人民新報 ・ 第1236号<統合329号(2007年12月15日)
  
                  目次

● 給油新法阻止! 自民党政治を終わらせよう!

● 11・30集会への大結集を背景に国鉄闘争勝利へ

● 国の仕打ちに怒りの1万人  12・1岩国集会報告

● 広島で集会  『日本の事件から浮かび上がる中国人研修生問題』

● 価値観外交の崩壊と右翼論客の泣き言

● 図書紹介  /  木下武男著  『 格差社会にいどむユニオン ― 21世紀労働運動原論 』

● せんりゅう  /  ゝ史

● 複眼単眼  /  絶望してクーデターまで叫ぶ極右勢力

年末カンパのお願い  /  労働者社会主義同盟中央委員会

 

給油新法阻止! 自民党政治を終わらせよう!

 一一月一日、旧テロ特措法の期限切れで海上自衛隊艦船によるインド洋での給油活動は中断した。こうして日本は、アフガニスタンやイラなどの民衆虐殺という穢れた戦争支援からすこしだけ手を引いたことになる(しかし、イラクでは航空自衛隊が米軍などの武器」弾薬・兵員の輸送支援を続けており、日本にたいする怒りは強まっている)。
 派兵された軍隊が途中で帰還せざるを得なくなったというのは画期的なことであり、世界の人びとと連帯を広げてきた日本の反戦平和運動の偉大な勝利として銘記されるべき事態であり、民衆の運動が政治を動かせるという確信を広めていかなければならない。

 いま、ブッシュの仲間として、反テロ戦争という名目を掲げてアメリカの世界覇権と多国籍企業による石油支配のための侵略戦争に加担したものの、国内外の批判の高まりにイラクやアフガニスタンからの撤退・派兵縮小を行う国が相次いでいる。イラク侵略の有志「侵略者」連合の中核であったアングロ・サクソン同盟を形成してきたオーストラリアのハワード保守連合政権は一一月二四日の総選挙で崩壊した。野党労働党は、イラク駐留部隊一五〇〇人の段階的撤退を公約に掲げて勝利したのである。ポーランドでも新内閣が発足し、イラク駐留全部隊を〇八年度中に完全撤退させると正式に表明した。そのまえにはイギリスのブレアが首相の座を追われた。アフガニスタンでも同様なことが起こっている。韓国政府は、全駐留部隊の年内撤収の意向であり、オランダは撤収の可能性を言い始めた。当初一二か国もいた「海上阻止活動」参加国も、イタリア、スペイン、オランダ、ギリシャは撤退し、カナダ、ニュージーランドは作戦を中断している。日本の撤収で、現在の参加国はアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、パキスタンの五カ国だけになっている。海上自衛艦のインド洋からの引き上げも世界の流れにそったもので、当然のことなのである。

 だが、アメリカとの同盟を唯一の外交政策とし、超大国の力を背景に政治・軍事大国化をもくろむ日本支配層の代弁者である福田内閣は、年金など緊急の諸課題を後回しにして、給油再開を内閣の最大課題としている。
 こうした場合、政府・与党は、七月参院選前であれば、強行採決につぐ強行採決でやれたものが、いまは難しい。しかし、給油再開をアメリカ・ブッシュ政権に誓った福田は、なんとしてもそれをやろうとしているのである。

 一一月一三日には、与党が圧倒的多数をもつ衆院で新法案を強引に通過させて、参院に送ってきた。しかし参院は民主をはじめ野党が過半数を占めており、参院では強行採決・可決はできない。
 そして一二月一一日には、福田は、公明党の太田昭宏代表と首相公邸で会談し、給油活動再開法案を今国会で成立させること、国会の会期ぎりぎりまで民主党に参院で給油新法案を採決するよう働き掛けることなどで一致した。民主が採決を拒めば会期を来年一月中旬まで再延長し、参院六〇日条項をもって衆院での三分の二賛成での再議決をするとしている。だが、これも福田にとっては危険な道だ。会期延長、衆院での再議決強行となると、参院での首相問責決議案の提出・可決で、衆院解散―総選挙という政権崩壊の可能性が高い。そのうえ、巨大な防衛省の汚職・腐敗構造が明るみに出され、消えた年金の実態が暴露される中で年金問題解決についての桝添厚労相のかつての大見得と現在の開き直りの落差の露出などは政権批判の火に油を注ぐものとなっている。

 福田内閣は、自民党内閣批判の声をなだめ逸らす任務をもって登場した。また、憲法改悪も安倍のように前面に押し出さないとしても、その準備は進めている。なによりも派兵・給油再開新法案が安倍路線の継承・実現を目差している。だが、先にも見たように、世界でも日本でも情勢は大きな変化のうねりを示している。グローバリゼーション・新自由主義政策による労働者への犠牲のしわ寄せに怒りが沸々と湧き出しはじめている。
 自民党にとって選択肢は多くない。大連立構想を掲げて民主党を抱き込み、あわよくば分裂させて勢力挽回を図る策はあまりに早く、またあまりに拙劣に切り札を使ってしまうことによって当面は実現不可能だろう。
 給油延長新法案を断固として粉砕しよう。イラクからの航空自衛隊の即時撤退、辺野古新基地建設阻止、キャンプ座間への米陸軍第一軍団司令部機能移駐反対など日米軍事結託強化に反対してたたかいぬこう。自民党政治を終わらせよう。


