちがいろんな方面から国会を取り囲んでいる状況ができ、それが成立をとめる大きな力になった。
 安倍内閣は教育基本法改悪を最重要課題と掲げ、これと真っ向から対決しなければならない国会だ。
国会内の数では負けている。運動の力を一〇倍、二〇倍にし、そして一人ひとりの良心をかけて闘わなければならない。しかし「日の丸・君が代」強制に反対する東京都での予防訴訟の勝利ということがあった。このことは、無名の一人ひとりが良心と勇気をもって闘うなら、それが大きな一歩をつくるということを示した。
 九月二六日には雨の中、七五〇人が集まって首相官邸に抗議の声をあげた。
 すでに臨時国会に向けた運動が始まっている。今日の集会は、国会の中で教育基本法改悪法案を通さないための第一歩となるものだ。
予防訴訟の東京地裁判決では、教育基本法一〇条という言葉が何度も使われている。これは「不当な支配に服することなく」という文言だ。今回の判決でも引用されている「不当な支配に服することなく」という言葉は政府案にも残っていて、文言が残っているからと思って油断してはならない。言葉そのものは残っていても、その意味が、全く正反対に逆転している。ここに気をつけなくてはならない。地裁判決では、「教育基本法一〇条の主旨である教育に対する行政権力の不当、不要の介入の排除、教育の自主性尊重云々…」となっていて、行政権力の不要不当な介入の排除が教育の自主性の尊重なんだとはっきり書かれている。それを、改悪案では教育の独立をはっきりとうたい守るための法律が、教育が独立どころか行政の直轄になってしまう最悪の法律案になっている。

 「日の丸・君が代」不当処分撤回を求める被処分者の会の事務局長の近藤徹さんは、集会に参加した仲間の教職員を紹介し、「予防訴訟」地裁判決について報告を行った。
 「予防訴訟」は、当初は、「無謀訴訟」とも言われたたが勝利することができた。判決のあとにわたしが職場に出勤したら全員が拍手してくれたし、生徒も『先生勝ちましたね』と言ってくれた。この判決をよろこんでいない中村都教育長、安倍首相や石原都知事こそ、違憲・違法だ。

 国会から、社民党の照屋寛徳参議院議員、保坂展人衆議院議員、福島瑞穂参議院議員(党首)、辻元清美衆議院議員、日本共産党の赤嶺政賢衆議院議員、井上哲士参議院議員、石井郁子衆議院議員(副委員長)が参加し、臨時国会をともに闘うとあいさつした。
 京都を始め各地からの報告があり、呼びかけ人の小森陽一さんが閉会のあいさつをした。


労働法制の改悪阻止の共同行動を

        労働時間法制が壊される!


 小泉政治で社会的格差が拡大し、安倍新政権は小泉・構造改革路線を継承し、その傾向は一層強まる。労働法制の改悪は、ますますひどくなり、労働時間規制は財界とアメリカ資本の要求によって崩壊させられようとしている。労働時間規制は、国際労働基準をさだめたILO第一号条約で「一日八時間・週四八時間制」を定めているが、日本政府は未批准である。これまでも世界にまれに見る長時間・過密労働によって労働者に犠牲を強いて日本資本は巨大な儲けを上げてきた。そして、いままた、労働基準法などいわゆる労働者保護法制を完全に骨抜きにする労働法制の大改悪を強行しようとしている。すべての労働者と労働組合は団結して闘わなければならないときである。

 九月二八日、渋谷・勤労福祉会館で「就業規則悪用の労働契約法制NO! 残業代を取り上げる労働基準法改悪NO! 06秋の共同行動 立ち上げ集会」が開かれた。
 はじめに、中小労組政策ネットの平賀健一郎さんが基調提案。
 私たち秋の共同行動は、@中小・非正規労働者の生活と権利・雇用の安定を、A中小、非正規労働者の生活と権利・雇用の安定を、B生活できる最低賃金制の確立を、C外国人労働者の権利の確立を、C国鉄一〇四七人など全ての争議の勝利を、という要求と目標して闘う。厚生労働省の労働政策審議会は八月下旬に再開された。ここでの審議の状況如何が今後の法案がどのようになるかを決める。この秋は重大な時期であり運動を盛り上げていかなければならない。この間、労働時間規制の撤廃に反対し、人間らしく働くための労働法制を求める共同アピール運動は審議会に対する要請行動を連続的に行ってきたが、そのひとつの集約点として、一二月五日に日比谷公園を満杯にする大集会を予定している。秋の共同行動は、北関東キャラバンをはじめ全国各地でキャンペーンを展開し、五つの目標の実現に向けて闘い、07春の行動につなげていきたい。

