人民新報 ・ 第1219号<統合312>(2007年2月19日)
目次
● 米軍はイラクから撤退せよ ブッシュ政権のイラン戦争開始阻止
● 5・3憲法集会実行委員会主催の「STOP!改憲手続き法案」議面集会
● 労働組合絶滅と就業規則への隷属を強制する新労働契約法 国鉄共闘会議主催で反対集会
● 生活できる賃金を! 労働法制改悪阻止! けんり春闘実行委が発足
● 「東アジアに平和を!『建国記念の日』を考える」集会 凌星光さんが「東アジア共同体の展望」
● 「『天皇中心の美しい国』でいいのか? 二・一一反『紀元節』集会」 元高校教員の大河原礼三さんが講演
● 「対北朝鮮制裁・在日コリアンへの人権侵害の中止と対話による
戦争も核もない平和な東北アジアの実現を求める共同声明」への賛同のお願い
● NHK番組「女性国際戦犯法廷」改編裁判 東京高裁判決・画期的な勝利
● せ ん り ゅ う
● 複眼単眼 / 破産した論理をくりかえす石破茂のデマ
米軍はイラクから撤退せよ
ブッシュ政権のイラン戦争開始阻止
ブッシュの新たな戦争
米占領軍は、イラク戦場で抵抗勢力の強大化と内戦状況のなかでまさに「泥沼」に足を取られるようになってきている。昨年十一月の米中間選挙では上下両院は野党民主党に奪還された。そして十二月には超党派の「イラク研究グループ」報告が出された。それは泥沼状況からの脱却について次のように提言している。
「新たなアプローチがイラクと米国、中東に利害関係をもつその他の諸国によって敏速にとられるなら、イラクにおける進展はまだ可能である。対外的には、米国はイラクで手間取るのでなく、進展を支えうる地域メカニズムを構築するために、米国のパワーのすべての要素を用いることをただちに始めるべきである。対内的には、イラク政府は国民的和解を達成し、暴力を減らし、イラク人の日々の生活を改善するために必要な措置をとらなければならない。これら内外に向けた戦略の実行努力は今始め、相互に連携して実施されなければならない。この責任ある移行は、イラクでの米国の長すぎるプレゼンスを減らすことを可能にする」。
しかし、ブッシュ政権はまったく逆の対応を取ったのである。イラク戦争の解決と米軍の早期撤退ではなく、対テロ掃討戦争の強化と戦争の拡大である。
すでにアメリカがイラクで勝利できないのは歴然としている。しかし、ブッシュはそれを認めることはできない。そうすれば、ブッシュは歴代第一位の「阿呆で間抜けな」大統領として記録されるだけだからだ。単にブッシュだけではない。共和党政権は、フセイン独裁政権を打倒し、イラクに民主主義を軍事力によって導入するはずだった。しかし、それがうまくいっていない。そうすると、自らの戦争政策は正しいはずなのだから、ほかに原因をさがさなくてはならない。それは外部からの新たな敵の介入であるはずだ。それは、中東で影響力を増しつつあるイラン・アフマディネジャド政権であるにちがいない。だからイラク問題を解決するためにはイランを排除しなければならない。これが彼らの「論理」となっているのである。
戦争拡大の「論理」
こうした発想はかつて日本でも経験したことである。大日本帝国は、朝鮮を併合した。しかし、それを安定させるためには、満州(中国東北部)を獲得しなければならないとして、「満州国」をでっち上げた。しかし、「満州国」は中国華北地方からの影響で安定しない。だから、万里の長城をこえて、傀儡政権を作った。しかし、それでもだめだ。そして中国との全面戦争に突入した。しかし、首都南京を陥落させたのに中国は降伏しない。その理由は、欧米が中国を支援しているからだとしてついには世界を相手の戦争となり、そして最後には破滅的な結末をむかえたのであった。帝国主義の論理は古今東西いずこも同じである。
チェイニーの来日
いま、ブッシュの政策を支持するものは激減している。かわりにブッシュは反戦・厭戦の渦の拡大に直面させられている。アメリカ各地では最近も大規模な反戦デモが展開された。当初は多国籍軍として参戦した国ぐにもつぎつぎに撤退した。盟友ブレアのイギリスもブッシュに距離を置き始め、米軍機による英兵「誤爆」で一気に反米の機運が盛り上がろうとしている。
こうした情勢にもかかわらず、安倍内閣はブッシュの戦争政策に追随し続けている中、チェイニー副大統領の二月下旬の来日が予定されている。チェイニーはオーストラリアも訪問する。いずれもブッシュ追随派国家だ。これらの訪問の理由は、「テロとの戦い」強化のためだから当然イラン攻撃が起こった場合の協力要請があることはいうまでもない。最後まで、戦争政策に付き合えということである。冗談ではない。断固として、日本政府はブッシュの戦争政策と手を切り、ただちに航空自衛隊をイラクから撤退させなければならない。イランなどへの戦火の拡大などもってのほかだ。
いまこそ、全世界でいっそう反戦反米の闘いを拡大させていくときである。日本では、二月二日、WORLD
PEACE NOWの呼びかけで、「米軍のイラク増派抗議、航空自衛隊を含むすべての外国軍のイラクからの撤退を求めるアメリカ大使館前『鬼は外』アクション」が一〇〇名を越す人々の参加で闘われた。侵略戦争の鬼であるブッシュ大統領、チェイニー副大統領、ライス国務長官、安倍首相に対して、「ブッシュは外、戦争は外」と叫びながらのエアー豆まきを行い、また米大使館を通じてブッシュ大統領に申し入れを行った。
資料・WORLD PEACE NOWの申し入れ書
米軍のイラク増派反対 占領をただちにやめ、米軍はイラクから撤退を
!