11・30集会への大結集を背景に国鉄闘争勝利へ

日比谷集会七三〇〇人

 旧国鉄・JR採用差別による一〇四七名の解雇を撤回させるための闘いの今年最後最大の集約の場として、一一月三〇日、日比谷野外音楽堂で「二〇年目の節目、総力をあげた闘いで勝利を!『JR採用差別』全面解決を迫る11・30全国大集会」がひらかれ全国から七三〇〇人が結集した。これは国労闘争団全国連絡会議、鉄建公団訴訟原告団、鉄道運輸機構訴訟原告団、全動労争議団・鉄道運輸機構訴訟原告団と国鉄労働組合、全日本建設交運一般労働組合、国鉄闘争支援中央共闘会議、国鉄闘争に勝利する共闘会議の四者・四団体の主催によるものだ。
 集会では、高橋伸二・国労中央委員長が、今が解決の時期だと主催者あいさつをおこない、当事者の神宮義秋・国労闘争団全国連絡会議議長、工藤博志・全動労争議団副団長、酒井直昭・鉄建公団訴訟原告団団長からは、納得のいく解決を求めて全力をあげる決意が述べられた。採択された集会アピールでは、「私たちは、全動労訴訟判決、明年三月十三日の鉄道運輸機構訴訟判決で、二十年に及ぶこの紛争の納得の行く解決に結びつく、憲法の基本的人権保障の理念が貫かれた司法の明確な判断を強く求めるものである。…被解雇者が求めているのは、具体的には『雇用・年金・解決金』の三点の回復、実現である。……本集会に結集したすべての参加者の総意として、当事者たちの解決にあたっての具体的要求を実現するため、今後も全国各地で、引き続き支援体制の強化と大衆的運動の高揚をめざし、裁判闘争の勝利と政府との解決要求交渉による『当事者が満足する解決』を勝ち取るまで、断固、闘うものである」ことを確認した。

佐久間さんがハンスト

 不当な差別解雇から二〇年。11・30集会への多くの労働者の結集は、国鉄闘争の早期決着の決意が高まっていることをしめすものであった。闘争勝利のためには、七月参院選の結果に示される政治情勢を活用し、決着のための工作をしかけるとともに、何よりも基本であるさまざまな創意的な大衆運動を圧倒的に盛り上げることが不可欠だ。当事者が主体として闘いを切り拓くことが、全国各地で展開されなければならない。四者・四団体は、来年の二月一六日を中心に諸行動が予定している。すでに裁判所への座り込みなどの要請行動も行われている。
 一二月一一日には、元運転士で国労闘争団最年長者の佐久間忠夫さん(七六歳、鉄建公団訴訟原告)が、国会前で、一〇四七名問題の一日も早い解決を政府に求めてハンストに突入した。
 ハンスト支援実行委員会主催による午後二時からのハンスト突入集会には、国労闘争団員、支援の労働者や市民が駆けつけた。
 佐久間さんは「ハンスト宣言」で次のようにアピールしている。
 「…七六年生きてきてわかったことは、国、政府とは必ずしも万全ではなく、戦争したり、市民を弾圧したりすることです。その苦い経験の中から、現在の世界に誇る平和憲法が生まれました。また市民には間違った方向に行く政府を正す責任もあると憲法は言っています。一人一人の人間の力は小さくても、人らしく生きていくために声を出し、行動することが人間としての権利であり義務でもあります。この思いでわたしは、七八時間のハンガーストライキを国会前で行います。わたしは、政府に以下のことを要求します。
 一、政府は二〇年間の不法行為の責任をとれ
 一、政府は一日も早く、私たちの雇用、年金、解決金の要求に応じて解決をはかれ」。


国の仕打ちに怒りの1万人

        12・1岩国集会報告 

    
 一二月一日、錦帯橋で有名な岩国錦川河川敷で一万人余が参加する集会が開かれた。
 この集会は、かつてSACO合意で米軍岩国基地にKC一三〇を移転したことの見返りとして、岩国市庁舎建替え補助金を国が支払う約束をしていたにもかかわらず、在日米軍再編に伴う岩国基地への空母艦載機部隊の移転に賛成することを条件にそれを反故にし、山口県や岩国市議会を通じて基地強化に反対する市長に対しさまざまな圧力をかけていることに、市民の怒りの声をたたきつけるため緊急に開催されたものだった。
 昨年三月の艦載機部隊移転の可否を問う住民投票では絶対過半数がNOを突きつけ、一〇月の市議会議員選挙では反対派の田村順玄さんがトップ当選し、移転賛否議員数は僅差となっていた。にもかかわらず再編交付金ほしさから賛成派が拡大してきたが、その賛否を問うた市長選挙で井原勝介市長が圧勝して民意は明確に移転拒否を選択した。これに対し、国はまさに「アメとムチ」で民意と地方自治を蹂躙し、賛成した周辺自治体には交付金を支払い岩国には兵糧攻めで屈服を強いようと画策している。
 民意は「怒」をキーワードで噴出した。
 集会は一四時に開会され、同実行委員会代表の岡田久男さんが「政府が取っている行動は地方自治に逆行するもの」と厳しく指弾する挨拶を行った。
 続いて井原市長が登壇し、「市庁舎建設補助金見送りは『アメとムチ』による手法で市民の意思を押さえつけるもの」と暴露し、「私の責務は市民の安心、安全を守ることであり、住民投票でNOとの結論が出た以上、私は市民と共に前に進む」との決意を述べた。
 支援のため駆けつけ国会議員団が紹介され、横路孝弘衆議院副議長をはじめ、民主党からは地元の平岡秀夫、岩国哲人、喜納昌吉、共産党からは殻田恵二、仁比聡平、社民党は重野安正、そして無所属の川田龍平さんなどが、それぞれ「基地問題と新庁舎建設補助金は別問題であり、兵糧攻めで艦載機移転を受け入れさせようとする姿勢は許せない」と指摘し、今後とも国の姿勢を糾していくとの決意を表明した。
 集会アピール(別掲)を地元市民の坂本雅美さんが読み上げ、集会参加者の割れるような拍手で採択された。
 集会の最後は、参加者全員に配布されたプログラムの裏表紙に書かれた「怒」の文字を一斉に掲げ、「国の仕打ちはゆるさん怒(ど)」と怒りのシュプレヒコールで締めくくった。
 主催者発票では一万一千人の参加者。わずか一ヶ月という短期間でこれだけの規模の集会が成功したことは、地元はもとより岩国基地周辺住民の国と賛成派市議や首長に対する大きな怒りが噴出したものだ。加えて直前に引き起こされた岩国基地所属の米兵四人による女性レイプ事件が闇に葬られようとすることに対する強い危機感から、絶対に移転を阻止しなければ事件・事故の増加は防げないとの世論の広がりを示すものだ。岩国基地強化に反対する闘いは、大きな成果を収めたこの集会を機にさらに力強く発展していくと確信した。  (広島通信員・I)

