人民新報 ・ 第1221号<統合314号(2007年3月19日)
  
                  目次


 安倍が5・3憲法記念日までの成立を断念  改憲手続き法案を完全に粉砕しよう

● 西日本春闘討論集会報告  労働法制改悪阻止を中心に春闘勝利へ!

● 原発事故隠しの東京電力本社前で抗議行動

● 3・1朝鮮独立運動八十八周年集会  今こそ対話で平和の実現を!許すな!制裁・在日コリアンへの人権侵害

● 全国農民組織連絡会議の主催で、日豪EPA・米国産牛肉輸入反対!生産者・消費者総決起行動

● 安倍内閣のニセ最賃改定に反対し、全国一律最低賃金制、大巾値上げ実現を!

● 複眼単眼  「政界は一寸先は闇」あるいは「君子は豹変す」



安倍が5・3憲法記念日までの成立を断念

     
改憲手続き法案を完全に粉砕しよう


 安倍晋三は自分の任期中に憲法を変えると言い、改憲手続き法案の早期成立に全力をあげている。そのために予算案を与党単独で強行採決した。安倍は当初、五月三日の憲法記念日までに法案を衆参両院で可決・成立させると公言してきた。そして安倍は与党単独でも強行採決する姿勢でこれまで何度も中央突破を試みてきたのである。だが、安倍発言は、行政府の長である首相が立法府のスケジュールまでに細かく口出ししすぎると批判され、また、手続き法案が政府与党が主張するような国民投票法案ではなく、一般的に憲法改正の手続きを定めるものでさえもなく、日本国憲法を否定して自民党の新憲法草案そのものを実現するためだけのものであることが広く知られるようになってきた。

 自民党による改憲とその前提としてある手続き法案の危険性にたいして多くの人びとが気づくようになった。これは各地での反対運動の成果である。
 改憲に反対して闘い続けている社民党や共産党はもちろんだが、ここに来て民主党そして与党の一翼を担う公明党にも変化が現れてきた。
 民主党は党内に改憲派・右派を多く抱え、自民党といっしょに憲法を変える動きできた。とくに隠れ自民党員といわれる前原誠司前代表の時代はそうした路線が露骨であり、いまもその流れが消えたわけではない。しかし、民主党はそのスタンスを変えつつある。それは、今年の夏の参院選を前に自民党との違いを前面に出すということ、それに世論の動向が改憲に向いていないという現実から来ている。各種世論調査でも、有権者の重視する政策は、安倍が参院選の争点にするとして騒いでいる改憲などではない。国会では、格差是正、政治と金、その他の問題が議論されているのであり、民主党は格差問題で自民党を攻撃する姿勢だ。

 安倍にとってより厳しい事態は、与党の公明党が手続き法案の早期強行採決が同党の支持率の低下に結びつくのを危惧して、採決の先送りを言い始めたことだ。くわえて公明党には、松岡利勝農相の事務所費問題、郵政民営化法案に反対して自民党を除名された衛藤晟一の復党と参院選での比例代表擁立という自民側の対応にも不満がある。

 その結果、安倍は三月十一日に、改憲手続き法案について、「今こそ、二一世紀にふさわしい国づくりの礎を築くためにも、憲法を改正していく必要がある」とした上で「この国会で国民投票法案を、与野党で合意して成立させたい。五月三日の憲法記念日には、私はそんなにこだわってはいない」と述べた。五月三日までの成立を繰り返してきたこれまでの態度は周囲の変化と安倍内閣の求心力の低下から変更を余儀なくされたのである。そうなれば衆院通過も四月以降ということになり、改憲阻止の闘いはひとつの勝利を勝ち取った。自民・公明は、四月の統一地方選挙前段終了後に、衆院での成立をめざしている。選挙の結果を見て、また野党・民主党を抱きこんで、手続き法案成立の策動を再開し全力をあげてくるだろう。もし、この国会で成立できないとすれば、継続審議は難しい。改憲派にとっては残された時間がきわめて少なくなってきている。

 安倍内閣は発足以来支持率を低落させてきているが、いっそう不支持が拡大し、内閣の求心力を失わせる事態が連続して起こっている。閣僚の不祥事だけではない。安部自身の「従軍慰安婦」発言や対北朝鮮政策での行き詰まりなどがあり、今後どのような事件がおきるかわからない。
 安倍内閣の弱点を拡大させ、改憲策動の危険性を大いに暴露し、大衆的な運動と国会内の野党勢力の結束によって手続き法案を断固粉砕しよう。

