人民新報 ・ 第1233号<統合326号(2007年9月17日)
  
                  目次


● 安倍内閣が自滅! 自民党政治を終わらせよう!

● 都教委「再発防止研修」へ抗議行動

● 9・11  武力で平和はつくれない! アフガンに平和を!イラクに平和を!

● 047名の解雇撤回を求め、秋の闘争に全力をあげよう

● フェアレイバー研究教育センターの研究会  韓国の産別労働運動の現状と課題について、イム・ヨンイルさんが講演

● インド洋での自衛隊の活動を暴露し、テロ特措法延長を阻止しよう

● 区別するということ  連合と闘争の両側面を総合した政策  毛沢東「政策について」

● 複眼単眼  /  共産党の五中総での方針転換のこと

● 発行回数の変更のお知らせ



安倍内閣が自滅! 自民党政治を終わらせよう!

自爆した安倍政権


 七月参議院議員選挙での歴史的惨敗を喫したにもかかわらず居座りの醜態をさらし、なおもアメリカと財界のための政治を強行していた安倍反動改憲内閣は高まる一方の批判の中で、九月十二日、ついに自らの命を絶った。
 九月一〇日に第一六八臨時国会がはじまったが、それは参院の与野党逆転という〇七体制のもとでの初めての本格的な国会となった。会期は、十一月一〇日までの六二日間だが、与党は大幅延長で、数々の悪法を成立させる狙いだった。国会開会直前に安倍はオーストラリアでのAPEC(アジア太平洋経済協力会議)に参加した中で、ブッシュ大統領との日米首脳会談を行い、その後の記者会見で、インド洋での海上自衛隊によるアフガニスタン占領諸国の海軍への支援=給油や情報活動などを規定しているテロ特措法について次のように述べていた。
 「(給油活動継続は)国際的な公約となった以上、私には大きな責任がある。野党の理解を得るため、職を賭して取り組んでいく」「補給活動を継続する法案を国会提出し、成立させなければならない。小沢一郎民主党代表との党首会談は、早い段階でお願いしたい」「民主党をはじめ野党の理解を得るため、職を賭して取り組んでいく。職責にしがみつくということはない」。
 アメリカの侵略戦争への全面支援というブッシュとの約束を全力を尽くして実行する、それが出来なければ、辞任してお詫びする、ということだ。これらの発言はブッシュへの決意表明以外のなにものでもない。安倍はこの発言で与党が一致してテロ特措法延長(またはテロ特新法)に取り組むことをよびかけたのだが、しかし逆に、安倍退陣近し、ないしは解散・総選挙間近の空気が広がってしまった。内閣改造で少しはあがった支持率も、依然としてやまない政治とカネの問題、切り札の舛添厚労相もボロを出し始め、また切り捨てられようとする小泉チルドレンの党内反乱など、安倍を取り巻く環境は悪化の一方である。安倍自身もまったく生気がなくなっていた。
 そして、ブッシュとの約束を果たせなくなり窮地にたった安倍は突如として辞任の声明を発したのである。自民党政治を終わらせるかつてない情勢が生まれた。だが、アメリカと財界の意向にそって、自民党と公明党は、巻き返しに躍起になってくる。安倍の後継総裁・総理となるのが誰かはわからないが、より悪辣な手段も辞さずに動いてくることは確実であり、十分に警戒しつつ、全国各地で、テロ特措法延長阻止をはじめ改憲反対、年金・社会保障、労働法制改悪反対などの大衆的な闘いを着実に前進させていこう。

政府・与党の狙うもの

 安倍の所信表明演説は安倍の政治的な遺言となった。その中で、安倍は「反省すべきは反省し」「深い反省」を繰り返したが、「基本路線は支持された」と居直り、ひきつづいて反動的な政策を推し進めようとしていたのである。たしかに演説では、政権発足以来掲げてきた「美しい国」づくりや集団的自衛権の行使容認といった持論を薄め、憲法改悪についてもその時期をあいまいにするなどの一方、参院選の敗因と指摘された地域間格差の是正や「政治とカネ」の問題を強調してはいる。しかし、安倍が小泉から引き継いだ弱肉強食・格差拡大の「構造改革」はかわらずであり、言葉が少なくなったとはいえ「戦後レジームからの脱却」や「美しい国」も掲げ続けたのであった。安部は、その「基本路線」をいささかも変更したわけではなかった。国民的な批判が強いからしばらく低姿勢で行き、準備し時機を見てその反動的な目標の早期実現をもくろんでいたのである。後継内閣は、表面的な修正程度でを内閣支持率のアップと総選挙対策とするであろうが、自民党の政策選択の余地は小さい。

テロ特措法の廃止へ

 安倍は辞任の理由に「(国際公約をはたすためには)私が辞することで局面の転換をしたほうがむしろよいと判断」したの述べたように、臨時国会の最大の争点は、依然としてテロ特措法延長問題である。これまで政府は、インド洋で海上自衛隊が一体何をなっているのかをひた隠しにしてきた。だが、ここにきてようやくその実態の一部が暴露され始めた。アフガニスタン戦争への補給だけでなく、大部分が米軍によるイラクをはじめ中東の戦争に使われているということだ。「テロリスト殲滅」を口実にアメリカは、この地域で不法不当な非人道的な虐殺行為を繰り広げているのである。それに手を貸す日本政府の責任は重大なのである。
 与党優位の参院では国政調査権を活用して、その実態を究明していかなければならない。
 世論調査では現在でも過半数がインド洋での自衛隊の活動に反対という結果が出ており、暴露が進めば自衛艦はすぐ帰れの声は圧倒的多数となるだろう。
 同時に、政治とカネ、年金、労働法制の問題での闘いを強めることである。遠藤農水相は辞任し、幾人かの閣僚が辞任候補として上がっていた。年金問題でも舛添厚労相のパフォーマンスは種切れ状態だったし、日本版エクゼンプション法案を「家族だんらん法案」にネーミングすれば簡単に成立させられるという程度の感覚では内閣の一枚看板もすでに色あせていた。いずれにしろ、敵の側は、新しい内閣の新しい陣容で臨んでくる。
 安倍の尊敬する祖父・岸信介は、六〇安保に反対し国会を十重二十重に取り囲んだ民衆の「キシヲタオセ!」の怒声のなかで打倒された。安倍にも同様の運命をたどらせることになった。
 この勢いにのって、自民党政治を完全に終わらせるために奮闘しよう。


