人民新報 ・ 第1228号<統合321号(2007年7月2日)
  
                  目次


 支持率低下の安倍反動政権打倒へ  参院選で与野党逆転を !

● 「君が代」強制解雇裁判  東京地裁・佐村判決糾弾!

● 「労働ビッグバン」に断固反撃を!

● 6・20 東京総行動

● 自衛隊による違法な監視活動に抗議する 市民団体共同声明

● 団結した力で争議を勝利させた伝統  東京総行動35周年大交流会

● 清水私案(民族解放社会主義革命論)を再読する E

● せ ん り ゅ う

● 複眼単眼  /  中国の資本主義化政策と民衆の不満の暴発




支持率低下の安倍反動政権打倒へ

      
参院選で与野党逆転を !

党利党略の会期延長


 国家的振り込めサギ事件である年金問題をはじめとして、安倍内閣の姿勢にたいする批判が広がり内閣支持率の低下は止まらない。
今通常国会では、強行採決に次ぐ強行採決を続けてきたが、安部は、なお解体・民営化による社会保険庁問題逃げ切り・隠蔽法案、高級官僚天下り自由化の国家公務員法改悪案、労働法制改悪案、そしてまったくのザル法である政治資金規正法改定案を通過させられず国会会期の延長も強行した。これらの法案を成立させることによって支持率を回復し、また年金問題の怒りのほとぼりを冷ますという姑息な狙いで参院選の投票日も延長したのであった。まさになりふりかまわぬ党利党略の会期延長である。
安倍は「国民への約束を実行する。選挙で有利か不利か、そんなことは考えていない」と強弁しているが、与党内にも、選挙日程を一週間ずらしたくらいでは年金問題に対する国民の態度は変わらない、かえって選挙に不利になったと公然と言う自民党議員も多い。そして参院選で敗北すればそれは安部の責任問題だという声も大きくなってきている。
 野党も国会での安倍内閣の不信任案を提出するなど反撃の態勢をとっている。マスコミでも年金問題の報道が続けられているが、テレビに登場する自民党、公明党の議員は終始守りの対応を続けるしかなくなっている。これらの状況は、政府・与党を窮地に陥れているが、安部はこれから脱却するためにさまざまな手を打ってくるだろう。先にあげた法案の成立での「人気回復」をはじめとして、北朝鮮がらみの事件や野党のスキャンダルなどを次々にくりだしてくることは必至だ。

沖縄県議会決議


 だが、安部政治の破綻は次々に現れてきている。安倍内閣になってからの文部科学省は、教科書検定で沖縄戦の「集団自決」に日本軍の強制があった記述を削除・修正させた。アメリカの戦争計画の一翼を担い「戦争のできる国」づくりのためには、軍と民衆との関係をどうするのか、とりわけ軍の権威を高めることが必要だ。日本政府にとって、唯一の地上戦が戦われた沖縄戦での住民虐殺の事実はなんとしても消去してしまわなければならない過去としてあったからだ。だが、文科省による無法な歴史の改ざんは多方面から批判されている。沖縄では、六月二十二日、県議会は教科書検定意見の撤回を求める意見書を全会一致で可決した。自民党議員も賛成しての決議であった。また県内四十一市町村のうち三十六市町村で撤回を求める意見書が可決されているのだ。
 またアメリカ下院外交委では「日本軍の慰安婦強制動員に対する日本総理の公式謝罪を要求する決議案」が採択された。外交委次元だけでなく本会議でも採択されるような動きである。ペルロシ下院議長(民主・カリフォルニア)も慰安婦決議案を支持しており本会議でも採択の可能性は高い。

参院選で安倍に打撃を

 昨年九月に発足以来、教育基本法の改悪、防衛庁の省昇格、アメリカのイラク・アフガニスタン侵略戦争への加担、米軍再編、改憲手続法強行などが文字通り「暴走する安倍内閣」の軌跡であった。だが、安倍総裁誕生に貢献した論功行賞閣僚人事が次々にスキャンダルが暴露され、ついには松岡利勝農水相の汚職疑惑逃れの自殺までおきた。そして年金問題の爆発である。小泉・安倍政治は大きな国民的な不満を作り出したのである。
 さまざまな世論調査は、安倍の支持率の連続的な低下を示している。自民党の支持率も下がっている。しかし、民主党の支持率も伸びているわけではない。自民党にかわるべき政治勢力が不在という状況である。
 来る参院選では、自・公与党勢力を過半数割れに追い込まなければならない。そして、安部政権に大きな打撃を与え打倒しなければならない。民主党も小沢一郎党首を中心に参院選を好機と見て安倍との対決姿勢をアピールしながら勝利を狙っている。しかし、統一地方選、参院補選の結果でもわかるように与党に対して優位に立っているわけではない。年金問題を追い風にして支持票を集めることができるのかが問われているのだ。
安部は参院選の第一のテーマに憲法を押し出してきている。民主党には自民党と同様な改憲派を多く抱え、憲法問題では民主党の議席はすべて反改憲派に数えることはできない。
 窮地に陥った安倍与党を追いつめ改憲阻止の結果をもたらすためには、はっきりした反改憲派がひとつでも多い議席を獲得することが必要だ。それが民主党の憲法問題をはじめ多くの政策での動揺を制動することにもなるであろう。
 安倍政治、自・公与党を拒否し、社・共など護憲派候補へ投票を集中させよう。


「君が代」強制解雇裁判  東京地裁・佐村判決糾弾!

