人民新報 ・ 第1226号<統合319号>(2007年6月4日)
目次
● 改憲先取り=「集団的自衛権容認」を阻止しよう
● 支持率急落する安倍内閣
● WORLD PEACE NOWの申し入れ書
「私たちは自衛隊イラク派兵特措法の二年延長に反対します。イラク特措法を廃止し、自衛隊をイラクとインド洋からすぐ撤退させるよう求めます」
● 石川一雄さんは無実だ! 狭山事件の再審を求める集会
● 米軍再編はいらない! 憲法改悪は許さない!
● グリーンサイクル とどろみ / おおさかピースサイクル
● 経験を継承することの大切さ 小畑弘道著 『被爆動員学徒の生きた時代−広島の被爆者運動』
● 清水私案(民族解放社会主義革命論)を再読する C
● KODAMA / 米国・日本・豪州アンポ
● 複眼単眼 / 三木睦子さんの記事を読んで 再び安倍寛のこと
改憲先取り=「集団的自衛権容認」を阻止しよう
安倍内閣は九条改憲への歩みを早めるとともに、それをも待ちきれずに集団的自衛権行使に向けて動き出した。五月二十一日、安倍が設置した集団的自衛権行使に関する有識者懇談会なるものの座長を務める柳井俊二(前駐米大使)は講演のなかで、「集団的自衛権の行使を禁ずる現在の憲法解釈を見直すべきだ」と述べた。そして「憲法改正は非常に時間がかかる。目前にある問題は待っていられない」として解釈の変更で対応すべきだとしたのである。
しかし、「集団的自衛権は憲法上、行使できない」というのが、これまでの政府見解だ。それをあえて変更しようというのは、日本政府に対する変更圧力がつよまっているからにほかならない。アメリカは、イラク侵略戦争に勝利するどころか、身動きできない泥沼にもがいている。ブッシュとともに参戦した国々は次々と戦線から離れた。いまではブッシュの戦争を支持するのはきわめて少ない。ブッシュの盟友ブレアもイラク戦争加担に対する批判が強まることによって辞任せざるをえなくなり、イギリスのイラクからの撤退も時間の問題となった。残り少ないアメリカ追随派のなかでも日本の安倍政権は、オーストラリアのハワード首相とともにブッシュの要求にいっそう積極的に応えようとしている。日本の財界とりわけ軍需産業も日米軍事一体化による自衛隊増強と武器輸出の解禁でいっそう多くの儲けを狙っている。これが安倍が集団的自衛権の行使を急ぐ理由である。
五月二十八日、衆議院第二議員会館で、平和を実現するキリスト者ネット、平和をつくり出す宗教者ネット、許すな!憲法改悪・市民連絡会のよびかけによる「緊急院内集会 集団的自衛権行使は憲法違反です」が開かれた。
集会では、東京慈恵医科大学教授の小沢隆一さん(憲法研究者)が「集団的自衛権問題、安倍首相のねらうもの」と題してスピーチ。社民党党首の福島みずほ参議院議員が国会報告を行った。
WPNが防衛省行動
五月十九日午後一時から、WORLD PEACE
NOWは、「目をそむけないでイラクのいま 防衛省『人間の壁』行動」・申し入れ行動をおこなった。防衛省前では、集会を開き、イラク派兵延長そして、沖縄・辺野古新基地建設の「事前調査」強行を助けるための海上自衛隊掃海母艦「ぶんご」派遣に抗議し、抗議のシュプレヒコールをあげ、「私たちは自衛隊イラク派兵特措法の二年延長に反対します。イラク特措法を廃止し、自衛隊をイラクとインド洋からすぐ撤退させるよう求めます」(別掲)、「防衛省は辺野古新基地建設のための『事前調査』に自衛艦の派遣をただちに中止するよう求めます」の二つの申し入れ書を防衛省職員に手渡した。
午後二時半からは、防衛省近くの外堀公園で、「イラク特措法延長反対! 空自は即時撤退せよ! 次の戦争を準備する米軍再編も許さない! 防衛省抗議行動」(主催・新しい反安保行動をつくる実行委員会)が開かれ、小集会の後、防衛省に向けたデモに出発した。防衛省前では、実行委と広島、関西、愛知、浜松などからの抗議・申し入れがおこなわれた。
支持率急落する安倍政権
安倍内閣は大きな曲がり角に差し掛かっている。強引なやり方で次々に悪法を成立させるなどしてきたこの内閣は、発足当初から支持率を低下させてきたが、今年の三月に逆転上向きになったと各種世論調査は報じた。それに図にのって、いっそうのタカ派振りを発揮すれば、それがまた支持率の上昇に拍車をかけると勘違いした自民党は、改憲手続法、米軍再編関連法などをはじめとする諸法案を、国会とりわけ衆院で圧倒的な議席を占める今のうちに目白押しに成立させるというという暴走をはじめた。