都教委「再発防止研修」へ抗議行動

 教職員への日の丸・君が代強制と処分は、安倍の反動的な「教育改革」を石原都政が先行実施していることの象徴である。
 東京教育委員会は二〇〇三年一〇月二三日付で全都立学校の校長らに通達を発した。内容は、卒業式・入学式等において国歌斉唱時に教職員らが指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱すること等を徹底するよう命じて、「日の丸・君が代」の強制を推進させるということである。この通達以前には、国歌斉唱の際に起立するかしないか、歌うか歌わないかは各人の内心の自由に委ねられているという説明を式の前に行うなど、強制にわたらないような工夫が行われてきたのを、通達後は、内心の自由の説明を一切禁止し、式次第や教職員の座席表を事前に提出させ、校長から教職員に事前に職務命令を出させた上、式当日には複数の教育庁職員を派遣して教職員・生徒らの起立・不起立の状況を監視するなどし、全都一律に「日の丸・君が代」の強制を徹底してきたのである。都教委は、教職員を奴隷思想を注ぎ込み、「戦争のできる国づくり」のための教育を行わせようとしている。その武器が日の丸・君が代の強制であり、それに反対する者へは過酷な処分を行い、その上で、「再発防止研修」という名の「転向強要・いじめ」が行われる。受講者には、事前に「課題」提出を強要し、当日は、受講者(被処分者)一名を都教委側四名で取り囲み、威圧的・一方的に「反省・転向」を迫るものだ。
 都教委は、七月二十一日に「再発防止研修・基本研修」を行い、九月一〇日と十三日の午前・午後の四回に分けて卒・入学式での「君が代」斉唱時の不起立を理由に減給・停職の処分を受けた十七名の被処分者を対象に「再発防止研修・専門研修」を強行実施した。
 当日、研修会場の都研修センター前には被処分者への激励と都教委への抗議の集会が行われた。
 日の丸・君が代強制反対・石原都政を倒せ。


9・11

  
武力で平和はつくれない!  アフガンに平和を!イラクに平和を!

「反テロ」戦争の実態

 アメリカの戦争政策は破綻している。すでに、イラクやアフガニスタンでの「反テロ」戦争での勝利の展望はまったく失われた。9・11では約三〇〇〇人の犠牲者が出て、それをアルカイダなど「テロリスト」の仕業だと断定したブッシュ政権は、「反テロ戦争」を発動した。この間の戦争での米兵の死亡者数は、少なくとも四一九九人に上るとされる。
そのうちイラクでは三七七二人、アフガンでは四二七人となっている。
 イラクでは、多くの人が米軍増派は失敗だったとしている。英BBC放送や米ABCテレビなどの合同世論調査によると、イラク国民のうち、過去六カ月間に米軍が増派された地域で治安が悪化したと感じている人が七〇%、イラク全土についても、六八%が治安は「悪化している」と答えている。また、一年後に国内情勢が「良くなる」との回答は、二〇〇五年調査では六九%あったがそれが二二%へと大きく低下している。
 アメリカ本国でも派兵終結への動きが強まっている。九月一一日に、イラク駐留米軍司令官のデビッド・ペトレアス大将は米議会上院外交委員会でイラク情勢に関して増派でイラク情勢は安定化しているとする証言を行ったが、民主党上院議員から激しい批判を受けた。一三日には、ブッシュがイラク政策に関する国民向けの演説を行うが、それはペトレイアス司令官の判断を容認し、三万人の兵力を削減するというものだ。この削減で、現在一六万八〇〇〇人にまで膨らんだイラク駐留の米軍兵力は、増派以前の一三万人規模に戻ることになる。削減の具体的な計画や、実現に向けた政治、軍事的な条件については、大統領演説や報告書の公表まで不明のままだ。
 ブッシュの兵力削減計画は、国内での高まる厭戦気分に対応したものだが、イラク情勢が好転しているとはほとんどの人は思っていない。
 大量虐殺と破壊の連鎖をもたらしているアメリカの「反テロ」を口実とする侵略戦争を早急に終わらせよう。

WPN9・141国会行動

 WORLD PEACE NOWは、九月十一日、議面集会と官邸前行動を展開した。
 午後五時半より衆議院議員面会所で集会を開いた。民主党の川内博史衆議院議員、社民党の福島瑞穂党首(参議院議員)、山内徳信参議院議員、共産党の赤嶺政賢衆議院議員、無所属の川田龍平参議院議員が、与党のテロ特措法延長や新法を許さず闘おうとアピールした。ピースリンク広島・呉・岩国代表の湯浅一郎さんが自衛艦が出発している呉からの報告を、日本山妙法寺の武田隆夫上人は宗教者の運動の報告を行った。
 集会を終えて、首相官邸前に移動し、テロ特措法延長反対!廃止を!武力で平和はつくれない!アフガンに平和を!イラクに平和を!自衛隊をすぐ戻せ!などのシュプレヒコールをあげた。


1047名の解雇撤回を求め、秋の闘争に全力をあげよう

四者が機構に申し入れ

 八月二十九日、被解雇当事者四者(国労闘争団全国連絡会議、国労闘争団鉄建公団訴訟原告団、国労闘争団鉄道運輸機構訴訟原告団、全動労争議団・鉄道運輸機構訴訟原告団)は、鉄道運輸機構に対して次のような通り申入れを行った。