 六月二〇日、東京地裁民事第一一部(佐村浩之裁判長)は、東京都教育委員会による「君が代」強制解雇裁判で「原告らの請求は棄却する」という 極めて不当な判決をだした。
 二〇〇四年と〇五年、東京の都立高校で定年になった教員一〇名が、日の丸・君が代強制に屈服しなかったということを口実に再雇用を拒否された。これらの教員はすでに嘱託教員や講師としての再雇用も決まり、新学期の時間割も決まっていたにもかかわらず、合格を取り消されたのである。これに対し、一〇名は、都を相手取り、再雇用職員としての地位確認などを求める訴訟を起こした。

 判決で、佐村裁判長は「式典で起立、斉唱することは儀礼的な行為で、思想・良心の自由を侵害するものではない」とした。そして、命令に反した原告を再雇用しなかったのは、都教委の裁量の範囲内で適法、合憲であると判断したのだ。

 石原慎太郎の反動都政の最重要の一環として都教育委員会による教育改悪がある。都教委は二〇〇三年一〇月二三日、入学・卒業などの式典で日の丸の掲揚と君が代斉唱を教職員に義務づけ、校長の職務命令に従わない場合は、処分するという通達(10・23通達)を出した。この通達について、約四〇〇人の教職員が原告となった「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟別で東京地裁民事第36部(難波孝一裁判長)が昨年九月二十一日、違憲判断を示している。
 今回の佐村判決は、都の通達に基づく職務命令を合憲とした初の司法判断であり、その意味は大きい。

 判決文は「式典で起立、斉唱することは儀礼的な行為で、思想・良心の自由を侵害するものではない」としている。「日の丸」とか「君が代」は、思想・信条にかかわりない儀礼なものであり、そして、「日の丸」「君が代」にたいしての儀礼は国民の義務だとしたことである。これは、戦前・戦中の論理そのものの復活にほかならない。
 「国旗」「国歌」への起立・斉唱などの「儀礼」は、愛国心を涵養し国家への忠誠をうながすためのもの以外ではない。つまり、自民党政権が推し進めようとしているアメリカの世界戦略の中で戦争をする国に忠節をつくす国民づくりそのものであり、学校現場において特定の思想・信条を注入するために、強制されているものなのである。
 許しがたいきわめて反動的な判決に対して、断固として、糾弾・反対の運動を強めていこう。


「労働ビッグバン」に断固反撃を!

 政府・財界は、新自由主義的な規制緩和による搾取強化構造を作り出すために、これまでの労働法制を抜本的に改悪させ、いわゆる「労働ビッグバン」を強行しようとしている。
 労働時間法制を全面的に崩壊させる「日本版エグゼンプション」は、「残業代ゼロ法案」「過労死促進法案」だとの批判が噴出して、与党は姑息にも参院選を睨んで一時的に棚上げしたが、参院選後にはその他の労働法制改悪とともに再度国会上程されることは必至だ。
 しかし、エグゼンプション法案の取り扱いに見られるように、労組側の反撃も着実に拡大し、マスコミも労働問題を多く取り上げるようになっている。政府・与党の狙い通りには一方的に事態は進んではいない。労働問題は政治の一つの焦点になった。政府・財界の狙う「労働ビッグバン」に反対し闘おう。

六月十三日、東京しごとセンターで、徹底検証シンポジウム「本気(マジ)かよ?『労働ビッグバン』!―格差社会は何をもたらす?―」が開かれた。

 法政大学法学部教授・浜村彰さんが「労働ビッグバンとは何か?何をもたらすのか?」と題して講演。
 政府の経済財政諮問会議はいくつかの報告書をだしているが、もっとも重要なのは、この五月に出た規制改革会議・再チヤレンジワーキンググループ・労働タスクフォースの「脱格差と活力をもたらす労働市場へ〜労働法制の抜本的見直しを〜」だ。これが労働ビッグバンの基本的な方向を提案している。その基本的考え方は「当事者意思の最大限尊重に基づく自由で開かれた労働市場の再構築」とするもので、@「規制撤廃」による「丸裸の労働者」の対等で自由な交渉の促進、A労働組合・労働者代表不要論、B政策立法の優位と判例の軽視、C労働政策審議会(公労使三者協議)の否定と政策決定のフリーハンド化、というものになっている。次に、解雇権濫用法理の見直しでは、@当事者の合意による解雇制限法理の排除、A解雇の金銭解決制度の試行的導入が主張されている。労働者派違法の制限の完全撤廃では、@派遣受入期間制限・雇用申入れ義務・派遣禁止対象業務の完全撤廃、A請負と労働者派遣の区分基準の緩和ということだ。そして労働契約の期間制限の撤廃や同一労働・同一賃金原則の否定が提起されている。
 「労働ビックバン」、労働市場の市場原理主義化一社会的規制原理の限りない後退を持たらすものだ。こうした状況の中で、労働者は自己責任を負わされ孤立していく、そして資本にとって「成果」の上がらない労働者は切捨てられていく。いま、雇用保障はとどめなく劣化しつつあり、労働者の身分格差が放置され拡大している。「労働ビッグバン」が実現しようとしている社会とは、「市場の暴力」にさらされる労働者と企業による労働者支配の完成であり、その中で労働者は、ごく一握りの「勝ち組」と完全支配される圧倒的な「負け組」に分解されていく。まさに社会の崩壊ともいえる状況なのである。