しかし、日経新聞五月二十八日朝刊は「内閣支持率四一%に急落」という日経自身の同月二十五から二十七日におこなった世論調査の結果を発表した。「内閣支持率は昨年九月の政権発足から低下傾向が続いていたが前回調査で一〇%上昇し、下落に歯止めがかかったとの見方があった。今回の急低下の背景には、公的年金保険料の納付記録漏れが参院選の争点に浮上してきたことや『政治とカネ』の問題を巡る対応への不満などが影響しているとみられる。」
そして、日経記事のでた同日、事務所費や農水省汚職の渦中の人として疑惑の中心人物であった松岡利勝農水相が赤坂議員宿舎で自殺した。松岡は、緑資源機構の官製談合事件でも疑惑が指摘されるなど、疑惑は拡大する様相を見せていた。こうした状況のなかで、自民党内から間近にせまった参院選で与党大敗北を怖れた勢力による松岡辞任を求める声が急速に高まっていた。しかし、安倍は強気に松岡辞任を認めず、松岡は引くに引けないアワレな立場に追い込まれてしまったのである。批判は任命責任者としての安倍自身にも当然飛び火し、安倍は国会内外からの追及により苦しい立ち場に追い込まれている。
いま、国会では「政治とカネ」の問題をめぐっての論戦中であり、また五〇〇〇万件にものぼる年金の記載漏れとそれへの与党の対応は多くの人びとの憤激をかっている。
通常国会終盤そして参院選を目前にして、安倍内閣はボロをだしはじめた。いまこそ、安倍内閣の反動政治に対して、多くの人びとと力を合わせて反撃を強めていかなければならないときである。
WORLD PEACE NOWの申し入れ書
私たちは自衛隊イラク派兵特措法の二年延長に反対します。イラク特措法を廃止し、自衛隊をイラクとインド洋からすぐ撤退させるよう求めます
内閣総理大臣 安倍晋三様
防衛大臣 久間章生様
二〇〇七年五月一九日
五月一四日、衆議院の特別委員会で自衛隊のイラク派兵を二年間延長するための「イラク復興支援特別措置法」(以下イラク派兵特措法)の改悪案が与党の賛成で可決され、一五日の本会議で可決されました。
ブッシュ米大統領が主導したイラク侵略戦争と占領に反対してきた私たちWORLD PEACE NOWは、自衛隊をイラク占領軍の一員として継続的に参加させるイラク派兵特措法の改悪に反対し、航空自衛隊をイラクからただちに撤退させることを強く求めます。合わせて、アフガニスタンで現在も継続している多国籍軍による戦争と占領を支援するためインド洋に配備されている海上自衛隊をただちに帰還させることも求めます。
開戦以来四年以上が経過したイラク戦争は、もともと国際法にも国連憲章にも違反したものでした。さらにブッシュ大統領が開戦の口実にした「フセイン政権とアルカイダとの関係」や「イラクによる大量破壊兵器の保有と使用の脅威」もまったくの虚偽であったことは、当のブッシュ政権も認めています。アメリカ、イギリスとともに「有志連合」の一員
として戦争・占領に参加した諸国も次々とイラクから撤退しています。米国でも来年までに軍隊を撤退させる法案が議会で成立しています。しかしブッシュ政権は、こうした人びとの願いを踏みにじり、今年になって三万人に上る軍隊を増派しました。「武装勢力掃討」を名目にしたこの増派によって、戦闘はさらに激化し、治安はますます悪化し、イラクの人びとの苦しみは言語に絶するものになっています。そればかりではありません。ブッシュ政権はイランヘの新しい軍事攻撃の準備を進めています。
小泉前内閣は、開戦直後にアメリカの戦争への支持を表明し、憲法に明白に違反するイラク派兵特措法を成立させ、自衛隊をイラクに派兵しました。小泉内閣を継承した安倍内閣も、国際的にその誤りが明確になったイラク戦争と占領を支持し、自衛隊イラク派兵をさらに二年間も継続させようとしているのです。
イラクでは数万人とも数十万人とも言われる一般市民がこの戦争で殺されました。さらに住む家や地域を破壊され、国内・国外に難民として脱出しなければならなかった人びとも数百万人に上ります。米兵の死者も増えつづけ四月には三三〇〇人を超えました。
米軍のイラク占領は一般市民の虐殺、アブグレイブ刑務所での拷問・虐待など数多くの戦争犯罪を伴っています。私たちは、この現実をしっかり見据える中から、「武力で平和はつくれない」ことを改めて確認しています。
安倍政権と防衛省は、自衛隊のイラク派遣は「人道復興支援」のためであると強調してきました。しかし事実はどうでしょうか。航空自衛隊の輸送機がクウェートの基地からイラク各地に輸送している物資・人員の九割が国連の活動や「人道支援」のためではなく、米軍を中心にするイラク占領軍の軍事作戦のために使用されていることが明らかになっています。「治安維持」「安全確保」という名でイラク市民を殺害するための兵員や武器の輸送のために航空自衛隊の輸送機が使われているのです。