 申入書

 国鉄の分割民営化から二〇年が経過し、一〇四七名の不採用問題は未だ解決を見ていない。解雇された者とその家族にとって筆舌に尽くせぬ二〇年であった。       
 「解決をしたい」との意思は、貴側としても共通するものと推測する。しかし、この間、行った申し入れで、貴側並びに国交省に対しても強く解決を求めてきたが事態を打開できる状況には至っていない。
 よって、以下の申し入れ項目内容に治って機構側の解決に向けた態度を明確にされたい。
 一、参議院議員選挙を受けて、新たな政治状況が生まれた。鉄道運輸機構として、解決する意思を明確にし、政府・国土交通省に責任ある対応をとるように具体的な働きかけを行うこと。
 二、今後も引き続き四者による申し入れについては、誠意を持って対応すること。

 しかし機構側からは、「参院選でも直接的な情勢の変化はない」「不当労働行為は認めない」などの対応で、四者はこれに抗議し今後も要請行動を行うと通告した。

これからの諸行動

 四者と四団体(国鉄労働組合、全日本建設交運一般労働組合、国鉄闘争支援中央共闘会議、国鉄闘争に勝利する共闘会議)は、「JR不採用・一〇四七名問題解決のための『解決交渉テーブル設置』を求める九月行動(国交省前座り込み)」を展開する。
 九月一八日(火)〜二一日(金)10時30分〜 16時45分 国土交通省正門前(霞ヶ関)

 鉄道運輸機構訴訟(結審)報告集会
 九月二〇日(木)午後六時半 SKプラザ(東京清掃労組会館)地下ホール

 第二一回団結まつり「勝ち取ろう 国鉄労働者一〇四七名の解雇撤回! つくりだそう 生きる権利を尊重する社会を! 団結まつり」
 一〇月一四日(日)午前一〇時〜 亀戸中央公園B地区


フェアレイバー研究教育センターの研究会

    
韓国の産別労働運動の現状と課題について、イム・ヨンイルさんが講演

 韓国では、昨年二〇〇六年六月の現代自動車労組をはじめとする四大自動車企業労組が産別転換し、今年の二月には金属労組が統合して金属産業連盟(産別労組)が発足するなど産別労組建設運動は大きく前進している。韓国でもいったんは企業別労組体制が定着したが、産別転換・産別建設運動が意識的かつ強力に推進されている。すでに、この流れは、民主労総ばかりでなく韓国労総も含めて逆らえない大勢となっているという。しかし一方では、深刻な対立・葛藤も生み出している。金属と並んで韓国の産別建設運動の両輪のひとつである保健医療労組は、二〇〇四年産別中央交渉に基づく産別協約の「効力」をめぐって分裂した。産別労組建設とその中での諸経験には、日本の労働組合運動が真剣に学びとる教訓であるだろう。

 九月八日、総評会館で「フェアレイバー研究教育センター」主催の研究会が開かれた。テーマは「韓国の産別労働運動の現状と課題 産別交渉をめぐる保健医療労組の『分裂』」。報告者は、韓国産別転換の理論的リーダーであるイム・ヨンイル(林榮一)元嶺南労働運動研究所所長。

 一九四五年の解放直後に、朝鮮労働組合全国評議会(全評)が結成され当時の朝鮮の労働者の約八〇%を組織した。全評はその強力な組織力をもって自主管理運動を展開したが、そのために当時の米軍政と激しく衝突し、米軍政の苛烈な弾圧に耐え切れずに一九四八年初には瓦解した。その後の韓国の労働運動は御用組合である大韓労総に一元化された。大韓労総は米軍政の支援を受け、李承晩政権を支持する組織として成長した。そして、一九六一年に軍事クーデターで権力を掌握した朴正煕政権は、中央情報部の指揮下に大韓労総を韓国労総に改編した。こうして一九八〇年代まで、実質的に韓国では産別労組ではなく、企業別労組が支配する時代が続いたが、それは労働者が自ら選択したものではなくて、政治権力によって強制された企業別体制だった。しかし、こうした状況に大きな変化をもたらしたのが、一九八七年の労働者大闘争であった。この大闘争以後、民主労組運動と呼んでいる新しい労働運動の潮流が生まれ、非常な勢いで成長した。そしてそうした中で、韓困労総とは別の独自的なナショナルセンター建設を目指す動きが活発になってきた。一九九〇年に自主的民主労組によって結成された全労協(全国労働組合協議会)は、まさにその先駆的なものだった。全労協は製造業の中小企業組合を主力とした戦闘的組織だったが、当時の権威主義政権によって不法組織であるとみなされて集中的な弾圧を受け、そのためにその組織力は非常に弱体化せざるを得なかった。だが、一九九四年になると、全労協の枠を超えて、各種のホワイトカラー労組、そして企業を中心とした労働組合勢力も結集して新しいナショナルセンターを目指さなければならないという認識となり、一九九五年には全国民主労働組合総連盟(KCTU)が出来、民主労総が将来建設される産別労組の母体にならなければならない、という方向も決まった。
 その後、韓国は、一九九七年から九八年にかけてのいわゆるIMF経済危機を経験した。韓国の労働組合運動は、もはや従来の企業別組合体制ではこうした危機とその危機を契機とする構造調整、大量失業、非正規職の急増といった状況に対応しきれないということを思い知らされた。こうして民主労総はもちろんのこと、韓国労総もやはり産別労組の建設を公式の方針に掲げるようになったのである。
 産別転換には二つの段階がある。第一段階は、企業別組合の単一労組への転換であり、もう一つが、実質的な産別化であり、企業別組合の解散ということだ。私は以前はこうした分け方をしていなかったがこうするほうが現実的である。しかし韓国でも労働者の組織率は低く、民主労総の組織率は五%でしかなく、産別建設運動の目標として、九〇%に達する未組織労働者や非正規職労働者を産別労組に組織していくことが目標にならなければならない。だが、私たちがまず目指したのは民主労総の労働者たちを、産別労組建設第一段階でまず産別化することによって、今度は披らが主体となって第二段階を引っ張るそういう主体を形成しようということだった。企業別組合の長い伝統はこうしたやり方を余儀なくさせているが、現在民主労総では第一段階は一〇〇%終了している。第二段階はようやくはじまったところだ。これを行わなければ産別労組といっても形式上のことにすぎず、本当の意味での産別建設にはならないが、困難な経験も出てきている。
 産別は組合費を労働者から直接に徴収し、その一定額を地域支部・企業組合に交付する。現代自動車労組などの大企業の組合も産別転換に踏み切った。今後は企業組合の資産の産別への移譲が行われるようになる。
 つぎに保健医療労組を例に挙げたい。二〇〇四年から産別中央交渉が行われた後、保健医療労組は不幸なことに組織分裂の状況に直面した。最初の問題は保健医療労組の場合には金属労組と違って、組織体系において産別本組(中央組織)の下に地域支部ではなく、すぐに企業別支部が置かれていたということだ。団体交渉権やスト権についても産別本組と企業支部が分け持っていたが、韓国ではこれは極めて危険な状況を意味する。つまり産別本組の交渉結果に満足できない企業別支部は、いつでもその産別から脱退する可能性を秘めていた。
 保健医療労組は最初の交渉において賃金引上げ交渉が行われ妥結した。しかしより交渉力の強い組合からの抗議と脱退が相次ぐことになった。産業最低賃金も導入はされたが、水準があまりにも低く労働者たちに与える影響は微々たるものだった。結果的に産別中央交渉の後、保健医療労組においては産別組合の権威が強化されるどころか、分裂と弱化化を招いてしまい、拠点であったソウル大病支部が脱退し、いくつかの病院労組とともに「全国病院労組協議会」を結成してた。しかし、事態は変わりつつある。一定の沈静期間をおいた上で共に闘う行動が出来たり、またソウル大学病院支部は組合員が二〇〇〇人を超え大組織だが、そこの資金・人員を裂いて、中小規模の組合を支援したり、その他の産業の労働者の組織化を行ったりしている。 
 産別転換では、産別労組の基礎組織を企業単位でなく、地域単位に転換させること、企業単位に配置されている労組資源を地域に集中させていくこと、産別交渉も地域支部中心に再編していくことが不可欠である。


