人民新報 ・ 第1222号<統合315号(2007年4月2日)
  
                  目次


 与党は四月中旬の衆院通過を狙う   九条を変えるための改憲手続き法案を阻止しよう

● イラク占領からまる四年   米軍も自衛隊もイラクから撤退しろ

● 東京都知事選挙   極右・石原慎太郎の三選阻止の共同を

● 正な補償・救済を   アスベスト対策基本法を制定せよ

● 劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワーク結成三周年の集い

● 3・23 けんり春闘のストライキ・一日行動

● 清水私案(民族解放社会主義革命論)を再読する @

● 複眼単眼  /  アーミテージによる対日勧告



与党は四月中旬の衆院通過を狙う

  
 九条を変えるための改憲手続き法案を阻止しよう


 三月二十七日、自民党と公明党は改憲手続き法案「修正」案を衆院憲法調査特別委員会に提出した。昨年五月に提案した原案に、投票権年齢を原則十八歳以上とするなど、「民主党の主張を一部反映した修正案」であるとされ、民主党を巻き込んでの成立を狙うものだ。安倍は自分の任期中の改憲を公言しているが、そのためには、手続き法案の今国会での成立が至上命令となっている。
 しかし実際に手続き法案「修正案」の基本は自民党原案そのものというべきもので、きわめて反動的で危険なシロモノなのである。
 その特徴は、投票が成立するための最低投票率を設けないとしていることだ。改憲案を通しやすくするために、改憲案承認の要件である「過半数の賛成」(憲法九六条)を法案では「有効投票の過半数の賛成」としている。これでは、投票率がいくら低くてもよく、有権者の一〜二割程度の賛成で「国の最高法規」である憲法がいとも簡単に変えられることになってしまうのである。また、公務員の活動規制を強化するとともに、金持ちに有利な有料放送CMについては投票日前二週間の禁止のみである。いずれも改憲派の宣伝を優位に立たせるための仕組みとなっている。
 自公与党は、四月中旬の衆院通過のスケジュールで自公民三党合同の修正案を画策しているが、与党は民主党の賛成が得られなくても、四月十二日に委員会、十三日に本会議で採決し、参院に送る方針だ。改憲手続き法案をめぐる事態はきわめて緊迫したものになってきている。「修正案」は、まさに何がなんでも九条を変えるための手続き法案であることがはっきりした。改憲の動きは、アメリカ・ブッシュ政権からの世界的な規模で集団的自衛権の行使=日米共同作戦の阻害物となっている憲法第九条破壊を軸とする改憲要求に安倍政権が積極的にこたえるためのものである。
 だが与党側もおいつめられている。四月中旬に衆院を通過できなければ、今国会での成立は困難だ。勝利の条件は存在する。より広範な人びとと力を合わせて法案の阻止・粉砕に全力をあげなければならない。


イラク占領からまる四年

    
米軍も自衛隊もイラクから撤退しろ

 ブッシュは二〇〇三年三月二十日、フセイン政権が大量破壊兵器を所有していること、ビン・ラディンらのアルカイダとの組織的関係がある、として、イギリスなどを従えてイラク侵略戦争を開始した。しかし、その戦争は、世界の民衆の反戦の声、そして国連常任理事国であるフランス、ロシア、中国などの反対まで押し切って開始されたものであった。日本政府はブッシュの戦争政策を支持して、資金援助をするだけでなく、自衛隊を現地に派遣した。
 あれから四年が過ぎ、イラクは内乱状況となり日々多数の民衆が殺されている。米兵も9・11の犠牲者を越える死者を出している。米国内では反戦運動が再び高揚し、米軍内に厭戦気分がひろがっている。昨年の中間選挙でのブッシュ与党・共和党の敗北は、すでにブッシュは戦争を勝利的に終わらせることができないということを物語っている。しかしこうした事態に、ブッシュは増派によって「治安回復」を実現し、同時に中東での新たな戦争をも画策している。だが、アメリカの力はその野望を実現するほどには大きくない。ブッシュの政策は中東をはじめ、東アジアでも行き詰っている。にもかかわらず、安倍政権は、ブッシュの戦争にいちだんと加担する姿勢を明らかにしている。

 三月二十日、自民党の内閣・国防・外交部会の合同会議は、七月末で期限切れとなるイラク復興支援特別措置法(イラク戦争加担法)を二年間延長し航空自衛隊の輸送支援を継続するための同法改正案を了承した。それをうけて、安倍は、「今後もイラク復興のために責任を果たしていきたい」と述べた。三十日には閣議決定を行ない、国会で成立させる構えである。すでに軍事面ではその線で動き始めている。三月二十一日、防衛省で、久間章生防衛相と米軍制服組トップのペース統合参謀本部議長との会談が行なわれ、その中で、久間が「(特措法を)延長する方向で調整している。航空自衛隊の活動は国連や多国籍軍で高い評価を得ており、国民にきちんと説明し延長への理解を得たい」と述べたのにたいして、ペースは「空自の活動は必要不可欠と評価している」と感謝の意を表した。日米軍事会談では、イラク戦争での日米両国の協力を一段と強化することが確認された。