安倍首相は国会答弁の中で「中東地域から石油資源の九割近くを輸入している日本にとって、湾岸・中東地域の平和と安定は死活的に重要」と、この戦争が「石油のための戦争」であることを認めました。こうした戦争のために人びとを殺し、殺されることはゴメンです。イラクの平和と復興のためには、何よりもこの悲劇をもたらしている最大の原因である占領をただちに終わらせることが前提です。
自衛隊のイラク派兵は、米国の世界規模での戦争に自衛隊を全面的に参加させるための踏み台でした。海外派兵を本務とする自衛隊法の改悪、防衛庁の省への昇格、そして現在、参議院で審議されている米軍再編特措法案による日米の軍事一体化にもこの動きが現れています。安倍内閣は改憲手続き法を成立させ、九条改憲への動きをスピードアップさせるとともに、現憲法の下で禁じられていた「集団的自衛権」の行使を認める「有識者懇談会」を設置しました。今回上程されたイラク派兵特措法の二年延長もその流れの中に位置しています。
私たちは、戦争と占領をただちにやめ、イラク派兵特措法の二年延長法案を廃案にすることを、再度、訴えます。
航空自衛隊をイラクからすぐ戻せ。
海上自衛隊はインド洋からすぐ戻せ。
イラクの人びとによる平和と復興のための国際的な支援は、そこから始まるのです。
石川一雄さんは無実だ! 狭山事件の再審を求める集会
部落差別の予断と偏見による捜査・逮捕・裁判によって殺人の罪を着せられた石川一雄さんが無実を叫びつづけて四四年になる。五月二三日は、石川一雄さんが逮捕され、えん罪におとしいれられた日である。この狭山裁判は、でっち上げであるという新証拠・新証言が次々と提出されているのに、最高裁は弁護団が提出した新証拠の事実調べもまったくおこなわず、推測や可能性を積み重ねて、二〇〇五年に突然、再審請求(特別抗告)を棄却した。狭山弁護団は、第三次再審請求にあたって、石川さんが脅迫状を書いていないことを明らかにする筆跡鑑定、筆記用具に関する元鑑識課員の鑑定などの新証拠を提出している。一目も早く再審を始めさせなければならない。この間、さまざまな集会、現地調査など数々の取り組みがなされてきたが、昨年八月からは東京高裁に事実調べ・再審開始を求める「一〇〇万人署名運動」がスタートし、すでに目標を突破した。
五月二十三日、日比谷公園で、「えん罪四四年〜一〇〇万人の声を東京高裁へ」をかかげ、「狭山事件の再審を求める市民集会」が開かれた。
部落解放同盟中央本部の組坂繁之委員長が、昨日一〇〇万署名は目標を突破した、なんとしても無実をかちとっていこう、と主催者あいさつ。
民主党の福山哲郎参議院議員(民主党部落解放推進委員会事務局長)、社民党の福島瑞穂参議院議員(党首)、新党大地の鈴木宗男衆議院議員(党代表)が差別・冤罪に対しともに闘おうとアピールした。
石川一雄さんは次のように述べた。多くの人に私の無実の訴えが広がっている。しかし裁判所はまったく理不尽な態度だ。私が死んだら、私の体で実験して欲しい。本当に警察などの言うことが正しいのかどうかを身をもって示したいからだ。これは私の遺言だ。
中山武敏・狭山弁護団主任弁護人と中北龍太郎・狭山弁護団事務局長が発言し、警察の主張は崩されている、など再審開始・無罪確定に向けた態勢が作られていることを報告。
高裁に対しての署名提出・要請団送り出したあと松岡徹・部落解放同盟中央本部書記長が基調提起。
集会では、えん罪死刑囚・袴田巌さんの姉の袴田秀子さんによる「弟の無実を訴え」などがあり、宗教者代表、労働組合代表が発言し、ルポライターの鎌田慧さん(狭山事件の再審を求める市民の会事務局長)が、まとめの報告をおこなった。
集会アピール(別掲)を確認し、デモに出発した。
狭山事件の再審を求める市民集会集会アピール
ことしは年明けから、あいついで「冤(えん)罪」が明らかになりました。富山県では、有罪が確定し、二年あまりも服役した男性が誤認逮捕だったことを警察が認め、検察が再審請求するという驚くべき冤罪が明らかになりました。男性は虚偽の自白を強要され、ズサンな証拠で裁判所も間違った有罪判決を出していたのです。二月は鹿児島県の公選法違反事件で被告全員に無罪判決が出されました。さらに佐賀県の北方事件、大阪の放火事件の無罪判決など、冤罪事件があいついで明らかになったのです。これらはいまだに自白強要による冤罪が跡を絶たない日本の司法の現実を示しています。