アメリカ合衆国大統領 ジョージ・W・ブッシュ様
一月一〇日、ブッシュ米大統領は二万一千人以上の米軍をイラクに増派する「新戦略」を発表しました。すでにその第一陣が送られました。私たちは、歯止めのない殺戮と暴力をいっそう拡大するこの「新戦略」に心の底からの怒りと悲しみをもって抗議します。
イラクでは、一日で一〇〇人以上の人びとが殺されています。その数は増えつづけています。平和や復興がますます遠ざかるこの耐えがたい状況は、ウソでぬり固められた口実で始まった米国の戦争と占領がもたらしたものです。米兵の死者もすでに三〇〇〇人を超えました。
昨年一二月には、ベーカー元国務長官を座長とする超党派の「イラク研究グループ」が、米国の戦争の失敗をはっきりと認め、イランやシリアとの対話、パレスチナを中心とする中東問題の包括的解決を通じて、米国の戦闘部隊を二〇〇八年三月までに撤退させる提言を発表しました。
しかしブッシュ大統領の増派決定は「イラク研究グループ」提言と全く相反するものでした。「新戦略」の中でブッシュ大統領は「イラク政策の変更の必要」を認めましたが、アメリカの戦争・占領政策の失敗の原因は「必要な数の米兵がいなかった」こと、「駐留米軍部隊に多くの制約があった」ことにあると語っています。つまり現在一三万人もイラク駐留米軍の縮小・撤退どころか、もっと多くの米兵を送り込み、「活動の自由」を与えて、さらに多くのイラク市民を虐殺し、人権じゅうりんを続けようというのです。「イランやシリア」との対話どころか、ブッシュ政権はイランやシリアに対して新たな戦争の矛先を向けようとしています。
ブッシュ政権の「新戦略」は、米国内でも世論の圧倒的な反対を受けています。一月二四日、米上院外交委員会は、イラクへの米軍増派に反対する超党派の決議案を賛成多数で可決しました。一月二七日には首都ワシントンで大規模な反戦集会が開催されました。
「もうたくさんだ」。これはイラクの人びとの声であり、世界中の人びとの声であり、米国の人びとの声でもあります。ところがチェイニー副大統領は「米国人は戦う根性がないとテロリストに言われる。それが最大の脅威だ」と語り、上院の増派反対決議に対しては「決議では我々は止まらない。大統領はすでに決定を下した」と述べ、世論を無視する態度を示しました。とんでもないことです。
一月二八日、イラク西部のナジャフ近郊で、米軍は二五〇
人もの人びとを「武装勢力掃討」の名目で殺害しました。その中に多くの一般市民が含まれていることは明らかです。米軍の増派は、こうした耐えがたい暴力をいっそう広げることになるのは明白です。
私たちWORLD PEACE NOWは訴えます。武力で平和は作れません。戦争を始めた米国は、自らの誤りを率直に認めて謝罪し、ただちに戦争を終わらせ、軍隊を引き上げ、イラクの人びとの平和と復興への主体的努力を、武力によらない方法で支援することが必要です。
これ以上殺すな、そして殺されるな!