 つづいて、「現場からの報告〜規制緩和の最前線から〜」では、先行する「ホワイトカラー・エグゼンプション」(元てんや店長の高橋昌彦さん《東京管理職ユニオン》)、「『パート労働法改正』って誰のため、何のため?」(中原純子さん《全国一般東京労働組合》)、「ヤバいぜ!労働の切売り、バラ売り『スポット派遣』」(菅本省吾さん(グッドウィルユニオン)、「ここまでやるか?『偽装請負』」(三木陵一さん《全日本金属情報機器労働組合(JMIU)書記長》)、(宮本−さん《全建総連労働対策部長》)、「日本の恥部・暗部―外国人労働者問題」(中島浩さん《全統一労働組合外国人分会スタッフ》、ウスザット・アリさん《全統一労働組合外国人分会》、「労働行政の民営化―労基署・ハローワーク民営化で何が変わる?」(森崎巌さん《全労働省労働組合書記長》)が報告を行なった。
 棗一郎弁護士(日本労働弁護団事務局次長)がまとめの発言。労働ビッグバンがもたらそうとしているのは労働組合はいらないという社会だ。しかし、この間、いずれのナショナルセンターも反対運動を強め、多くの労働者も事態を見つめ始めている。労働ビッグバンを許さない運動を強めていく必要がある。


6・20 東京総行動

 六月二〇日、けんり総行動実行委員会の主催による東京総行動が闘われた。みずほ銀行本店(不当労働行為 全統一光輪モータース分会)からスタートし、昭和シェル石油(賃金差別・不当配転・転籍 全石油昭和シェル労組)、フジテレビ(解雇 反リストラ産経労)、朝日新聞本社(三名解雇 全国一般東京南部ヘラルド朝日労組)、NTT大手町(木下解雇 東京労組NTT関連合同分会)、厚生労働省(労働法制改悪)、国土交通省(国鉄一〇四七名解雇 国労闘争団全国連絡会・鉄建公団訴訟原告団・鉄道運輸機構訴訟原告団)、教育情報研究所(解雇 丹羽良子さん支援共闘会議)、東京都庁(解雇 全国一般東京労組文京七中分会、解雇 東京都学校ユニオン、損害賠償 田畑先生の再雇用拒否の真相を究明する会、学園再建 全国一般千代田学園労組)、有楽町総合法律事務所(学園再建 全国一般千代田学園労組)、住友重機(昇格差別 全造船追浜・浦賀分会)、トヨタ本社(解雇・団交拒否 フィリピントヨタ労祖を支援する会・全造船機械労働組合関東地協)のコースで社前抗議・申し入れ行動が展開された。
 トヨタ本社前では、「働く者の国際的団結でフィリピントヨタ二百三十三名の解雇撤回と団体交渉の開始を!」をスローガンに抗議・申し入れが行われた。
 トヨタは一月から三月の自動車販売台数がGMを超えて世界一となり、利益も二兆円を超える巨大な儲けを記録した。これは過労死の強制、下請企業へのコストダウン、自主的な労働組合の破壊などによって実現したものである。二〇〇一年三月、フィリピンにおける現地法人トヨタの労組の組合員二百二十七名が解雇された。御用組合に抗して、この労組は会社に対して交渉権を持つ労組としての選挙で勝利した。しかし、会社側は団体交渉を拒否している。いま、フィリピンでは、トヨタなどの多国籍企業によって正当な労働組合が抑圧され、大量の労働者が解雇され、労働者とその家族は貧困と不安定な生活に苦しめられている。アロヨ政権発足(二〇〇一年一月)以来八〇〇名を大きく超える労働組合や農民運動の指導者、人権活動家、議員、司祭、ジャーナリストが暗殺されている。フィリピントヨタ労組は全日本造船機械労働組合関東地協に加盟して闘っている。
トヨタ本社前には、自動車排ガスが原因でぜんそくなど慢性呼吸器疾患患者となった東京大気汚染公害訴訟原告団も泊り込みの座り込みを続けており、その代表からもともにトヨタに対して闘う発言を受けた。