警察の留置場(代用監獄)に長期勾留し、自白すれば帰してやるとせまる「人質司法」の現実、家族や身内のことを出して自白をせまる警察の取調べのやりかた、別件逮捕や代用監獄への長期勾留を安易に認める裁判所の実態、どれも狭山事件で石川さんが四四年前に冤罪におとしいれられたときと同じです。おりしも、周防正行監督の映画「それでもボクはやってない」が上映され、冤罪の恐怖と官僚裁判の実態、身近に冤罪がおこることを多くの市民が知りました。このまま市民がだまっていてはいけません。裁判員制度を導入しようとするならなおさらです。
わたしたちは、こうしたあいつぐ冤罪の実態が石川さんと同じであること、取調べの可視化や公正・公平な証拠開示のルールの確立など冤罪・誤判を生まないための司法改革が必要であることを訴え、狭山事件の第三次再審の闘いを一層強めなければなりません。
きょうは無実を叫ぶ袴田巌さんのお姉さんの訴えを間きました。名張事件の再審棄却決定など「疑わしきは罰せず」という刑事裁判の鉄則に反し、無実の救済という再審の理念をふみにじる裁判所の判断もあいついでいます。えん罪や再審の運動の連帯を強めて、冤罪があいついで明らかになったいまこそ、「間違った裁判から無実の人を救うための再審の門を広げることが必要だ」と訴えなければなりません。
担当裁判長も変わり、狭山第三次再審の闘いはこれからが正念場です。弁護団は筆跡鑑定をはじめ新証拠をさらに積み重ねて事実調べと再審開始を求めていきます。
石川一雄さん、早智子さんも第三次再審にかけて全力で訴えています。
わたしたちは、きょう事実調べと再審開始を求める署名を東京高裁に提出しました。全国から寄せられた署名はついに一〇〇万人を超えました! 学者、文化人からも、世界からも署名が寄せられています。これをバネにして各地域で、街頭で訴え、市民集会を開き、さらに大きな声にしていきましょう。
わたしたちは、石川一雄さん、弁護団とともに、狭山事件の再審開始を求めます! 事実調べと証拠開示を求めます! 一〇〇万人を超える声を力に、第三次再審の門をかならず開きます。
四四年目の決意をこめて、市民に訴えます。
石川さんは無実です。狭山事件の再審を市民の力で実現しよう!
二〇〇七年五月二三日
米軍再編はいらない! 憲法改悪は許さない!
五月十七日、社会文化会館で、平和フォーラムの主催による「米軍再編はいらない!憲法改悪は許さない!五・一七集会」が開かれた。
はじめに主催者を代表して平和フォーラム事務局長の福山真劫さんがあいさつ。自公両党は、五月十四日、改憲手続き法案を参議院本会議において採決し同法の成立を強行した。安倍内閣による昨年の教育基本法改悪、防衛省昇格法に続いての多数議席を背景にした暴挙だ。衆議院では在日米軍再編関連法案や少年法改定案、改悪教育基本法関連の教育三法案なども連日の国会審議の強行でなんとしても成立させようとしている。安倍首相は「戦後レジームからの脱却」を言っているが、これは、これまで憲法で保障されてきた平和・民主主義・基本的人権の尊重ということを否定し、「戦争のできる国づくり」を進めるものだ。なんとしても、私たちの力を大きく結集して阻止していかなければならない。
民主党の那谷屋正義参議院議員と社会民主党党首の福島瑞穂参議院議員が国会報告。
名古屋学院大学専任講師の飯島滋明さんが、「改憲手続き法案の問題点〜法案の成立強行後の課題」と題して講演と提起。国民投票がつねに民意を反映するものとは限らない。国民の意志を問うためでなく、権力担当者の地位や権限を強化する目的や役割を持つ場合も多い。権力担当者は世論誘導や言論規制を行い、国民投票で都合の良い結果が出そうな時に国民投票を行う危険性があるからだ。「独裁者ほど国民投票を好む」という言葉もあるが、ドイツのヒトラーもそうした形で独裁権力を握った。今回の改憲手続法も問題点が多い。国民投票が国民意志の真の表明となるためには、憲法問題について多様な見解が適切に国民に紹介されること、国民が十分議論をすること、国民意志が正確に反映される制度となっていることが必要だが、改憲手続法はいずれもそれらの要件を満たしていない。これでは、国民の意志を問うものではなく独裁に道を開くもので、国民主権、立憲主義とは相容れないものとなっている。安倍首相のめざしているものは、人権尊重、民主主義、平和主義の破壊であり、「醜い国」そのものだ。現在の平和憲法の維持・実現こそが日本の進むべき道である。