二〇〇七年二月二日
5・3憲法集会実行委員会主催の「STOP!改憲手続き法案」議面集会
二月八日昼、衆議院議員面会所で、「5・3憲法集会実行委員会」による「安倍改憲内閣の暴走を止めよう 悪法『改憲手続き法案』は廃案しかない 『STOP!改憲手続き法案』議面集会」が開かれた。
はじめに、実行委員会の高田健さんが発言。
政府・与党は、憲法六十周年の今年の五月三日までに、手続き法案を成立させると言っているが、決して許してはならない。国会内の議員の数という力関係だけ見れば、情勢の見通しは非常に厳しいが、国会外で運動を大きく盛り上げ、その力が、国会内で闘う議員と連携していけば、この国会での成立は阻止することができる。
共産党の赤嶺政賢衆議院議員のあいさつ。
安倍内閣はこの国会で名文改憲への道を拓く手続き法案と米軍再編など実質的に九条を踏みにじる法案を強行しようとしている。アメリカとともに自衛隊が共同作戦を行うのはイラクの状況が示しているように非常に危険なことだ。日本がやらなければならないのは憲法九条の精神を活かしての平和的外交的努力で世界と日本の平和を実現することだ。
社民党の保坂展人衆議院議員のあいさつ。
昨年の国会で教育基本法は改悪されたが、それに反対する運動は大きく盛り上がった。今年の国会は、手続き法案だけでなく、さまざまな悪法が成立させられようとしている。例えばホワイトカラー・エグゼンプション法案だ。昨年十二月末にその法案のとんでもない内容が明らかになったが、年末年始で人々の認識は深まり、政府・与党も国会へそのままのかたちでの提案を躊躇している。このように人びとが本質を理解し、運動が広がれば闘いは有利に進んでいく。
女性の憲法年連絡会、憲法を生かす会、平和憲法21世紀の会、憲法改悪阻止各界連絡会議、許すな!憲法・改悪市民連絡会、平和をつくりだす宗教者ネットなどからの発言があり、最後に、当面の行動日程などが提起され、三月二日の日比谷野音大集会・一万人パレードの成功などが呼びかけられた。
労働組合絶滅と就業規則への隷属を強制する新労働契約法
国鉄共闘会議主催で反対集会
二月九日、国鉄共闘会議の主催で、「労働組合絶滅と就業規則への隷属を強制する新労働契約法反対2・9集会」が開かれた。
講演は、道幸哲也北海道大学教授が「どうなる労働契約法案」をテーマに行った。
労使関係の問題で最重要視されなければならいのは団結権だ。それが重大な危機に立たされている。
労働契約法制が必要なのだという意見は一種共通の了解となっている。労働弁護団さえもそうだ。昨年暮れ、あり方研究会の「今後の労働契約法制在り方に関する研究会」最終報告がだされ、今年に入って、法案要綱としてでてきた。はじめにおさえておくべきは、これは、労働契約法制ではなく、基本的には就業規則法制だということだ。これが肝要なのだ。
いま、なぜ労働契約法かといえば、次のような事情がある。まず労基法の問題点だ。労基法は違反すると刑事罰を課せられるので、柔軟な解釈が困難であることだ。つぎに、さまざまな紛争については多くの労働判例があるが、普通の人にはわかりにくいから、判例を法律にしてしまうということである。第三には、個別労使紛争が急激に増加していることへの対応である。
こうして、労働契約についていくつもの課題が出てきている。
ひとつには、労働者概念の拡張ということだ。フリーカメラマンやNHKの集金人などはいわゆる労働者とはされないがかれらをいかにまもっていくかという課題がある。こうしたことでは労働者サイドも契約法制を求めることになる。そして、労働条件の変更・雇用終了、業務命令権の制約、労働時間紛争の増加などを解決していく必要がある。
労働契約は三つの方法で決められる。ひとつは個別契約。第二が就業規則。第三が労働協約だ。労働協約は経営者と職場の過半数を組織する労働組合が団体交渉を行って協定・調印する。就業規則は、「使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない」としている。「意見を聞く」だけでよいのだ。たとえ、就業規則に反対であっても、使用者は「届出をなすについて、前項の意見を記した書面を添付」しさえすればよいのである。