自衛隊による違法な監視活動に抗議する 市民団体共同声明

 アフガニスタン・イラクへの海外派兵、防衛庁の省昇格、沖縄・辺野古沖への自衛艦の出動、そして自衛隊による市民運動、労働組合などに対する監視・情報収集活動など、小泉・安倍反動政権の下での自衛隊の違法な突出振りが目立っている。陸上自衛隊情報保全隊による監視・情報収集活動は、軍事暴力装置機構が直接、民衆の動向に関与・敵対し、弾圧の対象とするものであり、断じて許すことはできない。市民運動、労働組合をはじめ多くの人びとが協力して、自衛隊の危険な動きに対して断固とした反撃が継続して行なわれなければならない。日本消費者連盟、ふぇみん婦人民主クラブ、反住基ネット連絡会、許すな!憲法改悪・市民連絡会、ピープルズ・プラン研究所、盗聴法(組織的犯罪対策法)に反対する市民連絡会、「戦争と女性への暴力」日本ネットワーク(VAWW―NETジャパン)、ユーゴネット、憲法を生かす会が中心となって、「自衛隊による違法な監視活動に抗議する市民団体共同声明」が呼びかけられ、全国から続々と賛同の意思が表明されている。(編集部)
 
自衛隊による違法な監視活動に抗議する市民団体共同声明

 二〇〇七年六月七日、陸上自衛隊情報保全隊が、自衛隊イラク派遣問題などに取り組む広範な団体・個人の活動を監視し、その詳細な報告書を作成していたことが、報道等で明らかになりました。また、その後の報道では、防衛省事務次官もこうした監視活動を知っていたことを認め、これが一部隊員の「行き過ぎた行為」などではなく、防衛省・自衛隊を通じて組織的に行われていたことも明らかになっています。
 今回の市民活動に対する監視活動が、憲法第一九条で保障された思想・良心の自由及び第二一条で保障された表現の自由、第一三条で保障されたプライバシー権を侵害していることは疑う余地もありません。
 当然、自衛隊法にも防衛省設置法にも、監視活動の根拠となるような条項はまったく見あたりません。法令の定めによらない個人情報の収集は、行政機関個人情報保護法にも違反します。
 このような幾多の法律に違反する行為が政府機関、それも武装集団である自衛隊によってなされたことの意味を、けっして過小評価してはなりません。このことを見逃すのであれば、日本はもう法治国家とは呼べません。最近、政府における教育改革の議論などで「国民の規範意識の低下」がさかんに言われていますが、いま問われるべきはむしろ「政府機関の遵法意識」ではないでしょうか。
 また、こうした自衛隊の違法な監視活動は、今回がはじめてではありません。二〇〇二年五月には、当時の防衛庁が情報開示請求者の身元を違法に調査し、リストを作成していたことが明らかになっています。さらに、政府による違法な監視活動という意味では、二〇〇〇年一月にも、公安調査庁が一〇〇を超える広範な市民団体の活動を監視していたことが内部文書により明らかになっています。つまり、わずか七年の間に、政府による違法かつ大規模な市民活動への監視が三度も露呈したわけです。
 私たちは、最大限の怒りを表明します。もう我慢なりません。
 今回の防衛省・自衛隊による市民活動に対する監視と情報収集に強く抗議するとともに、一切の事実関係の調査・公表と、しかるべき現場責任者に対する厳正な処分、そして担当閣僚である久間章生防衛大臣と自衛隊最高司令官である安倍晋三内閣総理大臣の辞任を要求します。


日本の核武装阻止!  核開発に反対する会が発足

 六月二十四日、文京区民センターで「核開発に反対する会結成大会」が開かれた。

反対する会の活動

 はじめに柳田真さんが、「核開発に反対する会」の発足について報告した。
 この会は、日本核武装の諸々の動きを憂慮し、これまで約一〇月の準備活動を経て今日結成ということになった。二〇〇六年一〇月九日の朝鮮民主主義人民共和国の核実験宣言を好機として、中川昭一自民党政調会長や麻茫大郎外相、中曽根康弘元首相などから一斉に日本核武装論議が提起された。この日本核武装論は日本保守勢力内に深く大きい人脈と勢力を持っていて、その時々の政治情勢の機会をとらえて、間欠泉的に吹き出してくる、実に根が深く、日本の将来に関わる重大な問題である。
 一方、これに対抗する民衆の側の理論武装と運動は残念ながら全く乏しい。この問題のもつ重要性に鑑み、討論の場と反対運動ののろしを揚げたい、灯をともしたい、民衆の側の確たる理論と資料集を作る第一歩としたい、そんな思いで、この会の準備的な活動が行われてきた。本会の目的は、@軍事はもちろん、一切の原子力に反対する、Aとくに日本の核武装に反対する、ということである。今後の活動方針は、@講演・討論会、A日本核武装問題・原発問題の講師紹介・派遺、B会ニュース(月刊)の発行、C資料の発行、D他団体とも協力・連携し、時宜に会ったツアーの実施、E本の出版(十一月末に『隠して核武装する日本』(影書房)などで、そのために、運営委員会の充実、関連する団体との協力・提携、財政の充実を図っていきたい。
 講演は、会代表の槌田敦さんがおこなった。

核武装を準備している日本(槌田敦さん)

