人民新報 ・ 第1214号<統合307>(2006年12月4日)
目次
● 教育基本法改悪・防衛「省」法案阻止!
● 反基地運動の世界ネットワークを
● 「アジアの平和を九条の心で」 「九条の会」憲法セミナー
● 8時間労働制を破壊する 日本版エクゼンプション反対
● 日本の核武装疑惑を追う 反原子力研究所(準)が講演会
● 本紹介 / 春原 剛(著) 『
ジャパン・ハンド 』 ( 文春新書 )
● KODAMA / 北海道でも「君が代」処分取り消し採決!
自民党大阪府連への申し入れ
● 複眼単眼 / 「ハチドリのひとしずく」と「愚公、山を移す」
● 年末カンパのお願い (労働者社会主義同盟中央常任委員会)
教育基本法改悪・防衛「省」法案阻止!
安倍内閣はこの臨時国会ですべての諸悪法を成立させようとしている。いま、小泉政治の負の側面が噴出してくるなかで、安倍内閣支持率もジリジリ下降してきている。諸法案に対する反対の運動はここにきて大きく盛り上がり、一方で国会会期の残りも少なくなってきている。もし、これらの法案の成立が先送りされ、来年の通常国会でもまだ審議が続いているなら、安倍内閣の反動性がいっそう明らかになり、夏の参院選での自民党の敗北の可能性が大きくなる。それゆえ、自民党・公明党はなりふりかまわず国会審議を強行しているのである。しかしそれは同時に、反対運動がもっと強力にそして広範に全国各地に広がり、諸法案が今臨時国会での成立を阻止できれば、来年からの民衆運動の前途は大きく開けて来ることを意味するのである。ここ数日の一日一日の闘いの意義はきわめて大きい。全力を挙げて安倍内閣との闘いを強めていこう。
自公両党は、は十一月十六日、衆議院本会議において、野党が欠席するなか教育基本法改悪法案を単独・強行採決を行い、現在、参議院特別委員会で審議中だが、この間、いじめ・自殺などの教育問題が連続して明らかになり、タウンミーティングにおける「やらせ」が暴露された。新自由主義・競争激化の自民党政治が教育現場を劣化させていることこそが問われなければならないのに、ひたすら改悪法案を成立させよとしている安倍の姿が目立つ。また、十一月三十日に防衛庁の「省」昇格法案を衆院で通過させた。これは、防衛庁を省に昇格させ、自衛隊の海外派兵を本来任務に位置付けるものだ。また、一部マスコミが今国会では見送りなどと報じた共謀罪新設法案についても政府・与党は成立強行の姿勢を変えていない。改憲のための手続き法(国民投票法)案も衆議院憲法調査特別委員会の議事が進められているなかで油断できない状況だ。こうして国会をめぐる情勢は、反対運動の展開とそれに呼応した野党の奮闘で攻防が続いている。
最終盤を向かえた国会闘争で安倍内閣の諸悪法案の強行採決を許さない運動をやり抜こう。さきにも述べたように安倍内閣も時間的余裕がなくなってきている。自民党が攻撃のピッチを上げているのは、アメリカとともに、その一翼を担って、世界的な規模で戦争ができる体制を作ることをせかされているからである。そのための防衛「省」法案であり、軍事国家として取り締まり・弾圧強化の共謀罪新設であり、国のために死ぬことを強要する教育基本法改悪であり、集大成としての憲法の改悪なのである。 だが、安倍が最重要視する日米(軍事)同盟の強化の方針は日本を破滅に追い込むものでしかない。ブッシュ政権の要請に積極的に応じて派兵したイラクの状況がそれを物語っている。イラク戦場では米英軍は勝利の展望を失い、内戦状況に陥り、カイライ・マリキ政権は崩壊寸前だ。イラクだけではない。アメリカの政策は中東地域全体で破綻している。それも中東地域だけではない。アメリカが自分の「裏庭」だとして搾取・収奪してきた南米でも次々と反米左派政権が誕生している。
反米・非米が世界の趨勢なのであり、安倍内閣のやろうとしているのは、この流れに逆らうものでしかない。
教育基本法改悪を阻止しよう!
改憲のための手続き法案を潰そう!
防衛庁の「省」昇格反対!
共謀罪の新設反対!