怒りの一万人集会アピール

 いま岩国市は四度にわたって予算案が否決され、財政は重大な局面を迎えています。
 このような混乱の原因は、約束を守らない国にあります。
 庁舎建設補助金は、KC−一三〇空中給油機移駐のみかえりとして国が約束し、すでに二回にわたり一四億円が交付されています。米軍再編はそのあとに出てきた話です。
 汚職容疑で逮捕された守屋前防衛事務次官は「わが官僚生活に悔いなし」と題した寄稿文のなかで「厚木の艦載機部隊の移駐は自分が思いついた」と述べています。しかし、「厚木にいらないものは岩国にもいらない」のです。
 また、混乱を招いたもうひとつの原因は、市の予算案を否決した議員にあります。
艦載機受け入れ容認派の議員は「民意は変わった」といいますが、旧岩国市議会で「艦載機受け入れ反対」を全会一致で決議したことを忘れたのでしょうか。
 今回の市議会議員選挙で「反対」を表明しながら予算案を否決し容認を迫るなどをみても、変わったのは「民意」ではなく、そうした議員のほうです。
 「現実的対応」とは言ったが、「受け入れ賛成とは一言も言っていない」と詭弁をろうする議員もいます。
 国や県の圧力に対して、市民の安全・安心を守ろうと立ち向かう井原市長をリコールするという動きにも負けられません。
 この清流錦川や錦帯橋のまち岩国を、極東一の米軍基地にしていいのでしようか。愛宕山に米軍住宅などもってのほかです。
 米兵四人による女性暴行事件のように、日本の法律が適応されない治外法権の状態はゆるせません。
日米地位協定の見直しを求めます。
 去る二五日には沖縄で基地を囲む人間の鎖行動が行われ、明日は神奈川の座間市で二万人の集会が開かれます。
 私たちは多くの市民と手を携えて、また全国の運動にも励まされて必ず三五億円の庁舎建設補助金を国に出させるまで運動を強めていく決意です。
 同時に、国の仕打ちに怒りの一万人集会の名において、全国の皆さんに呼びかけ、庁舎建設資金を自らの力で作り出すために、全力を尽くすことを宣言します。

 2007・12・1


広島で集会

 『日本の事件から浮かび上がる中国人研修生問題』
 
 広島における中国人研修生問題は、今年四月頃から福山市に於いて労働相談が舞い込んできたことがきっかけとなっている。
 彼女たちは福山アパレル協同組合に所属し、技能実習制度とはほど遠い、アイロンやミシンを使用しての単純労働を強いられていた。
 その労働実態とは法定労働時間を最低賃金で働かされ、休日は年に二日しかなく、時間外労働は月に二〇〇時間にも及ぶ労働が強制されていた。しかも、時間外労働単価は三〇〇円から三三〇円であり、時間外労働が終了すると、次は個人請負としてボタン付け一個五円とかの内職を強要され、これらの労働が終了する時刻は夜中の二、三時といわれている。一日の労働時間は実に一五、六時間にも及んでいた。
 こうした違法な労働実態を隠蔽する方法として、使用者側は二重帳簿を作成し労働基準監督署からの摘発を逃れていた。
 こうした過酷な労働は正に現代版奴隷工場と言っても過言ではない。
 
 では何故こうした労働実態が横行していたのか。この問題に関わってきた労働組合としてこの研修生、実習生制度をどうするのかといった課題を解明する意味からも、この問題で全国を股に掛け、事件の背景と内面を社会に問いかけているジャーナリストの安田浩一さんを広島に招いて一二月一日にカレントコスモに於いて講演集会を開催した。この集会は、中国人研修生問題に関わってきた福山ユニオンたんぽぽ、スクラムユニオンが中心となって全港湾、広教組、高教組、全国一般の六者が実行委員会を立ち上げ開催することができた。

 集会では、実行委員会を代表して全港湾中国地方本部・川田委員長の挨拶に続いて安田浩一さんが講演した。
 講演はレジュメに沿って、外国人研修・技能実習制度の実態、@外国人研修生・技能実習制度とは何か〜その歴史的な背景、A二つの「殺人事件」から見えてくる研修制度の闇〜取材ノートより 木更津養豚殺人事件 栃木県警による中国人実習生射殺事件、B法令違反・人権侵害が当たり前の研修・実習現場、C研修・実習生制度の今後についてであり、次のような講演が行われた。