現在、使用者側は、賃金や労働条件を切り下げる不利益変更を行ってきている。これまでの判例では、不利益変更は原則として不可とし、たとえ可とした場合でも次のような論議があった。ひとつは、不利益変更した場合は、変更されたあとに新規採用された労働者に適用できるのか否か。もうひとつは今までいた人の既得権を侵害できるのかどうかということだ。要するに使用者が契約内容を一方的に変更するのは駄目だということだった。しかし、合理的理由があれば労働者の同意がなくて不利益変更もできるという判例もある。それらを今回の労働契約法案に書き込むというのが政府の説明だ。労働契約法案要綱では「使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則の労働条件によるものとするものとすること」として、「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるとするものとすること」とある。後半に引いたものが合理的かどうかということの判断の基準だ。しかし、実際は大部分がグレーゾーンだ。
こうした労働契約法制なら、これは契約とはいえない。使用者の一方的な意見で決められる就業規則を労働契約として、労働組合の存在価値もなくそうとしているのである。
生活できる賃金を! 労働法制改悪阻止! けんり春闘実行委が発足
07春闘がスタートした。
二月一日には、全水道会館で、07けんり春闘全国実行委員会の発足総会・学習集会が開かれた。
代表幹事の二瓶久勝さん(金属機器協議会)が代表して挨拶した。
安倍改憲内閣の下で労働者の生活と労働条件は悪化し続けている。低賃金・無権利の労働者が増えているが労働組合は有効な闘いを行えていない。労働組合運動の形骸化を克服して組合の存在感を示す闘いを行っていこう。そのためにはまず自分のところから闘いをおこすことだ。そして地域に出てつなげていく。外へ出て行くことに企業から規制がかかるが、この春闘では非正規・未組織を組織化し、そして労働法制の改悪に反対して闘いぬこう。
つづいて、事務局長の中岡基明さん(全労協)が以下の議案・行動提起をおこなった。
昨年の春闘において、私たちは06
けんり春闘全国実行委員会として、ストライキ、争議激励総行動、労働法制の抜本的改悪を進める厚生労働省への抗議行動を取り組んできた。この闘いをひきついで、07春闘を闘い、スローガンを、賃金引き上げなどの生活要求では、「健康で文化的な生活を全ての労働者に!生活できる賃金を!均等待遇実現!長時間労働禁止!」、労働法制では、「労働者を使い捨てにする労働契約法反対!不払い残業を合法化する労基法改悪反対!偽装請負を合法化する労働者派違法改悪反対!労働者のための労働法制の確立を!」、平和運動・福祉の拡大では「核も戦争もない平和な世界・日本を!平和と民主主義を守り、憲法改悪に反対しよう!福祉切り捨て、増税に反対し、格差社会を無くそう!」とする。 幹事組合を、全労協、都労連、金属機器労組協議会、全港湾、全日建連帯、国労、全国一般全国協、全造船関東地協、中小ネット、電検労、東京清掃労組とし、代表幹事を二瓶久勝(金属機器労組協議会)、藤崎良三(全労協)とする。
当面の行動計画としては、二月十六日には東京総行動、その後の「今こそ解決を!具体的要求実現!2・16総決起集会」(日本教育会館)を闘い、三月四日には外国人労働者総行動・大行進〜マーチ・イン・マーチ(東京は宮下公園、また大阪、福岡、札幌でも同特に行動)、三月五日は外国人労働者の生活と権利のための春の総行動・省庁交渉、そして三月二十三日に、「07春闘勝利!労働法制改悪反対!中央総決起集会」(社会文化会館)・デモなどを展開する。三月三十日に「国鉄闘争勝利!総決起集会」、四月十八日に、中小春闘勝利・未解決組合激励、労働法制改悪反対全国キャンペーン、制度政策要求のための省庁交渉を闘い「春の共同行動集約中央行動・銀座デモ」を行うこととする。こうした闘いの積み重ねの中で07春闘で労働者の要求を貫徹する。
講演は、週刊「東洋経済」記者の風間直樹さんが「雇用破壊の現場から」と題してシャープやグッドウイルなどでの労働の有様や個人請負などの厳しい実態などを暴露して政府・財界が推し進めようとしている「労働ビッグバン」について生々しい報告を行った。
闘いの決意は、全港湾、東水労、千葉非常勤職員組合、コンドルユニオンが行い、最後に藤崎全労協議長の団結がんばろうで春闘での奮闘を確認しあった。
「東アジアに平和を!『建国記念の日』を考える」集会
凌星光さんが「東アジア共同体の展望」
二月十一日、フォーラム平和・人権・環境(平和フオーラム)の主催で「東アジアに平和を!『愛国心』強要を許さない!『建国記念の日』を考える」集会が開かれた。
日中関係研究所所長の凌星光さんが「東アジアの平和と共同体の展望―東アジアの危険的要素」と題して講演した。
東アジアではここ二十数年にわたって平和が維持されてきた。この地域の歴史から言って稀なことであった。それには、いくつかの要因がある。中国が改革開放路線をとって国際協調主義となったこと、カンボジア和平が実現したことなどがある。とくに日中関係は大平内閣が中国の改革開放政策を支持・支援し、一九八〇年代は非常に友好関係が進んだ。