STOP!改憲手続き法案 3・2大集会

三月二日、日比谷野外音楽堂で、5・3憲法集会実行委員会(憲法改悪阻止各界連絡会、「憲法」を愛する女性ネット、憲法を生かす会、市民憲法調査会、女性の憲法年連絡会、平和憲法 世紀の会、平和を実現するキリスト者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会が事務局団体)の呼びかけによる「STOP!改憲手続き法案 3・2大集会」が開かれ労働者、市民、宗教者など約二〇〇〇人が参加した。
はじめに主催者を代表して高田健さんがあいさつ。
安倍内閣は五月三日の憲法記念日までに改憲のための手続き法案を成立させようとしている。そのため予算案を与党単独で強行成立させ、ただちに手続き法案に取り掛かろうとしている。いまは非常に大事なときだ。5・3集会実行委は、5・3集会を開催するだけでなく、改憲阻止のため、頻繁に共同行動を積み重ねて、ともに運動を前進させてきた。今年に入ってからも国会初日の院内集会をはじめ二回の国会議員面会所集会、そして今日の行動となった。東京だけでなく全国各地で九条改憲反対をともに闘う流れが強まっている。安倍は自分の任期中に改憲をやると宣言し、手続き法案成立を急いでいる。マスコミもそうした見方だが、そうではない。これから運動をもっともっと盛り上げ、国会内外の闘いが結びつけば、安倍の狙いは阻止できる。
 国会報告は共産党の笠井亮衆議院議員と社会民主党の福島瑞穂参議院議員(党首)が行った。
 つづいて菅沼一王弁護士(日弁連憲法委員会事務局長)が、手続き法案の問題点についてスピーチ。
 コント劇団のザ・ニュースペーパーによる偽安倍首相が登場し、そのユーモラスな演技に会場は爆笑の渦。
 「集会アピール」(別掲)を確認し、国会へデモ・請願に出発し、衆参議面前では社共の国会議員と一緒に手続き法案粉砕のシュプレヒコールをあげた。

3・12ヒューマンチェーン
 
三月十二日、国会は六〇〇人の抗議の人びとで取り巻かれた。国会に市民の声をこだまさせよう!ヒューマンチェーン&リレートーク「STOP!改憲手続き法――3・12国会へ行こうアクション」が展開されているのだ。安倍内閣の暴走許さない!戦争のできる国づくり・ひとづくり〜9条改憲反対!改定教育基本法関連三法反対!米軍再編特措法反対!少年法改悪反対!共謀罪反対!イラク派兵特措法延長反対!など安倍内閣の反動的な政策に反対するさまざまなシュプレヒコールがあげられた。この行動は、憲法や米軍再編、教育、共謀罪などの市民団体がはじめに提起し、全国各地のひとりひとりの自覚した市民による「呼びかけ人」を募っての市民の非暴力の大きな行動だ。当日は午後六時半から一時間にわたり多くの人が国会をとりまいた。

STOP!改憲手続き法案3・2大集会アピール

 「任期中に憲法を変える」と公言する安倍首相は、改憲手続き法案を「五月三日までに成立させる」ことを繰り返し要求しています。今年の五月三日は、日本国憲法が施行されて六〇周年にあたる節目の日であり、私たちはこの「五・三」を憲法が破壊される一里塚にさせてはならないと考えます。
 改憲手続き法は、憲法を改悪する条件整備の法律です。 
 改憲勢力は憲法を改悪して私たちの自由と人権を国家の下におき、九条を破壊して集団的自衛権を行使できるようにして、アメリカとともに日本が世界のどこででも「戦争ができる国」にしようとしています。改憲に直接つながる改憲手続き法案の成立は断じて許せません。
 しかも、与党と民主党の改憲手続き法案は、いずれも改憲派に都合のいい不公正な内容ばかりです。最低投票率の規定がなく、「過半数の賛成」を「有効投票の過半数」にすりかえることによって、二割前後の賛成でも改憲できるというものです。また国民に十分な判断の時間を与えず、公務員や教育者の運動を制限しテレビ、ラジ寸などの広告は大金を使える側だけが利用できるなど、改憲案を通しやすくする非民主的な仕掛けが盛り込まれているものです。
 全国で「生かそう憲法、守ろう九条」の声が急速に広がっており、改憲推進勢力の前に大きく立ちはだかっています。安倍内閣の支持率が急落し、憲法問題は世論が要望する政策課題の下位となっていることも運動の広がりと無関係ではありません。世界でも九条の価値を再認識して支持する動きが現れ、九条の精神を生かした平和の地域共同体がひろがっています。
 憲法改悪を許さないためには、目の前の改憲手続き法案の成立をくいとめることが、いま何よりも重要です。ともに声を上げ、行動を起こしましょう。
 STOP!改憲手続き法案、改憲手続き法案は廃案にするしかありません。

         二〇〇七年三月二日


西日本春闘討論集会報告

     
労働法制改悪阻止を中心に春闘勝利へ!