 つづいて、日本労働弁護団の鴨田哲朗弁護士が、「労働法制の動向と運動の課題」と題して講演。
 労働法制については必ず労政審で審議し、その上で、法律を作らなければならない。審議会は私的諮問機関とは性格が違っている。だから、審議会での闘いが極めて重要なのだ。政府・与党は、年内に労政審での審議に基づいた最終報告・建議を出したいとして、いま月三回というハイペースで審議が行われている。
 労働条件分料会は、九月一一日に、「検討項目」を出してきた。労使委員会制度、変更解約告知制度、解雇金銭解決制度、就業規則の扱いなどだが、その中心は「日本版エグゼンブション」だ。エグゼンブションとは除外という意味であり、労働時間法の追用除外者の拡大ということで、一日八時間、週四十時間制度を崩壊させるものだ。一日八時間労働は最低基準であり、これを守らない経営者は牢屋にぶち込まれてもしょうがないということだ。残業させる場合は例外で割り増し賃金を払っている。現在は管理・監督者だけが労働時間法の追用除外者となっているが、「日本版エグゼンブション」が法制化されれば、八時間労働者は激減する。日本が見習おうとしているアメリカでは、すでに全労働者の四割が法定労働時間のらち外にある。八時間労働時間は世界の労働運動の象徴だ。「日本版エグゼンブション」は、全ての国民の日々の生活に係わる問題だ。労働者だけの声でなく、もっと幅広い運動を展開していく必要がある。
 労働現場からの発言では、「金銭解決NO!」(全統一労働組合光輪モータース分会)、「有期雇用使い捨てNO!」(全国一般なんぶ外国人講師組合)、「ホワイトカラーエグゼンプションNO!」(東京東部労働組合)、「地域から」(北関東ネット)が、また闘争報告と支援要請では、フイリピントヨタ労組を支援する会、韓国山本労祖を応援する会、鉄建公団訴訟原告団が行い、来日して闘っている韓国山本労組と神奈川シティユニオンがパフォーマンス。
 「呼びかけ文」が読み上げられ、全統一労働組合の鳥井一平さんが、労働者はモノ扱いされてはならない、人たるに値する労働条件をかちとることにむけて労政審への要請行動、さまざまな集会・行動などの行動提起をおこなった。

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秋の共同行動を呼びかけます!

 過去五年にわたる「小泉改革」の矛盾が噴出しているなかで、これを受け継ぐ安倍内閣が発足しました。労働分野の規制緩和が主導した格差や二極化問題を覆い隠し、外交や杜会保障分野の失敗に居直り「美しい・強い国」を標榜する内閣はすでにボロを出しているどこかの超大国のミニ版を見る思いです。「美しい国」の内側では、働く者の三分の一を越える非正規労働者が無権利不安定な生活・雇用のもとで低賃金・無権利・長時間労働を余儀なくされ、社会を支えている働く者の生活と権利は、医療・年金・福祉の切り下げとともに将来を見通せない杜会的な危機と言うべき事態となっています。景気の回復を享受する世界展開の大企業やマネーゲーム・M&Aで濡れ手に粟の金融・フアンド、それに群がる多くの「紳士・淑女」達の裏側には、最新鋭工場で低賃金・使い捨て労働力として働く偽装請負などの労働者達、流通・サービスを支える多くの非正規労働者や外国人労働者達、M&Aで収益向上のためリストラされる労働者、サービス残業を強制される労働者達が存在します。「改革・規制緩和」をゴリ押しする雇用・労働政策と行政は、これらの事実に目をつぶるばかりか、その犠牲の上に見せかけの繁栄を夢見ていると断じざるを得ません。
 07年の通常国会へ提出しようと厚生労働省がしゃにむに急ぐ「労働契約法制」「自律的労働時間制度=労働基準法改悪」はその典型です。就業規則さえ変えれば労働条件の切り下げが一方的にできるようになる労働契約、不当解雇をカネで買える制度、ホワイトカラーなどを労働時間規制から外し残業代を取り上げる労働基準法「改正」などの悪法や改悪はいりません。 私たちはこれ以上、労働者の権利をないがしろにする法改悪を絶対に許しません。また、事実上、労働時間規制の恩恵を受けない、非正規労働者の低劣な時給制度と断続的・不安定な雇用契約、違法な「請負」契約などを即刻見直すよう要求していきます。中小・非正規労働者の権利と生活のためには中小・非正規労働者自身が要求を掲げて声を上げることが大切です。06年秋の闘いでは、私たちがこれまで続けてきた運動をより具体的な牒題と運動にしていくことが求められています。私たちの要求と運動の拡大が働くものをめぐる情勢を打開していく確実な一歩となるよう多くの仲間とともに活動していきましょう。「06秋の共同行動」はこの秋、労働契約法・時間法制が審議されている労働政策審議会に対し、毎回、抗議と要請の行動を繰り返しています。この活動を継続させ、より多くの仲間を集め、全国で大きなうねりを起こしていく活動に力を入れ、一二月五日に予定されている日比谷集会を成功させ、07春の闘いへと繋げていきます。
 06秋の共同行動は、労働法制改悪反対!中小・非正規労働者の生活と権利・雇用の安定を!生活できる最低賃金制の確立を!外国人労働者の権利の確立を!国鉄一〇四七人など全ての争議の勝利を!のスローガンを現実に一歩でも近づけるため、連帯・協力して闘うことを全ての仲間に呼びかけます。ともに闘いましょう。              二〇〇六年九月二八日