だが、ここ数年、世界的には厳しい情勢が出てきている。米国の単独行動主義がその原因だ。しかし、イラクの状況を見てもわかるようにその基礎は決して強くない。日本にはアメリカとの関係について三つの意見がある。ひとつは米国追随と軍事的一体化を強め、それで日本の国際的地位を高めようとするものだ。二つには米国の国際法違反を批判し国連中心主義で行こうというものだ。そして両者の中間派がいる。マスメディアの大半はここにいる。
いまの日米同盟の矛先は中国にむけられ、台湾海峡は介入する範囲内だという。そして中国との新しい冷戦をあおっている勢力がいる。アメリカのタカ派も同様だ。
これに対抗して、中国でもナショリズム、パワーポリティクスを主張する声も大きくなっている。昨年末に中国の国防白書が発表されたが、そこでは一方で戦争はしないとしながら、他方で二一世紀の中ごろまでにはアメリカとも戦い勝利するという戦略も出されている。中国軍はいまだ機械化も達成されていない状況にあるが、米国が中国に屈辱的なことを押し付けるなら対決も辞さないという姿勢だ。
しかし、北朝鮮や台湾海峡でも問題を平和的に解決する努力が進められている。中国としては北朝鮮も中国やベトナムと同様な改革開放政策をとること、また六者協議を基礎にした東アジアの集団安全保障体制の確立を願っている。
それに、すでに米中戦略対話がはじまっている。日米は同盟関係にあるし、安倍訪中で日中関係も改善し始めた。中米日のこうした動きがこの地域での平和の枠組みを安定することができるだろう。
それに二〇〇四年四月のASEAN+3(中日韓)の非公式首脳会議で将来の目標として「東アジア共同体」建設の宣言がなされたが、その後の動きには目覚しいものがある。北米(NAFTA)、ヨーロッパ(EU)そして東アジアでも地域化の動きが加速している。中国はこの動きを積極的に促進している。しかし、日本の一部には、これは中国が指導権をとる野望の表れだと非難するものがいる。実際にはASEANが主導している。だが、この問題では中国は焦っていない。日本が事態の進行を認識するまで待とうという姿勢だ。
すでに経済的には東アジアは深い相互依存関係になっている。安全保障の面でもまず非伝統的分野の協力からはじめればよい。非伝統的分野とは、海賊、麻薬、テロなどだ。そこから国と国との伝統的な分野に拡大することが可能だ。そうすれば日米安保も自然に消滅していくことになるだろう。
日本は消極的な態度だが、そのうち変わるだろう。環境問題や金融など日本は得意な分野でリーダーシップを発揮すべきだ。東アジアの表舞台でのリーダーシップはASEANが発揮すべきだ。日本でも中国でも反対が多くうまくいかない。
中国も数年前、東アジアサミットを北京でと言って、ASEAN、日本、アメリカから警戒された。中国が前面に出ると覇権主義と見られる。胡錦濤政権を安定させる内政向きの意図から出たものだったが、いずれにしても大きなミスだった。ASEAN主体をことごとに強調すべきだ。
日本は東アジア諸国と協調し、歴史認識をはっきりさせ、台湾問題を中国の国内問題とし、日米安保を第三国に向けないことを宣言させることができるならば、平和国家として国連の常任理事国になれるのではないだろうか。
つづいて、名古屋大学教授の愛敬浩二さんが「『愛国心』と改憲問題」をテーマに講演した。
「『天皇中心の美しい国』でいいのか? 二・一一反『紀元節』集会」
元高校教員の大河原礼三さんが講演
二月十一日の建国記念日の日に、全水道会館で、「『天皇中心の美しい国』でいいのか? 二・一一反『紀元節』集会」が開かれた。
元高校教員の大河原礼三さんが講演。
一八七三(明六)年に、神武天皇即位日なるものが紀元節とされた。こうして、新年・紀元節・天長節(明治天皇誕生日)を三大節として設け天皇中心の思想が注ぎ込まれるようになった。そして敗戦後の一九四八(昭二三)年に「国民の祝日に関する法律」ができることを契機に紀元節が廃止された。 この間、二月十一日にはさまざまことが行われた。一八八九(明二二)年の二月一一日に大日本帝国憲法が発布され、一九〇四(明三七)年二月一〇日にロシアに宣戦布告し、翌一一日には大本営を宮中に設置した。一九一一(明四四)年には「済生に関する勅語」がだされた。天皇が一五〇万円の金をだし「医療を施して生命を救う」という趣旨だが、これは大逆事件被告を死刑にした直後であり、貧しい人たちが社会主義化するのを怖れたからだ。一九四〇(昭一五)年二月一一日には「紀元二六〇〇年の勅語」が出された。戦争体制を強めるためのものだ。そして、アメリカ・イギリスとの戦争が始まったあとはなんとかして一九四二(昭一七)年の紀元節までにシンガポールの英軍を降伏させようとした。実際「陥落」させたのは一五日となった。