断固として安倍内閣の攻撃に反撃していこう。
反基地運動の世界ネットワークを
全世界で反戦・反基地・反米の闘いが巻き起こっている。来年三月には南米エクアドルで「世界反基地ネットワーク設立総会」が予定されている(そのエクアドルでもつい最近反米左派政権が誕生した)。これは、二〇〇四年の「第四回世界社会フォーラム」(インド・ムンバイ)が開催され、その時に、「国際反米軍基地会議」(三十四カ国が参加)が開かれ、参加者は「外国軍基地撤廃国際ネットワーク(世界反基地ネットワーク)」の結成に合意したことの具体化である。
十一月二十五日には、エクアドルでの設立総会に向けた「アジア太平洋反基地東京会議・公開シンポジウム〜米軍再編と闘うアジア太平洋の民衆」が東京・全水道会館で開かれた。
はじめにコラソン・ファブロスさん(非核フィリピン連合、世界反基地ネットワーク・エクアドル設立総会国際準備委員会)が基調提起。
アメリカは世界的な基地再編を行っている。ことは緊急だ。世界的な反基地ネットワークをつくって闘わなければならない。来年のエクアドルでの設立大会を成功させよう。
闘いの報告のはじめは、フィリピン・ミンダナオのオクタビオ・ディナンポさん。(ミンダナオ州立大学政治学)
アメリカはアフガニスタンにつづいてミンダナオでも反テロ戦争を行っている。アメリカは共産主義者、テロリストをでっちあげてもつくりだそうとしているが、そうしないと彼らの戦争機構がもたないのだ。
つづいて韓国での平澤(ピョンテク)米軍基地拡張の闘いをコ・ユキョンさん(平澤汎国民対策委員会)が報告。
平澤では、警察、軍隊などが反対住民に大弾圧を加え、村を鉄条網で封鎖している。住民の人たちは孤立させられ収入もない状況に追いつめられ、委員長も逮捕・起訴され二年の実刑判決をうけた。苦しいときこそともに闘う仲間がいるということを示すことが大事だ。
つづいて、沖縄辺野古のたたかいについて安次富浩さん(名護ヘリ基地反対協議会)、神奈川での反基地闘争について金子豊貴男さん(相模原市議、日米軍事再編・基地強化と闘う全国連絡会)が報告した。
また、オーストラリア、グアム、ハワイからの発言があった。
十一月二十八日には、日比谷野外音楽堂で、米軍基地の縮小・撤去を実現しよう、原子力空母の横須賀母港化反対、教育基本法の改悪を許さない、憲法改悪のための国民投票法案を廃案へ、防衛庁の「省」昇格反対、共謀罪の新設反対のスローガンで、「米軍再編はいらない! 戦争国家を許さない!11・28全国集会」が開かれ、主催のフォーラム平和・人権・環境の福山真劫事務局長が方針提起。
今国会では教育基本法改悪をはじめ本集会のスローガンであげたような悪法が成立させられようとしている。安倍内閣は集団的自衛権の行使を言っているが実際には自衛隊が米軍の傭兵になるということだ。各地の闘いをむすびつけて憲法九条をまもりぬき、全世界の運動と連帯していこう。
国会情勢の報告は、近藤昭一・民主党衆議院議員と福島瑞穂・社民党党首がおこなった。
つづくアピールは、韓国・民主労総のカン・チョルウンさんをはじめフィリピン、ハワイなどアジア太平洋反基地東京会議の国際ゲストからおこなわれた。神奈川平和運動センター、沖縄平和運動センターからの報告があり、最後に日教組副委員長の高橋睦子さん、許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さんが特別アピールをおこなった。
集会終了後は、国会へむけてのデモで、衆参の議員面会所で社民党、民主党の議員とともにシュプレヒコールをあげた。
「アジアの平和を九条の心で」 「九条の会」憲法セミナー
十一月二十五日、明治大学アカデミーホールで「アジアの平和を九条の心で」を掲げて「九条の会」憲法セミナーが開かれた。これは、六月に開かれた「九条の会全国交流集会」で、呼びかけ人からの新しい四つの訴え(@「九条の会」アピールに賛同し、思想・信条・政治的立場などの違いを超えた、本当に広範な人々が参加する「会」をつくり、過半数世論を結集しましょう。A大小無数の学習会を開き、日本国憲法九条のすぐれた意義と改憲案の危険な内容を学び、多くの人びとの中に広げましょう。「九条の会」としては全国数カ所で「九条の会憲法セミナー」を開催します。Bポスター、署名、意見広告等によるアピール、マスコミ等への手紙・電話・メール運動、地元の政治家や影響力をもつ人びとへの協力要請など、九条改憲反対のひとりひとりの意思をさまざまな形で表明しながら、「会」の仲間を増やしましょう。C「九条守れ」の世論を大きく広げるため、「会」を全国の市区町村・丁目・学区、職場・学園に網の目のようにつくり、相互のネットワークを強めて情報や経験を交流し、協力しあいましょう。)がだされ、その具体化として開催されたものだ。
加藤周一さん(評論家)のあいさつ
