人民新報 ・ 第1227号<統合320号(2007年6月18日)
  
                  目次


 支持率低落させる安倍内閣に抗し、教育関連法案など悪法阻止へ

  許すな!憲法改悪・市民連絡会の緊急声明  /  改憲をめざす安倍・自民党に、きたる参院選で、市民の審判を!

  国会ピースサイクル報告 〜大分から各地を通って国会まで〜  六月一日 防衛省・東京都教育委員会・外務省・東京電力・アメリカ大使館・内閣府などへ要請

  外国人研修生権利ネットワークが発足

  教育三法改悪法案を廃案に!

  沖縄戦での軍命令による集団死の書き換えを策す右派勢力  大江・岩波裁判を勝利させよう!

  「郵政4・28反処分闘争勝利」報告集会 in 静岡

  清水私案(民族解放社会主義革命論)を再読する D

  せ ん り ゅ う

  複眼単眼  /  本腰をいれて改憲に臨む自民党   憲法審査会と人事の混迷

  夏季カンパの訴え  /  労働者社会主義同盟中央常任委員会




支持率低落させる安倍内閣に抗し、教育関連法案など悪法阻止へ


低落する内閣支持率


改憲と日米軍事同盟強化に進む安倍内閣の支持率が急落している。読売新聞社による六月五日から七日にかけての世論調査によると、安倍内閣支持率は三二・九%、不支持率は五三・七%で、不支持率が支持率を二一ポイントも上回わる状況で、政権末期を思わせる惨憺たる結果であった。
 六月八日付の読売社説では「理由は明らかだろう。年金の記録漏れ問題と、松岡利勝・前農相の自殺だ」としつつも、「年金記録漏れは大事な問題だ。だが、これ以外にも、国政上の重要な課題が山積している。
教育改革関連三法案、イラク特措法改正案、社会保険庁改革関連法案、政治資金規正法改正案などだ。いずれも、日本が直面する課題に関(かか)わる重要法案だ。安倍首相がなすべきことは、これら法案を確実に仕上げることだ」と安倍にハッパをかけている。
 しかし、安倍に対する批判はその政治姿勢にも及んでいることを見なければならない。強引な政局運営で指導力発揮でをアピールしているが、それらはことごとく参院選勝利を目指す独善性にすぎないということが見え見えであることに多くの人は反発を感じているのである。こうした政権運営を改めなければ、国会終盤に向けて「安倍離れ」がますます進むだろうが、それは極めて困難な事業であろう。

終盤国会の闘い

 国会の会期末は六月二十三日、あとわずかとなった。会期延長論が出ているが参院選前でそれも難しいといわれている。ここに来て政府・与党は、前にあげられている法案のほかにも高級公務員天下り法案、在日米軍再編特措法案、労働雇用ルール見直し法案などがのこっており、政府・与党は重要法案を絞り込んで成立強行の姿勢を強めている。
 会期の余裕のなさと内閣支持率急落という窮地にたった安倍は、しかし、いっそう強引な手法で、強行採決を行なわずには法案成立とはならない。それは、また、安倍内閣のイメージの悪化を招いて、参院選での苦戦を準備することになるだろう。
 安倍政策の内実の徹底的な暴露を行なうとともに、教育関連法案などにおいて取り組まれているような反対運動、国会議員への要請行動、国会前集会などさまざまな形態で最期まで闘いぬくことで、安倍反動政治への反撃を続けていくことが必要である。
 この間の安倍の悪政に反対する闘いは、各種の課題で闘う運動の合流をもたらした。こうして、与党は共謀罪新設法案については今国会での成立を断念したようである。もちろん安心はできないが、これもその他の闘いの奮闘によって、この法案を時間切れに追い込むことができたからである。

予想通りにお手盛りの集団的自衛権論議

 国会論議を抜きにして、安倍が行なおうとしているのは、米軍の一翼として自衛隊が戦う体制を作る集団的自衛権行使を合憲化する動きである。
 安倍が勝手に任命して作った集団的自衛権に関する有識者懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長、柳井俊二前駐米大使)は安倍の希望する結論を出すような連中のみがメンバーとなっており、予想通りお手盛りの容認意見が続出している。その懇談会は、秋の臨時国会の開会前に報告書を出すとしており、臨時国会での論議、新たな法案提出というスケジュールどおりにことが進んでいる。
 九条の明文改憲の前に事実上の改憲を実現してしまうというのである。安倍は、検討対象に、アメリカに向かうミサイルの迎撃、公海上で米軍艦船が攻撃された場合の自衛隊艦船による援護、国連平和維持活動(PKO)活動で他国部隊が攻撃を受けたときの自衛隊による救援、PKOなどでの後方支援など四類型を指示した。いずれも日米同盟を効果的に機能させ、自衛隊の海外での行動の自由化を狙うものだ。

国民監視の憲兵政治


 自衛隊が反戦運動などさまざまな市民の活動に対して情報監視活動を継続的に行なっていることが暴露された。政府は共産党が提起した資料を否定できず、事実であることを認めた。その対象は、自衛隊にかかわるイラク反戦運動のみならず、年金、医療から労働組合運動など全般的なものである。そのうえ、国会での野党からの質問に対し、防衛省は活動の実態がわかるから回答はしないと答弁を拒否した。軍が社会の状況を直接調査・掌握する機関(情報保全隊)を有して秘密裏に活動するということは、何を意味するか。これも、「戦争のできる国づくり」の一環であり、戦争に反対する運動、軍に対する批判の声を圧殺するための資料づくりに他ならないのである。
 この問題はマスコミでも大きく報じられた(政治姿勢をしめすように沖縄タイムス、朝日などは大きく、産経や読売は小さく報じた)。これはかつての憲兵隊の復活に通じる動きであり、絶対に許されない行動である。

 通常国会終盤を断固闘いぬき、反動政治に反撃するさまざまな力を総結集し、安倍内閣打倒にむけて奮闘しよう!