 日本政府は、憲法と核兵器との関係について、次のような見解を述べていた。一九七八年三月、参議院予算委員会において、真田英夫内閣法制局長官は、自衛のための必要最小限度を超えない範囲内にとどまる限り、核兵器、通常兵器を問わず保有を禁ずるものではない、と答えた。そして、非核三原則という政策により核兵器を保有しない、と付け加えた。しかし、この見解は二〇年後に次のように修正された。九八年六月十七日、参議院予算委員会において、大森政輔内閣法制局長官は、憲法解釈上、わが国を防衛するために必要最小限にとどまるならば、核兵器の使用も可能であるということに論理的にはなる、と述べた。大問題の発言だったが、この政府見解に対して、共産党も旧社会党も正面から対応せず。共産党の影響下にある原水協も、旧社会党の影響下にあった原水禁も、日本の核の保有や使用について反対運動をしなかった。
 たしかに日本は核武装しないと宣言している。だが、非核三原則は単なる内閣の政策であり、内外情勢の変化によっていつでも変更可能である。したがって、政策を変更した場合、いつでも核武装できるように核兵器所有の準備がなされてきたのである。はじめ、日本政府は外国の原子炉で軍用プルトニウムを作ることを狙っていたが、これはアメリカの妨害でだめになり、日本の技術で自作することにした。そして作られたのが高速炉「常陽」(茨城県大洗)である。これは炉心に原子炉用プルトニウムを用いて高速中性子を発生させ、これにより炉心の外側のブランケット(天然ウラン)で軍用プルトニウムを生産する原子炉である。当然、アメリカはこの原子炉の建設に反対した。しかし、日本独自の原子力研究を認める外なく、性能試験中はブランケットをつけることを認め、性能試験が過ぎたらブランケットを外すことで両者は妥協し、七八年に「常陽」の運転が開始された。この性能試験期間中に生産された軍用プルトニウムは約十九キログラムであった。このようにアメリカは日本の核開発を妨害してきたが、八〇年代になって方針を変更した。高速炉「もんじゅ」の製造と、「常陽」と「もんじゅ」のブランケットから軍用プルトニウムを抽出する特殊再処理工場(RETF)の建設を認めることにしたのである。その理由は、中国の核が強大になり、その核弾頭の小型化と多弾頭化が進んだからである。日本が中国に核攻撃された場合、アメリカが「核の傘」で日本を守ると、米中の直接戦争となり、アメリカが核攻撃される心配がある。そこで、日本を限定的に核武装させて自衛させれば、アメリカは「核の傘」を外すことができると考えたからである。「もんじゅ」が正常に運転できれば、年間六十二キログラムの軍用プルトニウムが生産できて、毎年三〇発程度の原爆を日本が作れるようになる。こうして一〇年もすれば、日本の核兵器製造能力は中国と同じ程度になるはずだった。しかし、もんじゅは九五年十二月、ナトリウム漏れ事故を起こして、運転中止に追い込まれ、東海再処理工場の付属施設として設計されたRETFは、東海再処理工場が九七年に火災事故を起こしたため、建設を中断することになった。それ以来十二年、日本の軍用プルトニウム製造計画は止まったままである。
 しかし、日本はすでに原爆材料を所有している。通常の原爆では、同位体比率(濃縮率と同じ)が九四%以上の軍用プルトニウムを使用するが、「常陽」と「もんじゅ」の生産したプルトニウムは、濃縮率が一〇〇%に近い超軍用プルトニウムである。それを合計するとすでに約三十六キログラムも生産していたのである。これは超原爆十五発分以上に相当する量だ。ここに来て、「もんじゅ」の修理が終わり二〇〇八年にも運転再開することになり、合わせてRETFも完成して運転を開始し、超軍用プルトニウムを抽出することになる。だが、これらの事実は、内外を問わず一切報道されていない。国や旧動燃は、聞かれればこれらの事実を答えていたのに、マスコミだけでなく、原水禁や原水協などの運動体もこの重要な事実を知りながら「自主規制」して発表しなかった。
 日本の核武装はその姿をすこしづつわ現しはじめた。かつてアメリカは日本の核開発に妨害を加えていたが最近は違う。「もんじゅ」、RETFの建設を認めたほか、アメリカは軍用プルトニウムを再処理するための小型遠心抽出器を動燃に売ったのである。
 それは、アメリカのための日本の核開発ということだ。アメリカにとって中国の核が脅威となり、インド、パキスタンも核保有国となった。そこでアメリカは「核の傘」を外し、日本に核武装させ、自衛させることにしたのである。安部のブレーンである中西輝政は『日本核武装の論点』という本で「米国に対して、『日本は信頼できる同盟国』であり、『未来永劫、日本は米国と一緒に行動する』と深く理解させる必要がある。『日本がアメリカの敵になることはない』と確信させることができれば、アメリカは日本への核配備のみならず、日本独自の核開発を必ず容認するはずである」と書き、そして、日本の核武装はアメリカの国益に役立つと主張したのであった。アメリカの容認が得られれば、日本核武装は国連安保理事会で非難決議を受けることなしに現実可能である。だが、日本が核開発を宣言すれば、最近動きを止めてきた中国も核開発を再開することになり、韓国も核開発するであろう。インドやパキスタンを含め、全アジアの核情勢は混沌化する。この状況は、米ソ冷戦のアジア版であって、日中両国は経済的に破錠することになる。だが、軍用プルトニウムで核弾頭を多数個作ったとしても、日本は中国に対抗できない。それは日本には水爆の原料であるトリチウムがないからである。そこで、「国際熱核融合実験炉(ITER)」の誘致に全力をあげたが失敗し、また日本にはトリチウムを作るためのリチウム金属資源も存在しないからだ。ではどうするのか、日本は軍用プルトニウムによる核弾頭製造の実績を背景にして、アメリカから水爆や中性子爆弾を購入することになるだろう。こうして、アメリカは、アジアの核による安定を日本にまかせて、完全に引き上げることができるのである。このようにすれば、アメリカは中国からの核攻撃を心配しなくてもよい。
 ところが、もしも、日本が中国と同盟して、アメリカと対抗することになったら、アメリカにとってとんでもないことになる。だから日本を監視し、アメリカにはむかわせない保障が必要となる。それが、米軍再編であり、ワシントン州にある第一軍団司令部を日本の首都圏の座間に移転して統合作戦司令部とし、しかも自衛隊司令部もこの座間に呼び寄せることにした。その上、横須賀には原子力空母を配備して首都を威圧する。これは、属国日本の裏切りを監視し、アメリカの支配から抜け出さないようにこれを防止するためなのである。
 日本の核武装が始まれば、日本と中国の間には、核軍拡競争が始まり、両国の経済は共に破綻することになる。そして突発事件でアジア核戦争が始まるかも知れない。日本が核を持ったばかりに、不幸な時代を迎えることになるのであり、日本の核開発に歯止めをかけていかなければならない。