インド洋での自衛隊の活動を暴露し、テロ特措法延長を阻止しよう

アフガン米軍の退勢

 九月一〇日、臨時国会が開会した。参院選での与党惨敗をうけて野党優位が形成された参議院と〇五年小泉郵政選挙によって自公与党が圧倒的多数を占める参議院が存在するという過渡期としての「〇七政治体制」が本格的にスタートする。
 この臨時国会では、年金、政治とカネ、労働法制など多くの課題で与野党激突が予想されるが、最大の争点は一一月一日に期限切れとなる「テロ特措法」延長問題である。この法律は、アメリカのアフガニスタン侵攻をいち早く支持した小泉政権が、アーミテージ国務副長官(当時)が日本の対米支援について「ショー・ザ・フラッグ」と述べたことに「日の丸」の付いた自衛隊を出せということだとばかりに飛びついて生まれたものだ。
 内容は、アメリカがアフガニスタンなどに対して、対テロ戦争の一環として行う侵攻を後方支援することについて定めたものであり、小泉を引き継いだ安倍政権もアメリカの戦争支持の政策はまったく同じである。時限立法であるにもかかわらず、これまで三回も延長されてきていた。
 法成立後、インド洋(公海)での補給艦による米海軍艦艇などへの給油活動や海上自衛隊の護衛艦(イージス艦)によるレーダー支援や行われている。
 この活動はアメリカの一方的なアフガン侵略に加担するものであり、憲法が禁じている集団的自衛権行使の問題とも関連しており重大な違法行為なのである。しかも、その詳細については、軍事機密だとしてほとんど明らかにされてきていないというとんでもない法律としてあるのだ。
 今ようやく、この法律とそれによる日本政府・自衛隊の危険極まりない行動が明らかになりつつある。これを契機にして、いっそう反戦平和の運動は盛り上がり、世論の動向も一段と反対の声が増えつつある。こうした情勢に加えて野党優位の参院状況があり、政府・与党の思惑通りの法延長はきわめて困難な局面を迎えている。
 米英占領軍は、開戦後六年になるにもかかわらず、かれらにとっての状況は一段と混迷化するばかりである。こうした中での日本の後方支援は、米英の戦争・占領政策にとって不可欠のものとなっている。これが期限切れとなれば、インド洋で米軍などへ後方支援・給油を行ってきた自衛隊艦船は帰国しなければならない。この問題は、倍内閣の死命を左右するものとなり、日米関係に重大な変化をもたらすものとなる可能性がある。

テロ特措法とは

 テロ特措法の正式表記は「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」である。「報復戦争支援法」とも呼ばれる法律の施行・公布は二〇〇一年一一月二日であった。
 「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃」とは、二〇〇一年九月一一日の何者かによるニューヨークの貿易センタービルとワシントンのペンタゴン(国防総省)ビルへの航空機を使った突入爆破攻撃のことであるが、これをブッシュ大統領は、ビン・ラディンらのアルカイダによるものと断定し、当時のアフガニスタン政府(イスラム原理主義組織タリバン)がそれに加担しているとして、二〇〇一年一〇月七日にアメリカとそれに従うイギリスなどの連合軍が空爆を開始した。その後、アメリカは、アフガニスタン内部の反タリバン勢力を使って「カルザイ新政権」なるものをでっち上げさせ、新たな帝国主義支配体制を敷いた。だが、アフガン民衆の反米反占領の動きは拡大し、それを背景にタリバンの勢力も復活しつつあるといわれる。