 許すな!憲法改悪・市民連絡会の緊急声明

   改憲をめざす安倍・自民党に、きたる参院選で、市民の審判を!


 この度、自民党が参院選むけに発表した選挙公約「一五五の重点政策」は、第一パートが「美しい国の礎を築く」となっており、そのトップが《新憲法制定を推進する》となっている。公約全体で一五五項目あるが、その「一」は「新憲法制定の推進」とあり、「次期国会から衆参両院に設置される『憲法審査会』の議論を主導しつつ、平成二二年の国会において憲法改正案の発議をめざし国民投票による承認を得るべく、新憲法制定推進の国民運動を展開する」と書いてある。
 選挙公約に改憲を掲げたことも異例であるが、それをトップにおくことで、安倍内閣の公約である「任期中に改憲に着手する」ことの実現への構えと決意を確認している。
 そして先の自民党の新憲法草案策定を受け継いで、「改憲」ではなく、「新憲法制定」としたこと、および「平成二二年(二〇一〇年)の国会での発議をめざす」という具体的な期限を書き込んだこと、そのために「新憲法制定推進の国民運動」を展開するとしたことに重大な特徴がある。
 私たちはこの間、各所で指摘してきたが、日本国憲法第九六条は、「改正」は「この憲法と一体をなすものとして」公布すると規定しているように、部分的改正を想定しているのみであり、全面改正、新憲法策定は想定していない。憲法九九条に規定される憲法尊重擁護義務のある安倍首相が率いる自民党が新憲法策定を主張することは憲法違反である。
 一六六国会で改憲手続き法が成立したとはいえ、この法律自体が一八項目の付帯決議を付けて採決されたように、重大な欠陥法案である。まず国会は改憲手続き法の抜本的再検討が必要である。その上で改憲案作成には最低限三年の凍結期間があるのであって、一六六国会にみられたような強行採決と暴走を特徴とするような国会運営ではなく、憲法問題をまじめに考えるなら二〇一〇年の国会での発議などはいかように計算しても、あってはならないことである。
 一部報道では、今回の「選挙公約」が具体的な改憲の中身に触れていないことから、それが連立与党の公明党の「加憲論」への配慮であるかのような論評があるが、そうであるとすれば公明党もなめられたものであるか、公明党がずるいかのどちらかであろう。なぜなら、「公約」は明確に「新憲法制定」と書いているのであり、九条を含む全面改憲を主張しているのであるから、公明党のいう「加憲」(部分改憲)とはまったく異なるものである。その意味で公明党の「加憲論」は自民党にハナから無視されているのであり、あるいは公明党はそれを承知の上で、「知らぬ顔」で黙認しているかであるからである。
 私利私略、党利党略で憲法をもてあそぶ安倍・自民党に抗議を!
 安倍・自民党の改憲の企てを必ずうち砕こう!
 「戦争のできる国づくり」の道を急ぐ安倍自民党に、きたる参議院選挙で市民の審判を!

二〇〇七年六月七日


国会ピースサイクル報告 〜大分から各地を通って国会まで〜

     六月一日 防衛省・東京都教育委員会・外務省・東京電力・アメリカ大使館・内閣府などへ要請

 六月一日、国会ビースサイクルが取り組まれた。
 イラク戦争から四年をむかえた今年は、三月一八日に九州の大分を出発し、この日ビースサイクルが東京に到着。戦争反対の声を国会に届けようと始まった国会ピースサイクルも四回目、各地でピースメッセージを集めながらリレーし国会に届けた。
 朝、集合場所の有楽町は突然に雨が降りだしたが、大分、長野の仲間も駆けつけ二〇数名が集まった。まず電車で防衛省のある市ケ谷に移動。バスストップから基地ストップの会と共同でそれぞれ門前で申し入れ書を読み上げた。米軍再編でキャンプ座間への米陸軍第一軍団新司令部の移駐に伴い基地強化が懸念されることや沖縄県名護市の辺野古新基地建設において事前調査に自衛艦が動員されたことへの抗議の申し入れを行った。終了後、自転車組八人と電車組とに分かれて東京都庁へ。都議会議員の福士敬子さんの協力を得て都教育委員会に対して全国的に見ても突出している東京都の『日の丸・君が代』の強制に対し、申し入れ書と質問書を提出した。
 昼食後、外務省、東京電力、アメリカ大使館の三ヵ所に分かれて申し入れを行った。
 外務省では日本軍『慰安婦』に対する根本的な解決とすべての戦争被害者に対する謝罪と補償を求めるもの、東京電力では原発の事故隠し、データーの偽造への抗議、アメリカ大使館では米軍再編による基地強化に反対する署名の提出。アメリカ大使館ではアポを取っていたにもかかわらず、護衛の警官に進路を阻まれ中々提出できなかった。
 その後、内閣府で合流し岡崎トミ子参議院議員の紹介で要請行動を行った。各地から寄せられた反戦平和や憲法九条改悪反対などが書かれたピースメッセージと米軍再編による基地強化に反対する署名(二三一〇筆)が安倍首相宛に届けられた。参加者から数の論理で強行採決を繰り返す強引な国会運営に批判が相次いだ。
 こうして国会ピースサイクルは平和のメッセージを届けて目的を果たし終了した。(東京通信員)