 三月二十一日、WORLD PEACE NOWによる「武力で平和はつくれない イラク占領まる四年 WORLD PEACE NOW 3・21 @ HIBIYA いまこそ声を上げよう! 中東・アジア・世界に平和を」行動が二〇〇〇人以上の人々が参加して展開された。
 日比谷野外音楽堂での集会では、主催者を代表して日本消費者連盟の富山洋子さんがあいさつ。ブッシュの開戦の口実はすべてうそだった。それにもかかわらずアメリカはイラク占領を続け、毎日多くの人びとが殺されている。武力で平和はつくれない。アメリカ本国でもブッシュの戦争を批判する人が過半数を越え、大きな反戦デモも続いている。わたしたちは安倍政権を引きずり下ろそう。世界の人びととともにもっともっと大きな声をあげよう。ワールド・ピース・ナウ! ワールド・ピース・ナウ!
 集会の後、銀座パレードで、ブッシュとその追随勢力によるイラク戦争・不法占領の終結、自衛隊の即時撤退、反戦平和を訴えた。


東京都知事選挙

   
 極右・石原慎太郎の三選阻止の共同を

 安倍内閣は、小泉政治のツケとみずからの失策によって支持率の急激な低下に直面している。この窮地を安倍は、いっそうの右翼的な政策を強権的な手法によって中央突破で対応しようとしている。それが、格差拡大の労働法制改悪、イラク特措法や米軍再編のブッシュの戦争政策への加担、排外主義的愛国心強要の教育「改革」そして、九条を軸とする憲法改悪攻撃である。こうした日本政治の反動的な流れに断固たる反撃を加えなければならない。

 統一自治体選挙の前半戦がはじまった。この選挙戦はきわめて重要な意義を持っている。とりわけ首都・東京での知事選はそうである。ここでの結果はひきつづく統一自治体選挙の後半戦と参議院議員選挙の行方に大きな影響を与える。
 「首都・東京から日本を変える」と呼号する石原慎太郎の二期にわたる東京支配は、日本政治全体の反動化を先導するものとしてあった。「日の丸・君が代」強制・処分の強行は、実質的な憲法改悪の先取りであった。今回の知事選では石原三選を絶対に阻止しなければならない。石原を打倒することができるなら今後のさまざまな闘い、とりわけ改憲阻止の運動の展望は大きく開かれる。逆に、石原の三選を許すことは、石原流の反動・極右政治が信任されたとして、日本政治全体に否定的な作用を及ぼすことは必至である。
 当面する各級選挙においては、改憲阻止の課題をはじめ、安倍内閣の狙う極右政治と対決し、自民党支配の解体に有利な局面を切り開くことを基本的な視点としなければならない。都知事選においては、石原を落選させることがなによりも重要だ。
 反石原陣営は都知事選を前に、いかにしたら石原に勝てるのか、それこそ寝食を忘れるほどに悩み考え抜いてきた。共産党は石原スキャンダルを暴くうえで大きな役割を果たし、知事選立候補者の吉田万三氏(元足立区長)も石原都政を厳しく批判してきた。野党第一党としての民主党は石原と対決する立場にありながら、その態勢を作ることができなかった。このままでは石原三選が自動的に決まってしまう、そうした危機的な状況の中で、市民グループの声を背景に浅野史郎元宮城県知事が立候補を決意した。
 浅野氏の政策に対しては、日の丸・君が代問題などいくつかの違和感を覚える点がなしとはしない。だが、情報公開、東京オリンピック見直し、新銀行東京の見直し、石原都政の弱者切捨てを批判して福祉充実などを政策としてとりあげている。
 どうせ石原が勝つのだからそれぞれの政治潮流は自分の主義・主張を鮮明にして選挙戦を展開するがよいという意見もある。だが、それが、反石原票の分散=石原三選という結果になってしまうのでは、良い選択とはえない。
 東京都知事選挙で石原都政を打倒するためには、浅野勝利を実現しなければならない、という共同した認識が必要である。同時に、憲法改悪阻止、反戦、労働者の生活と権利の防衛の大衆的な運動に全力をあげて前進させ、自民党政治を崩壊させる民衆の政治の基盤形成のため奮闘しなければならない。


正な補償・救済を

   
アスベスト対策基本法を制定せよ

 三月二十六日、社会文化会館で「アスベスト問題は終わっていない!〜隙間なく公正な補償・救済を実現させよう〜3・26労働者・市民集会」(主催・石綿対策全国連絡会議)が全国から九〇〇人が参加して開かれた。
 来賓挨拶は、民主党の田島一成衆議院議員、日本共産党の吉井英勝衆議院議員、社民党の又市征治参議院議員、日本労働組合総連合会(連合)の古賀伸明事務局長が行い、メッセージでは全国労働組合総連合(全労連)や海外諸団体からのものが紹介された。海外ゲストの韓国・労働健康連帯の医師でもあるイ・サンュン政策局長があいさつした。