  〇七西日本春闘討論集会が二月二四日、二五日にかけて四国・徳島市の徳島グランドホテル偕楽園で開催された。
 今春闘では労働法制改悪が最大の焦点となっており、労働組合にとっては死活問題といっても過言ではない状況に至っている。例年、全労協を主体に、全労協と友好関係にある組合に参加が呼びかけられ、この討論集会が企画されてきた(紙面の関係上、通信員の「独断と偏見」ですべてを報告できないことを先にお断りしておきたい。したがって、講演の報告と郵政ユニオンの動きを中心に記事にさせていただく)。

 討論集会に先立つ二月一三日に最高裁第三小法廷は郵政四・二八処分の勝利判決をだした。一九七九年四月二八日に郵政省が反マル生闘争への報復処分を発令した「懲戒免職処分」取り消し訴訟で、郵政公社による「上告受理申し立てへの不受理」が決定され、それによって原告七人の職場復帰が確定したのである。

 集会は一三時三〇分より開催され、実行委員会事務局の長尾伸夫氏(全港湾四国地本委員長)が司会と進行を務めた。
 一日目は基調報告を全労協副議長・前田裕晤氏。続いて{労働法制の改悪の動きとこれからの闘い」をテーマに全港湾中央本部書記長伊藤彰信氏が講演をおこなった。その後、休憩を挟み闘いの現場からの報告として、国鉄闘争(中野勇人氏)、外国人労働者との共生と連帯(関西、中国のスクラムユニオン)、新任教員免許撤回の闘い(大阪教育合同の伊澤絵梨子氏)、特別報告として四・二八闘争大勝利報告を郵政ユニオン九州地本の中島義雄氏がそれぞれ行った。

全港湾伊藤書記長による講演

 周知のように二月六日の閣議でホワイトカラー・エグゼンプションの導入は今国会では見送られた。これは選挙を意識しての先送りであって、再浮上する可能性は大である。
 他に労働基準法改正案、労働契約法、パート労働改正案、最低賃金法改正案、雇用保険改正案、雇用対策法及び地域雇用開発法改正案の七本の重要法案が提出される。
 とくに労働契約法が問題であり、一言で言えば、就業規則そのものを絶対化させ、中身的には「社会的合理性」を持たせることで、労働条件を容易に引き下げることが可能になり、そうする事で合同労組や、地域ユニオンなどの介入を排除する狙いがある。その他の法案では、労働基準法に関係する時間外労働での割増賃金率を八〇時間以上を超えると現行の二五%から五〇%増とするとしているが、これでは長時間残業を奨励するようなもので過労死促進法となる。また、最低賃金法改正案は、生活保護との整合性を考慮し、生活保護の引き下げを画策していることに注目しなければならない。
 このように資本による労働ビッグバンの意図は、一に労働法を労働者保護から労働を商品として扱うことに変えることに狙いがある。二に財界の狙う「新日本的経営」の固定化。三に企業内労使関係の絶対化と同時に、合同労組や地域ユニオンなどの排除などである。 
 こうした攻撃にこれからいかに闘うのか。
 それは、第一に、労働ビッグバンが行きつく社会を暴露・宣伝し、われわれが守ろうとする雇用・労働制度とは何かを学習し堅持すること。第二に、非正規労働者の政策要求と政策推進母体の形成。第三に、労働ビッグバンに対する闘いの幅広い共闘の実現。第四に、メーデのスローガンに労働法制改悪反対を入れて、労働者の大きな団結した力で闘って行くことだ。

 つづいて郵政ユニオン九州地本の中島義雄氏が、特別報告として四・二八闘争勝利報告をおこなった。

 闘いは、最高裁による郵政公社の「上告受理申し立てへの不受理」決定によって、原告の七人の職場復帰が確定した。当初、四・二八闘争を支援する郵政の仲間は高裁判決が出るまでは、誰一人として勝てるなどとは思っていなかったと思う。この勝利は二八年間の長き闘いのなかで、原告団の闘いに対する執念と様々な障害を克服して闘いを継続してきたことに尽きる。そして、この勝利は他の争議に勇気と自信を与えることが出来た。中でも鉄建公団訴訟に大きな希望を与えたと確信している。これに加えて運動論から見ても、JPU(旧全逓)と決別し新労組を結成して、われわれは少数でも正義を守り闘いを継続してきた結果、勝利をつかむことが出来たということだ。他方、旧全逓は労働者の利益を投げ捨て、その上、被免職者を「組織統制と排除」処分にした。この事実はわれわれの完全な勝利であり、連合路線の完全な敗北を意味するのだ。
 なぜ最高裁で勝利が出来たのか。すでに東京高裁で江見裁判長は「この処分には疑念を感じており、処分の合理性が欠けている」と原告勝利の判決を出したが、この指摘が全てを言い表している。すなわち裁判官の立場からしても、四・二八処分を容認すれば法体系の根幹が成り立たなくなると判断したと思われる。それは仮に、犯罪の計画首謀者が無罪で実行者が重刑を負わされることが常識化される恐れが出てくるからである。

 以上の報告と若干の討議が設けられ一日目は終了した。夜はいつものように交流会が持たれた。ハプニングは、地元徳島と言えば阿波踊りということで、これを全員が踊らされる羽目になったことだった。その後はインターナショナルを合唱し、各部屋での分散会が遅くまで続いた。