ピースサイクル二〇〇七全国ネットワーク安倍晋三首相への申し入れ

    憲法の改悪に反対し、戦争ができる国家づくりへの道を俵侈ないための要請(要旨)


 私たちピースサイクル全国ネットワークはこの二二年間、自転車で全国の人々と連なり、平和、人権、環境保護を訴えてきた平和団体であります。
 六二年前の日本帝国によるアジア・太平洋地域での植民地支配と侵略戦争の歴史を学び、この日本とアジア、世界の平和を目指そうと毎年夏に自転車を走らせ、全国をリレーしながら、平和のメッセージを集め、広島、長崎、沖縄、六ヶ所に届けています。…戦後六二周年、憲法施行六〇年にあたる今年、安倍首相の日本軍「『慰安婦』の強制性の否定」発言が、中国、韓国をはじめ、近隣アジア諸国はもとより、米国、カナダ、ヨーロッパ等からも厳しい批判と抗議を受けました。…このような厳しい批判と抗議は、戦後六二年たっても、A級戦犯を合祀する靖国神社への閣僚や議員の参拝、侵略戦争を賛美するかのような「歴史教科書」の採用や「慰安婦」記述の削除、「君が代」「日の丸」の強制、日本軍「慰安婦」、強制連行・強制労働被害者の放置など、自己反省に立つ「歴史認識」を退ける政策が公然と推し進められているからだと思います。
 日本国政府の孤立は、日本政府が自らの歴史を誠実に振りかえらない、「歴史的な償いを行動で示さない」ための結末に他なりません。前小泉政権の五年間は、「反省とお詫び」を裏切る行動ばかりでした。貴政府は、今こそ、植民地支配と侵略戦争を「反省」し「お詫び」を言葉だけでなく、行動で示す時だと思います。…私たちピースサイクル二〇〇七全国ネットワークでは、今年四回目の国会に向けたピースサイクルを実施しました。三月一八日、九州を出発した行動は、各地で市民との交流を行い、市民からのピース・メッセジを受け取ってきました。「自衛隊のイラク派兵延長反対!」「教育基本法の改悪を撤回しろ!」「『君が代』『日の丸』の強制に反対!」「沖縄の新基地建設をやめろ!」「六ヶ所での核燃料再処理施設の稼働は中止しろ!」「軍隊『慰安婦』や強制労働の早期解決を!」「憲法九条を世界に、未来に広げよう!」等々の日本が米国と連動して戦争ができる国家づくりに対する危惧が表明されるピース・メセージを多数預かってきたところです。
 日本政府は、これら多<の市民から寄せられた危惧と抗議の声に耳を傾け、憲法前文と第九条の精神をアジアヘ、世界へ、未来に広めていくことを強く要請いたします。

二〇〇七年六月一日


外国人研修生権利ネットワークが発足

 外国人研修・技能実習制度は「現代の奴隷制」とまで言われ、研修生・技能実習生の悲惨な状況はいまようやく社会的な問題となってきている。

 六月十一日、文京シビックセンター・スカイホールで、これまでこの問題に取り組んできた市民団体や労働組合などによって外国人研修生権利ネットワークが発足し、記念集会「再検証! まやかしの外国人研修制度」が開かれた。
 外国人研修生権利ネットワーク(略称「研修生ネット」)は、目的として、@外国人研修生・技能実習生の人権と労働権の確立、A外国人研修・技能実習制度に関わる政策の提言、B外国人研修・技能実習生に対する救援並びに情報提供、C外国人研修・技能実習制度の問題点の告発、D外国人研修・技能実習制度に関わる研究者の育成と連携、Eその他外国人研修・技能実習制度並びに移住労働者全般の問題を通じて、より良い多民族多文化共生社会の確立に寄与する、ことをあげ、活動としては、@ニュース(会報)発行、Aメーリングリストでの情報交換、提供、Bシェルター並びに基金の運営、CJITCO(財団法人 国際研修協力機構)への監視活動、D各地域の相談活動への支援、E国会ロビー活動をおこなう。組織体制は、共同代表に元参議院議員で弁護士の大脇雅子さんと在日中国人ジャーナリストの莫邦富(モー・バンフ)さん、運営委員会(事務局を兼任)は全統一労働組合の鳥井一平さんや移住労働者と連帯する全国ネットワークの矢野まなみさんなどが担う。