 研修生問題を取材している過程でいつも「砂をかむような」感じを抱き続けている。なぜなら、悪徳業者(大独占)からの抑圧によって中小零細企業は安価な労働力を求め研修制度を安易に活用する以外に生き延びる道が残っていないことと、国内への受け入れ機関に旧労働組合の幹部が無自覚のまま関わっていることに無力感を覚えるからだ。
 研修生・実習性の労働条件は、福山アパレル協同組合での実態は全国的なものとほぼ共通しており、これ以外にパスポート管理、強制貯金、多額の法定外の控除(リース代、光熱費、家賃、光熱費)、仕事上での罰金制度(トイレに行くたびに罰金を取られる)、勤務時間外での禁止事項としては、携帯電話の所持、ネットカフェへの出入り、恋愛、妊娠の禁止。そして労働組合への加入や参加などの関わりを持つと即、強制帰国となることがほとんどだ。
 こうした劣悪な労働条件下にあるにもかかわらず、何故彼女らは声を上げないのであろうか。それは、中国での送り出し機関との間に多額な借金を背負っており、強制帰国させられると契約違反として保証金は没収され、違約金を払う羽目になるからである。
 それでは何故、強制帰国や脱走、労働相談等の問題が次から次と発生するのであろうか。それには中国国内での研修生を募集するにあたって、「三年間で三〇万元=四五〇万円を稼ごう!」をうたい文句にかき集め、事前の研修もろくに行わず日本に送り出しているのが実態であるからだ。
 これに加え、日中双方の送り出し機関と受け入れ機関に群がっている業者は、この制度を食い物にしている連中ばかりで、実情は「日中友好」とは名ばかりの研修生・実習性を通じて反日感情だけが増幅される制度である。しかも受け入れ機関として旧総評系の幹部が「日中技能交流センター」に関わって、彼らは「この制度はなくてはならない制度」とうそぶいている。しかも、国内での事件を通じて取材を申し入れ、矛盾を指摘されても「研修制度を廃止するつもりはない」と言い張っている。
 国内の各地で事件や労働問題が発生する中、ようやく行政も重い腰を上げはじめた。しかし、厚生労働省改革案(研修制度は廃止し、実習生制度は残す)や、経済産業省改革案(研修制度を廃止し期間を三年間限定とし労働者として認知)の両方の案は短期での単純労働を認めるものでしかない。
 労働組合や市民運動に問われていることは、研修生・実習生としてのを外国人移住労働者の労働者としての権利を認めることであり、、日本社会そのものが国際化してきている中ではリスクも伴うけども、彼らと共生していける思想が必要ではないのか。 
 その後集会は、福山ユニオンたんぽぽの武藤書記長からこの間の取り組みなどについて報告があり、集会のまとめを高教組の有田委員長が行って講演集会は終了した。  (広島通信員・N)


価値観外交の崩壊と右翼論客の泣き言

自民党政治終焉段階へ


 二〇〇七年の後半は、七月参議院議員選挙で自民党の歴史的敗北、安倍晋三の内閣放り出し、一一月一日テロ特措法失効と大きな事件が続いている。
 自民党政治の制度疲労については以前から取りざたされてきたが、それを劇的に示すことになった。衆参ねじれ国会という状況が生まれ、与党は強行採決を行うことが困難になり、国会での論議では防衛省汚職問題などいくつかのことが明らかにされるようになった。この事態をもたらした要因は、国家財政の深刻な赤字がこれまでのばら撒き政治を不可能にさせ、自民党地方組織と業界団体の力が減退したことであり、同時にリストラと非正規労働者の増大が企業主義的統合を空洞化させ、新自由主義政策がそれを加速させた。また官僚・検察・警察機構の腐敗も明らかになってきた。こうして、自民党は、大衆統合の機能を著しく低下させたのであった。 

安倍の「価値観外交」

 しかも国際情勢の激変はいっそう自民党政治の行き詰まりをもたらしている。
 最近の右翼論壇の意気消沈振りには眼を見張るものがある。『正論』(産経新聞社)、『諸君』(文藝春秋社)などに登場する著名な右翼論客は、国際情勢の激変とくにアメリカの「変化」を前にほとんど展望喪失状態に陥っているといってよい。
 その状況を見る前に彼らが「変化」に気づき驚愕する以前の日本の外交政策について触れておこう。安倍内閣は、改憲右翼がついに政権をのっとった画期的な政権であったが、安倍の外交政策にはアメリカブッシュ政権に影響力を持っていたネオコン勢力の理論に源流があるといわれた。民主主義を世界共通の普遍的価値とし、その価値を共有する国・勢力と同盟し、それに反対する国・勢力に敵対し排除するという姿勢である。
 五月一七日に安倍が提唱する「価値観外交」を支持する自民党の中堅・若手議員四十三人による「価値観外交を推進する議員の会」が発足した。会長に成蹊大学以来の安倍のお友だちである古屋圭司、顧問に中川昭一政調会長が就任するなど歴史教科書問題などで安倍と行動を共にした盟友たちが名を連ね、派閥横断な事実上の「安倍派」としてスタートした。思想的には反中国・反朝鮮と日米軍事同盟・運命共同体重視である。そして戦前の天皇制全体主義体制の復活ということであった。
 アメリカのネオコンは、建前とは違って実際には自国の利益のためには非民主的・反人道的勢力の支援も行ってきており、敵勢力攻撃の口実として利用してはいた。だが、日本の「ネオコン」派は、自由主義、人権主義や民主主義へのコミットメントはまったくの口実にすぎず、天皇制軍国主義思想こそが結集軸となっていた。これが「靖国神社・遊就館展示」「従軍慰安婦」「大東亜戦争肯定論」などの面で、アジア諸国のみならず、アメリカ・ブッシュ政権とも摩擦を生じさせ安倍内閣を倒壊させる時限爆弾ともなった。