 講演に続くリレートークでは、唐木田健一さん(理論基礎論研究者)、笹本征男さん(現代史研究者)、菅井益郎さん(たんぽぽ舎アドバイザー)、福士敬子さん(東京都議会議員)、藤田祐幸さん(元慶応大学)、山崎久隆さん(劣化ウラン研究会)、吉田義久さん(元相模女子大学)から発言があり、また、さまざまな取り組みのアピールが行われた。
 集会に続いて、結成を記念するパーティーが開かれた。


団結した力で争議を勝利させた伝統

      
東京総行動35周年大交流会

 六月二〇日、朝からの総行動を終わって、SKプラザで「東京総行動35周年大交流会」が開かれた。
 東京総行動は一九七二年六月二十日に開始された。日比谷公園に二〇〇〇名が結集した。この行動は、総評、東京地評、東京春闘共闘が実行委員会を作って主催し、各単産、争議組合が一体となって反合理化闘争全国代表者会議で意思統一を行い、三井物産、住友銀行、富士銀行などに大衆的抗議行動を展開した。総行動の形態は労働者大衆のエネルギーを全開させ、個別資本を労働者の連帯の輪で包囲し、統一行動で数々の要求を実現してきた。

 交流会では、はじめに主催者を代表して押田五郎・けんり総行動実行委代表があいさつ。三十五年前の今日、東京総行動が開始された。以来、一つひとつの争議を多くの労働者の参加によって勝利解決してきた。けんり総行動は、その伝統を引き継いで、国鉄闘争を始めおおくの争議を共同の力で闘いぬいている。いま、労働者にとって厳しい現実があり、解雇も多発しているが、今日を新たな出発点としてこれからも断固とした闘争を前進させていこう。
 一九七四年春闘における東京総行動のビデオが上映され、七〇〜八〇年代東京争議団の議長を務めた渡辺清次郎さんの音頭で乾杯。
 全造船鶴見、沖電気争議団、パラマウント、東芝アンペックス、全造船石川島播磨などの大争議を闘い抜いた諸先輩たちから力強いあいさつがあり、労働者の闘いと勝利の基礎には団結があることが強調された。
 現在闘われている国労闘争団などの争議団の決表明があり、勝利を勝ち取った郵政4・28からは多くの労働者とともに闘い続けることが勝利につながるとあいさつ。最後に、団結がんばろうで東京総行動のいっそうの前進・拡大を確認しあった。