 記念集会では、莫邦富さんが開会挨拶。私が外国人研修生問題を取り上げてから十年経つが、この問題は改善されていないばかりかむしろ拡大した。規模、地域、業種、そして悪質さが拡大した。昔の「女工哀史」のような状況がつづいている。経済大国である日本の恥だ。しかし、受け入れた中小企業もある意味では被害者だといえる。すでに日本には適さない古い産業構造をまもるために行なわれているからだ。
 つづいて大脇雅子さんが、「議員・弁護士として取り組んできた外国人研修制度の問題」と題して基調講演。大脇さんは、外国人が研修生・技能実習生の名でこき使われ、パスポートや健康保険証を取り上げられたり、強制貯金をさせられ通帳や印鑑を社長がもっていたり、強制帰国の脅し、労基法違反、さらにはセクハラ、暴力事件など人権状況は看過できないところまできていること、外国人研修生権利ネットの結成でこの問題への取り組みが強化され広がっていくことが必要だと述べた。
 特別報告は、ジャーナリストの安田浩一さん。千葉県木更津市では二〇〇六年、中国人研修生が強制帰国に抵抗する中で関係者が死亡するという事件がおきた。研修生は来日のために多額の借金を背負っているが、この事件をおこした人もそうだった。殺された千葉県農業協会の常務理事は、中国現地で来日のために高額な費用や保証金を取り、また受け入れ農家からも高額な研修費を取るという二重取りをおこなうなどを行なっていた。外国人研修制度は労働基準、倫理観を破壊している。


教育三法改悪法案を廃案に!

 六月八日、衆議院第一議員会館で「教育三法改悪法案を廃案に!緊急院内集会」が開かれた。安倍内閣は、改悪教育基本法の具体化のための学校教育法改正案、教員免許法改正案、地方教育行政法改正案を早期に成立させようとしている。いままさに参院での攻防のおおきな山場である。
 集会で東京大学教授の小森陽一さんは、教育をめぐって政府・与党の中で二つの勢力がせめぎあっている状況について報告した。いま、規制緩和派と国家による統制派が教育改革で争っている。緩和派は企業・私企業による教育を主張し、統制派は教育も一般行政化することを狙っている。彼らのこの矛盾、この股裂き状況を利用しながら闘うことが戦術的に重要だ。
 翻訳家・作家の池田香代子さん。政府の行なおうとしている教育改革には二つのポイントがある。家族、私立学校などにも教育ということで国が口出しをする、そして教員免許の更新で国の意向を常に意識させることだ。
 ジャーナリストの斉藤貴夫さん。政府の進めようとしている教育改革は、多国籍企業の自由な活動を保証する国家の臣民・奴隷を作ることだ。
 許すな!憲法改悪・市民連絡会の高田健さん。自民党の新憲法草案に沿って教育改悪が進められている。
 国会報告は、社民党党首の福島瑞穂参議院議員と共産党の井上さとし参議院議員。


沖縄戦での軍命令による集団死の書き換えを策す右派勢力

                
 大江・岩波裁判を勝利させよう!

 九条改憲、集団的自衛権行使具体化など安倍内閣は「戦争のできる国づくり」に躍起となっているが、歴史の書き換えはその欠かすことのできない構成部分となっている。右翼勢力による、沖縄戦で「日本軍の指揮官の命令で慶良間(けらま)列島の住民が集団自決した」とする本の記述は誤りで、名誉を傷つけられたとして、当時の指揮官らが出版元の岩波書店と作家の大江健三郎さんに、本の出版差し止めなどを求めた訴訟はその重要な一環である。
 六月六日、文京区民センターで、「大江・岩波裁判を支援し沖縄戦の真実を広める首都圏の会・結成総会」が開かれ一五〇人が参加した。
 岡本厚さん(岩波書店沖縄戦訴訟担当、雑誌『世界』編集長)が裁判について報告し、石原昌家沖縄国際大学教授が「操作されつづける『沖縄戦認識』―経過と背景〜いまなぜ政府は沖縄戦を書き換えるのか〜」と題して講演した。

「大江・岩波『沖縄戦』裁判について」(岡本厚さん)


 二〇〇五年五月に、藤岡信勝ら自由主義史観研究会のメンバーが沖縄に調査に行って、それでこの「集団自決」に軍命令はなかったとしてこれまでの歴史記述を変えさせるための「沖縄プロジェクト」が本格的にスタートした。しかし、訴訟がすぐ始まったわけではない。ようやく八月に提訴があり、私たちの手元に訴状が届いたのは九月の半ばだった。
 原告は二人で、一人は座間味(ざまみ)島に駐留し陸軍海上挺進隊の第一戦隊長をしていた元少佐の梅澤裕氏と、渡嘉敷(とかしき)島の第三戦隊長の赤松嘉次(元大尉)という人の弟で赤松秀一という人だ。原告は、住民に自決を命令していない、これは冤罪であり、名誉毀損だとして、出版頒布の禁止、謝罪広告、慰謝料として岩波および大江氏は連帯して各一千万円を払え、と三つのことを要求している。
 訴えられた出版物は大江健三郎さんの『沖縄ノート』(岩波新書)で一九七〇年に出たもの。もう一つは故・家永三郎さんの『太平洋戦争』(初版・一九六八年、再版・一九八六年、二〇〇二年に岩波現代文庫)だ。それから、中野好夫さんと新崎盛暉さんの一九六五年に出た『沖縄問題二十年』(岩波新書)。これは一九七四年にはすでに出庫停止になって、私自身も、『沖縄問題二十年』は、学生時代に古本屋で買った記憶がある。六〇年も前の出来事について、三五年か四〇年前に書かれた本で、それがいまさら裁判になっているということだ。さすがに『沖縄問題二十年』については、原告の側がその後取り下げている。
 しかし、この問題について裁判の前に岩波書店や大江健三郎さんに抗議とか何かはまったくなく、また訴状がわれわれに届く前から産経新聞が報道したり、いきなり政治的なキャンペーンがはじまっている。これはこの裁判が政治的な目的をもって行なわれていることを示している。
 一九四五年四月に米軍は沖縄本島に上陸を開始するが、それ以前に、慶良間列島への攻撃があった。慶良間列島の北のほうにあるのが座間味島、いちばん東側の島が渡嘉敷島だが、三月二十六日に座間味島、二十八日に渡嘉敷島で「集団自決」が起こった。しかし、おなじく日本軍がいた阿嘉(あか)島というところでは「集団自決」はおこっていない。
 戦隊長の命令があったか、なかったが裁判で問われているわけだが、しかし大江さんの本では、渡嘉敷については名前を挙げていないし、座間味については触れられてもいない。沖縄と日本の関係がテーマなのであり、あえて個人をはずした書き方になっている。それが三十六年経って突然裁判になっているのだ。
 沖縄戦については、すでに一九五〇年に沖縄タイムス社から『沖縄戦記 鉄の暴風』という記録が出されている。これは版を重ねて多くの人に読まれた。これではなく、大江さんと岩波書店が訴えられたのは、劇場効果が狙われたからだ。
 かれらの主張は、一つは、軍の命令がなくとも住民は軍の足手まといにならないように自ら死んだ。殉国のための美しい死だということ。もう一つは、なぜこれまで隊長命令だということになっていたかというと、そうしないと戦傷病者戦没者遺族等援護法の遺族補償がもらえなくなるからだ、ということだ。
 われわれの主張は、第一に真実性の証明ということだ。これは証言や著作で「真実だった」とすることだが、米軍による捕虜尋問などがある。第二に、沖縄の三二軍が、軍官民を一体として動員し、沖縄は玉砕して本土決戦の準備の時間的余裕をつくるとしていたこと。慶良間列島では住民の防衛隊に捕虜になってはならないという命令が出ていた。第三に住民自身が軍の命令だと認識していたということだ。これは原告も認めている。しかし、かれらは、住民はそう認識していたが、軍の命令がないにもかかわらず勝手に死んだという主張をしているのである。