一九四八年に紀元節はなくなったが、すぐに復活させようとする動きがはじまった。吉田茂首相は一九五〇(昭二五)年に警察予備隊を発足させたが、翌一九五一(昭二六)年には、「独立後は紀元節を復活したい」と言っている。自民党議員は何度も建国記念日法案を国会に提出したが廃案となり、ついに一九六六年六月二五日に成立した。そのやりかたは、建国記念の日を表面に出すのでなく、敬老の日、体育の日なども含めた国民の祝日法改正というものであり、日付は政令で決めた。
翌年、一九六七年二月一一日の第一回「建国記念の日」には全国で不承認・反対集会が開かれ、全国二六大学で史上初の同盟登校が、高校でも自主登校が闘われた。私の勤務していた都立高校でも自主登校の行動が行われた。
「対北朝鮮制裁・在日コリアンへの人権侵害の中止と対話による
戦争も核もない平和な東北アジアの実現を求める共同声明」への賛同のお願い
【共同声明への賛同のお願い】
安倍政権の対朝鮮半島・東北アジア政策にNOの声を挙げ、私たちの隣人である在日コリアンへの人権侵害の中止、戦争も核もない東北アジアの平和を目指して以下の共同声明への賛同を呼びかけます。
この共同声明は、全賛同団体・個人の連名で安部内閣に提出し、申し入れ行動を行います。
* 第一集約を二月末日とし、三月中旬頃に安部内閣への申し入れ行動を行います。ぜひご協力ください。
対北朝鮮制裁・在日コリアンへの人権侵害の中止と対話による
戦争も核もない平和な東北アジアの実現を求める共同声明
小泉内閣を引き継いだ安倍新内閣は、公然と任期内の改憲を掲げ、昨年末には教育基本法改悪、防衛省昇格と自衛隊の海外派遣を本来任務とする法律を通過させました。
これらの動きは、世界的規模の米軍再編や米ブッシュ政権によるイラク侵略戦争への無条件支持と追随、そして対北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)強硬策、在日コリアンへの弾圧や人権侵害などと表裏一体です。
また一歩「戦争のできる国」への道が強まったと言わざるをえません。
北朝鮮のミサイル演習と核実験発表で、いま安倍政権はここぞとばかりに好戦的態度を示し、独自制裁まで強行しています。これらは在日コリアンの祖国往来に障害となるなど人権侵害をもたらしています。さらに政府・公安当局は、こうした雰囲気に乗じて在日コリアン、とりわけ在日本朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)と関連団体に対する政治的な弾圧を集中しています。
日本政府の政策が、日本社会に今なお根深く残る在日コリアンへの差別を再生産し、朝鮮学校生徒たちに対する嫌がらせ、暴行・暴言、朝鮮総聯施設に対するテロ的攻撃をも助長していると言わざるをえません。日頃「テロ対策」を声高に唱える政府やマスコミが、在日コリアンに向けられたテロに対しては沈黙し続けているのはなぜでしょうか。
朝鮮半島の平和と非核化の鍵は、形式はどうであれ、実質的な米朝交渉により、半世紀以上にも及ぶ米朝の停戦(準戦時)状態を終わらせて恒久的平和体制へ移行し、対話による米朝・日朝国交樹立、検証可能な形での朝鮮半島の非核化など、朝鮮半島問題の包括的な解決を実現する以外に道はありません。だからこそ、二〇〇五年九月の「六カ国共同声明」も、@朝鮮半島の検証可能な形での非核化、A米朝・日朝国交正常化に向けた措置、B朝鮮半島の恒久的平和体制に向けた協議の開始−等の包括的実現をめざすことで六カ国すべてが合意しているのです。
この間、六カ国協議再開のため、米国が新たに設けた障害である金融制裁の解除問題を含め、米朝二国間協議が繰り返し開かれるようになっています。対話なき圧力一辺倒政策をとる安倍政権は、今や米国政府を含む六カ国協議参加国の中でも孤立した存在となりつつあります。
私たちは、日本と朝鮮半島、アジアの人々との真の和解と友好を心から願い、戦争も核もない平和な東北アジアの実現を求める立場から、共同して以下の要求を行います。
一、日本政府は制裁を解除し、在日コリアンへの人権侵害・弾圧を直ちに中止すること。
二、日本政府は圧力一辺倒政策を転換し、ピョンヤン宣言を基礎に対話を通じて日朝国交正常化の実現を速やかに図ること。
【呼びかけ】
日韓民衆連帯全国ネットワーク/「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)/基地はいらない!女たちの全国ネット/新しい反安保行動をつくる実行委員会\/許すな!憲法改悪・市民連絡会/在日韓国民主統一連/北朝鮮人道支援ネットワーク・ジャパン