「自由と繁栄の弧」


 参院選での大敗北の後、強引に首相の座に居座った安倍は、八月一九日にインドネシア、インド、マレーシア歴訪に出発した。これには日本経団連の御手洗冨士夫会長を団長とする経済ミッション約二五〇人も同行した。安倍による「価値観外交」の具体化であった。二二日に安倍はインド国会で演説した。「(日本とインドとの『戦略的グローバル・パートナーシップ』)は、自由と民主主義、基本的人権の尊重といった基本的価値と、戦略的利益とを共有する結合です。日本外交は今、ユーラシア大陸の外延に沿って『自由と繁栄の弧』と呼べる一円ができるよう、随所でいろいろな構想を進めています。日本とインドの戦略的グローバル・パートナーシップとは、まさしくそのような営みにおいて、要(かなめ)をなすものです。日本とインドが結びつくことによって、『拡大アジア』は米国や豪州を巻き込み、太平洋全域にまで及ぶ広大なネットワークへと成長するでしょう。開かれて透明な、ヒトとモノ、資本と知恵が自在に行き来するネットワークです。ここに自由を、繁栄を追い求めていくことこそは、我々両民主主義国家が担うべき大切な役割だとは言えないでしょうか。」
 ここに見え隠れするのは、中国包囲網であり、安倍の「主張する外交」の真の狙いはここにあった。
 しかし、インドを含めて安倍のよびかけに応える国はなかったのである。

米英との協調がすべて

 自民党の外交路線に大きな影響力をもってきたのは、元外交官で外交評論家の岡崎久彦である。岡崎には、新しい歴史教科書をつくる会賛同者、日本李登輝友の会副会長などの肩書きがある。右の論客だが靖国神社・遊就館展示の書き換えはその親米右翼としての姿を明らかにし、天皇主義右翼からの反発は大きい。展示書き換えとは、岡崎が二〇〇六年八月二四日の産経新聞朝刊「正論」欄に「遊就館から未熟な反米史観を廃せ」と題した記事を掲載のせ、これを契機に靖国神社は反米的な展示物を差し替えたのであった。
 岡崎「理論」の根本は、今後アングロサクソンの世界覇権はあと五〇年は続くだろうから、日本は強いものの側についたほうが利益になるので日米同盟が重要ということだ。
 岡崎は、そうした観点からイラク開戦後の状況について、『日本外交の情報戦略』(PHP新書、二〇〇三年)で次のように書いている。
 「アメリカの帝国化は悪いことではない。しかし、もしイラク問題が失敗すれば、米国の権威は少なくとも一時的には失われ、中東は混迷し、ロシアは方向を見失い、西欧、日本では旧態依然の反米リベラルが息を吹き返し、中国は再び尊大となるであろう。」「日本は友人としてアメリカを支持するのは当然である。それによって日朝交渉も有利に進められる。いずれにしても、世界は激動期に入ることが予想され、激動期に必要なことは、枝葉末節の議論に惑わされず、日本外交の究極的目標は、国民の安全と繁栄にあり、そのためには日米同盟の維持強化しかないという座標軸を見失わないことである。」……。
 「価値観外交」はこのような基礎の上に建てられていたのだった。

中西輝政の「敗北」の弁

 ところがそれらの想定はことごとく虚妄と化したようだということが彼ら右翼学者・評論家にもわかるような時代となってしまったのである。
 『諸君!』二〇〇八年一月号は、「特集 風雲、幕末自民党」で「『最後の将軍』福田康夫の哀しき『公武合体』工作」(中西輝政・京都大学教授)などが自民党政治の終焉に危機感をあらわにしている。
 『正論』二〇〇八年一月号は、「総力特集 米中『新密約』時代に日本は生き残れるか」として、「中国は必ず台湾・尖閣諸島を獲りにくる」(中西輝政など)、「ヒラリー・クリントンを揺るがす中国マネー」(古森義久)、「中国の膨張主義に日本は毅然たる『主張』をもって立ち向かえ」(中嶋嶺雄)、「パール判事は保守派の友たりえない」(西部邁)などが日本をめぐる情勢が激変していることを憂い悲鳴を上げている。
 中西は言う。「中国の周辺部でアメリカの政策かぶれる、中国が喜ぶような政策をアメリカが取っている。まるで米中が一致できる点をわざわざアメリカが探し、中国に合わせてアメリカが譲歩しているように見えるのです。ブッシュ政権はある意味で、国内で孤立している『特別な政権』ですから、その動きだけで、アメリカの『対中政策の大きな流れ』を論じることはできませんし、イラク戦争が予想もしなかった事態に陥ったことも大きな要因だと思います。また、アメリカはロシア、欧州との関係がよくありませんから、中国はそれを見てアメリカヘの立場を強めているとも言えるでしょう。中国の経済がここ十年、非常に調子がいいということも大きい。そうしたことから、アメリカの対中政策が『見た目』では非常に分かりにくくなっているのです。もはや米国務省は『対中宥和』といってもいいぐらい、無原則なことをやり始めています。六カ国協議における北朝鮮問題への対応もそうですし台湾を『見捨てる』かのような発言を繰り返したり、ミャンマーでは実質的に中国の影響力を認めるような政策を取っています。」「日本として対中政策を考えるときに、現在の日本と中国のパワーバランスのシートを見てみると、ラフに『経済』のサイズだけではもはや中国のほうが大きい。経済大国レースでは日本ははっきり負けたと思います。『軍事力』でも、日米同盟を考慮しなければ、日本は核兵器を含め、まったく負けています。さらに、一番、バランスしないのは、『相手の国への影響を与える力』です。中国は、日本への政治工作、世論操作、歴史問題を使っての日本分断など、いろんなもの使って、思うように日本の政治を動かせます。まず何よりもこのアンバランスを解消させなければ日本にとって決定的にまずいことになります。」…。
 この焦燥感と敗北感はどうだろう。
 アメリカには背かれ、経済・軍事・情報戦などで中国に差をつけられ、今後それが拡大していくといことに絶望的なため息をついている。その結果、この窮状からの脱却について、日本は独力で取り組むしかないのだが、中西の言葉を続けてみよう。
 「日米同盟も大きな分岐路に差し掛かっています。いま中国は経済がいいから、アメリカのアジアのことをまったく知らない人たちが、表面に出てきて、『日本なんてどうでもいい。中国に話をつければいい、北朝鮮問題もそうだ』という。そういう考えが勢い得ているのです。でも、ひとたび中国に何かが起これば、もう一度日本の重要性は間違いなく高まる。『五十年同盟を結んでいる日本はやっぱり重要だ』『価値観を共有できる日本がやはり大事』ということに必ず戻ります。重要なことは今、アメリカが自信なくしてどう行動していいか、わからなくなっているということです。これは逆に、日本にとってアメリカを動かすチャンズかもしれません。アメリカ外交を『対日追随』にかえるまれな機会、歴史的な機会と言えます。『価値観を守れ』と日本人がいえば、アメリカ人はびっくりするでしょうが、同時に日本人を見直すことになるでしょう。歴史問題、慰安婦問題も実は同じなのです。」!!
 こうなるともはや錯乱としか言いようがない。「『価値観を守れ』と日本人がいえば、アメリカ人はびっくり」して、「アメリカ外交を『対日追随』にかえる」ことができるとは、アメリカ人のみならずだれでもびっくりしてしまうだろう。
 そもそも、安倍や中西らの「価値観」は、アメリカ議会の従軍慰安婦決議で否定されたものなのだ。決議は、日本の従軍慰安婦問題を「二〇世紀最大の人身売買事件」と規定し、従軍慰安婦動員に対する歴史的責任を認め、こうした犯罪について現在と未来の世代を教育する、慰安婦動員を否定するいかなる主張に対しても公開的かつ強力に反論する、国連・国際アムネスティなど人権機構の勧告を検討し賠償の必要性と適切性を決定する、という内容であった。安倍らの「価値観」はブッシュ政権でさえ許せる範囲を逸脱していたのである。