「操作されつづける『沖縄戦認識』―経過と背景」(石原昌家さん)

     
 住民の集団自決の定義は、政府・防衛省によると、「日本軍の『戦闘員の煩累を絶つため崇高な犠牲的精神により自らの生命を絶つ者」とされ、政府・旧厚生省の「戦傷病者戦没者遺族等援護法」の一般住民への適用条件として、「壕提供」などと並んで「集団自決」の場合も、軍命により積極的に戦闘協力(参加)したということで「戦闘参加者」として、「準軍属」扱いして、祭神として靖国神社に祀られている。これはゼロ歳児でもそうなっている。だから「大江・岩波沖縄戦裁判」の行方を一番固唾をのんで真剣に見守っているのは、それら遺族かもしれない。
 今回、教科書から住民殺害を削除して集団自決を書き加えさせた政府側の意図は、次のようなものであろう。一九八〇年くらいまで、沖縄戦についての認識は、「外地における戦闘」という程度であった。沖縄戦が国内戦だったという認識は一般的ではなかったのだ。そのころに本土内において、国内戦場を想定した「有事法制」制定の怒涛のような動きに対抗して、「軍隊は住民を守らなかった」という沖繩戦体験に着目して「強盗戸締り論」に対抗する動きがようやく生まれてきた。したがって、国内戦を想定した「有事法制」制定を推進する側にとって、国内が戦場になったとき、軍事優先の結果、「自国軍隊」が「自国民」を殺害したり、死に追い込んだりしたということが定説となっている沖縄住民の沖縄戦体験が、本土一般の共通認識になることは極めて不都合なことであったのであり、当時の教科書検定において、日本政府が沖縄戦における日本軍の沖縄住民殺害の記述を削除したが、それは「有事法制」制制定と軌を一にするものであったのだ。今回の右からの訴訟も「軍民一体意識」を形成して「戦争のできる国」へ進むためのものだ。

 最期に、「大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会」の呼びかけ文、会則、役員体制、今後の活動方針及び予定、「沖縄戦の教科書記述に対する文部科学省による『不当な検定の撤回を要求する決議」、大阪地方債尾版諸民事第九部への要請書が確認され、首都圏の会としての正式の活動が開始された。

大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会会則

 第一条(目的)大江健三郎氏と岩波書店が被告とされた「沖縄戦裁判」の勝利のために、支援の活動をすすめます。また、沖縄戦の史実の歪曲を許さず、沖縄の真実を広く子どもをはじめ市民に知らせていくことを目的とします。
 第四条(会費)一年個人一口一〇〇〇円、団体一口二〇〇〇円とします。

申込書送付先
 東京都千代田区神田神保町三―二 千代田区労協気付
 沖縄戦首都圏の会 事務局
 電話〇三(三二六四)二九〇五
 FAX〇三(三二六四)二九〇六
 郵便振替口座番号  00150―0―706527 加入者名「沖縄戦首都圏の会」

 今後の活動方針および予定

 ◎ 大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会(大阪)や沖縄から平和教育をすすめる会(沖縄)との連携強化
 ◎ ニュース発行などによる会員への裁判進捗状況報告の充実
 ◎ 裁判支援の諸行動(傍聴・集会参加・署名・要請行動)など
 ◎ 不当な検定意見への諸行動(学習会・署名・文科省への抗議要請行動)など
 ◎ 沖縄戦の真実と沖縄の現状を広く知らせる

 * * * *

 呼びかけ人

(二〇〇〇年六月六日現在)(五十音順:敬称略)