 基調調報告は古谷杉郎事務局長が行った。
 石綿対策全国連絡会議は、今年十一月で設立二〇周年を迎えるが、私たちが一貫して掲げてきた「全てのアスペスト被害者に隙間なく公正な補償・救済」、「ノンアスベスト社会実現をめざした抜本的・総合的対策の確立」の実現が、いままさに重大な局面を迎えている。一昨年夏のクボタ・ショックによって、アスベスト問題が国をあげて取り組まなければならない重要課題として脚光を浴び、私たちが呼びかけた一〇〇万人署名にわずか三か月あまりのうちに一八七万人を超す方々から賛同が寄せられた。それにも関わらず、不十分な小手先の対応でアスベスト問題が終わらされてしまいそうな状況にある。政府は、クボタ・ショックから一か月後の二〇〇五年七月二十九日に最初の「アスベスト問題に関する関係閣僚会合」を開催し、同年十二月二十七日の第五回関係閣僚会合で「アスベスト問題に係る総合対策」をまとめた。石綿健康被害救済法の制定、大気汚染防止法、廃棄物処理法、建築基準法等の改正も、この総合対策の一環として行われたものだった。二〇〇六年九月八日に、第六回目にして、小泉内閣最後の関係閣僚会合が開催された。しかし、そこでは、前年末に取りまとめた「総合対策」の進捗状況を確認し、積み残し事項及び実施した中で明らかになった新たな課題等を整理して、次の内閣に引き継ぐという、当然なされてしかるべきことがまったく行われなかった。安倍内閣のもとでは、関係閣僚会合は一度も開催されておらず、開催する意志すら表明されていない。政府は、アスベスト問題の「幕引き」はすんだと考えているのかもしれない。私たちは、救済新法の「見直し」は、部分的な手直しですませるわけにはいかず、事実上の「作り直し」でなければ対処できないと考える。主な問題点だけでも、以下のような点があげられる。新たな時効切り捨ての続出(生存中本人申請要件、過去分は三年以内)、迅速な行政救済からほど遠いこと、被災者・家族に多大な医学的立証責任、医学的診断精度の向上等を救済制度に持ち込むべきではないことなどである。また、新法救済では「判定保留」事案続出、「石綿肺がん」をほとんど救済できていないし、対象疾病以外の石綿関連疾患(とくに石綿肺)の認定事業場名、市区町村別の中皮膜数等の公表、救済財源の事業主負担のあり方などが問題だ。そして補償を行うべき企業がすでに存在しない場合や「クボタ並み」の補償を実施できない企業もあることに加えて、環境曝露の発生源が工場から建築物等の改修・解体等に移行していくにつれて、加害者を特定できない被害事例が将来増えていくであろうことも予想される。
 それらも含めて、アスベストの使用を早期に中止させることを怠り、かえってその使用を事実上義務づけたり、促進してきた面すらある国の責任を回避することはできない。結局、個別企業の対応のみによっていたのでは正義が実現することにはならず、国としての対応が必要になってくることは不可避である。
 アスベストによる健康被害対策は、疾病が発症してしまった場合の補償・救済に限られるものではない。国レベルでは、各省庁まかせの現状を転換して、「アスベスト対策基本法」の制定、省庁間の縦割り行政の弊害を克服するため、内閣府のもとに「アスベスト対策会議」を設置するとともに、アスベスト被害者とその家族、労働者、市民等の代表を含めた「アスベスト対策委員会」を設置すること等も重要な課題として残されている。石綿問題は終わっていないし、小手先の対策で終わらせてはならない。

アスベスト問題は終わっていない!隙間なく公正な補償・救済を求めるアピール

 一昨年夏のクボタ・ショック以来、連日マスコミを賑わせていたアスベスト問題も、最近は取り上げられる機会が激減しています。しかし現実には、アスペスト被害が拡大し続けています。工場等の周辺住民の健康や命をも奪う「アスベスト公害」が、尼崎だけでなく、全国各地に広がっていることも明らかになってきています。にもかかわらず、国や自治体、企業によるそれらの実態及び原因の解明、責任の追及等はほとんどなされていないに等しい状況です。
 小泉内閣のもとで関係閣僚会合による「アスベスト問題に係る総合対策」が策定されていながら、その達成状況や積み残し課題等の総括も行わないまま内閣が変わり、安倍内閣ではいまだに一度も関係閣僚会合が開催されていません。クボタ・ショック前の縦割り行政時代に逆戻りしてしまっている状況です。複数の省庁で異なる補償・救済制度が実施されている状況の中で、「隙間ない補償・救済」がどの程度実現できているかを検証する仕組みすら存在していないのです。
 被害者・家族に重い立証責任を負わせ、闘病中に手続を行わなければ一切の救済が受けられず、また、石綿肺を救済対象から外している石綿健康被害救済新法は、日々新たな「隙間」を生み出しているとさえ言えます。
 さらに、同じアスベストによる被害者でありながら、新法による救済内容・水準は労災補償と比べてあまりにも低すぎ、加害企業の責任を追及して労災補償や新法救済の上積み補償をさせる取り組みも進められる中で、その「不公正」さは一層際立ってきています。
 私たちは、昨日の石綿健康被害救済新法一周年を検証するシンポジウムと本日の集会を通じて、困難な中でアスベスト問題に取り組む被害者、家族、住民曝露者、労働者、市民等による新たなイニシアチブが育ちつつあることを確認し、一層、連携していく決意をしました。
 アスベスト問題は終わっていないどころか、被害の本格化はまさにこれからなのであって、決して小手先の対策でもって「幕引き」をさせてはなりません。私たちは、救済新法は五年を待たずに「見直し」というよりも「作り直し」が必要であり、補償・救済以外の健康対策や将来の被害の拡大を防止するための抜本的・総合的対策の確立のためには「アスベスト対策基本法」の制定が不可欠であると考えています。同時に、地球規模でのアスベスト被害の根絶に向けて、国際協力を一層すすめていくことがきわめて重要です。石綿健康被害救済新法一周年に当たって、私たちは、あらためて次の事項の実現を強く求めます。

 ●石綿被害救済新法及び労災補償制度等の不備を早急に見直し、全てのアスベスト被害者とその家族に「隙間なく公正な補償・救済」を実現すること。
 ●アスペストの把握・管理・除去・廃棄等を通じた一貫した抜本的・総合的対策を確立するために、「アスベスト対策基本法」を制定すること。
 ●ノンアスベスト社会の実現をめざして、行政・被害者・労働者・市民の参加による体制を確立すること。