九条の会の目的は仲間を増やし運動を広げることだ。このセミナーは、広げるとともに認識を深めていくために開かれた。九条は平和憲法の中心だが、いまそれが変えられようとしている。憲法をめぐっては、平和かどうかとういうことの他に独立かどうかという国の独立の度合いが問題とされなければならない。平和と独立、これは二つの独立変数で、四つの組み合わせが可能だ。一つは護憲で独立、二つは護憲で従属、第三が改憲で独立、最後は改憲で従属だ。第一の場合が一番理想的で、外交政策の自由の幅は大きくなる。第二は独立はしないが戦争しない、自衛隊員は死なないというこれまでのかたち。三つ目のは米国と結ばないで日本が軍国主義・核武装に進もうとすることでアジアとの緊張は激化し、アメリカもこれは望まない。今進んでいるのは改憲・従属という方向だ。日本のためでなく外国のための戦争が出来るようにするための集団的自衛権を行使するということで、自衛隊員が多数死ぬことになる。この道も悲惨な事態をもたらす。だから、九条を守る、同時に外交的自由を拡大する。軍備ではなく外交的手段で平和環境をつくれば、アジアで歓迎される。
スピーカー@ 澤地久枝さん(作家)
世の中あまり変わらないというが、しかし、アメリカの中間選挙での野党の勝利などを見ると変化の兆しを感じることが出来る。日本政府はブッシュ政権が永遠であるかのように思って、イラクにも自衛隊を出した。小泉純一郎という人はアメリカの子分であり、忠犬ポチのようなものだが、彼にレッドカードをだして辞めさせることはできなかった。このようなことにしないためには、若い人たちにわかってもらえる話をしていかなければならない。加藤周一さんは、老若の結びつきに希望があると言っている。
昭和三(一九二八)年に「戦争ノ抛棄ニ関スル条約」ができ、日本は翌年に批准した。それは、国家の政策遂行の手段としての戦争を放棄し、あらゆる国際紛争を平和的に解決することを規定したものだった。そこでは「人類の福祉を増進すべき其の厳粛なる責務を深く感銘し」、「人民間に現存する平和及友好の関係を永久ならしめんが為国家の政策の手段としての戦争を率直に抛棄すべき時期の到来せること」「相互関係に於ける一切の変更は平和的手段に依りてのみ之を求むべく又平和的にして秩序ある手続の結果たるべきこと及今後戦争に訴えて国家の利益を増進せんとする署名国は……」とあります。この時代にすでにこうした条約があった。ところが、昭和六(三一)年九月十六日に、いわゆる満州事変をおこしてこれを破ったのが日本で、つづいてドイツが昭和十四(三九)年九月にポーランドに侵攻した。これに対し一九四一年の八月にチャーチルとルーズベルトは英米共同宣言で「両者は、世界のすべての国民が、実際的および精神的のいずれの見地からみても、武力の使用の放棄に到達しなければならないと信ずる。陸、海および空の軍備が、自国の国境外における侵略の脅威を与えまたは与えることのある国々において引続き使用される限り、いかなる将来の平和も維持され得ないのであるから、両者は、一層広範かつ恒久的な一般的安全保障制度が確立されるまでは、このような国々の武装解除は欠くことのできないものであると信ずる。両者は、また、平和を愛好する国民のために、恐るべき軍備の負担を軽減する他のすべての実行可能な措置を援助し、かつ、助長する」とした。また、四五年六月の国際連合憲章では「国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること並びに平和を破壊するに至る虞のある国際的の紛争又は事態の調整又は解決を平和的手段によって且つ正義及び国際法の原則に従って実現すること」などを規定した。これらが、日本にたいする敗戦を勧告するポツダム宣言になっている。ポツダム宣言は、日本がこのまま戦争を続けるなら「吾等の軍事力の最高度の使用」によって、すでに敗北していたナチス・ドイツ以上の徹底的な打撃で「日本国軍隊の不可避かつ完全なる壊滅」「日本国本土の完全なる破滅」を通告していた。こうしてようやく日本は敗北を受け入れるようになったのだ。だが、いま、経団連など財界のひとたちは、兵器生産の需要がほしいということで、不戦条約や国連憲章などそれこそ人類の英知の先端であるといえる憲法を変えようとしている。かれらは人びとの生命を代償にして得たうまみを忘れられないのだ。アジアの人びとの恨みもわすれて、吸血鬼のような夢を見ている。
一五年戦争は、中国、朝鮮、台湾、シンガポール、パラオ、インドネシア、ビルマ、旧インドシナなどで多くの犠牲と恨みを生んだ。だから、アジアではヨーロッパがEUを創ったようにはならない問題が多く残されている。かつて、日本は、アジアはひとつ、欧米の植民地支配からの解放をかかげて戦争を行ってきたが、日本はアジアに大変な迷惑をかけた過去を持っている。これを解決して、二一世紀のアジアはアメリカ型でもなくヨーロッパ型でもない、平和で豊かな地域になって行くべきだが、そのためには、一国だけではだめで、アジアがひとつになって、それぞれ足りないところを補い合うことが必要だ。すでに、南米では多くのことが行われている。たとえば同地域では核を完全に封印している。こうしたことは、アジアでも可能だし、人類に先駆けて平和をかかげている今の憲法を大事にしていかなければならない。
しかし、政府は、憲法を変え、集団的自衛権を行使し、自衛隊は海外へ出て行くし、血も流すことをやろうとしている。日本はニセ独立国で、アメリカの傭兵の様にして戦争に行っている。しかし、イラクはどうなっているか。ブッシュは孤立し追い詰められている。