 石山久男(歴史教育者協議会委員長)、井上ひさし(作家・劇作家)、大森典子(弁護士)、嵯峨仁朗(日本マスコミ文化情報労組会議議長)、柴田健(沖縄平和ネットワーク首都圏の会代表)、下嶋哲朗(ノンフィクション作家)、俵義文(子どもと教科書全国ネット 事務局長)、津田清(出版労連中央執行委員長)、暉峻淑子(埼玉大学名誉教授)、渡名喜守大(沖縄学研究所研究員)、野平晋作(ピースボート共同代表)、福山真劫(フォーラム平和・人権・環境事務局長)、丸木政臣(教育評論家)、水島朝穂(早稲田大学教授)、森口豁(ジャーナリスト)、守屋龍一(日本ジャーナリスト会議事務局長)


「郵政4・28反処分闘争勝利」報告集会 in 静岡

 五月十二日、静岡市の労政会館で、「郵政4・28反処分闘争勝利報告集会」が行なわれ、四〇人の仲間が結集した。集会は、元被免職者であり裁判闘争の元原告でもあった池田実さんが勝利報告をした。4・28不当処分撤回闘争は、全逓が一九七八年末に反マル生闘争(組合差別をやめさせる闘い)を、全国の全逓組合員が一丸となって順法闘争を行い、郵政労働運動史上始めて年賀郵便の配達が大幅に遅れた大闘争であった。
 この闘争に対して、郵政省は翌七九年四月二十八日、反マル生闘争の報復処分を東京の一般組合員の青年労働者に集中し、六十一人の解雇・免職処分を行なった。4・28不当処分の半年後、全逓本部の方針は郵政当局の恫喝に屈服し、当局よりの労使協調路線に一八〇度の転換をした。
 4・28裁判闘争は一九九一年、全逓本部が裁判を取り下げて、被免職者を組合から追い出すことによって終わろうとしていたが、全国の支援のもとに全逓本部の裏切りを乗り越えて、裁判闘争が自力・自闘で継続された。そして、今年の二月十三日、最高裁が郵政公社の上告受理申立書を不受理としたため、三年前の東京高裁逆転勝利判決が確定した。
 JPU(旧・全逓)は、本年十月一日の郵政民営化発足と時を同じくして、かつての第二組合であった全郵政と組織統合をすることによって、郵政当局が断行した4・28不当処分の狙いは成功するはずだったが、4・28裁判の完全勝利はこの狙いを見事に打ち砕いた。
 最後まで裁判闘争を闘った七人のうち、池田さんは元職場の東京・赤羽郵便局へ三月から職場復帰している。池田さんは集会で、職場復帰して以降の現状、@二十八年前とは仕事量が四〜五倍になっている、A非正規労働者が非常に増えている、B非正規の仲間と連帯することが重要であることなどを、一時間にわたって話した。その後、参加者から意見が出された。
 四〇人の参加者の三分の二は地域共闘の仲間の参加であったが、「全逓(現・JPU)に責任を取らせる運動を作っていくべきだ」、「しぶとく闘うことを学んだ」などの発言があり、元気が出る集会になった。(静岡・N)


清水私案(民族解放社会主義革命論)を再読する D

綱領論争のやりかた

 前号で清水私案が日本を「植民地的従属国」と規定し、アメリカへの隷属からの独立が「戦略の基調」であるとしたのを見てきた。
 しかし、岩波新書『日本の社会民主主義』(一九六一)では、左社綱領論争当時の論争を振り返って次のように書いた(第五章 「いまの世界・いまの日本―社会党勢力の綱領的課題 その一―」)。まず、「…ところでわが国の社会主義運動にはいま三つの綱領が提示されている。一九五四年、労農派マルクス主義を基調としで制定された左派社会党綱領は形式的には統一社会党綱領におきかえられたが、実質的には社会党内の革命的諸勢力の多数派の精神的よりどころとして今なお生きている。かりにこれを労農派的社会主義革命論と呼んでおこう。次に共産党第七回大会に提出された党章草案を基調として若干の修正を加えて第八回大会(一九六一年七月)で決定された綱領と政治報告がある。言うまでもなく民族民主革命論である。いま一つ、綱領案の形式はとられていないが共産党反主流派の理論家群によってほぼ綱領的にまとめられた感のある『構造改革を過ずる社会主義革命論』がある(一九五九、六〇、六一年にわたって洪水のように出版されたものから綱領的部分を抽出すれば簡単に草案化されうるであろう)」という状況から「いまの論争はアメリカ帝国主義を主要な敵と見るか、日本の独占資本を主要な敵と見るかの論争である。どちらが主要でどちらが副次的かと言うことであって、その底には二つの敵という共通基盤がある筈である。だが、実践舞台におろされたとき双方主要な敵のみを一方的に強調し、副次的な敵との闘い方は明示されないか、それとも、主要な敵との闘いに一切従属するようなものの言い方である。ところが、革命的情勢以前の段階においては現実の大中小さまざまの闘いにはそれぞれの立場から言えば副次的な敵を正面に見すえて闘わねばならない事例が数多く出てくる。その場合、『おれは反米闘争はやらぬ』とか、『仲良くする』と言ってみたりして副次的どころか敵ではなくなったりするような極端な事例が続出している(このケースは社会党系及び全学連主流派に多い)。一方、アメリカ帝国主義を主敵とする立場をとる場合、脚下に続出する無敗の大衆闘争には、戦略論的には副次的であるにせよ、戦術的には日本独占とその出先を正面の敵としなければ闘えない多くのケースにぶっつかるが、この場合に闘っている大衆の頭と感情をはるかにのりこえて主敵アメリカ帝国主義を強引に引張りこみ、これとたたかう戦略的闘争陣形(例えば安保反対共闘会議)を直線的に戦術的共闘に利用しようとあせっている事例も少なくない。革命闘争の基本戦略と革命段階以前の個々の大衆闘争(とくに大衆団体の闘争)との結びつきが戦術的に誠に直情径行、猪武者的で硬直し過ぎている。『そのほうが大衆にわかりやすい』というのは言い分けであって、対立する二つの戦略論を実践的に消化する第一線部隊がともに未熟である結果にほかならない。論争両当事者の最高指導者たちは、二つの敵の組み合せが事実どうなっているか、とくにその屈折した相互関係を明らかにし、副次的な敵との闘い方についても周到な指導方針を掲げてロスを小さくすることに責任を感じて貰いたい。」と注文をつけた。