三月二十六日


劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワーク結成三周年の集い

        
クラスター兵器の危険性

 三月二十五日、「劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワーク結成三周年の集い」が開かれた。

 市民ネットは、@劣化ウラン兵器禁止に向けてのさまざまなとりくみ、Aイラクの子どもたちへの医療支援、を目的として、五十余の団体・個人が呼びかけ人となって二〇〇四年三月二十七日に結成された。以降三年にわたって活動を展開してきた。
 はじめにたんぽぽ舎の柳田真さんが開会挨拶を行い、つづいて基調報告が行なわれた。

 基調報告の中では世界の劣化ウラン兵器禁止運動の状況が次のように報告された。
 「… NODU(劣化ウラン禁止)に向けた取り組みや闘いは、特に欧米諸国を中心にして進んできています。二〇〇六年八月には被曝地・広島の地で開催された第三回ICBUW(劣化ウラン兵器禁止を求める国際連合)国際大会は、世界九カ国四〇数名のゲストを含む約三〇〇名の参加により大成功し、そのことも運動の発展に大きく寄与しています。
 ヨーロッパでは、昨年欧州会議が、二〇〇六年一一月六日に劣化ウラン兵器を非人道兵器とする文書を採択しました。
 米国では、二〇〇五年に来日したジェラルド・マシュー氏が、他のイラク戦争帰還兵やその家族合わせて一六名とともに、米国政府に対して損害賠償請求裁判を闘っています。
 国際機関に対する取り組みとしては、ICBUWが主催して、二〇〇五年一一月のワークショップに続いて、三月五〜九日ジュネーヴで国連本部内セミナー『ウラン兵器禁止に向けて』や、各国代表部やWHOへの訪問などのロビー活動、軍縮関連NGOとの交流・意見交換が行われました。…」
 またクラスター兵器について次のように述べている。
 「…非(反)人道兵器の禁止に向けて、昨年八月のイスラエル軍によってレバノンに大量に撃ち込まれ、停戦後非常に高い不発率により、現地住民に多大な犠牲者を生み出しているクラスター兵器の使用、製造、移動、備蓄を禁止する条約策定に向けた国際的な取り組みが始まっています。
 クラスター兵器とは、銃弾の容器に詰められたたくさんの子弾を上空からばら撒き、広域にわたって被害をもたらす兵器ですが、子弾の不発率が数%から数十%もあるとされ、戦闘後も多くの死傷者を生み出している兵器です。ベルギーのNGO・HI(ハンディキャップ・インターナショナル)によれば、クラスター兵器による死傷者は過去三〇年間で一一〇〇〇人余、実際は一〇万人に上るとも言われ、その九八%は民間人であり、そのうちの三割は子どもであると告発しています。現在、クラスター兵器には約二一〇のタイプがあり、三四カ国が生産し、保有国は七五カ国に及び、少なくとも二三カ国で使用されています。
 日本もクラスター兵器を生産し、保有している国の一つです。航空自衛隊と陸上自衛隊がそれぞれ保有しており、空自は、最も悪名高いといわれる@航空機投下型クラスター爆弾CBU―87とその子弾BLU―97、陸自は、AMLRS(多連装ロケット発射システム用二二七ミリ弾、BAH1S対戦車ヘリ搭載七〇ミリ多目的弾、C一五五ミリ榴弾砲用多目的弾を保有しており、@は石川製作所、BはIHIエアロスペース(石川島播磨の子会社)、Cは小松製作所がそれぞれ製造しています。
 劣化ウラン兵器の禁止に向けて、一〇年前の地雷禁止条約、そして今、クラスター兵器禁止条約策定へ向けた各国のNGOなどの活動等に学んでいかなければなりません。…」

 講演は、「クラスター兵器禁止に向けた世界の動きと日本」(北川泰さん・地雷禁止日本キャンペーン代表)、「ヨルダンから帰国して〜イラクと日本の現状を憂う」(原文次郎さん・前JVCイラク担当)、「イラク医療支援の現状と今後」(佐藤真紀さん・JIM―NET事務局長)の三人がおこなった。


3・23 けんり春闘のストライキ・一日行動 

         
賃上げ・労働法制改悪阻止

 07春闘は、リストラ・成果主義・総額人件費攻勢、格差拡大の中で、経営・政府の攻撃と対決して闘われている。

経団連、ザ・アール抗議

 三月二十三日、全労協などで構成する07けんり春闘は十四日の民間大手の回答を受け、一日行動を展開した。けんり春闘は、情勢に合わせ各労組レベルでストライキに決起し社前集会と支援行動、日本経団連への要請・抗議行動、中央総決起集会と国会請願行動を行なった。
 日本経済団体連合会(日本経団連)は一連の経営側の攻勢の参謀本部であり、日本版ホワイトカラー・エグゼンプションの早期導入、法人税率の引き下げと消費税率アップ、そして愛国心教育や憲法改悪を主張している。とくに会長の御手洗富士夫(キャノン会長)はきわめて悪辣な反労働者性をあらわにしている。御手洗は、みずからの会社=キヤノンが「偽装請負」をしていると批判されると、逆に開き直って「偽装請負」を合法化するため労働法制改悪を言い出している。こうしたことは断じて許されない。
 07けんり春闘全国実行委は、日本経団連に対し、@偽装請負、違法派遣を直ちにやめるよう参加団体に強力な指導を行うこと。会長企業が率先してこれを実行すること、A法人税実効税率一〇%引き下げとそれに見合う消費税二%引き上げの主張を撤回すること、B過労死を促進する日本版ホワイトカラー・エグゼンプション導入や解雇の金銭解決方式、就業規則万能化を図る労働契約法新設、偽装請負を労働者派違法改悪など、「労働ビッグバン」と称するさらなる労働分野の規制緩和・撤廃を行わないこと、C「愛国心、日の丸・君が代」の押しつけを行わないこと。九条改憲、集団的自衛権の承認、自衛隊海外派兵恒常化を目指す憲法改悪を行わないこと、を申し入れた。
 また、「過労死は自己責任だ」と放言している奥谷禮子(日本郵政公社社外取締役)が代表取締役社長をしている株式会社ザ・アールへの抗議行動が行なわれた。
 郵政労働者ュニオンの「質問書」は、「日本郵政公社が実施している『接遇マナー二つ星認定試験』はパート労働者を含む関係職員すべてを対象として行われており、人事評価に直結するものであるにもかかわらず勤務時間外の受験として設定されている。労働に就くべき時間と私的な時間の線引きを崩し、賃金不払い労働を助長するこのような受験時間の設定について、『郵使事業における接遇・マナー向上プログラム実施』等の委託を受けている貴社の指導によるものなのか、明らかにされたい」など三項目にわたるもので、四月六日までの回答を求めている。