 就業規則悪用の労働契約法制NO!  残業代を取り上げる労働基準法改悪NO! 06秋の共同行動 立ち上げ集会


イラク・レバノン戦争と国連・自衛隊を問う

 九月二九日、文京区民センターで「イラク・レバノン戦争と国連・自衛隊を問う! 9・29集会」(主催・新しい反安保行動をつくる実行委員会第10期)が開かれた。
 主催者を代表して天野恵一さんが、現在さまざまなところで戦争・対立が起こっているが、これらに個別に対応するのではなくトータルにとらえるスタンスがなければならない、それが今日の集会の趣旨だと述べた。


 「イラク・レバノン戦争と国連・アメリカ」と題して国際政治学者の武者小路公秀さんが講演。
 まず国連を信用するな、いろいろなことを疑うことが必要だ。反テロ戦争には、戦争の部分と戦争でない部分がある。戦争には、戦争を支える「銃後」もある。そして、戦闘の後には復興というサイクルがある。戦争に反対という場合は、これらすべてに反対するのでなければ反対ということにはならない。戦争では、壊す(武器で儲ける)、再建する(水道などのインフラで儲ける)という側面があり、多国籍企業は両方で金儲けを行う。国連やその他の国はイラク戦争を支持しないといっても、そのすべてに協力していないわけではない。戦争の流れの全体に反対しなければならないのだ。部分的に反テロ戦争に反対し、部分的に支持するというのではだめなのだ。二〇〇二年にアメリカは新しい国家安全保障戦略を発表したが、そこでは、ならず者国家が大量破壊兵器を保有しそうになったら、先制攻撃を行うとした。しかし、これはグレーゾーンを拡大させ、ひょっとしたらアメリカがやられるかもしれないと考えたら、直ちに攻撃を開始するということになる。米大統領自身が公然と国際法違反を犯すわけだ。それと米軍再編だ。反テロ戦争は世界中が戦場だから、いつでも移動してどこにも攻め入れるようにするのが狙いだ。アメリカにとって大事なのは石油とかガス、ウラン、プルトニウムなどの資源があるところであり、レバノン・イスラエルから北朝鮮までのそれらの地域を「不安定の弧」として対象としているが、とくに西のイラン、東の朝鮮民主主義人民共和国を狙っている。国連は、実際には、反テロ戦争にかなり協力しているのだ。アナン事務総長は、たしかにイラクであまりひどいことにならないようにしてきたが、やはりアメリカにとって有利なことをやってきたことは否めない。われわれは国連に反対することも必要だ。もっとも国連の中には人権委員会などのように、悪者の認定でアメリカの悪巧みを跳ね返したところもある。すなわち反テロ戦争全体に反対する運動を展開する必要があるということだ。
 劣化ウラン研究会の山崎久隆さんは、イラクやレバノンなどでの劣化ウラン弾兵器の使用の状況を報告した。
 派兵チェック編集委員会の岡田剛士さんは「イスラエル〜パレスチナ〜国連」について報告した。
 国連の決議は、一見、当事者に平等のようにいわれるが事実はそうではない。たとえばヒズボラとイスラエルの戦争での国連安全保障理事会決議一七〇一(二〇〇六年八月一一日)がそうだ。決議は「七月一二日のヒズボラによるイスラエルに対する攻撃以来」として、その根源にあるイスラエルのパレスチナ支配を無視して、ヒズボラを紛争の原因とし、またイスラエル兵は「拉致」されたとし、イスラエルに抑留中のレバノン人は「捕虜」だとする。そのうえ、イスラエルによって破壊された「レバノンの人々に財政支援と人道援助を提供すべく、直ちに策を講じるよう」「国際社会に対し」呼びかける、としているのだ。イランの核開発に反対しているが、すでに二〇〇発程度あるといわれるイスラエルの核については何も言わないのだ。


9・30東海村臨界ヒバク事故7周年東京圏行動

       
 槌田敦さんが日本の核武装化について講演

 茨城県東海村のJCO臨界事故から七周年目の九月三〇日、9・30東海村臨界ヒバク事故七周年東京圏行動実行委員会は、当日午前、経済産業省別館前で追悼と抗議集会を開き、午後六時半からは、文京区民センターで講演集会を開いた。