リレートークでは、「教員の運動規制について」(日本教職員組合組織共闘部長の筒井道広さん)、「改憲手続き法案成立と今後の課題について」(許すな憲法改悪!市民連絡会の高田健さん)、「米軍再編と沖縄の一連のたたかい」(沖縄平和運動センター事務局長の山城博治さん)、「沖縄平和行進・嘉手納包囲行動に参加して」(全日本水道労働組合青年女性部長の本木寛さん)、「沖縄に連帯する一連のとりくみ」(沖純一坪反戦地主会関東ブロックの小野信也さん)のみなさんが発言し、最期に団結ガンバローで、闘いの決意を確認した。
グリーンサイクル とどろみ
おおさかピースサイクル
去る五月十九日、開発が進む大阪北部にある箕面市の止々呂美(とどろみ)へサイクリングを行いました。おおさかピースサイクルの恒例の取り組みとして春と秋に年二回行われています。今回は、田植えの準備である田おこしという田んぼに水を張って耕運機で平らにする作業を体験することができました。今回も自然農業に取り組む方の話を聞く機会もあり大変有意義なものとなりました。公共事業の見直しでダム建設は中止となりましたが、新御堂筋と能勢をつなぐトンネル工事の完成などあちらこちらで新しい工事が進められており、環境破壊が間違いなく進んでいる状況を見ることができました。開発が進むとはいえ、多くの自然が残されており緑に囲まれながらのサイクリングと森林浴で気分も身体もリフレッシュすることができました。
改憲のための手続き法案が成立し、また一歩戦争に近づいています。六月一日到着の国会ピースを成功させ改憲発議ができないような運動と世論づくりを進めていこう! (大阪・西野)
経験を継承することの大切さ
小畑弘道著 『被爆動員学徒の生きた時代−広島の被爆者運動』
「どのような時代でも、想像を絶するような困難な状況におかれても、信じられないほどの使命感をもって人びとの救援に尽くす人が現れることがある。原子爆弾という人類史上類を見ない惨禍に見舞われた広島においても、廃墟のなかから立ち上がり、人間の尊厳への執拗なこだわりをもって被爆者の援護と核のない世界に向けて、自らのもてる力の多くを注いだ人たちがいる。彼ら彼女らがどのように生き、また、追い求めてきたものは何であったのか。それを問うことは、『核の時代』に生きるものにとっても、意味のあることであろう。そして、何よりもそうした人びとのことをわれわれの記億にとどめなければなるまい。」
このことばが、小畑弘道著『被爆動員学徒の生きた時代―広島の被爆者運動―』の冒頭に記されている。つくづくこころにしみる言葉だ。
この本は、中学一年で広島で被爆し奇跡的に生き残り、反核平和運動で献身的に活動した近藤幸四郎さんが残したメモ・資料をもとに小畑さんが書いたものだ。近藤さんは当時の電電公社に就職、組合活動家でもあった。
「六〇年代後半、原水禁運動がマンネリ化し停滞していた時期に、職域における被爆者組織が作られ原水爆禁止・被爆者救援運動が日常的な労働組合活動の一環として取り組まれるようになる。広島ではどの職場でも原爆被災者がいたし、後遺症で苦しんでいる人が身近にいた。そして、この時期、被爆者の子供たち(未来世代)に対する遺伝的影響や健康不安、それに結婚や就職に際しての差別といった問題にも直面していた。」
ある日、近藤さんは、職場における被爆問題に直面する。「ある女性が異常に手当が低いのに疑問を抱く。局側の答えは『上司にも黙ってよく休んでいる』。そこで、近藤はこっそり本人に会い事情を問いてみる。原爆に遭い肉親を失い、彼女自身、肝臓の機能障害や無力症候群で広島原爆病院に入退院を繰り返しており、被爆者であることが職場に知れたら首になる、と深刻に悩んでいた。これは近藤にとってショックなできごとであった。…(労働組合は毎年、八月六日を中心とした原水禁の行事に参加し一定の役割を担っていたが、)最も身近な職場の被爆者のことを置き去りにしていた。この女性のような悩みを抱えた被爆者はまだ他にもいるに違いない、何かしなければと思い立つ。」
そして、「いち早く職域での被爆者問題に取り組んでいた国鉄労組原爆被爆者対策協議会(国労被対協)が、入院する被爆職員を『公傷扱い』にすることを当局に認めさせている事実を知」り、職場おける原水禁問題を直視し、全電通広島被爆者連絡協議会を結成し、近藤さんは事務局長となる。被爆協は、@組合員から被爆体験記を募集、『原子雲の下に生きつづけて』を発行、A被爆者および被爆二世の実態調査活動、被爆者健康手帳の申請の呼びかけ、職場の配置換えなどの取り組み、B被爆死した旧逓信省時代の臨時雇用人は公務死被いにならず置き去りにされたままであったが、これの解決に向けて取り組み、C運動を全国規模に働きかける。そして、相互間での交流と全国組職化が進んで、七三年には「全電通被爆者協議会」が結成された(この事務局長の役割も近藤さんが担った)。そして職場の被爆協はやがて教組、自治労、動労、全逓、全専売などに広がっていった。