権力の所在論の変化

 そうした上で、清水は権力の所在について次のように続けている。ここで私案段階から変化した規定をする。
 「…つぎに自立と従属、二つの敵の問題について若干の私見を述べることにしたい。私は日本を支配する政治権力は、権力の所在に重点をおいて考えれば、現在は日本独占資本の手中にあると信じている。『現在は』という意味は昭和三十年〜三十二年ごろを転期として――即ち、経済的には神式景気、政治的には岸政府の成立をメルクマールとしてという意味である。それ以前はどうかというに米軍占領の前期から中期まで(昭和二十四年ころまで)は占領軍(アメリカ帝国主義)の権力支配下にあり、それ以後、占領後期からサンフランシスコ体制初期にあってはアメリカ帝国主義にかかえられ統合されていた。従属国(半占領従属国と言ってもよいが、統合―INTEGRATION―と表現したほうが適切である)であり、そのグローバル・ポリシイにもとづく占領政策との癒着のなかで日本独占資本の政治的経済的支配体制が育成され形成されてきた時代であったと考えている。そして現在は日本独占資本の政治権力に違いないが、それはアメリカ帝国主義に従属した政治権力である。しかもその従属の性格は単に自発的に依存する(DEPEND ON)関係ではなく、民族自決権の制限とその長期的継続が最初から予定され、それを前提として占領が解除されるという国家的従属を出発点とした従属関係である。この関係はアメリカ帝国主義が対日軍事占領の目的をいわゆる保障占領(降伏条項の実施を監視する)的なものから自己の帝国主義目的遂行の分担国建設におきかえ、それをもって第二次世界大戦の帝国主義的果実としてこれを放棄することなく全力をあげて確保しようとするに至ったことに端を発した。そしてその後、この基本政策をアメリカ帝国主義の世界戦略の重要な一環としてますます固めようとするかれらの意思と、それに適合することを自国資本主義体制の維持と発展のため政治的軍事的保証条件として甘受し、進んでこれを代償としてより有利な国際的位置を獲得し、帝国主義復活の基礎条件とするに至った日本独占資本の自発的意思との結合物として体制化されるに至った関係である。サンフランシスコ体制と、その発展としての日米新安保体制はこうした政治過程の産物なのである。
 いま一つ、この関係で見られる特徴は、日本独占資本の発展強化、その帝国主義復活の度合に応じて米日支配層の自発的な階級同盟の性格が年と共に強くなってきたことである。そしてそれは日本を支配する権力の性格、政治的支配機構、アメリカ帝国主義による軍事的統合方式、それらを総括した従属の性格と形態の上に反映し、段階的な変化をもたらしたのであった。それゆえ、被占領・従属・自立化傾向の問題は固定的に規定してしまうのでなく、日本独占の復活とアメリカ帝国主義の世界史的位置の対応関係を尺度として流動的段階的に理解してゆく構えが必要である。」

日本をめぐる国際環境

 清水は、従属・自立の歴史的な変化を見ていく必要を強調しているのである。では、一路、自立の傾向が強まっていくのかそうではない。それは、日本を取り巻く国際環境とアメリカが「第二次世界大戦の帝国主義的成果としての日本の国家的従属を珠玉のごとく大切にしてただの一度もその放棄を口にしたことはない」ということからきているのである。
 国際環境については次のように分析されている。
 「…なぜそうなのか。日本は一衣帯水の彼方に強力な二つの社会主義国を控えている。南方諸地域も民族独立の嵐の中で昔日の南方ではなくなった。日本は資本主義国としての生存と発展の保障を求めてアメリカにすがりアメリカの世界戦略への忠誠を誓ったのである。二つの強大な社会主義国に武力対抗できるのはアメリカ帝国主義だけだからである。ソ速・中国は資本主義日本を侵略するものでないということをかれらが信ずる筈はない。さらにまた、社会主義国に決定的に原料及び製品市場について依拠することもかれらの論理にはないことである。アメリカとブロックを結んで海外市場に雄飛するのがかれらにとって安心できる経済発展なのである。」
 今日、ソ連・東欧のいわゆる社会主義は崩壊したが、いままたアメリカは新たな冷戦状況とも言われるような状況となり、中国は資本主義を導入しつつもアメリカの言うとおりにはなっていない。何よりも、全世界のアメリカ化=グローバリゼーションに反対するさまざまな運動が日増しに強くなってきているのであり、日本はいっそうアメリカとの関係を強め、その一翼を担うことによってしか世界に乗り出していくことはできないということでは当時と同じ構図の中にいるのである。(文中敬称略)
(つづく)(MD)


せ ん り ゅ う       


   黙祷の首相黙れといった人

  またまただ官製談合あちこち

  救済は社保長たちを救済さ

  弁償をいわぬ侮蔑答弁

  自衛隊なぜか辺野古に出没す

  李氏来日、参拝を希望とは?!