「実態」が暴露された

 しかし、テロ特措法によるインド洋における自衛艦の活動は、政府のこれまで言ってきたアフガニスタン戦争の支援だけでなく、それ以上にイラク戦争支援であったことが明らかになってきた。一般にこの問題が広く知られるようになったのは、九月一日のテレビ朝日「朝まで生テレビ」(司会・田原総一郎)における江田憲司衆議院議員(無所属)の発言であった。
 以下、江田発言の主要点を要旨を引用してみたい。
 江田氏は、自衛隊、防衛庁が発表した資料をとりあげて、「(自衛隊の)補給船がアメリカとイギリスだけには補給艦に補給してるんです。これは自衛隊の資料でも明らかになってますね」と述べた。そしてそのことはアメリカ海軍第五艦隊のホームページに「『イラクの自由作戦』で、『有志連合』が何をやっているかという項目がありましてね、『日本の政府はこれまでに、八八六二万九六七五ガロンの貢献をしてくれた』と書いてあるんですよね。これね、キロリットルに直すと三〇万キロリットル以上なんですね。防衛庁が発表しているこれまでのアメリカ艦船への補給が、三八万キロリットルなんですよ。自衛隊の補給船が米国の補給船に補給した油はですね、その八割以上は、イラクの戦争のために使われているってことがわかったわけです。アフガン戦争に補給するんじゃなくて、実は、アフガン戦争に補給すると見せかけながら、実はほとんどがイラク戦争への補給になってるんだ」。
 自衛艦による石油支援の大部分がイラクでの戦争に使われているということだ(なお後日、江田氏は、イラク向けの石油の割合の数字の訂正などを行ったが、基本的な問題の性格には変化はない)。

 補給艦の活動だけではない。イージス艦の作戦についても江田氏は重大な暴露を行っている。
 「二〇〇三年にね、アメリカ軍の横須賀基地の機関紙(機関誌)の『シーホーク』の一面にイージス艦の『きりしま』と護衛艦の『はるさめ』と補給艦の『ときわ』の写真が載っててですね、広報してるんですね。『イラクの自由作戦を支援するためインド洋に配備され、五月二〇日、母港の横須賀に戻ってきた。イラクの自由作戦における同盟軍の海上作戦を成功させる手段であった』というふうに強調している。それからイラク南部を空爆した空母『キティホーク』にも給油してるわけです。ですからね、イラク戦争に『人道復興支援』だから許される、みたいなね、全然崩れちゃうんですよ」。
 イラク戦争への支援であることは明瞭である。

 その後、こうしたウソがどうして続いているのかという構造についてに話が移る。
 司会の「そういうことは、当然防衛庁は知っていて」というのに答えて、江田氏は「もちろん知ってます」と述べたのである。
 まさに政府・防衛省による国家ぐるみの国民騙しの構図が指摘されたのである。

 九月二日にはテレビ朝日「サンデープロジェクト」で「朝生」と同じ司会者である田原総一郎が、石原伸晃自民党政調会長に質問。石原は、米英の艦船は一箇所にとどまっているわけではなく、ペルシャ湾に近づくこともありうるなど言い、またアフガニスタンもイラクもテロ対策という意味では同じだなどと発言するなどテロ特措法とイラク特措法の違いもまったく理解していないという醜態を演じたのである。

強まる米国からの圧力

 テロ特措法が廃止となって、日本からの石油をはじめとする無償の支援が来なくなれば、アメリカの戦争遂行に重大な空洞を生じさせることとなる。イギリスやパキスタンの艦船は日本が提供している質の高い燃料でしか稼動できないといわれ、海上自衛隊の補給活動が停止すれば、それらの国の海軍は作戦に参加できなくなると見られ、米軍の想定する戦略は大きく崩れる可能性がある。
 この間、ブッシュとともに、アフガニスタン、イラク戦争を始めた「有志」たちは次々にその戦列を離れ、イギリスにおける盟友ブレアでさもブッシュの戦争に加担し続けたおかげで首相の椅子を去らざるをえなかった。ブッシュの「偉大なるイエスマン」だった日本の小泉の後を継いだ安倍内閣もいま危機的状況を向かえている。 ブッシュは自分の不人気な戦争に日本に協力させるために躍起となり、このところアメリカからの延長圧力が強まってきている。
 参院選での与党惨敗・民主党躍進を受けて、シーファー駐日米大使は、テロ特措法延長に反対する小沢民主党代表に働きかけた。八月八日、民主党本部での会談で、シーファー大使はテロ特措法に基づくインド洋での自衛隊の給油活動について「日本の貢献は非常に重要だ。日本が参加することで、(石油の安定供給など)日本自体の安全保障にも役立つ」と延長を求めたが、小沢代表は「アフガニスタンの戦争はブッシュ米大統領が『米国の戦争だ』と言って、国際社会の合意なしに米国独自で始めた。日本の直接の平和、安全と関係ない区域に米国や他の国と部隊を派遣して、共同の作戦をすることはできない」として同法の延長に反対する考えを重ねて表明した。
 安倍は、「今後とも自衛隊の活動を続けていくことが期待されている。民主党側にも、こうした国際社会の期待、日本の責任についてお話をしていきたい」と民主党の翻意を促す発言をつづけている。また安倍は、「日本が国際的な貢献を続ける意志があることを評価する」とのメルケル独首相の発言やブッシュの「今後も日本が前向きな影響力を保持し続けることを望んでいる」と「国際世論」の外圧で事態を好転させようと躍起になっているが、うまくいくはずもない。
 アメリカ側は相当にあせり始めている。
 九月六日、シーファー駐日大使は一時帰国中の講演で、テロ特措法延長問題で、「日本が撤退すればアメリカだけでなく他の国々の負担が増えることになる」「アメリカの関与が無くなると北東アジア地域は危険な場所になる」「小沢代表と民主党が、アフガニスタンと対テロ戦争における日本の役割の重要さと、日本の撤退が他の参加国の負担を増やすことに気づくことを願います」と恫喝とも哀願とも言える言葉を述べている。