職場を基礎にしたこうした運動は反戦平和戦線の強固な基盤であり、この本は原水禁運動と労働組合運動の結びついた闘いの歴史を教えてくれる。
そのほか、「運動のなかから」の章では、「加害、被害」「地方と中央」「運動の統一」「戦後処理」「問われているもの」で、長い運動経験にもとづいた貴重な問題提起がなされている。
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清水私案(民族解放社会主義革命論)を再読する C
今回から清水私案そのものに入る。清水私案は大きくわけると権力論(アメリカ帝国主義に隷属する日本)と組織的革命方式というユニークな「下部権力基盤の培養を通じての平和移行論」という二つの部分から構成されている。清水私案とその後に清水私案の継承・補正・集約をおこなった岩波新書『日本の社会民主主義』(一九六一年)を中心にみて行きたい。
「植民地的従属国」規定
まず清水私案からその主要な主張を引用しておく。
「第一 民族独立と社会主義革命――革命の展望」の「(一)敗戦日本の権力構造」では、「党活動の基調である戦略規定は、敗戦日本を支配する政治権力はどこに所在するか、権力構造はどうなっているのかという究明からはじまるのが当然である」として次のように書いている。
「敗戦以来、祖国日本は一貫してアメリカの権力支配の下にある。敗戦直後の『天皇及び日本政府の国家統治の権限は、連合国最高司令官に従属する。日本との関係は契約的基礎の上に立つものでなく、無条件降服を基礎とする』と通告された時代はいうまでもなく、ガリオア、エロアの両資金援助に助けられ、アジア市場におけるアメリカの資本主義的補完国の任務を課せられたドッジ・ラインの時代も、サンフランシスコにおける講和・安保両条約、行政協定、M・S・A機構への統合と打ちつづく一連の諸条約に緊縛されたアメリカのアジアにおける反ソ反中共の重要戦略基地と化した現段階も、最高権力の所在が一貫してアメリカにあるということについては何ら変るところはない」。
そうした上で、@日本の権力機構が敗戦後大いに単純化したこと。A封建的勢力や絶対主義的勢力が立てこもる権力組織的拠点がほぼ消滅し、官僚制度さえも、戦後においては大体、金融資本を頂点とする日本の総資本の行政制度という性格に落ちついてきていること。そしてこのことは、最近の逆コース下においても、官僚独自の権力組織的な拠点をもたざる限り、大体変わらないであろうということ。Bアメリカの権力が、日本の過去の一切の権力機構を解体して、新たなる純買弁的下請機構を別途つくろうとしなかったこと、の三点をあげる。
「朝鮮動乱以降、アメリカの対日権力支配は、サンフランシスコにおける形式的独立の附与にもかかわらず、実質的にはこれとは逆に質的な前進をとげた。日本の地位は、ドッジ・ライン時代のように、単なるアメリカ資本主義の補完国にとどまるのではなく、アジアにおける対ソ対中共の最前線の重要戦略基地に変貌したのであるから、アメリカの軍事的、政治的、経済的権力支配が一段と強化されてくるのも当然であろう。軍事基地の設定と拡充、米軍指揮下の傭兵再軍備の強要をはじめとし、講和条約からM・S・A協定に至る一連の諸条約、諸協定による実力に基づく超憲法的政治支配、中ソに対する貿易制限と特需の発注操作を通ずる日本経済全体の隷属化政策(日本資本主義の経済規模ばかりでなく経済循環自体の拘束)、更に為替市場における外銀の支配、技術提携に対する過酷な諸条件等、アメリカの支配力は間然するところがないまでに浸透した」。このように、アメリカ帝国主義の権力こそが日本の支配者であることを述べ、「朝鮮特需三ヶ年の経済過程を通じて、金融資本を頂点とする日本資本主義は、制度としてアメリカ資本主義に隷属せざるをえないようになった。それは個々の資本家の主観的意図をこえた客観的な事実となった。もはや、日本資本主義はイギリスのそれと異なり、総資本の立場において、アメリカ経済からの自立を主張することができなくなってしまった」としている。すなわち「敗戦日本を支配する最高の権力はアメリカ独占資本の手中にあり、日本は完全にその帝国主義的支配に隷属を余儀なくされ、今やその度合はますます強化されつつある。