 初めに、たんぽぽ舎の柳田真さんが基調報告。
 JCO臨界事故では、二人が死亡、七〇〇人弱が被曝し、三一万人が屋内退避した。また二〇〇四年に起こった関西電力美浜原発事故では、多くの死傷者をだし、その他多くの人々が原子力で傷つき、あるいは死んだ。今日の朝の経産省前で、原子力事故で無念にも亡くなった人々への追悼行動を二七団体と個人の計四八人でおこなった。日本山妙法寺、NCC(キリスト者)の皆さんと共に花たばをささげ、「事故をくり返させない」ことを誓い、経産省資源エネルギー庁・原子力安全保安院、内閣府、文部科学省の三者へ、東海村臨界事故に関する政府の「報告書」の訂正を求める申し入れを行った。
 この一年間の取り組みとしては、月一回定例会を開き、月刊ニュースを発行し、国の責任を追及し、交渉をもち、話し合いをつづけてきた。またJCO臨界事故のヒバクシャの大泉夫妻の健康被害裁判を支援してきた。JCO裁判は国家の犯罪との闘いであり、国の側は、「七〇〇人の被曝はあったが健康被害は二人の死者以外なかった」として広島・長崎の被曝者を切り捨てた「急性障害〇・二五シーベルト以上論」を踏襲して被害者を切り捨て、事故原因を二人の死者の「逸説行為」とJCOのずさんな安全管理だとして、国の責任を隠蔽する主張を行っている。しかし、茨城県の「周辺住民等の事故直後の問診結果」は、周辺住民の多くが頭痛、下痢、風邪、咽頭痛や、気分が悪い、吐き気、徴熱等の広島・長崎の被爆者の急性障害とまったく同じ症状を訴えていたことを明らかにした。五月の大阪地裁判決と八月の広島地裁判決は、原爆被害は二キロメートル以内という論を否定し、「立証責任を被爆者に求めるのは不当である」「急性障害(下痢、発熱、嘔吐、皮膚粘膜の出血、重度の全身倦怠感)があったという事実が被爆程度の重要な徴憑(ちょうひょう)」とした。この判決は戦後六一年の総決算の始まりといえるほどの価値がある。
 今後、地震エネルギーが増大して原発事故多発時代が予感され、そして東京湾には原子炉が常駐(二〇〇八年に米軍原子力空母ヨコスカ母港化)、二〇〇八年もんじゅ再開、六ケ所再処理工場など放射能汚染時代となる危険が増大している。原発の監督官庁たる国の省庁が存在する地であり、三〇〇〇万人近くの人々が住んでいる東京圈での反原発(原発廃止)の諸行動に取り組む意義はとても大きい。当面の方針としては、国の責任を迫及し、反原発の大衆的基盤を東京で広げ、戦線の一翼を担いつづけ、全体を励ましていく活動を続けていく。そして定例会を大事にして、参加者の拡大と内容充実をめざす。劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワークの集会(一一月一二日)に全面協力して参加する。大泉裁判支援・もんじゅ西村裁判支援などについてもこれまでどおり取り組んでいく。

 つづいて、「臨界事故の原因と責任」と題して、望月彰さんが報告。
 JCO事故の原因について国は問題設定をすりかえている。事故は、作業者が沈殿槽にバケツ一杯六・五リットルの硝酸ウラニル溶液を入れて、七杯目で臨界が起こり、ウラン二三五は核分裂を起こした。六杯目までは臨界は起こらない。だから問題は、なぜ七杯なのかということだ。それは、動燃(動力炉核燃料開発事業団、現・原子力開発機構)が四〇リットル混合均一の注文を出していたからだ。これでは、バケツ七杯となり臨界が生じるのは当然であり、「なぜ四〇リットルなのか」こそが問われなければならないのだ。それを、水戸地検、水戸地裁は、沈殿槽使用をした現場の人に責任を押し付けている。作業者はただ動燃の注文に応じようとしただけである。バケツに沈殿槽でも四〇リットルでなければ臨界とならないのは明白であるにもかかわらず、動燃の責任の隠蔽工作が続けられているのだ。

 集会には、住民被爆者原告の大泉恵子さんと夫の昭一さんが参加して発言。JCOの転換試験場から一二〇メートルの直近で臨界事故の被曝をした大泉恵子さんは、下痢、嘔吐、頭痛、無気力感などに悩まされた同じような症状は付近の三百人からも報告されている。大泉さんはJCOを相手に裁判を起こした。しかし、政府は、被曝被害はあったが健康被害は二人の死者だけだとして「詐病」「放射線恐怖症」にすぎないとしている。
 恵子さんは次のように述べた。あの事故で人生を大きく変えられた。事故のことは忘れたいのが本音だが、いつもそのことを思ってしまう。六種類の薬をのまなくてはならない生活、そして悪夢に悩まされる毎日だが、怒りが体を支えている状況だ。
 昭一さんは、裁判では、病名カルテをめぐってやりあってきたが、医師も事故との因果関係を認めてくれるようになってきている、JCO事故を風化させてはならない、最後までがんばる、とあいさつした。