 二日目は九時から再開して、各地からの闘争報告が中心となった。
 なかでも注目を引いた報告は、昨日の講演にもあった就業規則に関連した闘いとして「職場代表権」問題を重視して闘っている郵政ユニオンの「三六(超勤協定)代表権」を職場の問題と絡めた報告があったことだった。
 この集会に初参加した仲間は、広島呉郵便局でセクハラ問題を暴露して闘う中で、郵政ユニオンへの支持が急速に高まってきたこと、セクハラ問題への署名の数や組合ビラの問い合わせがそれを証明していると報告した。もうひとつは同じく広島安芸府中郵便局でも昨年、前支部長が「三六代表権」闘争の最中、他局へ強制配転されたが、この組織破壊攻撃にひるむことなく逆に、非正規雇用のゆうメイト一〇数人を組織する闘いを持続し、今年も「三六代表権」獲得に挑戦していることが報告された。
 二日間の集会終了に当たって、全労協副議長の前田裕晤氏は郵政ユニオンの参加者を激励し、今後の闘いの前進に期待すると述べ、団結頑張ろうで討論集会は終了した。  (N)


原発事故隠しの東京電力本社前で抗議行動

 電力会社のデータ改ざん・隠蔽の体質は依然として直っていない。とくに東京電力(勝俣恒久社長)はひどい。水力発電、火力発電だけでなく、原子力発電でも改竄が明らかになった。

 東電は一月末に一三基の原子力発電所で一九九件もの法令違反などを行っていたと公表したが、つづいて三月一日の各紙朝刊は、東電・柏崎刈羽、福島第二など新たに九件の不正を明らかにした。東電に、この三〇年間、原子力発電所の法定検査にかかわる数々の不適切な報告があったことが明らかになった。
 柏崎刈羽一号機は一九九二年二月に主蒸気配管の弁のトラブルで原子炉が緊急停止した。また、福島第二原発一号機も八五年一一月に同様に定期検査前の出力低下中、原子炉が止まった。こうした場合には原子炉等規制法で国への報告が義務付けられている。だが、いずれの事故も、東電は国への報告は行わず、隠ぺいしたのだった。
 
 三月二日、たんぽぽ舎などの団体と個人で構成する「東京電力の不正・改ざんに怒る市民ネットワーク」は、東京電力本店前で、抗議集会をひらき、東電への申し入れ行動をおこなった。
 東京電力の不正・改ざんに怒る市民ネットワークは、三項目にわたる質問を行い、三月三十一日までの回答を求めた。質問は、@平成五年五月一二日の柏崎刈羽原子力発電所一号緊急炉心冷却装置の非常用ディーゼル発電機を偽ってランプ表示した件について、「検査の成立に問題があった」とされています。この検査とは国の定期検査のことだと判断します。それが成立していないということは、国の検査が抜け穴だったという指摘だと解釈しますが、よろしいでしょうか。A国はどの程度の「安全」を貴社に求めているのか、明らかにして下さい。三〇年余にわたって、データを改ざんし、嘘偽りの報告書をつくっていたわけですが、新聞報道によれば勝俣社長はこれらの改ざんを「生活の知恵」として、褒め称えているように見受けられます。国が「一〇〇%の安全」を求めていない場合のみ、勝俣社長の発言は理解できます。原子力安全保安院は貴社に対して「一〇〇%の安全」を求めているかどうかお尋ねしたいと思います。B貴社は現時点における改ざんの有無はない、としています。この言葉はどの程度信じて良いものでしょうか。もしまた新たな改ざんが露呈した場合、貴社のすべての原子力発電所を閉鎖する用意があるでしょうか。
 その他、たんぽぽ舎、福島原発市民事故調査委員会、日本消費者連盟などからの申し入れが行われた。

 たんぽぽ舎からの申し入れ

 東電社長 勝又恒久様

 一、東電の不正・データ改ざん、故障運転の報道に驚きました。水力、火力、原発と全部門での長年月にわたる改ざん。ここまでひどいのかと驚きました。次に残念な気持ちと怒りと。〇二年のデータ改ざん、不祥事で貴社は大反省を誓った筈なのに……。

 二、東電のような超一流の会社、優秀な社員たちでなぜ、こういうことが起きるのだろうか。「貴社の方針に根本原因」があるのではないですか。「コスト削減至上主義」で安全の経費、投資を削り、大事な定検を短縮し、(手抜き、省略)、人員をへらし、下請へ無理を押しつける。この会社方針に原因ありと判断します。コスト削減至上主義をやめるべきです。

 三、東電は私たちを含め、多数の電力消費者から、不信をもたれた―お〜きな不信を―ことをキモに命じてほしい、今日の抗議行動の背景には職場で家庭でテレビ、新聞を見て、東電不信を感じた電力消費者が何十万、何百万もいることを。それは万の力となって、こんご長く東電の経営におおいかぶさってくる性質のものです。

四.電力消費者の信頼を回復するみちは
 @不正・データ改ざん・故障運転の全原発をすぐ停止すること。第三者を入れて調査・点検をすること、当時の責任者の厳重処罰。
 A一年間の停止処分を受けながらの再犯の福島第一原発一号機の設置許可の返上を求めます。
 B不正データを改ざんしないと運転できない原子力発電、危険で不安定で、割高な原発と再処理工場から早期撤退すること。