かつての日本の政治権力の中核体であった独占金融資本は、アメリカの庇護の下に完全に復活強化し、朝鮮動乱の過程を通じてその物的基礎において完全に隷属化し、その自立性を失ってしまったが、一方アメリカの支配権力はこのような立場の日本の独占金融資本とその政治勢力(代弁政党のほか戦後の官僚をも含めて)をその権力機構の中に組入れて間接統治する方法を利益としたので、この両者は利害関係の一致から、アメリカ側の指導下に敗戦日本の権力構造の中で完全に融合をとげるに至った」としている。そしてこの状態を「植民地的従属国ともいうべき地位にある」としたのであった。
民族資本家階層はない
私案はつづく「(二)諸階級の状態」では、はじめに「金融資本を頂点とする日本の総資本自体、運命的にアメリカの対日権力支配の支柱とならざるをえない。いいかえれば、日本資本主義は、制度として、もはや西欧先進資本主義諸国のように、アメリカとの間に、時として資本主義国間の対立をかもし出しうるだけの経済的基礎をもたなくなったのである」としつつも、「個々の資本家に対米不満がなくなったわけではない」し「中共ソ連との貿易に、アメリカの意思や思惑をのりこえて熱意と行動性を示しうる資本家がいなくなったという意味ではない」が、「民族資本と名付ける特殊の持続的任務をになって、労働者階級と共に、アメリカ帝国主義に常に対立する固定的な階層を、日本の資本家階級の中に見出すことは不可能だということである。個々の資本家を断続的にアメリカ帝国主義の好まないカンパニアにも動員できるというのがその限界である」。この規定は、民族民主革命を主張した当時の共産党五一年綱領と違い、清水の社会主義革命論につながっていく。
労働者階級については、「アメリカ帝国主義の支配の強化と共に、内外独占資本の二重の搾取と圧迫を、ますます身をもって惑じとるようになってきた」とし、戦後の労働組合運動の飛躍的発展を評価している。だが、主体の抱える問題点も鋭く指摘されている。日本の労働組合は、「あたえられたる組合」として、「労資新婚旅行下に巣立った組合」として、「企業別従業員型組合という致命的な組織上の弱点を背負った組合」であること、それゆえ「企業の壁をこえた産業別、地域別統一闘争の習慣は、諸外国にくらべてなお未熟である」とされる。つづいて「農民、漁民」「中小資本と独立経営者層」について分析がなされ、それらは「内外独占資本の二重の搾取の被害者」となっているが、組織化の難しさも指摘されている。
隷属・独立対決が基軸
以上のような権力構造の分析、諸階級分析をうけての「戦略の基調と展開」では「戦略的集中点=民族独立」が強調され、「社会主義の実現を目標とするわが党の第一の任務はまず民族の完全独立を闘いとることでなければならない。けだし、支配権力の主人公を見のがす権力闘争はありえないからである。将を射落とすに馬を射ることは戦術的にはありえても、この場合といえども目標はあくまでも将でなければならないからである。従って帝国主義支配下の政局の中心的課題は単純な『保守対革新』ではなく『隷属対独立』の対決である」としている。
政治的な対立機軸をどこにおくのか。左社綱領原案などは保守対革新論であり、党内綱領原案反対派の主な流れは隷属対独立論であった。
ファシズム支援か?
民族独立を戦略的中心点とすると、それは右翼民族主義・ファシズムの動きを援助することになるのではないかという批判がでてくる。こうした批判に対して私案はつぎのように反論している。「われわれが戦略の基調を民族独立におくことを主張するとき、ファシズムとの混同を指摘される場合がある。われわれは、日本資本主義が制度として対米隷属したものと見るが故に、戦後型ファシズムは発生当初の主観的意図はともかくある程度成長するならば必ず米国の傀儡的存在となることを確信する。帝国主義支配を受けている以上、われわれの階級的勢力が民族の担当者となり、正しく指導するのがむしろ、ファシズムを防ぐ道であると考える」と。
また共産党綱領との相違については次のように言っている。
「さきに、日本の資本主義が特需経済を通じて制度としてアメリカ経済に隷属せざるをえない状態に陥ったことを指摘した。それゆえに又、たとえ個々の問題で、われわれの陣営に好意的な資本家があるにしても、後進地域に存在する民族資本という機能を果しうる固定した階層はありえないことも述べてきた。従って、われわれの民族独立の達成は、後進植民地又は半植民地のように国内的に見てブルジョア民主革命の成就を意味するものではなく、その未完成部分を完全になしとげるというだけのものでもない。この点において、われわれは共産党の考え方と明らかに対立する」。(文中敬称略) (つづく)(MD)
KODAMA
米国・日本・豪州アンポ