       ゝ 史

 二〇〇七年五月


複眼単眼

  
本腰をいれて改憲に臨む自民党   憲法審査会と人事の混迷
 
 会長人事をめぐって迷走していた自民党憲法審議会が、六月八日、初会合を開き、改憲手続き法が施行される二〇一〇年の改憲発議(自民党参院選公約=一五五の重点政策の第一項)をめざして検討を開始した。
 人事の迷走というのは安倍内閣の発足直後の一〇月に、自民党憲法調査会を衣替えして、審議会が設置され、当初は会長は船田元に決められた。ところがこれに中川昭一政調会長が異議を唱えた。中川からみれば、憲法問題での自公民協調路線を重視し、民主党に妥協的な船田には会長を任せることはできないという考えだ。決まった後に白紙に戻せと言われた船田も頭に来た。中川は大事な人事だから首相経験者に会長についてもらうべきだという口実で。人事の白紙化を押し切った。
 そこで自民党新憲法草案起草委員会をやった森喜朗に依頼した。ところが森はがんとして受けない。中川が新憲法草案に批判的で、第二次案をつくれという主張の急先鋒だからだ。森にすれば自分が苦心してまとめた新憲法草案に、中川らがケチを付けていると映っている。
 結局、衆院憲法調査会の会長を発足以来、務めてきた中山太郎に白羽の矢が立った。審議会事務局長には石破元防衛庁長 官という集団的自衛権行使論者が就いた。しかし、会長代行には、中曽根康弘元首相と安倍晋三幹事長代理(当時)らがつくった超復古主義的な「前文」をバッサリ切り捨て、新憲法草案をまとめた実務上の中心だった舛添要一参院政審会長が就任した。この体制も波乱含みの人事だ。
 安倍首相と中川政調会長の間では、「新憲法草案見直しも含めて議論する、その場合論点は前文、九条、憲法裁判所だ」と合意しているという。
 中山会長は初会合で「衆参両院の三分の二の合意が必要であり、自民党だけでは新しい国づくりは不可能だ。三年後を考えて計画を立てるべきだ」と強調した。公明、民主への配慮と協調なくして、自民党参院選公約がいう三年後の改憲発議は出来ないと、中山はターゲットを三年後に置いて、そこから逆算して戦略を立てようとしている。これは要注意だ。
 中山らは今後は「全国各地で国民的規模で憲法集会を開催」したり、「一般から改憲案を公募する」などして、草の根からも改憲の機運を盛り上げようとしている。自民党憲法審査会は年内をメドに、草案作成時に設定した「天皇」や「安全保障」など一〇のテーマで議論し、論点整理するという。
 舛添もこの会合で「(草案は)」一日も早く改正をするため、公明、民主が賛成する案を前提に作った。新憲法草案は党の公式文書だ。自分の考えが一〇〇%入っていないからといって、すぐ二次案を作れという発言は厳に慎んでほしい」などと発言した。
 これに対し新憲法草案見直し派からの批判も続出したようだ。
 いずれにしても、来る参院選の結果が出れば、そこから自民党は改憲に向けての戦略を再確定し、改憲攻勢を本格的にかけてくることは間違いない。
 そういう時期が来た。私たちがここで歴史に対して何かを貢献できるかどうか、その存在意義が問われている。(T)


夏季カンパの訴え

     労働者社会主義同盟中央常任委員会



 安倍政権は、九条改憲・集団的自衛権行使に向けての反動的な動きを加速しています。しかし、年金、政治とカネ問題をはじめ各方面でその政策は破綻を見せはじめ、内閣支持率は急降下し、政党支持率でも自民党は大きく後退しています。これは、安倍政権の財界とアメリカの意向に沿い民衆の生活を無視した政策強行の当然の帰結とも言える事態です。
 小泉政権の五年間を引き継ぐ安倍政権のもとで、格差は拡大しつづけています。そうした状況にもかかわらず、それを米日独占資本の利益のために一段と推し進めるとともに、イラク開戦がデマ情報に基づいたものであり、ブッシュの盟友ブレアも退陣を余儀なくされ、米本国でも撤退の世論がいっそう強まっているにもかかわらず、イラク・アフガニスタンへの侵略戦争の加担・参戦の態勢を継続・強化しているのです。
 改憲、年金危機、格差問題などによってより多くの人びとが政治の場に巻き込まれています。安倍政権の悪政に対する憤激は広範な層に広がっています。
 敵の攻勢は強まってきていますが、その弱点も明らかになってきました。われわれの闘いは、反転攻勢の時期を迎えています。この情勢をしっかりとつかみ、安倍政権に対する広範な反対運動を形成していきましょう。
 ともに、改憲阻止、反戦闘争、労働運動を前進させ、社会主義勢力の再編・再生のために奮闘ましょう。
 運動のさらなる前進のために夏季カンパをお願いします。

二〇〇七年夏