けんり春闘決起集会

 午後三時半からは、社会文化会館で、「07春闘勝利!労働法制改悪反対!3・23中央総決起集会」が開かれた。
 主催者を代表して藤崎良三全労協議長があいさつ。
 07春闘は、三月一四日に民間大手の集中回答があったが、定期昇給は別だが好景気と史上最大の利潤確保が言われるなかで、あまりの低額回答であり、業界横並びさえも崩された企業側主導の春闘回答である。労働者の賃金は、年収ベースで八年連続して低下している。一方で、企業役員の給与・報酬は一・九倍に、株主配当は二・七倍にも増え、企業側は、設備投資と内部留保資金として溜め込んでいる。また、この間の行革・規制緩和、リストラ攻勢の結果として、非正規労働が拡大し、雇用者の三三・四%、一七〇〇万人台にもなっている。行革・規制緩和、リストラ攻勢が「格差拡大・格差社会」を作りだしてきた。政府や経営者側は、このような状況を改善するのではなく、労働法制の全面改悪で追い打ちをかけてきている。今国会には「労働契約法」の制定をはじめとする労働法制六法案が提出されている。これらは政府が、財界の意向を受けて、労働組合・労働者の団結権の侵害、少数派労組の排除のために、より一層の労働法制の全面改悪「労働ビックバン」を進めようとしていることを物語っている。そして、安倍内閣は、「教育基本法」の改悪、防衛庁「省」昇格法案の強行に続いて、教育関連三法案、「共謀罪」新設法案、憲法改悪のための「国民投票法案」を強行しようとしている。
 07春闘を「闘いの広場」として、政府・経営者側の行革・規制緩和、リストラ攻勢と対決し、生活できる賃金の確保のため、中小労組・非正規労働者の大幅賃上げのため、外国人労働者の権利確立のため、均等待遇実現のため、労働法制改悪反対のため、公務員攻撃に対し官民連帯での反撃のため、国鉄闘争勝利とあらゆる争議に支援・連帯するために、憲法改悪を頂点とする政治反動法案を阻止するために、全力で闘い抜こう。
 決意表明は、東京労組、電通労組、全石油昭和シェル労組、国労闘争団、郵政四・二八全国ネットワークから行なわれた。
 最後に集会アピールが採択され、「本日の一日行動を出発点に、07けんり春闘全国実行委員会に結集した労組・団体・仲間は、世界中に拡がっている新自由主義・グローバリズムに反対する闘いと連帯しつつ、政府・財界側の行革・規制緩和、リストラ攻勢と対決し、生活できる賃金の確保、中小・非正規労働者の大幅賃上げ、均等待遇の実現、外国人労働者の権利拡大、労働法制改悪反対、公務員攻撃への官民連帯での反撃、国鉄闘争勝利とあらゆる争議への支援・連帯、等々のために引き続き全力で闘い抜くものである」ことを決議した。
 集会後は国会請願・デモが行なわれた。

労働ビッグバン反対

 午後六時半からは、「労働時間の規制撤廃と《労働ビッグバン》を許さない3・23集会」が開かれた。
 主催者挨拶につづいて国会の闘い報告。
 民主党の鈴木寛参議院議員。ホワイトカラー・エグゼンプション法案はこれ以上の悪法はないというものだ。これを通してしまうなら野党の存在意義はないに等しい。与党は世論に押されて今のところ静かにしているが、参院選後にはかならず提出してくる。最低年収要件を九〇〇万円以上としているが、これは省令で決めるとなっている。いったん法ができればあとは閣議にも諮らずに次々に切り下げてくるのは目に見えている。
 日本共産党の高橋ちづ子衆議院議員。
 今度の国会は労働・雇用問題が最大のテーマである。共産党は最近、働き方のルールについて提言したが、政府のやっていることは、格差・少子化という緊急の課題の解決にまったくなっていない。いまのところ提出されてきていないホワイトカラー・エグゼンプション法案についても、経団連は法案が通らずに残業割増賃金だけを増やすなと圧力をあけている。政府にきっぱりと法案を断念させなければならない。
 社会民主党の福島みずほ党首(参議院議員)。
 日本版エグゼンプション法案を提出させなかったのは、とにかく反対運動の成果だ。残業ゼロ法案とか過労死促進法案とかの批判が広がったからだ。労働法制が改悪されたら生きていけない、という声を広げていこう。参院選では政治のあり方をかえていく必要がある。
 連帯挨拶は韓国労働健康連帯がおこなった。
 つづいて、全国コミュニティ・ユニオン連合会、全石油昭和シェル労働組合、全日本金属情報機器労働組合(JMIU)、全日本港湾労働組合からの決意表明があった。
 集会アピール(別掲)を採択し、国会請願・デモに出発した。