今年の三月十三日、ハワード・オーストラリア首相と安倍首相は、安全保障協力に関する日豪共同宣言に署名した。あまり報道されていないが「日本外交の一つの画期をなすもの」となろう。両国は大量破壊兵器の拡散やテロといった脅威に協力して対抗し、また平和維持活動や人道支援活動でも協力を深めるとしている。このために二国間の外交安保対話を強化するとともに、自衛隊とオーストラリア軍の協力を深めることになっている。オートラリアのハワード保守党政権はイラクやアフガニスタンへの派兵を行ってきたように世界では、日本と同様の親米・対米追随派だ。このことからわかるように、日豪安保関係はアメリカ・ブッシュ政権の世界戦略を支え、アメリカの力を借りながらみずからの利益を確保しようとする共通の性向を示している。そして、日本の右翼政治勢力の中国封じ込めの具体化でもある。だが、この道はいっそう悲惨な事態をアジアと日本の人びとにもたらすだけだろう。(H)
複眼単眼
三木睦子さんの記事を読んで 再び安倍寛のこと
本紙一二一一号(〇六年一〇月一六日号)の本欄に「安倍晋三が引き継がなかった二つのDNA」というコラムを書き、安倍晋三の父方の祖父安倍寛と叔父の西村正雄(元みずほホールディングス会長)のことを取り上げたことがある。
そこで「彼(安倍寛)は一九四二年の東条内閣のもとで行われた衆議院選挙で、山口県のある選挙区から大政翼賛会の非推薦で東条内閣の無謀な戦争を批判しながら出馬し、当選した。当時、数少ない非推薦議員なのだ。これとは対称的に岸信介は、同じ山口の別の選挙区から大政翼賛会の推薦で当選した。安倍寛は一九四六年、病を得て、五二歳で世を去る。晋三はこの八年後に生まれる。晋三はどうやらこのDNAは受け継がなかったらしい」と書いた。
この第一六六国会で安倍首相の与党が改憲手続き法を強引に成立させた日、故・三木武夫元首相の妻、睦子さんが「毎日新聞」のインタビューに応えて安倍寛のことについて語っている。
記事の見出しは「届かぬ『おじいさまの声』、戦争回避訴えた安倍首相の祖父、」『護憲』三木さん悔し」というもの。リードには「暗い時代の歴史の証人からは『冷静に考えて』との声も上がっている」とある。
「(安倍首相の)天国のおじいさまが何とおっしゃるかしらね」(睦子さん)
安倍寛は三木武夫と同じく、翼賛会の推薦を受けずに当選し、ともに郡部主導の国会を批判した。
「握り飯とわらじ履きが、寛さんの思い出となっている。寛さんは戦争回避などを訴える街頭演説を終えると、東京都豊島区の三木家に寄り、『腹が減った』とよく言った。睦子さん手製の握り飯をほおばると、すぐにわらじを履き直し、また演説に出かけた。寛さんには、特高警察の監視が耐えなかった。『行ってくる』と、毅然と言い残し、街に消える幅広の肩が忘れられないという。終戦後の四六年一月、寛さんは新憲法の公布を見ることなく五一歳で病死。その後、自民党に合流した三木元首相は、睦子さんがその真意を尋ねると、『僕が党に残らねば、憲法九条はなくなってしまうよ』と話した。睦子さんは〇四年、『九条の会』の呼びかけ人となった。二人の意志を継承しようと思ってのことだ。『力及ばず、改憲への道のりがつくられてしまった。安倍首相には二人の声が聞こえなかったようね……』。この夏に九〇歳を迎える声に、悔しさがにじんだ」という記事だ。
安倍のもう一人の祖父、岸信介は、保守合同で自民党結党を進め、改憲を政綱に掲げたが果たせなかった。六〇年の安保改定時は、国会に押し寄せるデモ隊に自衛隊を出動させようとして、赤城宗徳防衛庁長官に下問したが、拒否された経験を持つ。「改憲手続き法」といい、辺野古への自衛隊の掃海艇「ぶんご」の出動といい、安倍はこの岸信介の思いを果たそうとでもいうのだろうか。
歴史をどのようにとらえるか。明日のために、歴史から私たちは何を学ぶか。三木睦子さんの深い思いに感動しながら、あらためて考える。
ある歴史学者が「後戻り出来ない地点というのがあるんだ」と言ったという。アジア・太平洋戦争という侵略戦争への道を、いつ、不可避の道にしたのか。大正デモクラシーというあの時代には、日本近代史の後半の戦争をくい止める力がまだあったはずだ。あの戦前にはあの戦争を阻止しうる可能性があった。しかし、その後は一瀉千里の道だった。
今、石原慎太郎は「俺は、君のために死にに行く」をつくり、アニメDVD「誇り」も日本の侵略戦争を美化し、「南京の真実(仮題)」などという映画も準備されていると聞く。時代が大きく旋回している。しかし、しかし、いまなら、まだ間に合うのではないか、しかし、時間はそうはない。三木さんの記事を読みながら思った。 (T)