九条はぎりぎりの歯止めだ。最大公約数でみんなで九条を守ることが大事だ。安倍は「美しい国」を実現するために新憲法を制定するといっている。しかし、かれの言葉はカサカサでなんの感動も呼び起こさない。現在、かつてのレッドパージから朝鮮戦争に向かう時と同じような雰囲気だ。姜尚中さんは、権力との闘いでは、相手に一〇〇%の勝利を与えないことが負けないことだと書いているが、私はなんとかして勝ちたい。もちろん簡単な策はないけれど。
スピーカーA 辻井喬さん(作家)
このごろ政治家がおかしい。教育基本法改正が言われているが、タウンミーティングでの「やらせ」などをみていると、政治家こそ教育しなおさなくてはならない。
いまの状況をみると長期戦は覚悟せざるをえないが、悲観していない。九条の会が全国に広がっているのを見るとそういう気持ちが強くなる。
日本の外交で光っていた時期は、明治の日清戦争くらいまでと敗戦後二〇年たったくらいまでだ。
いずれも経済力・軍備も弱い時期だった。そうしたときには、諸外国を見ながら必死になって考えた外交をやった。しかし、軍備を持つようになると威嚇外交に変わり、こうして大正の終わりから敗戦まで破滅の道をたどったわけだ。
だが、ところがこの時代を栄光の記憶としている人びともいる。そうした考えが、今もODAで言うことを聞かせようというところに残っている。そして、経済では市場原理主義も出てきて、ホリエモンなどのようなのがでてきて、社会的な格差は拡大し、財政も悪化した。これが今の状況だ。
戦争を知らない世代が多くなり、国民相互間の不信感もあり低投票となっている。反対してもだめだろうとか、自分に関係ないというような風潮がある。こうした状況を克服するためには、こちら側のタブーをなくしていくことが必要になる。たとえば、ナショナリズム、共同体、伝統などにどういう立場をとるかだ。ナショナリズムにも良いナショナリズムもある。それと大衆社会へいかなる対応をしていくかも考えられなくてはならない。中曽根などはそういう努力をしているが、もっとこちらの人間もやらなければならないだろう。そうしなければ勝てない。
8時間労働制を破壊する
日本版エクゼンプション反対
八時間労働制という労働者の生活の根底が破壊されようとしている。政府与党が準備している日本版「ホワイトカラー」エクゼンプションがそれだ。これは、政府の言うようにホワイトカラーの、それも高収入の労働者だけが対象になっているというのは全くのウソだ。財界が求めているのは労働者全体に労働時間規制をなくそうとするもので、例外的な労働者はいなくなる。
これは、ほとんどの労働者を、時間のしばりなく、会社の好きなように働かせるための法律なのである。現在、労働政策審議会で急ピッチで審議中であり、十二月にも最終報告・建議、そして来年の通常国会に法案が提出されるという予定で進められている。
十一月二十八日には、労働時間規制の撤廃(日本版エグゼンプション)に反対する全国一斉統一行動が展開された。同日は、一九一九年にILO(国際労働機関)で一日八時間労働に関する条約が採択された記念すべき日だ。東京では秋葉原での街頭パフォーマンス、そして厚生労働省前での抗議・要請行動が行われた。
現在、多くの労働組合が反対運動に立ち上がってきている。十二月五日には日比谷野音で大規模な集会が予定されている。集会の主催者は、労働時間規制(八時間労働制)の撤廃は過労死を招き、この国を破壊する!労働時間規制撤廃(=労働基準法改悪)法案の来年通常国会上程反対!労使対等の労働契約法を制定しよう!をスローガンに多くの労働者に結集を呼びかけている。
日本の核武装疑惑を追う 反原子力研究所(準)が講演会
十月九日の朝鮮民主主義人民共和国の核実験宣言を「好機」ととらえた政府・自民党の要職にある一部右翼政治家を先頭に日本の核武装論にむけて議論を開始せよとの声が巻き起こった。麻生太郎外相、那中川昭一自民党政調会長、そして中曽根元首相も同様の意見だし、麻生以外の閣僚にも核保有論者がいることは良く知られている。
かれらは一様に、核兵器の保有には反対だが、議論はすべきだなどという論理で、実際には核兵器保有の世論を作り出そうとしているのであり、建前上、非核三原則を言う安倍晋三首相自身が、かつての核保有をすべきだと公言していたように、表面上の言動はともかく安倍内閣は実質的には核武装に道を開こうとする志向性がきわめて強いと見てよいだろう。もし、安倍が非核三原則を国是であるというのなら、それを否定する者たちを批判し、役職から解任すればよいのである。そうこうしているうちに、久間章生防衛庁長官は、非核三原則のうち「持ち込ませず」との原則について「議論を整理した方がいい」と述べ、核を搭載した米軍艦船の日本領海内通過を容認すべきだとの考えを明らかにするなどしている。核武装はもちろん憲法に違反するものであり、麻生、中川らを即時辞任させなければならない。
十一月二十三日に、東京で、反原子力研究所(準)の主催、原発事故と日本の核武装批判研究会、たんぽぽ舎・いろりばた会議の協賛で「ニッポン核武装の疑惑を追う講演・討論会」が開かれた。
はじめに、主催者の柳田真さんが、日本の核武装論議が右からいっせいに出される中で、これに対抗する民衆の側の議論・論理、運動が乏しいが、今日の集会を民衆の側の確たる理論を作り上げていくための討論の場とし運動の第一歩としたいと、挨拶した。
はじめに市民の意見30の会・東京の井上澄夫さんが「『核武装論議の公的解禁』が私たちに問うもの」と題して問題提起。