 「今、日本の原子力はどうなっているか もんじゅ・常陽と核兵器」と題して槌田敦さんが講演。
 高速増殖炉にはふたつの目的がある。オモテの目的はプルトニウムに高速中性子を当てて、増殖する原子炉ということだが、これはおおウソだ。増殖比は一・二というが、炉外時間を考えると倍増に五〇年から九〇年もかかり増殖の意味はない。さらに、炉心の再処理というものは現実的には不可能であり、実際にはまったく増殖しないのだ。しかし、ウラの目的がある。炉心に原子炉級プルトニウムを入れると、ブランケットで兵器用のプルトニウムが得られるのだ。つまり、高速炉の目的は、核兵器製造用のプルトニウム濃縮のためのものなのだ。核分裂するプルトニウム同位体は、プルトニウム239と241だ。軽水炉でできるのは、プルトニウム239は五八%、241は一一%で、残りは不純物だ。これらの不純物は核爆発を妨害する。したがって、軽水炉では核兵器は作れない。兵器用のプルトニウムを作るには、特殊な黒鉛炉、重水炉、高速炉が必要で、黒鉛炉では、九六%のプルトニウム239が得られる。多くの国ではこの方法で核兵器を作っている。高速炉では、ブランケット(外周部、天然または劣化ウラン)で、九八%のプルトニウム239が得られる。フランスは高速炉ですでに核兵器四〇〇発分を生産した。日本、ロシアがこれに続いている。
 たしかに、原子炉級プルトニウムでも核爆発させることはできる。JCO事故と同じことをさせればよいのだ。だが、それには多くの本質的欠点がある。不純物の自発核分裂の中性子により、連鎖反応が早まり不発弾になる可能性がある。不純物の中性子吸収により、中性子が消費され、臨界量が増大し巨大化する。巨大になれば、搭載できる巨大爆撃機がない。巨大ミサイルが必要となる。不純物のプルトニウム241は核爆発に使えるが、一三年と半減期が短くて、すぐに劣化してしまう。不純物の出すガンマ線が制御用電子回路を変質劣化させる。不純物の出すガンマ線で、製造時や運搬時に作業者が被曝する。そして、不純物の発熱によって原爆を包む火薬の爆発の危険(または早期爆発)があり常時冷却が必要となる。
 だから高純度のプルトニウムが必要なのだ。たとえば高速増殖炉「もんじゅ」の炉心集合体九九体のプルトニウム生産量は七・一キログラムで、プルトニウム239の濃縮率は約六〇%、ブランケット六九体では生産量〇・九キログラムで、濃縮率は九七・五%だ。もんじゅを約一年運転させれば兵器級プルトニウム六二キログラム生産できる。「常陽」は現在ブランケットをはずしているが、濃縮率九九%の兵器用四〇キログラムだ。だから日本の所有する兵器級プルトニウムは約一〇〇キロあり、これは核弾頭三〇発以上になる。
 しかし、これらを最終的に仕上げるには、特殊な専用再処理工場(RETF)が必要だ。
 一九九五年に「もんじゅ」、九七年に再処理工場、RETF建設中断、九九年JCOと事故が続発した。そして、二〇〇五年にはITER(国際核融合実験炉)を断念し日本は中性子爆弾、水爆の製造は不可能となったが、気を取り直して核開発再開の方向となった。もんじゅ、RETFを再開し、常陽にブランケットをつける。そして核弾頭製造にむかうという道だ。この実績を背景に、水爆と中性子爆弾は、アメリカから購入するつもりだ。北朝鮮のミサイル開発・核実験さわぎで、日本の核開発が発進している。二〇キロトン相当の核弾頭を運ぶ日本の巡航ミサイルは、射程距離二五〇〇キロある。この個別誘導多弾頭再突入体(MIRv)型の大陸間弾頭ミサイルには、一〇個の核弾頭が搭載できる。
 このような日本の核開発は、中国の核再開発を呼び起こすだろう。それはいっそうインドやパキスタンの核・ミサイル軍拡競争となり、全アジアは混沌化する。そうした場合、アメリカはアジア核問題に直接介入せず、これを属国日本にまかせて引き上げるにちがいない。しかし核兵器は使える兵器ではない。こうした新たなアジア冷戦によって日中両国は経済的疲弊へ陥ることになる。
 最後に日本核武装への流れを見ておこう。
 一九六五年には、当時の佐藤首相がジョンソン大統領に、核の傘の保証がなければ核武装すると迫ったが、九〇年代入ると核武装に向けての状況は加速する。
 一九九三年にイギリスの国防省が、日本は兵器級プルトニウム以外の全部品の製造完了と閣議に報告した。このことは日本政府が秘密裏に着々と核武装に向けて推進してきたものが公然化したことだ。そして、一九九四年に政府は兵器級プルトニウムの再処理工場RETFの建設を開始した。しかし、このことをマスコミは報道しなかった。同年の原水禁大会では、日本の核武装批判派を会場から追放し、それ以後、日本の核を討議しなくなっている。二〇〇二年には、今度首相になった安倍晋三が、早稲田大学で「核兵器使用も可」と講演している。そして、今年、中曽根康弘が会長をしている世界平和研究会が、非核三原則の見直しと核保有の研究をはじめたと報じられている。
 政府は核開発に向けて手を打ってきたが、反対派はこの問題への取り組みを殆どしてこなかった。それが、今日の日本の核をとりまく状況なのである。

 集会では、もんじゅ・西村裁判を応援する会、劣化ウラン兵器禁止・市民ネット、浜岡原発止めよう関東ネットワークからの発言があり、最後に集会アピール(別掲)が拍手で確認された。