世界の多極化

 こうした状況は、世界がアメリカの一極支配から多極化に向かっていることによって規定されている。趨勢としてあるアメリカ帝国主義の支配の揺らぎは、二期にわたるブッシュ政権の政策によって加速された。とりわけその戦争政策と市場原理主義・グローバリゼーションは、当初、アメリカの力を強めるように見えたが、現在ではその逆に向かっての意義が拡大してきている。
すでにブッシュの戦争は、行き詰っている。ブッシュの盟友であり、対テロ戦争の最大の支持者だったイギリスのブレアはこの問題で退陣した。おなじくオーストラリアのハワードは政権を奪われただけでなく、自らの議席さえ失った。安倍の退陣・逃亡とインド洋での給油の中断も起きた。そして、イランへの戦争拡大で現状からの脱出をはかったブッシュのもくろみも、身内のCIAのイランの核開発はないという発表で頓挫した。
 朝鮮の核問題をめぐる六カ国協議の進展など東アジアでの政策の柔軟化は、アメリカの力が弱化していることの現れであり、ブッシュにはアジアでもう一つの緊張激化・戦争をおこす余力はない。ブッシュの反朝鮮政策に依拠した日本右翼の「拉致」キャンペーンは後ろ盾を失ってしまった。
 日本の右翼勢力にとってショックだったのは、ブッシュのアジア政策の転換が米中関係強化を軸にしているらしいということである。来年秋の民主党が政権をとれば、いっそうアメリカは日本より中国を選ぶという恐怖にさいなまれている。

日米中関係の行方

 二〇〇六年七月、アメリカの最大輸入先は、カナダを抜いて中国となった。通年ではカナダが多いが、近い将来中国となる。またアメリカの対中貿易赤字額は、二〇〇〇年に日本を超えて一位となった。そして中国はその黒字を米国債の購入にあてている。一方、アメリカも対中輸出を増加させている。これらによって貿易赤字の急増に歯止めがかかっている。米中間の経済交流の拡大は、環太平洋の生産分業体制が進んでいることを背景にしている。また米中の航空網もそれにあわせて拡大している。対中直接投資の収益率も、九五年が七・八%だったのに二〇〇五年には二二・二%と一四・四ポイントも改善されている、ちなみに同時期の対日投資収益率は、一二・〇%から一六・五%と四・五ポイントしか改善されていない。この数字が、アメリカ経済界の中国と日本への関心の差となって現れている。
 単に「反テロ」によって軍事政治的に米中関係が緊密化しているのではなく、基礎に経済関係の強化がある。
 日本政府と右翼は、こうした世界とアジアの情勢を見誤った。
 二〇〇八年は、自民党政治の破綻が国際的にも明らかになる。朝鮮半島の情勢も一二月一九日の韓国大統領選挙の結果や、朝鮮の核開発凍結とテロ国家指定解除問題などでおおきく動く。また、台湾では一月の立法院(国会)選挙、三月の総統選挙がある。日中間のガス田開発や領土問題の行方がどうなるかが注目される。
 アメリカは「牙を抜かれたトラ」になったわけではないが、衰退の趨勢は覆いがたい。アメリカというトラの威を借りる勢力の物悲しい騒ぎがそれを物語っている。