労働時間規制の撤廃と労働ビッグバンを許さない3・23集会アピール

 政府・与党は、労働時間規制の緩和を狙った「自己管理型労働制」(日本版エグゼンプション)の今通常国会への法案提出を断念した。
 この法案は、長時間労働を是正する法的根拠を労働者から奪い取り、過労死を促進し、残業代をゼロにするものである。政府・経済界は、その本質を国民の目から隠し通すことはできなかった。
 日本版エグゼンプション反対の声は、昨年後半から急速に広がり、マスメディアの反エグゼンプション・キャンペーンが繰り広げられ、法案にはいったんストップがかかった。
 圧倒的な与党有利の国会情勢下で、この大きな勝利は、私たちに勇気と確信を与えてくれた。
 ひとりひとりが自分の働き方と生活を真剣に考え、声をあげれば、悪法は阻止できるし、よりよい法制度を創っていくこともできるという勇気と確信である。
 しかし、政府・経済界は、日本版エグゼンプションの導入を決して諦めたわけではない。 もし、わたしたちが、ここで、気を抜くようなことがあれば、一気に立法化されてしまうだろう。
 あらゆる手段と工夫を講じて、反対の声を広げていこう。

 今国会は「労働国会」と呼ばれている。しかし、審議が予定される法案は、いずれも働く人の要求に応えるものになっていないばかりか、かえって労働条件を悪化させかねないものまで含まれている。
 八〇時間以上の時間外労働に対して割増串を引上げる労基法改正案は、「過労死ライン」を超えた労働の存在を国家が容認するものである。パート法の改正案は、正社員とまったく同じ働き方をしているごく少数の例外的なパート労働者だけに均衡待遇を義務付けるものにすぎず、それ以外のパート労働者に対する差別を固定化する危険性すら指摘されている。最低賃金法改正案も、先進国最低の最低賃金の大幅な引上げには到底つながらない骨抜きの法案にすぎない。労働契約法案は、就業規則による一方的な労働条件の設定・変更を中心に据えた「就業規則法」とでもいうべき内容であり、労働契約法の名に到底値しない。

 経済財政諮問会議の労働市場改革専門調査会が標榜する「労働ビッグバン」は、労働者を個々に分断し、国内の大企業とグローバル多国籍企業に完全に隷属させる仕組みの完成を狙っている。
 日本版エグゼンプションは、長時間労働に対する規制を破壊して、過労死・過労自殺を自己責任にすりかえる。解雇の金銭解決制度は、不当解雇を容認して、解雇自由を実現する。派遣法改正は、偽装請負を合法化し、非正規雇用を拡大・永続化する。アメリカ型交渉単位制度は、少数組合から団体交渉権を奪う。これらの労働ビッグバンが実現すれば、国内外のグローバル多国籍企業がわが国の労働市場をわがもの顔で跋扈するに違いない。
 彼らは、日本の労働者・家族の生活には何の関心もない。彼らの関心はマネーだけである。
 かれらの論理は、人間らしい働き方とは相容れない。労働ピッグバンとの闘いは、人間らしい働き方を取り戻すための闘いであり、労働者の国際的な連帯へとつながる闘いでもある。
 そのために、私たちは以下のことを目指していく。

 @労働時間の上限を設定させ、八時間労働制を守らせること
 A解雇制限法理を充実・強化させること
 B登録型派遣を廃止させ、労働者派遣法の規制を抜本的に強化させること
 C偽装請負を撲滅すること
 D最低賃金を大幅に引上げさせること
 E労働法規によって保護される労働者の範囲を拡大させること
 F就業規則の変更による労働条件の切り下げに対して厳格かつ有効な法規制をさせること
 Gすべてのパート労働者の均等待遇を実現すること
 H間接差別を含むあらゆる女性差別を撤廃させること
 I外国人労働者を監視するための登録通報制度の導入を許さず、外国人労働者の権利を保障するための制度を構築させること

 労働ビッグバンを不発に終らせ、普通の人が普通に働けば余裕をもって人間らしい生活ができるような社会の実現に向けて、楽しく、創意あふれる取組みを強めていこう。


清水私案(民族解放社会主義革命論)を再読する @

清水慎三氏没後一〇年

 三月二十一日、総評会館で「現代の危機をどう捉えるか 打開の道を清水氏とともに考える―清水慎三氏没後一〇年の集い―」が開かれた。清水慎三さん(一九一三〜一九九六)は総評組織綱領草案で有名だが、労働戦線の右翼的再編に対し、また労働組合運動の再生にむけて「ゼネラルユニオン論」や社会的左翼論を提唱し、労働運動、左翼運動に大きな影響を与えた。戦後の労働運動では、総同盟調査部長、鉄鋼労連書記長・副委員長、左派社会党中央執行委員、総評長期政策委員会事務局長などを歴任し、また「労働情報」顧問であり、信州大学や日本福祉大学の教授を勤めた。
 集いでは旧社会党の長老たちを中心にした参加者から発言があった。思い出話も多かったが、現在のような運動の停滞期に清水さんから学ぼうという姿勢は共通していたようだった。
 当日も何人かが、左派社会党時代の綱領論争時における清水私案(民族解放社会主義革命論)に触れていた。国内の階級闘争とアメリカ帝国主義への従属の関係は、安倍政権によるブッシュ政権の戦争と新自由主義・グローバリゼーション政策への追随が小泉時代を上回るような状況の今日、真剣に振り返ってみるべき貴重な歴史遺産であろう。(以下、文中敬称略)