これまで核武装論は戦後、保守勢力に長く潜在し、ときどき間歌泉のように湧き出してきたが、今回は「北朝鮮の核実験」を契機に噴出した。ただちに政策化できる状況にはないとしても、解釈改憲による集団的自衛権の行使は可能だとする動きや非核三原則の「持ち込ませず」原則の見直しなど、米日軍事一体化の米軍再編と安倍の言う「戦後レジームからの脱却」路線とがからみあう政治的文脈の中で浮上している。この点が重要である。現在、被爆体験の風化、原水禁運動の分裂と形骸化という戦後反戦・反核運動(平和運動)の劣化と衰退がある。この原因はヒロシマ・ナガサキヘのもたれかかりである。被爆者運動も米国政府の原爆投下責任の追及や戦争をしかけた日本政府の責任追及と国家賠償要求が十分ではなかった。たとえば、前回のNPT再検討会議の際、広島の市民団体が米紙に掲載した意見広告では原爆による被害の深刻さと核廃絶を訴えたが、真珠湾奇襲攻撃は謝罪せしていない。根本的問題は、戦争責任を追及し、戦後補償を実現させることができていないことである。一九八〇年代初めには日本でも「反核」運動のもりあがりがあった。しかし、ヨーロッパでは中距離核戦力の配備で恐怖がひろがって現実に迫る運動になって冷戦終結の呼び水の一つになった。だが、日本では「核の傘」に守られていること、すなわち安保体制を問わない抽象的な運動でしかなかった。
このように反戦・反核運動のヒロシマ・ナガサキヘの過度の依存があり、政府のいう「非核三原則」も実際はどうなっているのかという十分な検証もなされずに安心してきたという怠慢、そして憲法上、核兵器の保有・使用は可能だという政府見解に対する軽視などが重なって、今回の核武装論議の公的解禁をもたらしたといえる。
「非核三原則」にしてもライシャワー・元駐日大使の発言(八一年)があり、米艦船は日本寄港時の核積載について「イエスともノーとも答えない」ということで、安保条約に基づく日米の事前協議もまったく開かれていない。そして、一九六三年には当時の大平外相が核積載米艦の日本寄港・通過を了解していたという文書が一九九九年に暴露されている。
現在、「戦争ができる国」、すなわち派兵国家化の完成に向けた動きが強まっているが、これは、日本資本の海外活動と権益を、米日共同の軍事力ないし単独の軍事力で防衛することが、日本支配層・財界の生き残り戦略としてあるからだ。かれらにとって朝鮮統一と中国の大国化が恐怖である。「明治」期以降の対アジア政策は朝鮮半島に手をかけることから始まったがいままたそうした道をたどろうとしているのである。
安倍政権は、「集団的自衛権行使」について明文改憲前の解釈改憲による合憲化のために個別具体的なケースを設定しようとしている。たとえば、日本海で伴走している米日の軍艦のうち、米艦が北朝鮮に攻撃されたとき、海自の艦船が支援・反撃するのは、集団的自衛権の行使に当たらない、とか、米国に向かうミサイルを日本が打ち落とすのは日米同盟を堅持するため当然とかいうのがそれだ。
では安倍のような道を許さないためにどうすればよいのか。米朝は対話で問題を解決し、拉致問題もふくめて諸懸案を日朝国交正常化の中で解決することが必要だ。また日米の安保同盟を両国の平和友好条約に変えること、そして自衛隊を縮小させ、最終的には解体することだ。東アジアの動乱に対して日本も核武装をというのはきわめて危険な考え方であり、批判していかなければならない。
つづいて、反原子力研究所(準)代表の槌田敦さんが、「日本核武装によるアジア核戦争の恐怖」と題して報告。
北朝鮮の核実験は、技術的には失敗であったようだが、日本では核攻撃されると大騒ぎしたが、この議論は見当違いもはなはだしいものだ。この核兵器は日本を対象にしたものではなく、北朝鮮の目的は自らを核兵器保有国として国際社会に認知させることであるからだ。
そもそも、北朝鮮が日本を攻撃するのであれば、核兵器など使用する必要はない。十一月三日に、中川政調会長が講演しているように、日本の原発のどれかをミサイル攻撃すればよいのである。しかし、この衝撃的な中川発言は、マスコミではほとんどとりあげられていない。
軽水炉型の原子炉では兵器級プルトニウムを作ることはできない。それができる原子炉は、黒鉛炉、重水炉、高速炉である。黒鉛炉は、同位体純度九六%の兵器級プルトニウムを生産でき、米ロなど世界の原爆のほとんどはこれで作ったものを用いている。重水炉も兵器級プルトニウムを作ることができる。インドの核実験は、カナダから購入した重水炉で得たプルトニウムを用いたものである。日本はこのカナダの原子炉を買う予定であったが、アメリカの反対でこの原子炉を買うことができなかった。高速炉とは、炉心に他の原子炉で作った同位体純度六〇%の原子炉級プルトニウムを入れて、高速中性子を発生させ、これを周りに配置した天然ウランのブランケット(毛布)に当てて、同位体純度九八%の兵器級プルトニウムを製造する原子炉である。つまり、プルトニウム濃縮用の原子炉である。日本は高速炉を二つもっている。「常陽」と「もんじゅ」だ。常陽は、日本独自で開発した高速炉であるが、アメリカの介入で現在はブランケットを外し、兵器級プルトニウムを生産していない。しかし、運転初期には兵器級プルトニウムを生産していた。そして、ブランケットを復活すれば、いつでも兵器級プルトニウムを生産できる。常陽に燃料を供給していたのが一九九九年に臨界大事故を起こしたJCOだ。もんじゅは、約一年運転したところで、九五年にナトリウム漏れ事故を起こし、現在運転していないが、復旧作業が進められている。これを再処理してプルトニウムを抽出すれば、ただちに原爆を作ることができるが、そのための再処理工場(RETF)の建設もほとんど終わっているのである。