図書紹介

      
『 格差社会にいどむユニオン ― 21世紀労働運動原論 』

                                木下武男・著 花伝社 2200円

 著者は「戦後労働運動の舞台が完全に転換した」ことを強調する。それはグローバリゼーションと新自由主義政策がもたらしたものだが、「労働運動の再生が可能だとするなら、この舞台転換を完全に理解することが必要」だ。第一部「労働社会の大転換を見すえる」はこのためのものだ。
 本書のサブタイトルは、「二一世紀労働運動原論」だが、著者の思いは「二〇世紀の後半、半世紀にもわたってこの日本で続いてきた労働社会の仕組みが、二〇〇〇年以降、音を立てて崩れ落ちている、この二一世紀という分岐点を表現したかったのである」ということだ。この変貌については、ワーキングプアなどの言葉が一般化し、小泉時代に華やかだった格差社会肯定論、自己責任論が影を潜めるなど、労働問題の重要性の社会的な認知度は高まっている。しかし、依然として労働組合運動の停滞状況は一段と深刻さを増している。
 「戦後労働運動は、客観的には、日本型雇用・年功賃金・企業別組合という日本的労使関係を基盤にして展開されたが、それは、労働運動にとって、足をとられるぬかるみのような悪条件であった。その基盤の上で、労働運動側は、政党・政派との癒着関係のもとで高い政治課題を労働組合に課す政治主義と、企業別組合を受容する企業主義という、ユニオニズムからの二つの逸脱をつねにおかしてきた。『ユニオニズム』とは欧米の労働組合運動の歴史を経て、国際的に当然視されてきた真の労働組合の運動や組織のことである」。すなわち、著者によれば日本で典型的な労働組合であるとみなされる企業別組合は、逆に、非典型なのである。そして今、本来的な労働組合運動の条件がこの激変の中で生まれてきていることを直視し、それに立脚して、個人加盟ユニオンから「日本の労働運動の過去と切断された形のヨーロッパ型ユニオンを目指す」「外部構築」論、また企業別労働組合の「内部改革論」の提唱などが「労働組合の機能と組織性格」「企業別労働組合体制を脱却する方途を探る」「新ユニオン運動の提唱」「福祉国家戦略と『労働政治』の展開」などの第二部「労働運動のルネッサンス」と第三部の「戦後労働運動史の断面―企業別労働組合の形成―」で述べられている。
 本のタイトルは『格差社会にいどむユニオン』となっているのだが、著者は格差社会というのは、これまでの企業中心社会における格差だったが、それが「階層社会」に変貌していると規定する。九〇年代の労働市場の「流動化」(グローバリゼーション、日本企業の多国籍企業への変身、新自由主義・構造改革)によって、日本型雇用と年功賃金は解体過程に入り、二〇〇〇年代は労働市場の「非正社員化」段階となった。ここで「新しい労働者類型」が登場してくる。派遣や請負などの「間接雇用」労働者である。「フルタイム型正社員代替型の非正社員」、衣食住費を稼がねばならない「生活自立型非正社員」の増大である。「正社員を中心にした戦後日本の労働市場は完全に転換しようとしている」。こうしたなかで有期雇用労働者に企業主義を超えた意識が生まれる。著者は、トムスン『イングランド労働者階級の形成』から引用する。「経験を同じくする結果、自分たちの利害のアイデンティティを、自分たち同士で、また自分たちとは異なる(通常は敵対する)利害をもつほかの人びとに対抗するかたちで感じとってはっきり表明するときに、階級は生じる」。固定し拡大する格差を意識する。彼らとわれらの対抗意識を持つ。これが階級形成の第一歩であり、日本はようやくにしてそうした時代に入り込んだ。格差社会→階層社会→階級社会。ここに著者の「ユニオニズムの出番」論の根拠があるのだろう。

 本書は単なる分析のためのものではない。現状打開の実践的方策の提起がある。「はじめに」にで著者の「感激」が述べられている。著者は、「実際の労働運動の現場に足を運び、多くの方策も書いてきた」が「しかし、いくつかの労働組合を除いて、かえりみられことはなかった。その一方で、戦後労働運動は決定的なまでに後退した。筆者の諦念感もふかまった」。「ところが二〇〇六年、日本労働運動の歴史にとって画期的ともいえることが起こった。若者労働運動の突如とした台頭であった」「ここに労働運動革新の確たる主体を見ることができた」とある。
 「ユニオニズムの正道を歩む若者労働運動」で、著者は「失うべきものは何もない労働者」としてのかれらの運動は、「過去の労働運動と断絶した新しい質」としてあるのではないかとして三点を挙げる。
 「組織論」としては、「とりあえず企業に根ざさないというスタンス」。首都圏青年ユニオンの例があげられる。「企業別の分会は原則としてつくらない方針」で地域別分会をつくっているが、それは「どこかの企業で分会をつくって、過半数を占める多数派組合をめざして安定的な待遇を保証する労使協定を結んで賃上げやボーナス獲得を目差すという方向性ではない」「それより、いま現在、悲惨な労働条件にあえいでいる若い人間が膨大に存在するのだから、そっちにむかわなければならい」という方針だ。
 また「労働組合の新しい組織文化」を生み出す可能性である。家父長制的仕組み、ジェネレーション・ギャップ、女性差別の克服であり、「弱者のツール」IT技術の活用などによる情報の共有による「フラットな人間関係と自由なコミュニケーション文化の形成、上下の関係性が薄く横に広がる組織と運動である。
 著者は、こうした個人加盟のユニオンがそこにとどまるのではなく、労働組合が本来持つべき機能としての産業レベルでの賃金・労働条件の規制ができる労働市場規制型ユニオンへ発展しなければならないという展望を提起する。
 「賃金論における職種別賃金」と「労働組合における個人加盟ユニオン」の結合こそが「賃金下落のもとで労働運動を再生させる必須の条件」であり、そのためにはなによりも「組織化」であり、「労働市場の中で膨大に存在する未組織労働者を個人加盟ユニオンに組織し、職種別結集・再編を行いながら、職種に関連する経営者団体と団体交渉機構を確立する。この遠大な道のりを歩む以外に、下層労働者の貧困化を食い止めることも、労働運動の再生もないと、重い定めることが今必要とされる。」まさに「遠大な道のり」ではある。しかし、その条件は二一世紀に入るとともに形成され、大きくなってきているというのが著者のアピールしたいことであろう。
 これらのほかにも福祉国家戦略、労働組合の政治主義偏向批判など斬新かつ大胆な指摘・提起が多々ある。
 著者はしかし、謙虚に「それは戦後労働運動衰退の最後の一撃になるのか、あるいは再生のラストチャンスになるのか。」とも記している。
 いずれにしろ著者は「あとがき」で「本書は論争の書である。いくらでも議論をしたい」と書いているように、真摯な問題提起には、現場の運動家をはじめ労働運動の再生を願う人々は真摯な態度で論議に加わっていくべきだろう。  (MD)