野党の新しい態勢

 こうした情勢に、安倍与党は、内閣改造後しきりに「柔軟姿勢」をみせ、延長法案の「修正」で民主党に誘いをかけはじめている。
 町村新外相は、野党と議論し、建設的な答えを出す努力をするのを基本的な姿勢としており、高村新防衛相は、法案修正の余地について最初から絶対にいけないという立場にはない、と述べるなどその意向は明らかである。
 民主党は、小沢代表の自衛隊の海外活動には「国連決議が必要」という主張を中心に国会に臨む基本方針である。なにより、政権交替を第一義的に押し出す構えを変えておらず、対米追随の政府外交方針に対抗して原則論一点張りで反対を押し通す構えと見られる。党内の前原誠司前代表らの親米隠れ自民党勢力も今のところ小沢体制に取り込まれ造反の動きは抑えられている。
 小沢執行部は、鉢呂吉雄前選対委員長(民主党「次の内閣」の外相)を臨時国会最大の焦点となるテロ特措法延長問題の責任者とし、政府与党との修正協議には基本的に応じない方針である。与野党の政策論議となれば自民党の土俵に取り込まれ、安倍内閣の延命に手をかすだけだから応じず、なによりも「内閣が代わることが最初になければならない」というスタンスに立っている。
 小沢代表はシーファー大使との会談で「国連安保理決議がある」ことを理由にアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊参加に柔軟姿勢を示したがその後まったく口に出さなくなっている。また、民主党新役員人事決定の記者会見で小沢代表は「(特措法延長に)賛成しなければ政権担当能力がないとする論理は無茶苦茶だ。アメリカでもブッシュ大統領の政策に賛成する議員は少数になっている」と述べていたが、強気に押していく模様だ。
 臨時国会に臨む野党側の態勢整備も進んでいる。民主党小沢代表と新党日本の田中康夫代表が参院での統一会派結成で合意した。参院選後、野党系無所属議員のうち三人が「民主党・新緑風会」に入り、田中氏の入会で計一一四人になる。また、民主党、社民党、国民新党と共産党の間でも、今後定期的に四野党国対委員長会談を行くことになり、反自公勢力の連合も形成された。

 現在の状況は上に見てきたように反戦平和運動にとってかつてない有利なものとなりつつある。 ブッシュの「対テロ戦争」=アフガニスタン侵略戦争への加担を拒否し、インド洋から自衛隊を撤退させるために全力をあげるときである。安倍は内閣改造によって人気回復を狙ったがそれも早速閣僚のスキャンダル発覚でボロボロとなりいっそうの求心力低下、党内の混乱、そして公明党も自民党に距離をおきはじめて、いまや政府危機寸前といったところにまで到達してしまっている。
 少し好転したと見られた安倍人気もすぐにしぼみそうだ。
 最近の産経新聞社とFNNの合同世論調査は興味深い。テロ特措法延長に反対が五四・六%、延長賛成は三四・二%となっている。まだ、テロ特措法と海上自衛隊のインド洋での活動が十分に知られていない現在でもこの数字である。海上自衛隊の石油補給などの支援のほとんどがイラクでの米英軍の軍事行動に使われていること、それはイランへの新たな戦争の準備の支援にもなっていること、そしてそれらのことを政府は十分に知っていながら国民にはまったく知らせずウソをつき通していたことなどがわかってくるなら、延長反対、自衛艦はすぐ帰れの声ははるかに大きなものとなってくることは間違いない。
 年金の流用、政治とカネのスキャンダルは大問題だ。しかもそれをはるかに上回る税金の流用と騙しが続けられてきたのである。

 いま、テロリスト殲滅の口実の下にイラクでアフガニスタンでその他の地域で、膨大な数の人々が殺され、逮捕・監禁・拷問を受けている。ブッシュの反テロ戦争は、世界中で破壊と殺戮を繰り返して、人びとを絶望的な状況に追い込んでいる。日本政府はそれを支援し、アラブ中東をはじめとする人々と敵対する地位に自らを置いているのである。
 まず、「対テロ活動」の全貌を明らかにさせ、徹底して追及し、なにより重要なのは、国会周辺を含めて各地でテロ特措法延長を実際に阻止する大衆的な運動の盛り上がりを作り出していくことが大事だ。
 戦争国家づくり、改憲策動を挫折させ、安倍内閣を打倒しよう。