問題なのはこうした事実が隠されていることだ。マスコミは事実を知っていながら一切報道しない。そして、もっと問題なのが脱原発運動や原水禁運動の一部指導者も、この事実を隠すことに協力してきたし、多くの知識人は、原子炉級プルトニウムも核兵器の材料だと言い続けている。
そして日本が核開発をしない理由として、核開発をすれば平和利用に限られているウランの購入ができなくなるとか、核拡散防止条約に違反することになる、核実験場がないなどをあげる人がいる。しかし、このような条約は、核兵器を所有してしまえば、何の制約でもないし、日本は太平洋に東京都に所属する小さな島をたくさん持っており、そこを実験場にすればできる。
原爆については多くのうそがある。アメリカは「戦争を終わらせるために原爆を使った」と言い、原爆による国民の被害の大きさに天皇が降伏を決意したということになっている。だが、アメリカは原爆を投下するために戦争を長引かせたのであり、原爆投下の目的は、人的被害の大きさを試すためであった。
日本原水爆禁止運動は、「原爆は怖い」としか言わない。その結果、世界中の国々で「その怖い兵器を持とうではないか」ということで世界的な核開発競争にしてしまったのである。日本の原水爆禁止運動は逆効果であったというしかない。
今回の北朝鮮の核実験とミサイル開発は、日本の核開発とミサイル開発を誘発することになるだろう。日本の巡航ミサイルは、二〇キロトン相当の核弾頭の運搬が可能で、射程距離が二五〇〇キロという。このMIRV型(個別誘導多弾頭再突入体)の大陸間弾頭ミサイルは、一〇個の弾頭を搭載できるという。そして、日本が核開発を宣言すれば、中国も核を再開発することになり、韓国も開発するであろう。インドやパキスタンを含め、全アジアの核情勢は混沌化する。この状況は、米ソ冷戦のアジア版であって、この使えない核兵器の開発のために、日中両国は経済的に疲弊することになる。アメリカは日本の核武装を認め、アジアの核を属国日本にまかせて、引き上げようとしているのである。将来、中国との対決がエスカレートして、アメリカが核を使用すれば、中国の核がアメリカを襲うことになるからである。しかし、その上もしも、日本が中国と同盟して、アメリカと対抗することになったら、アメリカにとってとんでもないことになる。このようなことにさせないために、アメリカは、ワシントン州にある米陸軍第一軍団司令部を日本の首都圏の座間に移転して、統合作戦司令部とする。しかも自衛隊司令部もこの座間に呼び寄せることにした。目的は属国日本の裏切りを監視し、これを防止するためである。
劣化ウラン研究会代表の山崎久隆さんは「日本核武装と非核三原則の崩壊」と題しての報告。
アメリカは十月十四日に、北朝鮮の核実験のものと見られる放射性物質を確認し、核爆発が起きたことを確認したと発表したが、具体的な中身はいっこうに明らかでない。何がどれだけ検出されたのかまったくわからない。核実験の確認を行ったのは、米空軍観測機のC130輸送機を改造したWC130であり、日本海上空で採取された空気中に含まれる放射性物質であったはずである。核実験により生ずる核分裂生成物は、セシウム、ストロンチウム、ヨウ素、キセノン、クリプトンなど多種多様だが、クリプトンもキセノンも再処理工場からも出ている。核実験の「証拠」としてキセノン133を検出したというのであれば、そのキセノンに出身地を尋ねなければならない。本当に北朝鮮の核実験場なのか、最近稼動するようになった六ケ所村の再処理工場なのかが明らかにされる必要がある。注目すべきことに、核実験の探知にも大きな悪影響を与える六ケ所再処理工場は、十月九日二一時三〇分ごろから使用済燃料のせん断を停止した。再処理工場は核実験の検出に悪影響が出るから中止させられたのだろう。つまり、北朝鮮の地下核実験は、再処理工場が稼動していては検出できなくなると恐れられるくらいの「微量」しか観測されないであろうと想定されたわけだ。
日本の核問題で言えば、重大な意味を持つのは横須賀に原子力空母が配備されようとしることだ。北朝鮮の核実験を口実に、なし崩し的に原子力空母と核兵器をいっしょに配備して、国会では艦船による核の持ち込みは「非核三原則」に含まないという見解を公式のものとして、その後の陸上配備に道を開こうとするのではないかと思われる。久間防衛庁長官の発言がすでにでている。日本核武装とともに日本が核攻撃の出撃拠点となる。つまり日本が核を使う側に立つということになる。北朝鮮の核実験で大騒ぎの日本だが、本当に怖いのは、それに誘発されて起きる日本もふくめた東アジアの大軍拡競争である。そうしたことにならないようにするためにも、核武装につながる一切の原子力開発を、ただちに放棄すべきなのである。
本紹介
春原 剛(著) 『 ジャパン・ハンド 』
文春新書・767円