JCO臨界被曝事故を忘れない9・30集会アピール

 二〇〇六年九月三〇日本日、私たちは午前一六時三五分に経済産業省前において、二人の死者を追悼し、原子力行政に対する抗議の申し入れ行動を行ってきました。また、午後の本集会に多くの賛同を集め「JCO臨界被曝事故を忘れない9・30七周年集会」を大成功のうちに終えようとしています。私たちの二度とこのような大事故を起こさせないという願いを無視するかのように、世界的に原子力発電、核燃料サイクル推進の流れになってきました。日本の推進側の人々は、これを「追い風」と言い積極的に原発、核燃料サイクルヘの道を歩もうとしています。しかし、私たちは忘れてはなりません。「もんじゅ」ナトリウム漏れの大事故、東海再処理工場のガラス固化体爆発炎上、そしてJCO核臨界事故という大事故が一〇年ほど前に連続的に起きたということを。そして今、五名の命を奪った美浜三号の水蒸気噴出、浜岡五号機のタービン羽根破損と危険な、重大事故に繋がる事故が続いているのです。この後につづくのは東海大地震とそれによって引き起こされるであろう、チェルノブイリ級の大事故を心配するのはごく自然なことでしょう。
 私たちは七年前のJCO臨界被曝事故いらい毎年「事故に怒り、風化させず、再びの事故を防ぐため」の行勣を行ってきました。そのひとつは、被曝者の闘いの支援です。JCO刑事裁判、大泉さん夫妻による健康被害裁判への支援行動です。大泉裁判の勝利は広島、長崎の原爆裁判の勝利につながり、広島、長崎の勝利は大泉さん夫妻の勝利につながります。二つ目は闇に葬られている事故原因を暴き出し責任を明らかにする追及です。そして旧核燃サイクル機構(核燃サイクル機構と原研が合併して日本原子力研究開発機構となった)が注文した四〇リットルの均一化した硝酸ウラニルを製造するという、臨界を起こさざるをえないような無理な注文が原因であることを明らかにしてきました。そしてとうとう政府見解の「クロスブレンディングが合法であるという論拠を示す事が出来ない」ところまで追いつめたのです。さらにJCOの杜撰な安全管理、監督官庁の無能、無責任等が明らかであるにもかかわらず、椎進側は事故からなにも学ぼうとせず、居直りとウソをつき通しています。いままた、かれらは六ケ所再処理工場のアクティブ試験中に起きたプルトニウムによる休内被曝や浜岡五号機タービン破損などに示される、原発・核燃サイクル権進上の問題がなんら解決されていないにもかかわらずプルサーマルを強行しようとしでいます。
 私たちは許してはなりません。数々の原発事故には報道されていない被曝者がいることを。さらには原子力発電そのものが被曝労働によって成りたっているということを。老朽原発が大事故を起こす前にとめよう。六ケ所再処理工場から放出される放射能で被曝する前にとめよう。
 ヒパクシヤをつくらない世界にするために多くの市民の力をあわせて頑張りましょう。
 
 二〇〇六年九月三〇日

 JCO臨界ヒバク事故七周年東京圈集会参加者一同


北朝鮮の核実験宣言と日本の核武装

 一〇月九日、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は地下核実験実施を宣言した。世界各国はこれを批判し、国連安保理では制裁決議が準備されている。北朝鮮は七月にミサイル発射事件を行い、その時にも大きな批判を巻き起こしたが、今回は中国やロシアまでも制裁容認と報じられているように、事態はいっそう深刻である。
 北朝鮮が国際社会から度重なる中止の要求があったにもかかわらず、それを無視して核実験を強行したことは、六者協議の共同声明、日朝ピョンヤン宣言に違反するものと言わざるを得ない。アメリカ・ブッシュ政権が北朝鮮を「悪の枢軸」として敵対し、それに日本政府を巻き込んで締め上げようとしていることに対して、日本の民衆運動は、米日の戦争策動・制裁に反対してきた。しかし、核実験実施声明によってひきおこされた事態は、アジアの平和と安定を覆し、同時にアメリカと日本の右派勢力の策動に口実を与えるものとなり、憲法改悪、日米軍事一体化と集団的自衛権の行使の動きに拍車をかける役割を果たすものであり、民衆運動の側からも批判の声明があいついでいる。

 北朝鮮の核実験の実際については報道が錯綜している。九日の実験いついても失敗説をふくめたさまざまに言われている。実際の状況は追い追いわかってくるにしても、北朝鮮がなにゆえに核兵器保有にこだわるのか。ひとつには、大量破壊兵器を持っていなかったのに、ブッシュ政権に保有しているとして攻撃・打倒されたフセインの教訓だろう。持っていないで攻撃されるのだったら、持ったほうが良い、と考えさせたのはブッシュの側にも責任がある。しかし、帝国主義からのしめつけ・敵対に対して、いかに対処すべきなのか。北朝鮮では、先軍政治が言われる。何より先なのか。党・政府より先ということで、軍部の意向が優先される政治システムであろう。しかし、「党」(政治)と「軍」(鉄砲)との関係は、つねに政治が優先されなければならない。軍人の、それも兵器(その最先端としての核兵器+ミサイル)に頼るのではなく、敵対国の人民をも味方にする国際主義の政治力の発揮こそが必要なのだが、そうした状況にすでに北朝鮮の体制はないのかもしれない。北朝鮮の緊張激化政策をそれなりに合理的なものと評価したがるむきもあるが、現在のような自らの孤立をもたらすようなやり方はまったく誤りであるとしかいえない。
 事態の打開のためには、敵対関係のエスカレートではなく、六者協議の再開など外交的話し合いの努力が各方面からなされなければならないが、局面が好転するには、いくつかの劇的な転換が前提となる。戦争ではなく平和のアジアをつくるために、各国関係が正常化し民衆の連帯・友好が増進するようにそれぞれのところでの民衆的な闘いが必要なのだ。