清水私案(民族解放社会主義革命論)を再読する E

平和革命を基調とする

 清水私案は権力規定で、アメリカ帝国主義と日本資本主義の関係について左社綱領原案に反対するとともに、革命方式においても違いを強調している。「平和革命を基調とする組織的革命方式」の提唱がそれである。
 「…社会主義革命には万国に共通の型もなく、あらゆる客観条件に適応する定式もない。その国、その時代の社会的条件にしたがって異なる形態をとる。 われわれは、現在の戦略段階を民族独立闘争の時期と見、それは客観的条件、主体的条件いずれから規定しても社会主義革命に直結しうる性質のものであると断定した。
 同時に又、わが国をめぐる国際環境とアメリカの圧倒的な武力を想定するとき、朝鮮やインドシナのような二重政権による民衆の苦しみを回避しようとする限り平和的手段以外に効果的な方式はありえないと結論してきた。
 それならば、平和方式を単純なる議会方式と規定すべきかというに、もちろんそうではない。単なる人気による多数では、社会党政権はできても、それは民族政権にも社会主義政権にもなりえない。
 内外相呼応するわが党政権打倒の工作を防ぎとめ、進歩的政策の遂行をサボタージュする反動分子(官僚内部、銀行会社、農漁村内部の)を抑圧しうるだけの組織基盤を、前項に述べた諸闘争を通じ、権力基礎として用意しなければ革命政権たりえない。けだし、わが国の場合、民主的憲法があり、立憲法治国の外形が一応ととのっているにしても民主主義は下部に浸連しておらず、反革命の要因は至るところに伏在しているからである。
 しかしながら、それにもかかわらず、わが党は、国会における絶対多数を必要不可欠と確信する。それはわれわれが民主主義者だからというにとどまらない。憲法に保障される直接無記名の普通選挙が励行される限り、その手続きによる政権がもっとも国際的に権威をもつからである。民主主義の法則にかなう方式が、もっとも国民的確信をもたせるからである。
 それゆえ、現状におけるわが党の革命方式を規定するならば、『平和革命を基調とする組織的革命方式』と名付けるのが至当である。…」

 平和革命方式だが単なる議会主義ではない。実力を背景にもったものである。それは、別のところで展開されている当時の日本共産党の路線に対する批判でもあった。
 「…国会の多数ということは、単に国内的な民主的手続きにとどまらず、諸外国に対するわれわれの国際的権威を此上なく高からしめ、外国からの干渉ないし反革命への援助を防ぐため、国際的与論を味方とすることさえ可能ならしめる。
 又、武力行使による独立運動は、帝国主義支配国の武力弾圧を挑発し、かりに若干成功しても二つの日本に追いこむのが関の山である。共産党の山村工作隊を拡大してゆくような辺境政府のまねごとは、わが国の場合、大衆の支持を失い、逆に傀儡的ファシズムを招くばかりである。…」

革命権力基盤の培養

 では、どうすれば、それが可能となるのかといえば、革命以前にしっかりした権力基盤が培養・形成されていることである。

 清水は、「われわれの党活動が、社会主義革命に直結する民族独立を戦略の基調とする以上、われわれの樹立すべき政治権力は、労働者、農民、中小企業主、インテリ層等の諸階層からなる国民的基礎に立ち、好意的資本家をも加えた民族政権となるべき筈である」とした上で、「…帝国主義支配下に隷属する国の社会主義者の闘争は民族闘争を基調とするが、日本の現状に即してこれを見るとき、その民族闘争の性格がどのようなものになるか、又、ならざるをえないかを見てとることはきわめて重要な実践的意義をもつ」としている。
 「民族闘争と社会革命の結合」が必要だとして、平和四原則の戦略的意義が強調され、「民族的なカンパニアは大体三つの戦略幹線を通じて一つの運動に成長する」(「第一の幹線は、平和運動を通ずる完全独立の要求。第二の幹線は、国際平和のための努力と独立外交の要求と実践、第三の幹線は、内外独占資本の搾取構造への挑戦(民主主義の防衛と統一的生活要求)である。」)。

前衛・中衛・後衛

 だが、私案の段階では、「組織的革命方式」についての展開はいまだ不十分なままであるが、この問題を正面から取り上げて論じたのが、『日本の社会民主主義』(岩波新書)の「Y 移行過程の組織論と将来社会の断想 ― 社会党勢力の綱領的課題 その二」であった。
 そこでは、六〇年安保闘争のもりあがりの経験を踏まえて、「平和と独立、民主主義と生活向上」「権力構造の民主的創造」「経済の改造と国有化」「中立路線の世界史的意義」という項目で清水の革命方式論がよりくわしく展開されている。
 そのうちの、「権力構造の民主的創造」の「現代革命推進に必要な三つの組織的要素」という箇所で、「…社会主義政治権力の樹立(革命)は、…最終的には数十万の活動力にみちた大衆的前衛と、そのまわりに結集する数百万大衆の行動的参加と、さらにそのまわりをつつむ数千万の理解者・同調者・ムード的共鳴者の意思表示(選拳における投票に具体化される)によって最終的に決定される。高度に発達した資本主義国の現代革命は、この三つの組織的大衆的条件のいずれを欠いても決定的な成功は困難である。」
 これが、有名な前衛・中衛・後衛論だ。
 「前衛」は、「数十万の活動力にみちた大衆的前衛」(党・組織)であり、中衛は「(前衛)のまわりに結集する数百万大衆の行動的参加」(無党派活動家層)であり、後衛は「さらにそのまわりをつつむ数千万の理解者・同調者・ムード的共鳴者の意思表示(選拳における投票に具体化される)」ということで、清水の革命権力基盤論では、この中衛の問題が重要だとされる。
 前衛と後衛だけでは不十分で、「国会の多数はここでいう数千万大衆の投票行為によって実現するが、通常国会の多数だけでは不安定だというのは、この数千万の心情は『前政権』に対する不満に発する『時計の振子作用』(G・D・H・コール)の反映に過ぎないと言われているからである。従って、この数千万の票を双方にゆれ動く振子作用の結果てはなく、せめて理解者・同調者という程度の安定票にまでは切りかえなければならないのである。この切りかえには政権を掌握し、社会経済構造を社会主義の方向につくりかえた後は、新しい体制そのものの経済的社会的効果と共にマスコミその他近代的視聴覚を通じた各種の手段の相当部分が縦横に駆使できるが、革命権力の確立前後は、しかく簡単ではない」。そうするためには、数十万の前衛と数千万の投票者のあいだに「数百万」単位の生き生きとした活動家層の存在が不可欠だというのである。(文中敬称略)(つづく) (MD)