●郵便送付先 東京都文京区小石川一―一―一〇―一〇五 日韓ネット気付
●Eメールは、nrc0749@nifty.com
NHK番組「女性国際戦犯法廷」改編裁判
東京高裁判決・画期的な勝利
一月二十九日、東京高裁でNHK番組改編事件の判決が言い渡された。安倍晋三や中川昭一ら自民党議員による圧力でNHKが「女性国際戦犯法廷」を改ざんして放送した事件である。
判決は、バウネットが主張してきた「期待権」と「説明義務違反」を認める画期的な勝利判決だった。以下、VAWWNETジャパンの声明を資料として掲載する(編集部)。
VAWW―NETジャパン声明
NHK番組改ざんを巡る控訴審勝訴の判決を受けて
一月二九日、東京高等裁判所でNHK番組改ざんを巡る裁判の控訴審判決が言い渡されました。南敏文裁判長は、本件の経過の下では「期待と信頼を抱くのもやむを得ない特段の令情がある」として、VAWW―NETジャパン(以下、バウネット)が主張してきた「期特権の侵害」と「説明義務違反」を認め、NHKの責任は最も重いとしつつ、番組制作に関わったNEP21と番組制作会社ドキュメンタリー・ジャパン二者の共同不法行為を認定し、二〇〇万円の賠償支払いを命じました。ただし、松井やより個人の損害については「バウネットの無形の拒否が回復されれば松井の損害も回復される関係にある]として認められませんでした。この点は残念ですが、一審で不問にされたNHKの改変行為が覆され、二者の共同不法行為が認められたごとに、大変画期的な判決でした。
二〇〇一年七月二四日に提訴して以来、五年半に及ぶ苫しい闘いでしたが、皆様の温かいご支援に大要勇気づけられてきました。心から感謝いたします。
□「編集権の濫用・逸脱」と断罪
判決は、一審判決で不問にされたNHKの改変行為を「編集権を自ら放棄したものに等し」「NHKの本件番組の番組・放送についでは、憲法で保障された編集の権限を濫用し、又は逸脱したものといわざるを得ず、放送事業者に保障された放送番組編集の自由の範囲内のものであると主張することは到底できない」と認定しました。
□「期待権の侵害」「説明義務違反」を「特段の事情」の下に認定
バウネットが主張してきた「説明義務違反」について、放送された番組はバウネットに説明されたものと相当かけ離れた内容となった」「バウネットは説明を受けていれば、自己決定権の一態様として番組から離脱することや善処方を申し入れたり、他の報道機関等に実情を説明して対抗的な報道を求めたりすること等ができたが、被告らが説明義務を果たさなかった結果、これらの手段を採ることができなくなったのであり、その法的利益を侵害されたというべきである」と、説明義務を怠ったことによるNHKらの不法行為責任を認めました。これは「特段の事情」を認めた上での判断で、判決は「特段の事情かかるときに限り、これを説明する法的な義務を負うと解するのが相当である」と、説明義務が全てのケースに当てはまる権利ではないことをはっきり指摘しました。
もう一万の主張である「期待権の侵害」については、「取材対象者がそのような期待を抱くのもやむを得ない特段の事情が認められるときは、番組制作者の編集の自由もそれに応じて一定の制約を受け、取材対象者の番組内容に対する斯待と信頼が法的に保護されるべき」として、このケースに「特段の事情」があるとして「期特権の侵害」を認めました。
一部のメディアに「期待権」と「説明義務」が認定されたことに対して「取材現場」を萎縮させる懸念がある」と論じていますが、判決は「特段の事情」が認められる場合に自己決定権に基礎付けられた期特権が保護され、また、説明義務が認められると判示しており、判決は「編集の自由」や取材行為の制約を一般化するものではありません。
□「政治圧力は認められなかった」という誤報について
NHKや一部のメディアは「政治的圧力は認められなかった」としていますが、判決は「具体的な話や示唆」については松尾・野島両氏の証言からは断定できないといっているに過ぎず、政治圧力がなかったとは言っていません。
そもそもNHKが安倍氏ら国会議員に放送前の番組について説明することになった経緯は、予算説明が始まった頃「『日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会』所属の議員らが、昨年一二月に行われた女性国際戦犯法廷を話題にしている」「予算説明に行った際には必ず話題にされるであろうから、きちんと説明できるように用意しておいた方が良いといった趣旨の示唆を与えられた」からで、編集への上層部の介入は、
政治家に説明を「示唆された」(=求められた)ことに端を発しています。