左社、綱領策定へ

 社会党は、一九五一年十月の第八回臨時党大会で、サンフランシスコ講和条約・日米安保条約の賛否をめぐり、安保条約については反対だが講和条約に賛成する右派社会党と、両条約に反対する左派社会党に分裂した。左社の衆議院議員は分裂直後の一六から、五二年総選挙で五四(右社五七)、五三年総選挙では七二(六六)、五五年総選挙では八九(六七)となった。なお五三年参議院選挙では四〇(二六)。左社は大躍進し右社を追い抜いた。これには当時の総評(高野実事務局長)の平和四原則(全面講和、中立堅持、軍事基地反対、再軍備反対)の闘いとその国民的な広がり、総評の強力な左社支援が決定的影響を与えた。

 左社は五三年一月の第一〇回大会で党綱領の制定を決定した。しかし、左社綱領作成に当たってはきわめて複雑な状況があった。そして左社綱領自身はきわめて不運な運命をたどることになる。
 清水私案に入る前に、左社綱領論争全体がどのようなものであったのか、清水がそれをどう理解していたのかについてふれておかなければならない。

左社綱領 思惑の違い

 小山弘健・清水慎三編著『日本社会党史』(芳賀書店 一九六五)は書いている。(《…》引用者による)
…大会後の《一九五三年》四月、綱領小委員会が設けられ、政審会長の和田《博雄》が委員長となり、幹事役に稲村順三、委員に伊藤好道・清水慎三・佐多忠隆・岡田宗司・赤松勇ら一五名、顧問に向坂逸郎・高橋正雄・芹沢彪衛の学者三名がえらばれた。この顔ぶれでわかるように、社会主義協会に拠る旧労農派グループが中心であり、とくに向坂は綱領の起草に全力をそそいだ。…このとき、起草委員会と中執委の双方をつうじて、党首脳部の多数がいだいた政冶意図と、起草者(向坂・稲村)の思想的志向とのあいだには、あきらかにくいちがいがあった。前者は、主に右社との再統一にそなえて左社の優位性をあらかじめ確保しておくための一手段として綱領制定をかんがえており、後者は、党の革命コースを確立するための基本課題として、いわば「労農派マルクス主義に立脚する党建設」のために、これをかんがえていた。両者のくいちがい、そしてここでの党幹部の政治意図の優位は、この後綱領が決定して二年たたないうちに、左右両社の再統一がおこなわれたとき、綱領が水わり的に変改されるという重大な結果を必然づけたのである。
 何れにせよ、戦前日共主流と講座派に対抗してきた旧労農派の人たちは、いまこそ共産党と右社を圧倒するマルクス主義政党の綱領をつくりあげようと、全力をあげてとりくんだ。これは共産党をのぞいた社会主義政党として、最初の本格的綱領の作成作業であった。労農派がながく日共・講座派とくらべて組織的・実践的に劣勢をかこってきた事実をかんがえあわすならば、このとき向坂らが異常な情熱をもやして綱領起草に集中したことも、よく理解されるのである。ただこの労農派グループには、戦前に山川均と猪俣津南雄の二つの流れがおり、それが戦後のこの時点では、向坂と高野のちがいにつながっていた。労農派としては、鈴木《茂三郎》を委員長とする左社・山川を指導者とする社会主義協会・高野をリーダーとする総評グループなど、政治家・学者・労働運動家の各分野を包含してはいたが、その内部では、高野が猪俣の直流としてやはりややちがった流れをつくり、このことは鈴木などにも不安のタネであった。まもなくそれが、社会主義協会からの高野派の脱退となって現実化するのである。…
 (この章は清水自身が書いたのではないが、清水は小山とともに「編者はしがき」で「全体の統一をつける必要から、全原稿についてあらためて私たちで検討を加え、相互の一致にもとづいて各章にわたって整理・補充し、また一部を新たに書きたした。私たちとしては、社会党のどれか特定のグループや派閥の立場にたつことをせず、あくまでふたりの独自の見解の公約数を求めつつ、自由に評価し批判するという方針をとった」としている。)