せ ん り ゅ う

 値上げ値上げ値下げは我が生活費かも

 薬害も年金もれも階級行政と知り

 防衛省まもるは利権の宝島

               ゝ 史

二〇〇七年一一月


複眼単眼

  絶望してクーデターまで叫ぶ極右勢力

 
 このところ、安部前政権を支持した「日本会議」など、新国家主義者(復古主義的右派)からの悲鳴がほうぼうから聞こえてくる。この連中は「冬の時代が来た」という認識なのだ。
 安部前政権の改憲攻撃は、わが国の復古主義的改憲勢力の稚拙な政治戦略そのままであった。相手側のねらいがストレートにわかるという意味で私たちにとっても闘いやすい相手であった。この勢力のイデオロギーは戦後六〇年の憲法下で作られた民衆の意識には容易になじまない。彼らがその政治的野望を果たすためにはそれなりの長期戦略が必要であったはずだ。しかし、安部とその取り巻きのブレーンたちには、そんなことができるような知恵はなかった。
 無責任な小泉元首相に「見た目がいい」という理由で後継者として指名され、実力もないのに有頂天になってしまった。安部政権は(福田もそうだが)総選挙で有権者の審判をうけたわけでもない。舞い上がって、小泉が奇略で獲得した三分の二の議席に乗っかって、「いけいけ、どんどん」をやっただけであり、その結果、惨めな失敗をした。
 「戦後レジーム」の転換ということで、排外主義的な北朝鮮敵視の好戦論と嫌韓ムードの煽動、中国敵視・包囲網形成をねらった「価値観外交」なるもの、「歴史の見直し」などの幼稚な議論は、頼みの米国からも疑念をもたれ、日米首脳会談の席にも冷たい風が吹いた。
 「任期中の改憲」論も世論の反撃を受けた。安部は八方ふさがりになって政権を投げ出したのだ。

 最近は売れ行きもめっぽう減っているといわれる「右派雑誌」のひとつ、「正論」十二月号で、この安部前政権の応援団だった連中が鼎談をしている。これがまたわかりやすくて、おもしろい。タイトルは「歴史の逆戻りには断固NOだ!」というもので、渡部昇一(上智大教授)、屋山太郎(評論家)、西岡力(東京基督教大学教授)が登場している。
 「世界における日本のプレゼンスが非常に低下している」「アメリカのジャーナリズムには日本のプレゼンスはほとんどありません」「いまやジャパンパッシングという感があります。これほど日本の比重が下がっているときに福田政権が登場しました」「心配しています」(渡部)
 「(自民党の四役は伊吹を別とし)あとの三人は真正面から中国を向いているような人ばかり」(屋山)
 「親中派というより媚中派です」(渡部)
 「安部・麻生は価値観外交を展開しました。麻生さんがもし次の総裁選で勝ったとしても、政権は民主党へ渡っているかも知れません。そういうことを思うと、非常に暗い気持ちになりますね」(屋山)
 「福田さんはどこまで頑張れるでしょうか。衆参のねじれ現象だから、社民党ら左派までとりこもうとするでしょう。安部さんは十七回もの強行採決をやりました。それぐらいの力が参院(自民党)にあったのです。ねじれは今後九年間もつづきます」(屋山)
 「(民主党の国連第一主義は)つまりは国連の傭兵ですよ」(屋山)
 「私がもし自衛隊員なら、民主党を襲いますね。これはクーデターの十分な理由になります」(渡部)
 「アメリカも最近はちょっとおかしいですね」「八月にAPECでブッシュ大統領は安部さんに三つのことを言ったといいます。一つはあまり拉致、拉致というな。二つ目は日米安保はいつまで続くかわからない。三つ目は、タンカーは自分でまもれ、というものです」(屋山)
 「(沖縄は)ずいぶん、酷い目にあったでしょうけれど、死んだ一般人は東京の一晩より少ないくらいですよ」(渡部)
 「東京大空襲でなくなったのは一〇万人ですからね」(屋山)
 「あんた方、賤しいよ。もういい加減やめなさいという人はいないんでしょうか」(渡部)
 「沖縄は全員が朝日を読んでいるような土地柄ですからね」(屋山)
 「沖縄の自民党も情けない」(西岡)
 いやしいよ、あんたがたやめなさいと言いたいのはこっちのほうだ。このものたちはクーデターまでそそのかすような連中なのだ。  (T)


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 世界に眼をむければイラクをはじめブッシュの対テロのカンバンを掲げた侵略戦争は完全に行き詰りました。反グローバリゼーション、反帝国主義の、反戦と社会改革を求める声は世界中で大きくなっています。日本でも米軍再編反対・基地撤去の反米反戦の運動は着実に広がりました。
 二〇〇八年は、こうした動きが一段と加速される年になるでしょう。
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