せ ん り ゅ う


 六本木ヒルズ出すぎた杭に見え

 天下りバンクって談合貯蓄箱さ

 年金問題おやこれが自己責任問題

 長寿世界一九条も世界一

 九条2項なのにクラスター爆弾抱いている

 階級闘争です「九条変えるな」

             ゝ 史

二〇〇七年六月

 ○ コムスンで儲けていたグッドウィル・グループの折口雅博会長の弁「出る杭は打たれる。出すぎた杭は打たれない」だってさ。億万長者はやりほーだい!
 死語みたいな言葉だが「階級闘争」の焦点として「九条」を理解している。労働問題がプラグマチックに抑えられてしまった中で九条改廃をもって逆階級闘争(弾圧)を仕掛けてきたのが資本家たちである。これに負けたら日本のみならず将来が恐ろしいことになりそうです。国を護る自衛隊じゃ無能だから資本を護衛する軍隊が欲しいのですかい。


複眼単眼

  中国の資本主義化政策と民衆の不満の暴発


 このところ、中国では民衆の大規模な暴動が相次いでいる。民衆の蓄積した不満はわずかなきっかけで暴発するほど高まっているのだ。
 原因の大半は中国当局、共産党官僚の腐敗や暴力にたいする抗議と、庶民と金持ち・権力者との間の極度の生活格差からくる批判だ。
 少し古い統計だが、昨年、全国政治協商会議の任・常務委員が報告したところでは、二〇〇五年の暴動は八万七千件。うち、八万六千件は一五人以上で組織された抗議活動。二〇〇四年の抗議行動は七万四千件だったというから、一万三千件増と大きく増えている。
 任委員によると、抗議行動の件数は一九九三年から二〇〇三年にかけては毎年一七%の高率で増え、うち九九%は土地収用など「一般庶民の利益が侵害されたことで起きた」という。
 
 東京新聞に掲載された平岩北京特派員の過日の報道では、このところ、中国各地で千人規模以上の暴動や当局との衝突が相次いで発生している。
 以下は平岩記者の報告。
 香港の人権団体などによると、重慶市で今月三日、市の監視員が花を売っていた農民を取り締まる際、一人の頭を鉄製のスコップで殴打。「農民が死んだ」とうわさが広まり、数千人の市民と警官隊が衝突し十数人がけがをした。
 六日には河南省鄭州市でも同様の事件が発生。権力を振りかざした監視員が路上で物を売る弱い立場の農民を暴力的に取り締まり、群衆の怒りが暴動に発展する事例が多発している。
 当局の腐敗への反発も根強い。五月十七日には四川省広安市で学生ら千人が警官隊と衝突。殺人事件の容疑者が警察幹部の親せきで、逮捕を見送ったことへの抗議だった。情報が広がるのを恐れた当局は市内の電話回線を一時停止したという。
 インターネットなどを利用した抗議行動も目立つ。福建省アモイ市では今月一日と二日、化学工場の建設中止を求める市民が携帯メールなどでデモを呼びかけ、当局の規制をかいくぐり約千人が参加した。
 学生は幼い時期から激しい競争にさらされながら、大学卒業時に半数近くが就職できない現状への不満が強い。労働者は経済格差と失業に苦しみ、怒りが頂点に達している。
 民衆の生活や人権を重んじる建前の胡錦濤政権が掲げる「親民政治」路線が「民衆の権利意識を目覚めさせている」との指摘もある。
 中国当局は暴動が起きた地方の政府、警察の担当者を処分し一定の責任を認める姿勢を見せている。ただ、国内マスコミの報道はほとんどなく、あくまで暴動の拡大警戒に力点が置かれている。
 
 このほか、報道では、五月一〇日には四川省稲城県で山林伐採反対のチベット人が作業員と衝突した。
 六月一五日には綿竹市で失業者が警察を包囲した。一六日には天津市で立ち退きに反対する住民と当局が衝突した。
 中国は共産党の独裁体制の下で資本主義発展の道を急いでいる。この巨大な人口と国土を抱える隣国での国内矛盾の激化は、二一世紀のアジアの大きな不安定要因になりつつある。
 私たちはアメリカの対アジア・太平洋政策と、日本支配層の動向と共に、中国問題からから目が離せない。 (T)