 北朝鮮の核実験を口実に、日本の核保有への動きが強まっている。今国会で安倍は非核三原則を堅持すると述べた。だが、安倍は二〇〇二年五月、早稲田大学での講演会で「日本も小型であれば原子爆弾を保有することに何も問題はない」と述べているのである。これは、「サンデー毎日」の同年六月二日号がすっぱ抜いた。
 早稲田大学の大隈塾(田原総一郎塾頭)で、当時官房副長官だった安倍晋三は、田原との質疑応答の中で次のような重大発言を行っている。 
 …田原「有事法制ができても、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)のミサイル基地は攻撃できないでしょう。これは撃っちゃいけないんでしょう? 先制攻撃だから」
 安倍「いやいや、違うんです。先制攻撃はしませんよ。しかし、先制攻撃を完全に否定はしていないのですけれども、要するに『攻撃に着手したのは攻撃』と見なすんです。(日本にむけて)撃ちますよという時には、一応ここで攻撃を、『座して死を待つべきでない』といってですね。この基地をたたくことはできるんです」
 田原「じゃあ、日本は大陸間弾道弾を作ってもいい?」
 安倍「大陸間弾道弾はですね、憲法上は問題ない」
 田原「ええっ」
 安倍「憲法上は原子爆弾だって問題ではないですからね、憲法上は。小型であればですね」…

 安倍は、二〇〇三年九月衆院選挙の際の毎日新聞社の衆院選挙予定候補者へのアンケートでも「日本の核武装構想」について「国際情勢によっては検討すべきだ」という項目で回答している。
 安倍だけではない。安倍内閣は、麻生太郎外相、長勢甚遠法相、山本有二金融再チャレンジ相など核武装論者の同類を多く抱える核武装志向内閣であるのだ。
 では、核武装志向があるとしても、技術的条件はどうか。槌田敦さんは「日本の所有する兵器級プルトニウムは約一〇〇キロあり、これは核弾頭三〇発以上になる」としている(本紙三面参照)。北朝鮮の核実験を非難する安倍は、いまは非核三原則だが、「国際情勢によっては」核武装もあるというのだ。 (MD)


資料・・北朝鮮の核実験に抗議し、即時対話を求めるピースボート緊急声明

 一、本日一〇月九日午前、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政府は核実験を実施したと発表しました。私たちは、核実験に対して強く抗議します。核実験は、周辺住民の生命を脅かしています。核開発は北朝鮮に暮らす人々の飢餓、貧困、人権抑圧を悪化させ、核保有は朝鮮半島、日本、そして東アジア、ひいては世界全体に対する深刻な脅威をもたらします。私たちは北朝鮮政府に対して、さらなる核実験や核兵器開発の一切を即時中止し、核兵器計画の完全放棄のために直ちに行動することを強く求めます。

 二、北朝鮮を「悪の枢軸」と断じ、軍事的・経済的圧力をかけ続けてきた米ブッシュ政権の政策が、北朝鮮の核兵器開発をエスカレートさせこの事態を招いたことで、米国中心の敵視・圧力外交の失敗は明白になりました。対話なき圧力は、問題の解決にはつながりません。ましてや軍事的対処や軍事的圧力は、かえって核危機を悪化させ、朝鮮半島における武力衝突を誘発する可能性を大いにはらんでいます。私たちは今こそ、北朝鮮に対する敵視外交の根本的な変更が必要であると考えます。

 三、各国政府はただちに、今回の危機を平和的に解決するため、北朝鮮との対話に向けた外交を行うべきです。その場合、昨年九月の六カ国共同声明の原則、すなわち、北朝鮮が核を放棄すると共に、日米が北朝鮮の安全を保証し国交正常化と経済協力への努力を行うという包括的枠組みが、対話の土台となるべきです。六カ国政府は、六カ国首脳会談の緊急招集や、二国間直接対話など、あらゆる形で北朝鮮とのハイレベル対話を即時に行うべきです。これから行われる国連安保理の審議においても、同じ原則が適用されなければなりません。

 四、私たちは、ヒロシマ・ナガサキの人類史的経験に基づき、一日も早い核兵器の全面的廃絶を改めて求めます。今なお被爆に苦しむ朝鮮半島の被爆者も、同じ願いをもっていると確信します。アメリカをはじめとする核保有国は、核軍縮交渉を誠実に行い完結するという国際合意を遵守していません。私たちは、すべての核保有国に対して核廃絶へ向けた具体的行動を求めると同時に、核兵器全面禁止条約の即時交渉開始を求めます。私たちは、北朝鮮の核実験を口実に日本や他の周辺諸国で核保有を主張しようとするいかなる動きに対しても、強く反対します。