 貴社が賢明な選択をすることを心から期待します。

二〇〇七年三月二日


3・1朝鮮独立運動八十八周年集会

       
 今こそ対話で平和の実現を!許すな!制裁・在日コリアンへの人権侵害

 3・1朝鮮独立運動八十八周年を記念して、三月三日、文京区民センターで「今こそ対話で平和の実現を!3・3集会〜許すな!制裁・在日コリアンへの人権侵害〜」が開かれた。
 はじめの講演は、「東北アジア情勢と平和実現への課題」と題して、武藤一羊さん(ピープルズプラン研究所)。
 安倍政権の性格は、確信的な右翼が政権を握ったということだ。情勢は厳しいといえる。だが、ちょっと長い目で見ればこの状況は崩壊する。攻勢と追撃の時期もまた来ているということだ。
 アメリカのグローバル戦略はすでに破綻している。ブッシュはイラクで行き詰まり、そして引くに引けないところに追い込まれている。アメリカでは、悪の枢軸といって非難してきたシリアやイランとも交渉しながら、泥沼化したイラク戦争からの出口をさぐる戦略について超党派の勧告が出された。だがブッシュはこれを蹴った。逆に二万二千の兵員を増派させようとしているが、これでブッシュの思惑通りのイラク情勢がうまれるわけではない。
 東アジアでもブッシュの政策はメロメロだ。北朝鮮に対しても一貫した政策が打ち出せずにいる。ブッシュは北朝鮮との交渉をはじめたが、これはアメリカがイラン攻撃をするさい、二正面作戦をやる力はないのでアジアの方はなんとかしておきたいというところから来ている。東アジアでも、われわれが利用することができる変化がおきてきている。
 アメリカは北朝鮮政策では金正日体制を変革するというところからすこしずれてき始めた。この状況をわれわれは、東アジアの民衆と協力して、戦争にいかせない、対話による問題解決という方向を実現させるために影響を与えていかなければならない。
 アメリカの日本との関係では、新しいアーミテージ報告が出た。アーミテージはネオコンではなく、クリントン時代から対日政策の基本を立案した人だ。今度の報告は、アジアをアメリカにとってちゃんとしたもの、正しいものにするといっている。その根本は、アメリカと日本が一緒になって、アジアを少なくとも数十年はつなぎとめておこうとするものだ。
 すなわち日米一体化でアジアを支配するという米日同盟というコンセプトで、つまりアメリカは日本をアメリカと別の主体とはもはや考えていないということになっている。
 こうした枠組みの中で安倍は、「拉致」問題を使って支持を確保しようとしている。しかし安倍にはこの問題を本当に解決しようという気はない。たんに利用するということだけである。安倍内閣は極右が初めて反対派から政権の座についたのだが、にもかかわらず極右の言説で正当化するのは困難になってきている。アメリカや日本財界からの圧力で訪中した。そして、村山談話や河野談話を踏襲するとも言った。しかし、従軍慰安婦問題ではまた後戻りした発言を行っているがうまくはいっていない。自民党の新憲法草案は、過去の侵略の合理化の上にでてきている。しかし安倍はこのような自己正当性をはっきり言うことができないのである。
 いま米軍は世界的な再編を行っている。これは日本をアメリカの一部として使うことと抱き合わせであるが、先にも述べたように、ネオコン政策はすでに駄目になった。われわれの側は、一国的な視野では見えないビジョンと原則を、韓国、日本などアジア民衆が作っていくこと、そして世界的に破綻し始めたアメリカの支配を突き崩していく運動をくりひろげていかなければならない。

 金東鶴さん(NPO法人 同胞法律・生活センター)は、「在日コリアンへの人権侵害・弾圧実態」について報告した。
 日本政府は、薬事法違反をはじめとする一連の「事件」をつくりだして過剰捜査を行っている。昨年十一月に、高齢の在日朝鮮人女性に対し日本人医師が無許可で薬品を販売したとして薬事法違反の強制捜査を行った。その際、警視庁は、薬の売買に何ら関わりのない総連東京本部や支部またその職員宅にまで家宅捜索を行い、関連性が認められない書類などを多数押収していった。そして、その後、総連関係施設への強制捜査が立て続けに行われている。これらの捜査では、関係のないところへの捜索・押収が行われ、それにはすべて公安警察(外事課)が動いているのである。そして特徴的なのは一部マスコミヘ意図的リークしていることだ。こうしたことは、法の名を借りながらも法を逸脱したものである。その証拠に、事件はほとんど不起訴となっている。
 昨年の十一月三〇日の時事通信の記事に次のようなものがあった。「警察庁の漆間巌長官は三〇日の会見で、警視庁や神奈川県警が摘発した北朝鮮関連の事件について『北朝鮮への圧力を担うのが警察。潜在的な事件を摘発し、実態を世間に訴える。北朝鮮関係者が起こしている事件は徹底的に捜査するよう全国警察に求めている。有害活動を抑える意味でも大事だ』と述べた。…」。また今年の一月十八日の時事通信では、「警察庁の漆間巌長官は十八日の記者会見で、北朝鮮による拉致問題の解決に向けて、『北朝鮮に日本と交渉する気にさせるのが警察庁の仕事。そのためには北朝鮮の資金源について事件化し、実態を明らかにするのが有効だ』と述べた。漆間長官は『北朝鮮が困る事件の摘発が拉致問題を解決に近づける。そのような捜査に全力を挙げる』と強調した」。これらの記事からもわかるように警察は非常に意図的な動きをしているのである。