区別するということ

 
 連合と闘争の両側面を総合した政策  毛沢東「政策について」

 参院選後、日本の情勢は大きく流動し始めた。安倍内閣の迷走ぶりは政府危機を思わせるものとなっている。この情勢で、社会主義勢力もいかに正しく情勢に対応していくのかが問われている。単なる「保守二党論」批判ではなく、いまあちこちで見え始めている矛盾・亀裂を分析・評価して、敵に有効な打撃を与えていくために歴史の経験を学ぶ必要があるだろう。
 「政策について」(毛沢東選集第二巻)は毛沢東が一九四〇年十二月二十五日に中国共産党中央のために書いた党内指示である。約一年後には、日本はアメリカ、イギリス、オランダなどとの戦争に入るが、一九四〇年には、日本は対中国戦争に全兵力を集中している(一部は対ソ戦備)。中国民衆の抗日戦争とりわけ共産党の指導する八路軍などにとってはきわめて困難な時期であった。
 五月一八日に日本軍機が重慶等に対し大規模爆撃を実施し、七月二三日には日本大本営は『大陸命第四三号』を発令し、「支那事変」の迅速な処理を求める。大陸令とは陸軍参謀総長が陸軍の指揮官に対し、最高指揮官である大元帥(天皇)からの命令(大命)を奉勅(伝達の実施)する時に発したものである。八月一日には、日本政府は『基本国策要綱』を公布し、松岡洋右外相が「大東亜共栄圏」の建設を提唱。九月二七日『日独伊三国同盟条約』が調印され、一一月二九日には、日本に投降した汪精衛(兆銘)が南京で偽「国民政府」の主席に就任し、一一月三〇日には、日本と汪「政権」が『日華基本関係条約』を正式調印した。そして、一二月二三日には日本海軍が中国南部海岸の封鎖強化を宣言している。
 一九四〇年三月十一日、毛沢東は延安における党の高級幹部会議でおこなった報告(「当面の抗日統一戦線における戦術の問題」)で「当面の政治情勢」を次のように特徴付けている。
 「(1)日本帝国主義は、中国の抗日戦争によって重大な打撃をうけ、もうこれ以上、大規模な軍事的進攻をおこなう力がない。したがって、敵味方の形勢はすでに戦略的対峙の段階にある。だが、敵は依然として中国を滅ぼす基本政策をとりつづけており、抗日統一戦線の破壊、敵後方での『掃討』の強化、経済侵略の強化などの方法によって、この政策をおしすすめている。(2)東方におけるイギリス、フランスの地位はヨーロッパの戦争によってよわまり、アメリカはひきつづき『山上に坐して、相うつ虎の倒るるを待つ』という政策をとっている。このため東方のミュンヘン会議はとうぶん開かれるみこみがない。(3)ソ連の対外政策はあらたな勝利をおさめ、中国の抗戦にたいしてこれまでどおり積極的援助の政策をとっている。(4)親日派の大ブルジョア階級は、はやくから完全に日本に投降し、かいらいとして登場する準備をしている。欧米派の大ブルジョア階級は、まだ抗日をつづけることができるが、その妥協的傾向は依然としてひどく存在している。かれらは二面政策をとり、一面では、ひきつづき国民党以外の各派の勢力を結集して日本にあたろうとしているが、他面では、各派の勢力を破壊することに懸命になり、とりわけ共産党と進歩勢力を破壊することに全力をあげている。かれらは抗日統一戦線のなかの頑迷派である。(5)中層ブルジョア階級、開明紳士、地方実力派をふくむ中間勢力は、大地主、大ブルジョア階級という主要な支配勢力とのあいだに矛盾があるし、同時に労農階級とのあいだにも矛盾があるので、とかく進歩勢力と頑迷勢力とのあいだの中間的な立場にたつ。かれらは抗日統一戦線のなかの中間派である。(6)共産党の指導下にあるプロレタリア階級、農民、都市小ブルジョア階級という進歩勢力は、最近大きな発展をとげ、抗日民主政権の根拠地を基本的にきずいた。かれらは、全国の労働者、農民、都市小ブルジョア階級のあいだで非常に影響が大きく、中間勢力のあいだでもかなり影響をもっている。抗日の戦場で共産党がむかえうっている日本侵略者の兵力は、国民党がむかえうっているそれと、ほとんどおなじくらいである。かれらは抗日統一戦線のなかの進歩派である」。
 さまざまな階級・階層が、日本の中国侵略と抗日戦争という状況の中で変化を見せているが、その特徴を細かく分析している。こうした中で、中国共産党指導部は、実に見事な政策を編み出し、活路を切り開いていくのである。
「政策について」では、「抗日戦争の時期全体をつうじて、いかなる状況のもとでも、わが党の抗日民族統一戦線の政策はけっして変わらないこと、過去十年にわたった土地革命の時期の多くの政策は、現在、安易にとり入れるべきではないことを理解しなければならない」。これは、一九二七〜一九三六年にわたる土地革命のときの地主の消滅など極左方針を改めるということだ。
 「現在の抗日民族統一戦線政策は、すべてのものと連合し、闘争を否定することでもなければ、すべてのものと闘争し、連合を否定することでもなく、連合と闘争の両側面を総合した政策である」として、「(一)すべての抗日の人民が連合して(あるいは、すべての抗日の労働者、農民、兵士、知識層、商工業者が連合して)、抗日民族統一戦線を結成する。(二)統一戦線のもとでの独立自主の政策である。統一も必要であるし、独立も必要である。(三)軍事戦略の面では、統一した戦略のもとでの独立自主の遊撃戦争である。基本的には遊撃戦であるが、有利な条件のもとでの運動戦もゆるがせにしない。(四)反共頑迷派と闘争するときには、矛盾を利用し、多数を獲得し、少数に反対し、各個に撃破する。道理があり、有利であり、節度があるようにする。(五)敵占領区と国民党支配区での政策としては、できるだけ統一戦線の活動を発展させる一方、隠蔽と精鋭化をはかる政策をとる。また組織形態と闘争形態のうえでは、隠蔽と精鋭化をはかり、長期にわたってひそみ、力をたくわえ、時機を待つ政策をとるのである。(六)国内の各階級の相互関係にたいする基本政策は、進歩勢力を発展させ、中間勢力を獲得し、反共頑迷勢力を孤立させることである。(七)反共頑迷派にたいしては、革命的二面政策をとる。すなわち、まだ抗日できる側面にたいしては、連合する政策をとり、あくまで反共をする側面にたいしては、孤立させる政策をとる。抗日の側面で、頑迷派はまた二面性をもっているので、われわれは、そのまだ抗日できる側面にたいしては、連合する政策をとり、その動揺する側面(たとえば、日本侵略者とひそかに結託したり、汪精衛や民族裏切り者反対に積極的でない)にたいしては、闘争し、孤立させる政策をとる。頑迷派は、反共の側面でも二面性をもっているので、われわれの政策にも二面性がある。すなわち、かれらが国共合作の根本的な分裂をまだのぞんでいない側面については、連合する政策をとり、かれらがわが党と人民にたいして高圧政策や軍事進攻をおこなう側面については、闘争し、孤立させる政策をとる。こうした二面派分子を民族裏切り者、親日派と区別する。(八)民族裏切り者や親日派のなかにも二面分子がいるので、われわれも革命的二面政策でこれに対処すべきである。すなわち、親日的な側面にたいしては、打撃をくわえ、孤立させる政策をとり、一動揺する側面にたいしては、これを篭絡し、獲得する政策をとる。こうした二面分子を、徹底した民族裏切り者、たとえば汪精衛、王揖唐、石友三などと区別する。(九)抗日に反対する親日派の大地主・大ブルジョア階級を、抗日を主張する英米派の大地主・大ブルジョア階級と区別しなければならないし、また抗日を主張しながらも動揺し、団結を主張しながらも反共的である二面派の大地主・大ブルジョア階級を、二面性の比較的すくない民族ブルジョア階級、中小地主、開明紳士と区別しなければならない。われわれの政策はこれらの区別のうえにたてられる。上述のそれぞれ異なった政策は、これらの階級関係の区別からきている。(十)帝国主義に対処するばあいも同様である。共産党は、いかなる帝国主義にも反対するものではあるが、中国を侵略している日本帝国主義を、現在侵略をおこなっていない他の帝国主義と区別しなければならない。また、日本と同盟を結び、『満州国』を承認しているドイツ、イタリアの帝国主義を、日本と対立の立場にあるイギリス、アメリカの帝国主義と区別しなければならない。さらに、かつて極東ミュンヘン政策をとって中国の抗日に危害をくわえていたときのイギリス、アメリカを、いまはこの政策を放棄して中国の抗日支持にあらためているイギリス、アメリカと区別しなければならない。われわれの戦術の原則は、やはり、矛盾を利用し、多数を獲得し、少数に反対し、各個に撃破することである。われわれは、外交政策の面で、国民党とは区別がある。国民党は、『敵はただ一つで、そのほかはみな友である』などといっており、表面では日本以外の国をみな平等にみているが、実際には親英、親米である。われわれは、第一にソ連と資本主義諸国との区別、第二にイギリス、アメリカと、ドイツ、イタリアとの区別、第三にイギリス、アメリ力の人民とイギリス、アメリカの帝国主義政府との区別、第四に極東ミュンヘンの時期のイギリス、アメリカの政策と当面の時期のそれとの区別、といった区別をすべきである。われわれの政策はこれらの区別のうえにたてられる。」。
 このようにして、日本という当面の敵を最大限孤立させ打撃を集中するとともに、労働者・農民を独自に組織し立ち上がらせ、国民党の動揺を抑えた。同時に、日本侵略者を撃退したあと、英米帝国主義に支援された国民党勢力との戦いは必至であることを考慮しての革命勢力蓄積でもあったのである。 (H)