 五、北朝鮮の核危機は、南北朝鮮の分断に象徴される東北アジア地域の冷戦構造の表象でもあります。すなわち核危機は、日本による過去の戦争責任および冷戦構造下における拉致問題が未解決であることと同じ根をもつ問題であると私たちは考えます。日朝国交正常化交渉の空白が、今回の事態をもたらしたとも言えます。核危機の真の解決には、政府および市民のレベルで、この地域に脱冷戦をもたらし、地域に協調的な平和体制を作り出していくための幅広い取り組みが不可欠です。このような状況の実現のために私たちは、朝鮮半島および朝鮮半島をはじめとする東北アジア地域の市民・NGOと連帯して、積極的に行動しいていきます。

 二〇〇六年一〇月九日

 ピースボート共同代表 川崎哲、櫛渕万里、吉岡達也


せ ん り ゅ う

  アフガンもイラクもだめにさせたやつ

  世界には毎日あります戦闘ニュース

  してはならぬもってはならぬ核実験

  米軍へ2兆3兆ポンと出る

  「いざなぎ」の風は富豪にふくばかり

  カラ出張カラ残業おや俺はサービス残業

                      ゝ 史

2006年10月


複眼単眼

   安倍晋三が引き継がなかった二つのDNA

 安倍晋三という男の人気は「見た目」と「華麗なプリンスの血脈」だというのが大方の政界雀の言うところだ。
 「見た目」というのはそれぞれのご趣味があるだろうから「ご自由に」という以外にない。「蓼食う虫も好きずき」という言葉があるくらいだから。
 ところで「血脈」といわれるもの、最近はDNAなどとも言う。筆者はあまりこういう議論は好まないし、それほど重要な要素とも思わないが、今回は世間で話題のネタになっているのでお許しいただこう。
 安倍晋三首相の母方の祖父は悪名高い「昭和の妖怪」の岸信介、その弟で晋三の叔父に当たるのが佐藤栄作・元首相、晋三の父は安倍晋太郎・元外相、晋三の父方の祖父は安倍寛・元衆議院議員。そして晋三は自らの著書「美しい国へ」でくり返し、この岸信介おじいちゃんの思い出を語り、それを讃える。
 岸信介は戦前、日本の傀儡「満州国」の経済指導を行い、東条内閣の商工大臣を務め、戦後にA級戦犯容疑者として拘束された。その後、政界に復帰し、六〇年安保改定に際して強行採決を行い、民衆運動の弾圧に自衛隊の投入まで検討した悪名高い人物だ。晋三はこの祖父を尊敬している。
 彼の新国家主義のDNAのゆえんだ。このあたりは最近のマスコミでもしばしば書かれるのでご存じの通りだ。
 しかし、晋三の「華麗な血脈」で、あまり知られない人物が二人いる。
 一人は父方の祖父の安倍寛だ。彼は一九四二年の東条内閣のもとで行われた衆議院選挙で、山口県のある選挙区から大政翼賛会の非推薦で東条内閣の無謀な戦争を批判しながら出馬し、当選した。当時、数少ない非推薦議員なのだ。これとは対称的に岸信介は、同じ山口の別の選挙区から大政翼賛会の推薦で当選した。
 安倍寛は一九四六年、病を得て、五二歳で世を去る。晋三はこの八年後に生まれる。晋三はどうやらこのDNAは受け継がなかったらしい。
 もう一人、安倍晋三の首相就任の姿を見ないまま、今年の八月一日になくなった西村正雄(元みずほホールディングス会長)という人物がいる。彼は興銀頭取を経て、第一勧銀と富士銀の統合をすすめた金融界の大物だ。
 安倍を「しんぞう」と呼び捨てにする関係にある西村は、父・晋太郎の異父弟で、晋三の叔父にあたる人物だ。西村は最近、「九条の会」の活動で有名な経済同友会の終身幹事・品川正治氏とも交友があったようだ。
 晋三はこの西村についてもあまり語らない。
 西村は月刊誌「論座」七月号で、「次期首相は靖国神社参拝を控えるべきだ」「A級戦犯が合祀(ごうし)されている靖国神社への参拝を正当化する理屈は国際的には全く通用しない」「テレビに出る回数が多く、若いとか格好いいとかで選ばれることだけは避けなければならない」と指摘していたのだ。西村にインタビューしたあるジャーナリストは西村の言として「靖国神社参拝は心の問題ではない。歴史の問題だ。一銭五厘の赤紙一枚で強制的に徴兵されて亡くなった兵士と、戦争を指導したA級戦犯が合祀されている靖国神社への参拝が、国際的に『心の問題だ』という理屈で通用しないことが晋三にはわかっていない」と語ったと伝えている。
 この二人の爪のあかでも煎じて、安倍晋三首相に飲ませてやりたいと思うのは筆者だけではないだろう。 (T)