 集会では、東海林路得子さん(VAWW―NETジャパン共同代表)が「NHK番組改ざん問題裁判控訴審判決について」、増田郁子さん(元九段中学校教諭)が「平和・国際教育で不当解雇―都教委との闘い」、枝川裁判支援連絡会から「都による土地取り上げに抗する枝川朝鮮学校の闘い」が、宋世一さん(在日韓国民主統一連合)が「大統領選を控えた韓国の動向について」の報告を行った。


【韓国の市民・社会団体からの連帯メッセージ】

 三・一独立運動八八周年を迎え、あの日の自主独立の叫びを今日に引継ぎ、日本の右傾化を糾弾して、東北アジアの平和のために敢然と立ち上がった在日同胞と日本の皆さんに、熱い連帯の挨拶を送ります。

 日本と韓国は東北アジアの和解と平和、共存のために、共に努力すべきパートナーだといわれますが、これまで日帝時代の苦しみを清算できていません。日本の保守層は軍備を増強し、軍事大国化を強化しようとし、東北アジアの緊張とあつれきも高まっています。

 私たちは過去の歴史的な反省なしに軍国主義の復活を画策する日本の右翼と政府当局を強く糾弾します。独島(日本名、竹島)問題、教科書の歪曲、靖国神社への参拝、平和憲法の改悪など、最近日本の右傾化は大変深刻なものがあります。特に、政権の座に就くや否や、教育基本法を改悪し、防衛庁を防衛省へ昇格させ、自分の任期内に必ず憲法改悪を行うとする安倍政権の右傾化政策に、私たちは憂慮を禁じ得ません。過去の歴史に対する反省なく侵略の歴史を美化する日本の再武装化は、東北アジアの平和を深刻な脅威にさらします。よって私たちは日本の右傾化を決して許さず、東北アジアの平和を愛する民衆と共に肩を組んで闘い続けます。

 さらに私たちは、日本政府が朝鮮半島の平和に脅威となる北への制裁を解除し、日朝関係改善に乗り出すまで力強く闘い続けるつもりです。
 日本の右翼勢力と安倍政権は、「拉致問題」を政治的に拡大誇張し、北の核実験を口実に軍国主義復活を進めています。私たちは、在日の朝鮮学校生徒に対する暴行、人権じゅうりんや総連同胞への弾圧は、このような対北制裁の一環だとみています。

 二月一三日六者会談における初期措置の合意によって、朝鮮半島の非核化と平和体制のベースが築かれました。朝鮮半島に平和が芽吹こうとしている今、六者会談を破綻させ、戦争を呼び込む日本政府の対北制裁は決して座視してはなりません。

 在日同胞の皆さん!そして、東北アジアの平和を願う日本の市民の皆さん!
 隣国の私たちが過去の歴史を清算し、平和に共存し、連帯を強化するよう共に努力しようではありませんか!日本の右翼と政府が真の悔悟と反省により軍国主義の亡霊から抜け出すまで、制裁ではなく対話で、日朝関係の改善に取り組むまで力強く闘いましょう!

二〇〇七年三月一日


全国農民組織連絡会議の主催で、日豪EPA・米国産牛肉輸入反対!生産者・消費者総決起行動

 三月八日、衆議院議員会館で「食と農をつぶす日豪EPA・米国産牛肉輸入反対!生産者・消費者総決起行動」が開かれた。これは、全国農民組織連絡会議(全日農、開拓者連、乳価共闘、道農連、秋田労農市民会議、食の安全・監視市民委員会、日本消費者連盟、ふーどアクション、食・農ネット、平和フォーラム)の主催によるもの。

 統一地方選後にも開始される日豪EPA(経済連携協定)・FTA(自由貿易協定)交渉では、オーストラリア政府は農産物も含む関税撤廃を強く主張すると言われている。日本政府がこの要求を受け入れ、農産物の輸入関税が全面的に撤廃されると、肉牛、酪農、小麦、砂糖の主要四分野で約八千億円もの打撃を受け、これに伴う地域経済への打撃は総額二兆円規模となり、食料自給は三〇%台に低下するなど日本の農業と食料は壊滅的な打撃を受けることになる。またオーストラリアとの協定が成立すれば、アメリカ、カナダとも同様な協定が結ばれることになる。

 集会では、主催者諸団体からの発言、民主、社民、国民新党の国会議員からの意見表明があり、「日本農業を潰す日豪EPAとWTO農業交渉に関する決議」と「牛肉等を使用した製品への原料原産地表示の徹底と米国産牛肉の輸入全面停止を求める決議」が採択された。

 日豪EPA決議では、@農産物貿易交渉は、農業の多面的機能の保持と国内自給による食料安全保障の確保を基本とすること。当面する日豪EPA交渉にあたっては、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの農林水産物の重要品目を除外するとともに、万一、これが受け入れられない場合は、交渉を中断すること。A二国間貿易(FTA・EPA)交渉は、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど新大陸型農業による農産物輸入国、途上国の食料・農業支配を強める恐れが強いことから、あくまで、WTO(世界貿易機関)交渉の補完的役割にとどめること。WTO農業交渉にあたっては、食料主権及び多様な農業の共存と多面的機能の実現を第一とすること。BWTO交渉、FTA・EPA交渉にあたっては、交渉経過等について徹底した情報開示に努めること、が要求されている。
 集会後、農水省、厚労省、外務省、内閣官房、日豪経済委員会に対する要請が行われた。


安倍内閣のニセ最賃改定に反対し、全国一律最低賃金制、大巾値上げ実現を!