複眼単眼

    
 共産党の五中総での方針転換のこと

 九月八〜九日に開かれた共産党の第五回中央委員会総会で、重大な方針変更があったようだ。
 「ようだ」と書くのは、これを書いている一〇日は新聞休刊日で、八中総の幹部会報告全文が届いておらず、正確にいうと九日の赤旗の報道と骨子しか読んでいないからだ。しかし、この間の同党の動向をウォッチしてきた筆者としては、以下の記述は外れていないと思っている。
 志位委員長の幹部会報告は参院選後の常任幹部会声明と、創立八十五周年記念講演の内容を確認した上で、参院選後の国会状況を非常に肯定的なものと評価し、あわせて参院選における党中央の指導に一定の弱さがあったことを認め、政党状況の「新しい特徴」について確認、安倍政権の「間違った政治」に反対する闘いを共同行動問題を含めて強化することなどを確認した。次の総選挙では比例区六五〇万票以上を目標とし、従来の小選挙区全区立候補をやめ重点方式をとる、などを決めた。
 これは参院選の与野党逆転という新しい状況に対応し、国会内では積極的に民主党など野党共闘を進めることと、民主党への評価を一定程度変更し、「民主党のマニュフェストの国民の利益にかなった内容は実行を求める」という主旨にしたものだ。
 ひきつづき民主党は憲法問題などで重大な問題を持っていると、同党の「矛盾」を指摘しながらも、選挙前の四中総で指摘した「自民党政治と弱肉強食の構造改革や憲法改悪を競い合っている」と切って捨てていた立場は弱まった。
 三〇〇の小選挙区での候補者擁立をあらため、事実上半数以下の選挙区に絞った理由は、選挙協力問題ではなく、活動や財政上の負担が大きいことなどとされている。
 いずれにしてもこれらは共産党にとっては、先の常任幹部会声明で、みずからの不充分さを有権者にお詫びしたことなどと共に、重大な方針転換だと思われる。
 もちろん、これによって共産党が基本的な方針転換をしたわけではないし、これらの変更の理由も不徹底で、変化の途中であるから、今後も注視していく必要がある。しかし、共産党中央がどう説明しようと、民主党の評価と野党共闘、共同闘争問題、選挙戦術問題などで方針変更が試みられたことは否定できない。
 野党共闘の問題でも、全選挙区立候補問題でも、従来から党内外でこうした変化が望まれていたのだ。一歩前進と評価して、今後のさらなる変化を促していく必要がある。
 しかし、それにしても、と思う。従来から、こうした意見を持ち、中央にぶつけていた人びとは党内外に少なくない。しかし、その時点でこれらの意見は否定されてきた。突然、幹部会が方針変更を提起し、五中総で決めるというのは、共産党らしいといえばそれまでだが、なんともはやと思うのだ。当時の方針で内外に説明してきた党員たちもかわいそうではないか。
 ぽーんと上で決めるまえに、大会とまでは言わなくても、全国的に党員に開かれた会議を幾度かやるとか、当該からも意見を聞くとか、なにかしたらいいだろうと、よそ事ながら思うのだ。
 そういう時代はいつか来るのだろうか。 (T)


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 いよいよ自民党政治の終わりが見えてきました。〇七参院選の結果は、日本の資本主義政治体制が完全に金属疲労を起こしていることをしめしました。われわれは、決意も新たに、活動スタイルも革新しながら、改憲阻止、反戦、労働組合運動の強化など多くの分野での活動を強化し、新しい社会主義政治勢力の形成に向けて奮闘します。
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