判決は、「本件番組が予算編成等に影響を与えることがないようにしたいとの思惑から、説明のために松尾と野島が国会議員等との接触を図り」「松尾と野島が相手方の発言を必要以上に重く受け止め、その意図を付度してできるだけ当たり障りのないような番組にすることを考えて試写に臨み、その結果、そのような形にすべく本件番組について直接指示、修正を繰り返して改編が行われたものと認められる」と、NHKが予算承認を前に政治家に過剰に反応し、政治家の意図を汲む改変を行ったことを厳しく指摘しました。これは、NHKが政治家の話を圧力と感じて改変したことを示しており、判決が「政治圧力を否定した」というのは正確な表現とはいえません。
□NHKと関係政治家に猛省と謝罪を求める
NHKは判決を不服として即刻上告しました。このことは、NHKがいかに今回の事件について反省していないか、未だ政治家の顔色を伺っているかを示しています。
私たちは、NHKが真摯に判決に向き合い、上告を取り下げ、その過ちを猛省し、バウネットをけじめ視聴者・巾民に心から謝罪することを強く求めます。
また、「放送の自律」を脅かした安倍氏らが謙虚に判決に向き合い、自らの誼動の過ちを認め、心からの謝罪を表明し、二度とこのようなことを繰り返さない決意を示すことを強く求めます。
二〇〇七年二月八日
「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)共同代表:西野瑠美子・東海林路得子/運営委員一同
せ ん り ゅ う
鬼はそと鬼神ブッシュだ鬼はそと
福はうち平和憲法福はうち
鬼はそと米軍でていけ鬼はそと
ゝ史
二〇〇二年二月三日
● 二月二日アメリカ大使館前で豆まき行事が行われた。お相撲さんは来てくれなかったけれども平和市民の大声がアメリカ大使を打ちすえた。……おかしなことに、私服制服多勢の警官が私たちを取り囲んで平和の願望を圧殺している。……これ、まさにイラクの現状そのもの……要請書を受け取りに出たのは無言の警備員ばかりぞろぞろ……。
福豆が怖くて大使でてこれぬ
複眼単眼
破産した論理をくりかえす石破茂のデマ
前防衛庁長官の石破茂が出した「国防」という本をマンガ化した「マンガで読む国防入門」が出版された。
軍事オタクの石破茂の議論自体はたわいもないシロモノだが、こういうものをマンガ化するというこの連中の努力は侮っていいものではないと思う。こんなマンガで「対テロ軍事力強化の必要性」などが、たとえ一部の若者にではあっても刷り込まれることは恐ろしいことだ。
このマンガの第一章では、北朝鮮から弾道ミサイルが飛んできて東京などが被害を受ける描写で始まる。金正日らしき人物が、「撃て、撃て」と騒いで、ミサイルを撃ちまくってくるのだ。戦争がなぜ起きるかなどの基礎理論は何も示さないままに、攻撃されるぞ、日本には防ぐ体制がないぞとこの本は危機感を煽る。
第二章は北朝鮮から六〇名ほどのテロリストが侵入し、その一部は空港を乗っ取り、航空機を乗っ取って原発に突入を試みるが、偶然乗り合わせていた対テロ訓練を積んだ自衛隊員が一人で立ち向かい、身を犠牲にして旅客機を海に墜落させて原発を救う。
石破は言う。「すべてのテロを防止することはできない。われわれが想定する以上の被害が出るかも知れない。一番大事なのはたとえ多くの民間人が犠牲になろうとも、それでどれだけマスコミにたたかれようとも、政府はテロリストに屈しない、揺るがない姿勢を明確にすること、それが民主主義をテロからまもる一番の手だてだということです」などと言い切っている。彼の頭に中には軍事があるだけで、ほかは何もないことの証明だ。
第三章はイラク戦争を支持したのは正しかったという石破の理屈。
イラク戦争の正当化などは米国ですらとうに破産しているのだが、石破は臆面もなく語る。
イラクに自衛隊を派遣したのは、@石油の安定供給という国益、A国連の要請に応える、Bイラク人の期待に応える、C日米同盟の強化と実効性を高めるためだなどと語っている。
石破はこういうデマまで書く。
一九七〇年頃街頭で募金している活動家に「なぜ民間人をテロの標的にするのか」と聞いたら、「我々が民間人を標的にすれば、民間人のあいだに不安が広がる。その不安はやがて社会に対する不満となり、その不満は政権に向けられ、そしてその不満が頂点に達したとき、民衆は一斉に蜂起し、我々の革命は成就するのだ。さあカンパをしたまえ」といった。テロの標的は国のもっとも弱い部分、民衆にむかうのはいまも変わっていない、などと得意げに解説するのだ。
なんとも恐れ入った話だが、信じる人がいないとも限らない。「ウソでも本を出して言ったほうが勝ち」ということか。
(T)