安倍は、小泉の敷いた路線をいっそう進めて、米日軍事一体化にむけて集団的自衛権の行使を具体化しようとしている。その合理化に、いままでアメリカに一方的に守ってもらうだけだった「安保体制の双務化」という口実が使われている。安倍は『美しい国へ』(文春新書)のなかで、彼の祖父・岸信介が行った安保改定について書いている。「一九六〇年の日米安保条約改定のときの交渉が、現在ようやく明らかになりつつあるが、そのいじましいばかりの努力は、まさに駐留軍を同盟軍に変える、いいかえれば、日本が独立を勝ち取るための過程だったといってよい。しかし同時に日本は、同盟国としてアメリカを必要としていた。なぜなら、日本は独力で安全を確保することができなかったのである」。
岸も六〇年安保で「双務化」を主張していたが、岸、安倍のファミリーは「日本の独立をかちとるために」安保体制を変えようとしているということができるだろうか。
帝国主義が一度獲得したものを簡単に手放さないという一般論はまずおくとして、アメリカ側の対日安保政策のどのような構図の中で、現在の集団的自衛権の行使、憲法改悪がおこなわれようとしているのかをみなければならない。
ブッシュ政権の対日政策の基本はアーミテージ・レポートであるが、そこでの安全保障政策では、集団的自衛権の行使と、その障害となっている憲法の「改正」を要求している。安倍がアメリカの猿真似をして作ろうとしている日本版NSC(国家安全保障会議)にしてもアメリカが言い出したことだ。
春原剛の『ジャパン・ハンド』は、アメリカ政権の対日政策の実態を分析している。ジャパン・ハンドとは、「対日政策を《手》中に収める米国の知日派」で「日本外交の命運を握る」者たちのことだ。
ジャパン・ハンドの中心人物のアーミテージは、前国務長官パウエルの人脈に属する。パウエルは、いわゆるネオコンやラムズフェルドなどと見解が違うといっても、それは帝国主義の利益を実現するための方法の違いだ。第二期ブッシュ政権では、一部のネオコンが消え(中間選挙の結果を受けてラムズフェルドも辞任)、パウエルに代わってライスが国務長官になったが、イラク情勢、北朝鮮の核問題、そして中東和平問題などでは政権の姿勢に大きな変化はない。
さて対日政策だが、春原は、ブッシュの親友で現在の駐日大使ロバート・シーファーを「史上最上級の《オオモノ》」だと位置づけ、そのシーファーの言う「機関化」(インスティテューショナリゼーション)発言に注目せよという。その部分を引用する。
…これまでの日米関係はブッシュ・小泉、レーガン・中曽根のように突発的に発生した「個人的な関係」に依存している部分が強かった。日米関係をそうした個人的なものに依存している状態から脱却させ、「誰がどんなポジションについても揺らぐことのない」重層的なシステムに変えたい、とシーファーは考えている。
シーファーによれば、「同盟機関化」へのインフラ整備は二期目のブッシュ政権の対日政策の主要課題となっている。その具体的な方法として、シーファーは@安全保障政策における情報収集面での協力強化A軍事面での共同行動の拡充B径済分野での一調の統白推進C投資案件での協力―などをあげる。
これに関連して、ブッシュ政権の、ある政府高官は「日米関係の機開化は可能だ」と断言した上で、こう述べている。
「クリントン政権初期、英国では『米国が英国を見捨てる』という見方があった。当時、クリントン大統頗と労働党の関係は最悪で、英側が悲観的になったためだ。しかし、米英関係には機関化された『システム』があった。それは軍部同士の交流であり、情報を共有する関係だ。日米にもそうしたシステムを構築することはできるはずだ」
すなわち「機関化されたシステム」とは、「軍部同士の交流であり、情報を共有する関係」だということだ。これまでも日米関係の中心は安保条約(軍事同盟条約)だとされてきたが、今後まさに日米の軍部の一体化が核となるというわけだ。集団的自衛権行使の具体化が安倍内閣の緊急課題となるのであり、それは第一にアメリカからきている要求なのだ。ここにきてアメリカの対日軍事要求が強まり、自衛隊を米軍の一部、その下部構成部分に位置づけ、日本は金だけでなく血も流せと求めてきているのだ。その背景には、ブッシュのイラク戦争の行き詰まりで誰もが見えるようになった唯一の超大国がその相対的力を弱め、「同盟」国にもっと負担をさせようという姿である。ちなみに、アーミテージ・レポートでは、日米関係は米英関係を手本にせよとの指示もあったことを忘れないでおこう。
ジャパン・ハンドと似た言葉にジャパン・ハンドラーがあり、「調教師」という意味だ。
安保条約にもとづく集団的自衛権の行使なるものは、力の弱ったアメリカのために自衛隊を最前線に押し立てることで、そのために日本の体制を反動化・軍事化することであり、日本の自主権はいっそう失われる仕組みなのである。
安倍は岸のDNAを受け継ぐといわれているが、岸は戦前・戦中の天皇制日本のために働き、敗戦後はA級戦犯に指定されていたにもかかわらず命乞いで今度は、アメリカの忠実な僕となったのである(GHQ=帝国主義占領軍も手先となる人物を見分けるのにはたけていたが)。いずれにしろ権力の威をカサにつねに支配層の一員に入り込むということではたしかにDNA論にも一理があるかもしれない。
KODAMA
北海道でも「君が代」処分取り消し採決!