 つづいて清水慎三『戦後革新勢力―史的過程の分析』(青木書店一九六六)から引用する。
 …左派理論が労農派マルクス主義を党公認のもとに全面的に押し出したのは分裂後の左派社会党の綱領(五四年一月、第一二回大会決定)であった。すでに左右分裂後のことであったので、かつての『森戸・稲村論争』のように政治革命や労働者階級の歴史的使命の認否は問題にならなかった。プロレタリア独裁についてもその一般的意味においてあっさり承認されていた。
 左社綱領の内容は山川均・向坂逸郎等の労農派理論家陣が戦後間もなく打出していた平和革命論をすっきり取入れていた。無論、戦前以来のこの派の持論である『反独占社会主義革命論』を宣揚したことは言うまでもない。そのほかとくに目立つ特徴としては権力掌握後の憲法改正(社会主義憲法の制定)を明示したことと、社会党の特殊事情に対応して過渡的段階の政府(社会主義政権と社会党政権の相違)という考え方を提起したくらいのものであった。
 だがプロレタリア独裁論(憲法改正を含む)が執行部原案に盛りこまれ、大会の多数派であったということは左派社会党の幹部や議員の多数がこれを理論的に了解し心から承認したことを意味しない。事実、綱領が大会で決定して間もなく、マスコミや右派社会党から「永久政権論」ではないかと攻撃されたとき、執行部はじめ議員層は一斉に低姿勢になって弁解をはじめたのであった。綱領制定から僅か二年足らずの後、社会党両派は合同し、合同の起請文として統一社会党綱領ができたとき、このくだりはあっさり放棄されたのであった。
 左派社会党指導部が綱領制定をきめたとき、かれらの意図は再合同に倚えて優位な位置を占めておくことであった。ところが綱領起草の中心であった稲村順三・向坂逸郎らは綱領制定の意義を純粋にとらえ、左派社会党の独自の党建設のための思想的基礎をここに盛りこむことに専念した。そしてかねて脳中に用意されていた労農派テーゼをそこに全面展開したのであった。政治指導部の狙いと起草者の目的は明らかにくい追っていた。それゆえ、僅か二年足らずの間にあっさり放棄されたのも是非ないところと言うことができる。
 では最初から弁解をしなければならないような労農派テーゼをなぜ執行部が採択したのか。それは、より左からの反対論がおり、かなり党内に共鳴者をもつにいたったからである。著者は当時左派社会党の中央執行委員の一人として綱領起草委員会にも席をつらねていたが、原案に対して反対意見をもっていたので私見にもとづき『民族解放社会主義革命論』を骨子とする反対提案をおこなった。当時これは『清水私案』と呼ばれたが、これがゆくりなくも論争の皮切りになったのであった。これよりさき、日本共産党は『新綱領』と言われていた五一年テーゼを出しており、社会党内部にも相当の共鳴者と影響力をもっていた。綱領起草段階では原案の社会主義革命論に対しては、著者と著者の盟友坪井正の民族解放社会主義革命論が対置されただけであったが、大会段階になると原案反対者には五一年テーゼの民族解放民主革命論が優位を占めていた。執行部も労農派理論家たちも反日共、反講座派の一念から筆者らの見解をこれとコミにして押えてかかり、公開討論の機会もあたえられないままに終わった。こうした経過から反対論圧殺の必要にかられて、プロ独裁論を含む労農派テーゼを鵜呑みにしてしまったのであった。二年足らずで簡単に撤回されたのも当然と言えば当然である。
 とはいえ、左社綱領は左社=統一社会党左派党員、とくに中堅層に「社会主義者のたましい」を深く刻みつけた。一時にせよ綱領として党公認になった労農派理論はその後長く現在まで全党的規模で貫流する唯一の思想体系になったのである。…

 左社綱領は、以上のように三つ巴、四つ巴とも言うべき様相の中でつくられていったのであった。 (つづく)  (MD)


複眼単眼

  
 アーミテージによる対日勧告

 二〇〇〇年一〇月、リチャード・アーミテージとジョセフ・ナイらによる報告「米国と日本〜成熟したパートナーシップに向けて」が発表され、それは以降の日米安保体制のあり方に決定的な影響を与えた。その過程で「日米同盟」という用語も定着した。
 本年二月二六日、再び同じメンバーによるレポート「日米同盟〜二〇二〇年に向けアジアを正しく方向付ける」が発表された。これもすでに安倍政権に大きな影響を与えつつあると思われる。
 長文なので、その日本に対する「勧告」の部分をそのまま紹介しておきたい。批評は読者の皆さんにお任せする。 (T)

日本への勧告
1.日本は、もっと効果的な意志決定を可能にするように、国家安全保障の制度と官僚機構を引きつづき強化すべきである。現代の挑戦が日本にもとめているのは、外交・安全保障政策を、とりわけ危機の時期にあたって、国内調整と機密情報・情報の安全性を維持しながら、迅速、機敏かつ柔軟に運営する能力を持つことである。
2.憲法について現在日本でおこなわれている議論は、地域および地球規模の安全保障問題への日本の関心の増大を反映するものであり、心強い動きである。この議論は、われわれの統合された能力を制限する、同盟協力にたいする現存の制約を認識している。この議論の結果が純粋に日本国民によって解決されるべき問題であることを、われわれは二〇〇〇年当時と同様に認識しているが、米国は、われわれの共有する安全保障利益が影響を受ける力もしれない分野でより大きな自由をもった同盟パートナーを歓迎するだろう。
3.一定の条件下で日本軍の海外配備の道を開く法律(それぞれの場合に特別措置法が必要とされる現行制度とは反対に)について現在進められている討論も、励まされる動きである。米国は、情勢がそれを必要とする場合に、短い予告期間で部隊を配備できる、より大きな柔軟性をもった安全保障パートナーの存在を願っている。
4.CIAが公表した数字によると、日本は、国防支出総額で世界の上位五位にランクされているが、国防予算の対GDP比では世界一三四位である。われわれは、日本の国防支出の正しい額について特定の見解を持っていないが、日本の防衛省と自衛隊が現代化と改革を追求するにあたって十分な資源を与えられることがきわめて重要だと考えている。日本の財政状況を考えれば資源が限られているのは確力だが、日本の増大しつつある地域的・地球的な責任は、新しい能力およびそれに与えられるべき支援を必要としている。
5.自ら課した制約をめぐる日本での議論は、国連安保理常任理事国入りへの日本の願望と表裏一体である。常任理事国となれば、日本は、時には武力行使を含む決定を他国に順守させる責任を持った意思決定機関に加わることになる。ありうる対応のすべての分野に貢献することなく意思決定に参加するというその不平等性は、日本が常任理事国となろうとする際に対処すべき問題である。米国は、ひきつづき積極的にこの目標を支援すべきである。