四十年ぶりの法改正


 今の通常国会に厚生労働省は、雇用保険法、労災保険法、労働契約法、労働基準法、最低賃金法、雇用対策法、地域雇用開発促進法、パート労働法の改正案を提出する。
 最低賃金法改正では、一九六八年以来改正されていない最賃法の改定案について、安倍は、「四十年ぶりの改正」や「生活保護水準との整合性」とは言って大々的に宣伝に努めているが、金額についてはまったくこたえようとしていない。
 最低賃金制とは、最低賃金法に基づいて国が賃金の最低限度を定め、使用者は、その最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとされている制度である。たとえ労使合意の上で最低賃金額より低い賃金を定めても、それは法律により無効とされて、最低賃金額と同額の定めをしたものとみなさることになる。

最賃の全国平均は誤り

 地域別最低賃金は、都道府県ごとに決められ、その地域内の一人でも雇用しているすべての事業主に適用される。
 二〇〇六年度の一時間あたりの地域最賃は、最高の東京が七一九円、北海道六四四円、そして最低の青森、岩手や沖縄が六一〇円などとなっている。政府、マスコミは最賃の全国の加重平均をして六七三円となるなどとしているが、最低を平均するというのもおかしな話で、日本の最低賃金は六一〇円というのが正しい。その上で、地域によりいくばくかの上乗せがあると理解すべきだ。
 なお、産業別最低賃金は各都道府県内の一部の特定の産業の労働者とその使用者に適用され、地域最賃よりも高めに設定されている。

「あり方」答申

 昨年の十二月二十七日、労働政策審議会は、「今後の最低賃金制度の在り方について」の答申を行った。
 今回の答申は、地域最賃の実効性を確保するとして、最低賃金の適用を受けない労働者はいないようにするため法律で最低賃金の決定義務を規定し、現在二万円以下という罰金額の引き上げ、そして最賃違反をうけた労働者が監督機関に訴えることが出来るようにする、ということが中心だとされている。最低賃金を払わないような正当な企業は企業とはいえないのである。
 なお、答申では「使用者側の一部から、産業別最低賃金の廃止に向けての議論は継続すべきであるとの意見があった」と明記されているように、使用者側は地域最賃より高くなる産別最賃の廃止を執拗に求めている。
 最低賃金の決定方式には、大きく分けて、「審議会方式」と「労働協約拡張方式」がある。労働協約拡張方式は、一定の地域内の同種の労使の大部分に適用される労働協約があり、労働組合または使用者の全部の合意による申請があったときのものであり、労働組合が最賃額決定に介入できるシステムであるが答申では「労働協約拡張方式(最低賃金法第十一条)は廃止するものとする」とされている。

最賃で生活できるか


 最低賃金法は、第一条で「この法律は、賃金の低廉な労働者について、事業若しくは職業の種類又は地域に応じ、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」としている。だが、先にあげたような金額で「労働者の生活の安定、労働力の質的向上」が図れるわけはない。
 ではなぜ安倍内閣は最賃法を出してきたのか。それは、現在の最低賃金が地域によっては生活保護の水準を下回り、ワーキングプアを生んでいる事態にたいしての対応だ。見直し案では地域別について、最低賃金の算定根拠として生活保護の水準も考慮するとしている。一日八時間週休二日で働いた場合、税や社会保険料を引いた月の手取り額は一〇万円程度にしかならない。住宅扶助などをふくめた生活保護費と比べると全国どこでも最賃の方が下回ることになる。三月五日付の読売新聞社説「最賃法改正案 生活保護費より低額でいいのか」は、「これでは勤労意欲を失わせ、社会全体のモラルを低下させる恐れもある」と危機感をあらわにした。しかしその一方で「最賃制度は、現実問題として産業界が受け入れてこそ成り立つ。民主党案の一〇〇〇円は理想論すぎない。…最賃には、地域別より高い水準に設定されている産業別最賃制度もあるが、経営側は『地域別に屋上屋を架すようなものだ』として廃止を求めている。簡明な制度としていくことも大切だ」として、結局は、きわめて少額のアップしかできないとする。これで「勤労意欲を失わせ」ず、「社会全体のモラルを低下させ」ないようにするのは至難の業だ。最低賃金は、法一条で言われているように、日本に住んで働く人びとの貧困と格差をその最底辺で支えるということなのにである。