東京地裁が九月に日の丸掲揚や君が代斉唱を強制した東京都教委の通達は「違憲」という判決を下し、北海道でも十月、中学校の卒業式で君が代演奏のカセットテープを止め懲戒免職となった教員が処分取り消しを求めた審査請求で、北海道人事委員会は、道教委の処分を取り消す採決を行った。
採決は、「教職員に対する式での日の丸・君が代強制は思想・良心の不当な侵害と解される」としている。
国旗掲揚・国歌斉唱の根拠となる学習指導要領の「日の丸・君が代指導条項」については「法的拘束力は否定せざるを得ない」とした。
その上で、式の運営方法を職務命令だけで決定するのは不適切と指摘した。
また、「運営について生徒や保護者にも意見表明の機会が与えられるべきであり、こうした過程を経ず斉唱・演奏の実施、不実施が決まることは子どもの権利条約に反する」との判断も示した。
このように、学習指導要領や子どもの権利条約まで踏み込んで、日の丸掲揚・君が代斉唱強制の不当性を明らかにしたことは、大きな成果である。
学校現場では、十二月から卒業式について提案され、検討されるが、われわれはこれらの判決や採決をテコに教育行政や管理職による理不尽な日の丸・君が代強制攻撃をはね返していかなければならない。(北海道通信員)
* * * *
自民党大阪府連への申し入れ
十一月十六日、大阪全労協、大阪教育合同労働組合、おおさかユニオンネット加盟の労働組合などが緊急行動として、自民党の大阪府支部連合会(大阪府連)に抗議行動を行った。
自民党府連は事前に通知したのにもかかわらず、「少し時間が遅れた」としてわれわれを中にいれず、ドアの前で「申し入れ書」を受け取ろうとし、かつまた警察を呼ぶなどの暴挙を行った。しかし、抗議集会は約一時間にわたりサラリーマンの行きかう大阪の繁華街(大阪市中央区谷町)で行い、アピール度は抜群でした。
自民党総裁・安倍晋三と自民党大阪府連会長・中山太郎あての「教育基本法『改正』の採決強行に抗議し、慎重審議を求める申し入れ書」では次のように要求した。「……教育基本法は憲法に準ずる法律であり、その改正にあたっては国民投票に準ずる手続きが要請されている。……国民的議論を経ることなく、また国民の声を聞くことなく、強行採決された法案は無効である。直ちに法案を特別委員会に差し戻すべきてある。また、郵政民営化と同様に長時間にわたる審議を行ったことで、審議を尽くしたというのであれば、郵政民営化を争点にして衆院解散・総選挙を行ったように、安倍政権は教育基本法を争点にして衆院解散・総選挙を実施して、民意を問うべきである。……今我々は、政府・与党が強行採決の過ちに気づき、直ちに委員会審議を再開し、国民が議論に参如できる場を保障した、慎重審議を行うことを求める」。(大阪・N)
複眼単眼
「ハチドリのひとしずく」と「愚公、山を移す」
ハチドリは北米から南米にかけて棲息する体重が二〜二〇グラムという鳥類の中で最も体が小さいグループに属する鳥の名前で、毎秒約五五回の高速ではばたき、空中で静止するホバーリングができる。「ブンブン」と蜂のような羽音を立てるため、ハチドリと名付けられた。
南米の先住民族の間に伝えられる神話で、「ハチドリのひとしずく」という話はすでに知っている人も少なくないと思う。
森が火事になって、動物たちがわれ先にとばかりに逃げ出したとき、一羽のハチドリだけは逃げずに、危険をかえりみずに、くちばしで水を運んで炎の上に落とすことをくり返しつづけた。動物たちはそれを見て「そんなことをして何になるんだ」とからかった。が、ハチドリは「私はただ私にできることをしているだけです」と答え、作業を続けたという話だ。
これは、何もせずに自己保身の立ち位置から評論する徒への厳しい批判であろう。
似たような話は「ロウドスから来た男」という西洋の話にも通じるものがある。記憶違いでなければ「俺はロウドス島にいたときはすごく高く跳べた」と自慢する男に、聞いていた人が「跳べ!、ここがロウドスだ」と言ったというあの話だ。
一般に、この話は知識人や社会活動家全体にも向けられた警句と受け止めなくてはならないだろう。逃げ去る動物やロウドスから来た男になってはならないということだろう。
ハチドリは崇高な思想や精神をかざして、水を運んでいるのではない。「いま私にできることを、いまやっているだけ」と気負いなく答える。さわやかな、小さなハチドリの、ささやかな話である。
しかし、これではなんとも悲しいことではある。
私はこの神話よりは「私たちは微力ではあるけれども無力ではない」という警句のほうが、説得力があっていいと思う。無力は一億個あつめても無力だが、微力は集めると力になるからだ。
「愚公、山を移す」という、「文化大革命」時代に中国の林彪らが好んで宣伝した毛沢東が取り上げた中国の寓話にまつわる話を思い出した。これは家の前の交通を邪魔する泰山という大きな山を愚公が一人で掘り、土を運びはじめたのを村人が笑った。すると愚公は「自分が死んでも息子がいる、そのまた息子も作業を続けるだろう。やがて山が掘り崩されないことがあるものか」と答えたという話だった。やがてその作業を続ける愚公に感動した天の神様が泰山を背負って運び去った、この神様とは「人民」であるという毛の解説が付いた話である。
この話で中国の青年たちを駆り立てた「文化大革命」は正当化できないが、この寓話自体は「ハチドリのひとしずく」よりもいいのではないか。
そこで、先のアマゾンの神話のつづきを考えた。
ハチドリの作業を空から見ていて感動した天の神様は、その一帯に雨を降らせた。やがて森の火災は鎮火した。森は再び緑を取り戻しはじめた。からかった動物たちは自らを恥じ、ハチドリを讃えた。この天の神とはアマゾンに生きる生きとし生ける無数の虫や動物たちであり、その作業のことである、と。
今回の「複眼」はたわいもない神話にまつわる話である。(T)
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二〇〇六年十二月
労働者社会主義同盟中央常任委員会