日本・貧困率世界二位

 現行の最低賃金は、労働者の平均的所得の三〇%ほどだ。
 貧困率という数字がある。一世帯あたりの平均所得の半分以下しか所得のない貧困世帯の率のことだ。昨年末のOECDの報告によれば、日本は一世帯あたりの平均所得は四七六万円で貧困率が全体の一五%を超えていた。この十年でなんと二倍近くに膨らんでいる。日本はOECD加盟の先進国では、日本は米国に次いで二番目にランクされた。最低賃金の低さが、社会的格差の拡大の要因となっているのである。
 貧困と格差拡大、ワーキング・プアが社会的問題となっている今日、それらの問題を解決するためには、最低賃金の大幅引上げと最低賃金法の抜本的改革が求められているのである。
 そのためには、「事業の賃金支払能力」規定の改正、全国一律制、横断的な賃金相場をつくりあげていくための職種賃金などの方向が必要である。

最賃法の真の改正を

 労働組合運動は最低賃金制のための闘いを続けてきた。
 低賃金固定化ではなく、労働者のための最低賃金制を獲得し、賃金・労働条件の改善を勝ち取るためには、闘いは総合的なものでなければならない。
 戦後の労働組合運動において賃金闘争方針として画期的な意義をもった一九五二年の総評・賃金綱領は次のように述べた。「…低賃金体制の根底を打ち破る闘争目標とは何か。いうまでもなく、それは貧農的生活水準をもつ、ぼう大な潜在的失業の圧迫から労働者を解放し、その圧迫にもとづく中小企業、家内工業の極度の低賃金を引き上げるための最低賃金制と社会保障制の確立にほかならない。低賃金体制を固定化しようとする政治的抑圧打破の闘争目標とは何か。いうまでもなく、それは当面の労働法規改悪、弾圧三法制定を頂点とする一切の反動立法の粉砕にほかならない。だが、それだけでは十分ではない。労働者の生活と生命とを根底からおびやかす戦争と再軍備とを阻止することなしには、いかなる賃金の引き上げも、生活の向上もありえない。従って、われわれは、戦争と再軍備との阻止をも、統一行動をもって闘いとらなければならない。…」
 賃金闘争は反戦平和・改憲阻止の運動、労働法制改悪反対の闘いとむすびつけて闘われなければならない。そして最低賃金問題では、額の大巾引き上げと全国一律制確立が求められている。総評賃金綱領の精神は継承されるべきだろう。(K) 


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「政界は一寸先は闇」あるいは「君子は豹変す」

 民主党の憲法調査会会長の枝野幸男という衆議院議員がいる。この人物の憲法調査特別委員会に関する言動を見ていると、なかなか面白い。
 彼が「君子」かどうかは別にして、「君子は豹変す」とはこういう場合にも当てはまるのかなあと思ってしまう。
 枝野議員は今年の元日の「毎日新聞」で、自民党の舛添要一参議院議員と対談をしている。
 舛添議員が改憲手続き法について、「通常国会冒頭、できるだけ早い機会に自公と民主で合意し成立させる」と述べたのに応えて、「国民投票法制が間違いなくできる年になると思う」「投票法案は本来の『トライアル』(試行)なんですよ。本体の憲法改正をやるとき、現場からの積み重ねで合意形成しておかないと」と発言している。
 そして、枝野議員は中山太郎憲法調査特別委員長との間で、「五月三日以前に法案を成立させる」という合意をしていた。昨年末からの自公と民主党の法案修正協議もほぼ整っていたし、この時点で、法案成立は既定のことのように思われていたし、マスコミもそのように報道し、あるいは世論誘導をしていた。
 しかし、民主党の小澤一郎代表が「そんなに急ぐべきことではない。参院選を前にして、なにも自民党に花をもたせる必要はない」と言い出してから、風向きが変わってきた。
 枝野議員も「五月三日にはこだわらなくてもいいかな」といいはじめたのだ。そして「自分は予算委員会の民主党の筆頭理事だから、予算に集中するので、予算審議が終わるまではこの法案の話し合いには応じない」といいだした。
 衆議院予算審議の最後は枝野議員の九〇分に及ぶ長時間演説で、久々の徹夜国会になり、与党の強行採決ということになった。枝野議員らは与党に抗議した。
 ここで枝野議員の名言が飛び出した。
 「首相は国民投票法を政局の道具にしている。安倍氏が自民党総裁であるかぎり、話をするつもりはない」
 「安倍首相とは憲法観がまったく違う。安倍君が総裁である限り、参院で自公が三分の二をとらないと憲法は変わらないということだ(註・参院で民主党は協力しないよとの意味)」と。
 これはまたすごいことを言ったものだ。この枝野議員の態度が「豹変」しないことを期待しておこう。
 この結果、中山委員長が職権で開会すると言った八日の憲法特別委員会は開かれなかった。民主を含め野党は抵抗している。問題は翌週に送られた。一五日に与党が単独で委員会を開催するのかどうか。
 一二日にはこの国会での第一波になるヒューマンチェーンが予定され、市民などの闘いのスケジュールは目白押しだ。いよいよ攻防戦は激しくなってきた。 (T)